petct 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する 研究背景 第1章 1-1.PET/CT 検査とは 1-1-1.PET/CT 検査と他の医用画像検 査との違い 1-1-2.PET,MRI 等医療検査の普及状況 1-2.PET 等画像診断検査の問題点 1-2-1.患者の声、現場の声 1-2-2.国立国際医療センターの事例 1-3.PET 等画像診断検査の新しい動き 1-3-1.開口付きの検査室 1-3-2.天井にイラスト 1-3-3.壁面に工夫 Research Background Chapter 1

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2011,卒業論文,村元萌,

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Page 1: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

研究背景第1章

1-1.PET/CT 検査とは 1-1-1.PET/CT 検査と他の医用画像検      査との違い 1-1-2.PET,MRI 等医療検査の普及状況

1-2.PET 等画像診断検査の問題点 1-2-1.患者の声、現場の声 1-2-2.国立国際医療センターの事例

1-3.PET 等画像診断検査の新しい動き 1-3-1.開口付きの検査室 1-3-2.天井にイラスト 1-3-3.壁面に工夫

Re sea r ch B a c kg roundC h a p t e r 1

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第1章 研究背景

009

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

1-1.PET/CT

検査とは

1-1.PET/CT 検査とは

 1-1-1. PET/CT 検査と他の医用画像 検査との違い PET とは、positron emission tomography ( 陽電子放出断層撮影 ) の略で、放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種である(図 1-1-a)。放射性薬剤を体内に取り込ませ、放出される放射線をカメラでとらえて画像化する。コンピュータ断層法(CT)などの画像検査では、通常、頭部、胸部、腹部などと部位を絞って検査を行うが、PET 検査では、全身を一度に調べることが出来る。(図1-1-b)核医学検査は、使用する薬により、さまざまな目的に利用されるが、現在 PET 検査では大半がブドウ糖代謝の指標となる 18F-FDG という薬を用いた "FDG-PET検査 " である。 これは、CT 検査などでは形の異常を診るのに対し、PET 検査では、ブドウ糖代謝などの機能から異常を診ているからである。臓器のかたちだけで判断がつかないときに、働きを診ることで診断の精度を上げることができる。

図 1-1-a.PET 検査装置(※1)

  

       

図1-1-b.PET による正常な全身画像(※2)

※1 名古屋第一赤十

字病院

http://www.nagoya-1st.

jrc.or.jp/

※ 2 国立国際医療セ

ンター放射線科核医学

ht t p : / /www. n c gm .

g o . j p / s o g o a n n a i /

housyasen/kakuigaku/

index.html

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第1章 研究背景

010

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

1-1.PET/CT

検査とは

 PET 検査は、通常がんや炎症の病巣を調べたり、腫瘍の大きさや場所の特定、良性・悪性の区別、転移状況や治療効果の判定、再発の診断などに利用され、更にはアルツハイマー病やてんかん、心筋梗塞を調べるのにも利用される。下記の病気で、この検査が必要とされる条件を満たす場合には、健康保険が適用される。

FDG-PET 検査の保険適用(2010 年 4月改定)• てんかん• 狭心症や心筋梗塞による心不全• 早期胃癌をのぞく、すべての悪性腫瘍 他の検査や画像診断により病期診断、転移・再発の診断ができないときなどの条件が定められている。

 1-1-2.PET,MRI 等医療検査の普及状況 PET,MRI 等の医用画像を用いた医療検査は、近年、機器の進歩が著しく特に、コンピューター断層撮影(CT)をはじめとして、広く普及してる。これらの検査装置は、非常に高価な医療機器だが、他の先進諸国と比べ、日本はこうした機器の普及率が群を抜いて高いのが特徴である。この理由の 1つとして、機器の導入に関して国による統制的な規制が取られていないため、病院間の競争が機器の普及を後押ししていることがあるとみられている。 経済協力開発機構(OECD)が参加 30カ国に対し、2年に 1回実施している調査の結果によると、日本における、人口 100万人当たりの CTやMRI の導入状況は、米国や英国など、他の先進諸国より圧倒的に高いことが分かる。(図1-1-c)全参加国の導入状況の平均をみると、CTは 13.3 台(日本は 92.6 台)、MRI は 5.5 台(日本は 35.3 台)となっている。

図1-1-c.国別の画像診断器の普及状況(※2)

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第1章 研究背景

011

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

また、全身を一度に調べられ、予想外のがんの発見に威力を発揮することから、がんの可能性が疑われながら他の検査で病巣が発見できない " 原発不明癌 " の診断や、がんの転移・再発を調べるのに特に重要な検査とされている。(図 1-1-d)近年この特性を利用して、全身のがんのスクリーニング(ふるい分け)を主な目的とする "PET 検診 " が注目され、人間ドックのオプション検査として受けられるところも増えてきている。

図 1-1-d.癌の成長過程(※3)

1-1.PET/CT

検査とは

※3 PET 検査ネット

http://www.pet-net.jp/

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第1章 研究背景

012

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

1-2. PET 等画像診断検査の 問題点 1-2-1.患者の声、現場の声 医療技術の進歩と共に普及してきているこれらの検査だが、技術的な面とは別に様々な問題を抱えている。特に、患者へのケアが必要とされるのが、閉所に対して不安を覚えるケースへの対応だ。非日常的な空間であることに加えて、身体を拘束され狭い機械の中へ仰向けの状態で入っていくことに、強い恐怖心を覚える患者が非常に多く、検査を拒否する場合も少なくないのが現状である。 そもそも、一般に「恐怖症」と呼ばれる自覚症状を持つ人は日本の全人口の約4割前後であり、そのうち治療を受ける人はその5%にも満たないと報告されている。女性のほうが男性の2~3倍多いこともわかっており、大部分のケースでは、発症は小児期とされている。  更にその中で「閉所恐怖症」は意外に多い症状で、基本的には特定の恐怖症 ( 単一恐怖症 ) とパニック障害に引きつづく広場恐怖の二つの病気に引き続く症状と考えられる。 MRI や PET などの類似した機械を使う検査の場合、普通の人であれば狭い穴の中に入れられてうるさい音を感じるだけだが、閉所恐怖症の人は恐怖心から途中で検査を中断する場合もあるので、事前の問診で閉所恐怖症と判明した人については、医療機関側が検査を拒否するケースもある。必要に応じて精神安定剤の点滴投与をして、眠っている間に検査をする医療機関もあるが、閉所恐怖症とまではいかなくともこの様な検査に漠然とした不安感を覚える人に対しての措置はとられていない。閉所恐怖症の疑いのある人を含め、その割合は、MRI の検査現場では5~10パーセントともいわれているにも関わらず、現場では対応に困難をきたしている。

 1-2-2.国立国際医療センターの事例 国立国際医療センターでは、早くから PET 検査を放射線科で取り入れ、その歴史は 1980 年の医療センターの前身の国立中野療養所にさかのぼる。1993 年現在の病院に統合・移転後PETは 1995年に再開され、2003年に着任した窪田和雄によって様々な改革が行われてきた。2005 年より新しい PET-CT、SPECT が稼働し、待機室の整備など施設を改修し、2008 年より新しい癌の骨転移の疼痛緩和治療、ストロンチウム 89(メ

1-2.PET等画像診断検査の問題点

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第1章 研究背景

013

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

タストロン)の内用療法を始めた。また、2010 年より血液内科と共同で悪性リンパ腫の新しい核医学治療をはじめるなど、常に意識の高い臨床を心がけていた。現在では、年間検査数は2000 件以上にのぼり、その数からも窪田先生をはじめ国立国際医療センターの放射線科は核医学会の中でも患者からも信頼が厚いことが伺える。(図 1-2-a)

図1-1-a.国立国際医療センターの年度毎PET及びシンチグラフィの検査数(※2)

 しかし、窪田医師も閉所恐怖を訴える患者の存在に気付いており、対応に頭を悩ませていたという。以下、その取り組みについて:

 MRI に対する閉所恐怖を訴える声が最近顕著に聞かれていますが、PET についての現状はどうか?

〈国立国際医療センター 窪田医師(以下 窪田)〉☜䛛䛻䚸 㻹㻾㻵 ⛬䛾㛢ሰឤ䜔㦁㡢䛿䛺䛔䛸䛥䜜䜛 㻼㻱㼀 ᰝ䛰䛜䚸

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 今回、どういった経緯で PET 検査室の改装を決断したのか?〈窪田〉 㻞 ᐊ䛒䜛 㻼㻱㼀 ᰝᐊ䛾䛖䛱䚸 㻝 ᐊ䛾ᰝᶵᲔ䜢⥲ධ䜜䛘䛩䜛

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1-2.PET等画像診断検査の問題点

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第1章 研究背景

014

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

1-2.PET等画像診断検査の問題点

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この計画について、どの様な効果を期待しているか?

