roseリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ...

15
お問合せ先 茨城大学学術企画部学術情報課(図書館) 情報支援係 http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ) Title 閉脚跳びにおける凹型跳び箱の効果に関する指導方法論 的研究 Author(s) 三浦, 忠雄 / 岡本, 研二 / 山口, 真須美 Citation 茨城大学教育実践研究(9): 103-116 Issue Date 1990 URL http://hdl.handle.net/10109/12162 Rights このリポジトリに収録されているコンテンツの著作権は、それぞれの著作権者に帰属 します。引用、転載、複製等される場合は、著作権法を遵守してください。

Upload: others

Post on 08-Feb-2020

4 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

お問合せ先

茨城大学学術企画部学術情報課(図書館)  情報支援係

http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html

ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ)

Title 閉脚跳びにおける凹型跳び箱の効果に関する指導方法論的研究

Author(s) 三浦, 忠雄 / 岡本, 研二 / 山口, 真須美

Citation 茨城大学教育実践研究(9): 103-116

Issue Date 1990

URL http://hdl.handle.net/10109/12162

Rights

このリポジトリに収録されているコンテンツの著作権は、それぞれの著作権者に帰属します。引用、転載、複製等される場合は、著作権法を遵守してください。

Page 2: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

茨城大学教育実践研究9(1990),103 一一 116

閉脚跳びにおける凹型跳び箱の効果に関する指導方法論的研究

三 浦 忠 雄*・岡 本 研 二*・山 口 真須美**

         (1990年3月31日受理)

A methological Study of Effect on Tuck Jurnp

   on a Vaulting Horse hollewed out

Tadao MiuRA Kenji OKAMoTo and Masumi YAMAGucHi

キーワード:指導方法論,跳び箱運動,器械変化,着手技術,運;動形態学

 器械運動の指導においては,取り扱われる運動(技)が,非日常的であるだけに,児童,

生徒が不安やとまどいなく練習に入れることがまず留意されなければならない。そのひと

つにの方法に器械の二度や形状を変化させたり,他の器具との組み合わせが工夫される場

合が多い。跳び箱の閉脚跳びにおいては,跳び箱の中央部分をくり抜いた跳び箱を利用す

る指導例が多数報告されるが,その有効性は今ひとつ明確でない。本研究は,良匠跳びが

とべない本学教育学部女子学生に,凹型跳び箱を使用した練習を課し,技術修得に対する

有効性について考察した。

はじめに(器械の条件変化による技の学習について)

 器械運動の学習において,段階的学習,個別的学習のひとつの方法として,器械の寸度や形状の

条件を,技の遂行に都合の良いように変化させて練習したり,種類の違う器械器具を組み合わせて

指導することが多い。例えば,マットの後転や伸膝前転の時,頭越えや立ち上がりを助けるために

マットの下に踏み切り板を置いて傾斜を作って練習する方法1),低鉄棒のさか上りの練習の時,鉄

棒の向う側に置いた台や傾斜板をけって,体のひき上げと腹支持位になるのを助ける方法2),跳び

箱運動で,階段状に跳び箱を連結して,支持跳躍の感覚を練習する方法3),そして跳び箱運動の閉

脚跳びの時,中央部をくり抜いた(凹型)跳び箱を利用する方法4)5)6)等がその代表的なものであ

る。また都助者による回転の加速援助や体重の支え,着地のウレタン・マット等も,本来ないもの

を与えられているという点で,条件変化の一種ということができるだろう。

 器械条件の変化による学習指導例をまとめると次のようなものがある。(表1)。

*茨城大学教育学部  **茨城大学教育学部小学校教員養成課程

一103一

Page 3: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

茨城大学教育実践研究9(1990)

表1 器械運動における条件変化による練習の例

条件変化 内        容 代  表  的  な  例

高さや幅の緩 器械の高さを低くしたり,幅を拡げたりし ・鉄棒・平均台・跳び箱の高さの調節1 和 て不安をなくす。 ・平均台の幅の調節

運動形態や技術に基本的変化はない。

技術的な補助 技の遂行上・中核となる技術の補助をおこ ・同種の器械の組み合わせ

ない,実施者に一応の技の達成を果たす。 例えば,段の高さを利用した跳び箱

技術の学習に深い関係をもつ。 の組み合わせ練習

・異種の器械の組み合わせ(例えば,平均台と跳び箱)

2 ・さか上りのけり台

ノ ・さか上りのロープ利用

・前方倒立回転とびの段差・凹型跳び箱

・短い跳び箱(バック)

