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Title タイワンセンダン(Melia azedarach Linn.)材成分の研究 Author(s) 森, 巌 Citation 琉球大学文理学部紀要 理学篇(10): 23-27 Issue Date 1967-03 URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/22450 Rights

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Title タイワンセンダン(Melia azedarach Linn.)材成分の研究

Author(s) 森, 巌

Citation 琉球大学文理学部紀要 理学篇(10): 23-27

Issue Date 1967-03

URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/22450

Rights

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タイワンセンダン(Melia azedarach Linnt )

材成分の研究

森        巌

Studies on the Component of Heartwood

of Melia azedarach Linn.

by

Iwao MORI

Abstract

From heartwood of Melia azedarach Linn., |3-siLosterol, C2UHniO, mp. 137~

138°C, C°Od-26 C\% in CHCI3) was extracted by n-hexane.

In resin which was also extracted by n-hexane, of heartwood, it is expected

some acids but they are not yet confirmed.

緒      言

タイワンセンダン CMeha azedarach Linn.~)はトウセンダンともいう。根皮は苦榔皮

と呼ばれ,古くから駆虫効果があるので漢方薬として用いられているO 材は建築,家具,楽器用

材として広く使用されているが,特にカミキリムシやシロアリなどの害が少くないのでJSJ.用され

ている.

これらの有効成分と考えられる物質については,タイワンセンダンと同属の Melia

azadirachta Linn.の樹皮から nimbiol CiBH2.iOjと podocarpic acid がP.K.、ト

Ramachandran等 によって,また,材皮から paraffin alcohol C26H5.iO,β-siiosteroU<E) 3 (4)

nimbo1,新 keto phenol,などが抽出され, P. Sengupta,等  によって報告された。IAMBぢ

しかしながら,タイワンセンダンについては,種子油と核果柚について加補等  が,果(7)                    (*)

実からX.A.Dominguez等 によってalltaloidが,樹皮から Okahara等 によって1・.l 、

vanillic acidと cll-catechol,さらに.相については,奥村 によって2.占3yoのwood gum

〔xylan)が合有されることなど報告されただけで,タイワンセンダンの樹皮や材の特性を示す

と考えられる成分についての報告はいまだにない。著者は,これらの有効成分の研究をはじめ,

まず材成分について鰭巣を得たので報告する。

重税において,砕扮した材を多量のn-ヘキサンに浸活して得た浸液を減圧下に濃縮し,ふた

たびn-ヘキサンに子糾帰し,可溶部だけを活性アルミナを充填したカラムを通過させ,溶媒巷か

えて溶出分別した。 n-ヘキサン以外の溶媒に溶出したものは,いずれも羽状結晶を含有して

おり,この結晶は,エタノールついでメタノールで再結晶すれば,細い針状結晶となるC 収率

i.D54#.このものは mp. 137-138sC, 〔α〕D-26C1野クロロホルム)を示し Ca。H.cO

なる分子式をもつ。赤外吸収スペクトル CFig.1),標準品との混融 T.L.C. C薄層クロマト

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グラフイ)などからβ-sitosterolであることを確認した。また,串-sitosterolと混存し, n-

ヘキサンに溶出してくる多量の淡超褐色の樹脂様物質 CO.2%)は永くデシケーター中に放置す

れば黒褐色に変色する。このものの一部をとりカセイソーダで加水分解し,常法によって酸性部

分をェーテルに振り取る。 CIOgの樹脂練物から0.02g,粗製品として)このもののT.L.C.で

はRf値が0.80, 0.75の二つのスポットを与え,酸であることを推定したが,試料僅少のため

精査できなかった。

実  験  の  部

石垣島で夏季に採取した樹令約10年の材を砕扮して試料とした。その10*」をn-^Nキサン50

gallonで3回(1回, 10日間; 2回, 20日間; 3回, 30日間室温に浸漬)抽出した。浸液を合

併し,大部分の溶媒を回収して濃厚のまま放置すれば針状結晶を析出する。減圧下に完全に乾燥

すれば多量の油状物と粒結晶の28gを得た。

5 1 カラムクロマトによる成分の分別

油状物と粗結晶の混合物28gをふたたびn-ヘキサンに溶解する。 (不溶性淡褐色樹脂状物の

約3gを得る。このものはデシケータ中に永く放置すれば褐変し,エタノールに易容) n-ヘキサ

ン可溶部は, 25cmx2cmのカラムに活性アルミナを充填した管を通す。溶媒はn-ヘキサン,ベン

ゼン,エーテル,エタノールなどを単独または混合して用い,次のような区分の溶出物を得たO

区 分 溶 媒 溶媒の量 物質の性状と星

I 1トhexa n e 5 l 淡栂褐色油状 10g

TL n -h ex an e :b en zen e = 1 : 1 3 l 主として結晶 3.5g

Ⅱ be nzene 2 l 油状物と結晶 1.9g

IV eth er 2 l 1.2g

V eth er :ethan o l= 1 : 1 2 l 0 .7g

VI e th an ol 1.5 i ク 、0.4g

区分Iは全くlの淡燈褐色油状物でこのものには結晶が含まれず,デシケータ中に永く放置すれ

ば黒褐色に変色する。

区分Ⅶ~Ⅵまでは,油状物中に結晶が混在し,結晶はェタノールに可溶。油状物はェクノール

には比較的に溶解しにくいため分離することがで菖る。エタノールを追い出せば,いずれの区分

からもmp. 135-C付近の羽状結晶が析出する。区分製から3.2g,区分丑から1.4g,区分IYか

ら0.8g,区分Yから0.3g, VIから0.1gの計5.8gの収量。この結晶をメタノールで再結晶す

れば細い無色針状結晶となる。収量5.4g rap. 137-138aC.