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〈村元〉何か懸念していることはあるか。

〈窪田〉ே䛻䚸䝕䝄䜲䞁䛾䛒䜛ᰝᐊ䛜䛔䛔䛸䛿㝈䜙䛺䛔䚹 䛭䛣䜒䜑䛶䚸

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図1-2-b.検査室にイラストを施した事例:あいち小児保険医療総合センター(※4)

※4 あいち小児保健

医療総合センター

http://www.achmc.pref.

aichi.jp/

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第1章 研究背景

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

図 1-2-c.イラストを加えた検査室(デザインあり)

図 1-2-d.改装する前の検査室(デザインなし)

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第1章 研究背景

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

1-3.PET 等画像診断検査の   新しい動き 国立国際医療センターでの事例の様に、近年 PET やMRI などの検査の普及にともない、これらの類似した機材を使用する検査に対する恐怖・不安に対する対策の事例は世界各地で増えている。PET はここ数年で普及し始めたため、まだ工夫の多い事例少ないが、MRI に関しては定着の歴史も長くなっており、様々な工夫が見られる。参考までのそのいくつかのパターンを紹介する。

 1-3-1.開口付き検査室 MRI は磁気を用いるため、基本的には壁や床などシールドの役割が必要となる。そのため閉鎖的な空間印とならざるを得ない。そこで「閉鎖的」な印象を与えないように、鹿島建設ではガラス面を利用しつつシールドが可能が技術が開発された、という事例もある。(図 1-3-a・1-3-b)PET での事例はまだあまり見られないが、放射性物質を使用する PET の検査室もシールドルームであるため、当然開口部はない。従って、この様な試みが今後増える可能性は大いに考えられる。 しかし、「開放的」というのは、閉所恐怖に対する一つの方策ではあかもしれないが、ガラスを用いた空間であれば不安が軽減されるのかどうかは不明なままだ。 

図1-3-a.鹿島建設提案のシースルー検査室(※5)

(岩手県予防医学会人間ドックセンター)

図 1-3-b.シースルー検査室の事例(森之宮病院診療技術部画像診断科)(※6)

1-3.PET等画像診断検査の新しい動き

※5 鹿島建設

http ://www.ka j ima .

co.jp

※6 大道会グループ

http://www.omichikai.

or.jp

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第1章 研究背景

017

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

 1-3-2.天井にイラスト PET や MRI の場合、撮影している間患者は機械の台の上に仰向けになり、終始天井を眺めていることになる。この特徴を活かして、天井に工夫をこらす事例も多い。検査室全体を改装する必要がないことや、患者の目に一番触れている部分に効果的にアプローチすることが出来るのが利点と考えられる。(図1-3-c・図 1-3-d)

図1-3-c.天井に工夫を凝らした事例1:

くどうちあき脳神経外科クリニック(※7)

図 1-3-d.天井に工夫を凝らした事例2:

さとう脳外科クリニック(広島県:山晴建設(株)施工)(※8)

※7 株式会社日立メ

ディコ

http://www.hitachi-

medical.co.jp/

※ 8 山晴建設株式会

http://www.sansei-34.

co.jp/index.html

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第1章 研究背景

018

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する

 1-3-3.壁面に工夫 検査室の嫌悪感は、入った時の第一印象で決まるとも考えられる。特に、根拠のない恐怖感に苛まされる人は、苦手意識から恐怖心を感じている場合も少なくない。その悪い印象を払拭するためにも、入室時の第一印象を変えるために、壁面のデザインを大胆に変えてみるなどして、検査室らしくない雰囲気を出すための工夫が凝らされた事例も数多く存在する。(図 1-3-e・図 1-3-f)

図 1-3-e.壁面に工夫を凝らした事例1:くろき脳神経クリニック(※9)

図 1-3-f.壁面に工夫を凝らした事例2:University Medical Imaging(※10)

※9 くろき脳神経ク

リニック

h t t p : / / k u r o k i n c .

at.webry.info/200802/

article_7.html

※ 1 0 U n i v e r s i t y

Medical Imaging

http ://umimri .com/

patients.html

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

研究概要第 2 章

2-1.研究目的

2-2.語句の定義

2-3.仮説

2-4.研究フロー

2-5.研究の位置付け

Re sea r ch b r i e fC h a p t e r 2

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第2章 研究概要

020

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

2-1.研究目的

 病院は患者にとって不安に感じる場所の一つである。近年、空間計画の面から、待合室や診療室などの不安を解消する工夫がなされている。しかし検査室に関しては、単に検査機の設置場所として捉えられ、そこで検査を受ける患者の視点からみれば、恐怖や不安を生じる場所となっていることも多いのが現状である。 そこで本調査では、特に検査機の特性から空間的不安・恐怖感が訴えられている、PET/CT 検査室を取り上げ、内装の違いにより検査を受ける患者への心理的影響を明らかにし、不安感低減のためのデザイン評価の指標となることを目的とする。

2-1.研究目的

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第2章 研究概要

021

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

2-2.語句の定義2-2.語句の定義

 以下、本研究で使用した語句の定義である。

  ■不安感 日常生活において、特定の状況や場所、物事に対して心配になったり、恐怖を感じたりすること、またその様。また恐怖とも期待ともつかない、何か漠然として落ち着かない心的状態にあるときに感じるものを指す。本調査では、PET/CT 検査室に対する心配な感情、及び PET/CT 検査室全体を通して患者の心配の対象となるもの全てへの感情を不安感と表現する。

  ■不安度 上記の「不安感」を、アンケート調査によって定量化したものを指す。「不安感」が漠然とした不安であるという状態の感情を指すのに対し、「不安度」はそれを具体的に数値で表した度合いのことをいう。

  ■ PET/CT 検査 ポジトロン断層法(ポジトロンだんそうほう、positron emission tomography)の略で、陽電子検出を利用したコンピューター断層撮影技術である。CTやMRI が主に組織の形態を観察するための検査法であるのに対し、PET は SPECT など他の核医学検査と同様に、生体の機能を観察することに特化した検査法である。国立国際医療センターでは、PET と CT を同時に行うことができる複合機を用いているため、検査は一般的にこの名称で呼ばれる。

  ■検査 PET/CT 検査において、検査とは受付をしてから撮影が終わるまでの全行程を指す。調査の対象を、PET/CT 検査室にいる時だけでなく全ての行程を経る段階に設定しているためこの語句を用いる。

  ■撮影 検査に対して、撮影とは実際に PET/CT 検査室内で装置を用いて画像撮影をする行程を指す。今回調査対象である PET/CT検査室とは、この撮影時に利用する部屋のことを指す。

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第2章 研究概要

022

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

2-3.仮説

2-3.仮説

 壁面及び PET 装置にイラストが施された検査室を利用した患者の方が、検査後の不安感が低減している。また、この仮説を調査するにあたって、検査室のデザインの心的効果を明らかにする。

図2-3-a.研究概念図

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第2章 研究概要

023

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

2-4.研究フロー2-4.研究フロー

 本研究は以下のフローで行った。 まず、空間と不安の関連性という視点からMRI 検査における閉所恐怖について考え、一方で不安と強く連動すると思われる「安心、安全」のメカニズムについて基礎研究を行った。 次に、実際に現場を見学した上で問題点を抽出し、アンケート作成に取りかかった。その上で、アンケート構成の大枠を「不安」「気分」「印象評価」をいう3軸で考えた。 得られた結果の分析は、デザインの有無をベースに男女別、年齢別と考えられるパターンから有為な差が現れたものについて詳しく分析を進めた。

図2-4-a.研究フロー図

不安の時系列的計測

検査室改装終了

デザインの効果

男女別 不安要素別

基礎研究

PET 検査での恐怖の分類

PET,MRI 検査における閉所恐怖

現場視察・写真撮影

現場スタッフへのヒアリング

計画予定図面参照

気分評価/印象評価

アンケート作成

アンケート調査実施

アンケート結果集計

分析

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第2章 研究概要

024

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

2-5.研究の位置付け 図 2-5-a に、本研究の位置付け図を示す。 本研究は、病院建築に関する研究の中でも、PET/CT 検査室という特殊な空間の内装が人間の心理に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。そのため、これまで既往の研究でなされてきた待合室や診察室といった誰もが訪れる空間ではなく、特殊な検査を行うために訪れる空間を取り扱う。また、これまで病院建築計画の研究で考えられて来た環境工学や建築計画の分野とも違い、人間行動学に基づいた建築と心理の関連を解き明かす。

診察室

待合室

MRI 検査室

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)(6)

(7)

・・・ 環境工学

・・・ 心理学

・・・ 建築施工技術

本研究

病室 (8)

病院建築の研究

図 2-5-a.研究位置付け図

(1)「千葉県の病院外来部待合空間に設置された 植物の現状調査と評価に関する研究」上野 勝・岩崎 寛(千葉大学大学院園芸学研究科)、2009(2)「病院の照明 (< 特集 >小店舗の照明デザイン )」手塚 昌宏、1999(3)「病院待合室の音環境に関する研究」豊増 美喜ら、2004(4)「アンケート調査ならびに環境測定からみた病院歯科診療室の快適性」米永 哲朗ら、1998(5)「病院内の色彩計画における原色利用の可能性-医療福祉施設における色彩計画の建築計画的研究-」大竹 さつきら、2003(6)「ストレス関連疾患病棟の空間構成に関する研究-不知火病院・海の病棟における病気回復と空間構成の相関について」前田 圭子ら、2003

(7)「シースルーMRI 検査室」安村 茂、2008

(8)「病室における木材が人体に与える影響」西垣 康広、2009

2-5.研究の位置付け

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

PET 検査室における不安感の調査第3章

3-1.検査行程について 3-1-1.検査のフロー 3-1-2.検査中に想定される不安の分類

3-2.調査方法 3-2-1.STAI 3-2-2.短縮版 POMS 3-2-3.検査に対する不安アンケート 3-2-4.検査室の印象評価(SD法)

3-3.調査のフロー

3-4.調査内容 3-4-1.調査概要 3-4-2.アンケート内容

Re sea r ch abou t unea s i ne s s i n P ET e x am ina t i on r oom

Ch a p t e r 3

Page 19: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第3章 PET 検査室における不安感の調査