・宙返りのミニトランポリン

・低い跳び箱からのとび前転

門門者による 器械条件の変化はないが,回転力の加速, ・跳び箱のふみきりのはね上げ

技術的な擾助 運動方向の導き,体の支え等を得て,技の ・鉄柵の回転の加速3 三助) 達成を果たす。 ・後転倒立で倒立への導き

技術の学習に深い関係をもつ。 ・倒立回転(ブリッジ)での体の支え・倒立の補助

・前方倒立回転とびの肩の支え

着地の安全 安定した着地体勢をとれなくても,一応安 ・ウレタン・マット4 全に下りることができる。 ・ピット

・補助ロープ

 全体的にみると,高さや狭い幅が技の遂行上の不安の原因になっている場合,高さを低くしたり

幅を広げる等によって,不安なく技を遂行させるようにするための条件変化と,技の遂行に直接関

与する技術の不足を補うような形で,実施者の技術内容を高める,いわば環境条件設定としての条

件変化に大別できる。

 後者の場合は,単に練習者に一時的な達成感を味わわせるに留まらず,技術の修得状況や技術の

向上に対応してどのようにその条件変化を推移させていくかは,技術の学習そのものであるという

深い認識を指導者は持つ必要がある。例えば,マットの後転の場合,傾斜を利用すると頭越えが容

易になって,楽に回れるが,頭越えの難易さにあわせて傾斜角度を調節しながら,後方回転に応じ

て腕の突きや体の開きを指導していかないと,いつまでも頭越えの回転が修得できない。

 今回とりあげた凹型跳び箱は,跳び箱の馬背中央部をくり抜いたものであり,主に三脚跳びの練

習に利用されるもので,現場の教師には種々多様な形に工夫されている。閉脚跳びの場合,開脚跳

びに比べて,台に対する障害感が強く出て,実施者に不安を与えやすいものであり,その一つの解

決方法として,馬背部をくり抜いて,足が台にかからずに楽に飛び越すのを目的とするのである。

 しかし,この方法は,実施者に楽に飛び越せるという安心感や,跳び越せたという満足感を与え

るという効果はあるものの,はたして鉱毒跳びそのものの技術取得にどの位の効果があるのか疑問

に思う場面が多いのも事実である。

一104一

Page 4: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

  謬nv碑

  3ept

図1 凹型跳び箱の工夫例(又献5ノ

固定するテープ

   バスマットを切って

/    重ねた台

f ie fy g’A. g{spt          認

pt

碧七回

図2 凹型跳び箱の工夫例(文献6)

1.研究目的

 跳び箱運動においては,器具や用具の工夫改良(条件変化)が,個別指導の一つの方法として

取り上げられているが,本来このような工夫というものは,跳び箱運動の技ができるようになる

ことを最終目標として成されなければならないものである。本研究では,「閉脚跳び」に焦点を

絞り,代表的な練習器械の工夫である,中央部をくり抜いた凹型跳び箱が,どの程度効果がある

かを考察するものである。本研究は,先の報告7)の続報となるもので,第2空間局面に条件設定

した状況の申で,着手技術を中心とした支持跳躍技術の検討をするものである。

一105一

Page 5: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

茨城大学教育実践研究9(1990)

2.研究方法

1).被験者及び方法について

  茨城大学教育学部女子学生(3年次生,小学課程体育受講クラス)に凹型跳び箱による閉脚

 跳びの練習を実施し(Bグループ),閉脚跳びの技術取得に対する凹型跳び箱の有効性を考察

  した。対象群として,普通の跳び箱だけで練習するグループを設定した(Aグループ)。

  今回の実験では,2台の

 跳び箱を闇隔をあけて並べ

 て置き,凹型跳び箱の代用

  とした(写真1)

写真1 実験用跳び箱

被験者の真横から跳躍動作をVTR撮影(使用カメラ,マックu一ドM:S100)し,運動形態

を観察した。資料として運動軌跡図や運動局面図を作成した。ビデオプリンター(三菱ビデオ

コピープロセッサー,SCT-P700)を利用した。 VTR再生は30コマ/秒であり,観察精度

には限界がある。

3.予備調査

 小学校課程体育受講学生について下記の内容の跳び方と調査内容で,閉脚跳びがどの程度跳べ

るか,予備調査を実施し,観察する評価基準の作成を試みた。

1)指示した跳び方の内容

 ①助走,踏み切りから着手して,足で台にのり,飛び下りる。

 ②普通の跳び箱で,閉脚跳びを試みる。

 ③凹型跳び箱で,閉脚跳びを試みる。

2)調査内容

 ①実際に,閉脚跳びが,跳べるか否か。

 ②凹型跳び箱を使った場合,跳び方に変化が生じるか。

 ③閉脚跳びを跳べる者と,跳べない者のそれぞれの特徴。

一106一

Page 6: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

3)調査結果

①実際に主脚跳びが跳べるか否か(表2)

