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ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート 5-209 5.15 貨物鉄道輸送計画 本調査ではタウングー~マンダレー間の貨物鉄道輸送計画を対象としているが、ミャンマー国 内の物流については、ヤンゴン地区が拠点であり、また、後にも述べるが、ヤンゴン及びマン ダレー地区でのドライポート整備計画ならびにティラワ港ならびにティラワ経済特別区(以下 「ティラワ SEZ」)の整備が進行している。そのため、本調査では、ヤンゴン(ティラワ地区 を含む)~マンダレー間の鉄道貨物輸送のあり方を視点にしており、現地調査およびミャン マー国鉄(以下「MR」)等関係者からの情報をもとに、タウングー~マンダレー間における 鉄道貨物輸送基地案について述べるとともに、MR との間で合意した結果、ならびにドライ ポート整備計画の進捗等について調査した内容を含め、鉄道貨物基地の整備案を述べることに する。 5.15.1 鉄道貨物輸送のモード別現状 (1) 一般貨物輸送 現在のミャンマーでは有蓋車および無蓋車による輸送が主流であり、荷役ホームが整備されて いる、ヤンゴン地区(サトサン、ボタタン、ワダン各駅)およびマンダレー地区のミョウハウ ン駅などの一部を除いては、駅構内の一部で数両分の荷役を行っているのが主流である。鉄道 では輸入食料品、建設資材等の一般貨物の他、ミャンマー軍の物資輸送も行っている。しかし ながら、現在の貨車では走行速度が遅いため、トラック輸送と比べてさほど有利とはいえない。 (a) 列車の到着(パッレ駅) (b) 貨物の取り卸し(タージィー駅) 出典:JICA 調査団 5.15.1 一般貨物列車 (2) 石油輸送 ミャンマーにおいては、石油はほとんどが輸入に頼っている。ヤンゴン南部のティラワ港に大 規模な石油の備蓄精製基地を計画しており、現在はエーヤワディー川の水運が主流のマンダ レー地区への石油製品の輸送を鉄道にシフトすることで、 MR はマンダレー地区を含めた石油 基地について PPP 事業として整備していく計画である。

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ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-209

5.15 貨物鉄道輸送計画

本調査ではタウングー~マンダレー間の貨物鉄道輸送計画を対象としているが、ミャンマー国

内の物流については、ヤンゴン地区が拠点であり、また、後にも述べるが、ヤンゴン及びマン

ダレー地区でのドライポート整備計画ならびにティラワ港ならびにティラワ経済特別区(以下

「ティラワ SEZ」)の整備が進行している。そのため、本調査では、ヤンゴン(ティラワ地区

を含む)~マンダレー間の鉄道貨物輸送のあり方を視点にしており、現地調査およびミャン

マー国鉄(以下「MR」)等関係者からの情報をもとに、タウングー~マンダレー間における

鉄道貨物輸送基地案について述べるとともに、MR との間で合意した結果、ならびにドライ

ポート整備計画の進捗等について調査した内容を含め、鉄道貨物基地の整備案を述べることに

する。

5.15.1 鉄道貨物輸送のモード別現状

(1) 一般貨物輸送

現在のミャンマーでは有蓋車および無蓋車による輸送が主流であり、荷役ホームが整備されて

いる、ヤンゴン地区(サトサン、ボタタン、ワダン各駅)およびマンダレー地区のミョウハウ

ン駅などの一部を除いては、駅構内の一部で数両分の荷役を行っているのが主流である。鉄道

では輸入食料品、建設資材等の一般貨物の他、ミャンマー軍の物資輸送も行っている。しかし

ながら、現在の貨車では走行速度が遅いため、トラック輸送と比べてさほど有利とはいえない。

(a) 列車の到着(パッレ駅) (b) 貨物の取り卸し(タージィー駅)

出典:JICA 調査団 図 5.15.1 一般貨物列車

(2) 石油輸送

ミャンマーにおいては、石油はほとんどが輸入に頼っている。ヤンゴン南部のティラワ港に大

規模な石油の備蓄精製基地を計画しており、現在はエーヤワディー川の水運が主流のマンダ

レー地区への石油製品の輸送を鉄道にシフトすることで、MR はマンダレー地区を含めた石油

基地について PPP 事業として整備していく計画である。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

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(3) 国際海上コンテナ輸送

日本の国土交通省は 2014 年 9 月にミャンマーにおける貨物鉄道へのモーダルシフトを促進す

るため、ヤンゴン港~マンダレー(パッレ駅)間で国際海上コンテナ(20ft、40ft)を往復輸

送する実証実験を実施した。その後、2017 年 4 月に、ヤンゴン(イワタジー)、マンダレー(ミィ

ンゲ)の 2 か所でドライポートを開発するための契約を MR と Kerry Logistics Network(香港

本拠の物流企業、以下「KLN」)、および Resources Group Logistics (ミャンマー本拠の物流企業、

以下「RGL」)の間で締結した。

両ドライポートの完成を待たずに、2017 年 8 月よりヤンゴン(ワダン)~マンダレー(パッ

レ)間で、国際海上コンテナ貨車が KLN および RGL により週 1 往復輸送されている。しか

しながら、現在の車両限界ならびに軸重により、輸送できるコンテナ(高さ 8ft6in のみ, 1 車

両あたりコンテナ自重込積載重量 32t 以下)が制限されている。

本事業においては、ハイキューブコンテナ(高さ 9ft 6in=2,896mm)の走行に可能な車両限界

(4,100mm)、建築限界(4,300mm)の拡大ならびに軸重の重量化(13t→20t)を実施するので、

ミャンマー国内、とりわけヤンゴン~マンダレー間での国際海上コンテナの鉄道輸送は多くな

るものとみられる。

(a) 海上コンテナ実証実験(2014 年) (b) KLN,RGL による暫定輸送(2017 年)

出典: JICA 調査団

図 5.15.2 国際海上コンテナ輸送

5.15.2 鉄道貨物輸送設備の現状

JICA 調査団は 2017 年 5 月,7 月および 8 月にネピドー地区(ピンマナ駅、ユァード駅、ネピドー

駅)、タージィー駅、マンダレー地区(パッレ駅、ミィンゲ駅、ミョウハウン駅)の 3 地区に

おいて現地調査を行った。

(1) ネピドー地区

MR によると、ネピドー地区において現在は貨物鉄道輸送の需要が乏しいものの、国家政策に

よるインフラ整備に伴い、建設物資輸送(コンクリート用骨材、鉄筋、道路舗装材料など)の

需要が見込まれるとのことである。今回、ネピドー地区における調査として、その中心部にあ

るピンマナ、ユァード、ネピドーの各駅が貨物輸送拠点に適するかどうか、現地調査を実施

した。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

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1) ピンマナ駅(362.0km)

2017 年 5 月の調査日にはちょうどホーム端部で有蓋車での荷役を行っていた。また、マンダ

レー方引き上げ線の奥で貨物の荷役も行っている。駅本屋から反対側には留置線が7線あるが、

実際に使用されているのは 4 線である。

(a) ホーム端での貨物の荷役 (b) 留置線(車両がいる線の外側にも 3 線)

出典:JICA 調査団 図 5.15.3 ピンマナ駅の現状

2) ユァード駅(370.0km)

本線の西側に留置線があり、駅は高規格道路(Railway Road, Military Base Road)に沿って位

置している。その間の比較的広いスペースにて、近くのミャンマー軍基地関係の物資のほか、

ヤンゴンから無蓋車で到着した道路舗装用の石油製品(ドラム缶)を人手でトラックに取り卸

している。

出典:JICA 調査団

図 5.15.4 ユァード駅での荷役

3) ネピドー駅(373.2km)

ネピドー駅では実際に貨物を荷役しているところは確認できなかったが、案内された貨物扱い

スペースでは、タイから輸入され、ヤンゴンから混合列車で運ばれたと思われる即席麺がト

ラックに積まれているのを確認した。駅後背地は MR 所有の広大な用地が広がっており、ネ

ピドー遷都の 2007 年頃に将来計画が策定され、貨物ヤードのほか、客車基地などの建設が計

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画されたが、完成には至っていない。駅社員の案内で駅後背地を案内されたが、広大な用地は

周辺の農民が農耕を行うのに使われている。また、駅建物から 50m離れた場所では、使われ

ていない車両の留置線が 2 線存在している。

(a) ヤンゴンより到着した貨物 (b) 旅客車両留置線(駅側)

(c) 使用されていない留置線 (d) 後方の柵が MR 用地境界

出典:JICA 調査団 図 5.15.5 ネピドー駅の現状

4) タージィー駅(492.5km)

Shwenyang および Myingyan 方面への入換駅、また機関車の基地もある要衝である。

ヤンゴン方の専用ホームにて有蓋車によるミャンマー軍向け食糧を、また、マンダレー方では

MPPE(Myanmar Petrol Product Enterprise)の燃料を取り卸している。

駅建物の反対側に留置線が 9 線あるが、そのうち 6 線に検査待ちの車両が留置してある。

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(a) 検査待ち車両の留置 (b) 燃料の取り卸し箇所

出典:JICA 調査団 図 5.15.6 タージィー駅の現状

(2) マンダレー地区

マンダレー地区では現在は、ミョウハウン駅が貨物取り扱いの拠点である。また、国際海上コ

ンテナの鉄道輸送実証実験を実施したパッレ駅、MR が計画しているドライポートの工事現場

であるミィンゲ駅も調査した。

1) パッレ駅(602.0km)

元々は材木の出荷地で、駅構内から分岐して材木荷役線が 3 線あるが、現在は材木の鉄道輸送

は行われていない。構内は森林局の材木集積場として使われている。

ミィンゲドライポートの開業までの間、KLN および RGL によりヤンゴン(ワダン)~パッレ

間で国際海上コンテナ列車の暫定輸送を行っており、現在の留置線のうちの外側の線にてコン

テナの積みおろしを行っている。暫定ホームは砂利敷の簡易なものであり、雨季においても、

ヤンゴンなどの南部と違い、降雨量は多くないので排水状況に問題はみられなかった。

(a) 暫定コンテナ積みおろしホーム (b) 材木集積場

出典:JICA 調査団 図 5.15.7 パッレ駅の現状

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2) ミィンゲ駅(607.0km)

2017 年 4 月 3 日に MR と KLN、RGL(以下「コンセッショネア」)はドライポートの整備につ

いて契約を締結した。2017 年 5 月の渡航では、ドライポート工事現場の調査に加え、KLN にお

いて、ミャンマーを含むグレーターメコン地域を管轄しているバンコクオフィスも訪問した。

ミィンゲドライポート整備計画の概要は以下の通り。

KLN 開発区域は面積 42,674 エーカー(約 17 ヘクタール)

契約期間は締結から 50 年であるが、 長で 70 年まで延長可能。

MR はコンセッショネアに契約期間中土地をリースする。

ドライポート内の構造物の建設、ドライポートの運営はコンセッショネアが実施する。

MR は本線からドライポート境界までの線路の接続を実施する。

事業承認がすでに下りており、2 年以内にはドライポートとして完全に事業を始めなけ

ればならない。

両社の締結によると、ミィンゲドライポートの半径 50 キロメートル以内には、新たな

ドライポートを整備できないことになっている(例外として、他省庁の管轄地での整備、

また、取扱量が 400,000TEU に達した場合はその限りでない)。

また、2017 年 8 月の渡航におけるドライポート整備の状況は以下の通り。

KLN 開発区域、RGL 開発区域とも、アクセス道路含め整地がほぼ終了している。

ドライポート内の線路基面の位置が示されている。

ドライポートとの接続線路については、MR が施工することとなっており、軌道中心線

の位置が確定しており、工事費の積算も終わっている。

軌道工事は 2017 年中に完了し、パッレ駅からの暫定輸送を終わらせて、ミィンゲ駅か

らの輸送を 2018 年 4 月には開始したい意向。

(a) KLN 開発区域 (b) アクセス道路

出典:JICA 調査団

図 5.15.8 ミィンゲドライポート工事進捗

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3) ミョウハウン駅(616.0km)

現地調査によると、ミョウハウン駅での貨物取り扱いは、行先別に 3 つの区域で行われている

(区域の番号は便宜的に付与)。駅構内の 3 区域の位置について図 5.15.9 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.15.9 ミョウハウン駅構内荷役区域詳細

第 1 区域: ミョウハウン駅~ヤンゴン地区相互の貨物を取り扱う。荷役線が3線あり、

30 両収納可能な線が 1 線、16 両収納可能な線が 2 線である。飼料、塩、

袋麺、食用油の荷役が確認できた。

第 2 区域: ヤンゴンからの貨物をミッチーナー方面に積み替える。荷役線が2線あり、

それぞれ 30 両収納可能。砂糖の荷役が確認できた。砂糖はミッチーナー

経由で中国に輸出している。

第 3 区域: ミョウハウン~ミッチーナー相互間の貨物を取り扱う。荷役線が2線あり、

それぞれ 12 両収容可能。セメント、鉄筋の荷役が確認できた。

駅構内には、コンテナの積み下ろしが可能な中国製の門型クレーンが設置されているが、現在

はコンテナの取り扱いがないため、客車および貨車の検修時、車体を持ち上げるために使用し

ているほか、一部軌道材料の取り卸しも行っている。

To Yangon

To Mandalay To

Las

iho

2nd area

1st area

3rd area

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(a) 第 1 区域での貨物の荷役 (b) コンテナクレーン

出典:JICA 調査団

図 5.15.10 ミョウハウン駅の現状

なお、マンダレー市中心部での大型トラックの乗り入れ制限があるため、ミョウハウン駅での

コンテナの取卸しによる荷役は現在難しい。

5.15.3 鉄道貨物輸送設備整備に対する提言

調査の結果、貨物鉄道輸送近代化のために、以下にあげる運転形態(軍用等を除く)に対応し

た設備の整備を提言し、MR と協議したうえで策定した整備計画案について記載する。

(1) ヤンゴン~マンダレー間急行貨物列車

現在のミャンマーの鉄道貨物輸送の主要区間は、ヤンゴン地区~マンダレー地区であり、貨物

量はヤンゴン発のほうが圧倒的に多い。ヤンゴン(サトサン駅)~マンダレー(ミョウハウン

駅)間では、割増料金を収受する直行急行貨物列車も運行している。提言は、ヤンゴン地区~

ミョウハウン間の急行貨物列車を増発して、途中主要駅(バゴー駅、タウングー駅、ネピドー

地区、タージィー駅)に停車し、貨車の入換を行わずに列車単位で各駅にて荷役する主要駅停

車の急行貨物列車(以下「急行貨物列車」)を運行する。途中各駅では、荷役線に着発機能を

有した設備の整備を行う。本事業の整備計画は以下の通り。

出典:JICA 調査団,JR 貨物

図 5.15.11 着発線荷役の例(土浦駅:日本)

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

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1) ネピドー地区

ネピドー地区においては、現在は貨物鉄道輸送の需要が多くないものの、国家政策によるイン

フラ整備に伴い、建設資材輸送(コンクリート用骨材、鉄筋、道路建設材料など)の需要が見

込まれる。今回、ネピドー地区では、ピンマナ、ユァード、ネピドーの 3 駅が貨物輸送拠点に

適するかどうか現地調査を実施した。貨物輸送拠点の選定には、将来のコンテナ(小型、大型)

による輸送も視野に入れる。

a) ピンマナ駅

駅東側の留置線群を撤去すれば荷役ホームに十分な幅を確保することができるが、駅東側は商

店や住居が集中しており、道路も一様に直線ではないため大型トラックの出入りには不適で

ある。

(a) マンダレー方向 (b) ヤンゴン方向

出典:JICA 調査団

図 5.15.12 ピンマナ駅裏

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b) ユァード駅

駅西側の高規格道路間のスペースが荷役ホームに適する。 も外側の留置線を副本線として荷

役ホーム(20m 幅で延長 300m)を建設し道路の間にアクセス道路を整備することで貨物取り

扱いを可能とする。

(a) 荷役ホーム整備箇所 (b) アクセス部分

(c) 荷役ホーム整備計画

出典:JICA 調査団 図 5.15.13 ユァード駅整備計画

c) ネピドー駅

MR 所有の駅後背地を活用し、構内の連動装置の改修を必要としない範囲で、副本線を用いた

荷役ホーム(20m 幅で延長 300m)を建設する計画も検討したが、2017 年 7 月の現地調査の結

果、以下のことがわかった。

留置線が 3 線あるが、ネピドー発着の旅客列車の留置に使われており、有効長も 120m~180mと貨物列車の着発には不適である。

駅から 50m離れている休止中の留置線を貨物ホームとして整備するためには、周辺の

盛土を含めた整地工事、アクセス道路の整備(約 2km)が必要となる。

想定されるネピドー地区の貨物需要は、将来(2030 年)においてもタージィー地区の

約 40%と多くない。

そのため、今の時点でのネピドー駅の整備は望ましくないと考える。

To Yangon To Mandalay

Road Freight Platform 20m

300m

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

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調査団は、ii) のユァード駅の整備を MR に提案し合意を得たため、ネピドー地区の貨物取扱

駅はユァード駅とすることとした。

2) タージィー駅

周辺は酪農、果実といった農産物を産出するところ

であり、大消費地であるヤンゴンへの鉄道へのシフ

トによる輸送時間の短縮のほか、冷蔵コンテナ等の

導入による低温輸送が期待できる。

出典:JICA 調査団

図 5.15.14 タージィー地区の西瓜

駅の改良は、駅東側の留置線群の 5 線を撤去し(支線区への入換、燃料輸送基地、車両基地へ

の検査待ち車両留置機能は確保)、荷役ホームを建設することにより、貨物取扱量を大幅に増

やすことが可能となる。調査団は、本提言に関して MR と合意した。大型車両の乗り入れ、

将来のコンテナを取扱いのため、現在 4m 幅の道路の拡幅等、周辺環境の整備が必要である。

これについては、引き続き MR と協議を行う。

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(a) 荷役ホーム整備箇所 (b) アクセス道路

(c) 荷役ホーム整備計画

出典:JICA 調査団 図 5.15.15 タージィー駅整備計画

3) マンダレー地区

a) ミョウハウン駅

ミョウハウン駅は、マンダレー地区での一般貨物の鉄道輸送拠点であり、ミッチーナーならび

に中国向け貨物の中継地点でもある。貨物取扱設備の整備について以下に記すが、整備には

DEMU デポの整備計画、ならびに、ミョウハウン駅周辺の CBD 計画との調整も必要となる。

荷役線 4 線(線路長 400m~500m)

第 1 区域と第 2 区域を集約する(第 3 区域で扱っている軍用貨物は対象外)。 現在、第 1 区域にある高床ホーム(荷役線 2 線)はそのままとする。

4m Enlargement

Track remove and Platform pavement

To Yangon

To MandalayCarriage Shed Loco Shed

Goods Yard MPPE

Freight Platform

Access Road

300m

20m

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

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北側に平面ホーム(荷役線 2 線)を新設し、既存ホームとの間を舗装する、なお、

この荷役線 2 線には着発線機能を持たせる。

入換留置線 4 線(線路長 400m)

DEMU 基地まで車両の検査のための車両一時留置機能を持たせる。 ヤンゴンなど南部~ミッチーナーなど北部への中継車両の車両一時留置機能を持

たせる。

着発授受線 3 線(線路長 400m)

列車の到着、出発機能を持たせる。

出典:JICA 調査団

図 5.15.16 ミョウハウン駅整備計画 (1)

(a) 既設荷役ホーム (b) 舗装予定場所

出典:JICA 調査団

図 5.15.17 ミョウハウン駅整備計画 (2)

DEMU Depot

2 Shunting tracks

5m

10m

3 Reception tracks (W 12 m x L 400 m)

4 Marshalling and storage lines (W 16 m x L 400 m)

4 Loading / Unloading tracks (2 Existing, 2 New) (W 50 m x L 400-500 m)

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ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

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b) パッレ駅

パッレ駅では、以前木材の荷役に利用していた駅西側のエリアが広大であり、将来のマンダ

レー地区の鉄道貨物輸送の増大に備え、本線から木材荷役線への分岐を残しておく。

4) 急行貨物列車に関するまとめ

貨物列車のスピードアップには、本計画による従来貨車を高速化に対応した台車等の改良で一

般貨物列車として運行し、将来は JR の 12ft コンテナなどの小型コンテナにシフトすべく、そ

れに適合した貨車を導入すべきである。各駅では、荷役ホームの舗装に加え、夜間での荷役が

可能にできるような構内照明の新設、人手での荷役を機械化するための 2t フォークリフトの

配置、ならびに、貨物扱い社員のための事務所建物の建築を実施する。

(2) 直行石油列車

将来の石油製品の需要に備え、ミィンゲ川(エーヤワディー川支流)の水運と併用して、マン

ダレー地区に石油基地を整備しティラワ港からの直行石油専用列車を運行することを提案す

る。ただし、現時点では石油基地の具体的な整備計画はないことから、本プロジェクトでは、

駅配線等において特別な配慮はしないこととする。

(3) 国際海上コンテナ列車

現在、ミィンゲ駅のドライポート整備現場では 2018 年 4 月の開業を目指して整地が行われて

いる。それまでの間、2017 年 8 月より KLN および RGL はヤンゴン(ワダン駅)~パッレ駅

間でコンテナ列車の暫定運行を開始した。暫定運行の概要は以下の通り。

ビジネスモデルは、発荷主先から貨物を引き取り、着荷主元まで貨物を配達する「ドア

ツードアサービス」

当初は 1 列車あたりコンテナ貨車 11 両(40ft コンテナ 11 個、20ft コンテナ 22 個)で、

週 1 往復輸送する。

輸送するコンテナは 8ft 6in のコンテナに限る(ハイキューブ不可)。

1 両あたり 大積載重量はコンテナ自重込みで 32t、すなわち、1 コンテナあたり貨物

重量は 20ft コンテナ 13t、40ft コンテナ 28t。

鉄道輸送時間は 24 時間以内。金曜日の 6:00~18:00 にワダン駅で列車に積載、金曜日

の夜間にパッレ駅まで輸送、パッレ駅では日曜日及び月曜日のうちにヤンゴンからのコ

ンテナの取り卸しとマンダレーからのコンテナの積み込み(空コンテナの返送含む)

を行う。

帰りの列車は一旦、ミョウハウン駅まで運行して、火曜日にヤンゴン方面の列車として

折り返す。

暫定運行開始後、両駅での荷役状況ならびに列車の運行状況を調査したところ以下のことが判

明した。

荷役ホームは両駅とも簡易なものとなっている、ワダン駅は一部に既設の簡易舗装、

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

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パッレ駅は砂利敷となっている。貨車からトレーラへの積みおろしはクレーン車でワイ

ヤを引っかける方式としている。

両駅で荷役の実態を調査する予定であったが、実際は、ワダン駅では金曜日の 20:00~22:00 に貨車への積み込み作業を行っているらしく、作業に立ち会うことができな

かった。

ピンマナ駅で国際海上コンテナを積載する列車(パッレ駅)を確認したが、コンテナ

専用列車ではなく、一般貨車も併結していて、貨車の解放作業も行っていた。

(a) コンテナ積み下ろし荷役に使用する クレーン(ワダン駅)

(b) 停車中の国際海上コンテナ(ピンマナ駅)

出典:JICA 調査団

図 5.15.18 海上コンテナ暫定輸送状況

KLN は工業製品、輸入貨物およびマンダレー地区の大理石の輸出を中心に鉄道を利用する計

画があり、1 列車あたり 22 両で運行することを目指している。そのため、本事業においては、

マンダレー地区の海上コンテナ取扱拠点をミィンゲ駅ととらえ、貨物鉄道輸送設備の整備対象

には含めないこととする。KLN および RGL によるミィンゲ駅発着のコンテナ列車は、当初の

週 1 便 11 両から 大 22 両の列車の運行本数が増加する計画となっているので、本計画のス

コープは、隣接する車両工場のための入換を含め、ミィンゲ駅にて効率的な列車運行が入区で

きるように、配線および信号の計画を立てるところまでとする。

(4) 本事業における貨物設備整備計画(まとめ)

本事業における貨物設備整備計画と整備上の留意点を各駅について整理する。

1) ユァード駅

整備内容

プラットホーム舗装工事(20m×300m)、隣接道路とのアクセス道路、排水設備、照明

設備工事、貨物係事務所建物工事、2t フォークリフト配置(1 台)

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

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整備上の留意点

工事時期は現在の外側留置線が副本線化された後になる。工事期間中の貨物の荷役は、

頻度が少ないとはいえ軍関連物資が主となっていることから、工事区域を分割して施

工することが望ましい。

2) タージィー駅

整備内容

プラットホーム舗装工事(20m×300m)、アクセス道路の拡幅工事、排水設備、既設留

置線の撤去工事(5 線)、照明設備工事、貨物係事務所建物工事、2t フォークリフト配

置(1 台)

整備上の留意点

5 線を撤去することによる影響(支線区への入換、燃料輸送基地、車両基地への検査待

ち車両留置機能は確保)について明らかにしておく必要がある。また、夜間の荷役作

業を行う場合、ならびにアクセス道路の整備には、周辺住民の理解が必要となる。そ

のため、タージィー駅の貨物設備整備については、MR 関係者と十分に打ち合わせたう

えで施工する。

3) ミョウハウン駅

整備内容(線路設備工事については構内改良計画にて実施)

プラットホーム舗装工事(20m×400m)、排水設備、照明設備工事、貨物係事務所建物

工事、2t フォークリフト配置(2 台)

整備上の留意点

大規模な構内改良工事を行うため、線路切替を数回実施することになると思われる。 その過程で、従来の第 1 および第 2 区域の貨物荷役設備を一時使用停止すること、また

貨車の検査修繕も停止する期間が生じるため、代替措置を講じる必要がある。例えば、

貨物荷役設備については、仮設の荷役箇所を駅構内に整備するか、周辺駅において暫定

的に貨物取り扱いを行う(例えば、パッレ駅の暫定コンテナホーム、可能であればミィ

ンゲドライポート)。また、貨車の検査修繕は、タージィー、タウングー等の他所にお

いて行う。

以上の留意点について MR 関係者と十分に打ち合わせたうえで、現在の MR の貨物輸送への

影響を可能な限り小さくすることとする。

その他、各駅の構内改良における信号通信設備、電力設備、駅本屋建物改築工事について貨物

設備に関連する工事を抽出して各工事の関係者と調整する必要がある。事業費が確定したこと

で、詳細設計では貨物設備の整備についての調整を MR 等貨物輸送を専門とする担当と精力

的に行うことが重要である。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-225

5.16 電力供給

本プロジェクトでは、ヤンゴン・マンダレー鉄道の鉄道改良・近代化工事に必要な電力を供給

するための給電設備新設を行う。フェーズ 2 では、タウングー~マンダレー間の信号通信設備

に電力を供給するための給電設備の改良、ネピドー駅付近・ミョウハウン駅貨物ヤードの車両

基地新設に伴う基地用給電設備新設を行う。

5.16.1 電力供給の現状

(1) 56 駅および駅間重要踏切の電源設備調査

タウングー~マンダレー間の 56 駅について、現在の受電設備の状況について調査を行った。

この区間の電源は、Electricity Supply Enterprise(ESE)、Mandalay Electricity Supply Corporation (MESC)の 2 社の電力会社の管轄範囲となる。

フェーズⅠ対象駅のタウングーを除く各駅の受電設備を表 5.16.1 に示す。高圧受電の駅は 7駅、低圧受電の駅が 36 駅、非電化の駅が 12 駅あることが分かった。

信号および踏切設備の現状を図 5.16.1 に示す。

信号電源に商用電源を使用している駅は、信号扱所(現地呼称「タワー」)を持つピンマナ、

ネピドー、タージィー、マンダレーの 4 駅のみである。

その他の駅では、信号の電源は駅舎内にある信号機器の手回しハンドルで発電した電源で腕木

を持ち上げ、カーバッテリーの電力で腕木の位置を保持している。商用電源はカーバッテリー

の充電のほか、照明、ポンプ等に使用している。

商用電源を確保できない駅には、カーバッテリー充電用の太陽光パネルを設置している。カー

バッテリーは、持ち上がった信号の腕木の保持用電源と通信機器電源として使用されている。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-226

表 5.16.1 各駅の受電設備

単相 三相

1 タウングー - - - - - フェーズ1にて調査

2 チェードー *

3 キュンゴン *

4 キェトゥマディ

5 ユェダーシェー *

6 コンギィー *

7 ソァ * *

8 ターガヤ *

9 ターヤーゴン

10 ミョラ *

11 イェニ *

12 タァーウーティ *

13 ティンイン

14 エラ *

15 プィーウン

16 ピンマナ * * * * 高圧(11kV)

17 ユァード *

18 ネピドー * * * * 高圧(11kV)、変電所(33kV)

19 キィーダゥンカン *

20 ピッォコン *

21 シンビュチョン *

22 シュエーミョン * *

23 シンテェ *

24 タッコン *

25 マギィービン *

26 ニャウロン * *

27 ネェッタイ *

28 インゴン *

29 ヤメティン *

30 インギィガン *

太陽光パネル

No.

負荷の相

信号設備 発電機 備考駅名

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-227

出典:JICA 調査団

単相 三相

31 シュウエダー *

32 ピョービェー *

33 シャンユア

34 ニャウヤン *

35 ナトォー *

36 タージィー * * * * 高圧(11kV)

37 ユァパレ *

38 ハンザ *

39 ダハットー

40 テェドー * *

41 キンバン *

42 サモン * *

43 オウトッコン

44 タビュータウン

45 クメラン * *

46 ミッター *

47 ミンズ *

48 キョッセ *

49 ビェリン * 高圧(11kV)

50 シンガィー * *

51 パッレ * *

52 ミィンゲ * * * 変電所 (33kV)

53 タグンダイー * *

54 ミョウハウン * * * * 高圧 (11kV)55 シャンズ56 マンダレー * * * * 高圧 (11kV)

No. 駅名

負荷の相

信号設備 発電機太陽光パネル

備考

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5-228

(a) 駅高圧受電設備 (b) 信号扱所(タワー)

(c) 信号機器の手回発電機とカーバッテリー (d) 腕木式信号機

(e) 太陽光発電装置 (f) 踏切の信号現示の状況

出典:JICA 調査団 図 5.16.1 信号および踏切設備の現状

踏切では、原則として踏切警手の目視により列車の接近を確認し、手動でゲートを閉じ、手旗

により進行現示を行っている。補助手段として、駅からの無線により列車の接近を知らせる場

合もある。付近より低圧電源を受電できる踏切では、無線機は低圧商用電源により充電する。

付近に電源が存在しない踏切では、他の場所で充電した交換用バッテリーを持ち込んで使用

する。

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5-229

現在、MR 所有の変電所から受電しているネピドー駅について、その電源系統略図を図 5.16.2に示す。ネピドー駅は、駅部の負荷は ESE 11 kV の系統、車両基地部の負荷は ESE 33 kV の系

統より受電している。

(a) 駅部の電源系統略図

(b) 車両基地部の電源系統略図 出典:JICA 調査団

図 5.16.2 ネピドー駅の電源系統略図

EG

中央指令所 信号扱所 東部信号機器室 西部信号機器室

315 kVA

ESE 11 kV

事務室(南部) (ブロック C, D, E) 中央指令所 信号扱所 東部信号機器室

500 kVA 11 / 0.4kV 11 / 0.4kV

事務所(北部) (ブロック A, B)

西部信号機器室

ESE 33 kV

機関庫

5,000 kVA 33 / 11 kV

新車両製造工場

(中国のローンにより建設中)

制御機器

11 / 0.4 kV

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5-230

(2) 車両基地の電源設備調査

車両基地の電源設備の現状について、表 5.16.2 に示す。この中で、車両基地の増設を計画し

ているネピドー駅とミョウハウン駅について記載する。

表 5.16.2 各車両基地の受電設備

出典:JICA 調査団

1) ネピドー駅

図 5.16.3 にネピドー車両基地の電源設備の現状を示す。車両基地(機関庫)の電源は、ネピ

ドー駅に併設した MR の 33 kV の変電所より約 2 km 離れた箇所まで 11 kV の送電線によって

供給されている。

非常用発電機が併設されているが、現在は故障して動作しなくなっている。

出典:JICA 調査団

図 5.16.3 ネピドー車両基地の電源設備

ネピドー駅には、まだ稼働していないが、このほか中国のローンにより建設中の車両製造工場

がある。図 5.16.4 にネピドー車両製造工場の建設状況を示す。この電源は、ネピドー駅に併

設した MR の 33 kV の変電所より約 2.5 km 離れた箇所まで 11 kV の送電線によって供給され

る。この送電線は、車両基地とは別の回線で新設されている。

単相 三相

1 ネピドー (機関庫) * * (*) 高圧 (11kV)、非常用発電機故障中

2 タージィー * * * 高圧 (11kV)3 ミィンゲ * * * 変電所 (33kV)4 ミョウハウン * * * 高圧 (11kV)

負荷の相

信号設備 発電機 備考No. 駅名太陽光パネル

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5-231

出典:JICA 調査団

図 5.16.4 ネピドー車両製造工場(建設中)

ネピドー駅に併設されている 33 kV 変電所の 5,000 kVA の変圧器は、これらの車両基地、車両

製造工場に電源を供給する。その容量に余裕はない。電力会社の規則上、すでに変電所が存在

する構内には、別系統の電源による変電所を併設することはできない。したがって、今後ネピ

ドー駅に車両基地の電源を増設するためには、既設の変電所を改良する必要がある。

2) ミョウハウン駅

図 5.16.5 にミョウハウン駅の電源設備の現状を示す。ミョウハウン駅の電源は、市中から

11 kV の送電線を MR 敷地内に引込み、変圧器を接続して供給している。変電所は設置されて

いない。

(a) 通信用変圧器 (b) 貨物ヤード用変圧器 (c) まくらぎ工場用変圧器

出典:JICA 調査団

図 5.16.5 ミョウハウン駅の電源設備

5.16.2 電力供給設備の改良計画

(1) 概要

現在、ミャンマーでは日常的に停電が発生しており、長時間電源が復帰しないことも頻繁にあ

る。また、電圧は不安定で、重負荷の時間帯には、標準電圧の半分程度まで落ち込む場合もあ

る。信号電源に許容される電圧変動率は、±10%である。

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5-232

このような電源事情に対して、以下のような対策を行う。

比較的電圧が安定している高圧受電を行う。

負荷点における電圧変動を抑えるため、駅にはオンロードタップチェンジャー(OLTC)搭載の 3 相 4 線式変圧器を使用する。OLTC は変圧器の巻線比を自動的に変更すること

により、電圧を調整する。ただし、OLTC は毎年メンテナンスが必要なため、供給範囲

と負荷種別をよく検討し、 適な箇所の変圧器に設置しなければならない。例えば、車

両基地に設置する大きな変電所の特別高圧の主変圧器などには適さない。その場合は、

下位に設置する変圧器それぞれに OLTC を設置したほうが、電圧が低く安価となり、ま

た停電時の影響範囲が小さくなる。

また、踏切においては負荷の容量が小さいため、OLTC 付変圧器は使用に適さない。こ

のため、OLTC のついていない変圧器(便宜上、ノンオンロードタップチェンジャー: NLTC と呼ぶ)に自動電圧調整器(AVR)を使用する。

なお、AVR よりも OLTC を優先とした理由は、OLTC で電圧を調整したほうが変圧器 2次側の電流値を小さくできるからである。その結果、変圧器容量が小さくなり、消費電

力のロスも小さくなる。

停電及び激しい電圧降下時に備え、予備系として非常用発電機(EG)を設置する。EGは使用頻度が多くなることが想定される。信号設備の電源が喪失すると、安全安定輸送

に大きな影響を及ぼす。EG には様々な製品があるが、安価で故障しやすい製品ではな

く、高品質な製品を選ぶことが重要である。

ミャンマー国内における受電計画においては、以下の方針で電力系統への接続方法を計画する。

ESE および MESC 管内では、1,000 kVA 未満の容量の負荷設備については、変圧器を

11 kV の送電線に接続して受電することを基本とする。ただし、負荷点の近傍に 11 kVの送電線がない場合、33 kV の受電設備を設置する。

今回の計画に該当する変圧器はないが、変圧器容量が 500 kVA 以上の場合、開閉器と

保護装置が必要である。

駅の負荷では稀だが、1,000 kVA を超える変圧器容量の場合、受電電圧は 33 kV 以上と

しなければならない。

変圧器の設置方法については、300 kVA までは柱上変圧器、300 kVA を超えるものは地

上変圧器とすることを原則とする。

ミャンマー国内においては、現在電力公社の電源設備は日々改良が進んでいる。電源の

調査においては、現状設備の確認だけでなく、近い将来における電力公社の改良計画も

確認する。

複数の電源がある箇所については、複数の電源候補を調査する。その際は計画 1 を優先

として、計画に優先順位に応じた番号を付与する。電力公社の将来計画については、今

後の詳細設計の段階でも再確認が必要である。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-233

ミャンマー国内では、電力公社の送電線と需要家の間に設置する送電線は、需要家が所

有することとなっている。場所により、駅の電源の接続先には、村や企業等が所有する

プライベートな送電線に接続を計画しなくてはならない。この場合、その送電線の所有

者に使用料を支払わなければならない場合がある。また、軍や政府機関が所有する送電

線については、原則として外部の電源は接続しないものとされている。電源計画におい

ては、送電線の所有者も考慮しなくてはならない。

電力会社から需要点までの架空送電線には、従来は裸電線である鋼芯アルミより線

(Aluminium Conductors Steel Reinforced: ACSR)が使用されていた。しかし、近年ミャ

ンマー国内では、ヤンゴン地区を中心に、新設する送電線には SAC ケーブル(Spaced Aerial Cable: SAC)という製品を使用するよう指導されている。この方針は、今後ヤン

ゴン地区以外にも展開されることが想定される。

SAC ケーブルは表面を被服で覆われており、樹木や凧などの飛来物に接触しても短絡

しにくいことから、公衆の安全確保および信号電源の安定供給に大きく貢献する。この

ため、ヤンゴン地区に限らず、全線で SAC ケーブルの使用が推奨される。

(2) 50 駅および駅間重要踏切の電源設備

タウングー・マンダレー間にある駅のうち、5 駅は本プロジェクトにて廃止する計画である。

本プロジェクトでは、フェーズⅠで改良するタウングー駅を除いた残りの 50 駅および駅間踏

切(交通量の多い踏切に限る。また、近傍駅の遠方信号機と場内信号機の間に存在している踏

切については、駅から受電するため、除く)に対して、安定した電力を供給するための給電設

備を設置する。この給電設備は、高圧受電設備、変電設備、予備系非常用発電機により構成さ

れる。電源については、各駅ならびに踏切周辺における電力公社の電源事情に適した設備を検

討する。

各 50 駅の電源設備の案を図 5.16.6 に示す。中央指令所(OCC)がある駅については、OCC 専

用の回線を引いて供給する。

駅の電源は、信号機器室内に配電盤を設置して供給する。通信用の回線については、通信機器

室用と駅務室用の 2 回線を配電盤内に提供する。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-234

出典:JICA 調査団

図 5.16.6 50 駅の電源構成

駅間踏切の電源構成を図 5.16.7 に示す。

駅間踏切も 50 駅と同様に商用電源と発電機の 2 系統からの受電を計画する。踏切警手の小屋

の照明、無線機の充電用コンセントも施工する。

出典:JICA 調査団

図 5.16.7 駅間踏切の電源構成

1) 受電設備

電気事業者の送電線から各駅までの接続距離と新設変圧器の容量及び負荷容量について表 5.16.3 に示す。各箇所の変圧器容量については概算値であり、各系統により精査後、詳細設計

において決定される。

ピンマナ駅、ネピドー駅、タージィー駅については、既設の電力会社からの引込送電線の電流

容量が足らないため、改良する必要がある。具体的な改良方法については、詳細設計で検討

する。

変圧器

(OLTC)

11 or 33 kV (3φ3W)

→ 400V /230V (3φ4W)

EG

400V/230V(3φ4W)

信号機器

空調装置

照明

通信装置

変圧器 (OLTC)

11 or 33 kV (3φ3W)

→ 400V /230V (3φ4W)

EG

400V/230V (3φ4W)

信号機器

照明

通信装置

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-235

電気事業者との協議により、2017 年時点で把握できる 善の方法を計画した。しかし、現時

点ではまだ電気事業者の送電線までの距離が長い箇所が残っている。これらの箇所については、

今後も電気事業者の将来計画を確認し、可能であれば、極力近い送電線に接続するよう計画す

る。プライベートの送電線についても、可能であれば電気事業者に接続するよう計画する。

なお、駅間踏切については、使用電力量が少ないことから、コスト面で太陽光発電が有利とな

る可能性がある。本準備調査においては、送電線による供給を前提に結果をまとめることとし、

太陽光発電の可否については詳細設計において比較検討する。

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5-236

表 5.16.3 各駅の接続距離及び変圧器

11 [kV] 33 [kV]

1 タウングー フェーズ1にて調査

1-1 踏切 No.6 (5) * 柱上 30 *1

1-2 踏切 No.7 (5) * 柱上 20 *1

2 チェードー * 柱上 350 *2

3 キュンゴン * 柱上 300 *2

4 キェトゥマディ 廃止予定

5 ユェダーシェー * 柱上 300 *2

5-1 踏切 No.16 (5) * 柱上 20 *1 プライベートの高圧線

6 コンギィー * 柱上 20 *2

7 ソァ * 柱上 20 *2

8 ターガヤ * 柱上 500 *2

9 ターヤーゴン 廃止予定

10 ミョラ * 柱上 50 *2

11 イェニ * 柱上 700 *2

12 タァーウーティ * 柱上 400 *2

12-1 踏切 No.26 (5) * 柱上 20 *1

13 ティンイン 廃止予定

13-1 踏切 No.28 (5) * 柱上 20 *1 プライベートの高圧線

14 エラ * 柱上 100 *2

15 プィーウン * 柱上 1,000 *2 プライベートの高圧線

* 柱上 500 50 MSH* 柱上 300 50 SSH

16-1 踏切 No.36 (5) * 柱上 50 *116-2 踏切 No.38 (5) * 柱上 1,000 *1 プライベートの高圧線

17 ユァード * 柱上 350 *2 プライベートの高圧線

* 柱上 50 200 TMS, MSH, SSH1* 柱上 600 50 SSH2

19 キィーダゥンカン * 柱上 20 *219-1 踏切 No.43 (5) * 柱上 20 *120 ピッォコン * 柱上 150 *2 プライベートの高圧線

21 シンビュチョン * 柱上 1,000 *2 プライベートの高圧線

22 シュエーミョン * 柱上 20 *223 シンテェ * 柱上 50 *224 タッコン * 柱上 300 *2 私有地

25 マギィービン * 柱上 1,000 *2 将来計画

25-1 踏切 No.54 (5) * 柱上 500 *1 将来計画要確認

26 ニャウロン * 柱上 300 *227 ネェッタイ * 柱上 900 *2 建設中

28 インゴン * 柱上 1,000 *2 プライベートの高圧線

備考No. 駅名

高圧線との距離

[m]

変圧器の容量[kVA]

変圧器の設置方法

18 ネピドー

高圧線電圧

16 ピンマナ

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5-237

*1:踏切(約 5 - 25 kVA) *2:駅(約 100 - 160 kVA) *3:自動閉そくシステムへ電源供給を行う。負荷容量は検討中。

出典:JICA 調査団

11 [kV] 33 [kV]

29 ヤメティン * 柱上 300 *229-1 踏切 No.61 (5) * 柱上 1,000 *1 プライベートの高圧線

30 インギィガン * 柱上 2,000 *2 No. 29-1から受電

31 シュウエダー * 柱上 10 *2 プライベートの高圧線

31-1 踏切 No.62 (5) * 柱上 600 *1 農業デポの高圧線

32 ピョービェー * 柱上 150 *233 シャンユア * 柱上 5,000 *2 建設中(プライベート)

34 ニャウヤン * 柱上 300 *2 将来計画

35 ナトォー * 柱上 5,000 *2 将来計画

36 タージィー * 柱上 200 200 MSH, SSH37 ユァパレ * 柱上 2,000 *238 ハンザ * 柱上 250 *2 要電力公社設備改良

39 ダハットー 廃止予定

40 テェドー * 柱上 300 *241 キンバン * 柱上 500 *2 プライベートの高圧線

42 サモン * 柱上 50 *2 プライベートの高圧線

43 オウトッコン 廃止予定

44 タビュータウン * 柱上 2,000 *2 将来計画

45 クメラン * 柱上 300 *246 ミッター * 柱上 300 *247 ミンズ * 柱上 100 *248 キョッセ * 柱上 50 *249 ビェリン * 柱上 250 *250 シンガィー * 柱上 100 *2

50-1 踏切 No.23 (3) * 柱上 20 *1 プライベートの高圧線

51 パッレ * 柱上 150 *2 将来計画

52 ミィンゲ * 柱上 50 *253 タグンダイー * 柱上 200 *2

53-1 踏切 No.28 (3) * 柱上 100 *1* 柱上 500 200 MSH, *3* 柱上 300 200 SSH, *3

55 シャンズ * 柱上 300 *3 *355-1 踏切 No.35 (3) * 柱上 20 50 *3

* 柱上 30 300 TMS, MSH, *3* 柱上 100 200 SSH, *3

備考

54 ミョウハウン

56 マンダレー

No. 駅名

高圧線電圧

変圧器の設置方法

高圧線との距離

[m]

変圧器の容量[kVA]

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5-238

ネピドー駅の改良は現在 MR と協議中であるが、想定される 大として、中央指令所に TMSを入れ、信号の連動装置も改良するものと仮定した場合、改良後の電源系統略図は図 5.16.8のとおりとなる。なお、容量等の詳細については、今後精査が必要である。

(a) 駅部の電源系統略図(常用電源)

(b) 駅部の電源系統略図(非常用発電機)

出典:JICA 調査団

図 5.16.8 ネピドー駅の電源系統略図(改良後)

駅部の電源系統について、現時点における信号負荷改良に伴う電源の増強計画は、以下のとお

りである。なお、MR は信号機器室を一つに統一することを希望するなど、不確定要素も多い。

詳細については、今後 JICA 調査団と MR の間で協議される。

中央指令所(OCC) TMS を設置する。

MSH 信号扱所の機器室を改良し、MSH とする。

SSH1(東部信号機器室) 東側にある信号機器室を改良する。

SSH2(西部信号機器室) 西側にある信号機器室を改良する。

事務室(南側)

(ブロック C, D, E)

中央指令所

信号扱所

500 kVA 11 / 0.4 kV

315 kVA 11 / 0.4 kV

事務室 (北側)

(ブロック A, B)

200 kVA 11 / 0.4 kV

中央指令所 (TMS)

MSH

SSH1

(東部信号機器室)

50 kVA 11 / 0.4 kV

SSH2

(西部信号機器室)

200 kVA 11 / 0.4 kV

DEMU 車両基地

EG

SSH2

(西部信号機器室)

EG

中央指令所 (TMS)

MSH

SSH1

(東部信号機器室)

EG

DEMU 車両基地

EG

中央指令所

信号扱所

ESE 11kV ESE 11kV

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5-239

車両基地部においては、現時点で DEMU 車両基地新設に伴い、200 kVA 程度の電源供給を計

画している。11 kV 系統の受電地点より約 2 km の送電線を 1 回線増設し、車両基地の付近に

地上変圧器台を設置する。

なお、付近に別の ESE 11kV の送電線は存在するが、すでに同一構内に MR が所有する変電所

の電源が存在するため、新たに別系統の電源を混在させることはできない。

ミョーハウン駅からマンダレー駅までの信号装置については、自動閉そくを導入する計画であ

る。これらの駅間は 5 km 程度と短いことから、今回はフェーズⅠのような変電所と駅間の高

圧配電線は設置せず、個別の高圧変圧器により信号機器に電力を供給する。

2) 使用機器

機器については、以下の条件のものを計画する。

変圧器

三相 3 線式 11 kV または 33 kV で受電し、三相 4 線式 400 V(単相 230 V)を出力する。

電圧変動に備え、オンロードタップチェンジャーを備えるものとする。

EG

使用する EG の条件を表 5.16.4 に示す。

表 5.16.4 EG の条件

配電方式・出力電圧 三相 4 線式 400V(単相 230V) 起動時間 40 秒以内 連続運転時間 7 時間以上(給油なし) 無負荷時の電圧変動率 0.5%以内(三相発電機) 2%以内(単相発電機) 燃料 軽油 その他 停電自動検出機能付 切替時間調整可能 出典:JICA 調査団

進相コンデンサ

変圧器の 2 次側に自動力率調整機能を持った進相コンデンサを設置する。進相コンデ

ンサの容量は、変圧器の容量の 1/3 とする。

(3) 車両基地の電源設備新設

新設される車両基地の電源については、現在調査中である。現時点の計画について、表 5.16.5に車両基地の負荷容量と新設変圧器の容量を示す。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-240

表 5.16.5 車両基地負荷と変圧器容量概要

出典:JICA 調査団

(4) 施工区分

施工区分については、以下のようになる。

高圧配電線及び変圧器等の高圧設備の設計・施工は、このプロジェクトの請負者が実施

する。高圧設備はミャンマー国の電気事業者の設計指針に基づいて設計施工されるもの

とする。

変圧器の基礎とフェンスは、このプロジェクトの建築担当により施工される。なお、変

圧器の台座は地上から高さ 4 フィート(1.22 m)以上とする。これは雨季における水位

上昇によって、変圧器が水没することを防ぐためである。

EG は、このプロジェクトの建築担当が建てる信号機器室の中に設置する。これらは電

子機器を設置する部屋とは別の電源室に設置する。EG を設置するための基礎は、建築

担当が施工する。

配電盤、開閉器箱、WHM 盤、EG、EG 始動盤に接続する接地線はこのプロジェクトの

請負者が施工する。

(5) 関連する電力公社および電源接続箇所

タウングー~マンダレー間の電源供給箇所について、関連する電力公社を表 5.16.6 に示す。

この区間の電源は、Electricity Supply Enterprise(ESE)、Mandalay Electricity Supply Corporation (MESC)の 2 社の電力会社の管轄範囲となる。各公社の下には管区がある。管区の下にはタ

ウンシップエンジニアもしくはタウンエンジニアが配置され、電源供給の管理を行っている。

表 5.16.6 の箇所番号は、表 5.16.3 に示される番号と対応している。

フェーズⅠの詳細設計における教訓として、他分野と異なり、電力業務については政府機関と

の調整が必要であり、設計に時間を要することが課題であることを学んだ。フェーズⅠに比べ

フェーズⅡの詳細設計の期間は短いことから、詳細設計がスムーズに進むよう、本準備調査に

おいて、JICA 調査団および MR は現在の計画を電力公社のタウンシップエンジニアおよびタ

ウンエンジニアに説明し、各箇所の送電線に負荷を接続できることを確認した。

なお、電力会社の送電線接続箇所と各負荷の位置関係を Appendix5.16.1 に示す。

11 [kV] 33 [kV]

1 ネピドーDEMU車両基地 * 柱上 2,000 200

2 * 地上 500 400

3 * 地上 200 400

備考No. 駅名

高圧線との距離

[m]

変圧器の容量[kVA]

高圧線電圧

変圧器の設置方法

ミョウハウン新車両基地

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-241

表 5.16.6 関連する電力公社

5.17 駅・ターミナル開発計画

5.17.1 MR が構想する駅・ターミナル開発現計画

(1) 計画対象と現況

1) 概要

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業(以下本事業)において、鉄道利用者の増加を図るために、

利便性の向上策が重要であると認識されている。それは主要駅における駅前や鉄道網やバスと

の結節施設の開発を包含するものである。「地方都市開発計画整備にかかる情報収集・確認調

査」中の「マンダレー市新都市開発計画 2040」によれば、新中央業務地区(New Central Business District; CBD)開発計画がミョウハウン駅に近接して計画されている。当駅は新中央業務地区

の玄関として期待されている。

から まで

1-1 タウングー 1-1 2 31-2 キェトゥマディ 3 3 11-3 ユェダーシェー 5 6 31-4 ソァ 7 7 11-5 ターガヤ 8 8 11-6 ミョラ 10 10 11-7 イェニ 11 11 12-1 タァーウーティ 12 12-1 22-2 エラ 13-1 15 32-3 ピンマナ 16 16 12-4 ポバッティリ 16-1 21 82-5 タッコン 22 26 63-1 ヤメティン 27 31 63-2 ピョービェー 31-1 33 33-3 タージィー 34 38 53-4 ワントゥイン 40 42 33-5 クメ 43 44 23-6 ミッター 46 46 13-7 キョッセ 47 48 23-8 シンガィー 49 50 23-9 パレイク 50-1 51 2

3-10 アマラプラ 52 53-1 23-11 ピーチータックン 53 53 13-12 チャンミャーターシィ 54 55 23-13 マハーアウンミャイ 55-1 55-1 13-14 チャンアイタザン 56 56 1

MESC マンダレー

No. 電力公社 管区 備考

ESE バゴー

ネピドー

タウンシップ/タウンエンジニア

箇所番号箇所数

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-242

そのため本調査では、多数の利用者が見込まれるマンダレー駅及びミョウハウン駅の 2 駅を

駅・ターミナル開発の可能性がある駅と想定している。両駅はヤンゴンへ連絡する本線上に位

置し、その離隔はおよそ 5km である。格子状に街区形成されたマンダレー中心部において、

それらは王宮の南側に位置する。王宮内区間の休止に伴う代替経路の整備により、マンダレー

市の鉄道ネットワークは逆「C」の字となっている。マンダレー駅とミョウハウン駅の位置関

係を、図 5.17.1 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.1 マンダレーとミョウハウン両駅の位置関係

2) マンダレー駅

当駅の特徴、問題点、及び今後の変化の可能性は以下のとおりである。

<特徴>

特徴は以下のとおりである。

当駅はミャンマー北部の中心駅の機能を有する。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-243

大都市ヤンゴン、首都ネピドーと連絡する本線の優等列車の起終点である。同様に、

北部各都市を連絡するローカル列車の起終点でもある。そして両者を連絡する。 当駅は、機関車や客車のワークショップ、客貨混合ローカル列車の車扱機能等の基地

機能を、広大な用地に有する。 ホーム階上空に人工地盤(橋上デッキ)を有する複合駅ビル構造である。地平がホー

ム階、2 階が券売/コンコース階、3 階以上が駅務機能及びホテルとなっている。 ホーム階とコンコース階の間にエスカレーターが一部設置されている。駅東側の駅前

広場との連絡にはエレベーターの利用が可能である。 歩行者は無料、大型車を除く車両も有料で東西方向の通り抜けが 24 時間可能である。 橋上デッキに、自家用車やタクシーの乗降及び駐停車スペースが整備されている。 駅東側駅前広場では大型車の発着が可能である。 駅西側に駅前広場は整備されていない。

<問題点>

バリアフリーの観点で、以下に示すいくつかの課題が散見される。

プラットホームが無い線路(#1)での旅客列車の発着がある。 駅西側と橋上デッキ間は、車路に沿って歩行可能であるが、車いすでの利用は困難で

ある。 駅東側に発着する路線バスの乗客は、路上で乗降している。

<今後の変化の可能性>

今後の変化の可能性は以下のとおりである。

主として列車組成の変化により、遊休地が発生する可能性が高い。 MR が民間事業者に貸している土地も含め、商業・業務利用の開発ポテンシャルが高

くなる。

現在の配線略図を図 5.17.2 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.2 マンダレー駅現況配線略図

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-244

3) ミョウハウン駅

当駅の特徴、問題点、及び今後の変化の可能性は以下のとおりである。

<特徴>

特徴は以下のとおりである。

当駅の主機能は貨物駅である。 当駅に停車する旅客列車は 8 往復/日、言い換えると 16 列車/日である。 当駅は地平駅で、西側に位置する駅本屋と東側との往来には構内の線路横断を伴う。 旅客の取扱は 3 線を使用し、うち 1 線にはプラットホームがない。 当駅を含むおよそ 4km の区間において、自動車交通の東西方向の線路横断が不可能

である。駅北側に位置する U Pwar Pagoda 近くの跨線橋(Land Thid Street)が 寄り

の道路である。

<問題点>

バリアフリーの観点で、以下に示すいくつかの課題が散見される。

駅東側からのアクセス経路が未整備である。 プラットホームの無い線路での客扱い、構内通路の不備が確認される。

<今後の変化の可能性>

今後の変化の可能性は以下のとおりである。

東側に一部鉄道用地も含んだ新中央業務地区(New Central Business District; CBD)開

発計画がある。当駅の利用者の増加のみならず、商業・業務利用の開発ポテンシャル

の向上も期待される。

現在の配線略図を図 5.17.3 に示す。

出典:JICA 調査団 図 5.17.3 ミョウハウン駅現況配線略図

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-245

(2) MR が構想する駅・ターミナル開発関連計画

1) マンダレー駅

MR 用地内、橋上駅舎北東側に位置する Hotel Amazing Mandalay の改築計画が進行中である。

2) ミョウハウン駅

MR が構想する計画は確認されなかった。

3) 本調査の方針

a) 方針

駅・ターミナル開発の留意点は、公共交通指向型開発(Transit Oriented Development; TOD)と

ユニバーサルデザインである。TOD は以下に示す経済的、財政的、社会的および環境的な便

益を産み出す。

人々の移動、サービスや活動へのアクセスを確実にする。 コンパクトで省エネルギーな都市空間形成を推進する。 駅およびその周辺での都市開発機会を増加させる。

ユニバーサルデザインは、子供、高齢者、移動制約者、妊婦、視力障がい者等、あらゆる属性

の乗客のアクセスを容易にするコンセプトである。代表的なユニバーサルデザインの施設は以

下のとおりである。

スロープやエレベーターによる、車椅子利用者の段差のないアクセス。 様々な世代や障がいの種類に対応する、階段に設置する 2 段手摺。 視覚障がい者の自動券売機等の利用を補助する点字表示や呼び鈴

本事業と駅・ターミナル開発の関係を図 5.17.4 に示す。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-246

出典:JICA 調査団

図 5.17.4 本事業と駅・ターミナル開発

また、都市サイド、鉄道サイド、および支援を時系列で整理したものを、表 5.17.1 に示す。

表 5.17.1 各項目の時系列整理

DL: Diesel Locomotive, PC; Passenger Car, FW; Freight Wagon 出典:JICA 調査団

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-247

計画は以下に示す項目を考慮する。

本事業は、ヤンゴンとマンダレー間の鉄道整備計画を主眼としたものであり、その実現

は喫緊の課題である。環境社会配慮をはじめとする諸手続きが、限定された予算や時間

の中で進行中である。

駅・ターミナル開発は、鉄道側と都市側の協働が必要となるが、現段階では都市側の計

画の成熟度が低い。

そのため本調査では、1)本事業で対象とするもの、2)長期間にわたって取り組むもの

の 2 つに大別して整理を行う。

b) マンダレー駅

将来の配線案略図を図 5.17.5 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.5 マンダレー駅将来配線案略図

本事業で対象とする候補を以下に示す。

駅西側と橋上デッキを連絡する歩行者動線の改善(既設階段と跨線通路の活用、エレ

ベーター新設等)

駅東側に発着する路線バス乗客の安全確保(駅前広場での停留所新設、運転台や扉の移

設等の既存車両の改良他)

将来的な駅整備イメージを図 5.17.6 に示す。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-248

出典:JICA 調査団

図 5.17.6 マンダレー駅整備イメージ図

c) ミョウハウン駅

将来の配線案略図を図 5.17.7 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.7 ミョウハウン駅将来配線案略図

本事業での対象とする候補を以下に示す。

プラットホームを有する#1 と#3 での旅客扱い

東側駅前広場新設

橋上駅舎化もしくはプラットホームや駅舎を連絡する構内跨線橋の新設

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5-249

橋上駅 地平駅舎+構内跨線橋

ミョウハウン駅の旅客扱いの現況を図 5.17.8 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.8 ミョウハウン駅旅客扱い現況図

改良計画の候補となる、橋上駅、および「地平駅舎+構内跨線橋」のイメージを図 5.17.9 に

示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.9 橋上駅と「地平駅舎+構内跨線橋」のイメージ図

両案の比較評価を表 5.17.2 に示す。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-250

既存道路連絡案 アクセス道路新設案

表 5.17.2 橋上駅と「地平駅舎+構内跨線橋」比較評価表

Elevated station Ground level station with a bridge across railroads within its premises

Comment MR has a merit what station function is integrated.

