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― 62 ― Journal of the JIME Vol. 46, No. 5(2011) 日本マリンエンジニアリング学会誌 第46巻 第5号(2011) WAS-1000(BNWAS)の開発 - 船橋航海当直警報システム 穴 原 啓 一 ** Development of WAS-1000(BNWAS) Bridge Navigational Watch Alarm System Tokyo Keiki BNWAS WAS-1000 satisfies BNWAS performance standards of IMO Resolution MSC.128(75). The functions are watch-monitoring, providing emergency call and transferring alarms of the external equipment such as TCS (track control system) and INS (integrated navigation system). The system informs VDR (voyage data recorder) and INS of the transition state of watch-monitoring indication and alarm, and outputs BNWAS failure information to VDR and BAMS (bridge alert management system). In summary, this system keeps on watching providing officer on watch with attention step by step, and emergency call and transferring external system’s alarms are available to contribute to the safe navigation. 1.はじめに 東京計器のWAS-1000はIMO際規格 MSC.128(75)BNWAS (Bridge Navigational Watch Alarm System)性能基準を満足するものである.本製品は当直 監 視 (Watch Monitoring) 機 能 , 緊 急 呼 び 出 し (Emergency Call)機能,外部システム(TCS や INS)の 警報転送(Alarm Transfer)機能を持っている。また外部 の VDR や INS に対して,当直監視機能のインディケー ション(注意喚起の BNWAS 用語)や警報情報の遷移を 通知する(ALR センテンス)とともに,BNWAS 故障の出 力(接点)を VDR や Bridge Alert Management System に 行う.また,2011 年7 月より随時搭載義務化となり,型式 承認の取得が必要である. 当直監視機能は,ブリッジで当直監視している航海 士(OOW)が監視を行える状態にあるかどうかをタイ マにより定期的に監視し,休止時間(Td)を経過する と最初に可視のインディケーションを発する.OOW が 適切な当直監視タイマリセット操作や行動を起こさ ないと,15秒経過後ブリッジ内で可視可聴の警報(第 1船橋警報:Alarm1)を発する.さらに Alarm1 の未 確認状態が 15 秒以上経過した場合には,船長室やバ ックアップ航海士などの選択された場所に警報を転 送し可聴警報(第2遠隔可聴警報:Alarm2)を発する. この可聴警報を受けた航海士はブリッジに急ぎ,適切 な処置を行って事故を未然に防ぐことを目的として いる.客船等では,設定によってさらなる乗組員の居 室にも第3遠隔可聴警報:Alarm3 を発生させること が可能である. 緊急呼び出し機能は,OOW が船長や居室のバック アップ航海士をブリッジに呼び出したい場合に,表 示操作ユニットの EMER.Call キーを 2 秒以上押し続 けて実現する.解除は再度 EMER.Call キーを 2 秒以 上押し続ける.緊急呼び出しは Alarm2 警報と同じ選 択された場所に転送され,本警報と同様の音で通知 する.緊急呼び出し機能はいかなる操作モードにあ っても,表示操作ユニットのどの画面からでも,発 生させることができる. 外部システムの警報転送機能は,TCS(Track Control System)の BNA(Backup Navigator Alarm) INS(Integrated Navigation System)の未確認 警報(危険船警報,座礁予防警報,オフトラック警報 等)を受信した場合,Alarm2 と同じ選択された場所 に即座に警報転送する.これらの警報の確認操作は 本装置ではなく発生したシステムでのみ可能である. このように本装置は OOW に対して段階的な注意喚 起を与えながら監視機能を実現するとともに,緊急 呼び出し機能と外部システム警報転送機能を持つこ とによって,航海の安全に寄与する装置である. *原稿受付 平成 23 年 6 月 20 日 **東京計器

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WAS-1000(BNWAS)の開発 -船橋航海当直警報システム

― 62 ―Journal of the JIME Vol. 46, No.5(2011) 日本マリンエンジニアリング学会誌 第46巻 第5号(2011)