026

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-1.検査行程について 3-1-1.検査のフロー

 図(図3-1-a)の手順でPET検査が行われていく。そのうち、「受

付・待ち合い」「待機」「検査終了」の 3箇所でアンケート調査

を依頼した。各工程について詳しく説明していく。また、同時

に核検査行程で考えられる患者の不安や恐怖を列挙して、後に

それを分類することで検査を受ける患者の不安感の理解を深め

ることとする。

3-1.検査行程について

0. エントランスホール

①受付

②待合室

③中待合室

④更衣室

⑤投与室

⑥待機室

⑦PET 室Ⅰ

⑧PET 室Ⅱシンチグラフィ

検査室

操作室

受付 ・待ち合い

着替え

造影剤投与

待機

PET 撮 影

検査終了(1時間) (30 分

~ 50 分)

図 3-1-b.国立国際医療センター放射線科平面図

図 3-1-a.検査のフロー図

Page 20: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第3章 PET 検査室における不安感の調査

027

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-1.検査行程について

  ■ 受付・待ち合い PET 検査を受ける全ての患者は、図 3-1-b の「①受付」で受付を済ませたあと、「②待合室」(図 3-1-c)または「③中待合室」(図 3-1-d)に通され、検査の順番を待つ。このタイミングで、アンケート対象者に研究・及び調査内容の説明をし、同意書に記入してもらう。アンケート1も同じ場所で記入を済ませてもらい、検査開始を待つ。

図3-1-c.待合室

図 3-1-d.中待合室

〈想定される不安感〉・何をされるか分からない。いつもとは違った手順に戸惑う。・なされるがまま感

〈想定される安心感〉・同じ境遇の人がいる。

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第3章 PET 検査室における不安感の調査

028

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

  ■ 着替え 図 3-1-b の「④更衣室」で検査着に着替える。ただし、本人が軽装であるまたは検査の撮影部位が普段着でも支障のない場合、この行程を省く場合もある。

〈想定される不安感〉・検査着の無防備感

   ■ 造影剤投与 着替えが終わると、荷物をカートに乗せ「⑤投与室」(図3-1-e)へ移動し、撮影にあたって必要なブドウ糖と放射性物質を投与する。

〈想定される不安感〉・注射自体・関係のない医薬品の存在が、非日常感を増長させる。・いよいよ検査が近づいてきたという緊迫感。

図 3-1-e.投与室

  ■ 待機 造影剤が全身に行き渡るまで、およそ1時間の時間を要する。この間、患者は「⑥待機室」(図 3-1-f)という個室で待機し、自由に時間を過ごす。この待ち時間を利用して、アンケート2に回答してもらった。

〈想定される不安感〉・長居待ち時間に不安が募る(時計がない)・ニュークリアーマーク(法律上定められている)・次に怒る検査について考えてしまう(検査器を見ていない)・検査結果への不安

3-1.検査行程について

Page 22: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第3章 PET 検査室における不安感の調査

029

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

〈想定される安心感〉・万一の時のためのモニタリング  

図3-1-f.待機室

 ■ 撮影 PET / CT の撮影は、「⑦ PET 検査室Ⅰ」(図 3-1-g)または「⑧PET 検査室Ⅱ」(図 3-1-h)で行われ、検査の部位により20分~50分程かかる。患者は台の上に仰向けになり、撮影時に体が動いてしまわない様、バンドと毛布で固定される。撮影の最中、医療スタッフは検査室より退出し、隣にある「操作室」にて機械を操作し、マイクを使って患者に随時話しかける。

図 3-1-g.デザインありの検査室

図 3-1-h.デザインなしの検査室

3-1.検査行程について

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第3章 PET 検査室における不安感の調査

030

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 〈想定される不安感〉・初めて見る検査機に戸惑い・検査中一人にさせられること・劣悪な環境(騒音、身体の固定、機械のための空調、無機質な空間)・いよいよ機械に入る緊張感

 ■ 検査終了 撮影が終わり、処理された画像の簡単な確認が済むと、患者は「④更衣室」にて再度着替えを済ませ、検査終了となる。アンケート対象患者は、この際もう一度「①待合室」に戻ってアンケート3に記入をしてもらい、「受付」で返却した後、検査終了となる。

〈想定される不安感〉・自分んお病名が明らかになること

3-1.検査行程について

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第3章 PET 検査室における不安感の調査

031

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 3-1-2.検査中に予想される不安の分類 検査行程中に挙げられた様々な不安感を、不安の種類で分類したものが図 3-1-i である。

   表 3-1-i.検査行程中に想定される患者の不安の分類 

  表の様に、検査中の不安は全部で4つのタイプで分類することが出来た。検査手順に関する不安、非主体感による不安、病気・検査そのものに対する不安、無機質さによる不安の4つである。中でも、部屋から部屋へ移動させられたり、着慣れない服装に着替えさせられたりすることなどによる、非主体感によるものがある。時間が分からないことも不安を煽る要因となり、これらを改善するために、例えば待機室に時計に替わるものをデザインしたり、検査の様子の映像を見せる事も出来る。

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3-1.検査行程について

Page 25: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第3章 PET 検査室における不安感の調査

032

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-2.調査方法 今回、検査室における不安感を調査するにあたって、撮影が行われる検査室での不安度だけを調査することは困難と思われ、また一連の検査の過程での不安の推移を調査する必要があると考えた。その結果、様々な観点から複数の心理テスト及び調査法を用いてアンケートを作成した。

 

3-2.調査方法

Page 26: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第3章 PET 検査室における不安感の調査

033

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 3 -2 - 1 . S TA I ( S t a t e - T r a i t Anx i e t y Inventory-Form JYZ) 『新版 STAI(STAI-JYZ)』(※1)の項目は、英語版『STAI(Form Y)』の項目を翻訳し、更に状態不安、特性不安についての日本の文化に見合う新しい項目を加え、精巧な統計的プロセスを用いて因子構造を検討し、さらに状態、特性という2つの不安尺度について心理測定の特性の視点から、不安存在および不安不在の下位尺度となりうる最も適切な項目を選択した心理テストである。 (図 3-2-a)不安存在および不安不在の項目数を等しくした点で『STAI-JYZ』は概念的にも、方法の上でも、『STAI(Form Y)』より進んだものとなっている。 不安存在と関連したネガティブな感情と不安不在を示すポジティブな感情を測定する下位尺度を独立に作成したことにより、不安における重要な2つの構成要素を識別することができます。このことによって、『新版 STAI』は状態不安と特性不安について慎重な測定を可能にした。加えて、それぞれの尺度における不安の存在と不在を示す感情を測定する下位尺度を備えている。 本調査では、患者がその時おかれた状況により変化する状態不安のテストである STAI Y-1 をアンケート1・2・3のそれぞれで実施し、また患者が普段潜在的に抱えている不安度を調べる特性不安のテストである STAI Y-2 はアンケート2で実施した。

3-2.調査方法

図 3-2-a.STAI-JYZ のアンケート原本(出店;実務教育出版「新版 STAI」

(※1)出典:実務教育出

版「新版 STAI マニュアル」

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第3章 PET 検査室における不安感の調査

034

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 3-2-2.短縮版 POMS    (Profile of Mood States) POMS(Profile of Mood States)(※2)は、気分を評価する質問紙法の一つとして、McNair らにより米国で開発され、対象者がおかれた条件により変化する一時的な気分、感情の状態を測定できるという特徴を有している。また、「緊張-不安(Tension-Anxiety)」「抑うつ-落ち込み(Depression-Dejection)」「怒り-敵意(Anger-Hostility)」「活気「Vigor」」「疲労(Fatigue)」「混乱(Confusion)」の6つの気分尺度を同時に評価することが可能である。(図 3-2-b)今回は、不安に類似した項目は取り除き、検査後の活気度と疲労度着目して「活気」と「疲労」の尺度についてのみを、撮影の前後のアンケート2及び3で実施した。 日本語版 POMS短縮版は、精神障害(うつ病・不安障害など)の治療経過、身体疾患をもつ人々の精神面の変化、職場でのスクリーニング、運動やリラクゼーション効果などの評価測定といった幅広い分野での応用することを目的に作成された。そのため医療者だけでなく、看護、福祉、教育関係専門家、産業医、雇用決定担当者、スポーツ医学研究者や指導者、フィットネス関係者などの健康に関わるあらゆる人々による使用を意図している。短縮版の特徴としては、65項目版と同様の測定結果を提供しながらも、項目数を30に削減することにより対象者の負担感を軽減し、短時間で変化する介入前後の気分、肝要の変化を測定することが可能であることが挙げられる。

図3-2-b.POMS を使った測定の事例:白山麓健康体験 モニターツアー前後にお

ける参加者の気分評価

3-2.調査方法

白山の恵み

hakusan-no-megumi.jp/

monitortour5.php

(※2)出典:金子書房、

POMS 短縮版 手引きと

事例解説

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第3章 PET 検査室における不安感の調査

035

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 3-2-3.検査に対する不安アンケート 「3-1.検査行程について」で前述した、検査行程中に想定される患者の不安の分類を元に、その中でも段階を経て最も顕著に表れると考えられるものを対象に、独自の質問紙法によるアンケート調査も行った。検査の7つの過程や障害となりうるものに関して、どの程度不安に感じるかを問うアンケートになっている。質問は以下の通りである。