与 2 結 晶 の 性 J状

ァ2 - 1 元 素 分 析

( a ) 試料Cm g ) C O zCm g〕 H 2O Cm g ) C % H %

4.126 12 .5 14 4.52 1 82.79 12 .26

C 29H 500 .K H 20 として 82.34 ll.96

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琉球大学文理学部紀要(理学編)25

Cb⊃試料Crag)CO2(mg)H。0cmg)C%n-%

3-10.2323-77579-8312.(

C/2。He。○蝣H20として1.4911.占5

与2-2比旋光度

クロロホルムの1%溶液として測定

Cα〕-26

52-3赤外吸収スペクトルC-Cによる吸収が1640cm-1と990cm-こ,末端メチレンCH3CH3>CH-の吸収が

1380cm~1に見られる。

Fig, I. IE-Spectra of 0-Sitosterol thai was extracted with n-hexane.

§ 2-4 T.L.C.C薄層クロマトグラフィ)

固定相;ワコーゲル B5

展開剤  benzene : Ethylacetate : n-hexane- 5 : 2 = 5

発色剤; Cone.H2SOd

展開後105。Cに乾燥後発色剤を境港する。

Spotの色:赤紫色, Rf値 1.5る

卓2-b ベンゾイル化

試料l-5gを 5mlのCHCIrに溶解し,乾燥したピリジン 5mlを加え,容器の外から冷

却する。振りませながら分液ロートから計算量の1.2倍の新たに兼留した塩化ベンゾイルを滑下

する。室温に一夜放置すれば,ピリジン塩酸塩が白く析出する.これに多量の2N H2S04を加

えて酸性にすればピリジン塩酸塩と共にベンゾイル化物も水に溶けるから, CHCI8で掘り取り,

CHCL 層は水洗後さらにNa,C03 で洗い,ついで水洗する。これをm=水tt:梢で乾燥してから

CHCLを 去し,メタ/-ルで再結晶を繰返してベンゾエートを得た mp. 146-147。C・

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26      森:タイワンセン_ダン(Melia azedarach Linn.)材成分の研究

5 2 I 5 ー 1 ベンゾエー トの元素分析

試料Cm g〕 C O 2Cm g3 H 2O Cm g〕 C % H *

3.235 9.909 3.045 83.59 10.53

C 36H 540 2 として 83.34 10.49

昏2-5-2 ベンゾエートのT.L.C.

固定相;ワコーゲル B5

展開剤 benzene:ethylacetate:n-hexane-5:2:5

発色剤 Cone.H2SO4

展開後105eC に乾燥後,魚時発色剤を噴零した。

Spotの色:紫赤色, Rf値:0.93

以上の実験の結果,得た結晶がβ-sitosterol C29H5。Oと予想されたので噂準β-sitosterolと

の混融,混合物の T.L.C.のRf値, 赤外吸収スペクトルの比較,さらにペンゾェ-トの混融

混合物のT.L.C.によるRf値などの結果からβ-sitosterolであることが確認されたO

.5 3 癖脂様油状物について

β-sitosterol と混在していた油状物およびn-ヘキサン溶出部の油状物の10gをとり,エタ

ノール 200m]に溶解し, 5gの NaOH を加えて勘溶上に3時間加温分解する。分解後,水

400mlを加えて不溶の大部分の檀色樹脂状物を石油エーテルに振り取り,残部を硫酸酸性にして

エーテルに振り取る。粗製品は, 0.02?,褐色の油状物で特異の刺戟臭があり酸性を呈する。

この酸性物質を metllanol 5 : Acetic acid 1.: n-hexane l の割合に調製した展開剤で

薄層クロマトグラフィで展開したL.展開後110-Cに20分乾燥し熱時,ロ-ダミンBの0.1%メ

タノール溶液を噴霧し 数時間放置後Rf値を測定し次の結果を得た。

R f 値 0 .80 決 赤 色

0 .75 紅 色

この酸性物質の量か僅少であったため精製確認することができなかった。

結     語

タイワンセンダンの材から得た針状結晶はβ-sitostero] CauHcoO で収率は0.054^である。

なお,抽出物の約70%を占める樹脂様物申0.2% (粗製)の酸性物質を得たがこのものは不飽和

の脂肪酸であろう。

本研究にあたって材を提供して下さった石垣市在住の喜友名盛氾氏,終始協力をいただいた岸

本直君,大城洋子壌ならびβ-sitostero]の確品を恵与していただいた九大農学部屋我嗣良民,

元素分析,赤外吸収スペクトルなどの便宜をはかって下さった九大理学部吉野持教授に深く感謝

・致します。

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琉 球大 学文.11学部 紀要(別学編)

l文     献

1) P. K. Ramachandran, P, C. Dutta: J. C. S., 196Q. 4766.

2) S. N. Choudhi汀i, H. N. Khastgir, P. Sengupla : Chem. & hid., 1960. 1284.

3) P. Sengupta, S, N. Choudhuri. H. N. Khastigir : ibid., 1958, 861

4) P. Sengupta, S. N. Choudhuri, H. N. Iくhastigir : Tetrahedron, ¥Q, 45, (1960)

5)加拓均三,池田鉄作, hFT思太:日化, 55,393, (!!f17)

6)加禰均三,畑思太:日化, 54. wo. (州8)

7) X. A. Doninguez, P. Rojas, V. Collins, M. del R. Morilles: C. A., 55, 4672 (1961)

8) K. Okahara, S, Taniguc】li : C. A., 54, 17580 (1960)

9)地村順四郎: 日化総1,I.259

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