Residents around the station have a merit crossing the railway free charge.

Lower cost.

Evaluation Excellent Fair 出典:JICA 調査団

また駅前広場へのアクセス道路は、既存道路連絡案とアクセス道路新設案が考えられる。駅前

広場アクセス道路代替案のイメージを図 5.17.10 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.10 駅前広場アクセス道路代替案イメージ図

両案の比較評価を表 5.17.3 に示す。

表 5.17.3 駅前広場アクセス道路代替案比較評価表

Existing Road New Road Comment MR has a merit what layout of any kind of facilities

is not restricted. Residents around the station have a merit as easy

access to the station.

It is not necessary widening of existing road for passing large size vehicle.

Evaluation Excellent Fair 出典:JICA 調査団

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-251

橋上駅舎位置代替案を図 5.17.11 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.11 橋上駅位置代替案図

各案の比較評価を表 5.17.4 に示す。

表 5.17.4 橋上駅舎位置代替案比較評価表

Alt 1 North Alt 2 Center Alt 3 South Comment MR has a merit what layout of any kind

of facilities is not restricted. Residents around the station have a

merit as easy access to the station.

- Distance between station and plaza is longest.

Evaluation Excellent Fair Poor 出典:JICA 調査団

5.17.2 駅・ターミナル開発推奨計画

(1) 方針

1) 前提条件

本調査の需要予測には、計画熟度の異なる「地方都市開発計画整備にかかる情報収集・確認調

査」で提案された「マンダレー市新都市開発計画 2040」の実現によって期待される、鉄道利

用者数の変化が十分に反映されているとは言えない。そのため本事業で対象とする計画とは別

に、「マンダレー市新都市開発計画 2040」が実現した本事業期間以降の長期的なシナリオにつ

いても考察する。

2) マンダレー駅とミョウハウン駅の特徴

両駅ともに駅前広場の設置により、鉄道と他交通機関の乗り換え利便性を向上することが望ま

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-252

しい。NHI(78th St.)と Mandalay – Shwebo Rd. (84th Rd.)が鉄道に並行している。マンダレーエ

リアの幹線道路は図 5.17.12 のとおりである。

出典:JICA 調査団

図 5.17.12 マンダレーエリア幹線道路図

そして、マンダレーエリアの 5 か所のバスターミナルの概要と分布を、表 5.17.5、および、図 5.17.13 に示す。

表 5.17.5 マンダレーのバスターミナル

No. Name Main Destination Open Year Area (ha)1 Thiri Man Dala Madaya, Mogoke, Chin State, Kachin

State, Sagaing Region, Magway Region

1996 1.2

2 Mahaaungmyay Around Mandalay Region within 50 miles

2003 1.2

3 Chan Mya Shwe Pyi Yangon, Naypyitaw, Taunggyi Town, Rakhine Region, Magway Region, Kayin Region

1992 6.8

4 Pyi Gyi Myat Shin Pyinoolwin, Kyaukme, Hsipaw, Lashio, Muse, Shan State (North)

1991 3.1

5 Daw Na Bwa Mogaung, Mohnyin, Myitkyina, Hopin 2016 1.4 出典:「地方都市開発計画整備にかかる情報収集・確認調査」

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-253

出典:「地方都市開発計画整備にかかる情報収集・確認調査」

図 5.17.13 マンダレーエリアのバスターミナルの分布

前述の幹線道路及びバスターミナルの分布を踏まえ、駅前広場に乗り入れるバスを以下のとお

り想定する。

定期路線バス 都市間連絡高速バス、空港連絡バス、定期観光バス、一般路線バス 既存バスターミナルを起終点とする系統の中間バス停の位置付け 駅前広場内の停車時間は短時間

不定期バス 鉄道旅客が利用する貸切バス 企業、学校及び大規模商業施設等の送迎バス 駅前広場内の停車時間は短時間

両駅の駅前広場の概要を表 5.17.6 に示す。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-254

表 5.17.6 駅前広場の概要

Mandalay Stn. Myohaung Stn. Rail Inter City Terminal Station Intermediate Station Rail in Mandalay Area Terminal Station Intermediate Station Highway Bus Bus Stop Bus Stop for Southbound Bus in Mandalay Area Bus Stop Bus Stop Int’l Airport Access Bus Bus Stop Bus Stop Bus for Tourism Bus Stop Bus Stop Taxi Berth, Pool Berth, Pool Para Transit Berth, Pool Berth, Pool Commercial Facility Berth, Pool Berth, Pool 出典:JICA 調査団

3) 施設規模の想定

想定する駅前広場施設規模を表 5.17.7 に示す。

表 5.17.7 想定する駅前広場施設規模

Mandalay Stn. Myohaung Stn.Number of bus berth (Vehicle) 2(East station plaza, Plan) 2

Number of taxi or para transit berth(Vehicle)

2(Deck on bridge, Existing) 2

Number of taxi or para transit pool(Vehicle)

230(Deck on bridge, Including hotel cars, Existing) 15(East station plaza, Including railway police cars, Existing) Parking Fee; 200 Kyat

5

Number of private car berth(Vehicle)

2

Number of private car pool(Vehicle)

5

Number of bike/ cycle parking(Vehicle)

5(Deck on bridge, Existing)5(East station plaza, Existing) Parking Fee; 100 kyat

10

Area(㎡) East station plaza; 2,500Deck on bridge and Approaches; 7,500 Total; 10,000

Approx. 10,500

Comment Available by present facilityBus stop in station plaza and improvement of pedestrian flow line are necessary.

East side of station, connecting existing

road 出典:JICA 調査団

想定する駅商業施設を表 5.17.8 に示す。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-255

表 5.17.8 想定する駅商業施設

Mandalay Stn. Myohaung Stn. Station Building Existing Plan Others Existing (Station plaza, around platform) Plan (Station Plaza) 出典:JICA 調査団

(2) マンダレー駅

1) 本事業期間

本事業での実施候補となる改良点は以下のとおりである。

駅東側駅前広場でのバスバース 2 台分区画の明確化 橋上デッキと駅西側間の歩行者動線整備(既設階段の有効活用)

2) 本事業期間後の長期計画

本事業期間後は、機関車牽引の客車列車の減少などにより、駅構内での遊休地の発生が期待さ

れる。遊休地は、交通結節施設や、商業業務施設の建設への活用が期待される。その計画に際

して、下記項目の考慮が重要である。

連接バスによる BRT 路線の駅への結節 LRT を想定した通勤鉄道開発計画

具体的イメージは以下のとおりである。

都市間鉄道のみならずマンダレーエリアの都市交通機関としての活用を考慮した計画

(例えばマンダレーとタヤゼ間休止区間の復活による環状線化等) 構内用地北端の 26th St.と駅前広場に連絡する 30th St.の中間、28th St.付近に東西方向の

道路を新設 新設東西方向道路に沿って駅商業開発と交通結節機能(連接バス通り抜け可能)の拡充

整備

本事業期間後マンダレー駅エリア長期計画イメージを図 5.17.14 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.14 本事業期間後マンダレー駅エリア長期計画イメージ図

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-256

(3) ミョウハウン駅

1) 本事業期間

ミョウハウン駅橋上駅舎と駅前広場概略位置図を図 5.17.15 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.15 ミョウハウン駅橋上駅舎と駅前広場位置図

ミョウハウン駅橋上駅舎と駅前広場のイメージを「5.9 駅舎」に示す。

駅前広場アクセスルートを図 5.17.16 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.16 駅前広場アクセルルート

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5-257

駅前広場の接続を予定する既存道路には大型車が通行できる幅員はなく、当面は小型車のみの

接続とならざるを得ない。本事業期間で対象とする計画については、次のステップ(DD)で

都市側との協働による計画の精緻化が望まれる。

2) 長期計画

ミョウハウン駅付近の鉄道交差幹線道路の位置を図 5.17.17 に示す。

出典:JICA 調査団

図 5.17.17 ミョウハウン駅付近の鉄道交差幹線道路の位置

ミョウハウン駅前後のおよそ 4km 区間は、自動車が横断できる踏切や跨線橋がない。そのた

め本事業期間後の計画については、新中央業務地区(New Central Business District; CBD)開発

計画の進捗と合わせた以下の検討が必要である。

都市側が検討する将来道路ネットワークとの整合性の確認 駅前広場に結節する既存道路の拡幅計画の確認 例えば鉄道を横断する東西方向の跨線橋建設計画、仮にミョウハウン駅近傍を通過する

場合の駅前広場との連結可能性の検討

5.18 旅客サービス

5.18.1 旅客サービスの現状

これまで、ミャンマー国鉄(MR)における旅客サービスについては、主に 2 つのプロジェクト

が実施されてきた。2013 年から 2016 年にかけて実施された JICA「鉄道安全性・サービス向

上プロジェクト」、および 2016 年から 2017 年にかけて実施された JICA「ミャンマー鉄道人材

育成講座」である。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-258

(1) 鉄道安全性・サービス向上プロジェクト

「鉄道安全性・サービス向上プロジェクト」は、主に保線に関する技術協力プロジェクトであっ

たが、「MR の鉄道運営・維持管理能力の向上を図る事を通じて、MR 全体の安全とサービス

を向上させる事」を目的としていた。

このプロジェクトにおいては、ヤンゴン・マンダレー本線において、旅客の満足度調査を実施

している。その結果、全体的に MR の旅客サービスの満足度は極めて低いとされ、このよう

な調査を定期的に行うこと、旅客サービスの改善項目を抽出し、優先度をつけて改善すること

が提言された。

(2) ミャンマー鉄道人材育成講座

これに次いで、2016 年から翌年に掛けて実施されたのが「ミャンマー鉄道人材育成講座」で

ある。ミャンマー運輸通信省及びミャンマー国鉄関係者に対し、今後のミャンマーにおける鉄

道交通網の整備に寄与する本邦の先進鉄道技術、及び鉄道関連サービス等を紹介するものとし

て開始された。

このプロジェクトでは、政権交代に伴い、ミャンマー国鉄のサービスに対する関心が高まって

いることを受け、ネピドーの本社、ヤンゴン駅、マンダレー駅の各地にて、延べ 4 回のサービ

ス研修を展開した。本社職員と現場職員の双方が研修に取り組むと共に、ヤンゴン駅では旅客

インタビューも実施された。

この中で、現場の職員に対しては、「参加した職員一人一人に議論を通して、サービス改善の

ために『自分たちでできること』を発見し、改善の方法を考えてもらう」という手法がとられ

た。また、ヤンゴン駅において 2 日間にわたり旅客インタビューが実施され、長距離列車、近

郊列車双方の旅客から多くの意見を集めた。

ヤンゴン駅でのサービス研修において、職員らはヤンゴン近郊からモデル駅を選定し、各駅の

課題を発見し解決策を検討、発表するワークショップを実施した。その中のあるグループは、

「ヤンゴン駅の乗客が、きっぷを簡単に購入し、すぐ列車に乗るために」という課題を設定し、

ディスカッションを行ったが、ヤンゴン駅の前売り発券カウンターが駅本屋から遠かったり、

営業時間が短かったり、二重発券が起こったり、空席状況を迅速に乗客に提供できない、といっ

た問題を解決すべきであるとして、列車の予約をシステムで管理することの必要性を述べてい

る。

また同様に、乗客への情報提供についても、多くの問題点があり、職員が自ら取り組む改善と

合わせ、サービス設備自体についても、今後改善が望まれるとされている。

他方、乗客に対するアンケートの結果からも、「最寄り駅への指定席の割り当てを増やしてほ

しい」というような、乗車券の購入にまつわる意見や、旅客への情報提供を強化してほしい、

といった意見が多く出されている。

そうした中で、現在直面している最大の課題は、いかにこれらのアイディアを形にするか、で

あるとされている。今後、ヤンゴン・マンダレー鉄道やヤンゴン環状鉄道の整備が進む中で、

MR 全体のサービスレベルを底上げするために、これらの改良が強く望まれると考えられる。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-259

(3) 鉄道車両維持管理・サービス向上プロジェクト

また、今後実施される予定の技術協力プロジェクトである JICA「鉄道車両維持管理・サービ

ス向上プロジェクト」においては、旅客サービスの向上に向けた体制の強化が行われる。人材

の育成や、サービス体制の向上と呼応して、各プロジェクトの成果を最大化できるような設備

の導入を検討すべきである。

5.18.2 望ましい旅客サービス改善案

(1) 求められるサービス水準

本整備事業の完成後には、ヤンゴンとマンダレーの両市が 8 時間以内で結ばれ、急行列車が頻

繁に運行されることが見込まれる。輸送サービスの水準は大

きく上昇するが、それに伴い、旅客からのサービス水準全体

に対する要求も、高くなることが予想される。

本調査における「旅客サービス」の目的は、改良される鉄道

に相応しいサービスを旅客に提供することである。すなわち、

改良される鉄道の持つ能力を十分に発揮し、利用者数を増加

させ、収入を増加させられるようなサービス水準が求められ

る。

利用者数を増加させようとする際、新たな MR の顧客となる

であろう旅客は、所要時間や、運賃の点から、現在は主に高

速バスを利用していると考えられる。改良工事が完成した段

階で、所要時間が短縮された列車を利用してもらうには、高

速バスを上回る、あるいは航空機とも競合できるようなレベ

ルのサービス水準を提供する必要がある。

今後、技術協力プロジェクトにおいて、高い水準の旅客サー

ビスを提供すべく、人材育成や体制の強化が行われることか

ら、それらを支援するための設備が求められる。ここでは、

高いサービス水準を達成するために必要な、代表的な設備と

して、列車予約システム(TRS)および旅客案内設備(PIS)の導入を取り上げたい。

(2) 列車予約システム(TRS)

例えば、ミャンマーにおいて高速バスに乗ろうとすると、すでにインターネット予約、クレジッ

トカード決済が可能となっている。実際に乗車する際は、E チケットを印刷し、持参するだけ

である。

それに対して、現在、MR の急行列車の乗車券は、3 日前からの発売となっている。座席は始

発駅の台帳によって管理され、予め各駅への割り当ても決められており、全ての席を全ての駅

で購入できるとは限らない。手書きによる発券が基本であるため、二重発券といった問題も起

出典:JICA 調査団

図 5.18.1 ヤンゴン駅南側 前売り発券カウンター入口

出典:JICA 調査団 図 5.18.2 ヤンゴン駅 前売り発券カウンター

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-260

こりやすい状況である。ヤンゴン駅については、前売り発券カウンターが駅本屋から大きく離

れているという問題も抱えている。

日本の鉄道においても、1910 年に指定席が登場して以来、長ら

く指定席は紙の台帳により管理されてきた。東海道新幹線の開

業を 4 年後に控えた 1960 年に、最初の予約システム「MARS 1」が導入され、徐々にそれまでの紙の台帳による管理から、シス

テムによる管理への移行が行われた。1965 年には、前年に開業

した東海道新幹線もマルスシステムに収容され、予約管理は急

速にシステム上へと移行した。

1968 年の大規模なダイヤ改正によって、全国に特急列車網が築

かれたこととあわせ、日本の鉄道による輸送は、指定席を連結

した新幹線と特急列車を中心とした、近代的な「大量高速輸送

時代」体制に移行した。

その後もシステムは改良を続け、現在では、旅客向けにはインターネットや自動券売機により、

旅客自身が列車を予約することのできる環境が整備され、鉄道会社向けには、列車の設定目的

や需要に応じた座席・価格管理により、収入を最大化するようなシステムの構築が進められて

いる。

こうしたことから、近代的な鉄道に列車予約システムの導入は不可欠であり、本プロジェクト

の整備効果を最大化するためにも、導入が不可欠である。

(3) MR における列車予約システムの提案

予約をシステムで管理することは、列車の予約に関する業務の

みならず、鉄道の商品である座席の管理や、駅や車内での改札

業務などの変革にもつながるが、ここではまず列車予約システ

ムに特化した提案を行う。

まず、当初システムを導入すべき駅を、将来の特急列車の停車

が見込まれる 7~9 箇所ほどの駅とする。

また、今回導入を想定するシステムによって達成されるべき目

標を、

旅客は、駅またはインターネット上で自由に特急列車の

指定券を買うことができる

旅客は、同様に駅で、MR の規則に従い、指定券の変更

をしたり、払い戻しを受けたりすることができる

将来のシステムの拡張を考慮

とする。

出典:JICA 調査団

図 5.18.3 ネピドー駅 32DN 列車 座席台帳

出典:JICA 調査団

図 5.18.4 日本の列車予約

システムの例

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-261

さて、前述の通り、日本の JR における列車予約システム「MARS」は 50 年以上に及ぶ歴史を

有するが、このシステムは、日本の鉄道における複雑な営業制度や、分割民営化に伴う 6 社間

の精算などに自動で対応するため、非常に重厚長大なシステムとなっている。

日本の鉄道においても、IC カード運賃の導入を端緒として、現代に相応しいシンプルな営業

制度への転換が検討されていることから、MR に導入するシステムについても、できるだけシ

ンプルな構成を目指すものとする。

具体的には、日本における高速バスの予約システム並みの構成とし、できるだけタブレット端

末等、民生用の機器や回線を活用する形で、コストダウンを図る。

また、日本においてシステムや操作を複雑化させる原因である、運賃計算や乗り継ぎといった

処理もできるだけシンプルなものとし、指定券の発券と、変更・取消に特化した構成とする。

想定する仕様は以下の通り。

通常稼働時間:24 時間

収容列車数:片道 13 本、上下線合わせて 26 本の特急列車

端末設置駅:7~9 駅

座席数:普通車約 232 席 アッパークラス約 78 席 計約 310 席 2 編成併結まで対応

前売り:1 ヶ月先まで 団体については 3 ヶ月前

端末数:7~9 駅に基本的に 2 台ずつ

サーバ:日本設置、現地設置どちらも可

端末:汎用 PC またはタブレット端末を使用

回線:有線または無線(LTE)の商用インターネット回線を使用

インターネット予約機能

※いずれも将来の拡張を考慮する。

※サーバは外部への委託を想定している。現地でも対応可能であるが、日本に設置する場

合は、日本の会社が受託することになる。現地にするか日本にするか、ランニングコス

トに影響してくるため、最終的には MR が判断することになる。

上記の仕様により、上下計 26 本の列車、7~9 駅相互間について、座席予約、取消を行う。ま

た、座席表からの座席選択も可能とする。

また発券プリンタから、7~9 駅相互間のきっぷ(現在の MR と同じく、乗車券・指定券が一

枚になった、いわゆる一葉化券)を発行する。運賃・料金は、列車毎の打ち切り計算とし、単

純な発売・変更・払い戻しのみを考慮する。

IC や 2 次元バーコードによる処理が普及していることに鑑み、乗車券類の磁気化は行わないが、

それぞれユニークな 2 次元バーコードを印字する。読み取りにより、取消や、将来の改札での

読み取りに対応できるようにする。操作、発券とも、ミャンマー語、英語の双方に対応する。

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5-262

これにより、上述の目標が達成されると考えられる。

(4) インターネット予約システム

インターネット予約システムは、旅客がスマートフォンや PC を用いて、駅の外で指定券を購

入できるようにするためのものであり、MR にも導入されることが望ましい。このため、今回

整備する列車予約システムにはインターネット予約機能を含めるものとする。

ただし、インターネットを通して世界中から自由に MR の列車が予約できるようになると、

予約だけをして実際には列車に乗らない、いわゆる「空予約」もしくは「ノーショー」と呼ば

れる問題の発生が懸念される。

こうした問題を防ぐためには、銀行口座やクレジットカードのシステムと予約システムを連携

させ、予約をした旅客から確実に運賃・料金を収受できるようにすることが有効である。

そのため、予約システムと同時に、インターネット予約向けの決済サブシステムを整備する。

この決済サブシステムは、予約システム本体からインターネット予約に係る決済要求を受信し、

クレジットカード会社のシステムや銀行のシステムとの間で決済処理を行う。決済処理が完了

すると、予約システム本体に決済完了通知を送信することで、発券が可能となる。決済サブシ

ステムの管理は決済代行会社が行い、MR はその維持費を支払うこととなる。ミャンマーでは

クレジットカードが普及してきており、国内の代行会社を活用することが期待される。

また、クレジットカードの利用とあわせ、プリペイドカードを決済に利用する方法について、

MR からの提案を受けた。あわせて、インターネットで指定席だけを予約し、決済は駅で行う

という、クレジットカードを用いない簡易なインターネット予約についても、予約後の発券期

限を短く設定することにより、実現が可能である。これら細部については、詳細設計の段階に

おいて検討するものとする。

またシステムは、将来的な自動券売機の導入や、MR 全線へのシステム拡張に対応した設計と

するものとする。

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5-263

出典:JICA 調査団

図 5.18.5 列車予約システム模式図

(5) 旅客案内設備(PIS)

これまで実施されたプロジェクトや、今後の技術協力プロジェ

クトにより、MR 職員によるサービス体制の強化が図られてい

る。そうした、職員による旅客への情報提供を支援するのが、

旅客案内設備である。

現在、MR ではヤンゴン駅、タウングー駅、ネピドー駅、マン

ダレー駅などの主要駅に LED による電光掲示板が整備され、

ミャンマー語・英語での案内が提供されている。

ただし、終日同じ発着案内が繰り返しスクロール表示されるも

のであり、リアルタイムの情報提供といった機能は有していな

い。

そこで、ターミナル駅であり、旅客サービスの観点からも極め

て重要であるヤンゴン駅とマンダレー駅に、これから発車する

列車や、駅の案内を、リアルタイムに流すことのできる設備を

整備する。

想定する仕様は以下の通りである。

コンコースでは、「列車種別・番号」「発車時刻」「行先」

「番線」「記事」を 6 列車表示

ホームでは、「列車種別・番号」「発車時刻」「行先」「番線」「記事」を 2 列車表示

運行情報・広告等、駅の案内を適宜入力し、スクロール表示

予約システム

インターネット予約向け決済サブシステム

MR

銀行口座

決済要求

決済完了通知

支払

決済処理

決済代行会社

クレジットカード会社

or

旅客(インターネットで購入)

発券

発券

旅客(駅で購入)

出典:JICA 調査団

図 5.18.6 ヤンゴン駅 電光掲示板

出典:JICA 調査団 図 5.18.7 日本の旅客案内

設備の例(LCD)

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5-264

駅構内の連動装置や TMS 等、上位装置との接続は行わ

ず、スタンドアロンで動作させる。駅事務室の端末装置

から、全てのコントロールを行う。

屋内については LCD、屋外については LED の導入を基

本とする。

これらの装置を、ヤンゴン駅にはコンコースに長距離列車用と

近郊列車用それぞれ 2 基ずつ、ホーム用に 4 基、マンダレー駅

ではコンコースに 2 基、ホーム用に 3 基、整備する。

システムの日常的な運用については、MR 自身で行える仕様の

ものとする。

これにより、予め列車の情報をシステムに入力しておくことで、あとは列車が発車する毎に、

駅職員が簡単な操作を行うだけで、随時リアルタイムに列車の案内をすることが可能となる。

(6) 将来の展開

MR 最大の商品は列車であり、その在庫を適切に管理できる予約システムは、将来の MR 経営

おいて、根幹となるものである。予約システムを活用することにより、旅客収入や、旅客の動

向について、さまざまなデータを蓄積し、分析することが可能となる。また、将来システム化

を進める際には、中心的役割を果たすことになる。

経理システムとの連携による、業務の効率化や、収入を最大化できる営業政策の導入、列車設

定の最適化など、予約システムから得られるデータを活用できる範囲は非常に大きい。

また、旅客案内設備の導入により、きめ細かいサービスを提供することで、本事業等で導入さ

れる TMS の効果を最大限に発揮することができる。

これらの分野は、技術面に留まらず、組織運営や、鉄道営業政策のあり方など、将来に向けて

日本が MR を支援しうる分野である。

こうした分野は、鉄道の改良が進むにつれてますます重要となることから、進行中の技術協力

プロジェクトとの連携はもちろんのこと、さらに進んで、そうした経験の多い日本の鉄道会社

による直接的な協力など、新たなスキームの導入も求められる。

5.19 工事基本計画

5.19.1 はじめに

本プロジェクトのタングー・マンダレー間約 320km の鉄道改良工事には様々な工種の工事が

在るが、それらの多くの工事に影響を与える基本的な共通項目、いわゆる一般施工計画の概略

について検討した。

ここで言う一般施工計画とは、工事用道路、資材運搬、施工基地計画である。

出典:JICA 調査団 図 5.18.8 日本の旅客案内

設備の例(LED)

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5-265

各、軌道改良、橋梁、信号、踏切等の特定の工事に対する施工計画は、各関係する章において

今後検討・記述するものとする。

5.19.2 現況

タングー・マンダレー間の現地調査を行った。

タングー・マンダレー間は、多くの区間が盛土区間で、切土区間は僅かとなっている。また、

雑草、雑木が軌道付近、或いは軌道内にまで群生している状態である。

軌道構造的には、ほとんどの区間でバラスト量(幅・高さ)が足りなく、PC まくらぎ側面が露

出状態になっている。また、長年の風雨の影響もあり、軌道を支える提体の幅が不足している。

出典:JICA 調査団

図 5.19.1 軌道内現況

本プロジェクトはフェーズ 1 とは違い、主要幹線道路から離れている区間が長く、特にピョー

ビェー駅~タージー駅~クメラン駅~キョッセ駅区間の約 170km は幹線道路から、駅または

線路まで直線距離で数キロメートルにもおよび、主要道路から駅まで 1 時間程度掛かるところ

も有る。また、これらの道路は、付近住民の生活用道路または農道として使用されているため

未整備・未舗装であり、バイク、トラクター程度の利用のため、乗用車で駅に辿り着く事が困

難な状況である。さらに、、各所に木製の橋梁が有り、材料運搬等の工事用車両を通すのには

適していない状況である。また、路線沿いにも工事用道路として使用できる所はほとんど無い。

図 5.19.2 駅までの侵入路状況

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5-266

図 5.19.3 木製床版の橋梁

5.19.3 各工種の施工順序と関係

本プロジェクトは鉄道整備事業ではあるが、軌道本体工事のほかに、盛土等の土工事、ボック

スカルバート、橋梁等の構造物構築工事など多様な工種があり、それぞれの工種が密接に関

わっている。

下記に各工種の工事の流れと工種間の関係を図 5.19.4 に示す。

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5-267

出典:JICA 調査団 図 5.19.4 各工種の施工順序と関係

伐開・除根含む

埋め戻し含む

凡例 バラスト敷設含む同一工種内の工事の流れ他工種との関わりの有る工事の流れ

※1 関係有る他工種の工事に対して先行工事※2 ※1が終了しないと取り掛れない工事

※1 軌道閉鎖 基礎杭

土工事 ボックスカルバート&パイピング

軌道工事橋梁工事

信号、踏切、他法面防護・盛土・排水工事 On same Line On New Line

仮設道路・草刈等仮設工事 仮設道路軌きょう組立て、バラスト

基地設置仮設道路

仮設桟橋、仮締切り

※1 上部工※1 盛土工事

土留工※2 伐開・除根 ※1 軌きょう撤去

※2 既設構造物撤去 ※2 既設上部撤去下部工

法面防護工事 壁コンクリート 下部工

段切り基礎杭 バラスト撤去 基礎杭

※2 踏切・信号工事

底版コンクリート 土留工サブバラスト撤去

軌道開通

仮桟橋、土留め撤去

※2 切替え

※2 サブバラスト整正※1 スラブコンクリー ※1 上部工

※2 レール敷設 ※1

建設期間6ヶ月間!!

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5-268

5.19.4 工事工程の検討

本プロジェクトは、複線区間の工事施工区間については、YM-DD(1)と同様に単線運転を行い、

1 単線運転区間は約 30km である。。以下、ニャウヤン駅~ダハット駅区間約 30kmをモデルケー

スとして概略の工程を検討した。

(1) 仮定条件

単線運転区間の、軌道閉鎖から開通までの期間を 6 ヶ月とする。

本工事に必要な仮設道路、仮設橋梁、仮締切り等の仮設工事後に、単線運転を行う。

コンクリート構造物には 4 週強度が確認できるまで、バラスト等の荷重はかけない。

休日、雨等は考慮しない。

ボックスカルバートの大きさは内空で 1 スパン当たり w=6m、h=5m、l=5m とする。

コンクリートパイプ(パイプカルバート)等の小構造物の工程は考慮しない。

バラスト、サブバラストを含む軌道の撤去・設置工事の施工量を 500m/日とし、片押し

施工とする。

盛土工事は軌道設置前に完了しているものとする。

ボックスカルバート用のレール杭打設施工量は 30 本/日とする。

その他

上記仮定条件に基づいて検討した結果の工程表を図 5.19.5 に示す。

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5-269

出典:JICA 調査団

図 5.19.5 概略工程表

71 Nyaungyan 481.596577 481.730 0.134 18.29 ●578 482.200 0.469 12.19 ●580 482.870 0.671 24.38 ●581 483.004 0.134 34.90 36.58

582 483.608 0.604 3.05 ●583 483.742 0.134 6.10 ●584 484.614 0.872 12.19 ●585 485.016 0.402 30.48 30.48 Less than 3 mobths for Bridge Construction

586 485.351 0.335 36.58 ● Less than 3 mobths for Bridge Construction

587 485.754 0.402 1.83 ●72 Nwato 486.424 0.671

588 487.095 0.671 36.58 48.77 Less than 3 mobths for Bridge Construction

589 487.832 0.738 3.05 ●590 488.034 0.201 1.83 ●591 488.168 0.134 1.83 ●594 489.911 1.743 1.83 ●

594 A 490.179 0.268 12.19 ●595 490.448 0.268 1.83 ●596 490.582 0.134 1.83 ●597 490.984 0.402 3.05 ●598 491.118 0.134 1.83 ●

600 491.386 0.000 1.83 ●600 A 491.453 0.067 1.83 ●601 491.789 0.335 1.83 ●

73 Thazi 492.459 0.671602 3.05 ●603 493.063 0.604 6.10 ●604 493.599 0.536 3.05 ●606 494.605 1.006 1.83 ●

607 A 495.544 0.939 6.10 ●608 495.678 0.134 1.83 ●612 497.556 1.878 0.91 ●613 498.159 0.604 0.91 ●

613 A 498.226 0.067 3.05 ●614 A 498.830 0.604 6.10 ●615 499.098 0.268 1.83 ●

74 Ywapale 499.701 0.604618 500.707 1.006 3.05 ●619 500.975 0.268 3.05 ●620 501.311 0.335 3.05 ●622 501.713 0.402 24.38 ● ⑦623 501.914 0.201 6.10 ● ⑧624 502.316 0.402 1.83 ●

624 A 502.652 0.335 3.05 ●625 502.786 0.134 0.91 ●627 503.792 1.006 0.91 ●629 504.663 0.872 6.10 ● ②631 505.200 0.536 1.83 ●633 505.669 0.469 12.19 ● ⑦634 505.938 0.268 1.83 ●636 506.541 0.604 1.83 ●

75 Hanza 507.748 1.207639 508.016 0.268 12.19 ● ⑧641 509.626 1.609 3.05 ●

76 Dahattaw 512.978 3.353

Station Name&

Bridge No.

LocationKilometer

(km)

Interval(km)

Bridge Length (m) MONTHREMARK

UP LineDownLine

1 2 3 4 5 6

● ⑤

①②

Only 3 months for Bridge Construction

599 491.386 0.268 24.38

④④

Install Sub Ballast,Ballast, Rail Frame500m/day

Remove Rail, Sleeper, Ballast, Sub Ballast 500m/day

28 days before installation of Rail.

CloseTrack

Open Track

Legend: ■ Plan for Precast Hume Pipe ■ Plan for Box Culvert (or something) ■ Plan for Girder Bridge

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5-270

(2) 工程の検討結果

概略工程の検討から、構造物構築工事に費やせる期間が非常に短く、特に橋梁工事を工期内に

完成し、軌道を開通させるには、非常に厳しい工期である。

詳細設計段階における施工計画において、以下の事項に留意する必要がある。

ボックスカルバート工事は軟弱地盤改良等が無ければ、工期内に完了する可能性がある。

但し、重機、仮設材を含む多くの施工チームが必要である。

現在線と同一線上に構築される橋梁については、工事期間が 3 ヶ月程度しかなく、工期

内に完了させる事は非常に困難である。

一度に多くの資機材の輸送が必要になるため、工事用仮設道路が必要になる。

軌道の撤去・設置は、3~4チームでの施工する事が望ましい。

昼夜工事が必要になる。

パイプカルバート等の小工事も工事箇所が多く、全体工程への影響が大きいため留意が

必要である。

5.19.5 一般施工計画

(1) 工事用道路計画

本プロジェクトにはタングー・マンダレー間に大小合わせて 400 以上の、橋梁、ボックスカル

バート等の工事箇所が存在する。これら土工事、構造物構築工事、軌道整備工事等に必要な大

量の資機材の搬入、搬出、移動の運搬作業が必要になり、列車だけによる運搬作業にも容量が

不足するため道路を利用した運搬路が必要である。

しかしながら、路線沿線にはこれら資機材を運搬出来るような道路がほとんど無い。従って、

路線沿いに工事用道路を設置する事を提案する。工事用道路の有無は建設工程に大きな影響を

与える。

工事用道路は全線に有る事が望ましいが、現段階では下記の条件を基に計画を試みた。

1) 工事用道路基本条件

工事用道路計画に当たり下記の基本条件を考慮して計画を立てるものとする。

ROW 内へのアクセスは、踏切からの進入を基本とするが、可能であれば幹線道路から

または駅部からのアクセスも可能とする。

出来る限り民家の移転は避ける。

ボックスカルバート、橋梁架設箇所は工事用道路を必要とする。

鉄道路線のどちらか片側のみとし、反対側は 100~300m2 の材料置き場等の作業用ヤー

ドを各所 ROW 内に設置する

その他、小構造物構築箇所は、ROW 内の作業ヤードのみとする。

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5-271

工事用道路幅は 4m とし、すべて盛土厚 40cm プラス砕石厚 15cm とする。

軌陸車の使用も考慮する。

軟弱区域での土の入れ替えは考慮しない。

下記に工事用道路の標準図を示す。

図 5.19.6 工事用道路標準図

上記を現段階に於ける工事用道路計画の条件として検討した結果、概算で、延長約 150km の

工事用道路が必要となる。特に、インギィガン駅~クメラン駅間は約 80km となる。各工区の

概算工事用道路の距離を表 5.19.1 に示す。

ただし、今後の詳細設計、詳細測量(横断測量、地質調査、その他)の結果によっては、軟弱

エリアの土入れ替え、補強盛土増やそれに伴う伐開除根作業用の工事用道路(盛土材搬入、残

材搬出等)が必要になり、費用、数量が大幅に増える可能性がある。

また、 終的な工事期間中の工事用道路計画は請負者によって策定されるが、ROW内に有る、

光ファイバーケーブルの移設が必要になる可能性がある。

表 5.19.1 工事用道路概算距離表(工区別)

工区 距離(km) 備考 CP1101 25.81 路線片側のみ CP1102 19.29 同上 CP1103 79.60 同上 CP1104 28.79 同上

合計 153.49

(2) 施工基地計画

施工基地とは、施主や請負者用事務所、軌きょう製作の為のレール置場、溶接作業場、バラス

トの仮置場、その他の資機材置場の機能を有する基地のことである。各契約パッケージには

低一箇所の基地が必要である。

メイン基地は請負者のメイン事務所、施主とコンサルタント事務所を有し、その他にもレール

置場、軌きょう製作ヤードの機能も有する基地のことである。

更に本プロジェクトは施工距離が長く、幹線道路から離れていると言う特色を考慮すると、施

工時の運搬距離を短くするために、上記メイン基地のほかに、各 5~10km 間隔でサテライト

150

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

5-272

基地が必要であると思われる。

サテライト基地とは主に資機材置場、軌きょう製作、ストックヤード、バッチングプラントヤー

ド等の請負者の計画に基づき設置される基地である。

次頁に、メイン基地とサテライト基地の候補地を示す。

これらの基地は基本的にフェーズ1と同様に駅部の MR 敷地内に設置する事とするが、今後

MR との協議が必要である。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査

ファイナルレポート

5-273

表 5.19.2 施工基地候補リスト

CP NO STATION NAME KILOPOSTMain DepoCandidate

Sub DepoCandidate CP NO STATION NAME KILOPOST

Main DepoCandidate

Sub DepoCandidate

38 TAUNGOO 267.15 ○ ○ 68 SHWEDA 454

39 KYEDAW 276.5 69 PYAWBWE 462.5 ○ ○40 KYUNGON 282.5 ○ 70 SHANYWA 471

41 KAYTUMADI 290.5 71 NYAUNGYAN 481 ○42 YEDASHE 295 ○ 72 NWATO 486

43 KONGYI 301.5 73 THAZI 492.5 ○ ○44 SWA 308.5 ○ ○ 74 YWAPALE 499.5

45 THARGAYA 314.5 75 HANZA 507.5 ○46 THARYARGON 318.5 76 DAHATTAW 512

47 MYOHLA 324 ○ 77 THEDAW 517 ○48 YENI 332.5 78 KHINBAN 523.5

49 TAWUTI 338 79 SAMON 530 ○50 HTEININN 344.5 ○ 80 ODOKKON 534.5

51 ELA 349 81 THABYETAUNG 541

52 PYAYWUN 353.5 ○ 82 KUME LAN 549.5 ○53 PYINMANA 362 83 MYITTHAR 558.5 ○54 YWADAW 370 ○ 84 MINZU 567

55 NAYPYITAW 370 ○ 85 KYAUKSE 578 ○56 KYIDAUNGKAN 378.5 86 BELIN 585

57 PYOKKWE 387 87 SINGAING 594 ○58 SINBYUGYUN 392 ○ 88 PALEIK 602

59 SHWEMYO 397 89 MYITNGE 607

60 SINTHE 404 90 TAGUNDAING 611.5 ○61 TATKON 407.5 ○ 91 MYOHAUNG 616 ○62 MAGYIBIN 414 92 SHANZU 617.5

63 NYAUNGLUN 420.5 ○ 93 MANDALAY 620.5 ○64 HNGETTHAIK 431 ○65 INGON 435.5

66 YAMETHIN (YMA) 441.5 ○ ○67 INGYINKAN 448

0103

04

02

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5-274

(3) 資材運搬計画

資材運搬計画とは、各現場へ必要資材を運搬するためのものである。資材は、MR から供与さ

れるもの及び請負者が調達・運搬する資材の両方が含まれる。

軌道工事に関わるバラスト、PC まくらぎ等の資材の運搬はフェーズ 1 と同様とするが、その

他土木工事に関するコンクリート、鋼材、型枠などの資材の運搬は、ダンプトラック等により

工事用道路を使用しての運搬を基本とする。ただし、少量または小さい資材は軌陸車にて運搬

する事も考慮する。

5.19.6 安全管理計画

安全管理計画の基本方針は、本プロジェクトが鉄道改修事業であるため、多くの作業が営業運

転下で実施される。したがって、列車事故の防止は、 も重要な管理項目となる。

JICA 調査団は、JICA 策定の「ODA 建設工事安全管理ガイダンス(2014 年 9 月)」を基本に安

全管理計画ガイドラインを策定する。ただし、上記で述べた理由の通り、列車事故の防止を特

に強調する。更に、既存路線敷地内に沿線住民は自由に出入りをしているのが現状であるため、

沿線住民の安全をも考慮に入れ、工事敷地内への侵入を防ぐための防護柵などの施設の設置を

行い、いわゆる第三者災害の防止にも注意を払う。

5.19.7 交通管理計画

交通管理計画の主要方針は以下の通りとする。

「安全第一」が も重要な原則である。

工事用車両の通行が一般交通に与える負の影響を 小化する。

工事用車両の通行が幹線道路および生活道路で環境に与える影響を 小化する

また、交通管理計画の方法は以下の通りとする。

工事用車両は主として幹線道路または工事用道路を走行する。ドライバーの注意喚起の

ために安全看板等を活用する。

施工ヤードや作業基地から公道へ出場する際、ゲートでの泥落としのための車体洗浄は

重要である。請負者はアクセス道路の舗装の仕様や、土埃の軽減策を提案すべきである。

学校や病院の近くでの徐行運転や、登下校時の車両運行の減少が望ましい。

工事用道路には第三者が侵入しないよう、有刺鉄線柵等で進入防止を図る。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

6-1

第6章 プロジェクトコストの低減と施工期間の短縮についての検討

6.1 軌道更新の機械化方式

軌道更新作業には、主として次の 3 方法がある。

人力による方法:出来る限り人力に頼る方法である。

標準機械化工法:この方法では、軌道工事と土木工事の各ステップを出来る限り機械化

し、作業効率が上がるようにその各ステップを組み合わせる方法である。この工法を「標

準機械化工法」と呼ぶ。

大型機械化工法:この工法では、(1) 路盤更新、(2) バラスト更新、(3) レール及び分岐

器の取替、(4) まくらぎの更新を、「連結した機械化車両群」により行う。通常は、「路

盤更新とバラスト更新の機械化車両群」と「レールとまくらぎ更新の機械化車両群」の

2 種類のものが使われる。これら(1) (2) (3) (4) の作業以外のものは、標準機械化工法と

同じ方法で行われる。この工法を「大型機械化工法」と呼ぶ。

今回のプロジェクトでは、人力による方法を考えるのは適当ではないので、「標準機械化工法」

と「大型機械化工法」とを取り上げて比較検討することとする。検討すべき事柄は次の通りで

ある。

2 工法の内容の比較。

2 工法の作業能率の比較。

2 工法のコスト比較。

6.1.1 「標準機械化工法」と「大型機械化工法」の内容の比較

これについて、単に言葉だけによる内容説明は、例え写真などが添えられていても、明解な理

解を得るのは容易ではないので、写真と説明文を作業のフローに従って並べた、かなり横長の

フローチャート図 6.1.1 によって内容を説明し比較する。

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6-2

図 6.1.1 作業フローチャート

(1)工事用機械の搬入・搬出 (門型クレーン、バラストホッパー、溶接機など)

(2)新規材料=レール(25m)、枕木、バラスト、その他の材料の搬入・搬出

(3)撤去材料=撤去軌框、撤去バラスト、撤去枕木などの貯積、解体⇒破棄、再利用

(1)レール圧接作業(25mレール*7本=175m)

1次溶接(フラッシュバット溶接)

(2)175m軌框組立 ⇒ 貯積・搬出

(3)現場フルイ選別後の不良バラストの貯積⇒破棄

新路盤用土砂、新道床用バラストの搬入・貯積(軌道ワキ) 門型クレーン走行用レールの敷設(軌道両ワキ、各350m分)

(1)測量 (2)旧軌框(12m)の除去および搬出・1回に30基=360m分 (3)旧バラストの除去および良・不良の選別 (4)旧路盤の除去 (5)新路盤用土砂の敷設、転圧(延長=360m) (6)新バラスト・再利用バラストの敷設 (7)175m軌框を基地から現場まで運搬・搬入・設置 (8)175m軌框を20基敷設し、延長3,500mとする。 (9)敷設した新軌框に補充バラストを散布 (10)1次軌道整備 (11)20基の175mレールを溶接して3,500mのロングレールとする。 (12)ロングレール設定替 (13)ロングレール両端部(伸縮継目)の溶接 (14)2次軌道整備 (15)レール研磨 (16)1ロングレール区間の完成。

中心線、水準の測量 軌陸クレーン車で吊り上げ、 (1)軌陸バックホーによる除去。 (1)軌陸バックホーによる除去。 (1)軌陸バックホーによる敷設。 (1)軌陸バックホーによる敷設。 (1)トロッコに載せて運搬・搬入。 1ロングレール区間を3,500mとする。 ホッパー車や軌陸ダンプによる。 マルチプルタイタンパー(MTT)による。 2次溶接(フラッシュバット溶接) ロングレール3,500mの両端を機器引張して、残留軸力を開放し、整正をする。3次溶接(フラッシュバット溶接) マルチプルタイタンパー(MTT)による。 レール研磨車による。

旧軌道上に配置の搬出用トロッコに積込み (2)フルイ装置にかけ良質=現場に貯積 (2)旧軌道上に配置の搬出用トロッコに積込み (2)コンパクターによる転圧。 (2)コンパクターによる転圧。 (2)門型クレーンにてトロッコから吊り上げ。

基地へ運搬 不良=基地に運搬 基地へ運搬 (3)厚さ=300mm (3)厚さ=枕木下面で250mm (3)門型クレーンを敷設個所まで移動。

(4)門型クレーンから取降ろして設置。

(1)軌陸クレーン車 (1)軌陸バックホー (1)軌陸バックホー (1)軌陸バックホー (1)軌陸バックホー (1)トロッコ (1)ホッパー車 フラッシュバット溶接機 チルホール フラッシュバット溶接機 レール頭頂面研磨車

(2)トロッコ (2)フルイ装置 (2)トロッコ (2)コンパクター (2)コンパクター (2)門型クレーン (2)軌陸ダンプ

(1)軌道(レール、マクラギ)交換機編成 (電源車+レール・マクラギ交換車+旧レール・マクラギ搬出車+新レール・マクラギ搬入車) フラッシュバット溶接機 チルホール フラッシュバット溶接機 レール頭頂面研磨車

(2)路盤・バラスト交換機編成  (電源車+旧路盤・旧バラスト除去・選別車+新路盤土砂・新バラスト・再利用バラスト敷設車+コンパクタ不使用路盤土砂・不使用バラスト搬出車+新路盤土砂・新バラスト搬入車)

チルホール(ロングレール設定機)

*現場のレール温度で、最高温度と最低温度の平均温度を設定して、

その温度におけるロングレールの長さを算定する。

チルホール装置によってレールを算定した長さまで引張する。

これにより、レール内の残留軸力が開放され、ロングレールが

整正され、高温になっても極端な伸びをしないようになる。

出典:JICA調査団

図 6.1.1

軌道整備の手順

軌道整備

工事

機械化標準工法

作業基地

作業基地

における

準備作業

準備・処理作業

現場 作業内容

使用機材

大型機械化工法

機械化標準工法

主体作業

機材・資材置場

前作業 

軌陸ダンプトラック

門型クレーンによる軌框の敷設 バラスト運搬・散布用ホッパー車

大型機械化工法

主に使用する機械 コンパクター(振動締め固め機) マルチプルタイタンパー(MTT) 8頭式レール研磨車(レール頭頂面をグラインダーで研磨)

フラッシュバット溶接機(レールを突合せて加圧し、高圧電流を流して溶接する)

基地内の大型門型クレーン バラストホッパー設備 材料運搬用軌道モーターカー

路盤・バラスト交換機編成 路盤・バラスト交換

マルチプルタイタンパー(MTT)

マルチプルタイタンパー(MTT) マルチプルタイタンパー(MTT)

マルチプルタイタンパー(MTT)

軌道(レール・マクラギ)交換機編成

軌陸クレーン車 軌陸バックホー 軌道モーターカーと材料運搬用トロッコ

走行レール(30kg/mレー

ル)b

軌きょう吊り上げ機 20台

走行レール(30kg/mレール)

170m 170m

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6-3

6.1.2 「標準機械化工法」と「大型機械化工法」の作業効率の比較

(1) 作業の種類

本プロジェクトにおける、土木工事の対象となるのは、主として (1) 路盤、(2) 橋梁、および (3) ボックスカルバートである。軌道工事は、(1) バラスト更新、(2) レールおよび分岐器の交

換、および (3) まくらぎの交換である。

これらの工事では、土木工事が先行し、その後に軌道工事に移るため、本プロジェクトの工事

工程は、土木工事と軌道工事の速度に影響される。

(2) 軌道工事速度の比較

軌道工事速度の比較を表 6.1.1 に示す。

表 6.1.1 2 種類の工事方法による 軌道工事速度の比較および土木工事の速度

工事方法 施工速度 コメント

標準機械化工法 330m/day 【参考資料】

Myanmar country Yangon Mandalay Railroad Maintenance Business Phase-I Detailed Design Investigation.

大型機械化工法 800m/day

各機械の作業速度 マルチプルタイタンパー(MTT) 370 – 450m/h 路盤・バラスト交換機 30-70m/h 軌道交換機 1,000m/h 1 日当りの施工速度は、上記 3 種類の機械の内で最も施工速度が遅いものにより計算した。

土木工事 250m/day 【参考資料】

Myanmar country Yangon Mandalay Railroad Maintenance Business Phase-I Detailed Design Investigation.