WAS-1000(BNWAS)の開発

-船橋航海当直警報システム*

穴 原 啓 一**

WAS-1000(BNWAS)の開発*

-船橋航海当直警報システム

穴原 啓一**

Development of WAS-1000(BNWAS) -Bridge Navigational Watch Alarm System

Tokyo Keiki BNWAS WAS-1000 satisfies BNWAS performance standards of IMO Resolution MSC.128(75). The functions are watch-monitoring, providing emergency call and transferring alarms of the external equipment such as TCS (track control system) and INS (integrated navigation system). The system informs VDR (voyage data recorder) and INS of the transition state of watch-monitoring indication and alarm, and outputs BNWAS failure information to VDR and BAMS (bridge alert management system). In summary, this system keeps on watching providing officer on watch with attention step by step, and emergency call and transferring external system’s alarms are available to contribute to the safe navigation.

1. はじめに

東京計器の W A S - 1 0 0 0 は I M O 際規格

MSC.128(75)BNWAS (Bridge Navigational Watch Alarm

System)性能基準を満足するものである.本製品は当直

監 視 (Watch Monitoring) 機 能 , 緊 急 呼 び 出 し

(Emergency Call)機能,外部システム(TCS や INS)の

警報転送(Alarm Transfer)機能を持っている。また外部

の VDR や INS に対して,当直監視機能のインディケー

ション(注意喚起の BNWAS 用語)や警報情報の遷移を

通知する(ALR センテンス)とともに,BNWAS 故障の出

力(接点)をVDRやBridge Alert Management Systemに

行う.また,2011年7月より随時搭載義務化となり,型式

承認の取得が必要である.

当直監視機能は,ブリッジで当直監視している航海

士(OOW)が監視を行える状態にあるかどうかをタイ

マにより定期的に監視し,休止時間(Td)を経過する

と最初に可視のインディケーションを発する.OOWが

適切な当直監視タイマリセット操作や行動を起こさ

ないと,15秒経過後ブリッジ内で可視可聴の警報(第

1船橋警報:Alarm1)を発する.さらにAlarm1の未

確認状態が15秒以上経過した場合には,船長室やバ

ックアップ航海士などの選択された場所に警報を転

送し可聴警報(第2遠隔可聴警報:Alarm2)を発する.

この可聴警報を受けた航海士はブリッジに急ぎ,適切

な処置を行って事故を未然に防ぐことを目的として

いる.客船等では,設定によってさらなる乗組員の居

室にも第3遠隔可聴警報:Alarm3 を発生させること

が可能である.

緊急呼び出し機能は,OOW が船長や居室のバック

アップ航海士をブリッジに呼び出したい場合に,表

示操作ユニットのEMER.Call キーを2秒以上押し続

けて実現する.解除は再度EMER.Call キーを2秒以

上押し続ける.緊急呼び出しはAlarm2警報と同じ選

択された場所に転送され,本警報と同様の音で通知

する.緊急呼び出し機能はいかなる操作モードにあ

っても,表示操作ユニットのどの画面からでも,発

生させることができる.

外部システムの警報転送機能は,TCS(Track

Control System)の BNA(Backup Navigator Alarm)

や INS(Integrated Navigation System)の未確認

警報(危険船警報,座礁予防警報,オフトラック警報

等)を受信した場合,Alarm2 と同じ選択された場所

に即座に警報転送する.これらの警報の確認操作は

本装置ではなく発生したシステムでのみ可能である.

このように本装置は OOW に対して段階的な注意喚

起を与えながら監視機能を実現するとともに,緊急

呼び出し機能と外部システム警報転送機能を持つこ

とによって,航海の安全に寄与する装置である.

*原稿受付 平成23年6月20日

**東京計器

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― 63 ―Journal of the JIME Vol. 46, No.5(2011) 日本マリンエンジニアリング学会誌 第46巻 第5号(2011)

2. 装備義務時期

BNWASはSOLAS条約V/19規則改訂で, 2011年7月

以降,以下のように段階的に装備義務を持つ.

