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Gojinkai Motomachi HD Clinic HDF施行時のアルブミン漏出および TMPに補液量の変更が及ぼす影響 五仁会元町HDクリニック 臨床工学部 1) 、臨床検査部 2) 、内科 3) 森上辰哉 1) 、阪口剛至、吉本秀之、田淵篤嗣、 清水 2) 、田中和弘、申 曽洙 3) 30ハイパフォーマンス・メンブレン研究会

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Page 1: TMPに補液量の変更が及ぼす影響 - motomachihd.commotomachihd.com/pdf/gakkai/006.pdfTMP )に起因するとこ ろが大きく、特に大量液置換のHDF(前希釈・後希釈にかかわ

Gojinkai Motomachi HD Clinic

HDF施行時のアルブミン漏出およびTMPに補液量の変更が及ぼす影響

五仁会元町HDクリニック 臨床工学部1)、臨床検査部2)、内科3)

森上辰哉1)、阪口剛至、吉本秀之、田淵篤嗣、

清水 康2)、田中和弘、申 曽洙3)

第30回 ハイパフォーマンス・メンブレン研究会

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アルブミン漏出量は、治療開始1時間で全体の5割程度が漏出し、その後時間の経過とともに減少する。これは膜面のファウリングに起因するもので、膜種によってその程度は違いがあるものの、現在市販されている膜種ではおおむね同一の傾向がみられる。

一方、アルブミン漏出量は膜間圧力差(TMP)に起因するところが大きく、特に大量液置換のHDF(前希釈・後希釈にかかわらず)ではその影響は大きいと言われている。

今回われわれは、治療前半(治療開始30分)とTMPの上昇する後半(治療開始210分)にそれぞれ補液量を増量することにより、アルブミン漏出にどう影響を与えるか検討した。

目的

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年齢(歳) 61.8±10.6

透析歴(年) 17.2±8.4

透析時間(時間) 4.0

体重(kg) 61.8±10.9

Hct(%) 33.8±5.6

対象透析器 ABH-21P

メーカー 旭化成メディカル

膜材質 ポリスルホン(PS)

膜面積 2.1m2

滅菌方法 γ線

内径(μm) 200

膜圧(μm) 45

容量(mL) 114

膜の仕様

対象患者 n=5

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評価方法

★排液採取タイミング ①濾過量一定群

○ ○ ○ ○

0分 10分 30分 90分 150分 210分

治療 開始

補液 開始

12L/Hr 12L/Hr 12L/Hr 12L/Hr

②30分後濾過量増量群 ○ ○ ○ ○ ○

0分 10分 30分 35分 90分 150分 210分

治療 開始

補液 開始

12L/Hr 18L/Hr 12L/Hr 12L/Hr 12L/Hr

③210分後濾過量増量群

○ ○ ○ ○ ○

0分 10分 30分 90分 150分 210分 215分

治療 開始

補液 開始

12L/Hr 12L/Hr 12L/Hr 12L/Hr 18L/Hr

補液量を12L/Hrとし、①補液量一定、②開始30分に補液量18 L/Hr(5分間)に増量、③開始210分に補液量18 L/Hr(5分間)に増量の3群に分け、下記サンプリングポイントでの排液濃度を測定した。また、各ポイントのTMPは4点法にて測定した。

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★排液濃度測定 1. 小分子量物質(UN,Cr,UA,iP) 2. 低分子量蛋白質(β2-MG,α1-MG,アルブミン)

★TMP測定法

Pbi:血液側入口圧,Pbo:血液側出口圧

Pdi:透析液側入口圧,Pdo:透析液側出口圧

★貯留容器吸着への対応

非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート:Tween20)を、終濃度0.02w/v%となるよう添加

検定にはpaired t testを用い危険率5%未満を有意とした。

評価項目等

TMP= PBi+PBo

― PDi+PDo

2 2

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TMPの経時変化

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

0 50 100 150 200 250

補液量一定

30分後増量

210分後増量

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

開始30分 開始210分

TM

P(m

mH

g)

経過時間(分) TM

P上

昇分

(mm

Hg)

p<0.05

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排液濃度の経時変化-小分子量物質-

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

0 30 60 90 120 150 180 210 240

補液一定

前半高補液

後半高補液

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 30 60 90 120 150 180 210 240

0.00.20.40.60.81.01.21.41.6

0 30 60 90 120 150 180 210 2400.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

0 30 60 90 120 150 180 210 240

(mg/dL)

UN

Cr

UA

iP

経過時間(分)

経過時間(分) 経過時間(分)

経過時間(分)

(mg/dL)

(mg/dL) (mg/dL)

補液量一定

30分後増量

210分後増量

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排液濃度の経時変化-低分子量蛋白質-

0500

10001500200025003000

0 30 60 90 120 150 180 210 240

補液一定

前半高補液

後半高補液

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

0 30 60 90 120 150 180 210 240

β2-M

G

α1-M

G

経過時間(分)

経過時間(分)

(μg/L)

(mg/L)

補液量一定

30分後増量

210分後増量

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排液濃度の経時変化-アルブミン-

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

0 30 60 90 120 150 180 210 240

補液一定

前半高補液

後半高補液

補液量一定

30分後増量

210分後増量

アルブミン

0

2

4

6

8

10

12 NS

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考察・まとめ • TMPの上昇幅について、開始30分増量時より210分増量時の方が増大した

(p<0.05)。これは開始210分ではファウリングが進んでいるため圧応答が敏感になったと考えられた。

• 小分子量物質について、開始30分、210分増量時ともに上昇はなく、むしろ低下傾向であった(ns)。これらは拡散除去が支配的であり、QDが減量されることによる拡散性能低下が原因であると推測された。

• β2-MGについて、小分子量物質と同様、血液濃度の低下に伴って排液濃度も漸減していく(補液量増量による低下傾向はみられない)が、α1-MGおよびアルブミンでは開始30分・210分ともに補液量増量により排液濃度も上昇傾向であった。

• 拡散除去依存性が低い物質ほど、TMPから受ける影響は高い。

• アルブミンでは、開始30分増量時に比して210分増量時で上昇濃度幅は少ない傾向であり(ns)、これはTMP上昇幅と逆転した挙動であった。

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Gojinkai Motomachi HD Clinic

補液量変更前後のTMP値と排液アルブミン濃度(追加試験)

開始30分 開始210分

300

250

200

150

100

50

0

50

40

30

20

10

0

TMP Alb (mmHg) (mg/L) Pt1

補液量12L/hr 補液量24L/hr TMP:

Alb: 補液量12L/hr 補液量24L/hr

QF:0.67L/hr 前Hb:10.7mg/dL

開始30分 開始210分

300

250

200

150

100

50

0

50

40

30

20

10

0

TMP Alb (mmHg) (mg/L) Pt2

QF:0.88L/hr 前Hb:14.1mg/dL

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Gojinkai Motomachi HD Clinic

演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある企業などとして、 ①顧問: なし ②株保有・利益: なし ③特許使用料: なし ④講演料: なし ⑤原稿料: なし ⑥受託研究・共同研究費(検査費):旭化成メディカル(株) ⑦奨学寄付金: なし ⑧寄附講座所属: なし ⑨贈答品などの報酬: なし

第30回ハイパフォーマンス・メンブレン研究会

CO I 開示 筆頭発表者名: 森上辰哉