出典:JICA 調査団

(3) 土木工事と軌道工事の施工スケジュール

複線区間で工事を施工する場合には、工事区間における列車の運転は、工事を行わない側の線

路を使って上り列車と下り列車の両方を運行する事となる。ミャンマー国鉄は、この場合の単

線運転区間の距離は 30 km に制限することを要請している。一方、路盤、橋梁、ボックスカ

ルバート等を改良する土木工事は、バラスト交換、レール・分岐器交換、まくらぎ交換などの

軌道工事に先だって行う事が必要である。以下の施工スケジュールは、これらの条件を考慮し

て作成したものである。

Taungoo and Mandalay 間の 350 km を 4 工事区間に分割する。これにより 1 工事区間は

90 km となる。

90 km の工事区間を 3 施工区間に分ける。

ひとつの施工区間を、更に上り線施工区間と下り線施工区間に分ける。

上記で分割した 4 工事区間の内で、それぞれ土木工事および軌道工事を進める。

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6-4

工事の施工フローを図 6.1.2 に示す。この図は、土木工事と軌道工事との関連、およびそれぞ

れの必要施工期間(月数)を示すものである。さらに、表 6.1.2 は、図 6.1.2 において示され

る必要工事施工月数を整理したものである。

表 6.1.2 2 種類の工事方法における必要施工月数

(単位:月) 上り・下り線

工事種類 施工区間-1 施工区間-2 施工区間-3

小計・ 合計

標準機械化工法

上り線 土木 4 4 4 軌道 (2)+1 (2)+1 (2)+1 小計 5 5 5 15

下り線 土木 4 4 4 軌道 (2)+1 (2)+1 (2)+1 小計 5 5 5 15

合計施工月数 30

大型機械化工法

上り線 土木 4 4 4 軌道 (1) (1) (1) 小計 4 4 4 12

下り線 土木 4 4 4 軌道 (1) (1) (1) 小計 4 4 4 12

合計施工月数 24標準化機械化施工と比較して、大型機械化施工によった場合の施工月数の減少月数 ▲6※(カッコ)内の軌道工事の月数は、土木工事と並行して施工するため、土木工事、軌道工事の合計の施工

月数の計は、「土木工事の施工月数+(カッコ)の外の軌道工事の施工月数」となる。 出典:JICA 調査団

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ファイナルレポート

6-5

出典: JICA 調査団

図 6.1.2 工事必要施工月数

土木工事

軌道工事

1 か月 1 か月 1 か月

土木工事

軌道工事

1 か月 1 か月 1 か月

土木工事

軌道工事1 か月 1 か月 1 か月

土木工事

軌道工事1 か月 1 か月 1 か月

……5 か月………

4 か月

3 か月 3 か月

……5 か月……… ……5 か月………

4 か月

…4 か月…

4 か月

…4 か月…

4 か月4 か月

4 か月

…4 か月…

…4 か月…

………………………………………………………30 か月…………………………………………………………………

4 か月 4 か月 4 か月

3 か月 3 か月 3 か月

……5 か月……

4 か月

大型機械化工法により工事期間は6箇月間短縮

される上り線

下り線

標準機械化工法

大型機械化工法

上り線

下り線

…4 か月…

4 か月

No. 1 施工区間 No.2 施工区間 No. 3 施工区間

………………………………………………24 か月………………………………………………………4 か月…

No.3施工区間

……5 か月……

4 か月

3 か月

No. 1 施工区間

……5 か月……

No.2 施工区間

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6-6

表 6.1.2 と図 6.1.2 により、工事対象区間の 350 km に対する 2 つの工事方法における施工必

要期間は次の通りである。

標準機械化工法によった場合は、30 か月となる。(2 年 6 か月)

大型機械化工法によった場合は、24 カ月となる。(2 年)

大型機械化工法によった場合には、標準機械化工法と比較して、施工必要期間は 6 か月

短縮される。

土木工事の施工期間が、工事全体のクリテイカルパスとなっているため、更に施工期間

の短縮を図るためには、土木工事の施工期間を短縮する工夫をすることが必須である。

(4) 経済比較

標準機械化工法と大型機械化工法の比較において、コスト比較は、施工期間の短縮と共に重要

なカギである。コストには、機械のコスト、人件費、諸経費が含まれるが、比較に当っては、

この内で機械のコストと人件費が重要な要素である。

標準機械化工法のコスト

機械のコストと人件費について、“Myanmar Country Yangon Mandalay Railroad Maintenance Business Phase-I Detail Design Investigation”の 終報告書における単価を採用した。

大型機械化工法のコスト

このプロジェクトに使用される機械類が、将来のプロジェクトに使用されるかどうかは不確定

であるので、損料計算における工事期間中の償却費の計算ではなく、機械の全額を損料とする

のが適当であると判断した。機械類の必要数量は、「 (3) 土木工事と軌道工事の施工スケ

ジュール」に基づいて 2 セットと算定した。人件費については、同様の方法による工事におけ

る機械施工の人件費と現場に駐在する技術専門家の費用を見込んでいる。

両方法のコスト比較は、表 6.1.3 に示す通りである。

表 6.1.3 2 工法のコスト比較

標準機械化工法 大型機械化工法 46.2 億円 57.7 億円

出典:JICA 調査団

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6-7

(5) 要約

標準機械化工法と大型機械化工法を比較した総括要約を表 6.1.4 に示す。

表 6.1.4 標準機械化工法と大型機械化工法の比較総括要約表

比較項目 標準機械化工法 大型機械化工法 施工期間短縮の可能性 施工速度 施工期間

(350 km に対して) (土木工事を含む)

330 m/day 30 months (2 年 6 か月)

800 m/day 24 months (2 年)

コスト 46.2 億円 57.7 億円

日本企業参加の可能性専門技術者 建設会社、各種企業

可能 可能

可能 (専門技術者は、工事現場に駐在する必要がある) 可能

当該プロジェクトに使用した機械類を将来の他のプロジェクトに転用できるか。

MTT を含め、すべての機械が転用できる。

MTT 他レール・まくらぎ敷設機は、Mandalay~Myitkyina 間 (700km)プロジェクトに使用可能である。

バラスト・路盤交換機もMandalay~Myitkyina (700km) プロジェクトに使用可能と考えられるが、MRとの詳細協議が必要である。

機械類のメンテナンス MR は、MTT のメンテナンス経験を積んでいる。

MR は、MTT のメンテナンス経験を積んでいる。

路盤・バラスト交換機やレール・まくらぎ交換機の運用に当っては、専門技術者が運用やメンテナンス指導のため現場に駐在する必要がある。

今後の検討が必要な事項 土木工事および軌道工事の両方についての施工期間短縮方法を検討する必要がある。特に土木工事については、軌道工事に先だって行わねばならないため、その短縮が、全体の施工期間を短縮するカギとなる。

路盤・バラスト交換機の設計および製作に2~2.5年が必要と言われているが、この短縮についてメーカーと協議する必要がある。

路盤・バラスト交換機は、主としてヨーロッパで使われて来ており、その他の地域での使用実績はほとんどない。

特に路盤・バラスト交換機については、軸重、ゲージ、建築限界などのMRの条件に適合させられるかどうかを、メーカーに確認する必要がある。

機械の故障や修理の発生頻度とそのコストや手間について検討する必要がある。

機械類の価格交渉が必要である。

出典:JICA 調査団

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6-8

(6) 結論及び課題

大型機械化工法は設計から製造の期間が 2 年から 2 年半かかるため、工期 3 年半で完工を目指

す本工事においてはほとんど活用できないこととなる。

従って、本工事おいては一部機械化施工を取り入れる標準機械化施工を用いて、工事を実施す

ることとする。

なお、今後特に大型機械化工法導入の検討をする際には、課題として、設計・製造にかかる十

分な工期が確保できる事をあらかじめ確認しておく必要がある。また、エンジニアリング設計

期間と製作期間の短縮について、メーカー側との綿密な協議をする必要がある。

さらには、わが国並びに近隣地域で、同種の工法が使用された実績があるかどうかを事前に調

査の上、検討することが望ましい。

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7-1

第7章 運営・維持管理

7.1 運営・維持管理のための制度整備

ヤンゴン・マンダレー鉄道の整備により、旅客列車及び貨物列車は、これまでに比較して高速

運転となり、運行本数も増加することとなる。維持管理計画は、従来に比較して列車走行時の

安全を確保するため、従来の事後保全の考え方から予防保全を主とする必要がある。これに伴

い、運営・維持管理方法及び運営組織の検討を行った。

7.1.1 概要

本プロジェクトにより、ヤンゴン駅とマンダレー駅間の特急列車の所要時間は、15 時間から 8時間と短縮され、列車の速度は、従来の表定速度 40km/h が 78km/h になり、 高速度が 100km/hとなる。同様に貨物列車の所要時間も短縮され、 高速度が 70km/h となる。速度向上ととも

に、ヤンゴン駅とマンダレー駅間の運転本数は、2023 年に1日あたり特急列車は 2 往復から

13 往復に、普通列車は 17 往復に、貨物列車は 11 往復と増加することとなる。これらの理由

から、ヤンゴン・マンダレー鉄道の運営・維持管理は、 高速度が 100km/h に対応した計画

が必要となる。特に、安全で快適な鉄道として運営するためには、車両及び軌道の維持管理が

重要となる。

7.1.2 組織

(1) 現状の運営組織

現状の MR の組織を図 7.1.1 に示す.組織は、MANAGING DIRECTOR の下に、主要な 6 部

門として機械・電気技術、土木技術、運転、販売、計画・管理、財務の他に調達、病院と検査

部門を設けている。

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7-2

出典:MINISTRY OF TRANSPORTATION MYANMA RAILWAYS

図 7.1.1 ミャンマー国鉄の組織図

現場の運営組織は、国内を北の Upper Region と南の Lower Region の 2 地方組織に区分し、維

持管理を行う地区の組織として 11のDivisionを設けている。ミャンマー国の鉄道はミャンマー

国鉄のみであり,私企業が運営する鉄道会社は無い。表 7.1.1 は、主要な 6 部門の役割を示す。

表 7.1.1 主要 6 部門の役割

部門名称 主要な業務

Operating 駅の管理、信号及び通信の運用業務

Mechanical & Electrical Engineering 機械及び電気関係の業務

Civil Engineering 軌道及び土木施設関係の業務

Commercial 乗車料金と貨物運賃の関係業務

Planning & Administration 計画及び管理業務

Finance 資産管理

出典:JICA 調査団

(2) 車両の維持管理

車両の維持管理は、インセン、イワタジー、ミィンゲの主要な3施設で行い、General Managerをインセンに置いている。

インセンは、大規模な機関車の検査・修繕施設があり、ジーゼル機関車のオーバー・ホール等

も行っている。

イワタジーに機関車の点検・修繕施設を設け、鉄道技術の訓練センターも設けている。

ミィンゲに客車及び貨車の点検・修繕施設を設けている。

なお、ネピドー駅には、機関車の点検・修理のための小規模の留置線を設けている。

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7-3

(3) Division の役割

ヤンゴン・マンダレー鉄道を維持管理する Division としては、Division11、4、5、6、7 の 5Divisionであり、ヤンゴン・マンダレー鉄道の区分は、表 7.1.2 のとおりである。

表 7.1.2 ヤンゴン・マンダレー鉄道各 Division の区分

Division No, Division 名称 起点駅名 終点駅名 キロ程 維持管理の延長

11 マンダレー タージィー駅 マンダレー駅 620.5 km 128.0 km4 カラウ ニャウヤン駅 タージィー駅 492.5 11.5 5 タウングー タウングーダイゴン ニャウヤン駅 481.0 220.7 6 インセン ダーべイン駅 タウングーダイゴン 260.3 224.1 7 ヤンゴン ヤンゴン駅 ダーべイン駅 36.2 36.2

出典:JICA 調査団

各 Division には本社組織と同様に、機械・電気技術、軌道及び土木技術、運転、販売、計画・

管理、財務を設けている。Division の構成人員は、軌道及び土木技術の関係者が多い。

(4) 現状の土木施設の維持管理組織

図 7.1.2 に一般的な維持管理組織である Division の構成を示す。土木施設は、軌道、橋梁及び

盛土構造などがある。土木施設の維持管理では、列車の安全走行と乗り心地を確保するため、

特に軌道の維持管理を行う保線作業が重要である。一般的な Division における保線作業の組織

を次の図 7.1.2 に示す。

出典:JICA 調査団

図 7.1.2 現状の維持管理組織

現状の土木施設の維持管理の概要は、次のとおりである。

管理組織は、多重構造としている。土木担当の下に Assistant Engineer を、さらに地域に

区分して、Junior Engineer を置き、さらに地域に細分化して Junior Engineer を置いている。

保線作業担当者は、軌道担当の Junior Engineer の下に置き、軌道担当者 1 名、巡視員 1名と作業員 3 名を 4 マイル(6.4km)毎に置いている。通常は 小単位の 2 又は 3 区域

を集約して 1 箇所の駅に事務所を置いている。

橋梁等の保守管理者は、軌道の保守管理者とは別の担当者を置いている。

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7-4

(5) 今後の土木施設の維持管理

施設の更新後に列車速度は、従来に比較して高速運転となり、運行本数も増加する。維持管理

組織は、列車走行時の安全を確保するため、従来の事後保全の考え方から予防保全を主とする

必要がある。このため、軌道変位(狂い)検査を測定する軌道検測車で導入して、事前に補修が

必要な箇所を摘出するなど、新たな運営、維持管理が必要となる。将来の土木施設の維持管理

組織は、下記の理由から MR の現状の組織を前提とする。

維持管理組織の Division 7 と 11 は、大都市のヤンゴン及びマンダレーに位置し、Division 4、5、6 は地方中心都市に設けられ、合計 5 つの Division に区分され、これまで運用さ

れて来た。

Division における管理監督者の守備範囲、担当範囲が明確になっており、施設の更新後

の保守業務の増加に対応が容易である。

軌道の保守担当者は、軌道保守の責任範囲と雨季の洪水による浸水などの地域の特性を

熟知している。

(6) 最近の維持管理組織の事例

近隣諸国のタイ国鉄の貨物基地の増設、インド国鉄の貨物専用線の建設が行われ、鉄道輸送が

積極的に進められている。一方で、近年においては鉄道事業の再構築や経営難から、国有鉄道

など既存の鉄道事業者が施設を国が保有し、運営を第三者が行う、「上下分離」の仕組みがあ

る。以下に図に示す。

出典:JICA 調査団

図 7.1.3 既存鉄道の上下分離の例

日本の事例は、旅客運営会社を設立し、施設を保有して運営を行い、貨物輸送会社は機

関車及び貨車を所有するが、施設の使用料を支払う形態となっている。

ベトナム国及びインドネシア国は、鉄道施設を国が所有し、旅客輸送及び貨物輸送を鉄

道会社が委託契約に基づき、運営を受託している。この上下分離方式は、施設所有者(国)

が鉄道会社に運営費として委託料を支払い、施設所有者は運賃を受け取る例が多い。

旅客または貨物の分離

例)米国、日本

旅客または貨物が主体

インフラ施設の分離

例)ベトナム、インドネシア インフラ施設の分離

主要鉄道により インフラ保有が可能

主要鉄道による インフラ保有は困難

主要鉄道による インフラ保有は困難

既存の国有鉄道を核にする場合

旅客・貨物が併存する割合

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7-5

出典:JICA 調査団

図 7.1.4 コンセション契約の例

7.1.3 維持・補修

鉄道の運行は、安全、快適かつ定時性を確保する必要があり、その為には維持管理が重要とな

る。施設の更新後のヤンゴン・マンダレー鉄道では、特急列車の最高速度が 100km/h の運行、

軸重 20ton の貨物列車の運行することから、特に車両及び軌道の保守について、配慮が必要で

ある。なお、本段落では軌道の維持・補修について述べることとする。

(1) 現状の軌道の維持・補修

ヤンゴン・マンダレー鉄道の軌道の維持管理の概要は、次のとおりである。

軌道の検査項目は、通り変位、水準変位、平面性変位及びバラストの突き固め状態の検

査を年1回行っている。

軌道の補修は、昼間に担当する区域を担当者 3 名が巡回し、補修している。

軌道の補修作業の外注化を行っていないが、将来は大型保線機械のマルチプル・タイタ

ンパー(MTT)の運転などを外注化が望まれている。

橋梁の点検は、橋梁の専門家が目視点検を 1 年に 1 回行っている.

(2) 施設の更新後の軌道の維持・補修

ヤンゴン・マンダレー鉄道の運転及び軌道の施設更新前と更新後を比較すると、列車速度の向

上、軌道の強化、軸重の増加があり、詳細は次の表 7.1.3 に示すとおりである。

国などが施設を所有

鉄道事業者が鉄道を運営

委託契約

委託料 運賃

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7-6

表 7.1.3 運転及び軌道の施設更新前と更新後を比較

項 目 現状 更新後 最高速度 特急列車 68km/h 100km/h

貨物列車 48km/h 70km/h ヤンゴン・マンダレー駅間の所要時間

特急列車 15 時間 8 時間 貨物列車 30 時間 ―

ヤンゴン・マンダレー駅間の運転本数

特急列車 2 往復 13 往復 貨物列車 1 往復 11 往復

軌道 レール 37kg/m 50 kg /m ロングレール化 なし 実施

まくらぎ PC 及び木まくらぎ

PC まくらぎ

バラスト厚さ 120~200mm 250mm 軸重 12.5ton 20ton

出典:JICA 調査団

軌道施設の更新後は、レールの重量化及びロングレール化により軌道の強化が図られるが、列

車速度の向上、運転本数の増加、軸重の増加から、安全、快適かつ定時性を確保する軌道の維

持管理が必要となる。このため、軌道の維持管理では、従来の事後保全の考え方から予防保全

を主とする必要があり、次の考え方が不可欠である。

軌道変位(狂い) の管理する基準値を定め、維持管理計画に反映する。

安全走行のために軌道変位の検査は、軌道検測車 Track inspection car を導入して定期的

に測定を行い、安全性の確認と維持管理計画に反映する。

バラストの突き固め作業は、MTT により定期的に行い、良好な軌道の状態を維持する。

(3) 軌道の整備目標値と整備基準値

整備目標値は、乗り心地状態を良好に保つための管理基準値であり、整備基準値は、安全を管

理する基準値である。

1) 軌道の整備目標値

整備目標値は、軌道の状態を良好に保つため、計画的に軌道整正作業を行うための基準となる

値であり、軌道変位量が整備目標値以下に管理することが望ましい。表 7.1.4 に 高速度が

100km/h の事例を示す

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7-7

出典:JICA 調査団

図 7.1.5 軌道変位(狂い)

表 7.1.4 軌道の整備目標値の例 (単位:mm)

軌道変位の区分 検測車による測定 静的な測定 軌間 +10, -5 +6, -4水準 11 7高低 13 7通り 13 7出典:JICA 調査団

2) 整備基準値

軌道整備基準値は、軌道整備の基準として、列車の走行の安全を確保するため、速やかに軌道

整正作業を行わなければならない基準値である。次の表 7.1.5 は、14 日以内に軌道整正作業を

行うことを前提とする軌道整備基準値の一例である。

表 7.1.5 軌道の整備基準値の例 (単位:mm)

変位の種別 検測車による測定 静的な測定 軌間 +20 +14水準 - -

高低 23 15通り 23 15平面性 23 18注:平面性は、水準変位から計算する。

出典:JICA 調査団

(4) 列車動揺測定の整備目標値

列車動揺測定は、列車走行時の乗心地を確保するため、軌道検測車又は客車に振動加速度計を

設置し、列車走行中の上下方向と左右方向の振動加速度の計測を行う。

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7-8

表 7.1.6 列車動揺測定の整備目標値の例 (単位:重力加速度)

測定車両の種別 上下動 左右動 軌道検測車又は客車 0.20g 0.20g その他 0.25g 0.25g 出典:JICA 調査団

7.1.4 保守業務

(1) 軌道変位の進み

列車走行に伴い生じるバラスト軌道変位の進行については、多くの研究がされている。日本の

鉄道総合研究所の「鉄道構造物維持管理標準 軌道編(手引き)2019 年」では、レールの種別、

路盤の区分(高架区間、強化路盤、土路盤、まくらぎ敷設の間隔、バラスト厚さ、輪重、年間

の通過トン数が影響する項目として扱い、計算する方法を示している。軌道変位のうち高低

変位の進みは、通り変位及び水準変位よりも著しいことから、特に高低変位を着目している。

表 7.1.7 と表 7.1.8 に計算条件を示す。表 7.1.7 は 2023 年の軌道の条件、表 7.1.8 は運転条件

を示す。 表 7.1.7 軌道の計算条件

項目 仕様

レール 50N レール

まくらぎ間隔 59 cm路盤 土路盤

バラスト厚さ 25 cm出典:JICA 調査団

表 7.1.8 2023 年の運転速度と運転本数(ヤンゴン-バゴー間,上り)

列車の種類 特急 ローカル メール 貨物 運転速度 (km/h) 95 65 65 651日当りの運転本数 (a) 13 17 2 11列車編成 (b) 6 16 18 24列車の軸数 (c)=(b)×4 48 64 72 961日当りの通過軸数 (d)=(a)×(c) 642 1,088 144 1,056年間通過軸数 (100 万/年) (e)=(d)×365/1000,000

0.114 0.397 0.053 0.385

出典:JICA 調査団

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7-9

予測式を用い 2023 年の高低変位の進み量の単位を mm とすると、

(特急列車による軌道変位の進み 単位;mm /年)

= 0.75 ×(年間通過軸数) = 0.75 × 0.114 = 0.09

(ローカル及びメールの列車による軌道変位の進み 単位;mm /年)

= 0.48 ×(年間通過軸数) = 0.48 ×(0.397+0.053)= 0.22

(貨物列車による軌道変位の進み 単位;mm /年)

= 2.16 × (年間通過軸数) = 2.16 ×0.385 = 0.83

上記の各列車の高低変位の進み量は、次の値となる。

(高低変位の進み量)= 0.09 + 0.22 + 0.83 = 1.1 mm

なお、表 7.1.8 を参考に、貨物列車の平均的軸重を 17ton、他の列車の軸重を 10ton と仮定し

て 1 年間の累積通過トン数を計算すると、1 億 1 千百万トンとなる。

次の表 7.1.9 は、2030 年の運転条件を示す。

表 7.1.9 2030 年の運転速度と運転本数(ヤンゴン-バゴー間、上り)

列車の種類 特急 ローカル メール 貨物 運転速度(km/h) 95 65 65 65 1日当りの運転本数 (a) 26 28 2 25列車編成 (b) 12 16 18 24 列車の軸数 (c)=(b)×4 48 64 72 96 1日当りの通過軸数(d)=(a)×(c) 1,248 1,792 144 2,400年間通過軸数 (100 万/年) (e)=(d)×365/1000000 0.456 0.654 0.053 0.876

出典:JICA 調査団

2030 年の高低変位の進み量を 2023 年と同様に計算すると、次の値となる。

(高低変位の進み量)= 2.6 mm

表 7.1.9 から 1 年間の累積通過トン数は、貨物列車の平均軸重を 17ton、他の列車の軸重を 10tonと仮定すると、1 年間の累積通過トン数は 2 億 6 千百万トンとなる。

以上の計算から、高低変位の進み量は、1 年あたり 2023 年では 1.1mm、2030 年以降は 2.6mmと予測される。

(2) 軌道検測車の運用計画

軌道検測車で軌道変位を定期的に測定して、軌道の整備目標値以下に維持する必要がある。軌

道検測車による測定距離は、一般的に 1 時間に 50km の区間が可能である。測定結果は、連続

したチャートとして出力され、保守管理のデータとして活用が容易である。表 7.1.10 に測車

による測定頻度の事例を示す。

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7-10

出典:JICA 調査団

図 7.1.6 軌道検測車の例

表 7.1.10 軌道検測車の測定頻度の例

項 目 測定頻度 備 考 日本の国土交通省技術省令 1 年に1回以上

インド国鉄(グループ D) 1 年に 2 回 最高速度 100km/h 日本の E 鉄道会社 1 年に 3 回 最高速度 130km/h 日本の K 鉄道会社 1 年に1回 最高速度 100km/h 日本の T 地下鉄 1 年に 2 回 最高速度 80km/h 出典:JICA 調査団

軌道検測車による軌道変位の測定頻度は、バラスト軌道の軌道変位の進みと 高速度を考慮す

ると、1 年に 1 回または 2 回が適切である。

(3) マルチプル・タイタンパー(MTT)による軌道整正

MTT は、バラスト軌道を連続して突き固める機械であり、両側のレールをクランプで保持し

ながら、振動するタンピングツールをバラスト内に差し込み、突き固めを行う。軌道変位の測

定機能を持っていることから、バラスト軌道の軌道変位を修正することができる。

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7-11

出典:JICA 調査団

図 7.1.7 軌道検測車の例

MTT の 1 時間あたりの作業量

日本の MTT 使用者からの聞取り調査結果とインド国鉄の運用マニュアルを表 7.1.11 に

示す。1時間あたりの作業量は、使用する機種により差が生じている。表の値は、作業

場所における準備時間を含めているが、作業場所への回送時間を含んでいない。

表 7.1.11 MTT の時間あたりの作業量

区分 使用機種等 時間当たり作業量 年間稼動日数 備考 E P 社 09-16 500m 150~180 日 跡作業の制約から 500mW P 社

シングルツール 375m -

W P 社 ダブルツール

446m -

I P 社 09-3X 400m - インド国鉄マニュアル

I CMS 300m - 同上 K P 社 08 350m 120 日 曲線及び踏切含む

出典:JICA 調査団

年間の稼動日数の実績は、土日、祝祭日及び MTT 機器の整備の期間を除き、年間 150 日から

180 日である。土路盤の軌道では、降雨時に「道床噴泥 Mud pumping」が生ずる箇所は作業が

困難な箇所があり、120 日とする例がある。

上記の表から、ヤンゴン・マンダレー鉄道の年間稼動日数は、雨季の期間などを参考にいれて

130 日、1 時間あたりの作業量 400m を想定する。

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7-12

(4) MTT による突固め作業の頻度と MTT の必要台数

MTT による突き固め作業は、軌道検測車又は他の軌道変位検査の結果を参考に、予防保全の

考え方から、軌道変位を整備目標値以下に維持する必要がある。表 7.1.12 に日本の例を示す。

列車の乗り心地を保つために、突き固め作業を 1 年に一度行う例もある。

表 7.1.12 MTT による突き固め作業の頻度の例

鉄道事業者名 作業の頻度 備 考E 1 年に一度 土路盤、最高速度 120km/h、通過トン数 3 千万/年 K 2 年に一度 土路盤、最高速度 100km/h、通過トン数 2 千万/年 T 5 年に一度 トンネル、最高速度 70km/h、通過トン数 2.5 千万/年

出典:JICA 調査団

表 7.1.13 は、MTT で 1 年から 3 年に一度の突固めを行う MTT の必要台数を示す。

MTT1台の突固め可能な施工量は、0.40(km/時間)×3×130(日) =156km(単線 m)

表 7.1.13 MTT の必要台数の試算結果

突固めの頻度 軌道の延長 (km) 必要な MTT の台数 1 年に一度 620×2=1,240 1,240 / 156 = 7.9 8 台 2 年に一度 同上 1,240 / 156 / 2 =4.0 4 台 3 年に一度 同上 1,240 / 156 / 3 =2.6 3 台

出典:JICA 調査団

ヤンゴン・マンダレー鉄道に必要な突き固め作業の頻度は、上記の事例を参考にすると、土路

盤のバラスト軌道、 高速度 100km/h の特急列車の運転を行う場合には、3 年に一度の突き固

め作業が必要である。また、高低変位の整備目標値が 13mm であり、高低変位の進み量が1

年あたり 0.9mm と想定されているが、MTT の突固め作業の頻度は、下記の理由も考慮にいれ、

3 年に一度を 小の突き固め頻度と想定する。

通常の突固め作業後にも 2~3mm の高低変位が残留し、避けられない。

乗心地を維持するために高低変位の整備目標値の 13mm に達するまでもなく、レールに

「曲がりのくせ」が残るため、軌道変位が 6mm 程度で突き固めを行うのが望ましい。

なお、ヤンゴン・マンダレー鉄道フェーズⅠ及びフェーズⅡの軌道の更新では、6 台の MTTの導入が予定されている。軌道の更新後では、5 箇所の Division が 1 台を使用できることから、

MTT による突き固め頻度は 3 年以下に短縮することが可能である。

(5) MTT 作業に必要な作業員と運用に必要な施設

1) MTT 作業に必要な作業員

表 7.1.14 は、MTT を使用して突固め作業のために必要な作業員数を示す。跡作業員の役割は、

突固め後に飛散したバラストの整理、道床肩部のランマーによる突固めを担当する。

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7-13

表 7.1.14 MTT 作業に必要な作業員数

区分 役 割 人数 指揮者 作業管理責任者 1 車上運転手 フロントオペレーター、オペレーター 2 地上作業員 跡作業員 8

計 11 出典:JICA 調査団

2) MTT の運用に必要な施設

MTT は、大型のエンジンを積載し、強力な振動突き固め装置、軌道の検測装置を備えた大型

機械であり、定期的は維持管理を必要としている。通常、MTT は、年一度の点検、3 年に一

度の全般検査を行うため、ピット構造及び天井クレーン付きの車庫が必要である。ヤンゴン・

マンダレー鉄道フェーズⅠ及びフェーズⅡの軌道の更新時に使用した施設を利用する。

(6) MTT のオペレーターと跡作業員の養成

MTT は、突き固め作業を手作業に比較して効率的に行うことが可能であるが、操作が両手と

両足で操作する為に経験を必要としている。MTTの操作オペレーターの養成は、MTTメーカー

の講習とオペレーターの助手を経験して約 3 年間が必要である。更にフロントオペレーターの

養成は、操作オペレーターを 2 年以上経験が必要である。

MTT のオペレーター養成は、ヤンゴン・マンダレー鉄道フェーズⅠ及びフェーズⅡの軌道の

更新時に MR の各 Division 技術者及び作業員で構成される大規模なチームを作り、本格的に維

持管理が始まる 2023 年までに養成することが望ましい。

(7) 分岐器等の維持管理

ヤンゴン・マンダレー鉄道の施設の更新後は、旅客列及び貨物列車は、これまでの列車速度

に比較して高速運転となり、運行本数も増加することとなる。このため、従来よりも質の高い

軌道の保守が必要となる。前述の軌道検測車による軌道変位検査と MTT による軌道整正を除

き、レール、レール継ぎ目、締結装置、分岐器、伸縮継目の保守がある。ロングレールの導入

によりレール継目箇所数は、大幅に減少するが、ロングレールの坐屈防止のための軌道管理が

新たに必要となる。

また、ロングレール箇所の交換作業は、レールの溶接作業、ロングレールの撤去及び敷設作業、

ロングレールの温度設定など新たな技術の取り組みが必要となる。表 7.1.15 に検査及び保守

作業の概要を示す。

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7-14

表 7.1.15 分岐器と他の軌道施設の検査の概要

項目 検査対象 保守作業

材料検査 レール レールの交換作業

締結装置 締結装置の交換

継ぎ目板 継ぎ目板の交換

まくらぎ まくらぎの交換

分岐器の部品 継ぎ目、ボルトの交換

機能検査 分岐器の軌道変位 バラストの突き固め

伸縮継目の軌道変位 同上

レール継目 同上

バラスト道床 バラストの補充

出典:JICA 調査団

7.2 維持管理費用

ヤンゴン・マンダレー鉄道の施設の更新後に軌道保守に必要な機器類の費用を示す。

7.2.1 軌道保守の初期費用

MTT は、大型のエンジンを積載し、強力な振動突き固め装置を備え軌道の検測装置を備えた

大型機械であり、毎年の定期的な点検と消耗部品の交換、4 年に一度の機器の詳細点検及び補

修が不可欠である。ヤンゴン・マンダレー鉄道フェーズⅠ及びフェーズⅡの軌道の更新時に 3~4 年間使用することから、本格的に維持管理が始まる 2023 年に 4 年に一度の詳細点検及び

補修が必要となる。

なお、4 年に一度の詳細な点検及び補修の費用は、購入価格の 5~10%程度と一般的に言われ

ている。軌道検測車については、使用頻度が1年で数十日と想定されることから、4年に一度

の定期的な点検と消耗部品の交換が想定される。

7.2.2 MTT の価格と耐用年

突き固め装置、軌道の検測装置を持つ大型機に属する MTT の価格は、表 7.2.1 に示すとおり、

MMK 5,000,000,000 から 7,000,000,000 であり、その耐用年数は、12 から 15 年である。

表 7.2.1 保線用機器の価格例表

メーカー 仕 様 価 格P 社 MTT Series 08 MMK 4,900,000,000 P 社 MTT Series 09 MMK 5,600,000,000 - 6,800,000,000 M 社 MTT Series B50 MMK 5,000,000,000 - 5,600,000,000 M 社 軌道検測車 M10 MMK 2,500,000,000

注意:MMK 1 = 0.0817JPY, JPY 1 = 12.2399 MMK 出典:JICA 調査団

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8-1

第8章 環境社会配慮

8.1 環境影響評価

8.1.1 序章

(1) ヤンゴン‐マンダレー鉄道整備事業(全区間、フェーズ 1、2)に係る環境許認可

ヤンゴンからマンダレーまでの約 620km の区間を対象にした本事業全体に係る環境影響評価

(EIA)は 2013 年から 2014 年にかけて行われた「全国運輸交通プログラム形成準備調査(2014)」の一部であるフィージビリティ調査(F/S)の中で実施され、2014 年に完了している。F/S は

鉄道運輸省(MORT)1が運輸省2や他のミャンマー政府関連省庁、JICA F/S 調査団との協力の

下、実施したものである。EIA 報告書は 2014 年 9 月 9 日、MORT から環境保全林業省環境保

全局(ECD, MOECAF3)に提出され、ECD は同年 10 月 28 日付レターを通じ、条件付きで事

業を認可している。

F/S に続き、2014 年から 2016 年には JICA の支援を受けた MORT(現 MOTC)傘下のミャン

マー国鉄(MR)がヤンゴンからタウングーまでの約 270km 区間(フェーズ 1)を対象に詳細

設計調査(D/D)を実施。この中で JICA D/D 調査団は 2015 年 3 月 24 日、F/S 時に作成された

EIA報告書に対する ECD/MOECAFの許認可が事業のフェーズ 1区間に対し有効であることを

確認している。

その後、フェーズ 1 に続くタウングーからマンダレーまでの約 350km 区間(フェーズ 2)を

対象にした事業準備調査が 2017 年 3 月に開始。このときにはミャンマーの EIA 法である

Environmental Impact Assessment(EIA)Procedure(2015)の下、ミャンマーにおける EIA の手

続きが正式に規定されていたことから JICA 調査団は 2017 年 3 月と 5 月に ECD と協議し、F/S時に発行された環境許認可の事業(フェーズ 2)への有効性について再び確認した。これに対

し ECD は、環境許認可は事業のフェーズ 1 区間に対しては有効であるものの、フェーズ 2 区

間については有効とはいえず、既存の EIA Procedure(2015)に則って改めて環境調査を行い、

EIA 報告書も作成、提出する必要があると回答した。これを受け、MR は JICA 調査団からの

支援の下、EIA Procedure(2015)を始めとするミャンマーでの法令・規制、及び JICA 環境社

会配慮ガイドライン(2010)に従って本事業(フェーズ 2)に係る環境社会配慮調査を実施す

ることになった。

1 鉄道運輸省は現在の運輸・通信省(MOTC)。 2 運輸省は現在の運輸・通信省(MOTC)。 3 環境保全林業省は現在の天然資源環境保全省(MONREC)。

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8-2

(2) ミャンマーにおける審査プロセスと現在の状況

ミャンマーでは、EIA Procedure(2015)に従い、事業実施機関は IEE 事業(IEE Type Project)の場合は 3 段階、EIA 事業(EIA Type Project)の場合には 4 段階において ECD/MONREC によ

る通知や確認、許可を得る必要がある。IEE 事業、EIA 事業それぞれにおける環境審査のプロ

セスと EIA Procedure(2015)に規定された ECD/MONREC による審査プロセスと期間を図 8.1.1 に示す。

環境審査段階 IEE 事業(審査期間) EIA 事業(審査期間)

スクリーニング 事業実施機関は ECD にプロジェクトプロポーザルを提出し、ECD は実施機関に対し事業が IEE 事業か EIA 事業か(あるいは、どちらでもないか)通知する。(15 営業日)

IEE/EIA コンサルタントの通知

事業実施機関は ECD に IEE/EIA を行うコンサルタントを通知し、ECD はそのコンサルタントが ECD/MONREC の登録を受けていることを確認する。 (7 営業日)

スコーピング N/A 事業実施機関は ECD にスコーピングレ

ポートを提出し、ECD はこれを承認/否認する。(15 営業日)

IEE/EIA 許認可 事業実施機関は ECD に IEE 報告書を提出し、MONREC がこれを承認/否認する。(60 営業日)

事業実施機関は ECD に EIA 報告書を提出し、MONREC がこれを承認/否認する。(90 営業日)

出典:JICA 調査団

図 8.1.1 IEE 事業、EIA 事業における許認可プロセスと審査期間

2017 年 9 月末現在、上述の 初の二段階(スクリーニング、及び IEE/EIA コンサルタントの

通知)に係る ECD/MONREC による承認は MONREC から MOTC への 7 月 17 日付レターを通

じて完了したことを確認、スコーピングレポートも 2017 年 8 月 17 日付レターを通じて MOTCから MONREC に提出されている。EIA Procedure(2015)に記載された審査期間に従えば、9月 5 日前後までに同レポートに対する ECD からのレビュー結果を得られるはずだが、現在の

ところ、レビューの結果は届いていない。EIA 報告書はすでに完了しているが、9 月 21 日に

ECD に確認したところ、スコーピングレポートに対する ECD/MONREC のレビュー完了前に

報告書を提出することはできないため、EIA 報告書を ECD/MONREC に提出できない状態が続

いている。

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8-3

8.1.2 EIA 調査の結果

(1) 環境社会配慮に係る法制度・組織

1) 環境社会配慮に係る法制度

a) 環境社会配慮に係る法制度の概観

本事業との関連性が高いミャンマーの環境政策・法制度・ガイドライン等を以下の表 8.1.1 に

示す。このうち、特記すべきものについては表に続いて詳述する。

表 8.1.1 ミャンマーにおける環境社会配慮に関わる法制度

No. 法律、制度の名称 発効年

上位の法的枠組み Constitution of the Republic of the Union of Myanmar 2008 National Environmental Policy 1994 National Sustainable Development Strategy 2009 環境保全 Environmental Conservation Law 2012 Environmental Conservation Rules 2014 Environmental Impact Assessment Procedure 2015 汚染対策、労働衛生 National Environmental Quality (Emission) Guidelines 2015

Standing Order 2_95 Occupational Health Plan 1995 Standing Order 3_95 Water and Air Pollution Control Plan 1995 Occupational Safety and Health Law (Draft) 2012 The Science and Technology Development Law 1994 Public Health Law 1972

生物多様性、自然資源管理 Protection of Wildlife, Wild Plant and Conservation of Natural Area Law 2016 Wildlife Protection Act 1936 Fresh Water Fisheries Law 1991 The Law Relating to Aquaculture 1989 Animal Health and Development Law 1993 National Biodiversity Strategy Action Plan in Myanmar 2012 Forest Law 1992

Myanmar Forest Policy 1995 Conservation of Water Resources and River Law 2006

土地収用・取得、住民移転 The Land Acquisition Act 1894 Land Nationalization Act 1953 Transfer of Immovable Property Restriction Act 1947 Disposal of Land Tenancies Law 1963 Transfer of Immovable Property Restriction Law 1987 Farmland Law 2012 Farmland Rules 2012 Vacant, Fallow, Virgin Land Management Law 2012

Vacant, Fallow, Virgin Land Management Rules 2012

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8-4

No. 法律、制度の名称 発効年

都市開発・管理 Development Committee Law 2013 The Nay Pyi Taw Development Law 2009 The City of Mandalay Development Law 2015 The City of Bago Development Law 2016 鉄道交通 Rail Carriers Law 2016 国際約束 Vienna Convention for the Protection of the Ozone Layer 1988 and Montreal

Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer 1989

Convention on the Conservation of Migratory Species of Wild Animals (Bonn Convention) (CMS)

1983

Convention on Biological Diversity 1992 Basel Convention on the Control of Trans boundary Movements of Hazardous

Wastes and Their Disposal 1992

United Nations Framework Convention on Climate Change, (UNFCCC) 1992 Kyoto Protocol 1997 Asia Least Cost Greenhouse Gas (GHG) Abatement Strategy 1998 United Nations Agenda 21 1992 Vibration Standards for Environment of International Standard Organization

(ISO) criterion of international level 2015

WHO Enviromental Health and Safety guideline 2008 その他 State’s Housing Rehabilitation and Town and Villages Development Board Act 1951 Urban Rent Control Act 1960 Protection of Ethnic Minorities Rights 2015 Myanmar Investment Law 2016 Myanmar Insurance Law 1993 Labour Organization Law 2011 The Settlement of Labor Dispute Law 2012 The Employment and Skill Development Law 2013 The Leave and Holiday Act 2014 The Minimum Wage Law 2013 Social Security Law 2012 Public Health Law 1972 The Prevention and Control of Communicable Diseases Law 1995 The Protection and Preservation of Antique Objects Law 2015 The Protection and Preservation of Ancient Buildings 2015 The Protection and Preservation of Cultural Heritage Regions Law 2015 Explosive Substance Act 1908 Petroleum Act 1934 Petroleum Rules 1937 Myanmar Fire Brigade Law 2015 The Workman’s Compensation Act 1923 出典:JICA 調査団

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8-5

b) 上位の法的枠組み

① ミャンマー国憲法(2008)

ミャンマー国憲法は 2011 年 5 月に行われた国民投票の結果を受けて批准、公布された。憲

法のうち、土地の管理、環境保全に係る条項を以下に示す。

a) 国の全ての土地及び自然資源は国家が所有する(第37条)

b) 国民の不動産の私有、継承、活用、特許は法律に従い、許可する(第37条)

c) 全ての国民は文化遺産、環境保全、人的資源開発、公共財産の保護と保全に向け、

国家に協力する義務を負う(第390条)

② National Environmental Policy(1994)

ミャンマー政府は 1990 年、環境保護に向けた政策機関として国家環境委員会(National Commission for Environmental Affairs /NCEA)を設置し、NCEA は国家環境政策(Myanmar National Environmental Policy)を 1994 年 12 月に公布した。国家環境政策はミャンマーにお

ける環境の管理に向けた一般的なガイドラインに位置付けられる。

2) 環境保全

a) Environmental Conservation Law(2012)

Environmental Conservation Law は 2012 年の連邦議会を通じ 2012 年 3 月 30 日に発効、ミャン

マーにおける環境保全のメカニズムについて規定する。目的は以下の通りである。

a) ミャンマー国家環境政策の実現

b) 持続的な開発を目指す中での基本理念の制定と環境保全に係る事項に係る統合的な指

針の提示

c) 現在と未来の世代に引き継ぐ健全で清潔な環境の創出と、自然・文化遺産の保全の実現

d) 劣化し、失われつつある生態系の回復

e) 自然資源の管理と持続的な利用を通じた利益の享受と、その減少、喪失への対処

f) 住民の環境意識の向上、拡大、協力の促進

g) 環境保全に係る国際的、地域間、二国間の協力促進の実現

h) 環境保全に係る政府組織、国際機関、NGO、個人間の協力促進の実現

本事業に も関連性の高い事項は以下の通りである。

a) モニタリングは環境影響を低減するため、事業実施者が責任を持つ(第13項)

b) 環境に影響を及ぼす汚染を引き起こした者は環境基準に従い、汚染源を処理、排出、廃

棄しなければならない(第14項)

c) 汚染をもたらす事業、資材、もしくは場所の所有者、占有者は環境汚染を監視、管理、

低減もしくは除去するための現場施設もしくは管理機材を設置、使用しなければなら

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8-6

ない。これができない場合、環境に対し影響のない方法で廃棄しなければならない(第

15項)

b) Environmental Conservation Rules(2014)

2014 年に公布された環境保全規則(Environmental Conservation Rules)は環境保全法と具体的

な規則や指針である EIA Procedure(2015)、National Environmental Quality (Emission) Guidelines(2015)との橋渡しをする位置づけにある。具体的な条項は後述する EIA Procedure(2015)や National Environmental Quality (Emission) Guidelines(2015)に記載されている。

EIA のレビューと審査に係るルールは以下の通りである。

a) 管轄省は政府関係機関の専門家から成るEnvironmental Impact Assessment Report Review

Bodyを設置する(Rule 58)

b) 管轄省はEnvironmental Impact Assessment Report Review Bodyを通じて、第三者機関もし

くはEIAに関係組織が作成、提出したEIA報告書を精査する職務を担当局に与えられる

(Rule 60)

c) 管轄省は委員会の承認を受け、EIA報告書もしくは環境管理計画を承認し、あるいはこ

れに対するコメントを出せる(Rule 61)

c) Environmental Impact Assessment Procedure(2015)

EIA 手順書(EIA Procedure/2015)の目的は、EIA 報告書を作成する上で共通の枠組みを提供

することで、法的な要求事項やグッドプラクティスを満たした専門的に高いレベルで報告書が

作成されることである。EIA Procedure(2015)には EIA を行う上で踏むべきプロセスが記さ

れている。同法に関して、本事業を実施する上で留意すべき事項を以下の通り整理する。

① ミャンマーにおける全ての開発事業はスクリーニングを経て環境レビューが必要か、必

要な場合にはどのレベルのものが必要か(IEEもしくはEIA)が決められる

② EIAには環境管理計画(EMP)と社会影響が含まれる

③ EIAには自然・社会環境のベースラインデータと事業により起こると想定される実施中、

実施後の変化の予測が含まれる

④ 初期環境評価(IEE)と環境影響評価(EIA)の両者に住民の参加が必須である

⑤ 事業の代替案を評価し、自然・社会環境及び健康に対する負の影響を 小化し、コミュ

ニティに対する正の影響を 大化するための方策を明示する必要がある

⑥ 自然・社会環境及び健康の適切な管理計画とモニタリング計画を提案することで政府と

コミュニティの、事業実施者に対する要望の実現を目指すことが求められる

⑦ MONRECの大臣に対しEIA報告書を承認すべきか否か環境の観点から提言を行うため

にEIAレビュー委員会が結成される。この提言を受け、大臣は 終判断を下す

⑧ EIAレビュー委員会の委員はMONRECによって選ばれ、産業界、学界、市民社会、政府

の代表者が含まれる

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-7

⑨ 非自発的住民移転は管轄の地域政府により進められることからEIA Procedure(2015)に

は含まれない

EIA Procedure(2015)Annex A によれば、5km 以上の鉄道と路面電車(鉄道インフラの建設、

メンテナンス、車両の運営を含む)及び 100 台以上の機関車その他鉄道の車両品の製造、修理、

組み立てを行う場合には、以下の表 8.1.2 の通り EIA が求められる。

表 8.1.2 事業の環境カテゴリ分類(鉄道事業)

No. 経済活動の種類 IEE 事業 EIA 事業 鉄、機械、電子機器

90 機関車その他鉄道の車両品の製造、修理、組み立て ≥ 100 台 運輸交通

123 鉄道と路面電車(鉄道インフラの建設、メンテナンス、車両の運営を含む)

距離 < 5 km 距離 ≥ 5 km

出典:EIA Procedure (2015)、Annex 1

3) 公害規制、労働衛生

a) National Environmental Quality (Emission) Guidelines(2015)

国の環境質(排出)ガイドライン(National Environmental Quality Guidelines)の目的は、騒音、

振動、大気汚染、排水に係る基本的な規制を示すことでこれらを適切に管理することである。

このガイドラインによれば、EIA Procedure(2015)に該当する全ての事業は、国のガイドライ

ン・基準もしくは MONREC が採用する国際基準に従う必要がある。この他、事業実施者は

EMP 及び環境許認可(ECC)に書かれた全体的及び産業別のガイドラインを順守しているか、

という観点から適切にモニタリングする義務を負う。同ガイドラインの Section 13 には EMPと ECC に従い、排ガス、騒音、悪臭、排水のサンプリング、測定について規定されている。

4) 生物多様性、自然資源管理

a) Protection of Wildlife, Wild Plant and Conservation of Natural Area Law(2016)

野生生物、野生植物の保護及び野生地域の保全に係る法律(Protection of Wildlife, Wild Plant and Conservation of Natural Area Law)は、国立公園やその他の保護地域(科学保護区、国立公園、

海洋公園、自然保護区、野生動物保護区、地球物理学上貴重な保護区、及びその他の大臣が指

定した保護区)の指定について規定する。同法の目的は以下の通りである。

① 野生生物の保護に係る政府方針の実現

② 自然地域の保全に係る政府方針の実現

③ 野生生物、生態系、渡り鳥の保護と保全に関して国が加盟する国際約束に従った行動の

実行

④ 貴重な野生生物種とその生息域の保護

⑤ 自然科学に係る研究への寄与

⑥ 動物園、植物園の設置を通じた野生生物の保護

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8-8

5) 土地収用・取得、住民移転

a) The Land Acquisition Act(1894)

土地取得法(Land Acquisition Act)には、政府が土地の所有者に対する補償を行った上でその

土地を収用する権利を持つと規定されている。同法によれば、土地の私有は認められず、全て

の土地は国家から賃借することになる。

b) Land Nationalization Act(1953)

土地国有化法(Land Nationalization Act)には、一部の例外を除き、全ての農地が大統領に帰

属すると規定されている。また、諸規則に対する違反があった場合には政府による取得を免除

された土地についても補償を支払うことなく国家に没収される、と書かれている。同法によれ

ば、大統領は農地に植えられるべき作物を決定する権利を有する。

c) Farmland Law(2012)

農地法(Farmland Law)には以下の通り規定されている。

① 農家は定められた規律に従い、農地の一部もしくは全部を農業のために売却、担保化、

賃貸、交換、寄付する権利を有する

② 国家もしくは公共の利益に資する目的で農地を再取得する必要が生じた場合は、所有者

に損失が生じない形で取得される農地に対する補償がなされる必要がある

③ 農地に建物が含まれる場合、そうした建物も補償の対象となる

d) Farmland Rules(2012)

農地規則(Farmland Rules)には、タウンシップレベルの農地管理委員会(Township Farmland Management Committee)が、国、公共から支払われるべき支援と補償額を以下に示す方針に従っ

て計算し、中央農地管理委員会(Central Farmland Management Committee)に上申しなければ

ならない、と規定されている。

① 作物、建物に対する補償

i. コメ、その他の作物に関しては、エーカーごとに、地元の市場における価格の3倍

ii. 栽培されている多年生作物については、地元の市場における価格の3倍

iii. 農地の改良を目的にした施設やその他の活動については、地元の市場における価格

の2倍

② 土地に対する補償

i. 営利目的でない事業や、国家の安全保障、長期的な利益に資する目的で取得された

場合は、農地の地元の市場価格

ii. 国の長期的な利益に資する営利目的での事業活動により取得された場合は、農地で

働く人が損失を被らない方向で協議、合意された価格、もしくは地元の市場におけ

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-9

る価格を下回らないことを条件に、中央農地管理委員会の下、位置づけられる補償

委員会(Compensation Committee)で決められた価格

Farmland Rules(2012)では、国、公共の事情により農地が別の用地に変換された場合、国、

公共は農家に対し遅滞なく補償をする必要がある、とも規定されている。

6) 都市開発・管理

a) Development Committee Law(2013)

開発委員会法(Development Committee Law)によれば、「開発委員会」は別途法律が定められ

ているヤンゴン市とマンダレー市を除く全ての州、地域における開発に係る業務を担うために

結成された組織であり、開発委員会にはタウンシップのものと、複数のタウンシップを統合し

たものとの 2 種類に分けられる。開発委員会の持つ権利と義務は以下に示す通りであるが、こ

れだけに留まるものではない。

① 汚水の処理

② 火災、浸水、嵐、その他自然災害に対する予防措置

③ 低速車両の管理

④ 道路、橋梁の建設、維持管理

⑤ 不法占拠者が持つ建物の取り壊し

⑥ 公共に資するその他の開発業務

⑦ 地域政府から求められる、その他の業務

b) The Nay Pyi Taw Development Law(2009)

ネピドー開発法(The Nay Pyi Taw Development Law)は 2009 年 12 月 30 日に施行され、ネピ

ドーの開発業務を効果的に行うことを目的にしている。同法には、国家平和開発委員会(State Peace and Development Council)の委員長が市民を含む 5~9 名の委員から成る委員会を設ける

と同時に議長、副議長、事務局長を定める、と定められている。

c) The City of Mandalay Development Law (2015)

マンダレー開発法(The City of Mandalay Development Law)には、同法に定められた禁止事項、

条項、規則、規制、手続き、命令、指示に違反した者は以下の通り罰せられる、と規定されて

いる(Section 112)。

① 委員会による犯罪に関係する物品の押収、もしくは10,000~50,000チャットの罰金

もしくは

② 警告、一定期間の事業認可の保留、ライセンス、許可、登記の剥奪

d) The City of Bago Development Law(2016)

バゴー開発法(The City of Bago Development Law)は 2016 年 12 月 27 日に施行され、バゴー

における開発業務を効果的に進めることが目的である。同法の下、バゴー市開発委員会には以

下に示す責任と義務が課されている。

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8-10

① 都市・住宅開発計画の作成

② 建物、排水路、道路の建設

③ 市場のモニタリングと管理

④ 環境の保全

⑤ 清掃、公衆衛生と安全の確保

⑥ 配水、汚水の浄化

⑦ 畜産業の監督

⑧ 食肉の生産、販売

⑨ 食肉、魚の流通と販売

⑩ 危険な動物の殺処分

⑪ 徴税、検査、モニタリングと罰則の適用 他

この法律に則り、バゴー市開発委員会はバゴー地域政府との合意、通知、命令、指示により、

同法に書かれた内容を実施するために手順書、規則、規制を発出することがある。

7) 鉄道交通

a) Rail Carriers Law(2016)

鉄道運搬法(Rail Carriers Law)では、鉄道交通を旅客、物品を全ての地域及び海外に鉄道を

使って運搬することを指す経済活動と定義し、鉄道交通には線路、地下トンネル、高架線・区

間といった運輸交通施設が含まれる、としている。以下、本事業と関連のある内容について説

明する。

列車運行中に事故が起きた場合、客車の責任者は も近い駅の駅長に報告しなければならない。

これを受け、関連する鉄道機関は即座に MOTC と中央管理委員会に報告する。中央管理委員

会は事故について調査し、負傷者や死亡者が出た事故の場合には補償についても検討する。

線路沿いの ROW の範囲は以下の通りである。

a) ROWは、線路両側のフレームから75フィートの範囲

b) 線路に沿って側溝が築かれている場合、ROWは側溝から75フィートの範囲

c) 線路が別々に設置されている場合、右側に位置する線路端と左側に位置する線路端との

間には少なくとも50フィートの距離が確保されていなければならない

国民に円滑な交通モードを提供し、もって、国の経済を支えるため、MR は中央管理委員会

(Central Management Committee)に対し、地元企業の投資家や鉄道会社と共同で BOT(Build、Operate、Transfer)、BOOT(Build、Own、Operate、Transfer)、BOO(Build、Own、Operate)、BLT(Build、Lease、Transfer)、 DBFO(Design、Build、Finance、Operate)、もしくは DCMF(Design、Build、Manage、Finance)のいずれかの方式により、鉄道交通を用いた経済活動に

係る許可を申請することができる、としている。

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8-11

手順としては、まず MR が政府からの許可の下、投資家等からの申請書を審査し、これを許

可もしくは拒否する。次に、中央管理委員会は鉄道交通及びこれに関連する活動に係る以下に

示す投資であることを確認した上で MR による投資を認可できる。

a) 土地の賃貸

b) インフラ施設の建設、賃貸

c) 客車、エンジン、通信施設、工場、車両基地の賃貸

d) MRが建設した橋梁の通過料の徴収

e) 銀行業、観光、両替、研究、助言、コンテナヤード、内陸のデポ、ホテル業、フェリー

業、商品、その他サービスの製造といったサービスの提供

f) 客車、エンジン、橋桁、その他製品の製造、販売

g) 既存の法律と齟齬のない範囲内での事業活動

MR は中央管理委員会の許可の下、線路の敷設、基本施設の建設を行う。

8) 国際約束

ミャンマーは表 8.1.1 に示した複数の会議や条約に批准している。本事業ではこれらに加え、

JICA の環境社会配慮ガイドラインに従って進めることが日本政府とミャンマー政府との合意

に基づき求められる。

ミャンマーでは土地の取得に伴う補償に係る法制度等はまだ十分に整備されておらず、JICAの環境社会配慮ガイドラインに準拠することで国際的に求められる水準での補償、支援が可能

になると考えられる。表 8.1.1 に土地の収用・取得や非自発的住民移転に係る EIA Procedure(2015)を始めとするミャンマーにおける法制度や政策と JICA 環境社会配慮ガイドラインに

定められた理念との比較表を表 8.1.3 に示す。

なお、JICA 環境社会配慮ガイドライン及び世銀のセーフガードポリシー(OP 4.12)に基づき、

非自発的住民移転者数が 200 名以下と想定される本事業には簡易住民移転計画(ARAP)の作

成が求められる。ARAP にはセンサス調査、損失資産のインベントリー調査、社会経済(家計)

調査の結果とともに、補償や支援の内容とこれに必要な費用についての情報が含まれる。

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8-12

表 8.1.3 ミャンマーの国内法令・政策と JICA 環境社会配慮ガイドライン・WB OP 4.12 と

の比較

No. JICA 環境社会配慮GL/WB OP 4.12 ミャンマーの法制度 相違点 本事業に適用

される方針 1 非自発的住民移転及

び生計手段の喪失はあらゆる方法を検討して回避に努めねばならない。(JICA 環境GL)

ミャンマーの法制度には規定がない。

非自発的住民移転及び生計手段の喪失の回避に努めるべきとの規定がミャンマーの法制度にはない。

非自発的住民移転及び生計手段の喪失は 小限に留める。

2 上記 1 のような検討を経ても回避が可能でない場合には、影響を 小化し、損失を補償するために対象者との合意の上で実効性ある対策が講じられなければならない。(JICA 環境 GL)

国家や公共の事情により農地が取得対象となった場合、補償が必要である(Farmland Law 2012:第26 項、Farmland Rules 2012:第 64 項)。加えて、Land Acquisition Act(1894)は政府が土地を取得する際の前提に補償の支払いを位置付けている。

大きな乖離は見られない。

-

3 非自発的住民移転及び生計手段の喪失に対しては、相手国等により、十分な補償及び支援が適切な時期に与えられなければならない。相手国等は、移転住民が以前の生活水準や収入機会、生産水準において改善又は少なくとも回復できるように努めなけ れ ば な ら な い 。(JICA 環境 GL)

Land Acquisition Act(1894)には、補償費の算出に当たり、土地の市場価値、樹木や作物への影響、動産、不動産の喪失、居住地や職場の変更による不便さ、土地に基づいて発生する利益の縮小をそれぞれ考慮に入れる必要がある、と規定されている。加えて、土地収用が強制的な性質のものであることに鑑み、損失資産の市場価格の 15%に当たる費用の支払いを規定している。 Farmland Rules(2012)第 67 項には農地、作物、及び建物に対し、比較的手厚い補償を定めている。

現在のミャンマー法制度の下、求められている補償水準は事業の実施前まで人々に営まれていた生活水準や収入機会、生産水準以上となる可能性はあるものの、こうした水準が確保される必要がある、との明確な規定はない。また補償の支払い時期についての規定も存在しない。

基本的にミャンマー法を適用するが、実施前に営まれていた生活水準以上の水準を確実に満たすよう、必要に応じて追加の支援を提供する。また、補償等、生計回復支援は移転等が発生する前に行う。

4 補償は可能な限り再取得価格に基づき、事前に行われなければならない。(JICA 環境GL)

(土地) Land Acquisition Act(1894:第 23 項)には補償をするに当たり、土地の市場価格を考慮するよう定められている。Farmland Rules(2012:第 67 項)は市場価格に基づいた補償を求めている。 (作物) 市場価格の 3 倍の補償の支払いが求められている。

(土地) 土地の市場価格を考慮に入れるよう求めているものの、農地以外の土地については考慮することが求められているだけであり、市場価格での補償の支払いが保証されているわけではない。また、再取得価格での補償については規定されていない。 (作物) 再取得価格での補償は求める規定はないものの、規定されている作物に対する補償額はこれを十分に満たすものであると考えられる。 ミャンマー法では補償を行うタイミングについては明示されていない。

本事業の影響範囲は MR の ROW内に留まり新たな用地の取得は想定されない。建物や作物、その他資産が影響を受ける場合には再取得価格に基づき補償を行う。また、補償等、生計回復支援は移転等が発生する前に行う。

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8-13

No. JICA 環境社会配慮GL/WB OP 4.12 ミャンマーの法制度 相違点 本事業に適用

される方針 5 大規模非自発的住民

移転が発生するプロジェクトの場合には、住民移転計画が作成、公開されなければならない。(JICA 環境GL)

ミャンマーの法制度には規定がない。

ミャンマーの法制度には、住民移転計画の作成、公開に係る規定はない。

本調査を通じて簡易住民移転計画(ARAP)が作成される。

6 住民移転計画の作成に当たり、事前に十分な情報が公開された上で、これに基づく影響を受ける人々やコミュニティとの協議が行われていなければならない。(JICA 環境 GL)

EIA Procedure(2015)には IEE 事業、EIA 事業のそれぞれのレベルに応じた情報公開と住民等との協議が求められている。

事業についての情報公開や住民協議は求められているものの、住民移転計画に特化した説明、協議を求めた規定はない。

スコーピング段階と EIA 報告書(案)の作成段階にそれぞれ 4 ヶ所 に お い て ステークホルダー協議を開催し、この 中 で MR がPAPs を含むステークホルダーに対し、事業や想定される影響、そうした影響に対する緩和策やモニタリング計画について説明している。また、これとは別に住民移転対象者に対しては個別に協議を行っている。

7 協議に際しては影響を受ける人々が理解できる言語と様式による説明が行われなけ れ ば な ら な い 。(JICA 環境 GL)

ミャンマーの法制度には規定がない。

住民協議において PAPs にとって理解できる言語と様式での説明を求めた規定は存在しない。

ス テ ー ク ホ ルダー協議は PAPsを含めた地元住民が理解できるビルマ語で、パワーポイントを使い視覚的にも理解しやすい形で行っている。住民協議の場でも同様にビルマ語を使い丁寧な説明を心掛けた。

8 RAP の計画、実施、モニタリング段階においてPAPsの意味ある参加が促される必要がある。(JICA 環境GL)

ミャンマーの法制度には規定がない。

RAP の計画、実施、モニタリング段階において PAPsの意味ある参加を求めた規定は存在しない。

RAP の計画、実施、モニタリング段 階 に お い てPAPs の意見を積極的に受け入れられる態勢を整える。

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8-14

No. JICA 環境社会配慮GL/WB OP 4.12 ミャンマーの法制度 相違点 本事業に適用

される方針 9 影響を受ける人々や

コミュニティからの苦情に対する処理メカニズムが整備されていなければならない。(JICA 環境 GL)

Land Acquisition Act(1894:第 18 項)には、PAPs が 1)PAPs 本人あるいはその代理人が補償等の支払いが行われた際にその場にいた場合には支払い等が行われた後、6 週間以内に、その他の場合には 2)補償についての通知を受け取った後 6 週間以内、もしくは補償支払完了後 6 週間以内のどちらか早い時点までに訴訟を起こすことができる、と規定されている。

ミャンマーでの苦情処理方法は裁判での訴訟であり、PAPs にとってはハードルが高い。

既存の関係機関の役割と権限、メカニズムも活用し、PAPs にとって、より便利でアクセスしやすい苦情処理機構を設置する。

10 PAPs は可能な限り早い段階、理想的には事業の発掘段階で、把握、記録され、ベースライン調査(センサス、資産インベントリー、社会経済調査とCut-off Date の宣言)を通じてその補償を受ける資格の有無等について確認することで補償目当ての住民の侵入を防ぐことが望ましい。(WB OP 4.12 Para.6)

