turns10月号

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Page 1: Turns10月号

瀬戸内海の東部に位置する兵庫

県淡路島は、東京23区とほぼ同じ

面積をもつ。淡路市、洲本市、南

あわじ市の3つの行政区分からな

り、総人口は約14万人。日本の島

のなかでは、沖縄本島に継いで2

番目に多くの人が暮らしている。

淡路市の地域おこし協力隊・横

山史ふみ

さんは、2011年に初めて

淡路島を訪れた。

「当時は東京で、広報やデザイン

の仕事をしていました。前職の先

輩がカレーブランドの立ち上げを

していて、そのメニュー表やのぼ

りの制作を頼まれたんです」

株式会社ビープラウドが手がけ

る「淡路島カレー」は、フランチ

ャイズ方式を採用しているブラン

ドカレー。島の工場で一括製造し

たルーを、レストランやカフェな

ど全国の加盟店に販売。そのルー

に各店舗が独自にトッピングを加

えてお客さんに提供する。

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兵庫県淡路市横山史さん

移住のきっかけはカレー。

8種11業種の職歴を生かして

島の魅力を多角的に発信。

毎奇数月27日に開催している「津名カフェ」では、クラウドファンディングなどを活用して、地域の人や淡路島にかかわる人の「やりたいこと」を応援している。

2015年7月、淡路島への転居と同時に入籍。夫婦のふるさとと言われる「伊弉諾(いざなぎ)神宮」で結婚の報告。

弥生時代の遺跡が発掘された「淡路島の五斗長(ごっさ)地区」で撮影。「東京から初めてきたとき感動したのは、淡路島の空の高さ。水平線から朝日がのぼって、夕方には沈んでいく。いま、その様子を毎日のように見られるのが幸せですね」

「1人前に丸ごと1個の淡路島産

玉ねぎが溶け込んだぜいたくなカ

レーです。震災を機に社会貢献を

したいと、NPO法人淡路島活性

化推進委員会とタッグを組んで展

開していくことになりました」

やがてカレー研修ツアーの企

画・運営も担当。島に飲食店経営

者たちを招き、玉ねぎ畑や工場な

どをめぐり、どんな環境でカレー

がつくられているのかを知っても

らう。ツアーのアテンドのため毎

月のように淡路島に足を運ぶうち

に、東京での生活に疑問を抱くよ

うになったという。 

「当時暮らしていたのは、渋谷の

ど真ん中。新鮮な野菜や食材が手

に入りにくく、毎晩外食でした。

淡路島の食の豊かさに惹かれ、

『結婚して子供を育てるなら淡路

島がいいなぁ』と思っていました」

そんな時、淡路市役所の方から

地域おこし協力隊をご紹介され、

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Page 2: Turns10月号

6月16日に開催された、「第2回淡路島ナイトin東京渋谷」。淡路島産生パスタやバジルを使ったカプレーゼなど、淡路島の食材を使ったメニューを提供。横山さん自身も調理を担当。

すぐ応募。採用されて2015年

7月に淡路市志し

筑づき

に移り住んだ。

「株式会社淡路島営業」で

島の仕事を増やしたい

「建築事務所、雑誌社、コンサル

ティング会社……これまで8業種

11社の仕事を経験してきました。

いまはモデレーターという肩書き

で、イベントやシンポジウムなど

の司会業も請け負っています」

横山さんの立場は、一般的な地

域おこし協力隊とは少し異なる。

「雇用」ではなく「嘱託」。つまり、

「地域おこし」という大きな目標

は与えられているが、その手段は

横山さんにまかされている。 

任後には、東京・丸の内にあるア

ンテナショップの販売PR、地域

イベントの企画・運営、SNSに

よる情報発信、地産品のプロモー

ション、移住希望者の相談受付…

…など、これまでの職歴でつちか

ってきた経験と人脈を軸に淡路島

の魅力をさまざまな方法で発信し、

人を呼び込むための活動を展開し

ている。

「じつは東京の代々木にも家があ

って、二拠点生活を続けています。

月に1週間ぐらいは東京にいて、

淡路島でビジネスを始めたい人と

地元の人を結びつけたり。マッチ

ングも地域活性化に必要な大切な

仕事のひとつです」

淡路島の「食」をテーマに6月

に開催した「淡路島ナイトin東京

渋谷」も、横山さんのアイデアか

ら生まれたイベントだ。

「いま、〝淡路島イタリアン〞と

いう企画を進めています。淡路島

ではルッコラ、バジル、トマトも

さかんに生産されている。最近は

デュラム小麦というパスタづくり

に適した小麦の栽培にも取り組ん

でいます。地元の産直市場に集荷

所の機能があることがわかったの

で、そこにいろんなイタリア食材

を入荷して、飲食店に発送できる

仕組みを整えていきたいですね」

いずれ「株式会社淡路島営業」

をつくりたいと今後の目標を語る。

「ただ単に地域の魅力をPRする

のではなくて、人と人を結びつけ

て、ちゃんとビジネスにつなげる

ことが大切。それをやるための会

社をつくりたい。地方生活にあこ

がれているだけの人ではなくて、

淡路島で起業したい、仕事をした

いという人を増やさなければいけ

ないと思います」

まずは淡路島3市の垣根を越え

て、連携して島をブランディング

することに挑戦したい。そう話す

横山さんのエネルギーが、多くの

人を引き寄せ、淡路島の未来を切

り拓いていく。

兵庫県淡路市の地域おこし協力隊への

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横山史さん

5年越しの夢が実現。淡路島に住むのがカッコいいという文化を創りたい!

淡路島の魅力を教えて!

なんといっても食の宝庫! 食料自給率は110%で、玉ねぎをはじめとする野菜も多くつくられているし、タコ、タイ、サバなど、市場で値段が高くつく魚介類もたくさん獲れるんですよ。あと、神戸も徳島も近くて、交通の便がいいところも魅力ですね。

うれしかったことは?

この一年間で多くの人と出会えたこと。就任後に交換した名刺の数は2000枚を超えます。面談した人数は500人以上。そのうち約80人は淡路島で事業を行う経営者です。また2015年12月にはサンマリノ共和国の全権大使とご縁をいただき、淡路島の世界発信もさせていただくことができました。

淡路島のPR活動が中心なのですが、「地域おこし」という名前とのギャップで、「橋をかけて」「看板を立てて」という専門領域ではないご要望をいただくことも(笑)。なるべくお会いしてきちんと説明するようにしています。

苦労したことは?

任期終了後は、「株式会社淡路島営業」を立ち上げたいと思っています。淡路島と東京の二拠点生活をしていると、地方と東京をつなぐコーディネイターの役割が必要なことに気づきます。「食材の仕入」、「求人やビジネスマッチング」、「出会い&体験型観光」など、淡路島に興味をもっている方と、淡路島の企業や個人をつないでいきたいですね。好きな時に好きな場所で好きな人たちと働き暮らす。そんな生き方をする人が増えたらいいなと思います。

今後の目標は?

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