roseリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ)katsuもa んoharai...

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お問合せ先 茨城大学学術企画部学術情報課(図書館) 情報支援係 http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ) Title メマツヨイグサとアレチマツヨイグサの形質 Author(s) 鈴木, 昌友 / 安嶋, 隆 / 内山, 治男 Citation 茨城大学教育学部紀要 自然科学(33): 23-36 Issue Date 1984-03 URL http://hdl.handle.net/10109/8119 Rights このリポジトリに収録されているコンテンツの著作権は、それぞれの著作権者に帰属 します。引用、転載、複製等される場合は、著作権法を遵守してください。

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  • お問合せ先

    茨城大学学術企画部学術情報課(図書館)  情報支援係

    http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html

    ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ)

    Title メマツヨイグサとアレチマツヨイグサの形質

    Author(s) 鈴木, 昌友 / 安嶋, 隆 / 内山, 治男

    Citation 茨城大学教育学部紀要 自然科学(33): 23-36

    Issue Date 1984-03

    URL http://hdl.handle.net/10109/8119

    Rights

    このリポジトリに収録されているコンテンツの著作権は、それぞれの著作権者に帰属します。引用、転載、複製等される場合は、著作権法を遵守してください。

  • 茨城大学教育学部紀要(自然科学)33号(1984)23-36

    メマツヨイグサとアレチマツヨイグサの形質

    鈴木 昌友*・安嶋 隆**・内山

           (1983年9月30日受理)

    治男***

    Variation in Gross Morphology of Oenothera, biennis L. and

           O. parviflora L. with Special Reference to

                  Their Taxonomic Status

    Masatomo S uzuKi r Takashi’ `JiMA” and Haruo UcHiyAMA”“

               ( Received September 30, 1983)

    Ab$tract

       The variability in gross morphology of two species of Oenothera, O.

    this study with particular emphasis on the variatioBs in quantitative characters.

    Measured characters were as follows: size of flowers, length and width of

    petais, ratio of width/length of petals, overlap petals, hair on’ the ovary and the

    calyx-tube, length of capsules, Rumber of serrations and number of branches.

    Observed characters were flowering season, leaf forms, mode of leaves and

    mode of branching. The results of a comparison of the gross morphology of

    the two species are summarized iR Table 15,

    は  じ め に

     マツヨイグサ属(Oenotherα)植物は世界に約200種があり,園芸品として栽培されているも

    のもあるが,主として北米および南米に多く自生している。遺伝学者de Vries(1901)がmutati-

    on theoryを提唱した時の研究材料であったことは有名な話であり,種間雑種のできることや形態

    上の変異が多いグループであることも既知の通りである。日本にも嘉永年間から明治時代にかけて

    渡来し,現在帰化植物として野生状態で見られる種は約7種あるが,これらの中には帰化した後の

    栄枯盛衰が見られたり,学名と和名との間に行違いが生じたりしていることが久内(1958)によ

    って指摘されたこともある。

      *茨城大学教育学部生物学研究室.Biological Laboratory, Facu!ty of EducatiOn lbaraki Univer-

       sity, Mito 310, Japan.

    **茨城県立日立商業高等学校 Hitachi CommerciaエHigh School, Hitachi 317, Japan.

    ***大成女子高等学校 Taisei Girls High ScheJl, Mito 310, Japan.

  • 24 茨城大学教育学部紀要(自然科学)33号(1984)