Land Acquisition Act(1894:第 4 項)には、土地取得の通知もしくはその理由について官報に掲載し、また取得地周辺の適地に掲載する必要がある、と規定されている。

ミャンマー法では PAPs を早い段階で特定し、資格の有無について確認することを求めた規定はない。

PAPs はセンサス、資産インベントリー、社会経済調査を通じて特定、記録し、またアナウンスメントレターを通じて カ ッ ト オ フデートの宣言も行われている。

11 PAPs の補償資格の基準として、①土地に対する正式、法的な権利を有する者、②センサス調査開始時点においては土地に対する正式、法的な権利を持たないが、土地や資産に対し主張できる権利を持つ者、③占有する土地に対する認知できる法的権利を持たない者が含まれる。( WB OP 4.12 Para.15

土地の占有者は土地取得についての説明と補償を受ける権利について説明を受ける(Land Acquisition Act(1894:第 9 項)。

補償を受け取る資格を持つ者についての詳細な規定は存在しない。特に有する土地に対する認知できる法的権利を持たない者に対する補償については一切記載がない。

PAPs の法的な権利形態については調査を通じて確認し、この結果も踏まえ、補償を受け取る資格者等 に つ い てARAP の中で定められた。

12 土地に依拠した生計を立てているPAPsに対しては代替地の提供を優先的に検討することが望ましい。( WB OP 4.12 Para.11)

ミャンマーの法制度には規定がない。

土地に依拠した生計を立てる PAPs に対し代替地の提供を優先的に検討することが定められた規定は存在しない。

補 償 の 内 容 はPAPs の意向や代替地の有無等を含めて検討し、金銭等による補償と な る こ と になった。

13 移転から生計の回復までの移行期間を考慮した補助が提供されるべきである。(WB OP 4.12 Para.6)

ミャンマーの法制度には規定がない。

移転から生計の回復までの移行期間を考慮するよう求めた規定は存在しない。

補償方針の策定に当たっては移転から生計の回復までの移行期間を考慮に入れる。

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8-15

No. JICA 環境社会配慮GL/WB OP 4.12 ミャンマーの法制度 相違点 本事業に適用

される方針 14 住民移転の対象とな

る人々のうち、社会的弱者、特に貧困者、土地を持たない人々、老人、女性や子供については特別な配慮が要る 。( WB OP 4.12 Para.8)

ミャンマーの法制度には規定がない。

社会的弱者に対する特別な配慮を求めた規定は存在しない。

社会的弱者には支援を提供する等、配慮する。

15 土地の取得・収用や住民移転を伴う事業のうち、移転住民数が200 人を下回るものについては簡易住民移転計画を作成する。( WB OP 4.12 Para.25)

ミャンマーの法制度には規定がない。

簡易住民移転計画についての規定は存在しない。

本事業での非自発的住民移転者数は 200 人を下回るものと想定されることからARAP を作成する。

出典:JICA 調査団

9) 関係機関の役割

本事業に係る環境管理には役割、責任、利害の異なる複数のステークホルダーが関わる。とり

わけ、MR には MOTC とその他の関係政府機関の支援を受けながら、ミャンマーの国民と自

然環境が事業による影響を回避、低減、あるいは代償し、また事業から適切、十分に裨益する

よう必要な措置を講じることが求められる。本事業に関係する主なステークホルダーとそれぞ

れの役割と責任を以下の表 8.1.4 に示す。

表 8.1.4 環境社会配慮に関係する機関の役割

ECD/ MONREC

ミャンマーにおける環境を管理する主たる責任機関として ECD 及びその監督機関である MONREC は環境社会配慮に係るプロセスを(スコーピングレポート、EIA 報告書等のレビューを通じて)施工前、(モニタリング報告書のレビューを通じて)施工中及び施工後にレビューする。EIA 報告書の承認後、ECC の発行を通じて工事実施の前提を築くのは MONREC である。

MR

事業の実施機関として、事業によって生じうる影響を適切に管理し、自然及び社会環境を保護する全体的な責任を負う。MR には operating、mechanical and electrical engineering、civil engineering、commercial、planning and administration、 finance)という 6 つの部局が位置するが、環境管理の担当部署は存在せず、計画局や総務局、地域局がプロジェクトベースで担当することが実態となっている。MR は直接もしくは代替者(コンサルタントや施工業者)を通じて、環境を適切に管理する上で適切な措置を取る。

MOTC

MR の監督機関である MOTC は EMP の実行、特に土地の取得や非自発的住民移転といった地域政府や他の関係機関の協力が求められる事項において MR に支援を提供する。MR、ECD 間の正式なやりとりは両局の所管省を通じて行う必要があることから、MOTC は MR と ECD を繋ぐ正式な窓口としての役割を果たす。

関係政府 機関

地域政府(マンダレー地域政府、バゴー地域政府)や GAD、土地記録局(Department of Agricultural Land Management and Statistics)は環境管理活動、特にそのうち住民協議や PAPs への補償・支援の提供、用地の取得、苦情処理に係る活動等において MR を支援する。

出典:JICA 調査団

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8-16

(2) 社会・経済状況

社会経済調査は、事業対象地域及びその周辺の社会経済状況に係るベースラインデータを取得

することを目的に実施された。調査はセンサス、損失資産のインベントリー調査、世帯別の家

計調査の他、インタビュー、フォーカスグループディスカッション、及び各種データの確認を

通じて行われた。インタビューに使用した調査票は事業の性質と調査の目的を踏まえて作成し

た。調査票を Appendix8.1(1)に示す。

1) 社会環境

a) 人口

ヤンゴン-マンダレー鉄道の対象区間はマンダレーとバゴー、2 つの地域を通過する。マンダ

レー地域の人口は 6,442,000 人とミャンマーで 2 番目に多い。人口密度は 1 平方マイル当たり

424 人であり、7 つの地区、30 のタウンシップと 2,320 の区村から成る。マンダレー地域の中

心都市マンダレー市は 650,000 人の人口を擁する。

一方、バゴー地域の面積は 15,214 平方マイル、人口は 5,014,000 人で人口密度は 1 平方マイル

当たり約 300 人である。バゴー地域はバゴー、ピー、タヤワディー、タウングーの各地区から

成り、28 のタウンシップと 1,619 の区村が含まれる。本事業の対象区間であるタウングー‐マ

ンダレーは 18 のタウンシップ(Pyigyi Takon、Chan Mya Thazi、Amarapura、Sint、Gaing、Kyaukse、Myit Thar、Wundwin、Thazi、Pyaw Bwe、Yamethin、Naypyitaw-Tetkone、Naypyitaw-Pyinmana、Naypyitaw-Lewe、Pobbathiri、Yedashe、Oktwin、Taungoo、Swa)に跨る。18 のタウンシップの

概況を以下の表 8.1.5 に示す。

表 8.1.5 沿線タウンシップごとの面積と人口(タウングー‐マンダレー)

No. 地域 タウンシップ

面積(平方マイル)

高高度 (ASL*/feet)

人口 男女比(男:女)

人口 増加率

(2015-2016,%/年)

世帯数

計 男性 女性 1 Mandalay Pyigyi Takon 9.99 256 153,344 73,963 79,381 1:1.07 1.26 30,6762 Chan Mya Thazi 9.97 - 215,094 100,373 115,021 1:1.14 1.53 38,5443 Amara Pura 3.25 250 185,305 86,849 98,456 1:1.2 2.00 40,4064 Sint Gaing 0.47 260 131,842 62,322 69,520 1:1.11 1.46 27,8645 Kyaukse 1.291 271 235,086 112,747 122,339 1:1.09 1.45 7,4616 Myit Thar 3.47 305 193,203 92,843 100,360 1:1.08 1.45 41,5977 Wundwin 1.82 460 235,575 111,153 124,422 1;1.12 0.745 52,7398 Thazi 0.63 700 198,449 94,107 104,342 1:1.109 0.863 41,5829 Pyaw Bwe 0.776 683 271,321 128,621 142,700 1:1.109 0.99 57,882

10 Yamethin 1.45 654 252,524 120,067 132,457 1:1.103 0.991 54,77911 Union

Territory Naypyitaw-Tetkone 1.83 2250 225,440 108,871 116,569 1:1.107 0.28 45,548

12 Naypyitaw-Pyinmana 2.29 320 183,604 87,375 96,229 1:1.0 2.11 36,47013 Naypyitaw-Lewe 0.775 200 287,879 139,518 148,360 - 2.18 54,90414 Pobbathiri 15.05 320 99,887 49,390 50,578 1:1.103 1.46 -15 Bago Yedashe 1.04 320 203,215 98,657 104,558 1:1.105 1.17 44,77816 Oktwin 1.019 200 169,775 81,853 87,922 1:1.107 0.75 34,16717 Taungoo 0.73 162 241,895 115,971 125,924 1:1.108 0.41 49,75618 Swa 6.96 183.92 10,848 5,040 5,808 2:3 - 2,683

* ASL:海抜(Above Sea Level)、-:データなし 出典:General Administration Department(2017)

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8-17

b) 宗教、人種

マンダレーとバゴーは共に比較的民族色が豊かな地域といえる。両地域で信仰されている宗教

は主に仏教だが、その他にイスラム教、キリスト教、ヒンズー教が挙げられる。総務局(General Administration Department:GAD)の保有するデータ(2017 年 3 月)によれば、タウングー‐

マンダレー区間に跨る 18 のタウンシップに住む人々は以下の表 8.1.6 に示す通り、そのほと

んどが仏教徒である。

表 8.1.6 沿線タウンシップごとの宗教(タウングー‐マンダレー)

No. タウンシップ 仏教徒 キリスト教徒 ヒンズー教徒 イスラム教徒 その他 合計 1 Pyigyi Takon 1487,58 4,027 296 263 - 153,3442 Chan Mya Thazi 196,805 8,284 462 822 - 215,3943 Amara Pura 172,243 12,363 352 347 - 185,3054 Sint Gaing 124,852 6,662 - 328 - 131,8425 Kyaukse 218,927 16,047 10 102 - 235,0866 Myit Thar 19,011 3,046 8 34 - 193,2037 Wundwin 235,159 408 8 - - 235,5758 Thazi 190,501 7,245 463 240 - 198,4499 Pyaw Bwe 255,611 15,161 446 103 - 271,321

10 Yamethin 243,769 8,520 177 58 - 252,52411 Naypyitaw-Tetkone 222,710 2,474 164 92 - 225,44012 Naypyitaw-Pyinmana 158,412 15,197 194 9801 - 183,60413 Naypyitaw-Lewe 281,022 2,349 35 4473 - 287,87914 Pobbathiri 99,532 364 1 89 81 99,88715 Yedashe 199,223 1,425 615 1,809 143 203,21516 Oktwin 161,076 1,176 1,560 4,861 1,102 169,77517 Taungoo 230,097 6,138 2,804 679 2,177 241,89518 Swa 10,709 84 - 55 - 10,848

出典:General Administration Department(2017)

表 8.1.7 沿線タウンシップごとの民族

No. タウンシップ ビルマ シャン カレン チン ラカイン モン カチン カヤー その他

1 Pyigyi Takon 99.29 0.49 0.065 0.055 0.035 0.012 0.03 0.005 -2 Chan Mya Thazi 98.64 0.552 0.128 0.090 0.092 0.028 0.143 0.017 -

3 Amara Pura 99.97 0.001 0.006 0.017 0.007 - 0.006 - -4 Sint Gaing 94.654 0.02 0.013 0.010 0.006 0.004 0.003 - 5.2865 Kyaukse 91.497 0.041 0.030 0.060 0.051 0.007 0.008 0.002 8.2316 Myit Thar 99.975 0.012 - 0.005 - - - - -7 Wundwin 99.9945 - - - - - - - -8 Thazi 95.58 0.017 0.02 - 0.003 - 0.006 - 4.379 Pyaw Bwe 99.986 0.005 0.006 - 0.003 - - - -

10 Yamethin 99.97 0.004 0.006 0.005 0.002 0.0004 0.0008 0.0004 -11 Naypyitaw-Tetkone 99.92 0.008 0.01 0.03 0.002 0.003 6.01 - 0.01312 Naypyitaw-Pyinmana 83.83 0.302 5.24 0.0112 0.019 0.001 0.02 0.013 9.113 Naypyitaw-Lewe 97.24 0.007 0.191 0.145 0.002 - 0.001 0.002 1.4114 Pobbathiri 99.5 0.026 0.04 0.03 0.01 0.002 0.007 - 0.3715 Yedashe 98.3 0.35 0.91 0.005 0.01 0.002 0.008 - -16 Oktwin 93.89 0.003 2.89 0.28 0.005 - - - -17 Taungoo 83.1 2.25 8.96 0.15 0.07 0.01 0.02 0.73 -18 Swa 98.72 - 0.51 - - - - - -

出典:General Administration Department(2017)

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8-18

c) 雇用状況

タウングー‐マンダレー区間に位置するタウンシップの労働生産人口のうち 86%が就業して

おり 14%が職についていない。タウンシップごとの就業・失業状況について表 8.1.8 に示す。

表 8.1.8 沿線タウンシップにおける就業・失業状況

No タウンシップ 総人口 労働生産人口 就業者 失業者 就業割合(%) 失業割合(%)

1 Pyigyi Takon 153,344 95,575 56,993 38,582 59.63 40.372 Chan Mya Thazi 215,094 143,530 138,879 4,651 96.76 3.243 Amara Pura 185,305 181,599 177,811 3,788 97.91 2.094 Sint Gaing 131,842 80,715 67,989 12,726 84.23 15.775 Kyaukse 235,086 190,092 160,422 29,650 84.39 15.616 Myit Thar 193,203 136,026 122,991 13,035 90.42 9.587 Wundwin 235,575 199,820 198,160 1,660 99.17 0.838 Thazi 198,449 92,271 71,160 3,728 77.12 22.889 Pyaw Bwe 271,321 271,321 262,646 8,675 96.80 3.20

10 Yamethin 252,524 180,430 98,499 8,1931 54.6 45.411 Naypyitaw-Tetkone 225,440 150,072 130,032 10,040 86.65 13.3512 Naypyitaw-Pyinmana 183,604 130,050 124,992 5,058 96.11 3.8913 Naypyitaw-Lewe 287,879 176,641 169,529 7,112 95.97 4.0314 Pobbathiri 99,887 82,359 45,096 4,263 54.76 45.2415 Yedashe 203,215 121,069 119,797 4,850 98.95 1.0516 Oktwin 169,775 109,069 109,000 4,386 99.94 0.0617 Taungoo 241,895 155,516 147,940 6,587 95.13 4.8718 Swa 10,848 7,375 5,300 2,075 71.86 28.14

合計(人数/平均) 3,494,286 2,503,530 2,207,236 300,566 85.58 14.42

出典:General Administration Department(2017)

d) 地元経済

GAD によれば、沿線のタウンシップでは農業や家畜生産を始め、複数の事業が行われている。

一般的に小規模のビジネスは村落部で行われており、都市・準都市部では小規模なものから大

規模なものまで幅広く事業が営まれている。調査対象地域周辺のタウンシップはヤンゴンとマ

ンダレーとを結ぶ高速道路沿いに位置することもあり、経済的には比較的裕福であると考えら

れる。

e) 教育

鉄道沿線に位置する 18 のタウンシップの教育状況を以下の表と図に示す。これを見ると、

Pyigyidagun で読み書きのできない住民の数が 6,474 人と も多く、その割合はタウンシップ

に住む人々全体の 20.22%に上ることが分かる。一方、 も少ないタウンシップは Thazi であ

り、割合は 0.22%である。Amarapura タウンシップには も多くの大学生がいるが、これは同

タウンシップに構える Yadanabon 大学の存在が影響しているものと考えられる。

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8-19

表 8.1.9 沿線タウンシップにおける教育水準

No. タウンシップ 文盲 小学校 ミドルスクール 高校 大学

合計 計 (%) 計 (%) 計 (%) 計 (%) 計 (%)

1 Pyigyidagun 6,474 20.22 1,923 6.01 13,093 40.89 10,531 32.9 - - 32,021

2 Chanmya Thazi 5,135 12.91 2,228 5.60 4,157 10.45 25,306 63.6 2,957 7.4 39,783

3 Amarapura 757 1.54 7,124 14.49 5,706 11.61 15,699 31.9 19,878 40.4 49,1644 Sintgaing 1,016 2.82 6,227 17.26 6,015 16.67 11,202 31.1 11,619 32.2 36,0795 Kyaukse 2,650 2.25 86,947 73.74 4,178 3.54 19,898 16.0 4,239 3.6 117,9126 Myittha 877 2.79 10,455 33.25 2,229 7.09 17,883 56.9 - - 31,4447 Wundwin 563 1.77 6,279 19.75 9,756 30.68 15,201 47.8 - - 31,7998 Thazi 104 0.22 21,026 43.83 6,827 14.23 20,010 41.7 - - 47,967

9 Pyawbwe 1,820 3.90 12,602 26.99 11,788 25.25 20,484 43.9 - - 46,694

10 Yemathin 859 1.95 21,085 47.90 3,512 7.98 17,112 38.9 1,454 3.3 44,022

11 Naypyitaw- Tatkone 1,385 3.15 13,000 29.55 10,096 22.95 19,517 44.4 - - 43,998

12 Naypyitaw- Pyinmana 1,066 3.13 16,255 47.77 628 1.85 15,583 45.8 494 1.5 34,026

13 Naypyitaw- Lewe 1,420 2.33 31,889 52.25 9,864 16.16 17,862 29.3 - - 61,035

14 Poppathiri 614 3.49 3,057 17.37 1,383 7.86 12,544 71.3 - - 17,59815 Swa 190 5.88 223 6.91 984 30.47 1,832 56.7 - - 3,22916 Yedashe 297 0.91 2633 8.04 17143 52.34 12678 38.7 - - 3275117 Oaktwin - - 585 3.11 8094 43.08 10110 53.8 - - 1878918 Taungoo 592 1.16 352 0.69 12612 24.62 21106 41.2 16572 32.4 51234

* 単位:人 出典:General Administration Department(2017)

図 8.1.2 沿線タウンシップにおける教育水準

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8-20

F/S 時に作成された EIA 報告書(2014)によれば、4%の沿線住民は読み書きができず、28.5%は初等教育、37.5%は中等教育、18.5%は高等教育をそれぞれ修了しており、10%は学士号を取

得している。

f) 健康状態

次表に、沿線の 18 のタウンシップに見られる病気であるマラリア、下痢、結核、肝炎、赤痢、

急性呼吸器感染症(ARI)、呼吸器疾患を患う患者数と、HIV/AIDS の患者数を示す。これを見

ると、マラリア症例数が も多いのは Naypyiatw-Tatkone であり、205 人に上ることが分かる。

ほぼ全てのタウンシップで下痢を訴える患者数が多く、なかでも Kyaukse では 2,561 人に上る。

結核も多くのタウンシップが抱える問題となっているが、特に Naypyitaw-Lewe で 607 人と多

い。肝炎が も多いのはタウングーである。呼吸器疾患についての情報は十分とはいえないが、

Yamethin では 555 例、確認されている。HIV/AIDS の患者数は地域によってばらつきがあるが、

タウングーで も多く 340 人が報告されている。

表 8.1.10 沿線タウンシップで見られる病気と HIV/AIDS の患者数

No タウンシップ 良く見られる病気

HIV/AIDSマラリア 下痢 結核 肝炎 赤痢 呼吸器疾患 ARI

1 Pyigyidagun - 338 429 - 162 - - 562 Chanmyathazi - 174 516 - 70 - - -3 Amarapura 37 996 337 5 418 - - -4 Sintgaing - 131 82 19 428 - 43 45 Kyaukse 94 2,561 280 142 949 - - -6 Myittha - 230 30 3 41 - - -7 Wundwin 38 2,386 983 - - 218 Thazi 119 2,149 88 3 945 - - 109 Pyawbwe 63 1,836 127 39 734 - - 17

10 Yamethin 1,859 360 685 555 - 131

11 Naypyitaw- Tatkone 205 2,458 325 12 945 - -

12 Naypyitaw- Pyinmana 80 999 154 - 157 - 24 320

13 Naypyitaw- Lewe 75 2,061 607 25 551 - - -

14 Pobbathiri - 484 292 22 101 - - 2015 Swa 6 72 5 8 2 - - -16 Yedashe 5 350 14 1 64 - - 1017 Oktwin 10 2,302 411 - 597 - - 1218 Taungoo 13 2,137 137 34 1,006 - - 346

* - :データなし 出典:General Administration Department(2017)

g) 運輸交通

事業対象地周辺に位置する 18 のタウンシップで利用可能な交通手段を把握するため、各タウ

ンシップにある空港、港、鉄道駅、バスターミナル及びタウンシップの外に向かう道路の数に

ついても確認した。その結果を以下の表 8.1.11 に示す。これを見ると、Lewe を除き、空港は

存在しないことが分かる。同様に、港湾施設があるのは小さな港を有する Oaktwin とタウン

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8-21

グーだけである。Lewe と Thazi にはそれぞれ 10、14 の駅があるが、これらを除くと多くのタ

ウンシップで 1~6 つの鉄道駅が存在する。Pyinmana(ネピドー)と Pyigyidagun にはそれぞ

れ 71、79 のバスターミナルがある一方、Pobbathiri、Singaing には 1 つもない。タウンシップ

の外に向かう道路数はほとんどのタウンシップで 1~6 程度であり、Kyaukse には 7 本ある。

表 8.1.11 沿線タウンシップで利用可能な交通手段

No. タウンシップ 空港 港湾 鉄道駅 バスターミナル タウンシップを超える道路 1 Amarapura - - 1 2 42 Chanmyatharsi - - 3 3 33 Kyaukse - - 2 17 74 Myitthar - - 3 6 35 Lewe 1 - 10 3 56 Pobbathiri - - 5 - 37 Pyinmana - - 4 70 18 Oaktwin - 1 5 3 39 Pyawbwe - - 4 6 3

10 Pyikyidagun - - 1 78 -11 Singaing - - 3 - 612 Swa - - 1 3 -13 Tatkong - - 5 7 114 Taungoo - 1 3 26 415 Thazi - - 14 5 416 Wundwin - - 3 3 117 Yemathin - - 5 5 618 Yedashe - - 6 6 3

出典:General Administration Department(2017)

h) 水利用

① タウングー

タウングーで利用されている水源は主に地下水であり、全給水量の9割を占める。タウンシッ

プ内を流れる Sittaung 川はあまり利用されていない。ほとんどの家庭では約 50 フィートの

深さの井戸が掘られ、ここからの水が使われている。一世帯が一日に使う水量は 50 ガロン

以上と考えられているが、全体でどの程度の地下水が利用されているかについてのデータは

確認できていない。

② ピンマナ

ピンマナでは地下水に加え、Nga Leik ダムからの取水も利用されている。都市部の約半分の

地域で給水システムが整備されており、他の地域では井戸からの地下水が使われている。一

部の井戸の深さは 25 フィート程度であり、家庭が一日に使用す水量は 40 ガロン超である。

夏の間、十分な地下水量が確保できない場合には河川水も利用されている。

③ マンダレー

地下水

マンダレー市で一日に利用される地下水の量は 100,000 m3近くとされ、同市の給水の約 9 割

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8-22

を占める。多くの井戸は地下深く 150m 程度に位置する帯水層を利用しているが、 近では

地中のさらに奥、約 300m の位置にある別の帯水層から取水するケースも現れている。マン

ダレー市開発委員会(MCDC)は市内に多くの公営の井戸を有する。半径 400mm の掘削孔

の数は 37 であり、そのうち 25 は Ayeyarwaddy 川沿線に位置する。地下水量が限られる市の

東側には一日の利用時間が 8 時間に制限されている地域もある。

地表水

地下水量が限られることから MCDC は過去 10 年、地表水の利用を進めてきた。2006 年には

水処理プラント(WTP4)を建設し、Sedawgyi ダムの水を沈殿と濾過を通じて処理、利用し

ている。この他、塩素処理施設も建てられたが、現在は機能していない。WTP4 の処理水量

は 4,800 m3/日である。

一方、Myo Patt 道路沿い、Kyauk Thabalk の河岸に近年作られた水処理プラント(WTP8)は

Ayeyarwaddy 川の水を利用している。処理水量は限られ、マンダレー市の人口、将来の需要

量を踏まえると処理水量を増やすことが求められている。

i) 廃棄物処理

① タウングー

2017 年 8 月に実施したヒアリングによれば、タウングーの住民は通常、家庭から出た廃棄物

を埋め立て処分するが、一部の住民は週に 1~2 回焼却処分もする。タウングー市がごみを

収集する場合には市が各家庭を訪問して収集する。

② Pyinmana

2017 年 8 月に行われたヒアリングによれば、Pyinmana の住民は廃棄物を埋め立てもしくは

焼却して処分する。この他、市による廃棄物の収集も 3 日に 1回程度の頻度で行われている。

焼却処分の頻度は週に 2 回程度とのことである。

③ マンダレー

MCDC によれば、市内で発生する廃棄物の量は一日当たり約 896 トン、一人当たり 0.64kg程度である。マンダレー市による廃棄物管理システムは一次収集、二次収集、 終処分とに

分けられる。一次収集には各家庭を訪問して直接収集する方法とコンテナ内に集められた廃

棄物を収集する方法等がある。MCDC によれば、廃棄物の約 8 割は回収できているとのこと

だが、収集システムが十分に整備されていないこと、住民の環境意識が乏しいこと等からゴ

ミの不法投棄は多くみられる。一方、産業廃棄物は業者からの依頼を受けて市が有料で収集

している。

MCDC は 4 つの廃棄物処理施設を保有、管理する。このうち、マンダレーの北方、Kyar Ni Kaには処理量 450 t/日の処分場が、南方の Thaung Inn Myout Inn には処理量 300 t/日の処分場

がある。その他の施設の一つは地方部をターゲットにしたパイロットプロジェクトとして設

置された嫌気性消化装置であり処理能力は 30 t/日、もう一つはマンダレーの北、Kyar Ni Kanに位置する医療廃棄物専門の焼却用の穴である。これらに加え、マンダレーの南、Thaung Inn

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8-23

Myout Inn に処理能力 30 t/日の焼却炉があるが、処理能力が低いこと、燃料費が高いことか

ら現在は使用されていない。

産業排水といった液状廃棄物については、Pyi Gyi Tagon 工業地帯内に工業地帯からの排水処

理を目的にした一時的な処理施設が建設されている。ここで処理された水はパイプラインを

通って Dohte Hta Waddy 川へと排出される。

表 8.1.12 マンダレー市の廃棄物管理システム

廃棄物の種類 概要 (1) 固形廃棄物 廃棄物処理 ( 終処分)

埋立処分場 1: 処理能力 450 t/日、Kyar Ni Kan(マンダレーの北) 埋立処分場 2: 処理能力 300 t/日、Thaung Inn Myout Inn(マンダレーの南)

廃棄物収集システム 廃棄物の収集車(日中):トラック 211 台、三輪車 179 台、カート 322 台 廃棄物の収集車(日中):トラック 77 台

産業廃棄物 (非危険物)

依頼を受けて収集する方法

(2) 液状廃棄物 Pyi Gyi Tagon工業地帯から

の産業排水 Pyi Gyi Tagon工業地帯内の処理施設。処理水はパイプラインを通ってDohte Hta Waddy 川へと排出される

出典:MCDC

2) 自然環境

a) 地形、地質

ミャンマーの地形は西部の丘陵地帯、中央の低地、東部の丘陵地帯の 3 つに大きく分けられる。

このうち、本事業対象地は中央低地に位置する。中央低地には Ayeyawady に広がる低地の他、

北から南に向かって緩やかに下がってくるバゴーの高地も含まれる。

① バゴー地域

バゴー地域はミャンマーの中央部南側に位置し、北側でマグウェー地域とマンダレー地域、

東側でカレン州、モン州とマルタバン湾、南側でヤンゴン地域、西側でエーヤワディ地域と

ラカイン州と接する。地域の都はバゴーである。

ミャンマーの地質は比較的シンプルといえる。バゴーのすぐ東を通り、マルタバン湾の西側

に至る Sagaing 断層は同国における主な活断層の一つであり、地域の地質構造において重要

な位置を占める右横ずれ断層(断層面の相手側が右に動いた断層)である。バゴー地域の高

度マップを以下に示す。

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8-24

図 8.1.3 高度マップ(バゴー地域)

② マンダレー地域

マンダレー地域はミャンマーの中央部にあり、西部にサガイン地域とマグウェー地域、東部

にシャン州、南部にバゴー地域とカレン州が位置する。東側には高地があり、南西部には山

地(Bago Yoma)が位置する。東側の台地は同地域で も高い部分に位置し、高度は 6,000~7,000フィートに至る。4,981フィートの死火山であるポパ山は観光地としても有名である。

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8-25

図 8.1.4 高度マップ(マンダレー地域)

b) 土質

バゴーとマンダレーの土壌は複数ある。線路沿線のうち、バゴー地域に位置する一帯には牧草

地土(meadow soil)、牧草地沖積土(meadow alluvial soil)、沖積土(alluvial soil)が広がる。

マンダレー地域には牧草地土、牧草地沖積土、黄褐色森林土(yellow brown forest soil)、Indaing土(Indaing soil)、圧縮土が見られる。

マンダレー、バゴー両地域は沖積土、赤・黄褐色森林土(red and yellow brown forest soil)、黄

褐色乾燥森林土(yellow brown dry forest soil)、軽森林土(light forest soil)、サバンナ土壌(catena savanna soil)、塩分性湿地グライ土(saline swampy meadow gley)、圧縮赤色土(compact red earth)、黄色土(yellow earth)、山岳褐色森林土(mountainous brown forest soil)、ポパ火山灰土壌(Popa complex soil)という複数の土質から形成されている。各地域の土壌図を図 8.1.5 に示す。

① 沖積土

土は砂、シルト、粘土に分けられるが、このうち、シルトの量が多い土が沖積土に当たる。

丘陵地、沖積平野、デルタ、かつて池や海岸だった場所を含め、ミャンマー各地で見られる。

土壌反応は通常、中性であり、河川による堆積の結果として形成される。土は透過性が高く、

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8-26

耕作しやすいことからコメ、プランテーション作物、野菜、豆類、トウガラシ、サトウキビ、

トウモロコシの栽培といった農業に適している。

② 牧草地土

牧草地土には複数の種類ある。牧草地土あるいは稲作土はミ沖積平野、デルタ、海岸平野、

渓谷等、ミャンマーの多くの地域で見られる。牧草地土は厚みがあり、多くの場合、粘土質

で稲作に適している。北部の乾燥地の土は色が薄い(明るい)という特徴がある。土壌反応

は中性だが、一部アルカリ性反応を示すものもある。栄養豊富なわけではないが、野菜は栽

培できる。

雨量の多い山岳部とミャンマー南部の牧草地土は黄褐色で酸性もしくは中性の土壌反応を

見せる。しばしば川が氾濫する中世期平野の牧草地土は通常、塩分を多く含み炭化していな

い。北部の土に比べ、多くの栄養素を含む。鉄分も多く含むが、稲作、野菜の栽培に利用で

きる。

③ 牧草地沖積土

牧草地沖積土(meadow alluvial soil(Fluvic Gleyol))は氾濫原に見られる。構造はシルト質

粘土状であり、コメの他、ラッカセイ、ゴマ、ヒマワリ、ジュート、サトウキビ、その他野

菜の栽培が可能である。土壌反応は中性であり、養分は多い。灰色牧草地土(meadow gley soil)、沼澤牧草地土(meadow swampy soil)は一年の半分以上の期間、浸水している低地に見られ

る。粘土質であり、通常、鉄分を多く含み強い酸性を帯びている。また、長い間、湿った状

態でいることから植物にとって有害なアルミニウム、硫黄、マンガンを含む可能性がある。

腐植土の割合が高く、リンやカリウムが不足する。水が引いた後、コメ、ジュートが栽培可

能である。

④ 黄褐色乾燥森林土と Indaing 土

黄褐色乾燥森林土(yellow brown dry forest soil)と Indaing 土(Indaing soil)はそれほど高く

ない乾燥地の高原地帯で見られる。土は乾燥し、砂っぽいことから森林が形成される。こう

した土では乾季作が可能。

⑤ 暗色圧縮土

暗色圧縮土(dark compact soil)はマンダレー地域の川に近い乾燥した平原で見られる。赤褐

色サバンナ土(red brown savanna soil)と共に、乾燥地での農業にとって重要な土壌といえる。

多くが粘土状の成分から成り、そのために乾燥しすぎたり、逆に水分の量が多すぎたりする

と扱いが難しくなるため、灌漑農業に 適である。乾燥すると深い亀裂が生じ、雨が降ると

泥のようになり高い粘着性を示す。浸透性が低いことから塩化がしばしば起こる。pH 濃度

は 7~9 程度と高いアルカリ性である。窒素、リンが少ないが灌漑農業としてコメを栽培で

きる。

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8-27

出典:農業畜産灌漑省

図 8.1.5 土壌図(バゴー地域)

出典:農業畜産灌漑省

図 8.1.6 土壌図(マンダレー地域)

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8-28

c) 気候

① バゴー地域

バゴー地域南部は熱帯モンスーン気候、北部は熱帯サバナ気候に位置する。バゴー、タウン

グー、ピーでは も暑い月の平均気温が 31~32°C 程度に上る。一方、 も寒い月(1 月)

の平均気温は 24°C 程度である。平均年間降雨量は Myitkyo で 132.36 インチ(約 3,362mm)、

降雨量の少ないピーでは 45.59 インチ(約 1,158mm)である。タウングーでの 2016 年の月

別降雨量を以下に示す。

図 8.1.7 タウングーの月別降雨量(2016 年)

② マンダレー地域

マンダレー地域は複数の気候帯から構成される。東側の高山地帯は温暖で湿潤、平均気温は

4 月で 21°C~24°C 程度である。 も寒い時期の月平均気温は 15.6°C で 0°C を下回ることも

ある。一方、南部はサバナ気候に位置し、日中の 高気温は 43.3°C に上る。冬場の平均気

温は 21°C 程度であり、 低気温は約 18°C である。年間降雨量は Mogot で 100 mm 程度、

Pyin Oo Lwin では約 60 mm である。Pyinmana とマンダレーにおける 2016 年の月別年間降雨

量を以下に示す。

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8-29

図 8.1.8 Pyinmana の月別降雨量(2016 年)

図 8.1.9 マンダレーの月別降雨量(2016 年)

d) 自然災害

ミャンマーは洪水、サイクロン、高潮、地震、地すべり、火災、津波といった自然災害リスク

の高い国であり、過去、何度もこうした災害により甚大な被害を受けている。GAD の記録に

よれば、本鉄道沿線地域は主に洪水や火災の影響を受けてきたが、一部の地域は嵐等による被

害も被っている。

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8-30

e) 水文

ヤンゴン-マンダレー鉄道 はマンダレーの南 25 マイル(約 40km)でゾージ(Zawgyi)川を越

える。ドータワディ(Dokhtawaddy)もしくはミンゲ(Myitnge)川はミャンマーの東方、シャ

ン高原の北方を西に向かって流れ、マンダレー市の南に位置するアマラプラ(Amarapura)で

エーヤワディ川に合流する。ヤンゴン-マンダレー鉄道はエーヤワディ川に合流する手前でこ

のミンゲ川を通過する。エーヤワディ川、ミンゲ川はチャウセの穀倉地帯を支えている。パン

ラウン(Panlaung)川もまた本鉄道を横切り、メッチーラ(Meiktila)に向かって流れる川で

ある。以下の図 8.1.10 にミンゲ川、ゾージ川と本対象鉄道との交差地点を示す。

出典:Google Earth を基に JICA 調査団作成

図 8.1.10 ミンゲ(Myitnge)川、ゾージ(Zawgyi)川と本対象地域の位置

f) 土地利用

ヤンゴン-マンダレー鉄道沿線には主として農地が広がる。主な栽培作物はコメ、小麦、マメ

類、綿花、ゴマ、サトウキビ、タマネギ、トウモロコシ、トウガラシ等である。保護林、工業

地帯、保護区、未利用地等も見られるが、鉄道沿線には存在しない。マンダレーを含む大きな

都市には町も広がり、駅や踏切周辺等には住居が見られる。

鉄道沿線のタウンシップでの土地利用状況について以下の表 8.1.13 に示す。これを見ても農地

として利用されている土地の多いことが分かる。

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8-31

表 8.1.13 沿線のタウンシップにおける土地利用状況

No. タウン シップ

農地面積 (エーカー)

未利用

地 放牧地工業 地帯

都市部等保護林/

保全公有林野生林 荒野 休閑地 合計

1 Pyigyidagun 201 81 - - - - - - 6,132 6,3332 Chanmya

Thazi - - - - 6,358 - 16 6,374

3 Amarapura 31,887 837 - - 18,544 - - - - 51,2684 Sintgaing 69,854 272 1,356 9,645 11,942 7,402 - - 10,365 110,8365 Kyaukse 108,969 3,126 - 3,328 99,382 248.095 2,841 - - 353,6466 Myittha 126,623 10,163 - - 17,599 23,162 1,400 970 39,369 219,2867 Wundwin 174,244 39,632 1,173 51 37,010 41,141 6,763 3,889 43,986 347,8898 Thazi 161,073 6,857 - 26,797 90,284 192,444 320 2,568 23,959 504,0689 Pyawbwe 220,027 7,801 - 27,497 17,103 48,645 65,590 10,440 56,102 408,605

10 Yemathin 195,617 4,769 - 73 141,515 72,206 89,409 4,032 28,005 535,62611 Naypyitaw-

Tatkone 110,704 - - 6,325 140,720 178,125 9,494 - 147,045 445,368

12 Naypyitaw- Pyinmana

29,658 - - 354 - 25,254 18,2893 145 34,552 272,502

13 Naypyitaw- Lewe

87,105 - - 628 17,616 380,630 41,300 785 30,174 558,239

14 Poppathiri 25,139 - 265 54 27,900 5,987 239 24 28,219 59,60815 Swa 16 Yedashe 101,504 14 14,099 14,288 13,725 475,170 249 4,793 13,263 647,10517 Oaktwin 84,178 - 7,236 191 17,584 209,136 - 5,550 43,332 342,19618 Taungoo 68,134 - 7,541 1,802 72,829 220,103 14,234 5,338 34,436 424,417

出典:General Administration Department(2017)

g) 自然保護区

バゴー地域には Moeyongyi 湿地性鳥類保護区(wetland bird sanctuary)が、マンダレー地域に

は Shwe-U-Daung 野生動物保護区、Pyin-O-Lwin 鳥類保護区、Popa 山公園と Minsontaung 野生

動物保護区がそれぞれ位置するが、いずれも事業対象地域やその周辺には存在しない。ミャン

マーの保護区等の位置とリストを以下に示す。

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8-32

出典:Myanmar Protect Areas(2011)

図 8.1.11 ミャンマーにおける自然保護区

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8-33

表 8.1.14 ミャンマーにおける自然保護区

No. 名称 所在 1 Pidaung Wildlife Sanctuary Kachin State 2 Shwe-U-Daung Wildlife Sanctuary Mandalay Region and Shan State 3 Pyin-O-Lwin Bird Sanctuary Mandalay Region 4 Moscos Islands Wildlife Sanctuary Taninthayi Region 5 Kahilu Wildlife Sanctuary Karen State 6 Taunggyi Bird Sanctuary Shan State 7 Mulayit Wildlife Sanctuary Karen State 8 Wethtikan Bird Sanctuary Magwe Region 9 Shwesettaw Wildlife Sanctuary Magwe Region

10 Chatthin Wildlife Sanctuary Sagaing Region 11 Kelatha Wildlife Sanctuary Mon State 12 Thamihla Kyun Wildlife Sanctuary Ayeyar-wady Region 13 Htamanthi Wildlife Sanctuary Sagaing Region 14 Minwuntaung Wildlife Sanctuary Sagaing Region 15 Hlawga Park Yangon Region 16 Inlay Wetland Bird Sanctuary Shan State 17 Moeyongyi Wetland Bird Sanctuary Bago Region 18 Alaungdaw Kathapa National Park Sagaing Region 19 Popa Mountain Park Mandalay Region 20 Meinmahla Kyun Wildlife Sanctuary Ayeyarwady Region 21 Lampi Island Marine N. Park Taninthary Region 22 Hkakaborazi National Park Kachin State 23 Loimwe Protected Area Shan State 24 Parsar Protected Area Shan State 25 Natmataung National Park Chin State 26 Lawkananda Wildlife Sanctuary Mandalay Region 27 Indawgyi Wetland Wildlife Sanctuary Kachin State 28 Kyaikhtiyoe Wildlife Sanctuary Mon State 29 Minsontaung Wildlife Sanctuary Mandalay Region 30 Hukaung Valley Wildlife Sanctuary Kachin State 31 Kyauk Pan Taung Wildlife Sanctuary Chin State 32 Hponkanrazi Wildlife Sanctuary Kachin State 33 Rakhine Yoma Elephant Range Rakhine State 34 Panlaung-pyadalin Cave Wildlife Sanctuary Shan State 35 Maharmyaing Wildlife Sanctuary Sagaing Region 36 Lenya National Park Taninthary Region 37 Taninthary National Park Taninthary Region 38 Bumhpabum Wildlife Sanctuary Kachin State 39 Hukaung Valley Wildlife Sanctuary (extension) Kachin State 40 Taninthayi Nature Reserve Taninthayi Region

出典:JICA 調査団

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8-34

3) 環境質

a) 大気

2014 年に実施された EIA 調査(「Environmental Impact Assessment for the Rehabilitation and Modernization of Yangon-Mandalay Railway Project」)では事業対象地における大気が測定されて

いる。具体的には、ヤンゴン、ピュー、ネピドー、マンダレーという 4 ヶ所で測定が行われて

おり、このうち、2 ヶ所(ネピドー、マンダレー)が本調査区間に含まれる。当時、ネピドー

とマンダレーでの SO2の濃度が現在の NEQ ガイドラインの基準値を超えている。

表 8.1.15 ネピドー、マンダレーでの大気の状況(2014 年)

測定項目 ネピドー マンダレー NEQ ガイドライン 備考

TSP 132.1 µg/m3 239.1 µg/m3 N/A 24 時間平均

SO2 21 µg/m3 79 µg/m3 20 µg/m3

NO2 27 µg/m3 42 µg/m3 200 µg/m3

CO 4.88 µg/m3 9.46 µg/m3 N/A

出典:Environmental Impact Assessment for the Rehabilitation and Modernization of Yangon-Mandalay Railway Project (2014)

b) 水質

上記の EIA 調査では水質についても分析している。このうち、Nga Leik 川が本調査対象地域

に含まれるため、その結果を以下に示す。2014 年当時、NEQ ガイドラインが発効されていな

かったため、NEQ ガイドラインと比較可能な項目は限られるが、pH、油・潤滑油に関しては

ガイドラインの基準値内であった。

表 8.1.16 Nga Leik Stream の水質(2014 年)

No. 測定項目 Nga Leik 川

NEQ ガイドライン東側 西側

1 DO (mg/L) 4.3 4.0 2 pH 8.9 8.5 6-93 Oxidation Reduction Potential (ORP/mv) 202 187 4 Conductivity (µs) 329.0 350 5 Resistivity (kΩ) 3.04 2.86 6 TDS (mg/L) 220.0 235.0 7 Salinity (ppt) 0.16 0.17 8 Turbidity 15 15 9 COD (mg/l) 12.1 11.4 125 mg/l

10 TSS (g/L) 0.1401 0.1415 11 Oil and Grease Not detected Not detected 10 mg/l

出典: Environmental Impact Assessment for the Rehabilitation and Modernization of Yangon-Mandalay Railway Project (2014)

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8-35

c) 騒音レベル

騒音レベルについても上述の EIA 調査の中で測定されている。測定は、ネピドー、マンダレー

それぞれの場所で鉄道沿線(Point 1)と居住地(Point 2)とに分けて行われた。以下の表に、

その結果を示す。

表 8.1.17 ネピドー、マンダレーにおける騒音レベル(2014 年)

場所 大値 小値 平均 NEQ ガイドライン ネピドー 55 dBA(昼間 1、住宅

地) 45 dBA(夜間 2、住宅

地) 70 dBA(商業地)

Point 1 63.3 dBA 54.8 dBA 59.7 dBAPoint 2 72.5 dBA 48.7 dBA 55.8 dBAマンダレー Point 1 65.5 dBA 48.7 dBA 58.4 dBAPoint 2 63.7 dBA 45.2 dBA 57 dBA1 7:00-22:00、2 22:00-7:00 出典: Environmental Impact Assessment for the Rehabilitation and Modernization of Yangon-Mandalay Railway

Project (2014)

騒音レベル(一時間当たりの LAeq)は NEQ ガイドラインの下、住宅地においては夜間 45 dBA以下、昼間 55 dBA 以下、商業地域では時間帯を問わず、70 dBA 以下に抑えるよう規定して

いる。これと比較すると、ネピドー、マンダレーの騒音レベルは商業地域の基準値内であるが、

住宅地での基準値を超えている。

(3) 代替案の検討

事業を計画するに当たって、事業による経済、環境、社会に対する費用と便益のベストバラン

スを対象国、対象地域の社会・経済的な諸事情も踏まえて模索することが重要となる。本調査

においても、この観点に立ち、以下に挙げる 3 通りの選択肢の比較、検討を行った。結果、現

存するヤンゴン-マンダレー鉄道の改修を行う案のバランスが良く、ミャンマーの置かれた状

況等を踏まえると 適との結論に至った。

1. 事業を実施しない 2. 新規路線の建設 3. 既存路線の改修(提案事業)

3 案を検討するため、それぞれの案に対し、経済面、自然環境面、社会環境面から 1(不適)

から 5( 適)までのスコアを付した。各案に係る説明及び評価の結果を示した表を以下に

示す。

選択肢 1. 事業を実施しない

事業を実施しない場合、旅客は速度が遅く、所要時間が長く、危険で信頼性も低い既存の鉄道

システムを使い続けることを強いられる。このオプションにより発生する追加的な負の影響は

ないが、現在の鉄道システムはすでに古く、抜本的な改良が喫緊の課題となっている。これか

らも現在の鉄道システムが改良されることなく使い続けられればミャンマーは拡大する運輸

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8-36

交通に対するニーズに十分に応えられず、同国の経済と社会的な便益は大きく損なわれるだけ

でなく、旅客の生命も危機にさらされかねない。

選択肢 2. 新規路線の建設

新しく路線を建設する場合の費用は甚大になり、また自然及び社会にとっての悪影響も極めて

大きくなると想定される。実際、費用は改修事業の場合に比べ、数倍高くなると考えられる。

ミャンマーにとっては大きな財政負担であり、それは税金等といった形で国民が支払いを求め

られる。この他、新しい路線を通過させるには広い用地が必要になるため、用地取得、非自発

的住民移転、植生の伐採、作物や財産の喪失といった問題も発生する。

現在の路線は 120 年以上も前から存在する。この間に、駅の近くに生活を構える等、鉄道シス

テムを前提とした生活を人々は築いてきた。新しい路線を設置することはこうした多くの人々

の生活様式を大きく変えることにもなる。

選択肢 3. 既存路線の改修

既存の鉄道システムを改修する案は経済的に見ても、また社会や環境に与える影響を考えても

現在のミャンマーにとって費用と便益のバランスがよく取れた案であるといえる。一定の財政

的、環境面へ影響はあるものの、妥当で管理可能な範囲内にあるといえ、国民も負担しうると

考えられる。改修事業を通じて得られる便益はそれによりもたらされる費用を大きく上回る。

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8-37

表 8.1.18 代替案の比較、検討

事業を実施しない 新規路線の建設 既存路線の改修

経済への 影響

2 鉄道に変更がないことから事業費は発生しない。一方、古い鉄道施設や建物の維持管理は政府、国民の負担となって残り、またその負担は時間の経過とともに増大し続ける。 既存の鉄道路線からの地元、地域、国の経済への追加的な裨益効果は基本的にない。

1 鉄道路線を新設する場合の経済的な費用は改修事業の場合の数倍に上ると考えられる。加えて、PAPs に対する補償費、生計回復支援の費用として大きな資金が必要になる。維持管理費は比較的低く抑えられると考えられるが、工事費が多額に上ることから、低い維持管理費によって得られる費用削減効果は大きな影響を与えない。 鉄道システムの新設がもたらす地元、地域、国へのプラスの経済効果は非常に大きいと考えられる。

5 工事費、維持管理費はミャンマーの国、国民にとって許容できる範囲に抑えられると考えられる。 鉄道システムの改修がもたらす地元、地域、国へのプラスの経済効果は非常に大きいと。

自然環境へ

の影響

4 工事がないことから追加の汚染や汚濁は想定されない。植生の伐採等も発生しない。 エネルギー効率の悪い交通モード(車やトラック等)からのモーダルシフトは進まず、したがって、温室効果ガスの排出量は大きいまま変わらないものと考えられる。

2 極めて多くの木々その他の植物の伐採が必要になるものと想定される。これは直接的には植物相に対する影響であるが、動物相、生態系にも大きなマイナスの影響をもたらす可能性がある。 既存の施設や構造物はほとんど使わないことから多大な量の廃棄物が発生する。 エネルギー効率の悪い交通モード(車やトラック等)からのモーダルシフトを通じて温室効果ガスの排出量が全体的に減ると考えられる。

3 工事中に発生する汚染、汚濁、廃棄物の発生量は限定的といえる。加えて、一定程度の植生の伐採が避けられない。 ただ、事業による影響範囲は基本的に MR の ROW 内に留まり、影響を受ける木々の数は比較的少ない。現在使用されている多くの構造物、施設はそのまま残ることから廃棄物の量は新設の場合に比べ少なくなる。 エネルギー効率の悪い交通モード(車やトラック等)からのモーダルシフトを通じて温室効果ガスの排出量が全体的に減ると考えられる。

社会への 便益

1 土地利用には変化がないことから土地の収用・取得や非自発的住民移転は発生しない。 速く、快適でタイムリーな鉄道運行は望めず、人々の満足度、社会福祉のレベルは低いまま、機会費用は高い。 既存の鉄道システムは老朽しているため使い続ければ旅客や沿線住民・利用者にとっての安全上の大きなリスクといえる。

1 甚大な数の人々が移転の対象となり、あるいは土地、施設、作物、木々、その他自分達の財産、資産を失うことになると想定される。長年、既存の鉄道路線・システムと密接な生活を営んできた人々には大きな生活様式の変化が強いられる。用地の確保や補償の支払いには長い時間が必要になることから、事業の実施は当面見込めず、事業によってもたらされる便益もなかなか享受できない状態が続く。 速く、快適でタイムリー、そして、安全な移動手段が提供され、人々の満足度、幸福度は飛躍的に向上すると考えられる。

4 ROW 内を使用、占有する人々を中心に限定的な数の人々が移転の対象となり、あるいは自身の持つ資産を失うことになる。事業による影響範囲は基本的に MR のROW 内に留まることから土地の収用・取得は想定されない。長年、既存の鉄道路線・システムと密接な生活を営んでいた人々の生活に変化を及ぼすこともない。 速く、快適でタイムリー、そして、安全な移動手段が提供され、人々の満足度、幸福度は飛躍的に向上すると考えられる。

合計 7 4 12 出典:JICA 調査団

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8-38

(4) スコーピングと環境社会配慮調査の TOR

1) 調査範囲と影響評価の方法

本事業は JICA 環境社会配慮ガイドラインに基づき、日本側では環境社会配慮カテゴリ B に位

置づけられている。一方、ミャンマーでは EIA Procedure(2015)に基づき、EIA レベルの調

査が求められる。本項では、本事業により想定される初期段階の影響評価の結果を示し、これ

を基に策定された環境社会調査の範囲や方法を示す。

事業の結果、もたらされる可能性のある自然・社会環境への影響を予測するため、初期の環境

影響評価をスコーピングの段階で行い、この結果を基に環境社会配慮調査の TOR を定めた。

想定しうる影響項目は、EIA Procedure(2015)に倣い、計画段階(P)、施工段階(Co)、運営

維持管理段階(O)、解体段階(De)、終結段階/終結後(Cl/PCl)という 5 つのステージに分

けて評価した。影響は好ましい影響、好ましくない影響とに分け、A+/-(甚大な正/負の影響

が想定される)、B+/-(一定程度の正/負の影響が想定される)、C(想定される影響の多寡は

現時点では不明)、D(影響は想定されない)として表示している。スコーピングの結果を以

下の表 8.1.19 に示す。

2) 計画段階

工事開始前の も重要な影響として挙げられるものは工事に必要な土地の確保に伴う影響で

ある。具体的には非自発的住民移転、家屋、建物、施設、作物、有用木、墓地といった PAPsにとって社会経済的に価値を持つ資産が影響を受けるかどうか、影響範囲・規模はどの程度か

が焦点になる。また、こうした移転や資産の喪失といった直接的な影響の他、これに伴う生活

様式への影響といった間接的、二次的な影響についても考慮に入れることが重要である。

本事業は既存の鉄道の改修を目的にしており、事業により影響を受ける土地は MR の ROW 内

に原則限られるため、新たな土地の取得、確保は 小限に留まる。こうしたことから、非自発

的住民移転の規模も限られ、建物や作物等への影響も甚大なものとはならない。

3) 施工段階

施工段階では一般的に大気汚染や騒音、振動の増大が工事車両や機械の稼働、物資の積み下ろ

しや移動等に伴い発生する。こうした影響は工事現場でのみ発生するとは限らず、車両や物資

の移動・運搬経路等においても起きる可能性がある。これらに加え、土木工事、特に本事業の

場合には鉄道橋の建て替え、改修等の結果、水質が悪化する可能性がある。ただ、影響は工事

中の一時的な期間に留まり、また橋梁周辺に留まる規模と考えられる。影響は管理可能で他の

水塊等への影響は想定されない。

4) 運営維持管理段階

運行車両数が増加することから、運営維持管理段階ではディーゼルエンジンから発生する NO2、

SO2、CO といった大気汚染物質が増える。一方、自動車から鉄道への交通モードがシフトす

ることにより、交通渋滞と大気汚染の軽減、CO2の削減が見込まれる。鉄道や関連施設の運行、

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8-39

利用に伴う固形廃棄物の増大も想定され、旅客が増えることによる一般ゴミも増えると考えら

れる。

列車の運行頻度と速度が増えることから騒音、振動の増大が想定される。一方で、線路や路床

の改良はそうした影響を緩和する方向に作用する。デポにおいては車両を洗浄する必要があり、

また車両内に設置するトイレからし尿を取り除く必要もある。周囲に位置する河川等の水質に

影響を及ぼす可能性があることから、デポからの排水の処理には十分に留意する必要がある。

5) 解体段階

解体段階では通常、小規模な土木工事、工事機械・車両の使用、物資等の搬入・搬出等が行わ

れる。この結果、排気ガスや粉塵の拡散等により一時的に大気質が悪化することが懸念される。

こうした影響は通常、比較的小規模なものに留まり、広い範囲に影響を及ぼしたり、長い期間

に亘って継続したりするものではないことから甚大な影響を及ぼすことはないと考えられる。

事業が川や池、沼や海のすぐ近くに位置する場合には土木工事による水質の悪化が考えられる

が、本事業対象地域周辺に海はなく、また湖沼近くでの大きな工事も想定されない。水質が悪

化するとすれば、川で橋に係る解体工事が発生する場合であるが、施工段階よりも大規模なも

のになる可能性は低い。

6) 終結段階/終結後

本事業の中で特別な施設、機械、薬品等が導入されることは想定されておらず、現時点で事業

の終結段階あるいは終結後において懸念される影響は特にない。

7) 環境影響の評価

上述の通り、事業の結果、もたらされる可能性のある自然及び社会環境への影響を予測し、重

大な影響の絞り込みを行うために初期の環境影響評価(スコーピング)を行った。結果は以下

の表 8.1.19 の通りである。

表 8.1.19 スコーピングの結果

No. 影響項目

評価

想定される影響P Co O De Cl/

PCl汚染

1 大気汚染 D B- B- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 土木工事、資材の積み下ろし、工事機械・車両の稼働によって粉塵や排ガスが発生し、大気質の低下をもたらすことが想定される。[O] 機関車の数が増えることにより、その運営中の排ガスが増え、大気汚染を招くことが想定される。一方、車両から鉄道へのモーダルシフトを通じて大気汚染物質(PM、NOx)等は減ると考えられる。 [De] 解体工事により大気質は一時的に低下すると思われる。 [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

2 水質汚濁 D B- B- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 切り盛り土や掘削作業等による土木工事の結果生じる土砂等の水源への流出や工事キャンプ、工事事務所からの排水、油や潤滑油の漏出等により水質が一時的に低下する可能性がある。[O] 特にデポにおいて、車両洗浄後の水、油や潤滑油、し尿等が適切に処理されない場合、水質の悪化につながる可能性がある。[De] より規模は小さいものの、上記[O]と同様の活動により水質が低下する可能性がある。 [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

3 土壌汚染 D B- B- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事用機械や車両からの潤滑油の漏出により土壌が汚染する可能性がある。ただ、量は限られ、したがって影響は限定的と考えられる。[O] 鉄道のエンジンからの潤滑油の流出により土壌が汚染する可能性がある。しかし、新型車両の導入によりそうしたリスクは低くなると考えられる他、漏出する可能性のある油の量も限られるため影響は限定的と考えられる。[De] 工事用機械や車両からの潤滑油の漏出により土壌が汚染する可能性がある。ただ、量は限られ、したがって影響は限定的と考えられる。[Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