対象船舶: 旅客船及び150トン以上の貨物船

適用日付:

i) 2011年7月1日以降建造の総トン数150トン以

上の貨物船及び旅客船

ii) 2011年7月1日以前に建造された旅客船は,

2012年7月1日以降の最初の検査まで

iii) 2011年7月1日以前に建造された総トン数

3,000トン以上の船舶は,2012年7月1日以降

iv) 2011年7月1日以前に建造された総トン数500

トン以上3,000トン未満の船舶は,2013年7月

1日以降の最初の検査時まで

v) 2011年7月1日以前に建造された総トン数150

トン以上500トン未満の船舶は,2014年7月1

日以降の最初の検査時まで

図1.装備義務時期

3. 開発の経緯

本装置の開発に当たり,当初はケーブルを少なくす

る目的で全ての構成機器を CAN 通信を行うことにより

BNWAS 規格の機能を実現させようとしたが主にコスト

面から主要機器間はRS-422シリアルラインとし,ブザ

ーユニットのような端末ユニットについては接点動作

とした.

またモーションセンサが認められていることからブ

リッジ内のリセットユニットは赤外線によるパッシブ

のセンサを用いる方式とした.

また,社内でのデザインレビューに於けるアイデア

でIRリモートユニット(TVに使用されるリモコンのよ

うなもの)の採用を決定した.これは他社と差別化でき

る,赤外線により天井などに設置された受光部に向か

って携帯型のIRリモートユニットのボタンを押すこと

で,BNWASのタイマをリセットできる機器である.

しかし,社内では非常に良いアイデアと思われたこ

の方式が,型式承認にて否定された.本来コーニング

ポジション近傍で航行監視をしているOOW が BNWAS タ

イマリセットを行うべきだが,ブリッジのどこからで

もリセットできてしまうということがその理由である.

また現在,本装置は,型式承認を得ているがその後

にモーションセンサを認めない船級が一部にあること

が判明した.その理由はOOWが意識しないうちにBNWAS

タイマがリセットされること,航行監視しているかど

うか不明な状況でも BNWAS タイマリセットされる可能

性があることによる.

船舶機器としては単純な機器であるが,Autopilot

の自動信号との接続義務,VDRとの接続,他のブリッジ

機器(RADAR,ECDIS 等)の動作で BNWAS タイマリセット

が可能など,他機器との接続ができる.

また国際ルールとして規格化された項目を実現させ

ているために,コンペチタと比較して差別化がしにく

い機器でもある.

図2 型式承認受検の様子

721

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― 64 ―Journal of the JIME Vol. 46, No.5(2011) 日本マリンエンジニアリング学会誌 第46巻 第5号(2011)

4. システムブロック図

以下にWAS-1000のシステムブロック図を示す.

図3.システムブロック図

当社 WAS-1000 は Display Unit,Connection Box,

Reset Unit,Flash Beacon,Buzzer Unit,Waterproof

Reset Unit から構成される.

各機器の設置場所を述べる.

Display Unit,Reset Unit,Flash Beacon はブリッジに設

置される.Water Proof Reset Unit はブリッジの一部と見

なされる左右のウィングに設置される.

Connection Box はブリッジの後ろの壁,またはブリッジ

に近い電気室などに設置される.

ブザーユニットは,転送警報を伝えるために船長室,航

海士室,MessRoom,食堂など,複数の場所に設置され

る.

VDR,INS,Auto Pilot, ECDIS, RADAR など外部機

器と接続する.

5. 基本仕様

5.1 動作環境

温度 0~+45 ℃

湿度 95 % RH(35 ℃)

振動 IEC-60945 Ed.4(防護型)準拠

(一部暴露型)

5.2 機能

本装置は以下の機能をサポートする.

- IMO性能基準MSC.128(75)の要件を完全に満足.

- BNWAS可聴警報の他,Emergency Call(緊急呼び出し

可聴警報)を指定された居室に転送する機能を持つ.