     本属中の一種メマツヨイグサで呼ばれる個体群は牧野(1923)によってその和名が命名された

    ものであるが,学名はOenotherα biennis L.が用いられている。よく似た個体群にアレチマツヨ

    イグサがあり,その和名は原(1942)による命名であるが,これにはOenotherα rnuricαtα L.を用

    い,文中「0.pαrviflorαL.なるものが,これと同一種のものであろうとの説もあるが未だ明確

    でない」という説明を記している。さらにアレチマツヨイグサの特徴として,花が小さく花弁

    は長さ1.2 cm内外,葉も狭い,という形質をあげ,メマツヨイグサと区別している。久内氏はアレ

    チマツヨイグサの学名に0.pαrviflorαL.を当て,さらに「メマッヨイグサは当時(1923~1925),

    普通に存在したものらしいが,近頃見受けないようである。然るに今日其名をもってアレチマツヨ

    イグサに用いている様にも見える」と述べている。長田(1979)もメマッヨイグサ(0.biennis

    L.)について「すこぶる多型の植物で比較的花が小さく,花弁の間にすき間のあるものをアレチマ

    ツヨイグサ(0.pαrviflorαL.),花弁の横幅が大きく,すき間のないものをメマッヨイグサと呼

    ぶが,中間型が多く,花期によって変るのではっきりしない」と記しておられる。その他,普通に

    見られる日本の図鑑類にはアレチマッヨイグサの学名に0.biennis L.を用いているもの,アレチ

    マツヨイグサとメマツヨイグサは異名(synonym)として扱ってしまうものなど問題が多い。著者

    らはこれらの問題をふまえ,個体群の実態を知るためにユ98!年から1983年にかけて観察し,その

    結果,開花期や形態的特徴などでも識別しうることに気がついた。このような観察はさらに他の地

    域の集団でも観察しなければならないが,取あえず今までの観察結果をまとめ分類学的問題を考察

    する資料にしたいと考えた。本研究にあたり,種々ご協力下さった野口達也氏に深く感謝の意を表

    する。

    調 査 方 法

     調査の対象となる植物の開花は夕方から翌朝までであることから,調査は夕方から夜にかけて,

    また早朝から午前5時位までの間に行なわれた。今回の調査範囲は図1および表1に示すように,

    茨城県内にかぎった。調査は6月下旬から開始し,次のような点に注意した。(1)花期および生育状

    態について,また,外部形態については主として,②花径の大きさ (31花弁の長さおよび幅 (4)花

    弁間のすき問の有無 (5)子房とがく下部の細い筒に見られる毛 (6)萌果の長さ (7)葉の形態,葉の

    つき方(8)茎および分枝状態,について観察・測定した。

    観 察 結 果

     (1)花期,生育状況 今回の調査対象の植物であるメマッヨイグサ型,アレチマツヨイグサ型の

    個体は茨城県各地に広く分布しているが,調査地が主として中央部に集中したのは長期にわたって

    観察できる集団を探したからである。一般にOenotherα eeの種は海岸の砂地や造成砂地によく生育

    するようである。メマツヨイグサ型,アレチマツヨイグサ型の植物を調査していく段階で,7月上

    旬から8月上旬まで開花する早咲型(eary flowering type)と,8月上旬から咲き出し10月中旬ま

  • Japan

    Ibaraki Pref.

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    画8瀧⑦鶏。

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    ⑬@噂⑥

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                                      @Early frowering type

                                      OLate flowering type

    Fig. 1. Map showing the localities.

    ③⑨

    Table 1. Localities, habitat types and number of plants examined.

    P.opula-

    tio’n NaDate Localities Habitat   Number of

    plants examined

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

    19W2

    Q3W2

    P3W3

    P3W3

    P6W3

    P6W3

    Q1W3

    P1W2

    チ82謁82認82忽82艇82ほち821682”82認82⑳82682濾83

    ㌦蟷㌔㌔煽㌔㌔端粛幅㎏9輪鵬輪鳩諾諾唾%惰

    Ish圭harna

      Hitachi ぺOharai

     へOharai

     ムOharai

    Tokai

    Hitachi port  職tachi

    Tabiko  Katsuta

    Onoyazashi  Kita_ibaraki

    Akahama  Takahagil

    Ichige

      Katsuもa

     んOharai

    Ishina_zaka

      Hitachi

    Ishina-zaka

      Hitachi

    Yokobori  Nakamachi

    Tome-cho  Hitachi

    Sawa  Katsuta

    SatonGmiya  Hitachi_Ohta

    Sugaya  Naka-rnachi

    Minori-machi

    Tokai

    Road side

    Sandy soil

    Road side

    Road side

    Sandy soil

    Road s重de

    Road side

    Sandy so呈玉

    Pinus  forest

    Wa$te land

    Road side

    Road side

    Road side

    Waste land

    Road side

    Waste land

    Road side

    Road side

    Arable land

    Road side

    購海・置旨“図績、k田入、ヰ伴出て虫刈、窯世λ、ヰθ

    ひ○

    ソ

  • 26 茨城大学教育学部紀要(自然科学)33号(1984)

    で花の見られる遅咲型(late flowering type)とに区別することが出来た。早咲型(Nos.1~7)