4 廃棄物 D B- B- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事中、土砂等の廃棄物が発生することが見込まれるが、量は限定的と考えられる。既存の構造物(枕木、踏切、信号・通信システム等)を刷新する結果、廃棄される物が生じることが想定される。[O] 鉄道施設や車両からの固形廃棄物の発生が見込まれる。 [De] 鉄道路線や施設の解体を通じて既存の構造物の廃棄が進むと考えられる。 [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない

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8-40

No. 影響項目

評価

想定される影響P Co O De Cl/

PCl5 騒音、振動 D B- B- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。

[Co] 工事中の工事作業及び工事機械や車両の稼働、ディーゼル発電機の稼働等により騒音、振動が発生することが想定される。[O] 鉄道の運行により特に線路沿線において騒音、振動の影響が出る可能性がある。 [De] 工事作業及び工事機械や車両の稼働、ディーゼル発電機の稼働等により騒音、振動が発生することが想定される。[Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

6 地盤沈下 D D D D D 大規模な地下水の利用等、地盤沈下を引き起こしうる活動は想定されていないことから影響はほとんどないと考えられる。

7 悪臭 D B- D D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 排水路の掘り起こしや浚渫、工事キャンプでの生活等により工事中に悪臭が出る可能性がある。 [O] 想定される特記すべき影響はない。 [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

8 底質 D D D D D 底質の汚染を招く活動は想定されていないことから影響はほとんどないと考えられる。

自然環境

9 保護区 D D D D D 鉄道の周辺地域に保護区は確認されておらず、よって、こうした保護区への影響は想定されない。

10 生態系 D B- D D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 施工中、切り盛り土や木の伐採が車両基地等の生態系に影響を与える可能性がある。ただ、改修事業であり影響範囲が基本的に MR の ROW 内に限られることから影響は限定的と考えられる。 [O] [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

11 水文 D D D D D 一部の橋梁が架け替えられるが、すでに存在する橋梁を新しく置き換えるだけであるため、水文への影響はほとんどないと考えられる。

12 地形、地質 D B- D D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事による大きな土地の改変は想定されていない。ただ、施行中の切り盛り土により地形や地質に限定的な影響は想定される。[O] [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

13 越境被害、気候変動

D B- B+/- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事車両の走行により温室効果ガスの排出量が増えることが想定される。 [O] 車両が増えることにより温室効果ガスの排出量は増える一方、自動車、トラック等から鉄道へのモーダルシフトを通じて全体としては排出量が減ると想定される。[De] 工事車両の走行により温室効果ガスの排出量が増えることが想定される。 [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

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8-41

No. 影響項目

評価

想定される影響P Co O De Cl/

PCl社会環境

14 非自発的住民移転

B- D D D D [P] 既存鉄道の改修とはいえ、安全確保のために線形を変更する必要のある個所やデポ・車両基地の開発が予定されている地域においては限定的な数の住民移転が発生することが想定される。住民移転者数は 200 人を下回ると考えられる。[Co] [O] [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない 。

15 貧困層 D B+ D B+ D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 施工中には事業によって新たな雇用が創出され、収入機会が増えることが想定される。 [O] 想定される特記すべき影響はない。 [De] 解体工事中には事業によって新たな雇用が創出され、収入機会が増えることが想定される。 [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

16 雇用、生計等地域経済

D B+ D B+ D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 施工中、事業によって新たな雇用が創出され、収入機会が増えることが想定される。 [O] 想定される特記すべき影響はない。 [De] 解体工事中、事業によって新たな雇用が創出され、収入機会が増えることが想定される。 [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

17 少数民族、先住民

C C C C C 現時点で事業の影響範囲やその周辺に少数民族は確認されていないが、調査を通じて確認する。

18 土地利用、自然資源活用

D B+ B+ D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] [O] 事業は鉄道沿線や駅周辺における社会・経済の発展に大きく寄与することが想定される。 [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

19 水利、水利権 D C C C D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 水源次第で地下水もしくは地表水が施工中に使われる可能性があるが、調査を通じて確認する。 [O] デポ、車両基地においては地下水を使って車両の洗浄を含む維持管理作業を行うことが想定されている。これによる水利権への影響については調査を通じて明らかにする。[De] 水源次第で地下水もしくは地表水が施工中に使われる可能性があるが、調査を通じて確認する。 [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

20 既存の社会インフラ・サービス

D B- B+ D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 踏切、排水路、プラットホーム、その他の鉄道施設の利用者はこれらの更新に伴い一時的に影響を受けることが想定される。[O] 旅客はより安全、速く、信頼性の高い鉄道交通システムを利用することが可能になる。 [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

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8-42

No. 影響項目

評価

想定される影響P Co O De Cl/

PCl21 社 会 イ ン フ

ラ、地元の意思 決 定 機 構等、社会組織

D D D D D 想定される特記すべき影響はない。

22 利益、損害の誤分配

D D D D D 想定される特記すべき影響はない。

23 地元の利害対立

D D D D D 想定される特記すべき影響はない。

24 文化遺産 C C C C C 鉄道の周辺地域に文化遺産は確認されておらず、よって、影響は想定されないが、調査を通じて確認する。

25 景観 D D D D D 景観に大きな影響を及ぼすような土木工事、土木構造物の建設は想定されていない。

26 ジェンダー C C C D D [P] [Co] [O] 想定される特記すべき影響はないが、調査を通じて確認する。 [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

27 子どもの権利 C C C C D 想定される特記すべき影響はないが、調査を通じて確認する。

28 HIV/AIDS 等の感染症

D B- D B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事作業者の流入により、性感染症等の感染症が広がる可能性がある。 [O] [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

29 労働条件 D D D D D 想定される特記すべき影響はない。

30 事故 D B- B- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 改修事業であることから工事は比較的小規模に留まり、工事作業そのものに起因する事故による甚大な事故が発生するリスクは比較的高くない。ただ、鉄道沿線で行われることからも鉄道との接触事故等が発生するリスクがある。[O] 鉄道の運行速度が速いことから線路を横断したり、そこに留まったりする人々との接触事故が発生する可能性がある。[De] 解体工事中、小規模な事故が起きる可能性がある。 [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

P:計画段階、Co:施工段階、O:運営維持管理段階、De:解体段階、Cl/PCl:終結段階/終結後 A+/-:正/負の大きな影響がある、B+/-:一定の正/負の影響がある、C+/-:正/負の影響の大きさが明らかではない、D:影響なし

出典:JICA 調査団

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8-43

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8-44

8) 環境社会配慮調査の TOR

スコーピングの結果、策定された環境社会配慮調査の TOR を以下の表 8.1.20 に示す。大気、

水質、騒音、振動レベルについては現地での測定を通じて、水質は現地でのサンプリングとラ

ボラトリーでの分析を通じてベースラインデータを取得することとした。一方、PAPs の社会

経済状況に係るベースラインデータについてはセンサス、損失資産のインベントリー調査、家

計調査を含む社会調査を通じて明らかにすることとした。

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8-45

表 8.1.20 環境社会配慮調査の TOR

No. 環境項目 調査項目 調査方法 測定場所/調査地域 汚染

1 大気汚染 環境大気質(NO2、SO2、PM10、

PM2.5、Ozone、Micro climate(気温、湿度、風速、風向等))

機器を使った現地での測定 (測定地点ごとに24 時間連続測定)

既存鉄道の沿線 3 ヶ所(Taungoo、Myohaung、Pyinmana 等)

2

水質汚濁 水質(BOD、COD、油、潤滑油、pH、全大腸菌群、全窒素、全リン、TSS)

試料採取、ラボでの分析 既存鉄道の沿線 4ヶ所(架け替えが予定されている主な橋梁の下流、デポ開発予定地等)

3 土壌汚染 表層土の汚染の有無 目視、文献調査 既存鉄道の沿線 4 廃棄物 固形廃棄物の管理方法 インタビュー、文献調査 既存鉄道の沿線

5 騒音、振動 LAeq(dBA)、LV 10 機器を使った現地での

測定 既存鉄道の沿線 3 ヶ所(Taungoo、Myohaung、Pyinmana 等)

6 悪臭 想定される悪臭発生源・箇所 インタビュー、文献調査 既存鉄道の沿線 自然環境

7 生態系 動物相、植物相 目視、インタビュー、文

献調査 既存鉄道の沿線 1ヶ所(デポ開発予定地等)

8 地形、地質 事業計画(工事内容) インタビュー、文献調査 既存鉄道の沿線

9 越境被害、気候変動

排出源 インタビュー、文献調査 -

社会環境

10

非自発的住民移転

住民移転の規模(対象人数等)、移転対象者の社会経済状況

社会調査、ARAP 調査の結果の確認、分析

線形変更が予定されている箇所の周辺、架け替えが予定されている橋梁周辺、デポ開発予定地等

11 水利権 必要水量、使用水量 インタビュー、文献調査 既存鉄道の沿線(デポ開発予定地等)

12 既存の社会インフラ・サービス

既存鉄道の周辺にある社会インフラ・サービスの状況

目視、インタビュー、文献調査

既存鉄道の沿線

13 地元の利害対立

利害対立の可能性 インタビュー、文献調査 既存鉄道の沿線

14 文化遺産 既存鉄道の周辺にある文化遺産

文献調査 既存鉄道の沿線

15 ジェンダー 既存鉄道の周辺に住む人々の家族構成、生活様式

文献調査 既存鉄道の沿線

16 子どもの権利

既存鉄道周辺に住む人々の家族構成、生活様式

文献調査 既存鉄道の沿線

17 HIV/AIDS 等の感染症

感染症リスクとコミュニティの健康状況

文献調査 既存鉄道の沿線

18 事故 事故のリスクと安全管理 文献調査 既存鉄道の沿線

* 大気、水質の測定項目・方法はミャンマーにおける National Environmental Quality (Emission) Guidelines(2015)に準拠している。

出典:JICA 調査団

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8-46

(5) 環境社会配慮調査の結果

1) 被影響住民の社会経済的な特性

2017 年 5 月~7 月にかけてセンサス調査を実施した結果、特定された 24 の被影響世帯全ての

家長に対してインタビュー調査を行った。結果、全世帯において収入が支出を上回っているこ

とが分かった。PAPs の社会経済状況を以下の表 8.1.21 から表 8.1.27 に示す。

表 8.1.21 PAPs の年齢、性別(橋梁架替地域)

コード No. 家長の年齢 世帯人数 世帯構成員の年齢 性別

<=5 6-17 18-60 >60 男性 女性

379 - 01 61 9 3 0 5 1 7 2393 - 01 55 4 0 0 4 0 2 2393 - 02 66 8 1 1 4 2 3 5417 - 01 58 6 0 1 5 0 2 4683 - 01 35 5 0 3 2 0 3 2683 - 02 30 4 0 2 2 0 2 2748 - 01 50 5 0 1 4 - 1 4

合計 41 4 8 26 3 20 21

出典:JICA 調査団

表 8.1.22 PAPs の年齢、性別(Myohaung デポ開発予定地)

コード No 家長の年齢 世帯人数 世帯構成員の年齢 性別

<=5 6-17 18-60 >60 男性 女性

Dep.MH 01 50 5 0 3 2 0 2 3Dep.MH 02 28 3 0 2 1 0 2 1Dep.MH 03 43 4 0 3 1 0 2 2Dep.MH 04 26 2 0 1 1 0 1 1Dep.MH 05 58 4 1 1 2 0 2 2Dep.MH 06 57 5 0 4 1 0 3 2Dep.MH 07 33 4 1 2 1 0 3 1Dep.MH 08 39 4 0 3 1 0 1 3Dep.MH 09 30 6 0 3 2 1 3 3Dep.MH 10 56 7 0 2 5 0 3 4Dep.MH 11 29 5 1 2 2 0 4 1Dep.MH 12 30 4 0 3 1 0 1 3

合計 53 3 29 20 1 27 26

出典:JICA 調査団

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8-47

表 8.1.23 PAPs の年齢、性別(線形変更及び線路改良場所)

コード No. 家長の年齢 世帯人数 世帯構成員の年齢 性別

<=5 6-17 18-60 >60 男性 女性

U-IP.182 - 01 55 1 - - - - 1 0D-IP.182 - 01 55 3 1 0 2 0 2 1D-IP.182 - 02 58 2 0 1 1 0 2 0D-IP.173 - 01 58 2 0 0 2 0 1 1U-IP.1 - 01 57 1 - - - - 1 0

合計 9 1 1 5 0 7 2

出典:JICA 調査団

表 8.1.24 PAPs の職業、収入、支出状況(橋梁架替地域)

コード No. 職業 年収(MMK) 年間支出(MMK) 379 - 01 技能労働者 2,160,000 1,800,000393 - 01 店主 2,400,000 1,440,000393 - 02 その他 1,920,000 1,800,000417 - 01 その他 1,872,000 1,800,000683 - 01 農家 2,400,000 2,160,000683 - 02 農家 2,400,000 2,160,000748 - 01 日雇い労働者 2,400,000 1,800,000

平均 2,221,715 1,851,429

出典:JICA 調査団

表 8.1.25 PAPs の職業、収入、支出状況(Myohaung デポ開発予定地)

コード No. 職業 年収(MMK) 年間支出(MMK) Dep.MH 01 会社員 3,600,000 2,880,000Dep.MH 02 日雇い労働者 1,632,000 1,200,000Dep.MH 03 店主(簡易店舗) 1,560,000 1,200,000Dep.MH 04 店主(簡易店舗) 1,800,000 1,080,000Dep.MH 05 ベンダー 2,400,000 1,800,000Dep.MH 06 技能労働者 3,600,000 2,700,000Dep.MH 07 日雇い労働者 1,080,000 960,000Dep.MH 08 家畜業 2,400,000 2,160,000Dep.MH 09 店主(簡易店舗) 4,200,000 3,360,000Dep.MH 10 その他 3,600,000 2,880,000Dep.MH 11 日雇い労働者 2,160,000 1,800,000Dep.MH 12 日雇い労働者 2,160,000 1,800,000

平均 2,516,,000 1,985,000

出典:JICA 調査団

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8-48

表 8.1.26 PAPs の職業、収入、支出状況(線形変更及び線路改良場所)

コード No. 職業 年収(MMK) 年間支出(MMK) U-IP.182 - 01 - - -D-IP.182 - 01 店主(簡易店舗) 1,800,000 1,440,000D-IP.182 - 02 店主(簡易店舗) 3,600,000 1,440,000D-IP.173 - 01 MR 職員 1,680,000 1,440,000U-IP.1 - 01 - - -

平均 2,360,000 1,440,000

出典:JICA 調査団

PAPs の民族、宗教、教育水準( 終学歴)を以下の表 8.1.27 に示す。24 世帯中、1 世帯を除

きビルマ族、仏教徒であった。

表 8.1.27 PAPs の民族、宗教、教育水準

場所 No. コード No. 民族 宗教 教育水準( 終学歴)

Brid

ge R

enov

atio

n

1 Bdg.379 – 01 ビルマ族 仏教 小学校 2 Bdg.393 – 01 ビルマ族 仏教 高校 3 Bdg.393 – 02 ビルマ族 仏教 小学校 4 Bdg.417 – 01 ビルマ族 仏教 中学校 5 Bdg.683 – 01 ビルマ族 仏教 中学校 6 Bdg.683 – 02 ビルマ族 仏教 中学校 7 Bdg.748 – 01 ビルマ族 仏教 僧院学校

Dep

ot Im

prov

emen

t Are

a

1 Dep.MH 01 ビルマ族 仏教 高校 2 Dep.MH 02 ビルマ族 仏教 高校 3 Dep.MH 03 ビルマ族 仏教 中学校 4 Dep.MH 04 ビルマ族 仏教 中学校 5 Dep.MH 05 ビルマ族 仏教 中学校 6 Dep.MH 06 ビルマ族 仏教 中学校 7 Dep.MH 07 ビルマ族 仏教 小学校 8 Dep.MH 08 ビルマ族 仏教 中学校 9 Dep.MH 09 ビルマ族 仏教 中学校

10 Dep.MH 10 ビルマ族 仏教 小学校 11 Dep.MH 11 ビルマ族 仏教 高校 12 Dep.MH 12 ビルマ族 仏教 小学校

Trac

k Im

prov

emen

t 1 U-IP.182 – 01 ヒンズー ヒンズー

教 -

2 D-IP.182 – 01 ビルマ族 仏教 小学校 3 D-IP.182 – 02 ビルマ族 仏教 小学校 4 D-IP.173 – 01 ビルマ族 仏教 中学校 5 U-IP.1 – 01 ビルマ族 仏教 -

* -: データなし 出典:JICA 調査団

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8-49

2) 大気

ヤンゴン‐マンダレー鉄道周辺の大気のベースラインデータを収集するため、ミャンマーの環

境質(排出)ガイドライン(National Environmental Quality Guidelines:NEQ ガイドライン)に

従い、PM10、PM2.5、SO2、NO2、O3を測定し、同ガイドラインの基準値と比較した。

大気(及び騒音、振動)の測定は、鉄道沿線に位置する住宅地内の 3 ヶ所(A-1、A-2、A-3)で行われた。A-1 は鉄道から約 30m、病院から 170m のタウングーの位置にある幼稚園、A-2は Begon 村に位置し、Ywa Taw と Pyinmana の交差点近くにある GAD の事務所であり、鉄道

から約 55m、小学校から約 10m の位置であった。A-3 は Myohaung 駅近くにある僧院であり、

鉄道からの距離は約 60m、Mandalay-Lasho 鉄道線から約 80m の場所に位置する。大気の測定

地点を、に、大気の測定に用いた機材をにそれぞれ示す。

表 8.1.28 大気測定地点

測定地点 場所(経度、緯度) 測定地点の状況 測定日

A-1 Taungooタウンシップ (18° 56' 22.951" N; 96° 26' 29.667" E)

鉄道から約 30m、病院から 150mのタウングーの幼稚園 2017 年 8 月 4~5 日

A-2 Pyinmanaタウンシップ (19° 46' 52.871" N; 96° 11' 41.862" E)

鉄道から約55m、小学校から10mの位置にある GAD の事務所 2017 年 8 月 6~7 日

A-3

Chan Mya Tha Ziタウンシップ (21° 55' 55.623" N; 96° 04' 44.958" E)

鉄道から約 60m、Mandalay-Lasho 鉄道線から約80m の場所に位置にあるMyohaung 駅近くにある僧院

2017 年 8 月 8~9 日

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8-50

出典:Google Earth を基に JICA 調査団作成

図 8.1.12 大気測定地点

表 8.1.29 大気測定機材

No. 機材名称とモデル 測定項目 写真

1 EPAS HAZS-Canner

PM 10、PM 2.5、NO2、SO2、

温度、風速、風向、湿度

2 AeroQual500 with Sensors and

casing

O3

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8-51

大気測定の様子(A-1)

大気測定の様子(A-2)

大気測定の様子(A-3)

写真 8.1.1 大気測定の様子

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8-52

大気の測定結果を以下の表 8.1.30 に示す。これを見ると、SO2 に関して、A-1(タウングー)

において NEQ のガイドラインを超えている他、オゾンについても A-2(Pyinmana)、A-3(Chan Mya Tha Zi)において超えていることが分かる。それぞれについて、以下に詳しく説明する。

表 8.1.30 大気質の測定結果

測定項目 場所(µg/m3) NEQ ガイドライン値

(µg/m3) 平均時間 A-1 A-2 A-3

PM 10 30.00 40.81 21.13 50.00 24 時間

PM 2.5 18.06 17.47 10.96 25.00 24 時間

NO2 125.70 96.16 134.12 200.00 1 時間

SO2 48.93 6.70 13.52 20.00 24 時間

Ozone 90.90 108.50 152.43 100.00 8 時間

* NEQ ガイドラインを超えた測定値は赤色で表示。 出典:JICA 調査団

a) PM10、PM2.5

PM10は大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径が 10μm 以下のもの、PM2.5は同様に粒子径が

10μm 以下のものを指す。大気に存在する固体、液体の微粒子であり、硫酸塩、硝酸塩、アン

モニア、ナトリウム、塩化物、黒色炭素、鉱物粉末や水等から成る。本調査では、大気中の

PM10、PM2.5濃度を 3 ヶ所で 24 時間に亘り計測された。幼稚園内で測定された箇所(A-1)で

は PM10、PM2.5の濃度がそれぞれ 30 μg/m3、18.06 μg/m3 であり、いずれも NEQ ガイドライン

値(PM10:50 μg/m3、PM2.5:25μg/m3)以下であった。Begon の GAD 事務所(A-2)、僧院(A-3)での測定値もまたガイドラインの範囲内であった。

b) 二酸化窒素(NO2)

一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)は主たる酸化窒素(NOx)であり、自動車の運行や

維持管理、発電の結果等により発生し、気管支炎や肺浮腫を誘発する。NOx の量は窒素や酸

素の濃度や反応時間、温度等の影響を受ける。

本調査では 1 時間、空気中の NO2が測定され、A-1、A-2、A-3 での測定値はそれぞれ 125.7 µg/m3、

96.16 µg/m3、134.12 µg/m3 であった。これはいずれも NEQ ガイドライン値(200 µg/m3)を下

回る。

c) 二酸化硫黄(SO2)

二酸化硫黄(SO2)は油等の燃料の燃焼や化学製品の生産の過程で生成される。この他、自動

車も排出源となりうる。SO2は呼吸器系疾患を招く可能性がある他、喉や目の炎症を引き起こ

す。A-1、A-2、A-3 での測定値はそれぞれ 48.93 µg/m3、6.7 µg/m3、13.52 µg/m3 であり、A-1において、NEQ のガイドライン値(20 µg/m3)を上回った。これは測定地である幼稚園の前に

位置し、線路を横切る主要道路、そこを走行する自動車、バイクの数が多いことが主因だと思

われる。

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8-53

d) オゾン(O3)

オゾンは窒素酸化物と揮発性有機化合物(VOC)との化学反応の結果、太陽光の下、生成さ

れる。窒素酸化物は燃焼の副産物として大気中に放出され、例えば植生を燃焼することで生ま

れる。ただ、主要な排出源自動車の内燃機関と石炭火力発電所といえる。一方、VOC、炭素

水素は人工物、例えば、自動車やバイクの他、自然由来のもの、例えば木々やその他植物相も

排出源となる。実際、VOC の主たる排出源は木々やその他の植生から放出されたガスである。

オゾンの 3 ヶ所での測定値はそれぞれ 90.9 µg/m3(A-1)、108.5 µg/m3(A-2)、152.43 µg/m3(A-3)であった。A-1 を除き、これらの値は NEQ のガイドライン値(100 µg/m3)を上回る。A-2 に

おいてこのように高い値が検出された理由としては周辺住民が近くで廃棄物を焼却処分して

いたこと、Begon に木々や稲作地が多いことが挙げられる。一方、A-3 はヤンゴン‐マンダレー

鉄道とマンダレー‐ラショー鉄道の間に位置し、木々や茂みに囲まれている。こうした環境が

VOC の濃度を高め、結果、オゾンの増大に繋がった可能性がある。

3) 風速、風向

以下に、大気調査中の風速、風向を示す。A-1(タウングー)、A-3(Chan Mya Tha Zi)での調

査中、風は北西方向から南東方向へと吹いていたが、A-2(Pyinmana)では北から南へと吹い

ていた。

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8-54

出典:Google Earth を基に JICA 調査団作成

図 8.1.13 A-1 での風向、風速

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8-55

出典:Google Earth を基に JICA 調査団作成

図 8.1.14 A-2 での風向、風速

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8-56

出典:Google Earth を基に JICA 調査団作成

図 8.1.15 A-3 での風向、風速

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8-57

4) 湿度と気温

A-1~A-3 の各調査地点における平均気温と湿度を表 8.1.31 に示す。

表 8.1.31 A-1~A-3 における気温と湿度

場所 年月日 測定項目 結果

A-1 2017 年 8 月 4 日~5 日 湿度 86.02 %

気温 30.62 °C

A-2 2017 年 8 月 6 日~7 日 湿度 90.82 %

気温 30 °C

A-3 2017 年 8 月 8 日~9 日 湿度 64.00 %

気温 34 °C

出典:JICA 調査団

5) 水質

現在の水質の状況と事業の実施中・実施後の影響を確認、比較するため、事業対象地周辺に位

置する W-1、W-2、W-3、W-4 の 4 ヶ所において水質も測定している。うち、3 ヶ所は架け替

えが予定されている主な橋梁の下流部(Nga Leik、Myitnge、Zawgyi の各河川)、残りの 1 ヶ所

はネピドーにおいて予定されているデポの開発地である。デポでは給油や給水、車両の洗浄、

し尿の収集等が行われるため、これらによる処理排水が周辺の水質を劣化させる恐れがある。

測定は雨季に当たる 2017 年 8 月に行われた。

試料はラボ(SGS Limited、ISO Tech Laboratory、Water and Sanitation Department, Suprime Group of Companies)に送られ、ここで pH、DO、水温、塩分濃度、TSS、COD、BOD、油・潤滑油、

全窒素、全リン、全大腸菌群の有無、濃度について調べられた。水質調査地点と調査に用いた

機材を以下に示す。 表 8.1.32 水質調査地点

調査地点 場所(経度、緯度) 測定日

W-1 デポ開発予定地(ネピドー/デポの東方に位置する小川) (19°51'2.02"N; 96°12'11.78"E) 2017 年 8 月 5 日

W-2 Bridge No. 393(Nga Lite 川/Pyinmana タウンシップ) (19°44'41.28"N; 96°12'13.47"E) 2017 年 8 月 5 日

W-3 Bridge No. 748(Zawgyi 川/Kyauk Se タウンシップ) (21°36'0.00"N; 96° 8'14.20"E) 2017 年 8 月 6 日

W-4 Bridge No. 826(Myit Nge 川/Amarapura タウンシップ) (21°50'33.67"N; 96° 3'59.79"E) 2017 年 8 月 6 日

出典:JICA 調査団

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出典:Google Earth を基に JICA 調査団作成

図 8.1.16 水質調査地点

表 8.1.33 水質調査機材

No. 機材名称とモデル 測定項目 写真

1 YSIpH100A

Handheld & Probe pH、温度

2 YSIDO200A

Handheld& Probe DO、温度

3 YSI EC300A Handheld & Probe

塩分濃度

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水質調査の様子(W-1)

水質調査の様子(W-2)

水質調査の様子(W-3)

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8-60

水質調査の様子(W-4)

写真 8.1.2 水質調査の様子

W-1(ネピドーのデポ開発予定地近くの小川)、W-2(Nga Lite 川に架かる Bridge No. 393 の下

流)、W-3(Zaw Gyi 川に架かる Bridge No. 748 の下流)、W-4(Myit Nge 川に架かる Bridge No. 826 の下流)での水質調査の結果を以下の表 8.1.34 に示す。W-2 において 67 mg/l が検出され

た浮遊粒子状物質(TSS)を除き、全項目が NEQ のガイドラインの基準値を下回った。なお、

水中の浮遊物質は汚濁を招き、光を通しにくくする等、汚濁の一つの指標となっている。各調

査地で採取された水質の分析結果を Appendix8.1.(2)に示す。

表 8.1.34 水質調査の結果

No. 調査項目 場所 NEQ

ガイドライン単位 ラボ名

W-1 W-2 W-3 W-4

1 BOD 8 22 10 8 30 mg/l ISO TECH

2 COD 32 64 32 32 125 mg/l ISO TECH

3 油、潤滑油 <5 <5 <5 <5 10 mg/l SGS

4 pH 7.6 7.7 7.8 7.9 6-9 Standard Unit ISO TECH

5 全大腸菌群 12 22 16 10 400 100ml ISO TECH

6 全窒素 <1 <1 <1 <1 10 mg/l SGS

7 全リン 0.019 0.012 <0.01 <0.01 2 mg/l SGS

8 TSS 38 67 44 27 50 mg/l ISO TECH

* NEQ ガイドラインを超えた測定値は赤色で表示。 出典:JICA 調査団

6) 騒音、振動

騒音、振動の測定にはデジタル騒音計を用いた。騒音、振動調査の測定地点は上述の大気調査

と同一とし、騒音については A 特性音圧レベルを 24 時間連続で測定、振動については 8 時間

連続で測定し、NEQ ガイドラインと比較した。騒音、振動測定地点をに、騒音と振動の測定

に用いた機材をそれぞれ表 8.1.35、表 8.1.36 にそれぞれ示す。

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図 8.1.17 騒音・振動測定地点

表 8.1.35 騒音測定機材

No. 機材名称とモデル 測定項目 写真

1 Digital Sound Level

Meter 騒音レベル

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表 8.1.36 振動測定機材

No. 機材名称とモデル 測定項目 写真

1 Vibration Level meter

振動レベル

a) 騒音

鉄道沿線の騒音レベルは通過する列車による騒音レベルとそれ以外の騒音レベルとの和で示

される。A-1、A-2、A-3、3 ヶ所における騒音レベルを以下の表 8.1.37 に示す。測定値は全て

の測定地点で NEQ の夜間のガイドライン値を超過しており、A-1 では日中の基準値も超過し

ている。 表 8.1.37 騒音測定結果

測定 地点 測定時間 L (dB) NEQ ガイドライン値(dB) 通過列車本数

A-1 日中(7:00-22:00) 59.7 55 9

夜間(22:00-7:00) 55.5 45 5

A-2 日中(7:00-22:00) 46.3 55 19

夜間(22:00-7:00) 53.7 45 5

A-3 日中(7:00-22:00) 54.5 55 14

夜間(22:00-7:00) 60.7 45 0

* NEQ ガイドラインを超えた測定値は赤色で表示。 出典:JICA 調査団

A-1 における騒音レベルは 49.5 dB から 79.4 dB の範囲であり、等価騒音レベルは日中(59.7 dB)、夜間(55.5 dB)と日中の方が高かった。これは通過する列車が昼間の方に多いことが主因と

考えられる。ただ、列車が通過しない時間帯に騒音レベルが高くなるケースが見られ、これは

線路と平行に走る道路及び駐車場で走行したり警笛を鳴らしたりする自動車騒音による影響

とみられる。

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図 8.1.18 騒音測定結果(A-1)

A-2 で測定された騒音レベルは 46.7 dB から 65.5 dB であった。A-1 と比べ列車の通過本数は多

かったものの、騒音レベルは低かった。

図 8.1.19 騒音測定結果(A-2)

A-3 における騒音レベルの 大値は 76.4 dB 、 小値は 52.1 dB であった。24 時間に通過した

列車の本数は 12、列車の走行及びこの警笛に伴う騒音が主たる音源であると考えられる。

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図 8.1.20 騒音測定結果(A-3)

b) 振動レベル

A-1、A-2、A-3 における振動レベルを以下の表 8.1.38 に示す。

表 8.1.38 振動測定結果

測定地点 振動レベル(dB) 日本の振動規制法の

要請限度* 備考 X 軸 Y 軸 Z 軸 日中 夜間

A-1 30.1 32.4 34.465 dB 60 dB

8 時間平均 A-2 30.8 31.5 33.2 A-3 26.6 21.0 23.6

* 第一種区域(良好な環境を保全するため、特に静穏の保持を必要とする区域及び住居の用に供されているため、静穏の保持を必要とする区域)への適用値

出典:JICA 調査団

なお、鉄道に特化した振動基準はミャンマーに限らず、日本にもないことから上表では自動車

に関する振動レベルを参照している。騒音レベルはこの基準を全ての測定地点で満たしている。

A-1 での測定値は 22.1 dB から 34.2 dB であり、Z 方向を含む全ての方向において振動レベルは

日本の基準を満たした。

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図 8.1.21 振動測定結果(A-1)

A-2 での振動レベルは総じて A-1 よりも低く、Z 方向の 大値は 23.6 dB、 小値は 19.5 dB で

あった。これは主に走行する列車、自動車の速度が遅かったことによるものと考えられる。

図 8.1.22 振動測定結果(A-2)

Time (hr)

Time (hr)

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A-3 での Z 方向の振動測定値は 21.2 dB から 27.2 dB であった。これは A-1 よりも低く、A-2と同等程度といえ、主に列車の運行速度が影響していると考えられる。測定地点の土は粘土質

であった。

図 8.1.23 振動測定結果(A-3)

7) 生態系

事業対象地における植物相(木、低木、草本、つる性植物、竹等)、動物相(哺乳類、鳥類、

両生類、爬虫類、昆虫類等)を把握するため、現地調査とこれを補完する目的でインタビュー

調査と文献調査を行った。調査地点は事業対象区間(タウングー~マンダレー)の距離と位置

を勘案の上、事業を通じて比較的大きな範囲が影響を受ける場所に焦点を当てて決められた。

具体的には、本事業区間の始点であり主要都市でもあるタウングー、及びネピドーと Myohaungそれぞれのデポ開発予定地である。このうち、マンダレー駅の南約 5km に位置する Myohaungは MR が所有、管理する土地ではあるものの、 も広い範囲の土地が事業の影響を受ける予

定にある。生態系調査は雨季(2017 年 8 月)に実施された。

調査では、半径 250m の円形のプロットを設け、この中に横 5m、縦 10m の長方形のプロット

を 25 区画作り、この範囲内で確認できた動植物を記録した。長方形のプロットは隣接するプ

ロットから 100m 程度の距離を置いて設置した。プロットの設置方法を Myohaung で行われた

生態系調査を例に、図 8.1.24 に示す。

Time (hr)

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出典:Google Earth を基に JICA 調査団作成

図 8.1.24 生態系調査地点とプロットの設置方法(Myohaung)

a) 植物相

調査の結果、タウングー、ネピドー(デポ開発予定地)、Myohaung(デポ開発予定地)におい

て表 8.1.39 に示す 44 種の植物が確認された。記録された植物は木(tree)、小木(small tree)、低木(shrub)、草本(herb)、つる性植物(climber)、ほふく食物(creeper)、水生植物(aquatic species)の 7 つに大きく分類できる。それぞれの種は IUCN のレッドリスト(2016)と比較さ

れ、いずれも絶滅危惧種や準絶滅危惧種には該当しないことが確認された。

5m

10m

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表 8.1.39 確認された植物種のリスト

No. 属 種 Common Name Family Name(科名) IUCN 分類 分類

1 Acacia catechu Sha Fabaceae Nil T 2 Acacia leucophloea Tanaung Fabaceae Nil T 3 Acalypha indica Kyaung-yo-the Euphorbiaceae Nil S4 Albizia lebbek Kokko Fabaceae Nil T 5 Alternanthera sessilis Pazun-sar Amaranthaceae Nil H6 Azadirachta indica Tama Meliaceae Nil T 7 Bauhinia purpurea Swedaw Fabaceae Nil T 8 Boerhavia diffusa Pa-yan-na-war, Nyctaginaceae Nil H9 Bombax ceiba Letpan Bombacaceae Nil T

10 Calotropis gigantea Mayo-gyi Apocynaceae Nil ST11 Cassia glauca Pyiban-nyo Fabaceae Nil T 12 Cassia Tora Dangywe Fabaceae Nil S13 Cayratia trifolia Taw-sabyit Vitaceae Nil CL14 Chromolaena odorata Bizat Asteraceae Nil S15 Chrozophora plicata Gyo-sagauk Euphorbiaceae Nil S16 Colocasia affinis Pein Araceae Nil H17 Commelina benghalensis Wetkyok Commelinaceae Nil H18 Croton bonplandianum Unknown Euphorbiaceae Nil S19 Delonix regia Seinban Fabaceae Nil T 20 Dregea volubilis Gwedauk-nwe Asclepiadaceae Nil CL21 Eucalyptus albens Eu-ca-lit Myrtaceae Nil T 22 Ficus benghalensis Nyaung Moraceae Nil T 23 Hyptis suaveolens Unknown Lamiaceae Nil H24 Impatiens balsamina Dan-pan Balsaminaceae Nil H25 Ipomoea obscura Unknown Convolvulaceae Nil CR26 Lantana indica Se-hnit-yathi Verbenaceae Nil S27 Leptadenia reticulata Gon-nwe Asclepiadaceae Nil CL28 Leucas cephalotes Pin-gu-hteik-peik Lamiaceae Nil H29 Mangifera indica Thayet Anacardiaceae Nil T 30 Nerium oleander Nwe-tha-gee Apocynaceae Nil ST31 Nymphaea nouchali Kya-pya Nymphaeaceae Nil Aquatic32 Pedalium murex Su-le-gyi Pedaliaceae Nil S33 Physalis minima Bauk-pin Solanaceae Nil H34 Pithecellobium dulce Tayok-magyi Fabaceae Nil T 35 Polyalthia longifolia Thinbaw-te Annonaceae Nil T 36 Pterocarpus macrocarpus Padauk Fabaceae Nil T 37 Ricinus communis Kyetsu Euphorbiaceae Nil ST38 Ruellia tuberosa Byauk Acanthaceae Nil H39 Sida acuta Notknown Malvaceae Nil S40 Streblus asper Okhne Moraceae Nil ST41 Terminalia catappa Banda Combretaceae Nil T 42 Tridax procumbens Hmwezok-ne-gya Asteraceae Nil H43 Typha angustifolia Shin-mwe-lon Typhaceae Nil Aquatic44 Ziziphus jujuba Zi Rhamnaceae Nil ST

ST = 小木(Small Tree)、T = 木(Tree)、S = 低木(Shrub)、H = Herb(草本)、CL = Climber(つる性植物)、CR = Creeper(ほふく植物) 出典:JICA 調査団

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b) 動物相

生態系調査は「(2)方法論」に記載の方法で実施された。タウングーでは 17 種類の鳥類、22種類の蝶が記録された。一方、ネピドーのデポ開発予定地では 19 種類の鳥類、19 種類の蝶、

10 種類のトンボが、Myohaung のデポ開発予定地では鳥類 17 種類、蝶 19 種類、トンボ 10 種

類確認されている。IUCN のレッドリスト(2016)で絶滅危惧種もしくは準絶滅危惧種に当た

るものはなかった。調査を通じて確認された動物種を以下の表に、写真を Appendix8.1(3)にそ

れぞれ示す。

① タウングー

タウングーで確認された鳥類と蝶を以下の表 8.1.40、表 8.1.41 にそれぞれ示す。

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表 8.1.40 タウングーで確認された鳥類

No. Common Name 学名 1 Spotted Dove Streptopelia chinensis 2 Oriental Magpie Robin Copsychus saularis 3 Grey-Breasted Prinia Prinia hodgson 4 Vinous-Beasted Starling Sturnus burmannicus 5 Rock Pegion Columba livia 6 House Crow Corvus splendens 7 Plain Martin Riparia paludicola 8 House Sparrow Passer domesticus 9 Eurasian Tree Sparrow Passer montanus

10 Scaly-Breasted Munia Lonchura punctulata 11 Pied Bushchat Saxicola caprata 12 Coppersmith Barbet Megalaima haemacephala 13 Barn Swallow Hirundo rustica 14 Little Egret Egretta garzetta 15 Great Egret Casmerodius albus 16 Large-Billed Crow Corvus macrohynchos 17 Common Myna Acridotheres tristis

表 8.1.41 タウングーで確認された蝶

No. Common Name 学名 1 Common Mormon Papilio polytes 2 Lime butterfly Papilio demoleus 3 Common Emigrant Catopsilia Pomona 4 Common Rose Pachliopta aristolochiae 5 Mottled Emigrant Catopsilia pyranthe 6 Psyche Leptosia nina 7 Striped-Albatross Appias libythea 8 Blue Tiger Danaus limniace 9 Plained Tiger Danaus chrysippus

10 Great Eggfly Hypolimnas bolina 11 Common Sailor Neptis hylas 12 Danaid Eggfly Hypolimnas misippus 13 Tawny Coster Acraea violae 14 Yellow Pansy Junonia hierta 15 Peacock Pansy Junonia almanac 16 Gray Pansy Junonia atlites 17 Common Bush Brown Mycalesis perseus 18 Lemon Pansy Junonia lemonias 19 Common Pierrot Castalius rosimon 20 Lime Blue Chilades lajus 21 Striped Pierrot Tarucus nara 22 Swift Caltoris spp.

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② デポ開発予定地(ネピドー)

デポ開発予定地(ネピドー)で確認された鳥類、蝶、トンボを以下の表 8.1.42、表 8.1.43、表 8.1.44 にそれぞれ示す。

表 8.1.42 デポ開発予定地(ネピドー)で確認された鳥類

No. Common Name 学名 1 Yellow-Eyed Babbler Chrysomma sinense 2 Australasian Bushlark Mirafra javanica 3 Grey-Breasted Prinia Prinia hodgsonii 4 Plain Prinia Prinia inornata 5 Pied Bushchat Saxicola caprata 6 Scaly-Breasted Munia Lonchura punctulata 7 Common Myna Acridotheres tristis 8 House Sparrow Passer domesticus 9 Blue-Throated Bee-Eater Merops viridis

10 Eurasian Tree Sparrow Passer montanus 11 Blue-Tailed Bee-Eater Merops philippinus 12 Red-Vented Bulbul Pycnonotus cafer 13 Streak Eared Bulbul Pycnonotus blanfordi 14 Spotted Dove Streptopelia chinensis 15 White-throated Babbler Turdoides gularis 16 Red Collared Dove Streptopelia Tranquebarica 17 Lesser Whistling Duck Dendrocygna javanica 18 Black-Shouldered Kite Elanus caeruleus 19 Greater Coucal Centropus sinensis

表 8.1.43 デポ開発予定地(ネピドー)で確認された蝶

No. Common Name 学名 1 Lime butterfly Papilio demoleus 2 Common Rose Pachiliopta aristolochiae 3 Common grass yellow Eurema hecabe 4 Psyche Leptosia nina5 Blue Tiger Danaus limniace 6 Plained Tiger Danaus chrysippus 7 Great Eggfly Hypolimnas8 Tawny Coster Acraea violae9 Lemon Pansy Junonia lemonias

10 Common Bush Brown Mycalesis perseus 11 Dark-Branded Bushbrown Mycalesis mineus 12 Common Four-ring Ypthima huebneri 13 Lime Blue Chilades lajus 14 Common Five-ring Ypthima baldus 15 Striped Pierrot Tarucus nara16 Common Pierrot Castalius rosimon 17 Swift Caltoris spp18 Peablue Lampides boeticus 19 Small Blue Cupido spp

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表 8.1.44 デポ開発予定地(ネピドー)で確認されたトンボ

No. Common Name 学名 1 Ground Skimmer/Chalky Percher Diplacodes trivilis 2 Carmine Darter Crocothemis erythraea 3 Dark- winged Groundling Brachythemis fuscopalliata 4 Trumpet Tail Acisoma panorpoides 5 Crimson-tailed Mash Hawk (Male) Orthetrum pruinosum 6 Wandering Glider Pantala flavescens 7 Coromandel Marsh Dart Ceriagrion coromandelianum 8 Yellow Bush Dart (Female) Copera marginipes 9 Golden Dartlet Ischnura aurora

10 Orange-tailed Marsh Dart Ceriagrion cerinorubellum

③ デポ開発予定地(Myohaung)

デポ開発予定地(Myohaung)で確認された鳥類、蝶、トンボを以下の表 8.1.45、表 8.1.46、表 8.1.47 にそれぞれ示す。

表 8.1.45 デポ開発予定地(Myohaung)で確認された鳥類

No. Common Name 学名 1 Spotted Dove Streptopelia chinensis 2 Vinous-Breasted Starling Sturnus burmannicus) 3 House Crow Corvus splendens 4 Large-billed Crow Corvus macrorhynchos 5 Eurasian Tree Sparrow Passer montanus 6 House Sparrow Passer domesticus 7 Blue-tailed Bee-Eater Merops philippinus 8 Scaly-Breasted Lonchura punctulata 9 Common Myna Acridotheres tristis

10 Common Hoopoe Upupa epops 11 White-throated Babbler Turdoides gularis 12 Streak Eared Bulbul Pycnonotus blanfordi 13 Rock Pigeon Columba livia 14 Red-vented Bulbul Pycnonotus cafer 15 Asian Palm Swift Cypsiurus balasinensis 16 Oriental Magpie Robin Copsychus saularis 17 Indian Pond Heron Ardeola grayii

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8-73

表 8.1.46 デポ開発予定地(Myohaung)で確認された蝶

No. Common Name 学名 1 Lime Butterfly Papilio demoleus 2 Common Rose Pachliopta aristolochiae 3 Common Emigrant Catopsilia Pomona 4 Mottled Emigrant Catopsilia crocale) 5 Yellow Orange Tip Ixias pyrene6 Mottled Emigrant Catopsilia pyranthe 7 Common Grass Yellow Eurema hecabe 8 Striped-Albatross Appias libythea 9 Painted Jezebal Delias hyparete indica

10 Striped Tiger Danaus limniace 11 Great Eggfly Hypolimnas bolina 12 Hypolimnas bolina Hypolimnas misippus 13 Peacock Pansy Junonia almanac 14 Tawny Coster Acraea violae 15 Blue Pansy Junonia orithya 16 Angled Castor Ariadne Ariadne 17 Swift Caltoris spp.18 Plains Cupid Chilades pandava 19 Darts Potanthus spp.

表 8.1.47 デポ開発予定地(Myohaung)で確認されたトンボ

No. Common Name 学名 1 Slender Skimmer/Green Marsh Hawk Orthetrum Sabina 2 Ground Skimmer/Chalky Percher Diplacodes trivilis 3 Common Picture Wing Rhyothemis variegate 4 Black Pennant Selysiothemis nigra 5 Blue Dasher Pachydiplax longipennis 6 Ruddy Marsh Skimmer Crocothemis servilia 7 Common Redbolt Rhodothemis rufa 8 Antillean Saddlebags Tramea insularis 9 Ditch Jewel Brachythemis contaminate

10 Coromandel Marsh Dart Ceriagrion coromandelianum

(6) 環境影響評価

本項では事業により生じる可能性のある環境影響を EIA Procedure(2015)に従い、計画段階、

施工段階、運営維持管理段階、解体段階、及び終結段階/終結後に分けて示す。評価の予測は

スコーピングの結果を基に、事業のコンポーネントと予定される工事の内容と測定結果を含む

現地調査の結果といったベースラインデータを踏まえて行われた。環境影響評価の結果はス

コーピングの結果と併せ、以下の表 8.1.48 に示している。評価は対策が取られなかった場合

を想定して行っている。

表 8.1.48 環境影響評価結果

No. 影響項目

影響評価(スコーピング段階) 影響評価(調査後)

想定される影響P Co O De Cl/

PCl P Co O De Cl/PCl

汚染

1 大気汚染 D B- B- B- D D B- B+/- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 土木工事、資材の移動や積み下ろし、工事機械・車両の稼働によって粉塵や排ガスが発生し、大気質の低下をもたらすことが想定される。事業対象地域は複数の都市部を含むことから、こうした都市部を移動することが想定される。[O] 機関車の数が増えることにより、その運営中の排ガスが増え、大気汚染を招くことが想定される。一方、車両から鉄道へのモーダルシフトを通じて大気汚染物質(PM、NOx)等は減ると考えられる。 [De] 解体工事により大気質は一時的に低下すると想定される。 [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

2 水質汚濁 D B- B- B- D D B- B- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 切り盛り土や掘削作業といった土木工事の結果生じる土砂等の水源への流出、工事キャンプ、工事事務所からの排水、油や潤滑油の漏出等により水質が一時的に低下する可能性がある。[O] 特にデポにおいて、車両洗浄後の水、油や潤滑油、し尿等が適切に処理されない場合、水質の悪化を招く可能性がある。また、改修対象 7駅でのし尿が適切に処理されない場合、地下水の汚染に繋がる可能性がある。[De] より規模は小さいものの、上記[Co]と同様の活動の結果、水質が低下する可能性がある。[Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

3 土壌汚染 D B- B- B- D D B- B- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事用機械や車両からの潤滑油の漏出により土壌が汚染する可能性がある。ただ、量は限られ、したがって影響は限定的と考えられる。[O] 鉄道のエンジンからの潤滑油が流出し、土壌を汚す可能性がある。ただ、新型車両の導入によりこうしたリスクは低くなると考えられる他、漏出する可能性のある油量も限られるため、影響は限定的と考えられる。[De] 工事用機械や車両からの潤滑油の漏出により土壌が汚染する可能性がある。ただ、量は限られ、したがって影響は限定的と考えられる。[Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

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8-74

No. 影響項目

影響評価(スコーピング段階) 影響評価(調査後)

想定される影響P Co O De Cl/

PCl P Co O De Cl/PCl

4 廃棄物 D B- B- B- D D B- B- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事中、土砂や木材を含む廃棄物が生じると見込まれるが、改修事業であり再利用可能な施設等については再利用されるため、量は比較的少ないと考えられる。既存の構造物(枕木、踏切、信号・通信システム等)は刷新されるため、廃棄物が発生する。[O] 鉄道施設や車両からの固形廃棄物の発生が見込まれる。 [De] 鉄道路線や施設の解体の結果、既存の構造物は廃棄されると考えられる。[Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

5 騒音、振動 D B- B- B- D D B- B- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事や工事車両・機械の稼働、ディーゼル発電機等により騒音、振動が一時的に発生することが想定される。[O] 鉄道運行により特に線路沿線において騒音、振動が想定される。 [De] 工事や工事車両・機械の稼働、ディーゼル発電機等により騒音、振動が一時的に発生することが想定される。[Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

6 地盤沈下 D D D D D D D D D D 大規模な地下水の利用等、地盤沈下を引き起こしうる活動は想定されていないことから影響はほとんどないと考えられる。

7 悪臭 D B- D D D D B- B- D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 排水路の掘り起こしや浚渫、工事キャンプでの生活等により工事中に悪臭が発生する可能性がある。[O] 改修が予定されている鉄道駅等でのし尿処理が適切に貯留、処理されない場合、悪臭が発生する可能性がある。[De] Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

8 底質 D D D D D D D D D D 底質の汚染を招く活動は想定されていないことから影響はほとんどないと考えられる。

自然環境

9 保護区 D D D D D D D D D D 鉄道の周辺地域に保護区は確認されておらず、よって、こうした保護区等への影響は想定されない。

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8-75

No. 影響項目

影響評価(スコーピング段階) 影響評価(調査後)

想定される影響P Co O De Cl/

PCl P Co O De Cl/PCl

10 生態系 D B- D D D D B- D D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 施工事中の掘削作業、盛土、木々の除去等が生態系に悪影響を及ぼす可能性がある。ただ、改修事業であり、影響範囲は基本的にMR のROW内であることから、その範囲は限定的である。[O] [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

11 水文 D D D D D D D D D D 一部の橋梁が架け替えられるが、既存の橋梁を新しく置き換えるだけであるため、水文への影響はほとんどないと考えられる。

12 地形、地質 D B- D D D D B- D D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事による大きな土地の改変は想定されていない。ただ、施工中の切り盛り土により地形や地質に一定の変化はある。[O] [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

13 越境被害、気候変動

D B- B+/- B- D D B- B+/- B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事車両の走行により温室効果ガスの排出量が工事中、一時的に増える。[O] 列車数が増えることにより温室効果ガス排出量は増える。一方、自動車、トラック等から鉄道へのモーダルシフトが起きることにより、全体としては排出量が減るものと想定される。[De] 工事車両の走行により温室効果ガスの排出量が工事中、一時的に増える。[Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

社会環境

14 非自発的住民移転

B- D D D D B- D D D D [P] 既存鉄道の改修とはいえ、安全確保のために線形を変更する必要のある個所やデポ・車両基地の開発予定地では限定的な数の住民移転が発生することが想定される。住民移転者数は 200 人を下回る。 [Co] [O] [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

15 貧困層 D B+ D B+ D D B+ B+ B+ D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 施工中、事業により新たな雇用が創出され、収入機会が増えることが想定される。[O] より速く、安全で信頼性の高い列車の運行と旅客数の増加により、物品やサービスの販売機会の拡大と収益の向上が見込める。[De] 解体工事中、事業により新たな雇用が創出され、収入機会が増えることが想定される。[Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

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8-76

No. 影響項目 影響評価(スコーピング段階) 影響評価(調査後)

想定される影響P Co O De Cl/

PCl P Co O De Cl/PCl

16 雇用、生計等地域経済

D B+ D B+ D D B+ B+ B+ D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] [O] [De] 施工中、解体工事中は事業により新たな雇用が創出され、収入機会が増えることが想定される。運用中も旅客数の増加に伴い物品やサービスの販売等を通じた収益の向上が見込める。[Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

17 少数民族、先住民

C C C C C D D D D D 事業の影響範囲やその周辺に少数民族はいない。GAD のデータによれば、ほとんどの住民はビルマ族であり、その他はカレン族、シャン族等、いずれも少数民族には当たらない。

18 土地利用、自然資源活用

D B+ B+ D D D B+ B+ D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] [O] 事業は鉄道沿線や駅周辺において、より生産的な土地の利用を促すものと想定される。事業の影響範囲は MR の ROW 内に限られると想定されるため、土地や自然資源の利用の制限は見込まれない。[De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

19 水利、水利権 D C C C D D D B- D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 水源次第で地下水や地表水が施工中に使われる可能性がある。 [O] デポ、車両基地においては地下水を使って車両の洗浄を含む維持管理作業を行うと見られる。ただ、他の用途(※ネピドーでのホテルの使用量、Myohaung での住民全体の使用量)と比べると量は限られ、よって、水利権への影響は限定的と考えられる。[De] 水源次第で地下水や地表水が施工中に使われる可能性があるが、影響は軽微と考えられる。[Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

20 既存の社会インフラ・サービス

D B- B+ D D D B- B+ D D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 踏切、排水路、プラットホーム、橋梁、その他の鉄道施設の利用者はこれらの更新に伴い一時的に影響を受けることが想定される。[O] 旅客は安全で早く、信頼性の高い鉄道交通の実現により裨益する。 [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

21 社会インフラ、地元の意思決定機構等、社会組織

C C C C D D D D D D 想定される特記すべき影響はない。

22 利益、損害の誤分配

D D D D D D D D D D 想定される特記すべき影響はない。

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No. 影響項目

影響評価(スコーピング段階) 影響評価(調査後)

想定される影響P Co O De Cl/

PCl P Co O De Cl/PCl

23 地元の利害対立

D D D D D D D D D D 想定される特記すべき影響はない。

24 文化遺産 C C C C C D D D D D 鉄道の周辺地域に文化遺産は存在せず、よって、影響は想定されない。

25 景観 D D D D D D D D D D 景観に大きな影響を及ぼすような土木工事、土木構造物の建設は想定されていない。

26 ジェンダー C C C D D D D B+ D D [P] [Co] 想定される特記すべき影響はない。 [O] 本事業を通じたバリアフリー化に向けた改良や休憩所の設置は旅客全体、特に妊婦その他の女性乗客にとっての便益が大きい。[De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

27 子どもの権利 C C C C D D D B+ D D [P] [Co] 想定される特記すべき影響はない [O] 事業により、通学の利便性が高まるものと考えられる。 [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

28 HIV/AIDS 等の感染症

D B- D B- D D B- D B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 工事作業者の流入により、性感染症等の感染症が広がる可能性がある。[O] [De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

29 労働条件 D D D D D D D D D D 想定される特記すべき影響はない。

30 事故 D B- B- B- D D B- B- /B+

B- D [P] 想定される特記すべき影響はない。 [Co] 改修事業であることから工事は比較的小規模に留まり、工事作業に起因する甚大な事故が発生するリスクは必ずしも高くはない。ただ、鉄道沿線で行われることから鉄道との接触事故等が発生する可能性がある。[O] 鉄道の運行速度が速いことから線路を横断したり、そこに留まったりする人々との接触事故が起きる可能性がある。[De] [Cl/PCl] 想定される特記すべき影響はない。

A+/-:正/負の大きな影響がある、B+/-:一定の正/負の影響がある、C+/-:正/負の影響の大きさが明らかではない、D:影響なし [P]:計画段階、[Co]:施工段階、[O]:運営維持管理段階、[De]:解体段階、[Cl/PCL]:終結段階/終結後 出典:JICA 調査団

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8-78

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8-79

(7) 環境管理計画

1) 環境緩和策

本事業に伴って発生する影響を回避、低減、代償するための環境緩和策、及びそのための費用、

実施・責任機関を以下の表 8.1.49 に示す。

表 8.1.49 事業による影響の緩和策

No. 項目 緩和策 実施機関 責任機関 費用

1 大気汚染 [Co] [De] - 土砂や廃棄物といった微細物質を事業対象地へ、あるい

はそこから運搬する場合には覆い、飛散を防止する。- 工事現場、住居周辺には頻繁に水を撒き、粉塵の飛散を

防止する。- 使用していない間、発電機等、排ガスを伴う機器の電源

を切る。- 工事車両には速度制限を設ける。 - 大気質は測定を通じてモニタリングする。

[O] - 鉄道機器や装置は頻繁に点検し、適宜、修理する。 - 大気質は測定を通じてモニタリングする。

[Co] [De] 施工会社

[O] MR

MR - 大気の測定費用については環境モニタリング計画を参照。

- 他の費用は工事費、維持管理費に含まれる。

2 水質汚濁 [Co] [De] - 工事現場からの排水は貯水池や下水処理装置を通じて適

切に浄化した後、決められた場所に排出する。- 排水は市の開発委員会や地域政府の排水システムに則り

適切に処理する。- 水質は採取、分析を通じてモニタリングする。

[O] - デポ、車両基地からの排水は貯水池や下水処理装置を通

じて適切に浄化した後、決められた場所に排出する。- 排水は市の開発委員会や地域政府の排水システムに則り

適切に処理する。- 水質は採取、分析を通じてモニタリングする。

[Co] [De] 施工会社

[O] MR

市開発委員会や地域政府の支援を受けたMR

USD 2,200,000(USD 1,100,000 * デポ2ヶ所) *貯水池や下水処理装置の運営費は維持管理費に含まれる。*水質のモニタリング費用については環境モニタリング計画を参照。