- DC24Vバックアップ電源と自己診断機能.AC電源喪

失時,DC24V バッテリー電源に自動で切り替え,本

装置の全ての機能を保持する.また,BNWAS 不具合

発生時に外部警報装置(セントラルアラーム等)に

接点出力する.

- 新造船の装備では当社のレーダー,ECDIS,

Autopilot 等と接点接続し,これら装置の操作行為

によりBNWASをリセット可能.

- TCS(Track Control System)の BNA(Backup Navigator

Alarm)警報や INS の未確認警報を受信した場合,

Alarm2 と同じ選択された場所に即座に警報転送し可

聴警報する.

5.3 動作モード

動作モードは船長のみが変更できる権限を持ち,

当直監視機能の動作/非動作を制御する.

- 電源投入時に「Manual OFF」が選択されていた

場合,自動的に「Manual ON」に変更される.

- Automaticモードはメニュー画面の船長権限項

目である「Automatic mode の許可/禁止」設定を

禁止にすることで操作モードの選択項目から削

除することが出来る.

- 動作モードが「Automatic モード」のときに

「Automatic モードの許可/禁止」で禁止を行った

ときは,動作モードは自動的に「Manual ON」モー

ドに変更される.

5.3.1 Manual ON モード

- 当直監視機能は動作状態.

- BNWAS 画面のタイトルバーに「Manual ON」と

表示する.

- BNWAS画面のProgress statusの表示を行う.

- BNWAS画面のProgress barの表示を行う.

5.3.2 Manual OFF モード - 当直監視機能は非動作状態.

- BNWAS画面のタイトルバーに「Manual OFF」と表

示する.

- BNWAS 画面の Progress status の表示を行わな

い.

- BNWAS 画面の Progress bar は進まない.

5.3.3 Automatic モード

- BNWAS 画面のタイトルバーに「Automatic」と表

示する.

- 自動操舵(ヘディングコントロールまたはトラック

コントロール)中は,当直監視機能は有効状態.

- 自動操舵中以外は,当直監視機能は無効状態

- 自動操舵中は,BNWAS 画面の自動操舵中の表

示である「AUTO」の表示を行う.

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― 65 ―Journal of the JIME Vol. 46, No.5(2011) 日本マリンエンジニアリング学会誌 第46巻 第5号(2011)

6. 当直監視動作

本装置は以下の当直監視動作を行う.

この動作はIEC-62616に規定されるものでWAS-1000

について図3を見ながらの説明を行う.

インディケーション(VI),

第1船橋警報(Alarm1),

第2遠隔可聴警報(Alarm2),

第3遠隔可聴警報(Alarm3),

の4つの注意喚起,警報状態が存在する.

(1) インディケーション(VI)

リセット操作が行われないまま休止時間(Td)が

経過すると,ブリッジの当直航海士(OOW)に可視

表示で注意喚起を行う.(表示操作ユニット,フラ

ッシュビーコンで緑色フラッシュ表示,リセットユ

ニット,防水リセットユニットでアンバー色フラッ

シュ表示となる)

(2) 第1船橋警報(Alarm1)

リセット操作が行われないままインディケーシ

ョン発生から15 秒が経過すると,ブリッジのみで

可視可聴の Alarm1 を出力する.この警報音パター

ンと音量はメニュー画面から選択できる.

(表示操作ユニットで Alarm1 赤色フラッシュ表示

とAlarm1音警報,フラッシュビーコンで赤色フラッ

シュ表示,リセットユニットでアンバー色フラッシ

ュ表示,防水リセットユニットでアンバー色フラッ

シュ表示と可聴警報)

(3) 第2遠隔可聴警報(Alarm2)

リセット操作が行われないままAlarm1から15秒

が経過すると,ブリッジで可視可聴の Alarm2 に変

化する.さらに Alarm2 転送先に警報を転送して,

ブザーユニットによる可聴警報を出力する.Alarm2

転送先はブザーユニットが設置された場所(船長や

バックアップ航海士の居室)の中からメニュー画面

で選択することができる.船長室や船長の事務室に

ついては,ブザーユニット間のカスケード接続で最

大3個までの増設が可能である.カスケード接続さ

れたブザーユニット同志は同一の動作となる.