    は大洗町,勝田市,東海村・日立市,高萩市などの海岸砂地や路傍に多く見られた。そして早咲型

    の特徴として海岸から離れるに従って集団は小さくなる傾向が見られた。遅咲型(Nos.8~20)は

    茨城県一帯に広く分布し,路傍.造成地,砂地など,いずれの場所にも比較的大きな集団を作って

    生育しているのが見られた。分布の広さや集団の大きさなどから遅咲型の個体群の生活に勢いがあ

    るように感じられた。大洗町と日立市久慈浜の海岸造成地には,早咲型と遅咲型が同所的に成育し,

    混生した集団を形成するが,この場合は花期が一部で重複するようになる。他にオオマツヨイグサ

    (0.erort hrosepαZα Borbas)やコマツヨイグサ(0.1αciniat a Hi!l)なども混生している所もあり,

    オオマツヨイグサは早咲集団と花期が重なる。オオマツヨイグサの個体は,他の集団内またはその

    周囲に見られることが多く,このような生育状況が自然雑種形成に関与していることは明らかであ

    る。

     ② 花径 完全に開花した半径を測定した。その結果は表2および図2に示してある。早咲型は

    各集団ともにやや花径が大きく,最大は大洗町No. 3に見られた58.5・mm,最小は日立市石名坂Nα1集

    団に見られた31.5mmであった。各集団の最大の平均は50.Omm,最小の平均は34.6mmであった。遅咲

    型で最大の花径は48.5・mru,最小は27.O・mru,各集団の最大花蜜の平均は40.7・mm,最小花瓜の平均は

    33.3 mm,遅咲型の方が早咲型よりもいく分,花霞は小さい傾向があるように思われた。早咲型は平

    均4!mm位の花径を持つ個体が多く,遅咲型は平均38・mm付近のものが多く観察されている。

     (3)花弁の長さおよび幅 各集団において測定された値は表2に示す。早咲型では花弁の長さの

    最大が26。0㎜,最小がエ1.8㎜で,各集団の平均値は16.2~2エ.4㎜の範囲にある。幅は最大が3 3.5 mm,

    最小が12.0㎜であった。早咲型全集団の平均をとると長さ19.2imk,幅19.9mmとなり幅の方がわずか

    に長いが,花弁の長さと花弁の幅の比を見ると1.0に近くなる。

     遅咲型では花弁の長さの最大が24.0 mm,最小が12.O mm,各集団から得られた平均値は15.3~19.9

    ㎜であった。幅は最大が27.0㎜,最小が13.0㎜であった。長さと幅の比はいずれの集団でも1以上

    の値を示した。遅咲型の方がわずかに幅が広いことがわかる。

     図3~6には早咲型,図7~10には遅咲型の花弁の長さと幅の関係が示されているが,他の集団

    においても同様の傾向があるようである。

     (4)花弁の間のすき間,重なりぐあい 花弁と花弁の間にすき間があるか否かについて観察した。

    その結果,早咲型はすべてすき間のある個体群であり,遅咲型は花弁間が重なりあい,すき間のな

    い個体群であることがわかった。この形質は一般にアレチマツヨイグサとメマツヨイグサを識別す

    る際の特徴の一つとして用いられる。すなわち,すき間のある方をアレチマツヨイグサ,すき間の

    ないものをメマツヨイグサとして分類している。

     ⑤ 子房とがく下部の細い筒に見られる毛,筒の長さ 子房やがく下部の筒部に毛が生えている。

    子房には早咲型も遅咲型も共に軟毛と腺毛が見られた。がくの下の細くなった筒の部分には早咲型

    は腺毛のみが見られ,遅咲型では軟毛と腺毛が生えていた(図13)。がくの下の細い筒部の長さに

    ついては早咲型,遅咲型では,いちじるしい変化は見られないが,早咲型の方が最大と最小とに差

  • Table 2. Measurements of f}ower characters from mass collections of the two Oenothera species.

    Size of flo曽ers 殺ength Qf pe七als Width of peta圭s Lengもh o{calyx一も疑be slender Lengもh of capsu王es

    N(親

    mean土standardр?viation (田m)

       「高≠?lm.

    i㎜)

    minim.iam)

    mean士sもandardр?viation(㎜)

       「高≠?工m.

    iKIIII)

    minim.ian)

    mean±standardр?viation(㎜)

       9高≠?lm.i㎜)

    minim.i㎜)

    Width^Length

    @peta至s

    mean±standardр?viation(MIII)

       .高≠?1πし

    @(㎜)

     9←高撃獅撃祉?.i㎜)

    mea.捻士standardр?viaもion(㎜)

    maxim.@(au)