3 土壌汚染 [Co] [De] - 油、潤滑油を含む全ての廃棄物は決められた場所に保管、

廃棄し、土壌汚染のリスクを 小化する。[O] - 整備の行き届いた機器や装置を使用することで走行車両

のエンジン等からの潤滑油の漏出を 小限に留める。- 車両のエンジンや車両は頻繁に整備する。

[Co] [De] 施工会社

[O] MR

MR -

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8-80

No. 項目 緩和策 実施機関 責任機関 費用

4 廃棄物 [Co] [De] - 工事により発生する廃棄物は市開発委員会、地域政府の

指示の下、3R(reduce、reuse、recycle)を検討した上で廃棄する。

[O] - し尿は市開発委員会、地域政府の汚水処理システムを踏

まえ、適切に処理した上で排出する。- 鉄道施設から発生する固形廃棄物は市開発委員会、地域

政府の指示の下、廃棄する。

[Co] [De] 施工会社

[O] MR

市開発委員会や地域政府の支援を受けたMR

「2.水質汚濁」参照。

5 騒音、振動 [Co] [De] - 必要に応じて、防音壁の設置や騒音低減装置の使用を検

討する。- 影響を受けやすい施設等の近くでは極力、夜遅い時間帯

や早朝の時間帯の工事を避ける。- 工事の内容、スケジュールは事前に周辺住民に開示する。- 騒音、振動レベルは測定を通じてモニタリングする。

[O] - 列車の走行に伴う影響を軽減するため、必要に応じて、

防音壁の設置や騒音低減装置の使用を検討する。- 線路に近接する住宅地付近では列車の速度を制限する。- 騒音、振動レベルは測定を通じてモニタリングする。

[Co] [De] 施工会社

[O] MR

MR - 騒音、振動の測定費用については環境モニタリング計画を参照。

- 他の費用は工事費、維持管理費に含まれる。

6 悪臭 [Co] - 悪臭をモニタリングする。 - 悪臭源を踏まえた軽減策を適宜、検討する。

[O] - 悪臭をモニタリングする。 - 悪臭源を踏まえた軽減策を適宜、検討する。

[Co] 施工会社

[O] MR

MR -

7 生態系 [Co] - 木の伐採、植生の除去は 小限に留める。 - 貯水池を使用することで排水が直接、水界生態系に流入

するのを防ぐ。- 有害廃棄物は 終処分まで適切に保管する。

施工会社 MR 「2.水質汚濁」参照。

8 地形、地質 [Co] - 切り土や盛り土工事は 小限に留める。

施工会社 MR -

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8-81

No. 項目 緩和策 実施機関 責任機関 費用

9 越境被害、気候変動

[Co] [De] - 使用していない間、発電機等、排ガスを伴う機器の電源

を切る。[O] - 車両は頻繁に点検、整備することでGHGの排出を抑える。

[Co] [De] 施工会社 MR -

10 非自発的住民移転

[P] - 住民協議の場を通じて、工事中、一時的に影響を受ける

人々も含めた移転住民の状況、不安やニーズを理解し、そのストレスの軽減に努める。

- ARAPに従い、適切な補償等、生計回復支援をPAPsに提供する。

[Co] - 住民の移転、補償等、生計回復支援の提供がARAPに従い、

適切に行われたかどうか確認する。

MR、土地記録局(Department of Agricultural Land Management and Statistics)、GAD

MOTCや地域政府の支援を受けたMR

USD25,100(補償費) *住民協議に係る費用については環境モニタリング計画を参照。

11 水利権 [O] - 水の効率的な使用を心がけ、過度に使用しない。

MR MR -

12 既存の社会インフラ・サービス

[Co] - 工事の内容、スケジュールは事前に周辺住民に開示する。- 工事作業者と車両の運転手には交通安全とマナーについ

ての教育を施す。- 必要に応じて踏切等に監視員を配置する。 - 住民の不満に対応する窓口役を配置する。

[Co] 施工会社 MR -

13 HIV/AIDS等の感染症

[Co] [De] - HIV/AIDSといった感染症の拡大を防ぐため、工事作業者

に対する啓蒙活動を行う。

[Co] [De] 施工会社 MR 費用は工事費に含まれる。

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8-82

No. 項目 緩和策 実施機関 責任機関 費用

14 事故 [Co] [De] - 工事作業者に対し訓練を行い、また標識を通じて地元住

民等への周知を行うことで事故を防ぐ。- 事故が発生した場合にはその内容と原因を分析、記録す

る。- 必要に応じて踏切等には監視員を配置する。 - 工事現場は適切、十分に明るくする。

[O] - 工事作業者、旅客、住民に対し、鉄道の運行と安全に係

る教育を提供する。- 事故が発生した場合にはその内容と原因を分析、記録す

る。- 駅、踏切周辺、都市部、村落部の鉄道沿線に侵入防止用

のフェンスを設置することで線路を横断したり、ヤードを占有したりする人々と列車との接触事故の防止を図る。

[Co] [De] 施工会社

[O] MR

MR 費用は工事費に含まれる。

P:計画段階、Co:施工段階、O:運営維持管理段階、De:解体段階 出典:JICA 調査団

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8-84

2) 環境モニタリング計画

本事業に係る環境モニタリング計画について、そのための費用、実施・責任機関を含め以下の

表 8.1.50 に示す。

表 8.1.50 環境モニタリング計画

No. 環境項目 モニタリング項目 方法 場所 頻度 実施機関 責任機関 費用/年

計画段階

1 非自発的住民移転

- 補償や生計回復支援の提供に係る進捗状況

- PAPsの意見や不満の声

- 事業対象地の状況

- 住民協議等を通じた住民とのコミュニケーション

- 補償等の支払記録の確認

- 事業対象地の確認

事業対象地 四半期に1回及び意見、不満が届いたとき

MOTCや地域政府の支援を受けたMR

MR USD 8,000 (USD 500 * 4 ヶ所 * 4 回)

施工段階

1 大気汚染 NO2、SO2、PM10、PM2.5、Ozone、Micro climate(気温、湿度、風速、風向等)

各観測地点において平日24時間連続測定

既存鉄道の沿線3ヶ所(Taungoo、Myohaung、Pyinmana等/原則、ベースライン調査と同じ地点)

半年に1回 コンサルタントの監理の下、施工会社

MR USD 6,000 (USD 1,000 * 3 ヶ所 * 2 回)

2 水質汚濁 BOD、COD、油、潤滑油、pH、全大腸菌群、全窒素、全リン、TSS

試料採取、ラボでの分析

既存鉄道の沿線4ヶ所(架け替えが予定されている主要橋梁の下流、デポ開発予定地等/原則、ベースライン調査と同じ地点)

半年に1回 (雨季1回、乾季1回)

コンサルタントの監理の下、施工会社

MR USD 8,000 (USD 1,000 * 4 ヶ所 * 2 回)

3 土壌汚染 - 土壌の状況 - 地域住民の意見や不満の声

- 意見や不満の確認 - 表層土の目視による確認

工事現場とその周辺地域

四半期に1回及び意見、不満が届いたとき

コンサルタントの監理の下、施工会社

MR -

4 廃棄物 - 土、草木、ゴミを含む廃棄物の量

- 地域住民の意見や不満の声

- 発生した廃棄物記録の確認

- 意見や不満の確認 - 目視

工事現場 四半期に1回及び意見、不満が届いたとき

コンサルタントの監理の下、施工会社

MR -

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8-85

No. 環境項目 モニタリング項目 方法 場所 頻度 実施機関 責任機関 費用/年

5 騒音、振動 - LAeq(騒音) - LV10(振動)

各観測地点において平日24時間連続測定

既存鉄道の沿線3ヶ所 ( Taungoo 、Myohaung 、Pyinmana等/原則、ベースライン調査と同じ地点)

半年に1回 コンサルタントの監理の下、施工会社

MR USD 6,000 (USD 1,000 * 3 ヶ所 * 2 回)

6 悪臭 - 土、草木、ゴミを含む廃棄物の量

- 地域住民の意見や不満の声

- 意見や不満の確認 - 廃棄物等、悪臭源の目視による確認

工事現場 月に1回及び意見、不満が届いたとき

コンサルタントの監理の下、施工会社

MR -

7 生態系 伐採された木、植生の量

目視 事業対象地 植生の伐採を含む作業が発生したとき

コンサルタントの監理の下、施工会社

MR -

8 地形、地質 切土工事、盛土工事の必要性と規模

目視 事業対象地 盛土、切土工事を含む作業が発生したとき

コンサルタントの監理の下、施工会社

MR -

9 越境被害、気候変動

大気質 「1.大気汚染」参照。

10 非自発的住民移転

- 生計回復支援策の実施状況

- PAPsの収入、生計の回復状況

- PAPsの意見や不満の声

- 事業対象地の状況

- 住民協議等を通じた住民とのコミュニケーション

- 補償等の支払記録の確認

- 事業対象地の確認

事業対象地 四半期に1回及び意見、不満が届いたとき

MOTCや地域政府の支援を受けたMR

MR USD 8,000 (USD 500 * 4 ヶ所 * 4 回) *非自発的住民移転及び補償等の支払いは工事開始前に完了しているはず。

11 既存の社会インフラ・サービス

地域住民の意見や不満の声

- 意見や不満の確認 - 目視

事業対象地 意見、不満が届いたとき

コンサルタントの監理の下、施工会社

MR -

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No. 環境項目 モニタリング項目 方法 場所 頻度 実施機関 責任機関 費用/年

12 HIV/AIDS等の感染症

- 感染症患者数 - 地域住民の意見や不満の声

- 工事作業者(及び理想的には地域住民)の健康チェックリストの確認

- 意見や不満の確認

事業対象地及びその周辺

月に1回及び意見、不満が届いたとき

コンサルタント、MR、MOTC、地域政府の支援を受けた施工会社

MR -

13 事故 事故の数 事故記録の確認 事業対象地 月に1回 コンサルタントの監理の下、施工会社

MR -

維持管理段階

1 大気汚染 NO2、SO2、PM10、PM2.5、Ozone、Micro climate(気温、湿度、風速、風向等)

各観測地点において平日24時間連続測定

既存鉄道の沿線3ヶ所(Taungoo、Myohaung、Pyinmana等/原則、ベースライン調査と同じ地点)

半年に1回(維持管理段階に入って以降、初の2年間)

MRに雇用された環境分野のコンサルタント

MR USD 6,000 (USD 1,000 * 3 ヶ所 * 2 回)

2 水質汚濁 BOD、COD、油、潤滑油、pH、全大腸菌群、全窒素、全リン、TSS

試料採取、ラボでの分析

既存鉄道の沿線4ヶ所(架け替えが予定されている主要橋梁の下流、デポ開発予定地、改修駅(トイレ)周辺の井戸等/原則、ベースライン調査と同じ地点)

半年に1回(雨季1回、乾季1回/維持管理段階に入って以降、 初の2年間)

MRに雇用された環境分野のコンサルタント

MR USD 8,000 (USD 1,000 * 4 ヶ所 * 2 回)

3 土壌汚染 - 土壌の状況 - 地域住民の意見や不満の声

- 意見や不満の確認 - 表層土の目視による確認

事業対象地及びその周辺

四半期に1回及び意見、不満が届いたとき(維持管理段階に入って以降、初の2年間)

MR MR -

4 廃棄物 - 土、草木、ゴミを含む廃棄物の量

- 地域住民の意見や不満の声

- 意見や不満の確認 - 目視

デポ、車両基地 四半期に1回及び意見、不満が届いたとき(維持管理段階に入って以降、初の2年間)

MR MR -

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No. 環境項目 モニタリング項目 方法 場所 頻度 実施機関 責任機関 費用/年

5 騒音、振動 - LAeq(騒音) - LV10(振動)

各観測地点において平日24時間連続測定

既存鉄道の沿線3ヶ所(Taungoo、Myohaung、Pyinmana等/原則、ベースライン調査と同じ地点)

半年に1回(維持管理段階に入って以降、初の2年間)

MRに雇用された環境分野のコンサルタント

MR USD 6,000 (USD 1,000 * 3 ヶ所 * 2 回)

6 悪臭 - 臭気 - 地域住民の意見や不満の声

- 意見や不満の確認 - 廃棄物等、悪臭源の目視による確認

改修駅(トイレ)周辺

半年に1回及び意見、不満が届いたとき(維持管理段階に入って以降、初の2年間)

MR MR -

7 越境被害、気候変動

大気質 「1.大気汚染」参照。

8 水利権 - 地表水位、地下水位 - 地域住民の意見や不満の声

- 意見や不満の確認 - 目視

デポ、車両基地 半年に1回及び意見、不満が届いたとき(維持管理段階に入って以降、初の2年間)

MR MR 維持管理費用に含まれる。

9 事故 事故の数 事故記録の確認 事業対象地 月に1回 MR MR 維持管理費用に含まれる。

解体段階

1 大気汚染 NO2、SO2、PM10、PM2.5、Ozone、Micro climate(気温、湿度、風速、風向等)

各観測地点において平日24時間連続測定

既存鉄道の沿線3ヶ所(Taungoo、Myohaung、Pyinmana等/原則、ベースライン調査と同じ地点)

半年に1回 コンサルタントの監理の下、施工会社

MR USD 6,000 (USD 1,000 * 3 ヶ所 * 2 回)

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査

ファイナルレポート

8-88

No. 環境項目 モニタリング項目 方法 場所 頻度 実施機関 責任機関 費用/年

2 水質汚濁 BOD、COD、油、潤滑油、pH、全大腸菌群、全窒素、全リン、TSS

試料採取、ラボでの分析

既存鉄道の沿線4ヶ所(架け替えが予定されている主要橋梁の下流、デポ開発予定地等/原則、ベースライン調査と同じ地点)

半年に1回 (雨季1回、乾季1回)

コンサルタントの監理の下、施工会社

MR USD 8,000 (USD 1,000 * 4 ヶ所 * 2 回)

3 土壌汚染 - 土壌の状況 - 地域住民の意見や不満の声

- 意見や不満の確認 - 表層土の目視による確認

工事現場とその周辺地域

四半期に1回及び意見、不満が届いたとき

コンサルタントの監理の下、施工会社

MR -

4 廃棄物 - 土、草木、ゴミを含む廃棄物の量

- 地域住民の意見や不満の声

- 発生した廃棄物記録の確認

- 意見や不満の確認 - 目視

工事現場 四半期に1回及び意見、不満が届いたとき

コンサルタントの監理の下、施工会社

MR -

5 騒音、振動 - LAeq(騒音) - LV10(振動)

各観測地点において平日24時間連続測定

既存鉄道の沿線3ヶ所(Taungoo、Myohaung、Pyinmana等/原則、ベースライン調査と同じ地点)

半年に1回 コンサルタントの監理の下、施工会社

MR USD 6,000 (USD 1,000 * 3 ヶ所 * 2 回)

6 越境被害、気候変動

大気質 「1.大気汚染」参照。

7 HIV/AIDS等の感染症

- 感染症患者数 - 地域住民の意見や不満の声

- 工事作業者(及び理想的には地域住民)の健康チェックリストの確認

- 意見や不満の確認

事業対象地及びその周辺

月に1回及び意見、不満が届いたとき

コンサルタント、MR、MOTC、地域政府の支援を受けた施工会社

MR -

8 事故 事故の数 事故記録の確認 事業対象地 月に1回 施工会社 MR -終結段階/終結後

影響は想定されない。

P:計画段階、Co:施工段階、O:運営維持管理段階、De:解体段階 出典:JICA 調査団

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査

ファイナルレポート

8-89

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-90

(8) 実施体制

本事業に係る環境社会配慮には責任、役割、利害の異なる多くの機関の協力が求められる。と

りわけ、MOTC や関係機関の監督や支援を受けた MR が、事業による負の影響から人々と自

然を保護し、また彼らが事業による正の影響を十分に享受できるよう努める責任を負う。以下

に、各関係機関の責任と役割について整理し、施工段階、運営維持管理段階におけるそれぞれ

の役割を図示する。

1) MR

事業の実施機関である MR には事業の結果、生じる負の影響を管理し、自然・社会環境を適

切に保護する責任がある。施工段階において、MR は必要な環境緩和策の実行や環境モニタリ

ング活動をコンサルタントや施工会社を通じて行う。維持管理段階においては地元住民の不満

に耳を傾け、対応策を適宜講じる、といったように、こうした環境管理活動を直接行う場合も

あれば、環境分野のローカルコンサルタントに依頼し、3 ヶ所において大気の測定を行う、と

いったように他者を通じてこれを行うケースもある。

2) MOTC

MOTC は MR の監督機関として、EMP の実行、特に土地の取得や非自発的住民移転といった、

地域政府や他の関係機関の協力が求められる事項において MR を支援する。実施段階に入る

と計画段階に比べ ECD とコミュニケーションを取る頻度は減ると想定されるものの、MR、ECD 間の正式なやりとりには MOTC が窓口となる必要があることから、この意味でも MR と

MOTC の連携は継続、強化が望まれる。

3) エンジニア(コンサルタント)

コンサルタントは施工中、環境モニタリングを含む環境緩和策の実行を主に担うことになる施

工会社を MR に代わって監理、監督する。工事の内容や現場の状況について確認し、問題が

生じた際には速やかに MR に報告すると共に、改善に向けた提案を行う。コンサルタントは

また MONREC や JICA に提出する環境モニタリング報告書の作成においても MR を技術的に

支援する。

4) 施工会社

MR は工事を請け負う施工会社を選定する。施工会社はコンサルタントを通じて MR の指示を

受け、施工中の環境の管理、保護に向けた諸活動を主体的に実施する。環境モニタリングを含

む EMP に書かれた活動を厳格に実行するのは施工会社の責任である。施工会社はまた環境の

状況やその他、環境社会配慮に係る事項についてコンサルタントを通じて MR に遅滞なく報

告する義務を負う。

5) ECD/MONREC

ミャンマーにおける環境管理機関として ECD 及びその監督機関である MONREC は環境社会

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-91

配慮に係るプロセスを主には施行中のモニタリング報告書のレビューを通じて確認し、必要に

応じて環境の改善に向け、MR を指導する。

6) その他の関係機関

マンダレー地域政府やバゴー地域政府といった地方政府、GAD 等は実施段階に入ると、特に

住民説明会の開催や PAPs に対する補償の支払い、苦情処理において適宜、MR に支援を提供

する。廃棄物の処理方法は地域ごとに異なることから、こうした事項に伴う苦情が発生した際

等には MCDC、NCDC、GAD といった機関とも MR は連携することになる。

図 8.1.25 実施体制図(施工段階)

図 8.1.26 実施体制図(運営維持管理段階)

JICA MR ECD/MONREC

MOTC、地域政府等

コンサルタント

施工業者

指示、確認 説明

監督

監督、指示報告、相談

意見、提案 回答、説明

協議

相談、依頼協力

意見、提案

報告、相談

回答、説明

住民

JICA確認

報告

MR MOTC、地域政府等

相談、依頼

協力

意見、提案 回答、説明

住民

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-92

(9) ステークホルダー協議

1) EIA Procedure(2015)に規定された住民参加、情報公開

住民との協議や情報公開に関して、EIA Procedure(2015)の第 61 条、第 65 条には以下の通り、

事業実施者に事業やその影響について様々な方法を通じて広く周知するよう求めている。また、

EIA 報告書は ECD/MONREC に提出後、15 日以内に新聞やインターネット、公共の場等にお

いて公開するよう義務付けている。

a. timely disclose all relevant information about the proposed project and its likely adverse impacts to the public and civil society through local and national media, the website(s) of the project or project proponent, at public places such as libraries and community halls, and on sign boards at the project site visible to the public, and provide appropriate and timely explanations in press conferences and media interviews

b. arrange consultation meeting at national, regional, state, Nay Pyi Taw Union Territory and local levels, with PAPs, authorities, community based organizations and civil society

c. not later than fifteen (15) days after submission of the EIA Report to the Department, disclose the EIA Report to civil society, PAPs, local communities and other concerned stakeholders: (i) by means of national media (i.e. newspapers); (ii) the website(s) of the Project or Project Proponent; (iii) at public meeting places (e.g. libraries, community halls); and (iv) at the offices of the Project Proponent

これに従い、本調査では事業に係る情報を以下の 3 段階において公開した。

1. EIA 開始時における本事業の周知

2. スコーピング段階におけるステークホルダー協議の開催

3. EIA(案)の作成段階におけるステークホルダー協議の開催

これに加え、以下「5)ECD/MONREC に提出後の EIA 報告書の公開」で説明する通り、MRは EIA 提出後、速やかに EIA 報告書を公開する予定でいる。

2) EIA 開始時における本事業の周知

事業についての情報は EIA Procedure(2015)と JICA 環境ガイドラインに従い、調査の早い段

階で PAPs、その他のステークホルダーに公開された。具体的にいうと、MR は 2017 年 5 月に

英語とミャンマー語それぞれの言語で作成された事業の概要書をヤンゴン‐マンダレー鉄道

沿いのタウングーとマンダレー間の全駅の掲示板に掲載している。掲載内容は事業概要、事業

実施者、担当者とその連絡先についてである。事業の概要書(英文)を Appendix8.1.(4)に示す。

3) スコーピング段階におけるステークホルダー協議の開催

a) 目的

スコーピング段階において、MR は以下の目的でステークホルダー協議を開催した。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-93

a) 事業の必要性やこれによる正負両面の影響を含む事業内容に対する認知と理解の向上

b) EIA で予定されている調査の目的と内容に係る理解の促進

c) ステークホルダーの意見や考え方、不安の把握、及びこれらの EIA 調査への適切な反映

b) 実施方法

スコーピング段階において、ステークホルダー協議は 2017 年 7 月に 4 ヶ所で開催された。開

催場所は以下の条件を考慮に入れて MR、EIA コンサルタント、JICA 調査団との協議に基づ

き、決められた。

a) 地理的な位置4

a) 住民のアクセシビリティ

b) 町、都市の大きさ5

c) 開催地が所属する行政区分

d) 施設の収容可能人数

ステークホルダー協議の告知は、開催の 1~2 週間前に英語、ミャンマー語それぞれの告知文

をヤンゴン-マンダレー鉄道上の 5 つの主要駅(タウングー、ネピドー、Pyinmana、Thazi、マ

ンダレー)に掲載し、その他の全駅にはミャンマー語の告知を掲載する形で行われた。また、

ミャンマーの新聞 2 紙(The Mirror、Myanmar Alin)にも広告を掲載。加えて、事業対象地域

と関係する国、地域、ネピドー、及び区(ward)レベルのコミュニティ・リーダーに対しては

これとは別に招待状を送付し、参加を呼び掛けた。

c) ステークホルダー協議の概要

協議には地元住民、ECD/MONREC や地域政府を含む政府関係機関、メディアを含む多くのス

テークホルダーが参加した(24 世帯の PAPs に対しては個別に協議が行われている)。スコー

ピング段階での協議の概要について以下に、詳細については Appendix8.1(5)に示す。

4 事業対象地域の距離が長いことから、全区間を網羅し、かつ、なるべく等間隔となるよう配慮された。 5 人口の多い町が優先的に選ばれた

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-94

表 8.1.51 ステークホルダー協議の概要(スコーピング段階)

日時 場所 参加人数

政府職員 政治家 地元住民 メディア 民間企業 EIA コンサル 合計

6/5, 2017 (10am-12pm)

Thazi City Hall, Thazi, Mandalay Region 34 3 28 2 - 7 74

6/6, 2017 (10am-12pm)

Zaytawin Dhamma Hall, Myit Nge, Mandalay Region 28 - 14 8 - 7 57

6/15, 2017 (9am-11am)

Pyinmana Station (VIP Hall), Nay Pyi Taw Council Region 37 2 27 2 5 7 80

6/16, 2017 (3pm-5pm)

Taungoo Railway Station, Bago Region 41 6 13 2 6 7 75合計 140 11 82 14 11 28 286

出典:JICA 調査団 ステークホルダー協議の式次第は各回ともおおよそ、以下の通りであった。

① 開会の挨拶

② 事業について

③ 環境社会配慮について

④ 質疑応答

⑤ 閉会の挨拶

式次第に従い、MR からパワーポイント(Appendix5.8(6)参照)を使った事業紹介があり、こ

の中でステークホルダー協議の目的、事業の背景と目的(含、鉄道の現状)、対象地域、コン

ポーネント、スケジュール、事業実施者と MR の担当者と連絡先についてそれぞれ説明があっ

た。その後、EIA コンサルタントより、EIA のプロセス、ミャンマーにおける環境カテゴリ分

類、代替案検討の結果、環境ベースラインデータ、スコーピング(案)の結果、環境調査の

TOR(案)について説明した。

MR と EIA コンサルタントはその後、参加者からの質問、意見を受けつけ回答した。質問内容

は情報公開、住民移転、安全対策、苦情処理機構、事業のコンポーネント等に係るものであっ

た。参加者からのこうしたインプットはその後の影響評価、環境緩和策の検討、環境モニタリ

ング計画の策定等に活かされ、反対意見は確認されなかった。

4) EIA(案)の作成段階におけるステークホルダー協議の開催

a) 目的

EIA(案)の作成段階でステークホルダー協議を開催することで以下の効果が期待できた。

a) 事業の必要性やこれによる正負両面の影響を含む事業内容に対する認知と理解の向上

b) EIA の調査結果に係る理解の促進

c) ステークホルダーの意見や考え方、不安の確認、及びこれらの事業の設計、実施段階へ

の反映

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8-95

ステークホルダー協議は 2017 年 9 月に 4 ヶ所で開催された。開催地はスコーピング段階での

協議開催地を基に MR と EIA コンサルタント、JICA 調査団で検討の上、決定された。協議の

告知はスコーピング段階と同様の方法で行われた。

b) ステークホルダー協議の概要

EIA 報告書(案)の作成段階でのステークホルダー協議には地元住民、地域政府を含む政府関

係機関、民間企業、メディアが参加した(24 世帯の PAPs に対しては個別に協議が行われてい

る)。協議の概要を以下に、より詳細な記録については Appendix8.1(7)に示す。

表 8.1.52 ステークホルダー協議の概要(EIA 報告書(案)の作成段階)

日時 場所 参加人数

政府職員 政治家 地元住民 メディア 民間企業 EIA コンサル 合計

9/6, 2017 (9am-11am)

Thazi City Hall, Thazi, Mandalay Region

36 3 21 2 - 7 69

9/7, 2017 (9am-11am)

Zaytawin Dhamma Hall, Myit Nge, Mandalay Region

18 - 17 7 2 7 51

9/11, 2017 (9am-11am)

Mingalar Kan Taw Hall, Pyinmana, Nay Pyi Taw Council Region

16 4 15 - - 7 42

9/12, 2017 (9am-11am)

Kay Tu Yadanar Hall, Taungoo, Bago Region

49 1 20 - - 7 77

合計 119 8 73 9 2 28 239

出典:JICA 調査団

ステークホルダー協議の式次第はスコーピング段階と同様であった。これに従い MR より

Appendix8.1(8)にあるパワーポイントを使ってステークホルダー協議の目的、事業の背景と目的、

対象地域、コンポーネント、スケジュール、事業実施者と担当者及びその連絡先、EIA コンサ

ルタント等について説明した。続いて、EIA コンサルタントより、EIA のプロセス、ミャンマー

における環境カテゴリ分類、環境ベースラインデータ、代替案の検討結果、EIA 調査の TOR、EIA 調査の結果、環境影響評価の結果、環境緩和策、環境モニタリング計画等について説明し

た。質疑応答の場では環境影響、補償、安全対策、事業期間、事業実施者についての質問があ

り、それぞれに対し、MR と EIA コンサルタントが回答した。反対意見は確認されなかった。

5) ECD/MONREC に提出後の EIA 報告書の公開

MR は ECD/MONERC に提出後、15 日以内に MR のホームページ、タウングー、Pyinmana、Nay Pyi Taw、Thazi、マンダレーの各主要駅構内、及び対象区間沿線にある地区(district)の

GAD 事務所で EIA 報告書を公開する予定でいる。

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8-96

8.2 簡易住民移転計画

8.2.1 簡易住民移転計画の必要性

(1) 予測される住民移転と用地取得

橋梁改修計画の場合、橋梁近くに位置する 5 家屋(2 か所の農地を含む)が本プロジェクトに

よって影響が出ると想定される。影響が予想される場所は次の図のとおりである。

図 8.2.1 影響が予想される場所(橋梁改修)

基本的にミョウハン駅やネピドー駅の改良計画にかかる土地は全て MR のものであり、本プ

ロジェクトによる用地取得(土地の補償)は見込まれない。しかしながらミョウハン駅には露

店や小屋のような建物があり、12 世帯についてはプロジェクトによる影響を避けられない。

影響を受ける家屋の位置は次の図のとおりである。

図 8.2.2 影響が予想される家屋の位置(ミョウハン駅改良)

線形改良計画について、現在曲線半径が 500m 以下の箇所はすべて 500m 以上に改良する予定

である。この場合、私有地への影響は見込まれないが、3 軒の家屋と 2 件の資産(壁と道路)

が線形改良によって影響が出ると見込まれている。それらの地点は次の図に示すとおりである。

図 8.2.3 影響が予想される場所(線形改良計画)

橋 No.826

(606.5km)

家屋 2 軒 (606.3 km)

ブロック塀 (613.3km)

←マンダレー MR 職員家(590.7 km)

マンダレー地域

アクセス道路: 68 m(269.3km)

タングー駅 (267.3 km)

バゴー地域

( )内はヤンゴン駅からの距離

ミョウハン駅

(617.4 km)

↑マンダレー

④③①②

⑫⑪⑩ ⑧⑨⑦⑥⑤

現在の貨物荷卸し場所

構内の既存線路

ネピドー駅 (375.4 km)

橋No.379

(352.9km)

橋No.393

(363.5km)

橋No.417

(379.4km)

橋 No.683

(531.7km)

橋 No.748

(578.0km)

チャウセ駅 (578.7 km)

マンダレー駅

(621.9 km) ( )内はヤンゴン駅からの距離

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8-97

よって本プロジェクトにおいては住民移転が生じ被影響者も発生することが見込まれる。それ

に応じて、建物や物品の損失、ビジネスへの影響が想定されるため、損失対象への適切な補償

や被影響者に対する支援が求められている。

(2) 住民移転と用地取得を 小化するための初期的検討

用地取得や住民移転による影響を避けるもしくは 小化するために、MR は次のような方針を

検討している。

用地取得および住民移転数を減らすために、施設及び設備は利用可能な土地に建設もし

くは設置することを基本とする。

多くのプロジェクトは MR 所有地内で実施する。

プロジェクトによる被影響者には適切な移転に係る補償と支援(生活再建支援プログラ

ムなど)を提供する。

MR が実施する全ての移転に係る基準については、JICA ガイドラインやミ国の住民移

転・用地取得に関連する現行の法令・規定に従ったものとする。

全ての必要な措置は移転を 小にすることを目的とし、プロジェクト実施のあらゆる段

階で注意深く検討する

8.2.2 ミ国における住民移転と用地取得に関連する法的・政策的枠組み

(1) 住民移転と用地取得に関連する法令・規則

ミャンマーにおいては、Land Nationalization Act(1953)、 Disposal of Tenancies Law(1963)、 Land Acquisition Act(1894)、Forest Law(1992)、Farm Land Law(2012)など、土地の管理・

問題、土地の所有等に係る重要な法令・法律がある。それらの法律の中で、Land Acquisition Act (1894)が用地取得・住民移転に係る主要な法令である。

イギリス植民地時代に公布された The Land Acquisition Act(1894)は、現在においてもミャン

マーにおける用地取得・住民移転に係る主要な法令である。しかし 2015 年末時点で新しく法

的に有効な仕組みは策定されていない。MONREC、MoALI および内務省(MoHA)によって

近い将来、より良い仕組みを築くことが期待されている。ミャンマーの用地取得の流れは次の

図 8.2.4 とおりである。その手続きは 5 つの段階に要約される。

1) 予備調査

通知は官報に公表され、公告の要旨は近場で見ることができる。予備調査は、ボーリング/土地境界の図作成等の調査が含まれ実施される。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-98

2) 異議に係る聞き取り調査

用地取得に係る異議については公告から 30 日以内に集められる。集約するもの6(コレクター)

は異議内容を分析し、問題の合意形成を図る。また必要に応じて、異議に対する提案を含めた

報告書が、決定・決断を求めるため大統領に提出される。

3) 予定される用地取得の発表・表明

用地取得の表明は、対象の土地が一致する地域や州の官報によって行われる。表明する内容に

は、取得の目的、おおよそのサイズ、位置および計画が含まれる。

4) コレクターによる測定、査定および裁定へ問い合わせ

a) コレクターは用地を測定し、当該土地近くの適当な場所に公告する。その公告は土地を

良く知るもの、関心を持っている人々にも提供される。

b) 査定・裁定(土地の面積と補償)

コレクターは測定に対する異議、通知を発行した時点での土地の価値、補償に関する苦

情を申し立てる資格、査定結果についての問い合わせを進める。査定は、土地の面積と

被影響者の意見と被影響者間での配分を含んだ補償に基づいて評価される。査定はコレ

クターと関心のある人の間での結論的な証拠として提出される。コレクターは直ちに不

在の人や代表者に査定を通知する。またコレクターは問い合わせを修正するように努

める。

c) 苦情処理

審議が合意に達した場合、査定委員会は補償の種類及び額についての決定を発行する。

審議が被影響者と査定委員会の間で続く場合、地方政府の一般管理局(GAD)が仲裁

に入る。

d) 裁判所への照会

査定を受け入れないどのような人でも、測定に対する異議、補償額、支払われるべき人、

補償の配分が適切であるかどうかについて、申請書と共に裁判所の決定のためにコレク

ターによって問題が参照されることを要求できる。人々が補償に合意した場合、特定の

者が結論的な証拠として査定の中で指定される。また論争が生じた場合、コレクターは

論争の裁定を裁判所に向けることができる.

5) 支払いと土地の所有

コレクターは補償を支払い、土地を所有する。コレクターは取得する前に、プロパティを移動

する際に不都合がないように、十分な時間を与える。

6 コレクターの定義:the expression “Collector” includes any officer specially appointed by the President of the Union

to perform the functions of a Collector under this Act (Part1: Preliminary, Land Acquisition Act 1894)

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-99

出典:JICA 調査団

図 8.2.4 ミャンマーにおける用地取得の流れ

(2) JICA 環境社会配慮ガイドライン(2010)の方針

JICA ガイドライン(2010 年 4 月)によると、住民移転と用地取得に関する JICA 方針の基本

原則は次のとおりである。

(a) 非自発的住民移転及び生計手段の喪失は、あらゆる方法を検討して回避に努めねばならな

い。

(b) このような検討を経ても回避が可能でない場合には、影響を 小化し、損失を補償するた

めに、実効性ある対策が講じられなければならない。

(c) 移転住民には、移転前の生活水準や収入機会、生産水準において改善又は少なくとも回復

できるような補償・支援を提供する。

< 1 >

< 2 >

< 3 >

< 4-1 >

< 4-2 >

< 4-3 >

< 4-4 >

< 5 > Payment and taking possession of land

Preliminary investigation

No Agreement/Grievance

Intermediation by GAD

Disagree

Reference to Court

Determination of the award by Court

Decision of award

(1) Marking of land measuredand planned, (2) Public notice and notice to persons interested in the land

Examiniation of Award (Area of land and compensation)

Reach agreement

Agree

Publicate Preliminary Notification of the Project

Obtain consensus

Declaration of Land Acquisition

Hearing of Objection and Consultation

Not reach consensus

Decision of the President ofUnion

プロジェクトの予備通知

予備調査 異議聞き取り・コンサルテーション

不合意 合意

大統領による決定

用地取得の表明

(1) 土地の測定計画、(2) 関心のある人への広告

査定(土地の面積と補償)

不合意 合意

GAD による仲裁

不合意 合意

裁判所への照会

裁判所による裁定

査定決定

支払いと用地の取得

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-100

(d) 補償は可能な限り再取得費用に基づかなければならない。

(e) 補償やその他の支援は、物理的移転の前に提供されなければならない。

(f) 大規模非自発的住民移転が発生するプロジェクトの場合には、住民移転計画が、作成、公

開されていなければならない。住民移転計画には、世界銀行のセーフガードポリシーの

OP4.12 Annex A に規定される内容が含まれることが望ましい。

(g) 住民移転計画の作成に当たり、事前に十分な情報が公開された上で、これに基づく影響を

受ける人々やコミュニティとの協議が行われていなければならない。協議に際しては、影

響を受ける人々が理解できる言語と様式による説明が行われていなければならない。

(h) 非自発的住民移転及び生計手段の喪失にかかる対策の立案、実施、モニタリングには、影

響を受ける人々やコミュニティの適切な参加が促進されていなければならない。

(i) 影響を受ける人々やコミュニティからの苦情に対する処理メカニズムが整備されていな

ければならない。

(j) 被影響住民は、補償や支援の受給権を確立するため、初期ベースライン調査(人口センサ

ス、資産・財産調査、社会経済調査を含む)を通じて特定・記録される。これは、補償や

支援等の利益を求めて不当に人々が流入することを防ぐため、可能な限り事業の初期段階

で行われることが望ましい。

(k) 補償や支援の受給権者は、土地に対する法的権利を有するもの、土地に対する法的権利を

有していないが、権利を請求すれば、当該国の法制度に基づき権利が認められるもの、占

有している土地の法的権利及び請求権を確認できないものとする。

(l) 移転住民の生計が土地に根差している場合は、土地に基づく移転戦略を優先させる。

(m) 移行期間の支援を提供する。

(n) 移転住民のうち社会的な弱者、得に貧困層や土地なし住民、老人、女性、子ども、先住民

族、少数民族については、特段の配慮を行う。

(o) 200 人未満の住民移転または用地取得を伴う案件については、移転計画(要約版)を作成す

る。

上記の原則に加えて、JICA ガイドライン(2010)では次の点:プロジェクト特有の移転計画、

実施のための制度的枠組み、モニタリング及び評価のメカニズム、実施スケジュールと詳細な

財務計画を包括的に含んだ詳細な移転計画に重点を置いている。

(3) JICA ガイドライン(2010)とミャンマー国法令との比較

次表に JICA ガイドラインとミャンマーの法令との比較とギャップおよび本調査での方針を記

載する。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-101

表 8.2.1 JICA ガイドラインとミャンマー法令との比較

No JICA ガイドライン(2010) ミャンマーの法令 JICA ガイドライ

ンとミ国法令との

ギャップ 本調査での方針

1 非自発的住民移転及び生計手段の喪

失は、あらゆる方法を検討して回避

に努めねばならない(JICA GL)

該当なし ミ国法令には移転

回避や生計損失に

係る記載はない

JICA ガイドライ

ンに準じる

2 このような検討を経ても回避が可能

でない場合には、影響を 小化し、

損失を補償するために、実効性ある

対策が講じられなければならない (JICA GL)

補償もしくは賠償金は公

共の利益として農地取得

の際に提供される (Farmland Law (2012) Art. 26, Farmland Rules (2012) Art. 64).

農地法での補償は

作物のみである JICA ガイドライ

ンに準じる

3 移転住民には、移転前の生活水準や

収入機会、生産水準において改善又

は少なくとも回復できるような補

償・支援を提供する (JICA GL)

作物/樹木、土地、所有物、

移転費用、経済活動は補

償とし要求できる(Land Acquisition Act (1894) Art. 23, Farmland Rules (2012) Art. 67)

事業前の生活水

準、収入の機会、

生産水準に回復す

るという記載はな

本事業では生計

の回復・改善への

支援を考慮する.

4 補償は可能な限り再取得費用に基づ

かなければならない (JICA GL) 現在の市場価格での平均

生産量の 3 倍の価値を補

償する (Farmland Rules (2012) Art. 67)

農地法での補償は

作物のみである JICA ガイドライ

ンに準じる

5 補償やその他の支援は、物理的移転

の前に提供されなければならない (JICA GL)

補償金が用地取得前に支

払われない時は、利息も

加えて払わなければなら

ない

ミ国法的枠組みに

は明確な時払い時

期がない

本事業では補償

と他支援が移転

前に提供される

よう支援する 6 大規模非自発的住民移転が発生する

プロジェクトの場合には、住民移転

計画が、作成、公開されていなけれ

ばならない。住民移転計画には、世

界銀行のセーフガードポリシーの

OP4.12 Annex A に規定される内容

が含まれることが望ましい (JICA GL)

該当なし 移転計画書を準備

するような規定は

ない

本事業では簡易

住民移転計画書

を作成し、公開す

7 住民移転計画の作成に当たり、事前

に十分な情報が公開された上で、こ

れに基づく影響を受ける人々やコ

ミュニティとの協議が行われていな

ければならない (JICA GL)

該当なし 被影響者に対して

相談・協議をする

組織をもつような

規定はない

本事業では被影

響者やコミュニ

ティに対してコ

ンサルテーショ

ンを実施し、事前

に十分な情報を

伝える 8 協議に際しては、影響を受ける人々

が理解できる言語と様式による説明

が行われていなければならない (JICA GL)

該当なし 同上 人々が理解でき

る言語を使用す

9 非自発的住民移転及び生計手段の喪

失にかかる対策の立案、実施、モニ

タリングには、影響を受ける人々や

コミュニティの適切な参加が促進さ

れていなければならない (JICA GL)

該当なし 移転計画書の計

画、実施、モニタ

リングの過程で被

影響者が参加する

ような仕組みは無

本事業では被影

響者の適切な参

加を考慮する

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-102

No JICA ガイドライン(2010) ミャンマーの法令 JICA ガイドライ

ンとミ国法令との

ギャップ 本調査での方針

10 影響を受ける人々やコミュニティか

らの苦情に対する処理メカニズムが

整備されていなければならない (JICA GL)

1) 被影響者への補償額

の通知への苦情:補償査

定可から 6 週間以内に裁

判所に訴える 2) 被影響者の代表への

補償額の通知:i) 補償通

知受領から 6 週間以内、ii) 補償査定の日から 6 か月

以内のうち先に期間が切

れるもの (Land Acquisition Act (1894) Art. 18)

ミャンマーにおけ

る苦情処理につい

ては、直接裁判所

に行くことになっ

ており、被影響者

にとっては容易で

ない

本事業では被影

響者にとってよ

り便利となるよ

う既存の管理シ

ステム(仕組み)を利用して苦情処

理メカニズムを

考慮する

11 被影響住民は、補償や支援の受給権

を確立するため、初期ベースライン

調査(人口センサス、資産・財産調査、

社会経済調査を含む)を通じて特

定・記録される。これは、補償や支

援等の利益を求めて不当に人々が流

入することを防ぐため、可能な限り

事業の初期段階で行われることが望

ましい。 (WB OP 4.12 Para. 6)

用地取得の通知や公共事

業については官報で公告

され、市役所など関連す

る適当な場所に発行され

る (Land Acquisition Act (1894) Article 4)

可能な限り早い段

階で被影響者を特

定するような特別

な記載はない

本事業では確認

する段階で、被影

響者を特定し記

録する

12 補償や支援の受給権者は、土地に対

する法的権利を有するもの、土地に

対する法的権利を有していないが、

権利を請求すれば、当該国の法制度

に基づき権利が認められるもの、占

有している土地の法的権利及び請求

権を確認できないものとする(WB OP 4.12 Para. 15)

占有者/関係者は用地収用

と補償請求について説明

を受ける (Land Acquisition Act (1894) Article 9)

詳細な手続きと資

格基準について明

確な規定はない。

また土地の権利が

ない場合の移転に

ついても言及がな

本事業では事業

実施により収入

や所有物に影響

が出るすべての

世帯に対し支援

の対象者となる

よう考慮する

13 移転住民の生計が土地に根差してい

る場合は、土地に基づく移転戦略を

優先させる(WB OP 4.12 Para. 11)

該当なし 土地に基づいた移

転戦略を規定する

ようなものはない

本事業では土地

に基づいた移転

戦略を策定する 14 移行期間の支援を提供する (WB OP

4. 12, para.6) 該当なし 移行期間も支援を

提供するような規

定はない

本事業では移転

期間の支援の提

供も考慮する 15 移転住民のうち社会的な弱者、得に

貧困層や土地なし住民、老人、女性、

子ども、先住民族、少数民族につい

ては、特段の配慮を行う(WB OP 4.12 Para. 8)

該当なし 脆弱な人々への特

段の配慮を行うよ

うな規定なはい

本事業では、脆弱

な人々へ特段の

配慮を行う

16 200 人未満の住民移転または用地取

得を伴う案件については、移転計画

(要約版)を作成する(WB OP4.12 Para.25)

該当なし 200 名以下の影響

者数の時、A-RAPを準備するような

規定はない

JICA ガイドライ

ンに準じる

出典:Land Acquisition Act (1894), Farmland Rules (2012), Farm Land Law (2012), JICA Guidelines (2010.4) and World Bank OP 4.12

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-103

(4) 住民移転と用地取得の制度的枠組み

一般的にミャンマーにおいては、絡み合った法律や行政の構造が分断されているため、用地取

得や住民移転に係る問題は複雑である。用地取得と住民移転を実施する関係機関の役割と機能

については次の表のとおりである。

表 8.2.2 用地取得と住民移転に関係する機関の役割

関係機関 役割と機能

土地管理局 Land Management Committee (LMC)

1) 非農耕地についてタウンシップの LMC は土地利用、面積、所有者、貸借人を調べ、用地取得に必要な資料や地図を準備する。

2) LMC は通常、土地権利の移行や区画の細分化を行い、土地の賃借に係る証明書を準備する。

移住・土地記録局Settlement and Land Record Department (SLRD), MoALI

1) 農耕地について農畜産・灌漑省下にあるタウンシップの SLRD は、面積、所有者を調べ、用地取得に必要な資料や地図を準備する。

2) SLRD は補償対象の土地、建物、作物、樹木の市場価格を調べる。

査定委員会 Award Committee

それぞれのタウンシップ行政官が議長を務める査定委員会は、受給資格や補償額などを査定する。

地域行政官 District Administrator 地域行政官は 1 エーカーを超えない土地の賃借について取り扱う。

内務省一般管理局 General Administration Department (GAD), MoHA

一般管理局は 5 エーカー以上の土地の賃借について取り扱う。

出典:JICA 調査団

(5) 本調査での方針

1) 概要

事業実施によって生じる用地取得や住民移転に係る方針については、JICA ガイドラインと

ミャンマーの関係法令の両方を考慮に入れる。一方で 8.2.2 に述べたとおり JICA ガイドライ

ンとミャンマー関連法令との間にはギャップが生じており、前者の方が相対的に包括的な内容

であることから、本調査においては主に JICA ガイドラインをベースとした方針とする

2) 再取得価格費用

カットオフデートの後、受給資格がある被影響者への補償は、下記の原則に基づいて算出され

る。減価償却や税金控除もしくは取引に係る経費を除いた(本事業によって影響のある)資産

の移転に必要な補償額は、移転・移動の前に計算される。

(a) 生産用地(農業、水産業、庭園および林業等): 対象地で昨今行われた用地売買の市場価

格に基づく。もしそのような売買がない場合は、類似場所での類似のケースの売買価格と

税金に基づき、それもない場合は生産的価値に基づく。

(b) 宅地: 対象地で昨今行われた宅地売買の市場価格に基づく。もしそのような売買がない場

合は、類似場所での類似のケースの売買価格と税金に基づく。

(c) 建物、作物、樹木に係る補償計算に関する地方政府の規定があればそれを利用する。

(d) 家屋と他関係する建物: 現在の市場価格に基づく

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-104

(e) 一年生作物/多年生作物: 移動(置換)のための現金補償は、あれば地方政府の規定に基

づく。もしくは現在の同等の市場価格に基づく。

(f) 材木: 移動(置換)のための現金補償は、あれば地方政府の規定に基づく。もしくは現在

の同等の市場価格・価値(樹種、樹齢、直径や樹高といった生産価値)に基づく。

3) 補完的な補償

MOTC と責任機関は、本事業で生じる被影響者の損失に対する補償を検討する際に、現在の

この国にある法令・規則と同様に JICA ガイドラインに従うことを求められている。補償額が

JICA ガイドラインに見合わない場合は、全ての関係機関は補完的な補償を準備することが要

求される。

4) 受給資格とカットオフデート

カットオフデートは、受給資格のある被影響者かそうでないかを区別し、確認するために設定

されており、揉め事が生じる可能性が減る。通常、カットオフデートはセンサスが開始される

日に設定される。本事業については、MR との合意に基づいて社会経済調査が終了した時点の

2017 年 7 月 20 日をカットオフデートと設定した。橋梁改修計画、ミョーハン基地改良計画、

線形改良計画に伴って実施した社会調査は次の日程である。

- 橋梁改修計画: 2017 年 5 月 17-18 日(2 日間)

- ミョウハウン車両基地改良計画:2017 年 6 月 1-2 日(2 日間)

- 線形改良計画:2017 年 6 月 20-23 日(4 日間)

カットオフデート宣言のプロセスについては、まず MR 本部(ネピドー)から Upper Myanma Railway オフィスと Lower Myanmar Railway オフィス宛に、影響者のリストと共にレターを発

行した。次に Upper Myanma Railway オフィスと Lower Myanma Railway オフィスから、GADと各駅にレターは送付され、各駅においては掲示されている。カットオフデート宣言後は、被

影響者のリストを保有することで、被影響者でないものが流入するのを防ぐのに有効である。

さらにミョウハン駅においては、駅管理者が何者かが家などを建てたりすることはないかどう

か、定期的にモニタリングをする予定である。 詳細設計の際に、今回の社会調査の結果はアップデートされる予定である。カットオフデート

宣言のレターは次の図のとおりである。また各駅での掲示(公示)の状況も続く写真のとおり

である。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-105

図 8.2.5 カットオフデート宣言のレター(MR から発行)

図 8.2.6 カットオフ宣言のレターと駅での掲示

8.2.3 住民移転と用地取得の範囲

(1) 影響を受ける可能性のある世帯・家屋の概要

影響を受ける可能性のある世帯の概要については、次の表のとおりである。簡易住民移転調査

(A-RAP 調査:センサス、資産調査、社会経済調査)は次表の世帯を対象に実施された。

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8-106

表 8.2.3 影響世帯の概要

No 世帯コード 州・地域 県・市 タウンシップ 状況

橋梁

改修

1 Bdg.379 - 01 Nay Pyi Taw Dekkhina Lewe 家 1、小屋 1、物置 1 2 Bdg.393 - 01 Nay Pyi Taw Dekkhina Pyinmana 物置 1 3 Bdg.393 - 02 Nay Pyi Taw Dekkhina Pyinmana 家 1、物置 1 4 Bdg.417 - 01 Nay Pyi Taw Ottara Pobbha Thiri 物置 1 5 Bdg.683 - 01 Mandalay Meikhtila Wundwin 農地 1 6 Bdg.683 - 02 Mandalay Meikhtila Wundwin 農地 1 7 Bdg.748 - 01 Mandalay Kyaukse Kyaukse 小屋 1

ミョ

ウハ

ン車両

基地改

1 Dep.MH 01 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 家 1、物置 1 2 Dep.MH 02 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 家 1 3 Dep.MH 03 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 家 1、小屋 2 4 Dep.MH 04 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 家 1 5 Dep.MH 05 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 家 1 6 Dep.MH 06 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 家 1 7 Dep.MH 07 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 家 1 8 Dep.MH 08 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 家 1、物置 1 9 Dep.MH 09 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 家 1、小屋 1 10 Dep.MH 10 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 家 2 11 Dep.MH 11 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 小屋 1 12 Dep.MH 12 Mandalay Mandalay Chan Mya Tharzi 小屋 1

線形

改良

1 U-IP.182 - 01 Mandalay Mandalay Pyi Gyi Tagon 60m ブロック壁(ヒンズー寺院) 2 D-IP.182 - 01 Mandalay Kyaukse Paleik 家 1 3 D-IP.182 - 02 Mandalay Kyaukse Paleik 家 1 4 D-IP.173 - 01 Mandalay Kyaukse Singaing 家 1(MR スタッフ) 5 U-IP.1 - 01 Bago Taungoo Taungoo 60m アクセス道路(仏教僧院)

出典:JICA 調査団

(2) 被影響住民(PAPs)と影響する物件(PAUs)

次の表に被影響者数と影響する物件数を示す。被影響者数は 24 世帯(103 人)である。

表 8.2.4 被影響者数と影響物件数

セクター 被影響世帯数

被影響者数

影響する物件数 備考

物件数 農地 総面積 (m2)

橋梁改修 7 41 8 2 951.57 -

ミョウハン基地改良 12 53 18 - 405.58 -

線形改良 5 9 5 - 875.67 ブロック塀とアクセス道路含む

計 (フェーズ 2) 24 103 31 2 2,232.82

フェーズ 1 分 4 24 4

合計(フェーズ 1+2) 28 127

出典:JICA 調査団

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8-107

これらの 24 世帯(103 人)の中で、移転をしなければならないのは次の表のとおりである。

また全ての影響地は鉄道用地(Right of Way:ROW)内であり、土地の権利を持たず非合法で

居住していると考えられる。

表 8.2.5 住民移転の可能性がある世帯数・住民数

セクター 被影響世帯数 被影響者数

橋梁改修 3 22

ミョウハン基地改良 12 53

線形改良 3 7

TOTAL 18 82 出典:JICA 調査団

被影響者住民数については JICA 調査団によって 2017 年 5 月~7 月にかけて実施したセンサス

によって得られた。

JICA ガイドライン(2010)によると、被影響住民数が 200 名以下の場合、当該事業はカテゴ

リーB とされており、ある程度の影響は見込まれるものの深刻な影響が生じることは想定され

ていない。次に続く表は、各計画別の被影響住民数および影響することが見込まれる物件の概

要である。より詳しい物件の情報は別添につける。(Appendix 8,2 (1):被影響住民と影響する

物件のリスト)

表 8.2.6 被影響住民数と影響する物件数(橋梁改修)

No. 橋梁番号 世帯コード 被影響

者数 影響する物件数 物件名

影響面積

(m2)

居住年数

線路からの距離(m)

1 379 Bdg.379 - 01 9 3 家 27.55

26 6.7 物置 34.44小屋 9.18

2 393 Bdg.393 - 01 4 1 物置 49.95 28 6.06

3 393 Bdg.393 - 02 8 2 家 30.30

17 19.70物置 20.66

4 417 Bdg.417 - 01 6 1 物置 21.49 28 10.9 5 683 Bdg.683 - 01 5 1 plot 農地 627 - 7 6 683 Bdg.683 - 02 4 1 plot 農地 104 - 8 7 748 Bdg.748 - 01 5 1 小屋 27 5 8.5 41 10 951.57

出典:JICA 調査団

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8-108

表 8.2.7 被影響住民数と影響する物件数(ミョウハン基地改良)

No 世帯コード 被影響者

数 影響する 物件数 物件名 影響面積

(m2) 居住年数 線路からの

距離 l(m)

1 Dep.MH 01 5 2物置 30.14

19 -家 30.14

2 Dep.MH 02 3 1 家 9.30 7 -

3 Dep.MH 03 4 3家 9.30

3 -小屋 2 18.60

4 Dep.MH 04 2 1 家 9.30 1 -5 Dep.MH 05 4 1 家 25.09 12 -6 Dep.MH 06 5 1 家 20.88 5 -7 Dep.MH 07 4 1 家 13.94 8 -

8 Dep.MH 08 4 2家 13.94

6 -小屋 51.31

9 Dep.MH 09 6 2家 34.82

9 -物置 9.30

10 Dep.MH 10 7 2家 81.31

10 -家 13.39

11 Dep.MH 11 5 1 物置 13.94 5 -12 Dep.MH 12 4 1 物置 20.88 8 -

53 18 405.58 出典:JICA 調査団

表 8.2.8 被影響住民数と影響する物件数(線形改良)

No. 世帯コード 被影響者

数 影響する

物件数 物件名 影響面積 (m2) 居住年数 線路からの

距離 l(m) 1 U-IP.182-01 1 1 ブロック壁 60m 13.93 - 2 D-IP.182-01 3 1 家 27.87 10 3 D-IP.182-02 2 1 家 27.87 2 4 D-IP.173-01 2 1 家(MR スタッフ) 126 - 5 U-IP.1-01 1 1 アクセス道路 680 -

9 5 875.67 出典:JICA 調査団

(3) 社会経済状況

24 世帯へのインタビュー調査を含むセンサス・家屋調査は 2017 年 5 月から 7 月にかけて実施

された。被影響住民の社会経済状況はインタビューによって得られた情報からまとめた。次の

表のとおりである。

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8-109

1) 橋梁の改修計画

表 8.2.9 家族の年齢・性別

世帯コード 世帯主の年齢 家族数

家族の年齢構成 性別 <=5 6-17 18-60 >60 男性 女性

Bdg.379 - 01 61 9 3 0 5 1 7 2 Bdg.393 - 01 55 4 0 0 4 0 2 2 Bdg.393 - 02 66 8 1 1 4 2 3 5 Bdg.417 - 01 58 6 0 1 5 0 2 4 Bdg.683 - 01 35 5 0 3 2 0 3 2 Bdg.683 - 02 30 4 0 2 2 0 2 2 Bdg.748 - 01 50 5 0 1 4 - 1 4