表2 閉脚跳びが跳べる入数

Aグループ N=22(人)

普通跳び箱 凹型跳び箱

跳 べ た 12 1

跳べない 10 21

 ここで,凹型跳び箱が跳べないということは,真

横からの投影面でみて,足先が少しでも,本来ある

べき台の部分をかすめた者を示すので,跳べないと

いう表現は不適当かもしれないが,一応分類した。

Bグルーープ N・17(人)

普通跳び箱 凹型跳び箱

跳 べ た 14 2

跳べない 3 15

②投影面でみて,足先が台をかすめた者が以外に多かった。これは,跳び箱の間が抜けてい

 るため,足がひっかからないと安易な気持ちになってしまった結果であろうと思われる。全

 体的にみて

 イ.着手している時聞が長い

 ロ.空間局面で腰があまり上がらない

 ハ.両腕の間を,足を抜くような,いわゆる「中抜き」感覚で跳んでいる

 等の諸点が観察された。

③観察された,跳べる者の特徴と,跳べない者の特徴を箇条書きにまとめると以下の通りで

 ある。

 (1)跳べる者の特徴

  イ.予備踏み切り(踏み込み)がある。

  U.第1空間局面が十分にある。

  ハ.着手してから肩が少し前へ移動し,重心移動が認められる。

  二.手の突き放しがある。

  ホ.第2空間局面で,体の左右軸回転のきり返しが認められる。

 (2)跳べない者の特徴

  イ,予備踏み切りが弱い,あるいは無い。

  ロ.踏み切り足がそろっていない。

  ハ.踏み切り時に,深く沈みこんでしまう。また腰がうしろにひけてしまう。

  二.第1空間局面がない。

  ホ.着手した手の位置より,肩が前に出ない。

  へ.着手した時,頭部を腹屈する。

  ト。腕による支持が弱い

  チ.腰があまり上がらない

  リ.手の突き放しがない

一107一

Page 7: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

茨城大学教育実践研究9(1990)

4.評価基準の設定

  表3 評価基準

① 予備踏み切りの有無

② 踏み切り時の腰のひけ具合い

③ 踏み切り時に両足がそろっているか

④ 第1空間局面の有無

⑤ 着手した手の位置より,肩が前に出ているか

⑥ 腰が水平よりあがるか

⑦ 重心移動があるか

⑧ 着手時間は短いか

⑨ 手の突き放しがあるか

⑩ 着手時に頭がおきているか

 予備の調査から,本実験で,課題練習を進

めていく段階で,被験者の跳躍の状況を評価

する基準を決めた(表3)

5.本実験

1)実験の方法

   予備調査から,跳べない者の中から,特徴的な動作をみせるAグループ5名,Bグループ3

  名の被験者を決めた。Aグループは普通の跳び箱, Bグループは凹型跳び箱を使って,それぞ

  れ技術向上のための練習課題を課し,それらの課題によって,跳び方がどのように変化するか

  を観察し,凹型跳び箱の有効性について考察するものである。

表4 Aグループの練習課題

課               題 実施日① 跳び箱にいったん手をついてとびのる 198911/14

② 床上でウサギ跳びを練習してから,閉脚跳びを跳ぶ 11/21

③ 開脚跳び(縦置き)を跳ぶ 11/28

④ 閉脚でいったん台に着手して,跳び箱(縦置き)にのる 12/5

⑤ 閉脚跳び(横置き)を跳ぶ 12/12

表5 Bグループの練習課題

課               題 実施日

① 凹型跳び箱で四脚跳び 198911/16

② すき間に障害物をいれる 11/30

③ 跳び箱の前方にロープを張る 12/7

④ 着地する地点に棒を置き,それを跳び越すように指示(距離とび) 12/14

⑤ 普通の跳び箱で閉脚跳び 12/21

一108一

Page 8: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

  課題練習は,小学校課程体育授業(毎週1回授業・跳び箱の練習時間は約40分)の中で実施

 した。従って,それぞれの課題での練習は1週1回なので,全体的には5週の練習となった。

 その都度VTR撮影し,観察資料を作成した。

2)結果(表6参照)