     ,,拷、nユm.i四)

    1 35.5± 3.7 46.0 31.5 16.2± 2.4 21.6 1L8 17.1士 3.4 26.7 12.0 1.05 29,3± 3.4 35.6 2L5 3エ.6士4.9 38.4 18.7

    2 40。3± 4.5 5i.0 34.0 19。0± 2。4 26.0 15.0 18。9± 4.3 33.5 12.5 0.99 25.8± 2.7 28.0 18.5 35.0± 2.6 39.5 3α0

    3 42.0士 4.5 58.5 34.0 19.1± 3.1 25.5 16.0 2ユ.6± 3、1 25.0 i7,0 1.13 26.6士 重.8 28.5 24.0 34.3± 3.6 4ユ.0 29.0

    4 40,0± 2.4 43.5 32.5 18.6± 1.3 20.5 15.0 19.5± 韮.9 23.5 15.5 LO5 27.0士 3.5 37.0 18.0 34,7± 3.2 40.5 26.0

    5 46.3± 3。8 53.5 40.0 21.4± 2.2 26.0 17つ 21.9± 2.0 25.0 19.0 1.02 29.2± 3.1 37.0 L26.0 32.9± 4.5 4α0 28.0

    6 43.1± 3.Q 49.0 36.0 19。9士 1。5 23.0 17.0 20.7± 1.7 24.5 1&0 1.04 29.6± 3.2 37.0 24.0 ・33.5± 3.3 39.0 28.0

    7 43.5士 3.1 畦9.o 34.G 20.5± 1.3 22.0 16.0 2G.1± 1。5 22.0 16.5 0.98 3L2± 1.9 36.0 28.0 3L4± 3.8 36.5 23.2

    8 36.9± 2.2 40.0 31.5 17.5± 1.1 19.0●15.0

    19.4± 1.6 21.0 15.5 1.11 26.6± ユ.5 ,

    Q9.0 24.0 25。6±1.g 29.0 21.0

    9 42.0± 3。1 48.5 36.0 19。9± 1.8 24.0 エ6.5 23.0±’2.1 27.0 20.0 1.玉6 30.2± 1.6 32.0 25.5 24.4± 3.5 30.0 18.5

    墨0 40.2± 2.0 44.0 37.0 18.4± L2 2α0 16.5 20.9±1.4 24σ 18.01.14 1 29.0± 1.0 31.5 28.0 24.2± L7 27.5 20.5

    11 34.6± 3.工 42.0 27.0 15.9± 1.6 19.5 12.0 18.5± 2.2 21.5 12.5 1.16 25.3± 1.8 29.0 22.0 24.9±’L5 27.0 22.0

    12 37.3± 2.5 41.0 33.5 17.1± L6 20.0 15.0 一20.5± 1.8 23.0 17.0 1.20 28.1:±:2.エ 31.0 23.0 24.1± 1.6 26.5 22.0

    13 38.0 28.5 15.3± 1.5 18.0 13.0 16.6± ユ.7 20.0 13.0 王,08 27.8士 1.3 3α0 26.0 21.7± 2.2 25.0 17.0

    i4 42,1± 2.6 47.0 35.0 19.6±1・5 23.0 16.0   , 22.0± L5 24.0 18.0 1.12 30.4± L8 35.0 27.0 25.5± 1.6 28.0、 21.0

    15 40.4± 2.4 46.0 33.0 18.7士 1.1 20.0   .P6.0 2L7=と 1,7 24.0 19.0 1.ユ6 28.8± 1.5・ 32.0 26.0 25,7士 1.7 28.5 21.0

    16 40、8± 2,4 46.0 37.0 199± L5 225 18.0 21.0± 1.6 24.5 18.0 LO6 31.8±:L5 34.0 3α0 248± 1ユ 27.0 22.0

    17 38.7± 3.3 47.0 34.0 18.2::ヒ 1.7 22.0 15.0 20.2± 1.9 25.G 16.0 1.11 31.7± 2.2 36.0 28.0 26.8± L5 30.0  , 24.0

