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TG-DTA測定データ集
株式会社 リガク
熱分析事業部
①安息香酸の昇華・融解・蒸発
安息香酸の TG-DTA測定結果です。
121℃付近に安息香酸の融解による吸熱ピークが見られますが、それに先立って 90℃付近
から減量を伴う吸熱ピークが始まっています。これは安息香酸の昇華によるものであり、
融解後には蒸発による減量を伴う吸熱ピークが見られます。このように安息香酸では、昇
華、融解、蒸発が連続している起こることがわかります。
TG
DTA
-100.0 %
152.1 ℃
179.1 ℃
129.0 ℃
121.4 ℃
Temperature/℃+00
50.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 160.0 180.0 200.0
Weig
ht/%
+00
-150.00
-140.00
-120.00
-100.00
-80.00
-60.00
-40.00
-20.00
0.00
20.00
Heat
Flo
w/μ
V
+00
-50.0
-40.0
-30.0
-20.0
-10.0
0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
TG
DTA
DTG
-2.37 %
-1.59 %
77.9 ℃124.4 ℃
T e m p e r a t u r e / ℃+00
25.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 160.0 180.0
Weight/%
+00
-9.00
-8.00
-7.00
-6.00
-5.00
-4.00
-3.00
-2.00
-1.00
0.00
1.00
Heat Flow/μ
V
+00
-20.0
-15.0
-10.0
-5.0
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
DTG/%/min
+00
-2.00
-1.50
-1.00
-0.50
0.00
0.50
1.00
1.50
②アルミナ系粉末の脱水
アルミナ系粉末の TG-DTA測定結果です。
水は結合状態によって脱水温度が異なります。この試料の測定結果では室温付近と 100℃
付近の2つの温度域で、脱水による吸熱ピークを伴う減量が見られます。このことから、
この粉末には結合状態の異なる2種類の水が含まれていることがわかります。
③Pd粉末の酸化・還元
金属パラジウムの TG-DTA測定結果です。
200℃付近から酸化による発熱ピークを伴った増量が見られます。また、800℃付近から還
元による吸熱ピークを伴った減量が見られます。
このように金属パラジウムは加熱することにより酸化しますが、より高温で還元されるこ
とがわかります。
TG
DTA
11.85 % -14.27 %
311.3 ℃
823.2 ℃
387.4 ℃
848.8 ℃
Temperature/℃+00
25.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0
Weig
ht/%
+00
-50.00
-40.00
-30.00
-20.00
-10.00
0.00
10.00
20.00
Heat
Flo
w/μV
+00
-200.0
-100.0
0.0
100.0
200.0
300.0
④スルファミン酸のメカノケミカル効果
スルファミン酸の TG-DTA測定結果です。
スルファミン酸をオリジナルの状態で測定した結果(粉砕前)と、乳鉢で 30分間粉砕した
試料を測定した結果(粉砕後)を比較しました。粉砕後の試料は、粉砕前に比較してより
低温から分解が始まり、230℃付近の発熱ピークの大きさにも違いが見られます。このよう
に粉砕という機械的なエネルギーを試料に加えることによって、試料の熱挙動に違いが現
われることがあり、メカノケミカル効果と呼ばれます。
TG
1
TG
2
DTA1
DTA
2
Temperature/℃+00
100.0 120.0 140.0 160.0 180.0 200.0 220.0 240.0 260.0 280.0 300.0
Weig
ht/%
+00
-30.00
-25.00
-20.00
-15.00
-10.00
-5.00
0.00
5.00
Heat
Flo
w/μV
+00
-50.0 -40.0
-20.0
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
140.0
160.0
180.0
200.0
粉砕前
粉砕後
⑤セメント中の無機物の定量
セメントの TG-DTA測定データです。
450℃付近から Ca(OH)2の脱水による吸熱ピークを伴う減量が見られます。その後 500℃
付近から 800℃付近までに CaCO3の脱炭酸による吸熱ピークを伴った減量が見られます。
これらの減量値より、Ca(OH)2の含有量は全体の約 8.4%、CaCO3は約 26.3%と計算され
ます。
TG
DTA
DTG
-11.59 %
-2.04 %
466.1 ℃750.2 ℃
