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ローカライズを含めた 大規模プロジェクトのフロー 株式会社ゲームリパブリック 簗瀬洋平

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Post on 19-Jul-2015

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Category:

Entertainment & Humor


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ローカライズを含めた大規模プロジェクトのフロー

株式会社ゲームリパブリック簗瀬洋平

講演者紹介

簗瀬洋平ゲームデザイナー/シナリオライター

主な仕事

企画の立ち上げクライアントへのプレゼン仕様の決定レベル管理シナリオ外部向け資料作成ローカライズ

いわゆる「ローカライズ担当者」ではない

なぜローカライズを担当しているか?

海外の方が販売数が多いのにローカライズ品質を気にする人間がいない事に疑問を感じたプロジェクトの全貌を把握しており、他スタッフより効率良く担当できた外国語を扱うのが好きである自分の書いた文章が翻訳、音声収録されていくのが面白い

この発表の意図

ローカライズ=翻訳というイメージが強いが、海外でゲームを売ろうと思ったら立ち上げからマスター後のプロモーションまで、外国語が関わる部分は多い。翻訳部分しか見えていないとディスコミュニケーションが起こりやすい、またスケジュール的に無理が出てくる事がある。雑多ながら全貌をまとめる事で、効率的かつ精度の高いローカライズのための知識を共有したい。

プロジェクトの流れ

企画草案 プレゼン 企画書

GDD プロジェクト承認プロト作成

本制作 バーチカルスライス

ゴールドマスター

各段階でのローカライズ

プロジェクト立ち上げまで !クライアントに明確な意図を伝えるプロト制作時期

 !売り上げを伸ばすための方法を模索本制作

 !ゲーム全体の品質向上

全体を通してぶれのないローカライズを行う

企画立案

過去の資産や社内の技術を元に次のプロジェクトのコンセプトを打ち立てる。過去の作品の「こうだったら良かった」「こうだったら買った」という声が非常に重要。ユーザーの願望を知るための海外掲示板などの調査。特に北米の動向を重視。明らかに流行するものには乗らない事も重要。海外デベロッパの方が一足先に動いているので隙間を狙う。

企画草案作成

海外クライアントに持ち込む企画は、早い段階から海外担当の外国籍社員を入れて相談。いわゆる「地雷」を踏まないため。企画内容そのものは「誰がいつどこで誰と何をする(戦う)」が最重要。ジャンルにはこだわらない。便宜上の区分けは先方に合わせて変えてしまう。この状態では具体的なシステムなどは書かない。相手に想像させそれを取り込む事で共感させていく。

プレゼン

TGS、E3、GDCなどの機会にクライアントと接触し、2ページ程度の企画草案を見せて反応を探る。好評なら後に繋げる。各社の動向を把握すると共に、雑談などから学べる事も多い。外国籍の社員に海外掲示板などのチェックをしてもらうと同時に、北米でコンサルタントと契約し、意見を求める。プレゼンはたいてい1時間、短くまとめ意見を聞く時間を取り、後日持ち込む企画書に反映。プレゼン相手によって内容を変える。

閑話休題・1

プレゼン時、かつてはすべての会話に通訳が入り、こちらが話す!通訳!先方が話す!通訳というパターンで会話をしていたIGDAの新清志さんの話を聞き、英語podCastを毎日聞き込む事で会話の半分くらいまでは理解できるようになり、先方の発言は通訳なしにし、時間を節約現在は英語ネイティブの社員をプレゼンターとし、予め綿密な打ち合わせをする事で先方からの質問について返答する以外は通訳なし

企画書

草案に興味を持ったクライアントのプロデューサーが社内で企画を通すために企画書を作る(プリプロもしくはプロトがあった方が良い)同じ予算と期間ならばプロトよりもプリプロの方がより明確に完成形のイメージを伝えやすい。プロトをどの程度まで作るかは相手によって変わる。過去のプロジェクトの延長にあるものならある程度の信用は得られる。

GDD

具体的な話は割愛(これだけで一講演できる内容になってしまう)GDDを提出する時期や必要の有無などはクライアントによって変わる。プロト契約時の場合、プロトが承認されてからの場合、バーチカルスライスの承認までに出せば良い場合など。いずれにせよ、必要なのはそれを通して相手に納得してもらうこと。やりとりのきめ細かさ、早さ、話し合いなども重要。

プロト作成

プロトは提出した企画草案をどんな形で実現するか具体的な成果として示すために必要。ローカライズの際、クライアントに頼れない事が多く、社内で行う必要があるが、ここできちんとやっておくと後々クライアント側のローカライズ担当者と話がしやすい。本編の一部としてよりも、完結した一つのプロジェクトとして体裁を整えられると強い。用語やストーリーなどもわかりやすさを重視し、簡潔なものにすると良い。ローカライズ時にも当然それを反映させる。

市場調査

プロトと平行、もしくは本制作開始直後に行う。一般ユーザーへの訴求力を高めるため、クライアントに提出した企画書とは別に買ってもらうための素材として資料を作成し、アンケートやフォーカステストによって反応を見る。キャラクターなどもデザインや設定案などを複数入れ、それぞれの期待度を測る。結果によってはプロトと本制作では完全に別なキャラクターになる事も。コンセプトはずらさず伝え方を模索する。

閑話休題・2

プレゼン時、相手の名前が予めわかっているならばLinkedInなどで経歴を調べてみると良い。どう移籍してきたか、過去に関わった作品は何かなど。相手の好みなどがわかると対策も立てやすいし、既存のゲームを例にとって説明する際、そのあたりから攻める事もできる。雑談がきっかけで新たな企画の持ち込みができる事もある。海外とはとにかく会う機会が限られるので少ないチャンスを有効に!