    18 39.3± 3L9 45.5 31.0 18.7士 2.3 22.0 13.5 18.8± 1.8 21.516.0く

    LOO 29.8士 3.2 35.5 24.0 28.7±:3.4 33.5 23.0

    エ9 37,7± 2.8 42.0 35.0 17.1± L6 20.0 14.5 19.4± 玉.7 22.0 17.0 L13」26.3± 2.0

    30.0 23.0 2&5± 2.5 33.5 23.0

    20 38,0± 2.0 嘘2.5 35.0 17.8± 1.1 20.0 15.0 20.4± 1.7 26.0 18.0 L15 2$.4±1.2 3玉,0 26.0 25.6± 王.6 28.5 22.0

    糟誌矯冴E“図“受田歳、寸伴司て車4忌田へ、ヰ㊦

  • 28 茨城大学教育学部紀要(自然科学)33号(1984)

    岳田nO鵠

    。恥画

    滑 B 17 1615

    @14 13 配 ” 10

    aかb。属』婁ε㊥二日

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    ①αhりho偶咽』Oき〇一}h断」qコ翁

    一一一dIIIIIIH一一m一一

    一一dffiE!iS一一一一一一一一一

    EEEI!}一一一’一”m’

    24 26 28 30 32 3tl 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 ss 60(mm)

        Size of flowers

    Fig.2. Size ef flowers. Ranges,standard

     d.eviatio.R .and meaps in 20 popula-

     tions of      the two          Oenothera species in lbaraki Pref.

    が大きく,偏差値の幅も大きいことが観察さ

    れた(表2)。

     (6)繭果 繭果の測定値は表2および図12

    に示す。長さは同一個体内でも,着く位置に

    よっていく分異なるが,今回は個体内で成熟

    した最大のものを用いて測定した。早咲型は

    最大が41.Omm,最小が23.2 mm,各集団の平均

    値は31.4~35.0㎜であった。遅咲型は最大が

    33。5㎜,最小が17.0㎜で,各集団の平均値は

    21.7~28.7mmであった。覇果の長さは早咲型

    の方が長く,全集団の平均は33.3㎜である。

    遅咲型は短く,全集団の平均は25.4mmであっ

    た。これらの測定値からも繭果は早咲型の方

    が長いことがわかる。

     (7)葉の形態,葉のつき方 葉の大きさや

    形は上部のものと下部のものでは差があるこ

    とが多い。従って,茎の中央部につく葉を観

    察した(図14)。早咲型の葉は長楕円状披針

    形で葉縁には20~30対の鋸歯がある。先端は

    鋭尖頭となり,基部はくさび型である。葉の表面の中央年上は赤色を帯び,時に全体が赤色を帯び

    ることもある。遅咲型よりもやや幅が広い。葉のつき方は,互生葉序であるが,葉の先端は下垂し

    下向きにつく。この特徴は早咲型に共通に見られる。遅咲型の花は長楕円状披針形で,下縁には波

    状の鋸歯があるが,その数はエ0~ユ5対で,ややまばらに出る。この特徴は早咲型との相違点となる。

    先端は鋭尖頭.基部はくさび型。中央脈上は赤色を帯びる。葉は互生し茎に対して水平から上向き

    につき,葉の先端が下向きになることはない。この特徴も早咲型と異なる。葉の先端が上向きか下

    向きになるかは,土壌や水分代謝との関係において論ぜられることのようにも考えられる。今回は

    すべて自然な状態における生育状況を観察しており,特に実験的な手法は用いていない。しかし,

    葉のつき方は20地域の調査地点,および予備調査の段階においても観察されたことで,葉が上向き

    につくか,下向きにつくかは興味ある特徴といえる。

     (8)茎および分枝状態 早咲型は草丈50~150 cmで,茎の表面に斜上した毛がある。毛の基部は

    ふくれることはなく,赤点もない。茎全体が緑色を呈し,茎は単立するか,或は下部から数本の枝

    を出す程度である。遅咲型は草丈100~200 cmで,早咲型よりも大形になる。茎の表面に見られる

    毛は斜上し,毛の基部はふくらみ,赤点がみられる。茎全体も赤色を帯びることがある。茎は単卜

    することもあるが,多くは分枝し,下部から中央にかけて10~20本の枝を分枝する。また時に花序

    の部分においても分枝することがある。

  • 鈴木,安嶋,内山:メマッヨイグサとアレチマツヨイグサの形質 29

    Figs. 3fi-iO. Scatter diagrams illustrating the variation of petal length   axis, in mm) and width (horizontal axis, in mm).

