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Chapter
1
Save Electricity
1 電気料金体系に関する知識
2 節電指向運用に関する知識
節電と電気料金の基礎知識
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電気料金体系に関する知識1-1
(1)企業体質強化のためのコスト低減活動 生産工場において、電気料金が生産コストに占める割合はかなり大きい。したがって、
電気料金をできるだけ低く抑えようとする節電活動と電気の使い方の改善活動は、取り
も直さず自社の企業体質を強化するためのコスト低減活動にほかならない。
図表 1-1 に、生産工場における電気料金の成立ちとコスト低減活動の関係を示す。電
気料金は、使用電力量に単純に比例するものではなく、その使い方による料金割引など
の影響が大きい。1-1 節と 1-2 節では、使い方改善に必要な基礎知識について述べる。
(2)電力消費の構造と節電対策①電気で動く設備の有効仕事
生産工程の中で設備がその性能を発揮して行う仕事のことを「有効仕事」と呼ぶ。全
体消費電力の最も大きな割合を占める有効仕事に着目したコスト低減活動が、同時に節
電に対しても大きな効果をもたらす。
コスト低減活動の方法としては、生産工程そのものを見直し、「なくせないか」「一緒
にできないか」「順序の変更はできないか」「単純化できないか」の分析を行い、生産工
程の縮減を図ることが効果的である。「なくせないか」の例として蛍光灯の間引きがある。
②設備固有の損失
設備固有の損失とは摩擦や放熱などの設備設計に関わる損失で、有効仕事との比を「設
備の効率」と言う。
設備の効率=設備の有効仕事/(設備の有効仕事+設備固有の損失)
節電活動は、新型高効率設備への入れ替え、予防保全による性能劣化の防止、熟練運
転員の配備など多大な投資を必要とする場合が多く、実施前に投資対効果の検討を要す
る。
③設備運用の損失
設備運用の損失とは段取中の機械の空転、圧縮空気の漏れ、必要がないかまたは過度
の照明、ギンギンに冷えた事務室など、従業員が気付いていない設備運転や運用中にお
けるムダのことである。
節電を含むコスト低減活動としては、全社で「5S運動(整理、整頓、清潔、清掃、躾)」
電力消費に係る節電とコスト低減活動電気料金体系に関する知識
1-1
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Chapter1 節電と電気料金の基礎知識
を展開して、ムダを発見し、一つひとつ対処することが金をかけず大きな効果を得る方
法である。
(3)電気の使い方と電気料金 電力には、生産と消費の同時性(電気は貯められない)という「サービス商品」の特
性があり、サービスの受け方(電気の使い方)によって電気料金が安くなる。需要側で
力率を 85%以上に保てば基本料金を割引く制度があり、30 分間以上のピーク電力を発
生させなければ契約電力に反映した基本料金の増加を抑えることができる。また余剰電
力の多い夜間時間帯に電力使用量が多い場合、料金単価が安いので電力量料金(1-2 節
参照)は安くなる。
・電気料金契約種別・基本料金設定改善
・デマンド管理運転・負荷の力率調整
・ムダ排除全社運動・負荷の平準化運転
・高効率設備導入・設備運転環境整備
電気料金
電気料金体系
使い方による割引制度
設備運用の損失
設備固有の損失
電気で動く設備の有効仕事
電気の使い方による料金
電力消費による料金
コスト低減活動(自社の企業体質強化)
電気の使い方改善
節電活動
電気料金低減方法
・生産工程の縮減・不要設備の撤去
図表 1-1 生産工場における電気料金の成立ちとコスト低減活動
(渋谷貞雄)
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(1)電気料金の成り立ち 図表 1-2 に、電気料金のしくみを理解するために電気料金の計算式を示す。
電気料金は、①式に示すように、基本料金と電力量料金とからなる。そのうち②式の
基本料金に、電気の使い方による割引や補正が含まれる。
⑤に示す契約電力は、契約した一定値ではなく、使用電力の年間実量における最大需
要電力(デマンド)を基準として、毎年更新される。これを実量制契約電力と言い、デ
マンドが契約電力を超えないように管理する手法をデマンドコントロールと言う。
⑥の力率補正は、モータなどの機器が多い場合、電圧と電流の積である皮相電力より
も実際に働いた有効電力が小さくなることに対処する補正である。その比率である力率
(=有効電力/皮相電力)85%を基準として、これ以上では力率向上分を基本料金から
割引き、これ以下では逆に基本料金を割増する。
(2)電気料金契約種別(メニュー) 図表 1-3 に電気料金契約種別の例を示す。この契約種別は、高圧(6kV級)における
産業用電力の基本料金単価(図表 1-2 の④)、および料金単価(図表 1-2 の⑦)を示し
たもので、電力使用の実情に合わせて選択できるようになっている。
産業用電力は、受電電圧によって、低圧(標準 200V)、高圧(6kV級)、特別高圧(7kV
超)の 3種類に区分されており、電気料金契約種別もこの区分をベースにしている。な