次の項目について、どの程度の不安を感じますか?①検査着に着替える②注射を打つ③検査に放射性物質を使用する④検査時間が長い⑤ PET/CT 検査室に入る⑥ PET/CT 検査の装置に入る⑦検査中、体が固定される

 被験者は、これらの質問項目について 5段階で回答する。このアンケートの目的は、検査室に対する直接の不安と検査の行程やそれ以外の要因の不安の変動とを区別することである。また、検査のどの過程でより不安が大きくなるのかも調査することが出来る様に、全てのアンケートにて実施する。

3-2.調査方法

Page 29: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第3章 PET 検査室における不安感の調査

036

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 3-2-4.検査室に対する印象評価(SD法) 本調査では、患者の不安や気分の推移に加えて、検査室に対する直接的な評価が必要と考えられたため、20の形容詞対を利用した印象評価を行った。この調査では、それぞれの検査室を利用した患者が検査室のどの様な印象を持ったか、具体的な言語化をはかることで分析に役立てられると予想した。以下が調査に使用した形容詞対であり(表 3-2-a)、また選択肢は5段階とした時にどちらの形容詞により近いか、という評価基準とした。

  表 3-2-a.検査室に対する印象評価で使用した形容詞対一覧

明るい 暗い広い 狭い

開放された 閉鎖された整然とした 雑然とした親しみやすい 親しみにくい落ち着いた 落ち着かない軽やかな 重苦しい陽気な 陰気な無機的な 有機的な柔らかい 堅いうるさい 静かな粗野な 洗練された豪華な 質素な不快な 快適な

安心感のある 不安感のある楽しい 退屈な面白い つまらない多彩な 無色な清潔な 不潔な日常的な 非日常的な

3-2.調査方法

Page 30: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第3章 PET 検査室における不安感の調査

037

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-3.調査のフロー 以上を踏まえて、検査行程と調査のフロー図を作成すると図(図 3-3-a)の様になる。

 また、アンケートの内容とともに、アンケート2では被験者が使用する予定の検査室の写真を提示する。これは、写真を見ることで検査室の空間を想像しやすくなり、不安感が低減するという予想と、検査室の調査であるということを被験者に意識づけるという2つの意図がある。 写真による情報提示の具体的な方法については、巻末の資料編のアンケート原本を参照のこと。

3-3.調査のフロー

受付・待ち合い

着替え

薬剤投与

待機

PET/CT 撮影

検査終了

〈検査の流れ〉 〈アンケートの構成〉

STAI

Y-1

STAI

Y-2

POMS

印象評価

安アンケー

アンケート1

アンケート3

アンケート2STAI

Y-1

STAI

Y-2

POMS

印象評価

安アンケー

STAI

Y-1

STAI

Y-2

POMS

印象評価

安アンケー

ト図 3-3-a.調査フロー図

Page 31: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第3章 PET 検査室における不安感の調査

038

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

3-4.調査内容

 3-4-1.調査概要・ 日時:平成23年8月30日~10月14日・ 場所:国立国際医療センター放射線科核医学棟・ 被験者:PET/CT 検査を受験する20~80代の男女・ 被験者数:55名・ 調査内容:紙面アンケートによる検査中の患者の不安推移

 3-4-2.アンケート内容 以下に実際に使用したアンケート及び質問番号と、その内容の対応を一覧にする。アンケート及び質問番号の詳細は、資料編の「アンケート原本」参照のこと。

   表.アンケート番号、質問番号、質問内容の対応一覧表

3-4.調査内容

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Page 32: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

調査結果第 4 章

4-1.全体統計 4-1-1.デザイン別統計 4-1-2.年代別男女統計 4-1-3.デザイン別男女統計

4-2.STAI 集計結果 4-2-1.質問項目及び選択肢について 4-2-2.標準得点算出方法 4-2-3.各被験者の結果 4-2-4.パターンと傾向

4-3.短縮版 POMS集計結果 4-3-1.6つの気分尺度と質問項目 4-3-2.標準化得点算出方法 4-3-3.各被験者の結果 4-3-4.パターンと傾向

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果 4-4-1.質問項目と選択肢について 4-4-2.得点算出方法 4-4-3.各被験者の結果 4-4-4.パターンと傾向

4-5.SD 法による検査室の印象評価 集計結果 4-5-1.形容詞対について 4-5-2.各被験者の結果 4-5-3.傾向

Re su l t sC h a p t e r 4

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第 4章 調査結果

040

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-1.全体統計4-1.全体統計

 4-1-1.デザイン別統計 今回、被験対象者は 20 代から 80 代の男女とし、属性としては性別・年齢・特性不安得点に分けられる。(特性不安得点については、「4-2.STAI 集計結果」参照のこと。)表 4-1-a.が、被験者の一覧である。

      表 4-1-a.被験者一覧

Page 34: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

041

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-1-2.デザイン別男女統計 本調査の被験者総数は 55名、うち改装されたデザインありの検査室(以下、デザインあり)を利用した患者は 26名、改装していない通常のデザインなしの検査室(デザインなし)を利用した患者は 22 名、無回答が7名であった(表 4-1-a、図4-1-a)。

表4-1-b.デザイン別男女総数

  図 4-1-a.デザイン別被験者統計

 

4-1.全体統計

40%

47%

13%

(22名)

(26名)

(7名)

Page 35: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

042

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-1-3.年代別男女統計 次に、年代別で男女の総数を比較していく。年代別で見ていくと、20 代が女性1名、30 代が男性 1名女性2名、40 代が男性 4名女性 3名、50 代が男性7名女性 6名、70 代が男性6名女性4名、80代が男性 1名であった。(図 4-1-b) デザイン毎の年代別男女統計は表の様になっている。(表4-1-c)

図 4-1-b.年代別男女統計

表 4-1-c.デザイン別男女被験者数一覧

20代  30代  40代  50代  60代  70代  80代

14

12

10

8

6

4

2

0

1    2     3     6     5     4     00    1     4     7     8     6     1

4-1.全体統計

Page 36: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

043

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI 集計結果 4-2-1.質問項目及び選択肢について STAI では、対象者が置かれた状況により変化する不安度を表す「状態不安尺度」と、対象者が日常生活から抱えている不安を表す「特性不安尺度」の2つの尺度を測定する。それぞれの不安尺度について 20問の質問項目が設定されており、4段階の選択肢から評価する。「状態不安尺度」はその時の心境に「全くあてはまらない」から「非常にあてはまる」の4段階で評価し(表 4-2-a)、「特性不安尺度」については普段のそういった感情になることが「ほとんどない」から「ほとんどいつも(なる)」の4段階で評価する(表 4-2-b)。 本調査では、検査中の時系列的な不安の推移を詳細に調査するため、状態不安を全てのアンケートで実施する。外部の情報に比較的影響されにくい特性不安については、時間の都合上アンケート2で実施した。

         表 4-2-a.STAI 状態不安質問項目

 

いく分 かなり 非常にあてはまる あてはまる あてはまる

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

 おこるのではないかと心配している

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

2 3 4

⑨おびえている

1

1

3

1

⑳楽しい気分だ 1

1 2

⑩快適である

⑮くつろいでいる

1

⑪自信がある

4

⑱まごついている

⑲安定した気分だ

1

1

⑯満ち足りた気分だ

⑰悩みがある

1

1

⑭ためらっている

1

⑫神経過敏になっている

⑬いらいらしている

⑥気が動転している⑦なにかよくないことが

1

1

1

1

⑧満足している

④ストレスを感じている

⑤気楽である

1

1

②安心している

③緊張している

1

1

例)冷静である

①おだやかな気持ちだ

1

1

全くあてはまらない

4-2.STAI集

計結果

Page 37: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

044

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI集

計結果

 表4-2-b.特性不安質問項目

 

ときどき ほとんどある いつも

例)すぐに緊張する 2 4

①楽しい気分になる 2 4

②神経質で落ち着かない 2 4

③自分に満足している 2 4

④とりのこされたように感じる 2 4

⑤気が休まっている 2 4

⑥冷静で落ち着いている 2 4⑦困ったことが次々におこり 克服できないと感じる⑧本当はそう大したこともないのに 心配しすぎる⑨しあわせだと感じる 2 4⑩いろいろ頭にうかんできて仕事や 勉強が手につかない⑪自信がない 2 4