    (vertical

    e

    o

    o

     o   o8

      0  0

      e OO O

    o

    o

    e

        L_,一)             ヒむヒゆユ もサヨごしトFig.3Population Nα王Early f工owering type,

        e e o  o                     o

    e OS  o o o ooe o e a o ooeo e e も  o

       oo    e

            ビしカし レユましめ

    Population恥4Early flowering type.

          o

       O  O   o  o

     。 。。。。鹸    む   畠OOOo   o

    o  {B O       o

           一、㎜、               しロユ  ヨましトFig.7Population Nα10L,aもe floweringもype.

    o

           e

         o  e  o       o    o   o      e

       eSo e  di e   oo e  eooo oo  o

    o

    Fig. 4

    OO OO

    。。。駕。

       OO

     O  O

       QOO

       O O O

          O

        O

    OO

    o

        L_、一,              りしユヒ レじ しめ:Fig.5Population No. 6 Early flowering type.

    o

    o o o

    o

    ρVOOO

    O

     OO

    姦。

    80

         L・、掃、t、、_、8、_122_526,一)

                  ビしロロ  ニごしト

    Fig.6POpulation Nα7Early flowermg type.

    Fig. 8

    1t2 13 14 15 16 17 18 ]) 2e 21 22 23 24 25 26〈mm)

           Petal width

    Population No.11Late flowering tl pe.

        .g ,o g g.

      Oeo 08

    0       0      0

        0

        L_、一,              ビしロま  ま ヒわFig.9Population Nα15:Late flowering type.

    o   o

        響& ◎ 嬢OOo    む  くケ

    O oO o蝉

     oo

    o

         L_,              むね ゆむわFig.10 Population No.20:Late flowering type.

  • 30 茨城大学教育学部紀要(自然科学)33号(1984)

     のロユ ほ 

    NuXe「

    19

    18

    17

    16

    J5

    h

    13

    11

    ①臥あり図葭一』⑩≧Oq卑u5の

    9

    8

      FO     .}     3

    Φ俄h一凶鶴唱』O≧O{}嵩囲』国蘭一

    ξ三虫

    一一一

    暴論留on

    io

    19

    IB

    17

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    1i,

      13   12   11   沿

    のま9bo看』①汐。鋸①超“

    9

    8

    7

        宙一一gX]

    6      5      4      3

    a鉛b。賃℃窪εゐ雪国

    2

    LLmjk-mL一一L-LLntlI6 18 20 22 24 26 L)8 so 32 34 36 38 4e cew)    Length of ca}yx-tube slenders

    一一一一一一一d-E!F一

    一一一一dEIE]一一一

    Fig.エ1. Length of calyx-tube slenders.

     Ranges, standard deviation and .means in 20 populations of t.he two

     Clenothera species in Ibaraki Pref..

    16 18 20 22 24 26 28 30 32 3tl 36 38 40 ・12{mm,     Length of capsules

    Fig. 12. Length of capsules. Ranges,

      standard deviation and means in 20

      populations of the two Oenothera  species in lbaraki Pref..

    考 察

     既に述べたようにメマツヨイグサ(0.biennis L.)は牧野によって紹介された種であり,アレチ

    マツヨイグサ((λparuiflorαL.)は原によって紹介され,当初σmurieata L.なる学名

    を当てられたものであるが,それ以後40年以上の歳月が流れている。原ばアレチマツヨイグサの特徴

    として,花が小さく,花弁は長さ1.2cm内外,葉も狭い形質をあげ,メマツヨイグサよりも小形である

    点をあげている。久内は根生葉についてふれ,アレチマツヨイグサは倒披針形であり,メマツヨイグサ

    では倒卵形円頭になる点が著しい相違点としている。杉本(1965)はアレチマツヨイグサの特徴とし

    て,根生葉の倒披針形なること,花弁の長さが15-Y20㎜である点をあげ,メマッヨイグサの特徴には根

  • 鈴木,安嶋,内山:メマツヨイグサとアレチマッヨイグサの形質

    難pm.

    藪こ

    齢轟・

    熱ご、

     黛

    黙欝 熱

      霧

    継議

    、繍

    灘勝継

    灘鍵

    Fig. 13. Comparison of calyx-tube slender and ovary among the two Oenothera   species. Left. a, b: Early flowering type Right. c,d: Late flowermg type.

       a, c: Ca1yx-tube slender b, d: Ovary. calyx-tube of late flowermg type is

       very pubescertt and gユandulous(c), calyx-tube slender of early flowerlng type ls

       only g}aRdulous (a).