計 41 4 8 26 3 20 21 出典:JICA 調査団

表 8.2.10 職業・収入・支出

世帯コード 世帯主の職業 年間収入額(MMK) 年間支出額 (MMK) Bdg.379 - 01 作業員 2,160,000 1,800,000 Bdg.393 - 01 売店主 2,400,000 1,440,000 Bdg.393 - 02 その他(他家族が就労) 1,920,000 1,800,000 Bdg.417 - 01 その他(年金) 1,872,000 1,800,000 Bdg.683 - 01 農業 2,400,000 2,160,000 Bdg.683 - 02 農業 2,400,000- 2,160,000 Bdg.748 - 01 臨時作業員 2,400,000 1,800,000

平均 2,221,715 1,851,429 出典:JICA 調査団

表 8.2.11 民族・宗教・就学レベル

世帯コード 民族 宗教 学歴 Bdg.379 - 01 ビルマ 仏教 小学校 Bdg.393 - 01 ビルマ 仏教 高校 Bdg.393 - 02 ビルマ 仏教 小学校 Bdg.417 - 01 ビルマ 仏教 中学校 Bdg.683 - 01 ビルマ 仏教 中学校 Bdg.683 - 02 ビルマ 仏教 中学校 Bdg.748 - 01 ビルマ 仏教 僧院での教育 出典:JICA 調査団

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8-110

2) ミョウハン基地の改良計画

表 8.2.12 家族の年齢・性別

世帯コード 世帯主の年齢 家族数

家族の年齢構成 性別 <=5 6-17 18-6

0 >60 男性 女性

Dep.MH 01 50 5 0 3 2 0 2 3Dep.MH 02 28 3 0 2 1 0 2 1Dep.MH 03 43 4 0 3 1 0 2 2Dep.MH 04 26 2 0 1 1 0 1 1Dep.MH 05 58 4 1 1 2 0 2 2Dep.MH 06 57 5 0 4 1 0 3 2Dep.MH 07 33 4 1 2 1 0 3 1Dep.MH 08 39 4 0 3 1 0 1 3Dep.MH 09 30 6 0 3 2 1 3 3Dep.MH 10 56 7 0 2 5 0 3 4Dep.MH 11 29 5 1 2 2 0 4 1Dep.MH 12 30 4 0 3 1 0 1 3

計 53 3 29 20 1 27 26出典:JICA 調査団

表 8.2.13 職業・収入・支出

世帯コード 世帯主の職業 年間収入額(MMK) 年間支出額(MMK)Dep.MH 01 会社員 3,600,000 2,880,000Dep.MH 02 臨時の作業員 1,632,000 1,200,000Dep.MH 03 店主 1,560,000 1,200,000Dep.MH 04 店主 1,800,000 1,080,000Dep.MH 05 売店経営 2,400,000 1,800,000Dep.MH 06 作業員 3,600,000 2,700,000Dep.MH 07 臨時の作業員 1,080,000 960,000Dep.MH 08 畜産業 2,400,000 2,160,000Dep.MH 09 店主 4,200,000 3,360,000Dep.MH 10 その他(他家族が就労) 3,600,000 2,880,000Dep.MH 11 臨時の作業員 2,160,000 1,800,000Dep.MH 12 林っ時の作業員 2,160,000 1,800,000

平均 2,516,000 1,985,000出典:JICA 調査団

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8-111

表 8.2.14 民族・宗教・就学レベル

世帯コード 民族 宗教 学歴 Dep.MH-01 ビルマ 仏教 高校 Dep.MH 02 ビルマ 仏教 高校 Dep.MH 03 ビルマ 仏教 中学校 Dep.MH 04 ビルマ 仏教 中学校 Dep.MH 05 ビルマ 仏教 中学校 Dep.MH 06 ビルマ 仏教 中学校 Dep.MH 07 ビルマ 仏教 小学校 Dep.MH 08 ビルマ 仏教 中学校 Dep.MH 09 ビルマ 仏教 中学校 Dep.MH 10 ビルマ 仏教 小学校 Dep.MH 11 ビルマ 仏教 高校 Dep.MH 12 ビルマ 仏教 小学校

出典:JICA 調査団

3) 線形の改良計画

表 8.2.15 家族の年齢・性別

世帯コード 世帯主の年齢 家族数

家族の年齢構成 性別 <=5 6-17 18-60 >60 男性 女性

U-IP.182 - 01 55 1 - - - - 1 0D-IP.182 - 01 55 3 1 0 2 0 2 1D-IP.182 - 02 58 2 0 1 1 0 2 0D-IP.173 - 01 58 2 0 0 2 0 1 1U-IP.1 - 01 57 1 - - - - 1 0

計 9 1 1 5 0 7 2出典:JICA 調査団

表 8.2.16 職業・収入・支出

世帯コード 職業 年間収入額(MMK) 年間支出額(MMK) U-IP.182 - 01 - - -D-IP.182 - 01 店主 1,800,000 1,440,000D-IP.182 - 02 店主 3,600,000 1,440,000D-IP.173 - 01 MR 職員 1,680,000 1,440,000U-IP.1 - 01 - - -

平均 2,360,000 1,440,000出典:JICA 調査団

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8-112

表 8.2.17 民族・宗教・就学レベル

世帯コード 民族 宗教 学歴 U-IP.182 - 01 ヒンズー ヒンズー教 - D-IP.182 - 01 ビルマ 仏教 小学校 D-IP.182 - 02 ビルマ 仏教 小学校 D-IP.173 - 01 ビルマ 仏教 中学校 U-IP.1 - 01 ビルマ 仏教 - 出典:JICA 調査団

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8-113

Bdg.379 - 01: 家 Bdg.379 - 01: 物置

Bdg.393 - 01: 物置 Bdg.393 - 02: 家

Bdg.417 - 01: 物置 Bdg.683 - 01: 農地(チリ栽培)

Bdg.683 – 02: 農地(米) Bdg.748 – 01: 家

図 8.2.7 影響する物件(橋梁改修)

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8-114

Dep.MH 01: 小屋 Dep.MH 01: 家

Dep.MH 02: 家 Dep.MH 03: 家 1 と小屋 2

Dep.MH 04: 家 Dep.MH 05: 家

インタビューの光景 線路からの距離を計測

図 8.2.8 影響する物件(ミョウハン基地改良計画)

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8-115

U-IP.182 - 01: ブロック壁(ヒンズー寺院) D-IP.182 - 01: 家

D-IP.182 - 02: 家 D-IP.173 - 01: 家(MR スタッフ)

U-IP.1 - 01: 僧院へのアクセス道路 線路からの距離を測定

僧侶へのインタビュー インタビューの光景

図 8.2.9 影響する物件(線形の改良計画)

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8-116

(4) エンタイトルメント・マトリックス

エンタイトルメント・マトリックスは、プロジェクト実施によって生じる損失について評価す

るツールである。また被影響住民(PAPs)の受給資格を確認し、必要となる補償の基礎や PAPsに対して移転に係る支援などを検討する。次の表は本事業にかかるエンタイトルメント・マト

リックスである。受給資格を設定する方法について、JICA ガイドラインとミャンマー国の規

定の間にかい離がある際は、JICA ガイドラインに沿うこととしている。

表 8.2.18 エンタイトルメント・マトリックス

損失のタイプ 影響の程度影響する資産の

分類受給資格者 補償の方針と内容

適用する被影響世帯数

責任機関

橋梁 基地 線形 AR/SY*

1. MR の ROW 内の農地

耕作地、牧草地の

損失及び土地への

アクセス障害

野菜栽培用のうちの

一部的損失

ゴマ、落花生など

野菜やコメを栽

培している農地

野菜・コメの耕作

市場価格で算定された年間作物収量

の 3 倍に相当する価格を現金補償す

2 - - 数は現時

点で不明

だが想定

される

MR

2. MR の ROW 外の私有地及び私有農地

耕作地、牧草地の

損失及び土地への

アクセス障害

一部もしくは全部の

農地の永久的損失

ゴマ、落花生など

野菜やコメを栽

培している農地

個々の土地/住宅地

の持ち主

市場価格に基づいて算定された土地

の補償費用

- - - 数は現時

点で不明

だが想定

される

MR

3. MR の ROW 内の私有資産

私有資産・建物の

損失およびアクセ

ス障害

家・店の永久的損失 個人の家・店(土

地の権利は有し

ない)

公的な土地の権利

を有さない個々の

もの

- もし影響者自身が建てた場合、損失

資産の再取得価格を現金で補償

- 似たような賃貸家屋・店への転居費

用を支援(これらは移送費用に含ま

れる予定)

5 12 3 数は現時

点で不明

だが想定

される

MR

4. MR の ROW 外の私有資産

私有資産・建物の

損失およびアクセ

ス障害

家・店の永久的損失 個人の家・店(土

地の権利は有し

ない)

公的な土地の権利

を有さない個々の

もの

損失資産の再取得価格を現金で補償

(もし土地の権利がある場合、土地

も補償対象

- - - 数は現時

点で不明

だが想定

される

MR

5. 公共物件

公共物の移動 公共物(全部もしく

は一部)の永久的な

移動

宗教施設などの

公共物

ローカルコミュニ

ティ

- 公共物の再取得価格を現金で補償 - 移転費用を現金で補償

- - 2 数は現時

点で不明

だが想定

される

MR、TDC 地方政府

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8-117

損失のタイプ 影響の程度影響する資産の

分類受給資格者 補償の方針と内容

適用する被影響世帯数

責任機関

橋梁 基地 線形 AR/SY*

6. 樹木・植物およびアクセスの損失

樹木、植物、それ

らへのアクセスの

損失

公用地の樹木の永久

的損失

地方政府の資産

(私的組織・個人

所有の樹木は無

し)

地方政府 - MONREC の森林局によると(公用

地・私有地問わず MR の樹木も含め

て)、樹木を伐採する、移植する等

の場合、影響する樹木の種、場所、

数等の情報と併せて申請をし、森林

局の許可を得なければならない。

- 伐採は極力避けなければいけない。

もし避けられない場合、MR の土木

部署によって実施しなければなら

ない。

- 補償方針は、新しいレイアウト計画

に沿って植樹することとする。

- 数は現時点

で不明だが

想定される

- 数は現時

点で不明

だが想定

される

MR TDC FD

7. 収入および収入の機会の損失

(1) 収入および移

転機関の就労

の機会の損失

店の置き換え・移転

に期間中の一時的な

収入の損失

- 個人の店

(置き換え/移転) - 農地

店主/売主 農民

- 移行期間の PAPs の商売・生計を支

援するために現金で補償

3 5 2 数は現時

点で不明

だが想定

される

MR

(2) 事業が理由に

よる就労の機

会・収入の損

職を失ったことに

よる一時的な収入

の損失

- 個人の店

(置き換え/移転) 職を失った被雇用

者・労働者

- 失業手当として 1 か月相当分の給

与を支払う

- MR は店主にこの補償費用も含ん

だものを補償する。

4 7 1 数は現時

点で不明

だが想定

される

MR

注 *: AR/SY はアプローチ道路と施工用ヤードの建設

出典:JICA 調査団

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8-118

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8-119

(5) 補償の見積り

影響を受ける地域の住民や市場価格の調査結果に基づき、橋梁改修計画、ミョウハン基地改良

計画および線形改良計画の 3セクターに係る補償費用を 13,594,000,000 チャットと見積もった。

家屋は現時点で 3 タイプあり、続く表にその見積りを示す。

表 8.2.19 影響家屋の見積り(タイプ 1)

No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 1 木製の柱 9 本 1 本 600 5,4002 竹製の枠(屋根) 25 本 1 本 300 7,5003 アルミシート(屋根) 20 枚 1 枚 5,500 110,0004 薄型竹製のひも 3 本 1 本 500 1,5005 固定用ワイヤー 1 本 1 本 1,800 1,8006 鉄釘 1 袋(1.63kg) 1 袋 2,000 2,000

資材費 128,200労働費用 No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 1 大工 1 人/日 7,000 7,0002 ワーカー 2 人/日 5,000 10,000

小計(労働費用) 17,000合計(資材費+労働費用) 145,200

出典: JICA 調査団(Phoe Wa Gyi, Bamoobo Shop, Nay Pyi Taw, Ngwe Kyel Ein Construction Material Shop, Leway Township, Nay Pyi Taw & Kaung Khant Bamboo and Timber Shop, Leway Township, Nay Pyi Taw)

タイプ 1 の家屋(小屋と物置を含む)の見積りは 145,000 チャットであり、平均 36m2とする

と m2 当たりの単価は 4,033 チャットとなる(約 4,050 チャット/m2)。

表 8.2.20 影響家屋の見積り(タイプ 2)

No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 1 木製の柱 9 本 1 本 5,000 45,0002 竹製の枠(屋根) 30 本 1 本 300 9,0003 アルミシート(屋根) 20 枚 1 枚 5,500 110,0004 竹(壁用) 12 枚 10' x 6' 5,000 60,0005 竹(床用) 40 本 1 本 300 12,0006 薄型竹製のひも 4 本 1 本 500 2,0007 固定用ワイヤー 1 本 1 本 1,800 1,8008 鉄釘 2 袋(1.63kg) 1 袋 2,000 4,000

資材費 243,800労働費用 No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 1 大工 2 人/日 7,000 14,0002 ワーカー 2 人/日 5,000 10,000

小計(労働費用) 24,000合計(資材費+労働費用) 267,800

出典:JICA 調査団(Phoe Wa Gyi, Bamoobo Shop, Nay Pyi Taw, Ngwe Kyel Ein Construction Material Shop, Leway Township, Nay Pyi Taw & Kaung Khant Bamboo and Timber Shop, Leway Township, Nay Pyi Taw)

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8-120

タイプ 2 の家屋の見積りは 267,800 チャットであり、平均 36m2 とすると、m2 当たりの単価は

7,440 チャットとなる(約 7,450 チャット/m2)。

表 8.2.21 影響家屋の見積り(タイプ 3)

No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 1 木製の柱 9 本 1 piece 33,750 303,7502 木製の枠(屋根) 20 本 1 piece 8,000 160,0003 アルミシート(屋根) 20 枚 1 piece 5,500 110,0004 竹(壁用) 12 枚 10' x 6' 5,000 60,000

5 木材(床用) 36 枚 6" x 0.5" 5,400 194,40018 枚 3" x 2" 6,750 121,500

6 ドア 2 個 6' x 2.5' 6,500 13,0007 鉄釘 3 袋(1.63kg) 1 袋 2,000 6,0008 その他資材 LS - - 15,000 15,000

資材費 983,650労働費用 No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 1 大工 5 人/日 7,000 35,0002 ワーカー 10 人/日 5,000 50,000

小計(労働費用) 85,000合計(資材費+労働費用) 1,068,650

出典: JICA 調査団(Phoe Wa Gyi, Bamoobo Shop, Nay Pyi Taw, Ngwe Kyel Ein Construction Material Shop, Leway Township, Nay Pyi Taw & Kaung Khant Bamboo and Timber Shop, Leway Township, Nay Pyi Taw)

タイプ 2 の家屋の見積りは 1,068,650 チャットであり、平均 36m2とすると、m2当たりの単価

は 29,685 チャットとなる(約 29,685 チャット/m2)。

表 8.2.22 ブロック塀建設の見積り

No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 1 ブロック 540 個 個 100 54,0002 セメント 2 個 50 kg 5,500 11,0003 砂 0.5 sud Sud 10,000 5,0004 砂利 0.25 sud Sud 42,000 10,500

資材費 80,500労働費用 No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 1 大工 1 人/日 8,000 8,0002 ワーカー 2 人/日 5,000 10,000

小計(資材費) 18,000合計(資材費+労働費用) 98,500

出典:JICA 調査団(Than Kywel, Construction Material Shop, Mandalay). 1sud=100ft3=2.83m3

ブロック塀(高さ 7 フィート、幅 9 インチ)建設の見積り費用は 3m で 98,500 チャットであ

る。よって m 当たりの単価は 32,833 チャット/m となる(約 32,850 チャット/m)。

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8-121

表 8.2.23 アクセス道路建設の見積り

No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 資材費

1 2" x 4" 砕いた岩 370 Sud 26,500 9,805,0002 1" x 2" 砕いた岩 212 Sud 32,000 6,784,0003 3/4" 砂利 51 Sud 35,000 1,785,0004 3/8" 砂利 14 Sud 37,000 518,0005 1/2" 砕いた岩 9 Sud 33,000 297,0006 砕いた岩 75 Sud 22,000 1,650,0007 砕いた岩 (粒状) 57 Sud 26,000 1,482,0008 荒い砂 4 Sud 12,000 48,0009 軽油(機材用) 1044 ガロン 3,000 3,132,000

10 その他資材 LS - 178,000 178,000小計(資材費) 25,679,000

資機材レンタル費用 No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 1 コンパクター 75 Sud 80,000 6,000,0002 散水機 1.1 Sud 65,000 71,500

小計(資機材レンタル費用) 6,071,500労働費用 No. 項目 数量 単位 単価 (MMK) 計 1 ワーカー(シニア) 93 人 7,000 651,0002 ワーカー(若手) 1089 人 6,000 6,534,0003 ワーカー(掘削用) 232 人 6,000 1,392,000

小計(労働費用) 8,577,000合計(資材費+遺棄罪レンタル費用+労働費用) 40,327,500

出典: チャウセタウンシップ DRD への聞き取り(Cost estimate for Villages connecting road of Zayat Phyu-Thinpoat-ThadaOolay, Kyaukse Township by Department of Rural Development ) 1sud=100ft3=2.83m3

上記のデータより、幅 12 フィート長さ 1 マイル(1,609m)の道路建設に係る費用は 40,327,500チャットであり、m 当たりの単価は 25,064 チャット/m となる(約 25,100 チャット/m)

1) 橋梁改修計画に係る補償費用の見積り

表 8.2.24 家屋のタイプ

コード 地域 タウンシップ 影響物件 家屋タイプ (m2)

Bdg.379 - 01 Nay Pyi Taw Lewe 1 家 1 小屋 1 物置

タイプ 2 タイプ 1 タイプ 1

27.55 m2

34.44m2

9.18 m2

Bdg.393 - 01 Nay Pyi Taw Pyinmana 1 小屋 タイプ 1 49.95 m2

Bdg.393 - 02 Nay Pyi Taw Pyinmana 1 家 1 物置

タイプ 2 タイプ 1

30.30 m2

20.66 m2

Bdg.417 - 01 Nay Pyi Taw Pobbha Thiri 1 物置 タイプ 1 21.49m2

Bdg.683 - 01 Mandalay Wundwin 1 農地(チリ栽培) - 627 m2

Bdg.683 - 02 Mandalay Wundwin 1 農地(米) - 104 m2

Bdg.748 - 01 Mandalay Kyaukse 1 小屋 タイプ 1 27 m2

出典:JICA 調査団

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8-122

表 8.2.25 移転・収用に係る補償の見積り(橋梁改修)

項目 内容 損失のタイプ 土地 全ての影響物件は MR の鉄道用地内にあり、私有地は含まれていない。

不動産 物置(タイプ 1)MMK 4,050 × 126.54 m2= MMK 512,487 小屋(タイプ 1)MMK 4,050 × 36.18 m2 = MMK 146,529 家(タイプ 2)MMK 7,450 × 57.85 m2= MMK 430,982

作物・樹木

年間 3 回の収穫分を考慮 0.15 エーカーのチリ栽培

326 kg/1 エーカー/1 年*1841 MMK/1kg = 600,166 MMK 48.9 kg/0.15 エーカー/1 年*1841MMK/1kg= 90,025 MMK*3= MMK 270,075

0.025 エーカーの稲作 979.8 kg/1 エーカー/1 年* 750 MMK/1 kg= 734,850 MMK 24.5 kg/ 0.025 エーカー/1 年*750 MMK/1 kg= 18,375 MMK*3= MMK 55,125

出典:Myingyan Whole Sale Center, Myonwa Whole Sale Center and Interview with local farmers

動産 必要に応じて移動費用を提供

就労の機会 プロジェクトに関係する土木作業を優先的に、またジェンダー平等に従って就労の機会として提供する。被影響者を優先に求人をだし、空き家情報なども紹介する。

収入の損失 住民移転の場合、補償する 移転先地を見つける費用 MR との協議を踏まえ、移転方針に基づき検討する

Total MMK 1,415,000

注:土地所有者とコンサルタントの間で確認した年間収量に基づく(年間収量計 =MMK 0.1 million) 出典:JICA 調査団

影響物件の見積りは表 8.2.19 と表 8.2.20 に基づく。家屋は 1 階建てで床面積が約 20 フィート

×20 フィート(6m×6m=36m2)木造でアルミの屋根つくりで、他の箇所は竹製である。

2) ミョウハン基地改良計画に係る補償費用の見積り

表 8.2.26 家屋のタイプ

コード 地域 タウンシップ 影響物件 家屋のタイプ(m2)

Dep.MH 01 Mandalay Chan Mya Tharzi 小屋 タイプ 1 30.14 家 タイプ 2 30.14

Dep.MH 02 Mandalay Chan Mya Tharzi 家 タイプ 2 9.30

Dep.MH 03 Mandalay Chan Mya Tharzi 家 タイプ 2 9.30 小屋 2 タイプ 1 18.60

Dep.MH 04 Mandalay Chan Mya Tharzi 家 タイプ 2 9.30 Dep.MH 05 Mandalay Chan Mya Tharzi 家 タイプ 2 25.09 Dep.MH 06 Mandalay Chan Mya Tharzi 家 タイプ 2 20.88 Dep.MH 07 Mandalay Chan Mya Tharzi 家 タイプ 2 13.94

Dep.MH 08 Mandalay Chan Mya Tharzi 家 タイプ 2 13.94 物置 タイプ 1 51.31

Dep.MH 09 Mandalay Chan Mya Tharzi 家 タイプ 2 34.82 小屋 タイプ 1 9.30

Dep.MH 10 Mandalay Chan Mya Tharzi 家 タイプ 3 81.31 家 タイプ 2 13.39

Dep.MH 11 Mandalay Chan Mya Tharzi 小屋 タイプ 1 13.94 Dep.MH 12 Mandalay Chan Mya Tharzi 小屋 タイプ 1 20.88

出典:JICA 調査団

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8-123

表 8.2.27 移転・収用に係る補償の見積り(基地改良)

項目 Description 損失のタイプ 土地 全ての影響物件は MR の鉄道用地内にあり、私有地は含まれていない。

不動産 タイプ 1: MMK 4,050 × 144.17 m2= 583,889 MMK タイプ 2; MMK 7,450 × 180.1 m2= 1,341,745 MMK タイプ 3: MMK 29,685 × 81.31 m2= 2,413,687 MMK

作物・樹木 該当なし 動産 必要に応じて移動費用を提供

就労の機会 プロジェクトに関係する土木作業を優先的に、またジェンダー平等に従って就労の機会

として提供する。被影響者を優先に求人をだし、空き家情報なども紹介する。 収入の損失 住民移転の場合、補償する 移転先地を見つける

費用 MR との協議を踏まえ、移転方針に基づき検討する

Total MMK 4,339,000

出典:JICA 調査団

影響物件の見積りは表 8.2.19、表 8.2.20 および表 8.2.21 に基づく。家屋は 1 階建てで床面積が

約 20 フィート×20 フィート(6m×6m=36m2)木造でアルミの屋根つくりで、他の箇所はタイ

プ 3 の家屋の除き竹製である。

3) 線形改良計画に係る補償費用の見積り

表 8.2.28 家屋のタイプ

コード 地域 タウンシップ 影響物件 家屋タイプ(m2)

D-IP.182-01 Mandalay Paleik 家 タイプ 2 27.87

D-IP.182-02 Mandalay Paleik 家 タイプ 2 27.87 D-IP 173-01 Mandalay Kyaukse 家(MR 職員) タイプ 3 126

出典:JICA 調査団

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8-124

表 8.2.29 移転・収用に係る補償の見積り(基地改良)

項目 内容 損失のタイプ 土地 全ての影響物件は MR の鉄道用地内にあり、私有地は含まれていない。

不動産

タイプ 2:MMK 7,450 × 55.74 m2= 415,263 MMK タイプ 3:MMK 29,685 × 126 m2= 3,740,310 MMK ヒンズー寺院のブロック塀は長さが約 60m であり、1m 当たりの単価(高さ 7m 幅9 インチ)は 32,850MMK であるよって補償見積りは次のとおりである。

MMK 32,850 x 60 m = 1.971,000

寺院に続くアクセス道路は約 68m であることから次のとおりである。 MMK 25,100 x 68 m = 1,710,000

参照: Cost estimate for Villages connecting road of Zayat Phyu-Thinpoat-ThadaOo lay, Kyauks Township, Department of Rural Development.

作物・樹木 該当なし 動産 必要に応じて移動費用を提供

就労の機会 プロジェクトに関係する土木作業を優先的に、またジェンダー平等に従って就労の機会として提供する。被影響者を優先に求人をだし、空き家情報なども紹介する。

収入の損失 住民移転の場合、補償する 移転先地を見つける費用 MR との協議を踏まえ、移転方針に基づき検討する

Total MMK 7,836,000

注:地域住民への聞き取りと市場価格調査に基づく 出典:JICA 調査団

影響物件の見積りは表 8.2.20 と表 8.2.21 に基づく。家屋は 1 階建てで床面積が約 20 フィート

×20 フィート(6m×6m=36m2)木造でアルミの屋根つくりで、他の箇所は竹製である。

8.2.4 生活再建支援策(提案)

(1) 損失のタイプと被影響者

本プロジェクトによって影響を受ける人々は、その損失のタイプによって 3 つに分類される。

(a) 居住空間等の構造物を損失するもの

(b) 農地を損失するもの

(c) 宗教施設の一部を損失するもの

タイプ(a)の影響者のみが MR の改良する敷地内に家屋等があることから、現在の居住地から

移転する必要がある。タイプ(b)の場合、全ての農地を失うわけではなく、ごく一部の農地(現

在の路線に近接している箇所のみ)の収用が必要である。よってタイプ(b)の生活状況は大き

く変わらないと見込まれる。タイプ (c)については他と異なり、生活・生計への影響は見込ま

れない。生計への深刻な影響が見込まれないタイプ(b)とタイプ(c)については、現在の生活維

持しながら働くことができるので、生活支援策の対象としない。

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8-125

(2) 移転への支援

(a) 現金での補償

被影響者が建物を建てていた場合、MR は移転費用として現金補償する。 移転期間中、MR は類似の賃貸の部屋・建物を探す際、手当て(現金)を提供する。 もし影響する資産が ROW 内の農地の場合、MR は市場価格に換算して 3 回分の収

穫に相当する現金補償を行う。 移転期間中、社会経済調査で得られた被影響者の月収を基準に、1 か月分の失業手

当を提供する。

(b) 職業訓練の提供 MR は、関連する政府機関や NGO の協力を得て、被影響者の労働スキルを高めるため

に必要な能力開発研修をアレンジし、所得を速やかに回復させる。これはまた、タウン

シップの社会福祉関係の部署の助けを借りて、影響を受けた世帯の家族または女性のた

めの適切な職業訓練の機会を検討する(ジェンダーの役割を考慮する)。

(c) プロジェクト地域・周辺地域での就労の機会の提供 作業員不足を避けるために、被影響者にプロジェクトでの就労の機会を提供する支援を

計画する。さらにもし建設作業員になることを希望し、収入の回復となるのであれば被

影響者たちは優先的に作業員として対象になる。

8.2.5 住民協議結果

社会調査を実施している中で、被影響者との協議は個別に実施した。またミョウハン基地での

住民協議は被影響者と実施機関(MR)の間で実施され、基本的な環境、社会の状況、土地利

用や社会経済状況、移転計画について説明がなされた。個別の協議でもミョウハン基地での住

民協議の中でも特に反対意見は無かった。両者の協議議事録は Appendix8.2 に示す。

8.2.6 A-RAP 実施に係る実施体制

簡易住民移転計画(A-RAP)を実施するにあたり、MR は、以下の業務を担う担当者を配置す

るものとする。

(a) マネージャー: A-RAP 実施の全体を監督する。 (b) 業務実施オフィサー: A-RAP の実施が予定通り進んでいるか適宜確認し、A-RAP 実施

を支援する。 (c) 苦情処理担当オフィサー: 被影響住民からの苦情に適切に対応しているか、被影響住民

やコミュニティ組織と良好な関係を築く。 (d) 会計担当: 補償費用の支払い等を管理する。

8.2.7 関係機関の役割・責任

A-RAP 実施に関わる関係機関については次の表のとおりである。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-126

表 8.2.30 A-RAP 実施に係る関係機関

組織 役割 責任 MOTC (Ministry of Transport and Communications:運輸通信省)

MR を管轄する省 事業実施による移転等を承認する

MR (Myanma Railways:ミャンマー鉄道)

事業実施機関

1) 移転・収用の必要な土地のデータを確認する。 2) 補償委員会 (CFC: Compensation Fixation

Committee) を結成し運営する。 3) 被影響住民、地方政府と密に連絡する。 4) 補償について被影響住民と交渉し、合意を得る。

5) 苦情に対して、適切に対応する。 6) 移行期間は被影響住民に対して生計支援する。 7) 内部モニタリングを実施する。

他機関 - Department of Agricultural Land

Management and Statistics (DALMS:農地管理統計局),

- Department of Human Settlement and Housing Development (DHSHD), NGOs, etc.

MR への支援 MR を支援し助言する。

出典:JICA 調査団

8.2.8 苦情処理メカニズム

A-RAP 実施中には論争が生じることもある。移転・取得の手続きや補償の内容が被影響住民

にとって満足のいくものとなるように、はっきりとした苦情処理の仕組みを作ることが重要で

ある苦情処理はいかに迅速に解決できるかが鍵である。

苦情処理手続きについては被影響住民に知らせなければならない(例:お知らせレターを文字

の読めない人に渡す時は、信頼できる仲介人が口頭でも説明する)。さらに苦情処理担当者は、

被影響住民からの苦情を受け付け、手続きを進める義務がある。その担当者の名前と連絡先は

関係する全ての被影響住民に提供される。

この苦情処理メカニズムの元で、もし被影響住民は移転や補償の基準、資格要件の適用などに

ついて満足がいかない場合、まず始めに苦情処理担当者へ申し立てなければいけない。苦情処

理担当者は苦情を受け付けてから 1 週間以内に回答しなければならない。また全ての苦情やそ

れぞれの動きは記録される。

もし苦情が出て 14 日以内に解決ができない場合は、A-RAP を実施しているチームのマネー

ジャーに知らせる。そして A-RAP タスクフォースメンバーと協力して、別に設定した 21 日間

以内に回答しなければいけない。補償費用は苦情及び論争の解決を受けて支払われる。

A-RAP 実施チームのマネージャーによる決定に満足がいかない場合は、被影響住民は裁判所

に申し立てをすることができる。苦情処理手続きは現在ある法的プロセスに置き換わるもので

はないが、同意をベースとして、高額で時間のかかる法的手続きをせずに、速やかに補償を支

払うために、問題を早く解決することを目指した苦情処理メカニズムである。

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8-127

苦情処理メカニズムの流れを次図に示す。

図 8.2.10 苦情処理メカニズム(提案)

8.2.9 モニタリング体制

コンサルテーションの段階から、補償について被影響住民との合意の過程、実施後の移転の支

援など A-RAP の実施をモニタリングすることが必要である。モニタリングでは、公平で透明

性のあるマナーの中で、移転の流れを調査、分析そして評価する。前述の組織(MR)は、モ

ニタリング活動を通じて特定される問題の解決を図る。その結果、改善が図られる。

事業実施者である MR は地方政府、関連する省(MOPF:計画・財務省-計画局/対外経済協力

局と運輸通信省)と共に、移転の動きをモニタリングするためタスクフォースチームを設立す

る。このチームが移転に係る問題を回答する窓口となり、事業実施者や地方政府などの関連機

関に報告する。必要に応じて NGO も第三者機関としてモニタリング活動に巻き込むこともで

きる。必要に応じて NGO も第三者機関としてモニタリング活動に巻き込むこともできる。提

案するモニタリングのフローチャートは次の図のとおりである。

フェーズ 1 で使ったモニタリングシートを図に続いて示す。このモニタリングシート等を用い

て MR は少なくとも四半期に 1 回は JICA に報告する予定である。

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8-128

図 8.2.11 A-RAP モニタリングシステム

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

8-129

表 8.2.31 モニタリングシート(サンプル)

Resettlement Monitoring Sheet

Name of HH Head :

1. Progress of Resettlement Progress Date Checked Remark

Official Notice

Confirmation on result of census survey

Survey relocation if any

Negotiation 1st time 2nd time 3rd time 4th time 5th time

Agreement on compensation and relocation

Securing of Land

2. Post Resettlement Monitoring

Date Location Occupation (if changed) Income Level Perception Remarks

Note: 2 times in the first year and 1 time in the second year after relocation.

3. Record of Grievance / Perception and Redress

Date Grievance Redress Results Checked by independent Org. (if any)

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8-130

8.2.10 費用と予算

A-RAP 実施のための予算の見積りは合計 34,125,840 チャットである。次の表に示す。MR に

は本事業での用地取得や住民移転のための適切な予算を提供する責任がある。重要な点として

本見積りは詳細設計時に見直す必要がある。

表 8.2.32 A-RAP 実施予算

項目 見積り予算

内容 MMK USD

橋梁改修計画 補償 1,415,000 1,040

収入の損失 2,480,000 1,824 353,500* 7 世帯 生活支援 2,480,000 1,824 353,500*7 世帯 移動費用 350,000 257 50,000*7 世帯 住民協議費用 300,000 221 100,000*3 回 モニタリング費用 400,000 294 100,000*4 年

小計 7,425,000 5,460 予備費 (+8%) 594,000

合計 8,019,000

項目 見積り予算

内容 MMK USD

ミョウハン基地改良計画 補償 4,339,000 3,190 収入の損失 4,242,000 3,119 353,500* 12 世帯 生活支援 4,242,000 3,119 353,500* 12 世帯 移動費用 600,000 441 50,000*12 世帯 住民協議費用 300,000 221 100,000*3 回 モニタリング費用 400,000 294 100,000*4 年 小計 14,123,000 10,385 予備費 (+8%) 1,129,840 合計 15,252,840

項目 見積り予算

内容 MMK USD

線形改良計画 補償 7,836,000 5,762 収入の損失 707,000 520 353,500* 2 世帯 生活支援 707,000 520 353,500* 2 世帯 移動費用 100,000 74 50,000* 2 世帯 住民協議費用 300,000 221 100,000*3 回 モニタリング費用 400,000 294 100,000*4 年 小計 10,050,000 7,390 予備費 (+8%) 804,000 合計 10,854,000

合計 34,125,840 25,093

注 1: 1USD = 1,360 MMK 注 2: 収入の損失および生活支援の単価(353,500 MMK)はインタビュー調査で得られた 高月収額に基

づいている。

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8-131

8.2.11 実施スケジュール

A-RAP 実施スケジュール案を次の表に示す。被影響者を対象としたセンサスを含む社会調査

は 2017年 7月 12日に完了した。また関連する政府関係者、議員やその他参加者を招いたステー

クホルダー会議も 2017 年 6 月に実施された。事業の公告とカットオフデートの宣言は 2017年 7 月 20 日として実施された。補償委員会は 2017 年末に設立される予定である。また委員会

運営は事業が完了する 2022/2023 まで続く。

表 8.2.33 A-RAP 実施スケジュール案

実施スケジュール2017

2018 2019 2020 2021 2022 2023 5 6 7 8 9 10 11 12

1 環境社会影響調査(センサス含む)

2 ステークホルダー会議(被影響者招待)

3 MOTC に A-RAP 実施システムを設立

(初動)

4 プロジェクト内容を公示/カットオフ

デート宣言

5 A-RAP を 終化し JICA に提出 6 補償委員会を設立

7 苦情処理委員会の運営

8 補償方針・手順を決める

9 各影響者の補償を見積もる。必要に応

じて補完的な調査を実施

10 被影響者の確定

11 補償額の確定(現金および各支援)、

被影響者との合意

12 被影響者への支払い

13 生活再建プログラムの実施

14 建物の移動

15 A-RAP プロセスの完了 16 モニタリング

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8-132

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8-133

8.2.12 詳細設計時の仕様書(Terms of Reference:TOR)

詳細設計の期間中、橋梁改修計画、ミョウハン基地改良計画および線形改良計画の 終化、施

工ヤードとアプローチロードの確定と並行して、A-RAP も修正・アップデートする必要があ

る。想定される A-RAP の修正に係る使用は次のとおりである。

(1) A-RAP の 終化

1) 実施機関が実施するソーシャリゼーションを支援する 2) 対象地域に住む被影響者の社会経済調査と資産調査を実施する 3) 補償費用(移動費用を含む)を 終化するため、土地や家屋の再取得価格調査を実施

する 4) A-RAPの実施スケジュール、苦情処理メカニズム、モニタリング・評価についてアッ

プデートする 5) A-RAPを 終化し、ミャンマー語にも翻訳する 6) A-RAPの情報を公開する

(2) 社会経済調査および資産調査結果の更新

社会経済調査結果をアップデートする。調査項目は次のとおりである。

1) 世帯主、性別、年齢、生計手段、職業、収入、学歴および民族 2) 家族構成、人数、生計手段、職業、就学児数、識字率および性別 3) 影響家屋数:民族、世帯主の性別、家族数、主収入、副収入、高齢者・障害者数 4) 影響資産(家屋・土地)の法的位置づけ、所有者情報 5) 補償、生活再建についての被影響者の要望

加えて資産調査を実施する。この資産調査の結果は受給資格や補償のレベルを 終化するため

に使われる。収集される情報は次を想定している。

1) 影響家屋の範囲およびタイプ 2) 影響する作物・樹木のタイプ、範囲および数 3) 影響する土地の範囲・タイプ(必要に応じてアクセス道路が対象) 4) その他の損失(一時的な収入の損失など) 5) 影響する公共施設のタイプおよび範囲

(3) 再取得価格調査結果の更新

社会経済調査および資産調査を同時に、再取得価格調査を実施する。収集予定の情報は次のと

おりである。

1) 家屋、物置、小屋の再取得価格 次の2点に基づいて、家屋、物置、小屋、資材の市場価格、再建費、物資の輸送費、

作業員の賃金、登録費用、税金などの再取得価格費用を調べる。

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8-134

政府(GAD/DALMS)の公定価格単価 直近の市場価格

2) 土地の価格 土地の価格は、近隣の市場価格または土地価格と、類似土地の準備費用、登録料およ

び税金の合計とする

(4) 生活支援策の詳細化

生活支援策を住民のニーズも踏まえながら詳細化する。

(5) 環境許認可(ECC)の取得支援

環境許認可の取得に向けて実施機関を支援する。また付帯条件がある場合は、実施機関が確実

に実施できるように支援する。

8.2.13 ステークホルダー会議結果

地域住民に事業計画や実施スケジュールについて説明するため4つのタウンシップにおいて

ステークホルダー会議が実施された。会議の日時・場所等については次の表のとおりである。

詳細については EIA で述べる。

表 8.2.34 ステークホルダー会議

No. 日時 場所 内容

1 2017 年 6 月 5 日(月) 10:00~12:00

Thazi City Hall, Mandalay Region

­ 地域住民、政府・地方議会関係者、メディアなどを含

め 67 名の参加

2 2017 年 6 月 6 日(火) 10:00~12:00

Zaytawin Dhamma Hall, Myit Nge, Mandalay Region

­ 被影響者、メディア、政府・地方議会代表者など 50名が参加

3 2017 年 6 月 15 日(木) 9:00~11:00

Pyinmana Station (VIP Hall), Mandalay Region

­ 被影響者、政府・ピンマナ地区議会メンバーなど 73名が参加

­ スコーピング結果を説明

4 2017 年 6 月 16 日(金) 3:00~5:00 pm

Taungoo Railway Station, Bago Region ­ 政府・議会関係者、メディアなど 68 名が参加

出典:JICA調査団

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9-1

第9章 事業実施計画

本章においては、以下の項目について記載する。

第一は本プロジェクトにおける契約パッケージの検討及びその契約パッケージにおいて適用

する契約方式について記載する。

第二は、全体工期及びその工期を達成するための契約パッケージ毎のスケジュールについて記

載する。

第三として、MOTC 及び MR における当該類似業務の調達事情について述べ、第四として現

地施工業者のリストを示す。

9.1 契約パッケージ

9.1.1 工事契約の考え方

建設工事プロジェクトにおいては複数の契約方式が使い分けられる。ヤンゴン・マンダレー鉄

道整備事業フェーズ 1 においては、 も広く使われている二つの契約方式がレビューされ、詳

細に検討された。

(1) 数量積算契約: 数量表 Bill of Quantities(BOQ)に基づく契約

(2) ランプサムデザインビルド契約

一つ目の契約方式は発注者が設計をし、請負者が決められた単価で施工する建設工事において

広く使われる方式である。

一方、二つ目の契約方式は、発注者が請負者に対して要求事項(又は基本設計)を提示し、こ

れに対し請負者がランプサムのプロジェクトコストの一部として詳細設計を提供するという

建設工事において使用される。また、この方式は、鉄道電気・機械系統(E&M: Electrical and Mechanical)プロジェクトやプラント建設、特殊な技術を用いるプロジェクトにおいて広く使わ

れる。

リスクマネジメント及びヤンゴン・マンダレー鉄道の改修の設計に求められる緻密さを考慮し

て、FS においては、土木と軌道については BOQ に基づく数量積算契約が推奨された。また、

国際コンサルティング・エンジニア連盟(International Federation of Consulting Engineers, FIDIC)によって発行されている Conditions of Contract for Construction for Building and Engineering Works Designed by the Employer;国際開発金融機関版;いわゆる FIDIC Pink Book(2010)を使

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

9-2

用することも決定された。Pink Book は JICA の発行している土木工事用標準入札書類(Standard Bidding Documents for Procurement of works, “SBD Works”)の基ともなっている。

しかし本プロジェクトは車両の調達、信号通信等(TMS の改修を含む)の E&M システム工

事といった土木・軌道以外の要素も含まれる。通常これらの特殊な技術を求められる要素につ

いては、請負者が設計から機材搬入、完成物の試運転まで一貫して実施することが多い。した

がって土木・軌道以外の要素については、発注者の要求事項に基づいて、請負者が詳細設計を

実施するという契約方式を適用することが望ましい。上記で述べた二つ目の契約方式、詳細設

計を含んだランプサム契約がこれにあたる。

以上を踏まえ E&M システムや車両については、JICA のデザインビルド用標準入札書類

(Standard Bidding Documents for the Procurement of Electrical and Mechanical Plant, and for Building and Engineering Works, Designed by the Contractor (SBD Design Build))を適用する。

SBD Design Build は、JICA ガイドラインに則っており、また、FIDIC の Conditions of Contract for Plant and Design-Build Contract 1st Ed (1999)、いわゆる Yellow Book をベースとしている。Yellow Book はデザインビルドで広く採用されている契約約款である。

フェーズ 2 ではフェーズ1と同様の考え方で、契約方式を選定する。

9.1.2 契約パッケージ分け

契約パッケージは非公開。

9.2 実施スケジュール

実施スケジュールは非公開。

9.3 調達計画・調達方法の検討

9.3.1 MOTC 及び MR における当該類似業務の調達事情

(1) 一般事情

MR の調達契約は大別して、直営工事と資機材材調達(据付指導付き契約の直営工事)に分け

られる。これらの契約に国外・国内コンサルタントが関与したことはこれまで無いとのことで

ある。

直営工事では、国内入札を行う。主として MR が設計し、施工は MR 職員の直接指導の下で

行い、機材、資材は MR が供与することを原則とし、契約内容は労務提供契約に類似してい

る。ネピドー駅も MR が設計し、直営工事で建設した。

標準歩掛・単価は MR 管区別に当該管区が所属する地区政府内で設定されるものが使われてい

る。表紙;「MR Price Book」をつけて刊行されている。これは毎年、地区政府の主席大臣(Chief Minister of Regional government)が公共建設局の技師長 (Chief Engineer of Public Construction)にレターで交付するもので、地区政府事業計画のための労務単価、運送料金、公共料金、上水

料金、電気料金を規定するものである。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

9-3

この標準歩掛・単価に基づき、MR 内部でプロジェクト予算(予定価格)を設定する。 歩掛・

単価は毎年更新されるが、2017 年版はインフレを十分に加味しておらず、予算が低くて入札

不調になるケースが多いとのことである。

資機材調達(据付指導付き)契約は、MR が自前で製作できない資機材に関するものである。

主として輸入を前提としている。一例として長スパンの鋼箱桁などの据付調達契約がある。

(2) 2013 年以前の MR 直営工事の実績実績

調査団構成員の関与した 2012 年後半の METI による「平成 23 年度インフラシステム輸出促進

調査等事業ミャンマーにおける鉄道整備事業実施可能性検討調査」では、MR の調達事情につ

いての情報はほとんど入手出来なかった。

2012 年末頃に調査団構成員の関与した貴機構の調査「ミャンマー鉄道安全性・サービス向上プ

ロジェクト詳細計画策定調査」でも非常に限られた情報しか得られなかった。1988 年以降 2012年までの主要な国際機関、外国のローン受け入れ実績として調達情報の断片が入手出来たのは、

OPEC ローンと EDCF(韓国)ローンに関するものだけである。

1) OPEC Fund for International Development (OFID)ローン(1999 年)

ヤンゴン環状線と近郊線のリハビリ、ヤンゴン・マンダレー幹線鉄道ヤンゴン・ニャウングレ

ビン(296km)区間の改修事業を主体とする。25%区間の新規レール、PC まくらぎ敷設、バラス

ト補充、排水工設置等。

総事業費 28.39 百万ドル(MUSD)相当

主要項目は以下のとおり。

フェーズⅠ:ヤンゴン環状線・近郊線リハビリプロジェクト

ディーゼル電気機関車リハビリ近代化、6 両、4.34MUSD 客車リハビリ、40 両、1.65MUSD 信号・通信、1.71MUSD

フェーズⅡ:ヤンゴン環状線・近郊線リハビリプロジェクト

ディーゼル電気機関車リハビリ、7 両、4.05MUSD 普通客車 13 両購入、1.97MUSD Togyaunggale Station Resignalling、自動信号化、1.93MUSD

フェーズⅢ:ヤンゴン-ニャウングレイビン軌道修復プロジェクト

バラストホッパーワゴン 40 両購入、2.10MUSD PC まくらぎ工場、2.84MUSD Leveling Lining & Tamping Machine with Spare Parts、1.57MUSD Small Track Tools & Track Machineries、0.96MUSD Rail Flash Butt Welding Machine and Spare Parts、0.89MUSD Ballast Regulator、0.59MUSD

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9-4

2) EDCF(韓国)ローン

客車(60 両)貨車(10 両)購入プロジェクト:20 百万ドル相当。

ノックダウン製造による普通客車 60 両、14.60MUSD 緩急車(かんきゅうしゃ)(鉄道車両の一種で、列車にブレーキを掛けるための装置が

取り付けられた車両のこと)10 両、2.28MUSD 維持管理用スペアパーツ、機械、3.10MUSD

(3) 2014 年以降の MR 直営工事の実績

調査団は MR の調達担当者との面談を通じて、 近(概ね 2014 年以降)の入札・契約関連文

書を入手した。その入手資料リストを次表に示し、主なプロジェクトについて解説する。

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9-5

表 9.3.1 2014 年以降の MR 直営工事の実績 その 1/2

No. Project Name Classi-fication Contets

1

Cast manganese steel crossing andheadhardened switch for turnout (withoutsleeper bearers) and adaptor rail with fishingdevices (50kg.rails Vs BS75 R rails)

TenderDoc

Bid invitation for Tender No 10_MR_INDIA(E)_2015-2016

2

Cast manganese steel crossing andheadhardened switch for turnout (withoutsleeper bearers) and adaptor rail with fishingdevices (50kg.rails Vs BS75 R rails)

Drawing

Drawing for cast manganese steel crossing andheadhardened switch for turnout (without sleeper bearers)and adaptor rail with fishing devices (50kg.rails Vs BS75 Rrails)

3

Cast manganese steel crossing andheadhardened switch for turnout (withoutsleeper bearers) and adaptor rail with fishingdevices (50kg.rails Vs BS75 R rails)

Questionand

answer

Technical compliance for caast manganese steel crossing andheadhardened switch for turnout (without sleeper bearers)and adaptor rail with fishing devices (50kg.rails Vs BS75 Rrails)

4 F.O.B. Near THAMINE Station Bill of Qty Construction BQ of F.O.B. Near THAMINE Station

5 F.O.B. Near THAMINE Station Contract Contract for construction of FOB near Thamine Station

6 INSEIN ROAD OVER BREDGETender

Doc

TheRepublic of theUnion of Myanmar Ministry of Railtransportation Myama Railways BID INVITATION forTENDER NO. / /MR€/2014-2015 the supply of 120 FT SpanSteel Box Girders for INSEIN ROAD OVER BREDGEYANGON JULY, 2014

7 INSEIN ROAD OVER BREDGE Contract

Contract No.210/MAMA/MR€ LOCAL/2014-2015 for TheSupply for Insein Road over Bridge (120 FT SPAN STEELBOX GIRDERS) Made Between MR and J&M SteelSolutions Co., Ltd

8 INSEIN ROAD OVER BREDGE Contract Contract for Insein Over Bridge repair paiting

9 INSEIN ROAD OVER BREDGEBiddingSubmital

120ft span steel box girder for Insein road over bridgeYangon

10 INSEIN ROAD OVER BREDGEBiddingSubmital

Substructure of Insein Road over Bridge Yangon

11 INSEIN ROAD OVER BREDGETender

DocTender No 335-MAMA-PaTa- substructure for Insein RoadOver Bridge Yangon

12 INSEIN ROAD OVER BREDGE Contract Contract for substructure of Insein Road Over Bridge

13 INSEIN ROAD OVER BREDGE DWG INSEIN ROB (Up Date)(8-9-2014)

14 Maintenance of track by temping machine ContractContract for maintenance of track (Bago-Mawlamyaing-Yae) by temping machine between MR and MyanmarGolden Crown Co, Ltd

15 Maintenance of Track by Tamping Machine ContractSpecial condition of Tender for Maintenance of Track byTamping Machine ( 21.Jul.2014)

16 Myaung Chaung railway bridge ContractContract for the supply of 4 x 100ft span prestressedpostensioned concrete box girder for No.1117, MyaungChaung railway bridge Gangaw - Kalay railways Line

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9-6

表 9.3.2 2014 年以降の MR 直営工事の実績 その 2/2

No. Project Name Classi-fication Contets

17 MYITNGE RAILWAY BRIDGETender

Doc

The Republic of theUnion of Myanmar Ministry of Railtransportation Myama Railways BID INVITATION forTENDER NO.93/MAMA/MR(E)/2014-2015 the supply of150 FT Span Steel Box Girders and 40FT Span Steel Girdersfor MYITNGE RAILWAY BRIDGE YANGON-MANDALAY LINE

18 MYITNGE RAILWAY BRIDGE Contract

Contract No.216/MAMA/MR€ LOCAL/2014-2015 for TheSupply for Myitnge Railway Bridge (150 FT SPAN STEELBOX GIRDERS AND 40 FT SPAN STEEL GIRDERBRIDGE) Made Between MR and J&M Steel Solutions Co.,Ltd

19 MYITNGE RAILWAY BRIDGE BiddingSubmital

Myintnge railwa bridge (150ft span steel box girder and 40ftspan steel girder bridge)

20 MYITNGE RAILWAY BRIDGE BiddingSubmital

Substructure of Myintnge Railway Bridge

21 MYITNGE RAILWAY BRIDGETender

DocBid Invitation of Myintnge Bridge (150ft span steel box girderand 40ft span steel box girder bridge)

22 MYITNGE RAILWAY BRIDGE DrawingDrawng for Myintnge Railway Bridge (150ft span steel boxgirder nd 40ft span steel girder bridge)

23 MYITNGE RAILWAY BRIDGEContract& BOQ

Contract and BOQ of substructure of Myintnge railwaybridge

24 MYITNGE RAILWAY BRIDGE DWG Myint Nge BR Drawing (Existing Level)

25 Prestressed Posttensioned concrete Boxgriders

ContractBid invitation for Tender No 58_MAMA_MR(E)_2016-17_4x 10ft Span Prestressed Posttensioned concrete Box griders(May -2016)

26 Production of 20T AxLd PC Sleeper e-Clips,Khin Oo

Contract Khin Oo Bid Inv. Production of 20T AxLd PC Sleeper e-Clips, Khin Oo

27Production of 20T AxLd PC Sleeper PandrolFD Clips

Design &Drawing

Drawing and design calculation for 20ton axle load PCsleeper (FD clip & e clip)

28Production of 20T AxLd PC Sleeper PandrolFD Clips, Myit Nge

Contract Bid Inv. Production of 20T AxLd PC Sleeper Pandrol FDClips, Myit Nge

29 Rail welding by mobile flash butt weldingmachine

ContractSpecial conditions of Tender for Rail welding by mobile flashbutt welding machine (MFBWM)

30 Rail welding by mobile flash butt weldingmachine

Contract Contract for rail welding by mobile flash butt weldingmachine(Bago-Mawlamyaing-Yae) with MR and Rail LinkRail Device Project Co, Ltd

31Rail welding by mobile flash butt weldingmachine

ContractContract for rail welding by mobile flash butt weldingmachine(Madalay-Myintgyina) with MR and Rail Link RailDevice Project Co, Ltd

32

Supply of 4x 100ft span prestressedposttensioned concrete box girder for Br No1117, Myaung Chaung Railway BridgeGangaw –Kalay railways Line.

BiddingSubmital

The supply of 4x 100ft span prestressed posttensionedconcrete box girder for Br No 1117, Myaung ChaungRailway Bridge Gangaw –Kalay railways Line.

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

9-7

1) Insein Road Over Bridge (リスト番号:No.6~No.13)

2014 年 7 月に Invitation Documents が発行され、近年完成した Insein Road Over Bridge(跨線道

路橋)は、コンクリート桁部分と鋼箱桁部分がある。下部構造とコンクリート桁部分は直営工

事である。鋼箱桁部分のみ輸入を前提として、英語による概略性能仕様書が明示された。契約

内容は鋼箱桁の設計・制作・輸入・架設・据付指導・竣工試験であり、直営工事のように MR 職

員の指導の下で施工される。指導員以外の労務は MR 直営工事として行われる。完成した下

部構造上に架設することを前提としている。

2) インドタイドローンによる高性能分岐器調達(No.1~No.3)

外国資金案件である。MR は 2015 年 4 月にインドタイドローンによる調達案件:CMS(Cast manganese steel) crossing and headhardened switch for turnout (without sleeper bearers) and adaptor rail with fishing devices (50kg rails Vs BS75R rails) に関して、Tender Invitation Documents を発行

した。2 ヶ月の準備期間の後、入札書類を受け取っているが未だに評価中であり、2 年経過し

た 2017 年 7 月現在も未契約とのことである。これに関しては図面と入札質問・回答書を収集

した。

3) 軌道改修工事の案件(No.14,No.15)

軌道改修工事の特記事項としては、現在ローカルコントラクターにより、Contract for maintenance of track (Bago-Mawlamyaing-Yae) by temping machine between MR and Myanmar Golden Crown Co, Ltd(リスト No.14)が実施中である。工事区間は以下 2 工区である。

Mandalay-Myitkyina: 547km Bago-Mawlamyine: 353km

契約では、工期は 2015 年 5 月 1 日開始に遅れないこととされ、36 ヶ月である。この区間で年

間 118km、プラスマイナス 5%の作業を MR の指示により行うとされている。

その契約書と Invitation Documents の一部である英語版 Special condition of Tender for Maintenance of Track by Tamping Machine ( 21.Jul.2014) (リスト No.15)を入手した。

契約書はビルマ語で書かれた 25 ページのものである。調査団は英文に翻訳した。

AppendixB;契約仕様書として、非常に簡素な施工断面指示図;3 ページと Special Conditionで明記された英文文書の 9 ページ(下記)、合計 12 ページが含まれている。

・ Special condition of Tender for Maintenance of Track by Tamping Machine の BOQ 3 ページ

・ 同、技術仕様書;Deep Screening of Ballast、5 ページ ・ 主要仕様と許容誤差、1 ページ

仕様書はインド国鉄基準に準拠している。今後ヤンゴン環状鉄道改修事業や、ヤンゴン・マン

ダレー鉄道整備事業フェーズⅠの施工段階ではこれと同様の工事内容が実施されることにな

り、先行案件として非常に参考になる。

ほかにビルマ語で Price Escalation 条項;1 ページが含まれており、契約書本文は表紙込みで 12

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9-8

ページである。ほかの付属文書は確認できなかった。Price Escalation 条項は 18 ヶ月以上の契

約に適用され、中央銀行指標で 5%以上のインフレが想定された場合、12 ヶ月毎に支払い額を

調整するとされている。

4) 20 トン軸重設計の PC まくらぎ調達案件(No.26~No.28)

まくらぎ(e-Clip、または FD Clip 付き)調達契約の Invitation Document と図面を入手した。

これは、YM-DD(1)に関して、MR 所有のまくらぎ工場設備を供与する条件で、20 トン軸重設

計の PC まくらぎを製造するものである。

9.4 現地施工業者のリスト

調査団は MR との面談や 近の他案件コンサルタント業務等で現地施工業者の会社概要、業

務内容、施工実績等を収集し次表 9.4.1 に取りまとめた。

表 9.4.1 List of Local Contractor

SrNo Company Name Service Equipment List Project Contact

1 Geo Friend Engineering & Construction Co,Ltd

Geotechnical Site InvestigationGeological & Hydrogeological

Investigation Geotechnical Engineering,

Instrumentation & Monitoring

Soil Laboratory Testing Surveying works Sale & Supply Field In-situ Tests Concrete Testing Laboratory

Drilling Equipments & Accessories

Laboratory Instruments

Instrumentation Monitoring Instruments

Survey Instruments

Field In-situ Testing Apparatus

2014 Project Soil Investigation works for earthquake

risk Assessment project Soil investigation works for Mingalardon

Global Center construction project Bonnamy Tower Project etc…… 2015 Project Container cargo port terminal Myanmar Thilawa SEZ(p2) Preliminary Survey Animal Feed Mall etc….. 2016 Project Sea view condo project Improvement of Regional general

hospital in Myanmar Malikha Condo Construction etc….