⑫安心感がある 2 4

⑬すぐにものごとをきめることができる 2 4

⑭力不足を感じる 2 4

⑮心が満ち足りている 2 4

⑯つまらないことが頭にうかび悩まされる 2 4

⑰ひどく失望するとそれが頭から離れない 2 4

⑱落ちついた人間だ 2 4⑲気になることを考えだすと 緊張したり混乱したりする⑳うれしい気分になる 2 4

3

1 3

1 3

1 3

1 3

1

1 3

1

1 2 3

1 3

4

3

1 3

1 3

1 3

4

3

3

1 3

1 2 3

1

1

4

1 2 3 4

1 2 3

ほとんど たびたびない ある

1 3

1 3

1 3

Page 38: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

045

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-2-2.標準化得点算出方法 各質問項目には1点から4点までの重み付けが与えられ、4点は状態不安尺度の 10 項目および特性不安の 10 項目においては高いレベルの不安の存在を示し、それらを不安存在項目(anxiety-present items : P 項目)と呼ぶ。各尺度の残りの 10項目では高い得点は不安がないことを示し、これらの得点には逆の重みが与えられる。これらの項目を不安不在項目(anxiety-absent items : A 項目)とし、1、2、3、4の回答には 4、3、2、1の重みが与えられる。不安不在項目は以下の通りである。 □状態不安尺度:1、2、5、8、10、11、15、16、19、20 □特性不安尺度:1、3、5、6、9、12、13、15、18、20 この様に重み付けをした各項目の得点を合計して、状態不安と特性不安それぞれの不安存在尺度(P項目)と不安不在尺度(A尺度)と算出する。各尺度の得点は最低 10点から最高 40点の間に分布する。 次に、状態不安の P尺度得点と A尺度得点を合計して状態不安尺度の得点を求める。同様に、特性不安尺度の得点も求める。これらの尺度得点はいずれも 20 点から 80 点までの間に分布する。 この様にして得られた P尺度、A尺度のそれぞれの素点から、標準得点に換算するには、表 4-2-c の換算表を使用した。この換算表は、大学生の集団を標準化標本として得た P尺度、A尺度および全尺度の得点の平均、標準偏差、α係数を元に作成されたものである。標本については、対象は大学生であり、東京都、茨城県、埼玉県、静岡県に所在する国立、私立7大学の学生 2253 名(男性 1088 名、女性 1165 名)であり、1、2年生が大多数である。検査は授業中に実施された。 臨床場面で不安を判定する場合には、細かい得点よりも段階による比較の方が実用的とされ、その場合は、段階4、5は高不安、段階 1、2は低不安と判定するのが一般的である。標準得点に基づいて次のように段階が区分される。 段階5   標準得点 65以上 段階4   標準得点 55以上、65未満 段階3   標準得点 45以上、55未満 段階2   標準得点 35以上、45未満 段階1   標準得点 35未満 本調査では、この様な段階分けの評価は行わずに、純粋な得点の値の推移で不安の傾向を評価することとする。

4-2.STAI集

計結果

出典:実務教育出版「新

版 STAI マニュアル」

Page 39: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

046

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

   表 4-2-c.大学生の全尺度の標準得点に基づく換算表 

4-2.STAI集

計結果

Page 40: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

047

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI集

計結果

 素点から換算表を使って標準得点を算出し、各被験者の得点を一覧にしたのが表 4-2-d である。   

     表 4-2-c.STAI 標準化得点一覧

Page 41: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

048

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-2-3.各被験者の結果 「4-2-2.標準得点算出方法」で一覧にした被験者のデータを、比較のためグラフ化したものを掲載する。また、特性不安については前述した段階分けを参考に3段階に分けて色付けをした。具体的には、特性不安の標準得点が 55以上を高不安として青色、標準得点が 45 以上 55 未満を中不安としてオレンジ色、標準得点が 45未満で低不安として緑色に分類する(表4-2-d)。

   表 4-2-d.特性不安標準得点別不安の度合いとグラフの色の早見表

4-2.STAI集

計結果

Page 42: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

049

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI集

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Page 43: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

050

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-2.STAI集

計結果

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第 4章 調査結果

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第 4章 調査結果

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計結果

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第 4章 調査結果

055

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-2-4.パターンと傾向 全被験者の状態不安の標準得点の推移をグラフにした結果、次の4パターンの傾向があることが分かった。常に不安が下降していく場合(図 4-2-a)、常に不安が上昇していく場合(図4-2-b)、アンケート2で一旦不安が上がったが最終的な値は下がっている場合(図 4-2-c)、アンケート2で一旦不安が下がったにも関わらずまた上昇する場合(図 4-2-d)の4つである。代表的な例を以下に掲載する。

            〈1.常に不安が下降していく場合〉            状態不安は検査を通して下降し続け            最終値は初期値を下回る。            (No.2,3,4,6,7,13,16,18,20,26,30,31,1,           32,36,38,39,41,44,54)                

                〈2. 常に不安が上昇する場合〉                状態不安は検査を通して上昇し続け            最終値は初期値を上回る。            (No.15,24,27,34,48)

                     

            〈3. 一度不安が上昇し、また下降する           場合〉                状態不安は検査中一旦上昇するが、            最終値は初期値を下回るまたはほぼ            変わらない。(No.10,17,23,25,38,40,            42,47,52,53)

                                〈4.一度不安が下降し、また上昇す           る場合〉                状態不安は検査中一旦下降するが、            検査の最後には初期値より高い得点            を示す、またはほぼ変わらない。             (No.9,28,35,43,46)

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4-2.STAI集

計結果

図 4-2-a.常に不安が下降する場合のグラフ

図 4-2-b..常に不安が上昇する場合のグラフ

図 4-2-c..一度不安が上昇し、また下降する場合のグラフ

図 4-2-d.一度不安が下降し、また上昇する場合のグラフ

Page 49: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

056

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版 POMS 集計結果 4-3-1.質問項目と選択肢について POMS では、6つの気分尺度の変化を、ある事象の前後で測定することができる。本調査では、不安や落ち込みといったマイナスな気分の要素は STAI などで測定済みであるとみなし、プラスの気分評価である「活気」と、患者の疲労度を表す「疲労」についてのみ測定をした。6つの気分尺度にを測定する質問項目に対して、「まったくない」「少しある」「まあまあある」「かなりある」「非常にある」の 5段階で評価する。以下、全ての質問項目である(図 4-3-a)。 本調査では、撮影の前後における気分の変化を測定するため、撮影直前であるアンケート2と撮影後にあたるアンケート3にて POMSの測定を実施した。

図4-3-a.POMS の6つの気分尺度に対する質問項目と

本調査で使用した2つの尺度

気が張りつめる

落ち着かない

不安だ

緊張する

あれこれ心配だ

生き生きする

積極的な気分だ

精力がみなぎる

元気がいっぱいだ

活気がわいてくる

悲しい

自分はほめられるに値しないと感じる

がっかりしてやる気をなくす

孤独でさびしい

気持ちが沈んで暗い

ぐったりする

疲れた

へとへとだ

だるい

うんざりだ

怒る

ふきげんだ

めいわくをかけられて困る

はげしい怒りを感じる

すぐかっとなる

頭が混乱する

考えがまとまらない

とほうに暮れる ・・・本調査で使用した気分尺度

物事がてきぱきできる気がする

どうも忘れっぽい

混乱(C)

質問項目

緊張ー不安

(T-A)

活気(V)

抑うつー落ち込み

(D-D)

疲労(F)

怒りー敵意

(A-H)

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 50: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

057

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-3-2.標準化得点算出方法 各項目における 5段階の回答には、それぞれ0点から4点の重みが与えられる。採点は、全部の項目が記入されたことを確認した後、5項目ずつの各気分尺度ごとに合計点を算出する。この得点を「素得点」とする。 分析にあたって、この素得点を定められた T得点(標準化得点)に換算する。T得点は、次式により求められる。

 T得点= 50- 10×(素得点-平均値)/標準偏差

 日本版 POMS 短縮版には全年齢を対象とした T得点換算表が添付されており、これを用いることで計算を行わなくとも T得点が割り出せる仕様になっている。また、別途全年齢及び性別を標本とした標準偏差及び平均値も添付されており、これらの数値を使って上式から T得点を算出する方法も可能である。本調査では、標準偏差と平均値の一覧を使用して、上式からT得点を算出した。標準偏差と平均値の一覧は、次ページに表4-3-a で掲載する。

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 51: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

058

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

表 4-3-a.年齢階級別男女得点一覧(19歳以下は今回被験対象外)

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 52: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

059

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 表 4-3-a を使用して算出した被験者毎の実験前後の T得点の一覧が表 4-3-b である。

          表 4-3-b.全被験者標準化得点一覧

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 53: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

060

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-3-3.各被験者の結果 「4-3-2.標準化得点算出方法」の方法で得られた各被験者の実験前後における疲労と活気についての標準化得点のグラフを以下に掲載する。それぞれの被験者の属性については、「4-1.全体統計」を参照のこと。

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 54: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

061

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 55: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

062

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 56: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

063

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 57: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

064

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 58: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

065

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版POMS集計結果

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第 4章 調査結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 60: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

067

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-3-4.パターンと傾向 全被験者の撮影前後(アンケート2・アンケート3)における「活気」と「疲労」に関する気分評価のグラフを作成したところ、5パターンの気分の変化を観察することが出来た。活気も疲労も上がった場合(図 4-3-a)、活気も疲労も下がった場合(図 4-3-b)、活気は上がったが疲労が下がった場合(図4-3-c)、活気は下がったが疲労は上がった場合(図 4-3-d)、どちらも変わらなかった場合の5パターンである。グラフは、特に顕著にその傾向が見られた被験者の例である。                      〈1.活気・疲労ともに増加〉        撮影の前後で活気が上がっているが疲労も上        がっている。大多数の被験者がこのパターン        に属する。(No.2,5,10,12,14,15,18,23,33,35,        37,38,40,44,49,50)

         〈2.活気・疲労ともに減少〉        撮影の前後で、活気が下がっているが疲労も    も   下がっている。(No.17,2431,36)

             

         〈3.活気が増加/疲労が減少〉        撮影の前後で、活気が上がって且つ疲労が下    下   がっている、もしくはほぼ変化しない。          (No.6,13,25,28,39,54)             

         〈4.活気が減少/疲労が増加〉        撮影の前後で、活気が下がっている、           もしくはほぼ変化せずしかも疲労が上がってい       いる。(No.3,8,16,41,4547,51,52,53)図 4-3-d.活気が減少し、疲労が増加しているグラフ

             