本制作

多言語対応が始まるインターフェイスに気をつける吹き替えや字幕に関しては長期的に計画を立てる必要がある

テキスト多言語対応

当然ながら日本語!英語!他言語がほとんど稀に日本語!韓国語など英語の品質が全てを左右する可能性が高い北米とヨーロッパで別々に英語翻訳する事も担当とフローを明確にし、早めにチェック開始できるようスケジュールを組む

公認用語多言語対応

マルチプラットフォームの場合、それぞれに用語などが異なる場合がある。タグなどを使って対応する事も可能だが、視認性が低いためどちらかのプラットフォームをベースに作成し、異なる部分のみを別ファイルに記述、Make時に上書きすると対応が楽。過去の資産も活用するが、最後の最後まで変更されると思った方が良い。特にクライアント側でも初めてローカライズする場合。

シナリオ多言語対応

ニュアンスを伝える事が最重要。台詞の羅列だけでなく、話の流れ、キャラクターの性格や育ちなどを詳細に説明した資料が必要。ヒントNPCでも年齢、性別、生まれなどは決めておくと親切。美しい日本語にこだわらない、特殊な用語を極力作らない(英語翻訳後でも対応可能)何を伝えたいのかをとにかく明確に。

カットシーン多言語対応

何語をベースにするかで順番が変わる。英語ベースの場合、日本語の脚本を元にVコンテを作成!モーションキャプチャ!プリプロ!英語音声収録!音声の尺に合わせてプリプロ修正!リップシンク!各国語アフレコプリプロ後のエフェクト、サウンド作業も含め、ここから遡ってスケジュールを組む。シナリオの締め切りをここから決定。

音声多言語対応

納品されたサウンドが合っているかどうか全言語チェックするだけでかなりの作業(経験的に1000個中1~2個は間違いがある)。各国語の基本的な発音法則だけでも自力で勉強。ロシア語はスクリプトで発音に近いアルファベットに修正し、チェック。ゲームに組み込まないと適切がどうか判断してもらいにくいところもある。デバッグ時に不適切なものは代替音声を提案してもらう。

インターフェイス多言語対応

画面上に文字が表示されるもの全てをスクリーンショット撮影し、渡しておくと話が早い。テキストあふれなども、数枚送れば実機がなくとも翻訳者側で対応可能。長くなりがちな言語の場合、最低限入れて欲しい説明を備考欄に入れ、一部省略してもらう。

閑話休題・3

モーションキャプチャを日本で行う場合、役者の動作、特にゼスチャーが日本人らしくなってしまうのが悩み。英語ネイティブの社員に同行してもらい、ある程度はチェックするが日本在住が長いとわからなくなる。舞台でシェイクスピアをやっている、役者さんの留学経験を重視するなども考えるが、英国あたりでキャプチャできれば良いか。

デバッグ時

修正のスピードなどがそれまでと異なり、完成したEXCELファイルをやりとりしている時間がないため、バグトラッキングシステムなどを通じて現地のデバッグ担当者と直接やりとりを行う。テキストの新規追加などを行う場合、Google翻訳を駆使してでも無理矢理入れる(意図が読めれば正しいテキストが返ってくる)

プロモーション素材

基本的には翻訳用、デバッグに渡している資料がゲームの全てとなるように作成する事で二度手間を防ぐが、QAと広報などの部署間で連携が取れていない場合もあるため注意が必要(ローカライズディレクターと事前に話し合っておくと良い)FacebookやMy Spaceのページ開設のために特別なものを用意する事もあり。「好きなテレビ番組」などは現地の人に決めてもらう。

大切なのは以下の3つ

序盤からイメージを共有する長期的な作業を把握して計画を立てる任せきりにせず、チェックを行いレスポンスを返すローカライズの品質はゲームの評価に直結する(感覚的にはMetacriticでで5点くらい影響)

それぞれの立場から

ディレクター:常にローカライズを視野に入れて作業計画を立てる。クライアントや翻訳者にゲームの全貌を伝える。ローカライズ担当者:全体の流れを通し、必要な作業を把握し、周知徹底する。ローカライズに必要な資料を全力で用意する。ローカライズディレクター:デベロッパと現地の間で密に連絡が取れるよう配慮する。

最後に

ローカライズは文化と言語の違う人々を結びつけるための仕事。作業量の割に影響が大きい。最終的には各スタッフ一人一人がローカライズを気にかけていくのが望ましい。ローカライズに携わるのは楽しい事だと多くの人に伝えていきたい。

ご静聴ありがとうございました

ご質問等は [email protected] まで