Address : 1136(A/B), Thumingalar Road, 6 block, South Okkalapa Township, Yangon, Myanmar

Phone: (+95) 1577035, (+95) 12331431, (+95) 9 420107757, (+95) 9420107767, (+95) 775122122, (+95) 9776122122

E mal: [email protected]

Website : www.geo-friends.com

2 Shwe Taung Development Co,Ltd

Real Estate Infrastructure Construction Building Materials Dritibution

Junction City Union Business Centre Union Financial Centre Yeywa Hydropower Project Yangon- Mandalay Highway Hledan Flyover Junction City Crystal Residences MiCC

Address : River view Garden Housing Strand Road, Ahlone Township Yangon, Myanmar

Phone : (+95) 12314567, 2316643, 2316198, 2316741

Email : [email protected]

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9-9

SrNo Company Name Service Equipment List Project Contact

3. MyanmarGolden CrownCo.Ltd

Thayargone-Kyaukgyi railway construction project

Katha-Bamaw new railline project Hshipaw-Laishio new railine project Myint nge river bridge Bago-Mawlamyaing-Yae railline project

etc…….

Address : No.(47), 165 Street, Tamwe Township, Yangon, Myanmar Phone: (+95) 1 8604683, (+95) 1 8604684, (+95) 95360644, (+95) 9401543118 Email: [email protected] Website : www.myanmargoldencrown.com

4. Ma GaManufacturingCo, Ltd

Concrete pipe Concrete slab Concrete wall panal Fencing system Hallow Cored Poles

Myanmar Engineering Society (Hlaing) Kyite Inn Orphanage (Than Lyin) etc…..

Address : No 104, Wet Masout Wunhtouk Street, Industrial Zone (4) , Hlaing Thar Yar Township, Yangon. Phone : (+95) 1 685301, (+95) 685734, (+95) 685733 Email: [email protected]

5. High TechConcrete Co,Ltd

Product Ready Mixed Concrete Service Batching Plant Service Casting Service Pumping Service Quality Monitoring Service

Nyaung Tone Bridge Novotal Hotel Capital Hyper Market Pin Lon Construction Mandalay University Research Center

etc……

Address : No-1(B), Yan Gyi Aung Road, Thaketa Industrial Zone, Thaketa Township, Yangon Myanmar. Phone : +95 9798893511, +95 9798893522, +95 9798893538, +95 9798893548, +95 9798893558 Email : [email protected] [email protected]

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9-10

SrNo Company Name Service Equipment List Project Contact

6. Myanmar V pileCo, Ltd

Micropiling For Pedestrian Bridge Gamone Pwint Hospital Foundation Pasodan Pedestrain Bridge Hla Thaung Pedestrain Bridge

Address: Building No 107-109, Room No. 901.902 corner of Anwyahta Road and Sint Oh Dan Street, Latha Township, Yangon Phone : +95 1 250911, +95 1 250922, +95 1 253719, +95 252493 Email: [email protected]

7. SantacTechnologies

Arial Photography Digital Photogrammetry RS/GIS Surveying Geo Engineering Engineering & Construction Manufacturing automation Software Development IT & Communication Training Forestry

Only describe Arial photography project in his website.

Address : Room 7, Building 5 MICT Park, Hlaing University Compass, Hlaing Township, Yangon.

Phone : +95 1652245, +951652246, +951652310, +95 1652312

Email : [email protected]

Website : www.santactechnologies.com

8. A1 Group ofcompany

Construction Hotel & Resort Industry Mining, Oil & Gas Telecommunication Plantation

Address : 33- 49 Maha Ban Doola Garden Street, Kyauktada Township, Yangon, Myanmar. Phone : +95 1 377893 Email : [email protected] [email protected] Website : www.a1companies.biz

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SrNo Company Name Service Equipment List Project Contact

9. Megabucks Co.,Ltd

Plywood/Smart Board/Gypsum Board

Flatpack Container Easy Container/Knock Down

Container Prefab House Raised Floor Network Installation Real Estate

Address: A1, Room-306, Aung Chan Thar Condo, Aung Chan Thar Street, Yankin Township, Yangon Myanmar. Phone : +95 9 31743835, +95 973113092, +95 95166240, +95 9799595011 Email : [email protected] Website : www.megabucksgroup.com

10. Soil EngineerCo,Ltd

Construction Earth Work Machinery Trading Eco Block Sample

33/11 KVA Electrical Power Station Internal School Myanmar Staff’s Quarter (4 Units RC 2 Stories),

Women and Child Center ECO concrete Block Manufactory Bridges Construction Projects Kyant Kinn-Pakokku (Tant Kyi Taung)

Railway Section Ya Zae Gyo Canal Project etc……

Address: No(8), Thistsar Street, Yankin Township, Yangon.

Phone: +95 973204466, +95 9428111115, +95 9 428111116

Email: [email protected] Website : www.soilenergy.com

11. Myanmar Land& DevelopmentLimited

Construction Address : Yaesin Township, Zayar Thiri Township, Naypyitaw Phone : +95 9420714141

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9-12

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10-1

第10章 事業費積算

調査団は概略設計に基づいて数量を算出し、2017 年 7 月時点の積算単価を乗じてプロジェクト

コストを算出した。

10.1 事業費積算の前提条件

JICA 円借款審査時条件である「対ミャンマー国:2017 年度円借款事業 審査共通事項(案)

(2017 年 9 月 11 日)」を用いた。主要項目は次のとおり。

10.1.1 為替レート

(1) 各技術分野での工事費見積額算出段階

各技術分野での工事費見積額算出は、上記審査時条件が開示される以前の 2017 年 7 月初旬頃

から開始した。出所やその入手時点が異なる種々様々な情報源より、それぞれの技術分野にお

いて工事費見積を行ったため、原則として下記の直近 3 か月間(2017 年 4 月、5 月、6 月)の

平均レートを使用し、2017 年 7 月を積算月とした。

① 米ドル/日本円 1 USD=111.06 JPY ② ミャンマーKYAT/ 米ドル 1 USD=1,360MMK ③ ミャンマーKYAT/日本円 1 MMK=0.0817 JPY

(2) 積算キット作業段階

上記の JICA 円借款審査時条件(2017 年 9 月 11 日)、により下記換算レートを使用した。

① 米ドル/日本円 1 USD=110 JPY ② ミャンマーKYAT/ 米ドル 1 USD=1,360MMK ③ ミャンマーKYAT/日本円 1 MMK=0.0809 JPY

10.1.2 物価上昇率

(1) 各技術分野での工事費算出段階

ミャンマー国ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズ1 詳細設計調査 ファイナルレポー

ト 第 II 部の第5章 事業費積算では、2016 年 3 月時点の積算単価を使用し、物価上昇率は下

記を採用しているので、これを使用した。

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10-2

① 外貨分:1.8%p.a. ② ローカル分:6.2%p.a.

(2) 積算キット作業段階

上記の JICA 円借款審査時条件により下記換算レートを使用した。

① 外貨分:1.7%p.a. ② ローカル分:7.00%p.a.

10.1.3 予備費 / スペアパーツ

予備日は事業費の 5%とする。スペアパーツは竣工後少なくとも 2 年分を確保し、適宜「機材

費」として見積もる。

10.1.4 税率

消費税はミャンマーの国の規定に準拠し 5%とする。輸入税は 10%であるが、円借款で免除さ

れる部分は 0%とする。

10.1.5 その他の積算レート

① 資金の割合: JICA 100%、ミャンマー政府 0%。 ただし、バラスト、まくらぎ、e-Clip、税金、PMU 等の人件費等の事務経費はミャン

マー政府の負担を想定している。一方 FDClip は JICA 資金負担を想定している。 ② 一般管理費: 5%(JICA 共通基準) ③ 建中金利: 建設 0.01%、コンサルタント 0.01%(JICA 共通基準) ④ フロントエンドフィー:適用外であり、ゼロとする。

10.1.6 コスト積算基準年月

各技術分野での工事費見積計算段階では 2017 年 7 月とする。積算キットでの計算段階では、

「対ミャンマー国:2017 年度円借款事業 審査共通事項(案)(2017 年 9 月 11 日)」により

2017 年 10 月とする。

10.2 積算方法

① ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業は土木・軌道などは数量積算(BOQ)に基づく契

約部分と、信号、車両等はデザインビルドに基づくランプサム契約との複合部分契約

となるため、土木軌道等は BOQ に単価を掛ける方法で積算した。また、信号、車両

等のランプサム契約は同種のプロジェクトの単価を参照し積算した。 ② ミャンマーの 近の労務・材料、機械等の費用を入手し、積算単価を算出した。 ③ ミャンマー国内および近隣諸国における類似プロジェクトの単価を収集して参考に

した。 ④ 信号及び車両は、同種のプロジェクトから日本のメーカーの輸出価格を参照した。

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10-3

10.3 パッケージ毎の積算額

積算金額は非公開。

10.4 工事種別・パッケージ毎の積算額

積算金額は非公開。

10.5 フェーズ 2 の全体金額

積算金額は非公開。

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11-1

第11章 事業評価

11.1 概要

本事業は 2013 年に国際協力機構により実施されたヤンゴン-マンダレー間の鉄道リハビリ

テーション及び近代化事業の段階実施計画として、位置づけられる。

全体事業としての評価は過去の先行調査の中で、経済・財務的観点から既に分析/検証され、

その妥当性が確認されている。本予備調査では段階整備計画としての事業評価をフェーズ 1に適用したと同様の方法により行うものとする。

さらに事業自体の評価に加え、本調査では本事業に適用される運用・効果指標のレビュー作業

を行うものとする。

11.2 運用・効果指標の検証

国際協力機構事業評価ガイドラインによると、2001 年以降に審査が実施された全ての円借款

事業に対し、事前評価が行われており、その中で運用・効果指標の審査時現在の実績値(ベー

スライン)、目標値とその達成時期が設定されている。

(1) 運用・効果指標の定義

運用指標は、事業実施からもたらされた施設運用を通じて顕在化した事業のアウトプットを計

測する数量指標であり、また効果指標は、その事業のアウトプット累積から生じたアウトカム

を計測した数量指標である。別の言い方では、事業により整備されたインフラや施設(アウト

プット)の結果について、(a)運用指標は“どの程度適切にアウトプットが管理/利用されたか”

を計測し、(b)効果指標は“受益者への全体効果や目標地域へのインパクト”を計測するもの

と考えられる。

(2) 鉄道セクター事業における運用・効果指標の事例

鉄道セクターの事業評価に適用された運用・効果指標について、過去の事例は表 11.2.1 に示す

通りである。

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11-2

表 11.2.1 鉄道事業に対する運用・効果指標の適用例

出典:円借款運用・効果指標レファレンス 2014 年 JICA

(3) フェーズ1における運用・効果指標

フェーズ 1 に関する運用・効果指標は、旅客-貨物輸送量や列車輸送キロ等の指標を基に、標

準値を 2013 年、目標値を 2026 年として設定される。(表 11.2.2 参照)

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11-3

表 11.2.2 運用・効果指標(フェーズ 1)

指標名 基準値 目標値

2013 年(実績) 2026 年 旅客輸送量(人・km/日)* 3,317,908 27,524,873 貨物輸送量(トン・km/日)* 2,789,477 15,815,649 運行本数(列車本数/日) 27.5 164 車両キロ(km/日) 11,112 52,119 急行旅客列車所要時間 (ヤンゴン・タウングー間) 6 時間 21 分 3 時間 9 分

注*:ヤンゴン~マンダレー間に対応 出典:円借款事業事前評価表 JICA

(4) フェーズ 2 における運用・効果指標

調査仕様条件に基づき目標値は 2026 年に設定した。(開業後 2 年の条件)

フェーズ 2 の諸条件に対応し、運用・効果指標に対し、必要な変換/修正により運用・効

果指標を推定した。結果を表 11.2.3 に示す。

表 11.2.3 運用・効果指標(フェーズ 2)

Indicators (P/M)

Present (Yr 2017) (P/M,PCR)

Target (Yr 2026) (P/M)

車両運行率(%) 76.6 85 旅客輸送量‐人キロ/日 2,089,247 10,190,618 貨物輸送量‐トンキロ/日 922,486 2,386,800 列車運行本数(ヤンゴン近郊線及び YM 線以外の他線区運行線を除く) 27.5 104

旅客輸送量‐ 車両キロ/日 7,815 38,125 貨物輸送量‐ 車両キロ/日 3,297 8,824 旅客収入(チャット/日) 13,525,493 310,123,288 貨物収入(チャット/日) 91,560,700 245,049,315 急行旅客列車所要時間 (タウングー・マンダレー間) 8 時間 1 分 4 時間 49 分

急行貨物列車所要時間 (タウングー・マンダレー間) 11 時間 24 分 6 時間 40 分

出典:JICA 調査団

11.3 基礎的前提条件

11.3.1 基礎的条件

(1) 開業年次

フェーズ 2 事業完了後、2023 年からヤンゴン~マンダレー間に新たな鉄道運行サービスが開

始されるものとする。但し、事業会計としての収入計上は 2024 年からとした。

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11-4

(2) プロジェクト・ライフ

経済分析のプロジェクト・ライフはフェーズ 1 と同様、30 年と設定する。

(3) ケース有/無比較

経済分析に対し、費用便益分析を適用する。費用便益分析の中心原則は、プロジェクトがある

場合とない場合夫々について、費用と便益の推定を行う有/無比較の原理である。本調査では

以下を仮定する。

“なしのケース”:フェーズ 2 事業を実施しない事を仮定。 “ありのケース”:フェーズ 2 事業を実施する事を仮定。

(4) 価格

プロジェクト費用推計における経済価格推定に際し、次の通り、プロジェクト費用積算に適用

されたものと為替交換レートが用いられた。

US$1.0 = JPY104.68 MMK1.0 = JPY0.083 US$1.0 = MMK1,261

11.3.2 需要予測

事業による経済的な便益、財政的な収入を推計するため、需要予測を参照し、表 11.3.1 に示す

インプット・データを設定する。

表 11.3.1 需要予測による設定条件

種別 ケース 2023 2030

旅客輸送量 (千人/日)

プロジェクト有り 80.7 132.4

プロジェクトなし 65.4 111.0

貨物輸送量 (千トン/日)

プロジェクト有り 20.941 40.741

プロジェクトなし 9.674 17.187

出典:JICA 調査団

更に、経済評価に関連して、以下に示す旅客人・時や旅客人・キロに関する指標が推計されて

おり、表 11.3.2 に示す。

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11-5

表 11.3.2 全輸送モードの輸送人・時推計結果

(単位:輸送千人・時/日) ケース モード 2023 年 2030 年

“プロジェクト有り” 航空 105 258

自動車 1,664 3,978

水運 0 0

鉄道 845 1,325

バス 1,094 2,192

“プロジェクト無し” 航空 111 272

自動車 1,692 4,263

水運 0 0

鉄道 790 1,327

バス 1,152 2,292

“有り-無し” 航空 -6 -14

自動車 -28 -285

水運 0 0

鉄道 55 -2

バス -57 -99

表 11.3.3 全輸送モードの輸送人・キロ推計結果

(単位:輸送千人・km/日) ケース モード 2023 年 2030 年

“プロジェクト有り”

航空 12,232 31,665

自動車 55,384 109,532

水運 0 0

鉄道 30,717 53,560

バス 53,396 109,264

“プロジェクト無し”

航空 13,379 34,186

自動車 56,449 115,306

水運 0 0

鉄道 20,050 33,949

バス 57,171 115,249

“有り-無し”

航空 -1,147 -2,522

自動車 -1,064 -5,774

水運 0 0

鉄道 10,667 19,611

バス -3,775 -5,985

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11-6

11.4 プロジェクト費用

11.4.1 財務的プロジェクト費用

費用積算作業の結果、 初に現在の市場価格で表された財務的なプロジェクト費用が得られた。

財務的プロジェクト費用は非公開。

11.4.2 経済的プロジェクト費用

経済分析に用いる、すべての物、サービスの価値は、その機会費用を反映した効率的な価格ま

たはシャドウ・プライスで表されている必要がある。自由市場の条件の下では、その種の経済

効率が期待できるはずであるが、実際にはある種の市場の失敗や政府の干渉等により、しばし

ば経済に歪みが出ている。市場価格がその機会費用を反映できなければ、シャドウ・プライス

を計算し、市場価格に代えて適用しなくてはならない。

経済価格に補正のため、財務的な費用は変換手法を用いて修正する。財務価格から経済価格の

変換には 2 つの方法がある。

(a) シャドウ交換率(SER)による方法:SER を用いて、交易財を国内取引価格に変換す

る支払い意志額(WTP)ニューメレール (b) 標準変換係数(SCF)による方法:非交易財に対し、機会費用を反映した変換係数を

使って、国境価格に転換する外国為替ニューメレール

本検討では先行 F/S 調査と同様、SCF による方法を用いる。

(1) SCF 法の適用方法

財務価格から経済価格に変換する SCF 法の前提は以下の通りである:

(a) 機会費用指数として、国際価格または国境価格を用いる。

(b) 価格は国境価格を用い国内通貨で表示される。

(c) 交易財は公式為替レートで国境価格に変換される。

(d) 非交易財は変換係数を用いて、国境価格に変換される。

別の表現として、変換係数とは、

(国境価格) ---------------- で表される比率のことである。

(国内価格)

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11-7

(2) 変換係数の計算方法

SCF 法の係数は以下の式により、求められる。

I + E SCF = -------------------------------------------------------- (I + Di) + (E – De)

ここに、 I : 輸入総額 E : 輸出総額 Di : 輸入関税 De : 輸出振興補助金

先行調査では経済価格計算に適用する SCF として、0.88 が用いられた。またヤンゴン MRT1号線データ収集調査では SCF として、0.85 が選ばれた。その他参考データによると、近隣諸

国の SCF も同じ範囲にある事が示されている。本調査は先行調査(フェーズⅠ)と同様、SCF=0.88 と設定した。

(3) 経済費用推計

経済費用推計では予備費は計算に含めない、それ以外の全ての財務費用については SCF 法を

適用し経済価格に変換される。

経済費用は非公開。

(4) プロジェクト費用スケジュール

全体費用は第 9 章で議論された実施スケジュールに基づき、段階別の費用ストリームに配分さ

れた。

11.4.3 運行及び維持費用

建設終了後はプロジェクトの収益が開始される。ヤンゴン~マンダレー間の新規更新区間の列

車運行サービスに対し、追加的な運行、維持費用が発生する。これらの運行費用は第 7 章の結

果に基づき推計された。

11.5 経済分析

11.5.1 目的と評価の方針

経済分析の目的は、このプロジェクト実施の妥当性を国民経済的視点から分析する事にある。

プロジェクトについて、ヤンゴン-マンダレー間鉄道のリハビリテーション/近代化プロジェ

クトにフェーズⅡが実施された“プロジェクト有りのケース”とフェーズⅡを実施しない“プ

ロジェクト無しのケース”における推計費用と便益を比較し、いくつかの評価指標を計算する

経済分析が行われた。指標として経済的内部収益率(EIRR)、費用便益比(CBR)、経済的純

現在価値(ENPV)が選ばれた。各指標の計算方法論は以下の通りである。

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11-8

(1) 経済的内部収益率(EIRR)

内部収益率とは全ての便益と全ての費用(投資費用+運行維持費用)の割引計算で得られる純

現在価値を等しくする割引率を意味し、以下の式で計算される。 ( − )(1 + )

ここに n : 計算期間(初年次 t = 0)

Bt : 各年の便益 Ct : 各年における“プロジェクト有り”と“プロジェクト無し”の場合の投資

+O&M合計費用の差分

一般に、社会的割引率(SDR)が内部収益率の判断基準として選ばれる。いかなるプロジェク

トも国民経済的に価値のあるプロジェクトである事を主張するのであれば、その EIRR は SDRを上回っていなくてはならない。本分析では、ヤンゴン-マンダレー間鉄道 F/S と同様に、SDRは 10%に設定された。

(2) 費用便益比(CBR)

費用便益比は便益の純現在価値を費用の純現在価値で除した場合に求まる値である。プロジェ

クトが有利かどうかは、この比率から判断される。すなわち設定割引率の下で、比率が 1.0 を

上回れば、そのプロジェクトは社会的、経済的に妥当と判断される。EIRR の場合と同じく、

この分析でも割引率として、社会的割引率(SDR)=10%が採用される。

(3) 純現在価値(NPV)

純現在価値 (NPV)は現在価値に換算された全便益と全費用の差額として、計算されたネット

の便益額として求められる。プロジェクトの有利さは、純現在価値の量で判断される。ENPV計算の割引率には、社会的割引率(SDR)=10%を採用した。.

11.5.2 経済便益

(1) 想定便益

鉄道プロジェクトがもたらす経済効果は以下で構成されている。

(a) 利用者便益

(b) 供給者便益(利益)

(c) 社会各層にわたる連携メカニズによる広範な波及効果

ここに、 (a) と (b)のタイプの便益はプロジェクトによる直接的効果と考えられる。これに対

し、(c)のタイプの効果は多様な社会プロセスを介した連鎖メカニズムが前提になると考えら

れ、効果の原因から時空的に遠ざかる程、便益の二重計上リスクが発生すると考えらえる。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

11-9

この便益の二重計上を避けるため、一般に次の項目がプロジェクトの経済便益として選ばれて

いる。

利用者便益

対象鉄道回廊沿線の地域経済便益

利用者便益は交通利用者、例えば鉄道旅客、貨物荷主、他交通モード利用者に対する経済便益

であり、消費者余剰と呼ばれる。消費者余剰として計測される項目は以下の通りである。

列車速度や関連するサービス改善の結果、鉄道旅客や貨物荷主に旅行時間や費用の節

約が生じる。

鉄道への利用転換に伴う他交通モードの需要減少により、航空、バス、私的交通手段

における運行費用が節減される。

プロジェクトによる他の交通手段の交通緩和により、非転換利用者の旅行時間、交通

費用の節約が生じる。

ヤンゴン-マンダレー線鉄道回廊沿線の地域経済便益が鉄道改善効果の結果として、他地域に

対する経済的な比較優位を得ることにより、もたらされる。その様な経済的利益は、以下の様

な鉄道運行やサービス改善から実質化される。:

鉄道施設や運行の改良を通じた経済活動の活性化や経済生産増加によるマクロ経済ア

ウトプットの増加

(2) 便益推計

各便益の推計は共通した計算ルールで行われる。例えば、経済便益=節約価値(旅行距離 or旅行時間)×費用節約原単位(距離あたり or 時間あたり)

車両運行費用及び車両時間費用節約に対する定量的な経済便益は、“プロジェクト有り”と“プ

ロジェクト無し”を比べた時のこれらの費用の差として定義されている。

a) 上記の計算に要するデータは需要予測結果として、得ることができる。(第2章に記述

される)

b) 車両運行経費(VOC)及び旅行時間費用(TTC)の単価は先行するF/S調査を元に表11.5.1の通り設定した。

表 11.5.1 VOC、TTC の単位費用パラメータ (単位:MMK/千km, MMK/時)

MC 乗用車 バス トラック

VOC 24,723 222,680 270,284 345,232

TTC 1,725 5,558 2,523 2,453

出典:ヤンゴン総合都市交通計画

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11-10

c) 上記の単位費用に輸送人・時、輸送人・キロ指標を夫々乗ずる事により、旅行時間節

約額及び車両走行費用節約額が推計される。以上の計算は人単位でなく、車両単位で

行うため輸送モード毎の平均オキュパンシーを考慮する必要がある。乗用車とバスの

平均オキュパンシーを従前調査と同様、2.2人、36人に夫々設定した。

(3) 地域経済に対する経済的便益の推計

交通インフラ開発による地域経済の成長を分析した過去の文献をレビューし、地域国内総生産

(GRDP)の凡そ+1 パーセント相当の増加が、プロジェクトの実施によって、ヤンゴン-マンダ

レー鉄道回廊沿線エリアに生じるものと仮定した。タウングー~マンダレー間の行政地域から、

3 つの州、バゴ、マンダレー、ネーピドーが対象地域に選定され、その GRDP が需要予測で設

定された将来経済フレームに基づき推計された。

11.5.3 費用便益分析

(1) 基本ケース

費用、便益に関し、当初設定した条件で、費用便益分析を行った。表 11.5.2 はその評価の要約

を示している。分析に用いた元のキャッシュフローのデータは非公開。

表 11.5.2 費用便益分析要約

評価指標 値 EIRR 16.66%

費用便益(B/C )比 (割引率:10%) 2.49 純現在価値(NPV)(単位:百万 MMK、割引率:10%) 3,177,233

出典:JICA 調査団

上記の結果によれば、プロジェクトの EIRR は目標とする利子率、例えば 近のミャンマー中

央銀行貸出金利を上回っており、プロジェクトは国民経済的に見て、経済的にフィージブルと

考えられる。

(2) 感度分析

本調査ではインプットデータである便益や費用については、信頼できる資料を基に、慎重に推

定を行ったが、将来の各種の予想困難な要因により、アウトカムが期待以下となる可能性があ

る。このような不確定な事象に対処するため、以下の通り感度分析を行った。

ケース 1 : プロジェクト費用が 20%増加 ケース 2 : 需要が 20%減少 ケース 3 : ケース 1 とケース 2 同時

感度分析の結果を表 11.5.3 に示す。

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11-11

表 11.5.3 感度分析の結果

ケース1:

プロジェクト費用 20%増加

ケース2: 需要20%減少

ケース3: ケース1とケース2

同時

EIRR 14.55% 14.08% 12.05%

出典:JICA 調査団

基本ケースに比較して、明らかに比較のケースは結果が悪化している。しかし 悪のケース3

ですら、その経済的内部収益率(EIRR)はミャンマー国内における資本の機会費用を上回っ

ており、プロジェクトはそのフィージビリティに関して健全な特性を有している。

11.6 財務分析

11.6.1 財務分析の目的と評価の方針

(1) 目的

財務分析の目的はプロジェクト実施の妥当性をプロジェクト所有者またはプロジェクト運営

者の観点で分析し、評価する事である。別の言い方では、財務分析は鉄道部門のより内部の資

金の流れに焦点を当て、彼らの投資計画が有効か否かを検証することにある。分析に先立ち、

いくつかの前提条件を設定した。例えばプロジェクトの実施は誰が担保するか、本プロジェク

トは全体の中のフェーズⅡに位置づけられるので、各段階の実施連携が確保されるか。等であ

る。これに関して以下の前提を設定した。

本プロジェクトはミャンマー国鉄により、自らの権限と責任の下で実施される。その

意味でプロジェクトは公益事業の事業スキームが適用されるものとした。

それゆえ、本プロジェクトには、ODAローンの様な も優遇される資金ソースが適用

されるものとする。

ミャンマー国鉄は全国土に旅客鉄道、貨物鉄道サービスを提供し、その会計の範囲は

ヤンゴン-マンダレー鉄道のみに限定されないものとする。

分析の主要目的は以下の通りである。

(a) ミャンマー国内の財務的機会費用の視点から、フェーズⅡの財務的有効性を検証する。 (b) プロジェクトに適用できる可能な資金計画の組み合わせを明らかにする。

(2) 評価指標

財務分析の文脈は単純であり、実際の資金の動きのみに注目する。例えば流入資金(収

入)、流出資金(支出)、資金バランスである。具体的には、収入は鉄道運行で得ら

れたグロス旅客収入と貨物収入であり、支出は建設費と運行及び維持費で構成される。

財務分析の典型的な評価指標として、通常は財務的内部収益率(FIRR)が用いられた。

内部収益率は収入と支出(投資費用と運営・維持費)の合計を現在価値に変換した際

に等しくなる割引率を示している。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

11-12

内部収益率は以下の式で計算される。 (B − C )(1 + FIRR)n

ここに n : 計算期間( 初の年を t = 0) Bt : 各年の収入額 Ct : 各年の支出額(投資費用及びO&M費用)

内部収益率はプロジェクトに適用可能なローンの 大金利水準を示していると考えられる。こ

の内部収益率は、財務的資本の機会費用(FOCC)と比較して評価される。本プロジェクトの場

合、FOCC としてミャンマーにおける公共事業プロジェクトに充当される 優遇の金利水準を

参照すべきであろう。例えば長期の政府国債金利等である。

(3) 資金スキームの評価

もし内部収益率が十分に高ければ、プロジェクトは財務的にフィージブルであり、実施段階に

進む事が可能である。次の課題は資金計画である。利用可能な資金に関してはミャンマー国内

にも、外国資金や民間資金を含めて、多数の資金ソースが考えられるところである。この調査

では、調達可能性や資金条件も考慮し、いくつかの資金の組み合わせのケースを想定した。そ

して夫々の資金ケースの財務的有効性を見るため、各ケースの条件の下で、キャッシュフロー

分析を実施した。

11.6.2 収入予測

(1) 運賃システムの前提条件

ヤンゴン-マンダレー鉄道の運賃収入を積算するため、その基礎的条件として、需要予測と全

く同様の運賃システムを仮定する。需要予測では、以下に示す運賃構造が想定されている。

旅客運賃水準 : 平均 30 MMK/人・km*1 貨物運賃 : 26.3 MMK/km(一般貨物)*2 39.4 MMK/km(油脂類貨物)*2

注: *1 平均運賃は他交通モードとの比較及びミャンマー国鉄との議論に基づく設定。

*2 現行貨物運賃に基づく。

(2) 収入予測結果

需要予測に基づき、総旅客鉄道収入と総貨物鉄道収入が推計された。将来の鉄道輸送収入に関

しては、2030 年までの増加が見込まれる一方、2030 年以後は鉄道輸送容量上の理由から、同

年以降は一定とした。

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11-13

旅客輸送、貨物輸送の年間収入は表 11.6.1 の通り計算された。なお年間収入の計算では日輸送

量に 365 を乗じ、年間輸送量への変換を行った。

表 11.6.1 鉄道収入推計結果

(単位:百万 MMK/年) 2023 2030

旅客収入 49,892 350,048

貨物輸送収入 35,123 319,596

注:開始直後の 3 年間は、立ち上がり時のボリューム低減を考慮した。 出典:JICA 調査団

11.6.3 キャッシュフロー分析

(1) 基本ケース

費用と収入の年次ストリームデータに基づき、財務的なキャッシュフロー分析を行った。結果

の要約を表 11.6.2 に示す。

表 11.6.2 財務的キャッシュフロー分析の要約

評価指標 値

財務的内部収益率(FIRR) 13.37%

純現在価値(NPV) (単位 百万MMK:割引率10%)

1,984,846

出典:JICA 調査団

基本ケースの場合、プロジェクトの財務的内部収益率(FIRR)は 13%、純現在価値は割引率

10%で 1 兆,9 千億 MMK と推計された。この EIRR はミャンマー中銀の公社貸出金利を、僅か

に上回っている。(2014 年時 13%)

(2) 感度分析

各種建設プロジェクトからの知見によれば、いかなるプロジェクトにも、費用超過、需要縮減

等、様々なプロジェクトリスクが起きうることが示されている。経済分析と同様に以下の通り、

感度分析を実施した。

ケース 1 : プロジェクト費用の 20%増加 ケース 2 : 需要の 20% 縮減 ケース 3 : ケース 1 とケース 2 同時

感度分析結果を表 11.6.3 に示す。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

11-14

表 11.6.3 感度分析結果

【ケース1】

プロジェクト費用 20%増加

【ケース2】 需要20%縮減

【ケース3】 ケース1とケース2

同時

EIRR 11.36% 10.91% 8.93%

出典:JICA 調査団

基本ケースと比べ、明らかに検討ケースは結果が悪化しており、 悪のシナリオであるケース

3 においては、その FIRR はプロジェクト実施が困難であり、プロジェクト・リスク管理が重

要性な点を示している。

11.6.4 資金計画の分析

(1) 財務分析における資金計画の意味

前段の節で述べた通り、財務的内部収益率(FIRR)が分析における 初の評価指標として示

された。FIRR は“プロジェクト IRR”とも称され、プロジェクト全体としての財務的な効率

性を表し、その計算はプロジェクトに無利子の資金が無尽蔵に利用できるとの前提によってい

る。これに対し、プロジェクトにおける実際の財務効率については、一定の資金計画に基づい

たプロジェクト・キャッシュフローの計算をすべきであり、それによって実際条件下でのプロ

ジェクトの財務的実行可能性が結論できるのである。

(2) 資金計画のケース

本プロジェクトの実際面での財務フィージビリティを確認するため、表 11.6.4 に示す通り、資

金計画について 2 つの代替シナリオを設定し、その財務的効率性をキャッシュフロー分析によ

り分析した。

表 11.6.4 資金計画のケース設定

出典:JICA 調査団

ケース1

JICA円借款スキーム 外国ローン 国内ローン

100 70 30

30(10)

30(10)

10(-)

0.01 1 15

途上国向けJICA円借款スキームの適用を想定

特記事項プロジェクト費用の外貨相当分:外国ローンプロジェクト費用の内貨相当分:国内ローン

ケース ケース2

資金区分

プロジェクト費用に占める割合(%)

資金返済(年)(返済猶予期間)

金利(%/年)

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11-15

(3) 分析結果

内部収益率(FIRR)の計算に適用した費用、収入と同様のデータを用いて、各資金計画ケー

スに基づくキャッシュフロー分析が行われた。その結果を要約し、表 11.6.5 に示す。結果によ

るとプロジェクトの FIRR は現在の市況金利以上の利率を維持しており、プロジェクト資金

ソースとして、一定の資金スキームが用意されればプロジェクトについて、その事業プロセス

検討は可能と考えられる。

表 11.6.5 資金計画ケース別キャッシュフローの結果

評価指標 ケース-1 ケース-2

内部収益率(FIRR) 13% 10%

純現在価値(NPV) (百万 MMK /割引率10%) 1,967,582 1,462,723

出典:JICA 調査団

ケース 1 に対するキャッシュフロー計算の結果は非公開。

11.7 鉄道回廊開発による誘発経済インパクト

11.7.1 ヤンゴン-マンダレー線鉄道回廊

プロジェクトルートは南部の鉄道起点であるヤンゴンと北部起点のマンダレーを結ぶ全長約

620km の鉄道路線である。その鉄道カバーエリアは、国内 大都市ヤンゴンと第 2 の都市マ

ンダレーを含むのみならず、首都であるネピドーを含めている。この特徴は本路線が国家統合

のシンボル・イメージ、経済/産業活動の活動軸、人的・物的連絡の交流軸等、様々な見地か

ら 重要な幹線ルートである事を示している。以下では Y_M 鉄道回廊と表現する。以下のデー

タは上記を補完している。

(1) センサスによれば、現在の回廊人口は凡そ15百万人であり、全国人口の32%に相当し

ている。

(2) 人口は居住地区分により、都市人口と地方人口に分類できるが、都市人口の割合は52%であり、これは全国平均値30%に比べ、相対的に高い数字である。

(3) 各地域の人口規模及び都市人口分布の状況は図11.7.1の通りである。図に示される様に

都市人口の集中が主要な拠点都市、マンダレーやネーピドーにみられる。これら拠点

都市はその都市化プロセスの 中にあると考えられ、プロジェクト実施に伴い、その

動きは更に強化されるものと予想される。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

11-16

凡例: 都市人口

地方人口

図 11.7.1 タウングー~マンダレー間における都市/地方人口の分布

(4) Y_M鉄道回廊の経済生産規模に関し、GRDP等の統計データ上の制約はあるが、図11.7.2に示されるとおり、2014年時点でヤンゴンとマンダレーで、実質GDPの夫々25%、15%を生み出しているとされている。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

11-17

出典:ミャンマー経済モニター(世銀)

図 11.7.2 州/地域の成長貢献度

(5) 図11.7.3に示す通り、ミャンマーのマクロ経済トレンドにおいて、農業中心経済から

サービス・産業主導経済へと急激な経済部門の構造変化が生じている。この 近の変

化は、都市構造開発と人口増加を通して、2次、3次経済セクターに対し、経済開発空

間と機会をもたらすY M鉄道回廊の重要性を暗示している。

出典:ミャンマー経済モニター(世銀)

図 11.7.3 ミャンマー経済における GDP 部門構成

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11-18

11.7.2 鉄道回廊開発による経済ポテンシャルの増加

本プロジェクトは、安全で安定的な列車運行や旅客、鉄道貨物のための魅力的な輸送サービス

と高速列車等の鉄道運行の能力/品質改良のため、YM 鉄道回廊の軌道リハビリと向上を図る

ものであり、次のようなメリットが指摘される。

直接の効果として、鉄道で結ばれた地域、都市間における人および物の流れに対し旅

行時間と輸送費用の減少をもたらし、利用者への便益となる。

と同時にこれら輸送サービス変数における変化は特定の交通形成過程での変化のみで

なく、地域間の輸送網条件に対し、地域的広がりを持つインパクトをもたらす。

も重要な変数として、拠点都市に対する低水準から高水準なアクセシビリティの変

化といったネットワーク条件上のアクセシビリティ改善がある。いくつかの過去の研

究によれば、交通生成プロセスにおいて重要なアクセシビリティ変化があると、追加

的な輸送需要の誘発もしくは開発が起きることが指摘されている。

更に別の視点からは、アクセシビリティ改善は鉄道沿線の地域に土地の開発機会をも

たらすといった長期的な効果も期待できるのである。

上記プロセスの帰結として、エリア/土地開発を含む開発需要の累積や商業/産業開発ポ

テンシャルの形成が進む。

(1) 重力モデルによる開発ポテンシャルの推計

アクセシビリティ改善による開発ポテンシャル増加の参考例として以下の様に簡便な算術計

算を行った。

(a) アクセシビリティを各地域中心間の所要時間として定義し、列車の運行速度をベース

に計算するものとする。

(b) 開発ポテンシャルは地域中心の人口規模の大きさに比例し、地域間の交流需要ポテン

シャルを以下に示す重力モデルで計算するものとする。 (Pi × Pj )(Ti, j )γ

ここに: Pi = ゾーンiの都市人口規模 Pj = ゾーンiの都市人口規模 Tij=ゾーンi、ゾーンj間の所要時間、列車速度を40km/h(Without)、70km/h

(With)とおいて、計算するものとする。 γ= 重力モデルパラメータ(2.0と仮定)

(2) Y_M 鉄道回廊の開発ポテンシャル推定

上記の前提に基づき、YM 鉄道回廊の各自治体別に Without ケースと With ケースについて開

発ポテンシャルとその差が計算された。結果は表 11.7.1 に示す。各地域における増加率を比較

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

11-19

すると、YM 鉄道回廊全体の平均で凡そ 1.5 倍の増加率が想定される一方で、高い開発ポテン

シャルがマンダレーやネピドーなどの拠点都市に見られる。

表 11.7.1 プロジェクトによる Y_M 鉄道回廊の開発ポテンシャル増加

Without WithWith/Without

Pegu 9,627 18,850 1.96Taungoo 2,826 5,460 1.93Kyaukse 869 1,542 1.78Mandalay 3,691 7,730 2.09Meiktila 2,454 4,881 1.99Yamethin 1,849 3,083 1.67Naypyitaw 6,736 13,492 2.00Yangon-E 107,904 155,346 1.44Yangon-N 23,815 33,106 1.39Yangon-S 20,265 25,940 1.28Yangon-W 90,497 129,732 1.43Total 270,532 399,161 1.48

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12-1

第12章 結論と提言

12.1 結論

ヤンゴン・マンダレー線整備事業は 2013 年 11 月時点において、全長が 620km と長いため、

全体を 3 フェーズに分けて施工する計画であった。今般、ミャンマー政府から早期全線開業

(2023 年末)の強い要望を受けて、当初フェーズ 2 及びフェーズ 3 による施工を予定してい

た 2 つの工区を 1 つにまとめて、タウングー/マンダレー間(353km)をフェーズ 2 区間とし

て、施工する計画とした。

その区間にかかる実現可能性調査(F/S)を実施した結果、約 3 年半の短い工期的にも実現で

きる可能が高いことが調査の結果、判明した。しかしながら、工程面での大きな課題として、

フェーズ 1 の 後の 1 年とフェーズ 2 の施工初年度が重なるため、コントラクターが必要な労

働力を確保できない可能性があるという点が挙げられる。一方で、フェーズ 1 の工事が進捗す

るに当たり、労働者の作業の習熟度が向上することも期待される。したがって、特に土木およ

び信号分野において、フェーズ 1 の施工が始まる 2018 年以降、コントラクターの作業の進捗

に注目していく必要がある。

契約パッケージの検討に際しては、フェーズ 2 区間は 353km と長いため、4 つの土木・信号

パッケージに区分した。

また、経済・財務分析の結果、経済分析の結果は約 17%に及ぶ高い国民経済的投資効果のあ

る案件であり、また、財務投資的にも 13%を超える投資効果の高い案件であると位置づけら

れる。

環境カテゴリーも B カテゴリーであり、MR の線路敷き内を有効に活用して、工事を進めるこ

とにより、住民移転者数を極力無くすることが可能であり、また、環境影響評価上も影響をほ

とんど与えることなく、工事を進めることが可能であると判断された。

高速性、安全性確保のための 50N レールの導入、本邦において長年活用され、信頼性が高く、

かつ、日本から輸入された中古車両とも互換性の高い ATP(ATS-S)の導入、UHF 周波数帯を

利用した無線装置の導入など、質の高い本邦技術を活用しており、わが国の援助として実施意

義の高い案件であると位置づけられる。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

12-2

12.2 提言・留意事項

12.2.1 詳細設計調査(DD)時における留意事項

(1) 入札図書作成時期

パッケージ情報は非公開。

(2) フェーズ 1 入札図書の活用とクラリフィケーションのレビュー

フェーズ 2F/S で MR との会議にて確認したところ、基本的な設計方針はフェーズ1と同じ方

針で行こなうことで了解を得ている。

このため、土木、軌道、信号、車両等、フェーズ 1 詳細設計調査における成果及び入札図書を

大限活用し、特に基本設計期間の短縮を図り、早急に各施設の詳細設計に係ることが全体工

期を短縮する方法となる。

また、フェーズ 1 の入札段階におけるクラリフィケーションの内容をレビューし、詳細設計の

見直しに反映させるとともに、入札図書の作成に反映させる必要がある。特にフェーズ 1 のク

ラリフィケーションのレビューを丁寧に行い、入札図書の作成に早急に取り掛かる必要がある。

(3) まくらぎとバラスト供給に係る MR 負担工事の再確認

フェーズ 2 の施工工程に大きく影響を与える工事として、MR 負担工事であるまくらぎとバラ

スト供給がある。

まくらぎ供給に関しては、MR による生産、供給であるため、受注するコントラクターとの密

接なコミュニケーションの下に、コントラクターの指定する場所に、かつ、適切な時期にまく

らぎを MR が供給する必要があることに留意する必要がある。

バラスト供給に関しては、フェーズ 2 F/S での MR との協議の中で、砕石場でのバラストの破

砕・供給まではMRが行い、運搬はコントラクターが行う事とし、バラストの運搬に係る工事

施工スケジュール上のリスクは軽減されている。しかし、MR は予算の確保、バラスト供給の

責任を持っていることに留意する必要がある。

また、上記 2 つの項目に関して、詳細設計時において再確認する必要がある。

(4) PMU の設立

PMU(Project Implementation Unit)は、実施機関が円借款事業を円滑に実施するための重要な

組織である。PMU の設立は MR と JICA で 2017 年 10 月に署名された M/D にて合意されて

いる。

特に MR は、ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズ 1、ヤンゴン環状鉄道改修事業など、

多くの大規模なプロジェクトが同時並行的に進行しているため、これらの事業を円滑に実施す

るためには、それぞれの事業の PMU の設立とともに、それぞれの PMU に多くの実務人材の

配置が必要である。

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

12-3

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズ 2 は、2018 年秋には入札の開始が予定されてい

ることから、事業の円滑な実施のために MR の責任者、担当者を早急に決定する必要がある。

1) PMU の主な役割

PMU は事業の円滑な実施のために、入札、支払計画などを作成し、運輸通信省と JICAから事前に承認を取る。また、実施状況を運輸通信省、計画財務省、JICA などへ報告

する。

円借款事業が求めている住民移転、環境影響評価などの準備を適切に実施する。

ミャンマー及び JICA ルールに基づいた入札、契約、実施監理、支払管理などを適切

に実施する。

また、主な業務として以下の c)および d)の業務が含まれる。

2) PMU の組織

PMU の組織は通常、総務、計画、調達(入札)、財務、技術セクションからなり、十

分な能力を持ったスタッフの配置が必要である。

PMU の責任者は事業に精通し、経験があり、事業監理の出来る人材が必要である。

PMU の責任、権限は、日常の MR の運営とは分けて行うべきである。

事業の円滑な実施のためには、PMU の早急な設立と責任者の決定を行い、MOTC と JICA へ

報告する必要がある。

3) 関係諸機関との調整

本事業は、道路横断や河川付近の工事、電力供給、住民移転や用地確保、交通管理計画、税金

の取扱等に関して他省庁の許認可が求められる場合がある。

これら事業実施に必要となる関係省庁や諸機関との調整は MR が責任をもって実施する必要

がある。なお、入札前に工事の概要を MR から各関係機関へ説明することが望ましい。

4) 環境社会配慮面の要求事項の実行

MR には以下の表 12.2.1 に示す環境社会配慮上の要求事項を満たすことが求められる。

表 12.2.1 環境社会配慮上の要求事項

環境項目 要求事項 橋梁の架け替えによる住民移転

ARAP に書かれた補償方針、手順、スケジュールに沿った移転と補償の実施、完了

ミョーハン、ネピドーデポ整備に伴う用地確保

2019 年 10 月に予定される入札開始前、十分な期間を持った時期の住民の移転完了、及びこれを実現するための住民及び関係諸機関との協議、調整

環境管理計画 JICA 調査団が作成した「環境社会配慮報告書」を踏まえた環境管理計画の作成、 終化

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

12-4

(5) 光ファイバーケーブル(OFC)について

ヤンゴン・マンダレー鉄道の沿線には、MR が所有する地下埋設 OFC と中国企業が所有する

架空 OFC があるが、前者は状態が悪いことから、本調査では架空 OFC を使用することを前提

としている。MR がこの OFC を使用するためには、中国企業との契約の締結、ならびに沿線

各駅との接続を完了させることが必要である。MR は早期の契約完了と各駅への接続と共に、

使用可能な状況である事を担保する必要がある。

また、鉄道沿線においての橋梁建設工事において、杭打ち、資材搬入などのためにクレーンを

活用することを想定している。この土木工事に際して、架空 OFC の移設が必要になるケース

が想定される。

この MR と中国企業の契約の遅れが、工事の遅れに影響しないように、OFC の契約は速やか

に終了させる必要がある。

工事期間中には、全線にわたって、特に橋梁部分の OFC 移設が発生することから、切断等に

は十分留意する必要がある。

詳細設計時においても、OFC の契約状況に関して、きちんとフォローする必要がある。

(6) アセットマネジメントの策定及び実施

ヤンゴン・マンダレー鉄道全線(620km)で PC 桁、ボックスカルバートなどの橋梁設備、レー

ル分岐器などの軌道設備、継電連動、電子連動などの信号設備、TMS 及び通信設備、車両及

び車両基地設備、駅舎の更新にともなう各種設備並びに旅客案内設備など非常に多くの設備が

更新されることから、これらの設備・資産の適切な把握と共にスペアパーツの管理を適切に行

うシステムの構築及びメンテナンスの体制を策定する必要がある。

具体的なシステムの構築・実施体制の整備に関しては、詳細設計において策定する必要がある。

(7) 他プロジェクトとの連携

ヤンゴン・マンダレー鉄道では、様々なプロジェクトが進捗しおり、これらのプロジェクト

との連携を確保することは、詳細設計段階でも非常い重要である。OCC プロジェクトやフェー

ズ 1 などの日本による支援プロジェクトはもちろん、現在ミンゲでドライポートの建設を行っ

ている PPP のプロジェクトは、駅の配線に関係してくることから、詳細設計コンサルタント

は情報を共有化するとともに、MR が積極的に情報を提供する必要がある。

12.2.2 将来の事業実施時における留意事項

(1) 既存車両への ATP 取り付け

ヤンゴン~マンダレー間は、本プロジェクト完了後も、新型車両のみならず、MR が保有する

既存の客車、貨物の車両が運転される。その比率は MR が所有する車両が約 7 割、新型 DEMUが約 3 割運行する状況となる。

MR の運行する車両はブレーキを含め、安全走行に必要な機器が不完全な状態であり、このま

まの状態が続く限り、将来の安全運転の足かせとなる可能性が高い。これらの車両が安全かつ

ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ準備調査 ファイナルレポート

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高速で走行できるよう、MR はきちんと整備を行う必要がある。

安全性向上のため、MR が所有する既存の機関車に ATP 車上装置を設置する必要がある。

ATP 車上装置の提供はフェーズ 1 の CP105 の請負者が負い、車両への取り付けは MR が行う

こととなっている。

施工管理コンサルタントにおいては、MR が車両に取り付けを行う際、MR に対して技術的な

提言および指導を行うこととする。また、タウングー・マンダレー区間を運行する車両に ATP車上装置がきちんと設置されていることを確認の上、運行させることを提言する。

(2) タウングー・ネピドー間の DEMU 運転

フェーズ 1 で軌道改修を行うのはパズンダウン~タウングー間である一方、MR は、フェーズ

1 で新型車両を調達したあと、ヤンゴン~ネピドー間の運行を計画している。これは、旅客需

要および国民へのアピールという観点から、ヤンゴン~タウングー間の往復よりも合理的であ

る。

この場合、新しく購入した車両が、軌道が整備されていないタウングー~ネピドー間を走行す

ることになる。納入業者は、きちんと整備された線路上で新型車両を走らせることを MR に

求めてくると思われる。

従って、MR と協力して軌道の整備状況の調査、解析をするとともに、必要により MR に対し

て軌道整備を助言し、MR の 終的な列車の運転条件(運転速度制限等)の決定についても提

言を行う必要がある。

特に、車両メーカーは、軌道が改良されたヤンゴン~タウングー間の運転を前提に設計・製造

を行うものであり、 万が一、使用開始後、新しく導入された車両に何らかの機器類の異常が

生じた場合、請負者側から、原因が「タウングー~ネピドー間の走行が原因の可能性がある」

とのクレームが生じる恐れがあり、場合によっては、補償期間内であったとしても、コントラ

クターによる充分な補償が得られない可能性があることを、MR は承知しておく必要がある。

(3) MR の人材育成・鉄道学園プロジェクトの構想

MR は 2 万人以上が勤務する巨大な組織であるが、近代的な鉄道に生まれ変わるこの時期に、

近代的な鉄道の運行を担う人材として、職員を教育する必要がある。

MOTC 所管の鉄道学園がメッティラにある。このメッティラの鉄道学園をヤンゴン・マンダ

レー鉄道整備事業終了に併せ、今後長期にわたって、近代的な鉄道経営が出来る MR の人材

を育成する拠点としていくべきである。

そのためには、円借款プロジェクトと並行して、技術協力プロジェクトを立ち上げ、土木、軌

道、電気、信号、通信、運転、機械、旅客サービス(駅業務、列車業務)などの各分野の人材

育成を図り、将来にわたって MR が国から経費の補助金の支援を受けることなく、持続的に

運行できるような人材育成を実施するとともに、仕組みを構築していく必要がある。

具体的なプロジェクトの内容、期間等に関しては MR、JICA と相談して決定する必要がある。

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12-6

(4) 橋梁分野の提言事項

近代化およびリハビリ事業実施へ向けた近道とすべく、以下の対応を MR 側へ要望する。こ

れらの対応は、本事業実施の初期段階における基礎的な既存情報となり、事業そのものを迅速

かつ的確に進めることに大いに寄与するものとなる。

1) 橋梁構造物の一覧表の更新および追加

既に、橋梁一覧表が用意されているものの、その中には情報の不備や不足、新設された PC 橋

梁の未反映箇所等が多く存在しており、それらの更新および追加作業が必要となる。

2) 橋梁構造物の過去の検査記録の整理

橋梁構造物の適切な健全性評価を行うための点検方法や記録手法が十分とは言えないが、MRでは、主要な橋梁構造物に対する定期的な検査を毎年実施しており、幹部への報告もなされて

いる。したがって、そのための基礎的資料は存在しているものと考えられ、それらの過去の記

録や情報を収集し、今後の有用な資料とできるように整理しておく必要がある。

3) 既設 PC 橋梁の設計成果物の整理

近年、設計・施工された PC 橋梁(下部工含む)の設計成果物(設計図および設計計算書)を

早急に入手する必要がある。なぜなら、列車軸重や設計速度等の設計条件把握や今後の健全性

評価には不可欠な基礎的資料となるからである。また、これらの PC 橋梁建設時におけるコン

クリート等の材料品質や施工管理が不十分であったと考えられ、今後は一時的な耐力確保だけ

でなく、長寿命とできる耐久性確保の観点にも目を向けていくべきである。

4) 橋梁分野の技術習得体制の構築

事業実施の初期段階においては、各種橋梁構造物の検査・補修・補強等の保守管理体制やマニュ

アルの制定ならびに情報管理体制や検査基準の制定が必要となる。それと同時に、検査および

それに基づく補修・補強・更新計画から実施段階までの一連の流れをスムーズに実施するため

の組織体制づくりも必要になってくる。それらへ向けた準備作業を可能な範囲(例えば、鉄道

土木技術者に対する育成機関構想やインセンティブ享受のための制度構築など)において進め

ておく必要がある。

(5) 設備の維持管理

本プロジェクトで導入される設備については、その機能を維持すべく、使用開始後のメンテナ

ンスが非常に重要である。コントラクターには MR 職員に対して必要な教育訓練を実施する

ことを課すこととするが、MR は、メンテナンスのための予算を確保するとともに、メンテナ

ンス要員の確保ならびに組織運営をしっかり行うことが必須である。

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第13章 広報

13.1 広報資料

ヤンゴン・マンダレー鉄道改修事業を紹介するために、数種類の資料を日本語、英語、ミャン

マー語で作成した。日本語、英語、ミャンマー語で下記の資料を作成した。

PR 動画:5 分バージョン 本:月刊誌の記事をまとめた 100 ページほどの本(ミャンマー語 5,000 部、日本語 1,000

部) リーフレット:A4 サイズ(ミャンマー語 14,000 部、英語 13,000 部、日本語 3,000 部)

13.2 ビジュアルプレゼンテーション資料の作成

本事業によって向上する鉄道輸送サービスを利用者目線で広報動画を作成することにより、鉄

道沿線、駅周辺の住民や観光・ビジネス目的の利用客に向け発信鉄道利用者需要の増大を狙う。

表 13.2.1 に示す項目を PR するシナリオを作成した。

表 13.2.1 ビジュアルプレゼンテーション資料の PR 項目

項目 内容

運行速度の向上 目的地へ早く着くことができるようになる 都市間の移動が今より楽になる。

駅構内・駅前再開発 鉄道への乗り継ぎの利便性の向上やバリアフリーによる車いす、お年寄り、妊婦、子供にやさしい構内になる

新型車両の導入 快適な乗り心地やきれいなトイレの完備や優先席の映像を取り入れることで、お年寄り、妊婦、子供にやさしい車両となる

スマートな乗車券購入システムの導入

パソコンやスマートフォンを用いた、オンライン上で簡易に乗車券を購入できるシステムを紹介する

出典:JICA 調査団

13.3 リーフレット・冊子の作成・配布 ビジュアルプレゼンテーション同様、鉄道沿線、駅周辺の住民や観光・ビジネス目的の利用客

に向け、ヤンゴン・マンダレー鉄道が、より便利になることを PR するために、リーフレット・

冊子を作成し、また、MR と協議し配布先の検討を行った。

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13.3.1 日本人向け広報

ミャンマーの鉄道分野をはじめとする運輸交通分野の支援については、同国のみならず、日本

でも関心度が高い。この事情を考慮し、日本のメディアや冊子、ウェブサイトを通じて広報活

動を行う。

(1) ヤンゴン環状鉄道改修企業の広報活動から継続して、日本の国際協力の専門誌『国際

開発ジャーナル』上で、鉄道協力を中心に取材記事を連載し、開発援助の関係者やこ

の業界を志す学生などにコンサルタントの仕事や支援現場の様子を発信している。

(2) 日本ビジネスプレス社が運営するオンラインサイト「JB プレス」上にも転載し、広く

ビジネス関係者へのリーチも狙う。

13.3.2 ミャンマー人向け広報

上記に示した記事のミャンマー語版を作成し、ミャンマーの人々へ向けた広報活動も行う。

『国際開発ジャーナル』で記載した記事の中から計 2 本及び冊子用に新しく書き下ろ

した原稿のうち 2 本をミャンマー人読者向けに再編集した上で、ビルマ語に翻訳し、

地元紙や雑誌に記載した。

ミャンマーの一般市民への幅広い広報活動として、ミャンマー語の記事を JICA ミャ

ンマー事務所の Facebook を通じて配信した。

日本の支援に行われているヤンゴン・マンダレー鉄道及びヤンゴン環状線の鉄道改修

事業を紹介するミャンマー語の冊子を、無料で MR や駅、大学など、多くの人々広ま

るように配布する。