    3ユ

  • 32 茨城大学教育学部紀要(自然科学)33号(1984)

    a

    R

    x

    c

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    N

    ×

    k

    〆ノ

     /

    ノ ノ

    //

    d

    xx

    x

    72

    e

    ×

    \\

    x

    f

    f

    Fig. 14. lllustrating the shape of the leaf form and number of

     serrations in Oenothera. a, b, c: Early flowering type

     d, e, f: Late flowering type

    生葉は倒卵形で円頭,花弁の長さは15~20㎜として区別している。しかし,1978年の改訂増補版

    においてはメマツヨイグサをアレチマツヨイグサの異名とし,学名は0.biennis L.を用いている。

    長田(1967)は初めの出版物においてアレチマツヨイグサは「メマッヨイグサに似ていてしばしば

    混同されるが,浅井博士によればメマツヨイグサは花弁の幅が長さよりずっと大で,葉の鋸歯が本

    種(アレチマッヨイグサ)よりまばらであることにより区別でき,現在関東ではやX山地よりのと

    ころにしか見られないという。のちの侵入者アレチマツヨイグサに追われたものであろうか。」と記

    している。後に同氏(1979)は,比較的花が小さく,花弁の間にすき間のあるものをアレチマツヨ

    イグサとし,花弁の横幅が大きく,すき間のないものをメマツヨイグサと呼ぶが,中間型も多く,

    花期によっても変るので,はっきりしない,と記している。さらに茎に赤点が入る個体をオオマツ

    ヨイグサ (O.erythroseρalαBorbas)の間種らしいことにふれ,分類至難な一群なので,当分そ

    れらをふくめて0.biennis L.なる学名で扱う,としている。本田(1975)も図鑑の記載の中で,

    アレチマツヨイグサに0.biennis L.を当て,「従来メマツヨイグサとアレチマツヨイグサは別種と

    して扱われてきたが,この識別は容易でなく,最近の研究で同一種であると認められた,」と記して

    いる。

     今回の調査では,早咲型,遅咲型があり,それらの外部形態を詳細に観察してみると,いくつか

    の特徴によって区別できることがわかった。これらを日本で紹介された記載に従って鑑別してみる

    と花弁の長さは早咲型においても一般には1.2cmよりは大きくなる。 No. 1地域,日立市石名坂の集

    団において最小で11.8cmが得られた程度である。「花は小さく」なる形質では早咲型,遅咲型共に

  • 鈴木,安嶋,内山:メマツヨイグサとアレチマツヨイグサ 33

    Table 15. Comparison of gross morphology and other criteria among the two ()enothera

       specles.

    Habitat

    Size of

      flowers

    Petal

    Hair onthe calyx-

    tube

    Leaf form

      andserratlon

    number

    Mode ofIeaf eip

    Stem

    Branching

    CapsuleFlowering

    season

    Earlv flowerinff tvpe O. parviflora L.

    Mainlv coastal land and road side

    36-46min in size

    Petals not

    overlappiRg

    16-21inm in length

    17-22nm in width

    Ratio width /

    length==1.04

    Glandulous

    Numbers 20-30 serratioR

    Tip down

    Whitish base of hair on the stem

    Stem green

    Simple, rather

    2-5 branched

    under the stem

    31-13mm in length

    Early July一 end of July

    Late flowerinff tvpe O. biennis L.

    Coastal land, road side, hilLf oot, wast e land

    33-42茎皿圃in size

    Obvolute petal

    at the margin

    15-2emm in length

    17-23圃irl width

    Ratio width/

    length=i.12

    Pubescent  and

    glandulous

    .、 ’

    隔 戸

    、 一  ’A 、一  ’

    σ ’ノ●

    ,■

    、 . ●曜一  、一 ●

    ’ 轟

    」’!

    Numbers 10-15 serration

    Tip upper

       or

    horizontally

    Reddish base of hair oR the stem

    Stem red

    Simple or

    more than 10

    branched fromunder to

    upper part

    22-29mm in length

    Ear1y August一 early September

  • 34 茨城大学教育学部紀要(自然科学)33号(1984)