Temperature/℃+00
50.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0
Weig
ht/%
+00
-50.00
-40.00
-30.00
-20.00
-10.00
0.00
5.00
Heat
Flo
w/μV
+00
-100.0
-80.0
-60.0
-40.0
-20.0
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
140.0
150.0
DTG/
%/mi
n
+00
-3.00
-2.00
-1.00
0.00
1.00
2.00
⑥HDPEの熱分解
HDPEの TG-DTA測定結果です。
126℃付近に融解による吸熱ピークが見られます。250℃付近から酸化分解による段階的な
減量が見られ、それに対応した発熱ピークが DTAにおいても現われています。
また、拡大プロットにて確認すると、酸化分解直前に表面酸化による酸化増量が確認でき
ます。
TEMP
TG
DTA
-28.50 %
-64.69 %
-7.04 %
275.4 ℃
126.4 ℃
257.8 ℃
T i m e / m i n+00
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 61.9
Temperature/℃
+00
0.0
100.0
200.0
300.0
400.0
500.0
600.0
Weight/%
+00
-120.00
-100.00
-80.00
-60.00
-40.00
-20.00
0.00
20.00
Heat Flow/μ
V
+00
-200.0
-100.0
0.0
100.0
200.0
300.0
400.0
500.0
600.0
TG
DTA
0.13 %
T e m p e r a t u r e / ℃+00
200.0 220.0 240.0 260.0 280.0 300.0
Weight/%
+00
-5.00
-4.00
-3.00
-2.00
-1.00
0.00
1.00
2.00
Heat Flow/μ
V
+00
-50.0 -40.0
-20.0
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
140.0
160.0
180.0
200.0
HDPEの AIR雰囲気と N2雰囲気の TG-DTA測定結果です。
AIR 雰囲気では 250℃付近から酸化分解していますが、N2雰囲気では酸素が存在しないの
で 400℃付近から分解による減量と吸熱ピークが見られます。
また、AIR 雰囲気では段階的に減量(酸化分解)しているのに対し、N2雰囲気では1段階
で分解が進行していることが分かります。ポリエチレンの酸化分解は酸化することで酸化
分解が進行するため、酸素との接触条件等によって段階的に進行しますが、無酸素状態で
の分解は単純な分子鎖の切断によって進行するため、酸化分解より分解温度は高く、1段
階で分解が進行しています。
TG
1
DTA 1
TG
2
DTA 2
272.5 ℃ 461.4 ℃
T e m p e r a t u r e / ℃+00
30.0 100.0 200.0 300.0 400.0 500.0 600.0
Weight/%
+00
-180.00
-160.00
-140.00
-120.00
-100.00
-80.00
-60.00
-40.00
-20.00
0.00
20.00
Heat Flow/μ
V
+00
-100.0
0.0
200.0
400.0
600.0
800.0
1000.0
N2雰囲気 AIR 雰囲気
⑦ゴム中のカーボン分の定量
ゴム中に含まれるカーボン分の定量を行った結果です。
まず、800℃まで窒素中で昇温し、分解成分のみ分解させます。上記結果では 200℃付近か
ら 45%、600℃付近から 21%の分解による減量が確認できます。
その後 800℃で温度ホールドし、雰囲気を空気に切り替えると、燃焼による発熱ピークを
伴う 3%の減量が見られ、この減量が添加されているカーボンブラックの量に相当します。
なお、カーボンブラックの定量方法には上記のような高温での温度ホールドにて雰囲気を
切り替える方法(方法①)と、窒素中で分解させた後、窒素中でそのまま降温し、空気雰
囲気に切り替えて再昇温する方法(方法②)がありますが、ゴム中に含まれる樹脂が分解
時にカーボンを生成するような場合は後者(方法②)のプログラムが使用されます。この
場合、再昇温過程では燃焼が 2 段階で見られ、低温で見られる燃焼は樹脂のカーボン化に
よるカーボン、高温で見られる燃焼が添加されているカーボンブラックの燃焼となります。
※ 上記データでは、200℃からの減量は樹脂の分解、600℃からの減量はフィラーとして
添加されている炭酸カルシウムの脱炭酸による減量となります。ゴム製品にはこのよう
に樹脂とカーボンブラック以外にフィラーが添加されている場合がありますので、注意
が必要です。
TEMP
TG
DTA
-45.12 %
-21.39 %
-3.04 %
T i m e / m i n+00
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 61.9