①Aグループの結果と考察

   結果的にみて,どの被験者に対しても,それぞれの欠点を改善する良い方法はみられなかっ

  た。しかし,踏み切りから着手までの時間が十分にとれない被験者に対しては,課題③,④

  の練習が有効であると考えられた。縦置きの(馬首着手の)開脚跳びは,踏み切ってから跳

  び箱の先の方に手をつかないと飛び越すことはできないので,しっかりした踏み切りとジャ

  ンプが必要となり,結果的に第1空間局面が確保されるようになる。しかし開脚跳びは,余

  り逆位にならなくても飛び越すことができるので,縦置き跳び箱に,閉脚でとびのるという

  練習を加えることによって,閉脚跳びにおける逆位感覚を意識しながら飛ばせることができ

  ると思われた。まったく跳べない者に対しては,逆位感覚を身につけさせるためにも床上で

  の「うさぎ跳び」の練習が重要になってくるであろう。(図5,6参照)

②Bグループの結果と考察

   凹型跳び箱による練習を各課題別に考察すると以下の通りである。

  <課題1>

    着手時間が長くなっている。肩と腰が普通の跳び箱で跳んだ時より低くなっている。こ

   れは腰を上げなくても,容易に足が抜けてしまうためであると考えられる。しかし,普通

   の跳び箱で跳ぶ時と比べて肩の移動がみられる。

  <課題2>

    間に何もないものに比べると,肩や腰は上がっている。また足先が跳び箱の陰に隠れる

   部分が少なくなった。跳び箱の間に障害物を入れることによって,腰を上げようとする意

   識が生まれるためであると考えられる。

  <課題3>

    体が跳び箱を越えた時に,膝が胸の方に引き上げられる動作がみられるようになった。

   これは,腰を上げずに前方にあるm一プを飛び越そうと意識するために起こるもので,両

   手に体重をかけ,足を振り上げてから着地するというものである。そのために着手時間も

   長くなり,着地した時,重心がうしろに残ってしまう。

「CVN一\

  ノ緊∋

酬る @\墜塑なつつこみ

く3ノ て〉\

足の箭方への

振り鐵し

tw e Q

          を って

裕のある

窒闘移動

op @ o

図3跳べない者の動き 図4 跳べる者の動き

一109一

Page 9: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

繋東亜韓蝉識渦癬鞘盟⑩(お⑩O)

表6 課題別の観察結果

A-4A-3A-2被験者 Aグループー1

評価項             課題 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6

① 予備踏み切りの有無 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × ×

② 踏み切り時の腰のひけぐあい ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ ○ 不 ○ × × ○ × 不 ○ ○ ○ X × ○ ×

③ 踏み切り時に両足がそろっているか × × × × × × ○ ○ ○ ○ 参 ○ × × × × 参 X × × × × × ×

④ 第1空問局面の有無 × × × × × × ○ ○ ○ 加 ○ × × × × 加 × × × × × × ×

⑤ 肩が前に出ているか × × × × × × × 『× ○ × × × × ○ × × × × × × ×

⑥ 腰が水平よりあがるか × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × ×

⑦ 重心移動があるか × × ○ × ○

⑧ 着手時間は短いか × ○ ○ × ○

⑨ 手の突き放しがあるか × ○ ○ × ×

⑩ 着手時に頭がおきているか ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × × × × × × × × × × × ×

※6は最終テスト(閉脚とび)

※空欄は判定できず

B-4B-3B-2Bグループー1

評価項            課題 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6

① 予備踏み切りの有無 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○

② 踏み切り時の腰のひけぐあい ○ × 不 不 × ○ ○ ○ ○ ○ × ○ × ○ 不 ○ × ○ × × 不 ○ × ○

③ 踏み切り時に両足がそろっているか × ○ 参 参 × × ○ ○ × ○ ○ ○ × × 参 × ○ × × ○ 参 ○ × ×

④ 第1空間局面の有無 ○ ○ 加 加 ○ × ○ × × × ○ ○ × × 加 ○ × × ○ ○ 加 X × ×

⑤ 肩が前に出ているか ○ ○ × × ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ ○ × × × ○ ○ × ×