    殆ど変らない。花弁の幅は遅咲型の方が長く,この点では遅咲型がメマッヨイグサとなる。花弁の

    間の重なり具合では明瞭に区別され,早咲型が花弁の間にすき間のある個体群,遅咲型が重なりあ

    う個体群である。この形質からみれば,早咲型はアレチマツヨイグサに当り,遅咲型がメマツヨイ

    グサとなる。今回の調査で,早咲型,遅咲型を区別する他の形質を考慮すれば,早咲型と遅咲型を

    同一のTaxonと見るのは困難で,早咲型がアレチマツヨイグサ(0. pαrvifZorαL.),遅咲型を

    メマツヨイグサ(0.biennis L.)と区別することの方が妥当であると考える。 Brittonの図鑑な

    どでも明瞭には記されていない。今回観察された分類形質も含めて表ユ5に示す。

     今回の調査地で早咲きのアレチマツヨイグサと遅咲きのメマツヨイグサが同所的に群落を作って

    いる集団(Nos.2,6)が観察された。その地域においては8月上旬にアレチマツヨイグサとメマ

    ツヨイグサの花期が重なっており,両者の中間型と思われる。そして形質的にはもっと複雑な個体

    が見られた。遅咲型であるメマツヨイグサの形質のうち,茎の表面に赤点の表われることが観察さ

    れたが,赤点はオオマツヨイグサにも見られ,また毛の基部のふくらむ形質もオオマツヨイグサに

    も見られる。オオマツヨイグサの花期は,この地方では7月から8月上旬までで,8月になると少

    なくなる。もし浸透交雑が行なわれるとすれば,むしろ花期の重なるアレチマツヨイグサにおいて

    みられそうであるが,メマッヨイグサに見られることは興味がある。各集団の付近に他のマツヨイ

    グサ属の種が生育していることから,個体間には種間交雑の機会が多いことは考えられる。また7

    月の気温と天候など気候的な要素も作用しているといえよう。

     早咲きのアレチマツヨイグサが主として海岸に多く遅咲きのメマッヨイグサが海岸から山地にか

    けて広く分布していることがわかったが,浅井氏の説明として関東地方の山地にはメマツヨイグサ

    のあることと一致する。久内氏の文章にもあるようにメマッヨイグサが衰退した時代があることは

    わかる。また長田氏の言うように新しい帰化植物アレチマツヨイグサに生育地を侵略され山地部に

    生育しているという見方もあるが,茨城県内においてはメマッヨイグサの分布域の方が広く,繁殖

    力も強いように思われる。また市街地や路傍等においてはメマツヨイグサをよく見かける。早咲き

    のアレチマツヨイグサは海岸の砂浜や造成地が生育適地らしく,海岸において見ることができる。

    今後どのように変化していくかも興味ある問題である。

    文 献

    Britton, N.W. and H.A. Brown. 1970. AR illustrated flora of the northern United States and

     Canada 2, 594A-596.

    原 寛.1942.あれちまつよいぐさ(新和名),植物研究雑誌,18,345.

    久内清孝。1950.帰化植物.pp.185~186,井上書店.

    本田正次.1975.学研生物図鑑 野草1 双子葉類.p.182,学習研究社.

    笠原安夫.1968.日本雑草図説.p.518,養賢息.

    Linnaeus, C. 1753. Species plantarum. p. 346.

    牧野富太郎.1923.めまつよいぐさOenotherαbiennus L.科学画報,1,4.

        .1926.断枝片葉基14 植物研究雑誌,3,45.

  • 鈴木,安嶋,内山 メマッヨイグサとアレチマツヨイグサの形質 35

    沼田真・吉沢長人.1975.新版日本原色雑草図鑑.pp.148~149,全国農村教育協会.

    長田武正.1967.帰化植物図譜.p.126,第1学習社.

        .1972.日本帰化植物図鑑.p.92,北隆館.

        .1979.原色日本帰化植物図鑑.p.175,保育社.

    佐竹義輔.1982.日本の野生動物 草本IIE離弁花類. p.268,平凡社.

    杉本順一.1965.日本草本植物総検:索誌 双子葉篇.p.371,六月社.

        .1978.改訂増補日本草本植物総検索誌1 双子葉編 p.371,井上書店.

    鈴木昌友・清水修;安見珠子・安昌美・藤田弘道・中崎保洋・和田尚幸・野口達也.198ユ,茨城県植物誌.

      p.233,茨城県植物誌刊行会.

  • 36 茨城大学教育学部紀要(自然科学)33号(1984)

    Plate Compamson of flower, leaf and branchmg between the two Oenothera species       Left O parvtflora L a and b,flower, c,leaf, d,branchmg       Right O bLennts L e and f,flower, g,leaf, h,branchmg