         〈5.どちらも変動なし〉        撮影の前後で、活気も疲労も変化しない。         (No.4,11,22)

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図 4-3-e.活気・疲労ともに変動のないグラフ

図 4-3-a.活気・疲労ともに増加しているグラフ

図 4-3-b.活気・疲労ともに減少しているグラフ

図 4-3-c.活気が増加し、疲労が減少しているグラフ

図 4-3-d.活気が減少し、疲労が増加しているグラフ

4-3.短縮版POMS集計結果

Page 61: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

068

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4. 検査に対する  不安アンケート集計結果  4-4-1.質問項目と選択肢について 本調査では、検査室に対する直接の不安感や恐怖と、検査自体や、病気が明らかになることへの一般的に患者が持つとされる不安感とを区別する目的で、「検査に対する不安アンケート」として独自の質問紙による調査を行った。内容は、検査で患者が不安に思うと想定される項目を7つ設定し、それぞれにどの程度不安を感じるか答えてもらうものである。 これを一連の検査中の全てのアンケートで実施することで、検査のどの項目について一番不安を感じるのかを洗い出すことができると考えた。以下がその質問内容である(表 4-4-a)。

表4-4-a.検査に対する不安アンケート(アンケート1)

 本来なら、同じ質問項目をアンケート2と3でも尋ねたいところである。しかし、質問①や②の様に、アンケート2の段階ですでに体験済みになってしまう項目に対して、「不安があるか」という質問より、「当初自分が思っていたより怖かったか」という選択肢に変えることによって、予想していた不安と現実のギャップを意識して回答できる工夫をした(表4-4-b)。また、アンケート2の段階でまだ体験していない③~⑦の質問に関しては、選択肢はアンケート1の時と同じ設定で、検査の段階を経てその不安の度合いが変化しているかを単純に比較することができる(表 4-4-c)。表4-3-b.検査に対する不安アンケート(アンケート2:質問①、②)

全く どちら やや 非常に不安はない でもない 不安に思う不安に思う

例)検査にたいくつしてしまう 1 3 4 5

①検査着に着替える 1 3 4 5

②注射を打つ 1 3 4 5

③検査で放射性物質を使用する 1 3 4 5

④検査時間が長い 1 3 4 5

⑤検査室に入る 1 3 4 5

⑤PET/CT検査の装置に入る 1 3 4 5

⑥PET/CT検査中に体が固定される 1 3 4 5

不安はな

2

あまり

2

2

2

2

2

2

2

あまり 非常に怖くなかった 怖かった

例)いつもと違う病棟にいる 2 5

2 5

2 5

思っていた通りだった

やや全く怖くなかった

1

1

1

①検査着に着替える

②注射を打つ

4

4

4

怖かった

3

3

3

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

Page 62: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

069

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

表 4-4-c.検査に対する不安アンケート(アンケート2:質問③~⑦)

 アンケート3に関しては、全ての質問項目について体験済みであるので、アンケート2の質問①と②と同様に、「思ったより怖かったか」という選択肢を設定した。(表 4-4-d)また、アンケート2で体験済みであった質問①と②はアンケート3には再出しない。

表4-4-d.検査に対する不安アンケート(アンケート3)

  4-4-2.不安得点算出方法 本アンケートでは、各質問項目に設けられた 5段階の選択肢に、順番に1点から5点の点数が与えられ、それらを合計したものを得点とする。この得点を「不安得点」と呼ぶ。 ただし、アンケート2と3において、選択肢が「思ったより怖かった」かどうかに変化した時、素得点ではなく以下の得点を直前のアンケートの点数に加えて得点算出を行う。 1.全く怖くなかった・・・- 2 2.あまり怖くなかった・・・- 1 3.思っていた通りだった・・・+0 4.やや怖かった・・・+1 5.非常に怖かった・・・+2 例えば、「⑤検査室に入る」ことに関して、アンケート2で「4.やや不安に思う」と回答し、アンケート3で「2.あまり怖くなかった」と回答したら、アンケート3での得点は4- 2で 2点となる。また、アンケート作成時の意図として、「思ったより」と問われた時、直前の回答と比較するものとして設定したので、今回は直前の回答を使用して得点算出を行った。

あまり 非常に不安はない 不安に思う

2 5

2 5

2 5

2 5

2 5

⑥PET/CT検査中に体が固定される 2 5

3

⑤PET/CT検査の装置に入る 1

1

1

1

全く不安はない

1

③検査で放射性物質を使用する

④検査時間が長い

⑤検査室に入る

例)検査に退屈してしまう 1

4

3

3

3

3

4

4

4

4

3 4

やや不安に思う

どちらでもない

0000009/12ページ

全く 思っていた やや 非常に怖くなかった 通りだった 怖かった 怖かった

例)検査にたいくつしてしまう 1 3 4 5

①検査で放射性物質を使用する 1 3 4 5

②検査時間が長い 1 3 4 5

③検査室に入る 1 3 4 5

⑤PET/CT検査の装置に入る 1 3 4 5

⑥PET/CT検査中に体が固定される 1 3 4 5

あまり

2

2

2

怖くなかった

2

2

2

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

Page 63: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

070

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 表 4-4-e は、「4-4-2.不安得点算出方法」に従って得た前被験者のデータの一覧である。

      表 4-4-e.検査に対する不安アンケート全被験者得点一覧

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

Page 64: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

071

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-4-3.各被験者の結果 全ての被験者の不安得点を、質問項目毎にグラフ化したデータを掲載する。なお、各被験者の属性は「4-1.全体統計」を参照のこと。

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

Page 65: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

072

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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第 4章 調査結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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第 4章 調査結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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第 4章 調査結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

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第 4章 調査結果

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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第 4章 調査結果

079

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-4-4.パターンと傾向 全被験者の全ての質問に対しての回答を、時系列でグラフにしたところ、4つのパターンを見てとることが出来た。全質問を通して不安度が下がっている場合(図 4-4-a)、全質問を通して不安度が上がっている場合(図 4-4-b)、質問によって不安度にばらつきがある場合、(図 4-4-c)、質問系統によって不安度の推移が同じな場合(図 4-4-d)の4パターンである。グラフは、その傾向を顕著に示している被験者を代表的に掲載したものである。

           

図4-4-a.パターン1のグラフ

              

                  

              

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4-4.検査に対する不安アンケート集計結果

〈1.全質問を通して不安が下降している場合〉ほぼ全質問を通して、検査開始時より検査終了時の不安度の方が下がっている。

〈2.全質問を通して不安が上昇している場合〉全質問を通して、検査開始時より検査終了時の不安度の方が上がっている。

〈3質問によってばらつきが診られる場合〉質問系統によって不安度の推移にばらつきがあり、傾向が一つに絞られていない。

〈4.質問によって不安の推移が重なっている場合〉質問系統によって不安度の推移が似通っており、傾向が絞られる。ほとんどの場合、質問①と②、質問③~⑦という偏り方をしている。

図4-4-a.全質問を通して不安が下降しているグラフ

図 4-4-b.全質問を通して不安が上昇しているグラフ

図 4-4-c.質問によってばらつきがみられるグラフ

図 4-4-d.質問によって不安の推移が重なっているグラフ

Page 73: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

080

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

4-5.SD法による検査室の   印象評価集計結果  4-5-1.形容詞対について 本調査において、検査室の空間そのものに対する評価の手法としてSD法を採用した。形容詞対の決定については、「広いー狭い」など空間を具体的に評価するものから、「粗野なー洗練された」といった抽象的なものまで、なるべく多岐に渡る様、また検査室という空間を評価しやすい形容詞対を選定した。これらの形容詞対について、5段階の中でより検査室の空間をよく表現していると思う方を選択して評価してもらう方式をとった。検査室の印象評価で使用した質問項目と回答法を以下に示す(表 4-5-a)。

表4-5-a.検査室の印象評価で使用した質問項目と回答法

 

非常に やや 普通 やや 非常に

例) 大きい 1 2 3 4 5 小さい

① 明るい 1 2 3 4 5 暗い

② 広い 1 2 3 4 5 狭い

③ 開放された 1 2 3 4 5 閉鎖された

④ 整然とした 1 2 3 4 5 雑然とした

⑤ 親しみやすい 1 2 3 4 5 親しみにくい

⑥ 落ち着いた 1 2 3 4 5 落ち着かない

⑦ 軽やかな 1 2 3 4 5 重苦しい

⑧ 陽気な 1 2 3 4 5 陰気な

⑨ 無機的な 1 2 3 4 5 有機的な

⑩ 柔らかい 1 2 3 4 5 堅い

⑪ うるさい 1 2 3 4 5 静かな

⑫ 粗野な 1 2 3 4 5 洗練された

⑬ 豪華な 1 2 3 4 5 質素な

⑭ 不快な 1 2 3 4 5 快適な

⑮ 安心感のある 1 2 3 4 5 不安感のある

⑯ 楽しい 1 2 3 4 5 退屈な

⑰ 面白い 1 2 3 4 5 つまらない

⑱ 多彩な 1 2 3 4 5 無色な

⑲ 清潔な 1 2 3 4 5 不潔な

⑳ 日常的な 1 2 3 4 5 非日常的な

4-5.SD法による検査室の印象表集計結果

Page 74: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

081

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-5-2.各被験者の結果 全被験者の回答結果を表 4-5-b で一覧にした。また、被験者毎のグラフを次ページより掲載する。なお、グラフの色は「4-2.STAI」で定義した特性不安によるものである。