お、本書における電気料金に関する内容は、東京電力の電気需給約款[特定規模需要(高
圧)](平成 22 年 4月 1日実施)に基づいている。
(3)電気料金のしくみによる節電/コスト低減のポイント① 30 分間以上持続のピーク電力を抑止するデマンドコントロールで契約電力維持
②進相コンデンサーの設置など力率改善対策を需要企業側で行って基本料金低減
③電気料金契約種別の検討において企業の実情にマッチした内容の選択
サービス産業などは非定常負荷→業務用需要、生産工場などは定常負荷→産業用需要
④�夜間時間の料金単価は昼間時間の約 60%。生産プロセスの検討により、生産体制の
夜間時間帯や、日曜・休日労働へのシフト→季節別時間帯別メニューの適用
産業用電力の電気料金のしくみ電気料金体系に関する知識
1-2
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Chapter1 節電と電気料金の基礎知識
電気料金契約種別
おすすめするお客さま
基本料金単価(円 /kW ・月)
料金単価(円 /kWh)季節区分、時間帯区分
高圧季節別時間帯別電力(契約電力500kW以上)
工場などで夜間、日曜・祝日などに電気の使用が多い
1,732.50
ピーク時間(13〜16) 15.34
昼間時間夏季 14.71
その他季 13.30
夜間時間(22〜 8) 9.20
高圧電力(契約電力500kW以上)
工場などで平日の昼間に電気の使用が多い
1,732.50夏季(7/1〜 9/30) 12.44
その他季 11.47
高圧季節別時間帯別電力A(契約電力500kW未満)
工場などで夜間、日曜・祝日などに電気の使用が多い
1,233.75
ピーク時間(13〜16) 17.23
昼間時間夏季 16.55
その他季 15.19
夜間時間(22〜 8) 9.20
高圧電力A(契約電力500kW未満)
工場などで平日の昼間に電気の使用が多い
1,233.75夏季(7/1〜 9/30) 13.59
その他季 12.51
※東京電力・電気需給約款[特定規模需要(高圧)](平成22年4月1日実施)による
図表 1-3 高圧の電気料金契約種別単価の例
図表 1-2 電気料金の計算式(税込 1カ月電気料金)
① 税込1カ月電気料金
= +基本料金(税込) +電力量料金(税込) 各種調整金など
② 基本料金(税込)
= ×基本料金単価(税込) ×契約電力 (185-力率)/100
③ 電力量料金(税込)
= ×料金単価(税込) ±使用電力量 燃料費調整額
④ :電気料金メニューごとに定められた基本料金の単価基本料金単価(税込)
⑤ :実量制契約により最大需用電力の発生ごとに増大更新契約電力
⑥ :有効仕事の電力割合(力率)85%を基準に料金に反映(185-力率)/100
⑦ :電気料金メニューごとに定められた電力量当たりの単価料金単価(税込)
(渋谷貞雄)
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(1)契約電力の意義と決定方法 契約電力は、電気料金の構成要素である基本料金に関わり、コスト低減活動にとって
その決定方法を慎重に吟味しなければならない。
基本料金=基本料金単価×契約電力×(185 -力率)/ 100
昭和 63 年以前、契約電力の決定方法は、契約受電設備の容量または契約負荷設備の
容量に基づいた定数値として決めていた。これは実際の電力需要状況とはかけ離れてお
り、生産量が減って電気を使わなくなっても、高額の基本料金を支払うと言う不合理が
あった。さらに、この契約電力から求めた地域全体の最大需要電力量をカバーするのに
必要な電力供給設備は実態にそぐわない膨大なものとなった。
このため、実際に需要者が必要としている最大需要電力量を把握する方法として、需
要者個々の契約電力を、刻々と変化する電力計測値の最大値、つまり最大需要電力の実
量値にリンクさせることにした。
(2)実量値契約方式(実量制)と最大需要電力 図表 1-4 に毎月の最大需要電力実量値の推移と契約電力の決定(例)を示す。電力需
給約款に「契約電力は、当月を含む過去 1年間の各月の最大需要電力のうちで最も大き
い値とする」とあり、一度大きな最大需要電力(デマンド)Bが発生すると、以降 1年
間の契約電力は需要電力が年度契約電力Aを下回っても B値に固定される。
図表 1-5 に、30 分最大需要電力量の計測(例)を示す。需要電力量の最大値は、電
力会社が需要家への電力供給点に設備する、30 分最大需要電力量計によって計量され
る値である。刻々と変化する需要電力曲線から 30 分間を切り取り、最大需要電力量を
割り出すもので、毎日計測されている。この毎月の最大値をプロットしたのが図表 1-4
である。
(3)最大需要電力量管理のしくみによるコスト低減のポイント①瞬時ピークは対象外であるから、予め決めた順序で設備のスイッチを入れる
②最大需要電力量を自動的に管理する装置(デマンドコントローラー)の活用
契約電力よりも 5%程度低めに負荷警報を設定し、警報が出たら、力率、電力容量、
契約電力の決定方法(実量制)電気料金体系に関する知識
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