⑥ 腰が水平よりあがるか × × × × × × × × × × × × × × × × × × × ×

⑦ 重心移動があるか ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × ○ ○ ○ × ○ ○

⑧ 着手時間は短いか × ○ × ○ × × × × × ○ × × ○ ×

⑨ 手の突き放しがあるか × ○ × ○ × × × × ○ ○ × × ○ ×

⑩ 着手時に頭がおきているか ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

1はOl

Page 10: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

<課題4>

  課題3と同様,足の振り上げ動作がみられる。それに加え,足先が跳び箱の陰に隠れる

 部分が多くなった。また腰もあがらなくなった。これは遠くに着地しようとする意識が強

 いため,高さがなくなってしまうものと考えられる。被験者の中には,着地するまで手を

 離さない者もいた。

〈課題5>

 、課題練習を行う前の跳び方を比較すると,あまり変化がみられなかった。肩の移動や腰

 の高さ,着手時間の長さなど,結果的には,被験者の持つ,跳べない原因は改善されなかっ

 た。

6.具体的な事例観察(写真2~6)

  ビデオコピープロセッサーによる運動局面写真により,具体的な事例について観察する。写真

 2は跳べない閉脚跳びの代表的な事例,写真5は跳べる心遣跳びの代表的な事例である。比較し

て最も大きな違いは,踏み切りからの前方への体の進行にあわせて,腕による支持機能(突き放

 し)が働いているか否かである。この連続写真では明確に表現されていないが,踏み切りから着

手までの第1空間局面の大きさの違いがその支持機能の違いの要因となっている。

 写真5では,第1空聞の局面での体の投げ出し8)による体の前方への進行(局面④,⑤,⑥)

によるエネルギーを,うまく腕の突き放しに連動させているのに対し,写真2では,第1空間局

面はほとんどなく,踏み切りと同時に着手している。体の前方への投げ出しがないため,腕の突

き放しのエネルギーもなく,離鳴しないうちに,体の後方回転がおきて,台上で立位になってし

まっている。これでは跳び越すことは不可能であろう。

 写真6は,本実験とはやや場面が違う事例であるが,着手からきり返し局面の一つの好例をみ

ることができる。体の前方への強い投げ出しによる前への力を,腰のゆるめ(腰とり動作)を利

用して,うまく突き放しに連動させている(局面①,②,③④)。この時,肩角度はあまり狭

めていない。頚を十分におこして,前方回転から後方回転へのきり返しに対応している。跳び箱

運動の中核的技術である腕の突き放しは,単独的に作動するのではなく,運動の流れの中で,し

かも全身的な動きの連関の中で作動させているのである。9)

 写真3,4は凹型跳び箱での閉脚跳びの典型的事例である。写真3と2は同一被験者である。

写真3,4に共通する特徴は,着手時間が長く,いわゆる「支持壷振り」,言いかえれば「中抜

き」の様相を示していることであり,そのために,投影面でみて,足先は台のかなり下を通過し

ている。この動きは,この様な凹型跳び箱を利用する練習で,最も避けなけれぼならない傾向で

ある。

 写真4は,第1空間局面で腰があがらず,逆に胸をそらして(局面③,④),逆位になるのを

避けている。支持になるべき腕も相当に曲がっている。この被験者は,踏み切り動作でも,深く

沈みこみ,着手してから下肢を伸ばしている。これでは,踏み切りで,ジャンプカを得るのは困

難で,従って,体の前方への投げ出しも不可能であろう。金子10)は写真4の踏み切り後の体のそ

りを,恐怖心の表われと指摘している。

一111一

Page 11: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

にb。

写真2 とべなかった閉脚跳び㈹撚帽亀醤⑩ (μりΦO)

写真3 凹型跳び箱での欝欝跳び

Page 12: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

一お

@ @ @ @ @

写真4 凹型跳び箱での閉脚跳び

@ @ (i)

@ @ @ @ @ @

写真5 閉脚跳び

@ @ @ @

慰籍鈍誉一醗輝輝竪a寒暑㊥呂腿燈牌

Page 13: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

は蒔一

@ @

@ @   @     @

写真6 大きな跳躍の総総跳び

@ @

蔦》態弊覇隔辮報奨Φ(お8)