客船以外の船舶では,Alarm2 のタイミングと同

時に Alarm3 用に設置されたブザーユニットに可聴

警報を出力することが可能であり,メニュー画面で

選択する.この動作はAlarm3 delayを0秒に設定

することで行える.この設定を行ったときには,

Alarm3は発生しない.

(表示操作ユニットで Alarm2 赤色フラッシュ表示

と可聴警報,フラッシュビーコンで赤色フラッシュ

表示,リセットユニットでアンバー色フラッシュ表

示,防水リセットユニットでアンバー色フラッシュ

表示と可聴警報,Alarm2 転送先のブザーユニット

で可聴警報)

(4) 第3遠隔可聴警報(Alarm3)

リセット操作が行われないまま Alarm2 から

Alarm3 delay時間(90~180秒)が経過すると,ブ

リッジで可視可聴の Alarm3 に変化する.さらに

Alarm3 転送先に警報を転送して,ブザーユニット

による可聴警報を継続する.Alarm3 転送先は,接

続箱の Alarm3 のみ出力する系統でブザーユニット

が設置された場所(適正な行動が取れる他の乗組員

の居室)と,Alarm2 の転送先として設置されたす

べてのブザーユニットである.Alarm3 転送先は

Alarm2転送先のように個別選択ができない.

(表示操作ユニットで Alarm3 赤色フラッシュ表示

と可聴警報,フラッシュビーコンで赤色フラッシュ

表示,リセットユニットでアンバー色フラッシュ表

示,防水リセットユニットでアンバー色フラッシュ

表示と可聴警報,関連するブザーユニットで可聴警

報)

図4.Alarm sequence time

6. 当直監視動作

本装置は以下の当直監視動作を行う.

この動作はIEC-62616に規定されるものでWAS-1000

について図3を見ながらの説明を行う.

インディケーション(VI),

第1船橋警報(Alarm1),

第2遠隔可聴警報(Alarm2),

第3遠隔可聴警報(Alarm3),

の4つの注意喚起,警報状態が存在する.

(1) インディケーション(VI)

リセット操作が行われないまま休止時間(Td)が

経過すると,ブリッジの当直航海士(OOW)に可視

表示で注意喚起を行う.(表示操作ユニット,フラ

ッシュビーコンで緑色フラッシュ表示,リセットユ

ニット,防水リセットユニットでアンバー色フラッ

シュ表示となる)

(2) 第1船橋警報(Alarm1)

リセット操作が行われないままインディケーシ

ョン発生から15 秒が経過すると,ブリッジのみで

可視可聴の Alarm1 を出力する.この警報音パター

ンと音量はメニュー画面から選択できる.

(表示操作ユニットで Alarm1 赤色フラッシュ表示

とAlarm1音警報,フラッシュビーコンで赤色フラッ

シュ表示,リセットユニットでアンバー色フラッシ

ュ表示,防水リセットユニットでアンバー色フラッ

シュ表示と可聴警報)

(3) 第2遠隔可聴警報(Alarm2)

リセット操作が行われないままAlarm1から15秒

が経過すると,ブリッジで可視可聴の Alarm2 に変

化する.さらに Alarm2 転送先に警報を転送して,

ブザーユニットによる可聴警報を出力する.Alarm2

転送先はブザーユニットが設置された場所(船長や

バックアップ航海士の居室)の中からメニュー画面

で選択することができる.船長室や船長の事務室に

ついては,ブザーユニット間のカスケード接続で最

大3個までの増設が可能である.カスケード接続さ

れたブザーユニット同志は同一の動作となる.