          表 4-5-b、全被験者回答結果一覧    

4-5.SD法による検査室の印象表集計結果

Page 75: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

082

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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第 4章 調査結果

083

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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Page 77: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

084

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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第 4章 調査結果

085

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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Page 79: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

086

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

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4-5.SD法による検査室の印象表集計結果

Page 80: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

087

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 4-5-3.傾向 全被験者を、デザインあり/なしの検査室を利用した患者、またその中で更に男女別に分けて、検査室の印象評価に対する得点を平均化したものをグラフ化した(図 4-5-a、図 4-5-b)。これらから、それぞれの傾向を読み取った。 

   まず、デザイン別で見ると、特に差が見られた形容詞は「うるさい-静かな」「粗野な-洗練された」「楽しい-退屈な」「多彩な-無色な」などであった。デザインなしの検査室を利用した被験者は、検査室に対して「静かな」「洗練された」という肯定的な印象を持ったと同時に、「退屈な」「無色な」といった、淡白な印象を受けたという傾向が見られた。

4-5.SD法による検査室の印象表集計結果

図 4-5-a.SD 法デザイン別グラフ

Page 81: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 4章 調査結果

088

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

図 4-5-b.SD 法デザイン毎男女別グラフ

4-5.SD法による検査室の印象表集計結果

 また、デザイン毎の男女別の得点平均を読み取ると、特に顕著に見られたのはデザインありを利用した女性の被験者の「安心感のある」「やわらかい」などといった好印象の評価であった。その一方で、デザインなしを利用した特に男性の被験者は、検査室に対して「非日常的な」といった違和感を抱いたことも読み取ることができた。

Page 82: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

分析・考察第 5 章

5-1.STAI 5-1-1.デザイン別評価 5-1-2.男女別評価 5-1-3. 年代別評価 5-1-4.特性不安得点別評価

5-2.短縮版 POMS 5-2-1.デザイン別評価

 5-2-2.男女別評価

 5-2-3. 年代別評価

 5-2-4.特性不安得点別評価

5-3.検査に対する不安アンケート 5-2-1.デザイン別評価 5-2-2.男女別評価 5-2-3. 年代別評価 5-2-4.特性不安得点別評価

5-4.SD 法による検査室の印象評価 5-4-1.因子の抽出 5-4-2.因子得点の分析

Ana l y s e /Con s i de r a t i onC h a p t e r 5

Page 83: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

090

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-1.STAI5-1.STAI

 5-1-1.デザイン別評価

 STAI では、検査全体を通して被験者のその時々の不安感を示す「状態不安」がどの様に変化しているか、またそれらの変化が有意なものかどうかで検査室のデザインの効果を評価する。 まず、検査室のデザインの有無のみで見た場合の全被験者の状態不安の標準得点の平均値の推移を比較する(図 5-1-a、図5-1-b)。

図5-1-a.STAI 状態不安標準得点デザイン別平均値

 グラフからも読み取れる様に、デザインあり・なしともに得点にすると 5.7 点下がっており、変化率もどちらも 12%となり差異はない様に見られる。変化率は、[(アンケート1の標準得点の平均値 ‒アンケート3の標準得点の平均値)/アンケート1の標準得点の平均値]で求めた。 次に、デザインありとなしそれぞれに検査室について、アンケート1の得点とアンケート 3の得点の差に関して、グラフのデータを元に差の検定を行った。その結果、デザインありの状態不安標準得点では P(T≦ t)の値が 0.0007(であったのに対し、デザインなしの P値は 0.019 であった。どちらも 5%水準で有意差が見られ、デザインによる大きな差異は確認されなかった。次項より、より詳細な分析にてその理由を明らかにしていく。なお、全ての検定結果の詳細な表は巻末の「第2部:資料編」を参照のこと。

Page 84: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

091

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 5-1-2.男女別評価 デザインの有無だけでは有効な差は見られなかったので、更に属性を分けて検査室の評価を行う。まず、男女別で状態不安の標準得点の平均値の推移を比較する(図 5-1-b ~図 5-1-e)。

 図5-1-b~図5-1-eをそれぞれ平均してグラフ化したものが、図 5-1-f、図 5-1-g である。

図5-1-b.デザインあり女性被験者標準得点

図 5-1-d.デザインなし女性被験者標準得点推移

図 5-1-c.デザインあり男性被験者標準得点推移

図 5-1-e.デザインなし男性被験者標準得点推移

図 5-1-f.デザインなし男女別標準得点推移 図 5-1-g.デザインあり男女別標準得点推移

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Page 85: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

092

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 グラフからも読み取れる様に、デザインありとデザインなしのそれぞれの検査室を利用した被験者の状態不安の推移を男女別に比較すると、検査開始時の状態不安の標準得点(アンケート1)と検査終了時の状態不安の標準得点(アンケート3)の差と、その変化率は表 5-1-a の様になっている。

    表4-5-1.男女別状態不安標準得点差異及び変化率

  表からも分かる様に、全体的に状態不安の標準得点は検査の前後で下がっており、中でもデザインありの検査室を利用した女性についてその変化が顕著に見られた。 その変化について、4つのパターン全てにおいて差の検定を行った。その結果、デザインありの女性の P(T≦ t)の値は0.0007、デザインなしの女性は 0.017、デザインなしの男性では 0.02 と、全て 5%水準で有意差が見られた。しかし、デザインありの男性だけ、P値が 0.462 となり有意差は認められなかった。 従って、男女によるデザインへの評価の違いが見られ、特に女性にとって検査室のデザインは状態不安の低減に効果的であることが判明した。

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Page 86: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

093

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 5-1-3.年代別評価 次は年代別で状態不安の推移を比較・考察する。本調査では、対象者を 20代~ 80代の男女としてきた。しかし、「4-1.全体統計」からも分かる様に、年代による偏りがあり、特に50・60代の被験者が目立った。そのため、年代別の評価では、49 歳以下、50 ~ 59 歳、60 ~ 69 歳、70 歳以上、という4つの区切りでまず検討することとする。図 5-1-h はデザインあり、図 5-1-i はデザインなしの年代別でみた状態不安の推移のグラフである。

 更に、それぞれの年代に分けてデザイン別の状態不安の標準得点の平均値推移を比較する(図 5-1-j ~ 5-1-m)。

図5-1-h.デザインあり年代別標準得点推移 図 5-1-i.デザインなし年代別標準得点推移

図 5-1-j.49 歳以下状態不安標準得点推移 図 5-1-k.50 ~ 59 歳状態不安標準得点推移

図 5-1-l.60 ~ 69 歳状態不安標準得点推移 図 5-1-m.70 歳以上状態不安標準得点推移

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Page 87: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

094

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 また、表 5-1-b にグラフのアンケート1とアンケート3における状態不安の標準得点の差と、その変化率を示した。

表5-1-b.年代別で見たアンケート1とアンケート3の差及び変化率

 表からも読み取れる様に、年代別に検査前後の状態不安の変化率を観察すると、デザインの有無に関わらず顕著な差は見られなかった。また、これらの数値を元に差の検定を行ったが、5%水準での有意差はどの年代にも認められなかった。

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Page 88: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

095

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 そこで、年代がおおよそ2つに分かれる 60歳を基準として、全年代を2分して同じ分析を行う(図 5-1-n、5-1-o)。

 このグラフのデータから、検査前後の状態不安標準得点の差と変化率を求めた一覧表が次項の表 5-1-c である。

表5-1-c.60 歳以上・以下の状態不安の変化率

 年代を細かい区切りから 60歳で区切ぎる分類に変えたことで、年齢層毎の変化が顕著に現れたと言える。表からも分かる様に、変化率でみると特にデザインありの検査室を利用した60歳以上の被験者に状態不安の減少が見られる。 この年齢層の分類で得られた状態不安の標準得点の平均から差の検定を行うと、60歳以上の被験者ではデザインありの P(T≧ t)の値が 0.05、デザインなしの P値が 0.02 と、どちらも5%水準で有意差があることが判明した。しかし、60歳未満ではデザインなしで Pの値が 0.02 と、5% 水準の有意差は見られたものの、デザインありに関しては P値は 0.1 となり有意差は見られなかった。 この結論から、若い年齢層(60歳未満)ではデザインのない検査室の方が不安感低減に効果的に働いたといえる。

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図 5-1-n.60 歳以下状態不安標準得点推移 図 5-1-o.60 歳以上状態不安標準得点推移

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Page 89: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

096

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 5-1-4.特性不安標準得点別 今回、もう一つの属性として、STAI で測定した2つ目の不安尺度である「特性不安」の標準得点で被験者を分類した。被験者それぞれが普段から抱えている不安の度合いを示す「特性不安」の標準得点を大きく3つに分類し、状態不安との関係性を比較する(図 5-1-p、図 5-1-q)。「特性不安」の分類には、「第4章:調査結果」で分類した3つの度合い(高、中、低)を使用する。

 グラフからは、デザインありとなしで特性不安の標準得点毎に差が明確にあるかは読み取ることが困難であるため、表5-1-d にアンケート1からアンケート3への変化率を示した。

図5-1-p.デザインあり特性不安標準得点別状態不安標準得点推移

図 5-1-q.デザインなし特性不安標準得点別状態不安標準得点推移

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Page 90: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