Page 14: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

ま  と  め

 凹型跳び箱は,本来,跳び箱に対する障害感不安感を感知しながら,丁丁跳びが跳べるように

なるために,その跳べない原因を改善するよう工夫されたものであるが,今回の実験では,その有

効性を認めるには至らなかった。特に閉脚跳びで大切な体の回転のきり返し,腕の突き放し動作が,

凹型跳び箱を使うことによって,見られなくなってしまうことになり,その結果,着手時間が長く

なり,いわゆる中抜き動作を助長してしまうという,最大の欠点を進行させてしまった。

 確かに聞をあけることによって,跳べない人が,跳べたという感覚を味わうことができるという

役割を果たすことは確かであるが,その練習方法を十分に検討しないと,単に器械条件を低下させ

るだけで,閉脚跳びの技術習得には,ほとんど役に立たないということになってしまう。

 このような器械条件の緩和による学習方法の背景にあるものは,金子11)の指摘にあるように,

「障害物である跳び箱を飛び越して克服するという考え」であり,現行学習指導要領によって特性

づけられた「器械:運動克服論」である12)。今日の実験において,閉脚跳びが跳べなかった者でも,

台をまたぎ越す,いわゆる開脚跳びを跳んでいる現実をみると,金子13)が言うように,低い障害物

をまたぎ越すことから出発する跳び箱の学習は,いわば公式化されていて,このような克服的運動

認識からは,第2空聞局面を保証する手のジャンプの方法は現われてこない。この認識に立つと,

閉脚跳びは,きり返し跳び(金子の記述では,反転とび)の入門的技術背景の中にあると考えなけ

れぼならない。阪田1臼ま,横置き跳び箱での三脚跳びの在り方を指摘して,縦置きと比べて,横置

きでは,「脚を抜く」という認識が前面に出やすい(事実,氏の指導でも,そのように考えている

学生が多いと指摘)として,「やさしいものからむずかしいものへ」とか「安全に行う」という指

導上の配慮からきた「横置き」も,跳び箱運動の特性を十分に踏まえなければ,運動の本質を無視

した指導に陥ると注意している。

 今回の実験では,跳び越すということ,また第2の空間局面を大きくするということを企図して,

いくつかの条件を設定した課題練習方法を試みたが,結果的には,凹型という条件緩和からくる

「安易さ」から抜け出すことはできず,方法論的にかなりの問題を浮き立たせることになった。今

後の課題としては,着手動作そのものに対する方法論的な検討が必要であると考える。その一つの

方向として,今回の練習でも取り入れたが,金子15)も,運動レディネスとして協調している,支持

跳躍の基礎技能の在り方,方法論的な検証を試みたいと考えている。(図5,6)

co en N   N ab          昌前のラインを越える

。    e     答

σ隊    露

@ en

八〉

7

手荊懸手 先蟷とびのり

図5 支持跳躍の基礎技能(文献10参考) 図6 支持跳躍の基:礎技能(文献10参考)

一エ15一

Page 15: ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポ …ir.lib.ibaraki.ac.jp/.../10109/12162/1/CSI2012_1716.pdf三浦ほか:閉脚跳びに対する凹型跳び箱の効果

茨城大学教育実践研究9(1990)

1)高橋健夫,林恒明,藤井喜一,大貫$#一一編著「マット運動の授業」『体育科教育』第36巻,第

 4号(1988),22-23

2)高橋健夫,林恒明,藤井喜一,大貫耕一編著「鉄棒運動の授業」『体育科教育』第37巻,第5

 号(1989),28-29

3)高橋健夫『新しい体育の授業研究』(大修館書店,1989),42-43

4)高橋健夫,林恒明,藤井喜一,大貫耕一編著「とび箱運動の授業」『体育科教育』第36巻,第13

 号(1988),88 一 89

5)細田栄太郎「器具用具の工夫」『学校体育』第42巻,第4号(1989)口絵

6)菅原好雄「とび箱運;動(遊び)が容易になる補助具の工夫」『学校体育』第40巻,第3号,ロ

 絵

7)三浦忠雄,大山智子「跳び箱運動の着手技術に関する指導方法論的研究」『茨城大学教育実践

 研究』第8号(1989)95-108

8)高橋健夫,前掲書,41・一43

9)中島光広,太田昌秀,吉田茂,三浦忠雄『器械運動指導ハンドブック』(大修館書店,1979),

 129-131

10)金子明友『とび箱・平均台運動』(大修館書店,1987),70-71

11)金子明友,同書,122

12)三浦忠雄「器械運動の改訂内容と問題」『学校体育』第42巻,第4号(1989),31-35

13)金子明友,前掲書,122

14)阪田尚彦『体育の授業と教授技術』(大修館書店,1990),18-22

15)金子明友,前掲書,113,123-124

一116一