客船以外の船舶では,Alarm2 のタイミングと同

時に Alarm3 用に設置されたブザーユニットに可聴

警報を出力することが可能であり,メニュー画面で

選択する.この動作はAlarm3 delayを0秒に設定

することで行える.この設定を行ったときには,

Alarm3は発生しない.

(表示操作ユニットで Alarm2 赤色フラッシュ表示

と可聴警報,フラッシュビーコンで赤色フラッシュ

表示,リセットユニットでアンバー色フラッシュ表

示,防水リセットユニットでアンバー色フラッシュ

表示と可聴警報,Alarm2 転送先のブザーユニット

で可聴警報)

(4) 第3遠隔可聴警報(Alarm3)

リセット操作が行われないまま Alarm2 から

Alarm3 delay時間(90~180秒)が経過すると,ブ

リッジで可視可聴の Alarm3 に変化する.さらに

Alarm3 転送先に警報を転送して,ブザーユニット

による可聴警報を継続する.Alarm3 転送先は,接

続箱の Alarm3 のみ出力する系統でブザーユニット

が設置された場所(適正な行動が取れる他の乗組員

の居室)と,Alarm2 の転送先として設置されたす

べてのブザーユニットである.Alarm3 転送先は

Alarm2転送先のように個別選択ができない.

(表示操作ユニットで Alarm3 赤色フラッシュ表示

と可聴警報,フラッシュビーコンで赤色フラッシュ

表示,リセットユニットでアンバー色フラッシュ表

示,防水リセットユニットでアンバー色フラッシュ

表示と可聴警報,関連するブザーユニットで可聴警

報)

図4.Alarm sequence time

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WAS-1000(BNWAS)の開発 -船橋航海当直警報システム

― 66 ―Journal of the JIME Vol. 46, No.5(2011) 日本マリンエンジニアリング学会誌 第46巻 第5号(2011)

図5 接続箱

7. 性能諸元

7.1 構成

本装置は以下の機器で構成される.

表1 WAS-1000構成ユニット一覧

ユニット名 標準/

Option

最大数

接続箱(Connection Box) 標準 1

表示操作ユニット(Display

Unit)

標準 1

ブザーユニット

(Buzzer Unit)

(Alaram2,Alarm3,Emergency

Call,TCSBNA,INS

unacknowledged alarms)

標準 7

船長室: 1

(カスケード接続で

合計3台まで連

動 可 能

(Option))

1等航海士室: 1

2等航海士室: 1

3等航海士室: 1

その他: 3

ブザーユニット

(Buzzer Unit)(Alarm3のみ)

Option 15

5系統.

3台/系統

フラッシュビーコン

(Flash Beacon)

Option 3

リセットユニット

(Reset Unit)

Option 3

防水リセットユニット

(Water Proof Reset Unit)

Option 2

7.2 接続箱(Connection Box)

接続箱はメインコントローラであり,各ユニットから

のケーブルを結線する端子台となっているユニットで

ある.

7.3 表示操作ユニット(Display Unit)

表示操作ユニットは対人のインターフェーイスを行

う.オペレータに現在の状況を的確に正確に伝え,操

作を促す.LCD表示器を持ち6つのキーとブザーを持つ.

7.4 ブザーユニット(Buzzer Unit)

(1) Alarm2警報用

ブザーユニットは船長室,航海士室,メスルーム

等に設置され,BNWASとしての転送される可聴警報の

出力を行う.他Emergency Call,自動航行中のAlarm

警報も転送される.Alarm2では鳴動するブザーの設

置された部屋を選択することができる.

最大の接続ユニット数 船長室 1

(カスケード接続で計3 台まで連動可能(オプション))

1等航海士室 1

2等航海士室 1

3等航海士室 1

その他 3

LED(通常時は緑点灯.警報時は赤点灯)

(2) Alarm3警報用ブザー

最大の接続ユニット数 5系統.3台/系統

LED(通常時は緑点灯.警報時は赤点灯)

図6 表示操作ユニット

図7 ブザーユニット

724

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WAS-1000(BNWAS)の開発 -船橋航海当直警報システム

― 67 ―Journal of the JIME Vol. 46, No.5(2011) 日本マリンエンジニアリング学会誌 第46巻 第5号(2011)

7.5 フラッシュビーコン(Flash Beacon)

[オプション]

最大の接続ユニット数 3

VI時は緑点滅.警報時は赤点滅.