Temperature/℃
+00
0.0
100.0
200.0
300.0
400.0
500.0
600.0
700.0
800.0
900.0
1000.0
Weight/%
+00
-80.00
-70.00
-60.00
-50.00
-40.00
-30.00
-20.00
-10.00
0.00
10.00
Heat Flow/μ
V
+00
-500.0
-400.0
-300.0
-200.0
-100.0
0.0
100.0
200.0
300.0
400.0
500.0
N2 雰囲気 Air 雰囲気
⑧ Ca(OH)2の炭酸化
Ca(OH)2の TG-DTA測定結果です。
密栓した状態から取り出した試料の測定結果(original)では 400℃付近に脱水による吸熱
ピークを伴う減量(-22.8%)が見られます。
25℃ 60%RHの状態で 7日間放置した後測定した結果(7days)では 400℃付近の脱水に
よる減量が少なくなっており(-9.2%)、600℃付近に減量(-26.0%)が見られます。これは、
放置している間に空気中の CO2を吸収し Ca(OH)2の一部が CaCO3に変化することにより
400℃付近の脱水による減量が少なくなり、600℃付近の CaCO3の脱炭酸による減量が起
こることを示しています。
また、original測定結果においても 600℃付近にわずかに減量(-1.3%)が見られており、
保存中において一部炭酸化が進行していることが考えられます。
TG
1
TG
2DTA
1
DTA
2
-22.79 %
-1.31 %
-9.24 %
-26.01 %
Temperature/℃+00
30.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0
Weig
ht/%
+00
-60.00
-50.00
-40.00
-30.00
-20.00
-10.00
0.00
5.00
Heat
Flo
w/μV
+00
-80.0
-60.0
-40.0
-20.0
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
120.0
140.0
150.0
オリジナル
7日間放置後
⑨ 空気雰囲気中における Ca(OH)2の熱挙動
Ca(OH)2の Air雰囲気での TG-DTA測定結果です。400℃付近に見られる Ca(OH)2の脱水
による減量(-20.6%)以外に、200℃付近から増量、600℃付近に吸熱ピークを伴う減量が
確認されています。これは測定中に Ca(OH)2が雰囲気(Air)中の CO2と徐々に反応して
CaCO3 に変化する炭酸化に伴う増量が 200℃付近から見られ、生成した CaCO3が 600℃
付近で脱炭酸を起こしています。
このように、空気中には N2、O2以外に CO2や水蒸気(湿度)も含まれているため、試料によ
っては注意する必要があります。
TG
DTA
0.38 %
-20.60 %
-5.25 %
455.6 ℃
683.1 ℃
T e m p e r a t u r e / ℃+00
30.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0
Weight/%
+00
-50.00
-40.00
-30.00
-20.00
-10.00
0.00
10.00
Heat Flow/μ
V
+00
-200.0
-100.0
0.0
100.0
200.0
300.0
400.0
⑩ 非晶質 PETのガラス転移、結晶化、融解
非晶質 PET(Polyethyrenetelephtalate)の DSC測定例です。
昇温に伴い、70℃付近にガラス転移によるベースラインのシフト、160℃付近に結晶化に
よる発熱ピーク、250℃付近に融解による吸熱ピークが見られます。
TG
DTA
ガラス転移 結晶化
融解
163.8 ℃
254.1 ℃
70.7 ℃
T e m p e r a t u r e / ℃+00
30.0 50.0 100.0 150.0 200.0 250.0 300.0
Weight/mg
+00
-4.00
-3.00
-2.00
-1.00
0.00
1.00
Heat Flow/μ
V
+00
-15.0
-10.0
-5.0
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
TG
DTA
T e m p e r a t u r e / ℃+00
200.0 220.0 240.0 260.0 280.0 300.0 320.0 340.0 360.0 380.0 399.9
Weight/mg
+00
-4.00
-3.00
-2.00
-1.00
0.00
1.00
Heat Flow/μ
V
+00
-20.0
-18.0
-16.0
-14.0
-12.0
-10.0
-8.0
-6.0
-4.0
-2.0
0.0
2.0
4.0
5.0
⑪ Niの磁気変態
室温で強磁性を示す Niは、350℃付近で、常磁性に変化し、磁気変態と呼ばれます。
この時、DTAはブロードな吸熱ピークを示し、この温度を、キュリー温度と呼びます。