ブリッジ内でブリッジのどこからでも視認可能な場

所に設置され,インディケーション時には可視によ

る注意喚起,警報時は赤の可視警報出力を行う.

7.6 リセットユニット(Reset Unit)

[オプション]

最大の接続ユニット数 3

LED ×2

(1) 照光用LED 橙色点灯

(2) 人検知用LED 人検知時に緑点灯

ブリッジ内に設置され,人検知センサによるリセッ

トを行う.ディマー有効.

7.7 防水リセットユニット(Water Proof Reset Unit)

[オプション]

最大の接続ユニット数 2

船橋ウイングに設置され,BNWASの可聴警報出力

を行い,スイッチ押し下げにより BNWAS タイマリセ

ットを行う.

8.おわりに

装備義務となっている船舶機器の中でも,当社では最も

安価である WAS-1000(BNWAS)だが,型式承認試験

が義務化され,EMI/EMC 試験も他 Autopilot などの装

備義務機器と同様に行われ,環境試験は厳しい.また,

150t 以上の就航船にも装備義務が生じることから数も

多く設置される見込みもあり,従いコンペチタも多い.

他機器との接続,特にAutopilotからのAUTO信号を接

続することが必須である.また,現在のところ各船級の

モーションセンサの取扱が異なる.

単純な機器だが,ユニット数は装備する船により異なる

など取り扱いにくい商品でもある.また,航海士殿には

好かれる機器ではないと思うが,この製品によって海難

事故が少しでも減るようであれば嬉しい限りである.

参考文献

- IMO Resolution MSC.128(75) PERFORMANCE STANDARDS FOR A BRIDGE NAVIGATIONAL WATCH ALARM SYSTEM (BNWAS) , 20 May 2002

- IEC 62616 Ed.1 Maritime navigation and radio communication equipment and systems - Bridge navigational watch alarm system(BNWAS)- Performance requirements, methods of testing and required test results, 2010-02

- IEC Standard 60945 Ed.4 Maritime navigation and radio communication equipment and systems –, General requirements - Methods of testing and required test results, 2002-08

- IEC Standard 61162-1 Ed.3 Maritime navigation and radio communication equipment and systems, digital interface, 2000-07

- IEC 62288 Ed.1 Presentation of navigation-related information on ship borne navigational displays – General requirements – Methods of testing and required test results, 2008

- IMO Resolution A.1021(26) CODE ON ALERTS AND INDICATORS, 2009 - IMO Resolution MSC.252(83)

Adaption of the revised performance standards for Integrated Navigation System(INS),2007

*Refer to Clause 26.1.3

著者紹介

穴原 啓一

・1952生

・東京計器株式会社

第1 御事業部船舶港湾事業

技術部 第2 技術課

・大学学部卒業

・専門分野 ソフト

図8 フラッシュビーコン

図10 防水リセットユニット

図9 リセットユニット

725

装備義務となっている船舶機器の中でも,当社では

最も安価であるWAS-1000(BNWAS)だが,型式承認試験

が義務化され,EMI/EMC 試験も他Autopilot などの装

備義務機器と同様に行われ,環境試験は厳しい.また,

150t 以上の就航船にも装備義務が生じることから数も

多く設置される見込みもあり,従いコンペチタも多い.

他機器との接続,特にAutopilotからのAUTO信号を接

続することが必須である.また,現在のところ各船級の

モーションセンサの取扱が異なる.

単純な機器だが,ユニット数は装備する船により異なる

など取り扱いにくい商品でもある.また,航海士殿には

好かれる機器ではないと思うが,この製品によって海難

事故が少しでも減るようであれば嬉しい限りである.