097

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

表 5-1-d.特性不安標準得点別に見た状態不安標準得点の変化率

 変化率で考察すると、デザインあり・なしともに特性不安の標準得点が高い被験者と低い被験者に、状態不安の大きな変化が見られた。中程度の不安の人に対しては顕著な減少は見られない。 これらの値の差の検定を行うと、5%水準で有意差が見られたのは、デザインなしの低不安(P(T≧ t)値:0.004)だけであった。デザインありでは、どの不安度においても有意な差は見られなかった。 この分析の結果、特性不安尺度による標準得点が低い人に対しては、デザインなしの検査室の方が、不安感の低減に効果的働くといえる。

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第 5章  分析・考察

098

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-2.短縮版 POMS 5-2-1.デザイン別評価

 本調査では、短縮版 POMS の「活気」と「疲労」について調査を実施した。撮影の前後であるアンケート2とアンケート3で実施することで、検査室を体験することが気分評価にどの様な影響を与えるかを明らかにする。 まず、検査室のデザインの有無のみで被験者を分けた時の、「活気」「疲労」それぞれの T得点の変動を比較する(図 5-2-a、図 5-2-b)。

 デザイン別に POMS による気分の変化を見ると、デザインありでは「活気」が 1.5 点上がっているが「疲労」も 2.5 点上がっている。デザインなしでも、「活気」は 1.6 点上がっているが同様に拾うも 2.0 点上昇している。では、この中で何人中何人の「活気」と「疲労」が上がったのかを比較する(図 5-2-c、図 5-2-d)。

図5-2-a.撮影前後の POMS T得点(デザインあり) 図 5-2-b.撮影前後の POMS T得点(デザインなし)

図 5-2-c.活気が上がった人、もしくは下がった人の比較 図 5-2-d.疲労が上がった人、もしくは下がった人の比較

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第 5章  分析・考察

099

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 デザイン別に、「活気」と「疲労」がそれぞれ上がった人、下がったもしくはほとんど変わらなかった人の人数を比較すると、「活気」に関してはデザインの有無で顕著な差は現れないことが分かる。しかし、「疲労」に関してはデザインありの検査室を利用した被験者は 26人中 6人(23%)の疲労度が下がった、もしくはほぼ変化していないのに対し、デザインなしの検査室の被験者は 19人中 3人(14%)の「疲労」が減少もしくは変動していない。 この分析から、デザインありの検査室を利用した被験者の方が「疲労」が軽減する傾向にあることがわかる。

5-2.短縮版POMS

Page 93: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

100

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 5-2-2.男女別評価 デザイン別の評価では、デザインありの方が疲労感を与えないことがわかったが、属性を細かく分類することでその効果を確かめる。、まずは、デザインのあり・なしの他に、性別のパラメータを追加した。その結果が図 5-2-e、図 5-2-f である。

 男女別の気分評価は、デザインありではあまり顕著に差が現れないことがグラフから分かる。しかし、デザインなしでは女性の「疲労」も上昇しているが特に「活気」が顕著な増加をみせ、また男性の場合「活気」に変動は見られにくいが「疲労」が下がっていることに着目したい。これらはあくまで平均値であるので、それを踏まえて次項の図 5-2-g、図 5-2-h では実際に何人の「活気」や「疲労」が上がっているか、また下がっているかを比較する。

図5-2-e.デザインあり男女別 POMS T得点平均

図 5-2-f.デザインなし男女別 POMS T得点平均

5-2.短縮版POMS

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第 5章  分析・考察

101

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 男女別でデザインありとなしの検査室における「活気」と「疲労」の変動に差があることが分かる。まず、男性よりも女性の気分評価の変動の方が顕著に出易いという傾向があることが判明した。その中でも特に強い傾向として、デザインありの検査室を利用した被験者の「活気」は、男女ともに「活気」が増加を見せている(表 5-2-a)。それに対してデザインなしの検査室利用した男性の「活気」は僅かにしか増加していない。また、男女別でみると、女性は男性より「疲労」があがりやすいことが分かる。特にデザインなしの検査室を利用した女性の 82%の人の「疲労」が増加しており、同じ検査室を利用した男性では 45%しか増加していない。 これらのことから、デザインありの検査室の方が「活気」を増加させる効果があるといえる。また、女性はデザインなしの検査室を利用した人の方が「疲労」の増加率は高かったため、デザインの有無が訪れる人の「疲労」感に影響していることが明らかになった。

        表 5-2-a、デザイン別/男女別 疲労・活気の増加率

図 5-2-g.男女別活気変動人数比較 図 5-2-h.男女別疲労変動人数比較

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第 5章  分析・考察

102

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 5-2-3.年代別評価 年代別にPOMSによる気分評価の変動を比較する。ここでは、年代を 49 歳以下、50 ~ 59 歳、60 ~ 69 歳、70 歳以上の4つの年齢層に分けて評価を行う(図 5-2-i ~図 5-2-l)。

図 5-2-i.デザイン別気分評価(49歳以下)

図 5-2-j.デザイン別気分評価(50~ 59歳)

図 5-2-k.デザイン別気分評価(60~ 69歳)

図 5-2-l.デザイン別気分評価(70歳以上)

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Page 96: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

103

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 どの年代も、実験の前後で「活気」「疲労」ともに増加の傾向にある。これは、検査が終わったという安堵からくる活気と、長時間に渡る検査からくる疲労感が共通してあるからであると考えられる。しかし、その中でもデザインありの検査室を利用した 50歳代と 70歳以上の被験者に関しては、検査後の「疲労」が減少している。また、デザインなしの検査室を利用した 49歳以下の被験者は、「活気」が下がっている唯一の年代である。 これらのデータについて、全体で何人の「活気」や「疲労」が増加しているかを検証する(図 5-2-m、図 5-2-n)。

 これらのグラフから読み取れるのは、まず若い世代(49歳以下)と熟年層(70歳以上)では検査前後の気分評価に差があり、感じ方が違うということである。特に、デザインありを利用した 70歳以上の人の全ての被験者の「疲労」が低減しているのに対し、同じ部屋を体験んした 49歳以下の被験者の 6人中 5人の人の「疲労」が増加している。反対に、デザインなしの検査室を利用した 70歳以上の全ての被験者が、検査後に「疲労」の増大を示しているが、49歳以下の被験者は 5人中3人の「疲労」が軽減していることが分かる。 以上のことから、デザインのある検査室は高齢者に対して、「疲労」の低減により効果的に作用するといえる。

図5-2-m.デザインあり年代別人数統計(活気/疲労)

図 5-2-n.デザインなし年代別人数統計(活気/疲労)

5-2.短縮版POMS

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Page 97: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

104

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 5-2-5.特性不安得点別評価 STAI の分析で算出した「特性不安」の標準得点毎に、POMSではどの様な傾向が見られるか比較する(図 5-2-o ~図 5-2-q)。

 グラフからも読み取れる様に、特性不安の度合いによって、検査前後における気分評価に違いがある。デザインの有無に関しては、デザインありの検査室を利用した被験者のうち、特性不安の標準得点が低い人程、「活気」についても「疲労」についても変化が出易い傾向が見られた。しかし、特性不安が大きい人程、デザインがあることによって気分が変動する傾向が少なく、逆にデザインなしの検査室を利用した被験者の多くに、

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図 5-2-o.デザイン別気分評価(特性不安「低」)

図 5-2-p.デザイン別気分評価(特性不安「中」)

図 5-2-q.デザイン別気分評価(特性不安「高」

5-2.短縮版POMS

Page 98: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

105

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

検査前後における「活気」の増加が見られた。 これらのデータを個別に見ると、図 5-2-s、図 5-2-t のグラフが作成できた。

 特性不安の標準得点別に考察する。特性不安が低い被験者は、デザインありの検査室を利用した人よりデザインなしの検査室を利用した人の方が「活気」が上がった人が多く、「疲労」が下がった人が多かった。特性不安が中程度の被験者は、デザインありを体験した人の方が活気が上がった人数が多かったが、「疲労」が上がった人数も同様に多かった。特性不安が高い被験者については、ごく少数であったので大きな傾向は見られなかった。 この分析から、検査室のデザインは特性不安得点が低い人に対してより気分に効果的な影響を与えることが分かった。 

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図 5-2-s.デザインあり 特性不安標準得点別気分評価(活気/疲労)

図 5-2-t.デザインなし 特性不安標準得点別気分評価(活気/疲労)

5-2.短縮版POMS

Page 99: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

106

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-3.検査に対する   不安アンケート 5-3-1.デザイン別評価 検査に対する不安アンケートでは、検査で不安を感じると想定した項目についての不安得点を算出した。検査の行程が進むにつれて、各項目に対する不安得点がどの様に変化したか、まずは検査室のデザインの有無のみで比較する(図 5-3-a、図5-3-b)。なお、各質問項目については、「第2章:PET/CT 検査室における不安感のアンケート調査」及び巻末の「第2部:資料編」のアンケート原本を参照のこと。

 この2つのグラフから、デザインありの検査室を利用した被験者の方が検査開始時と比べて不安感の減少率が高いことがうかがえる。表 5-4-a、は、各質問項目毎に検査前後における得点の平均を比較したものと、その減少による変化率を算出したのもである。変化率は前章と同様の算出方法とする。なお、「質問①検査着に着替える」「質問②注射を打つ」ことに関しては、アンケートに2の段階で体験済みとなり、ほとんどの被験者に不安度の低減が見られ、デザインの有無による違いが見られないため、比較の対象外とする。

図5-4-a.デザインありの検査室における不安感の推移 図 5-4-b.デザインありの検査室における不安感の推移

5-3.検査に対する不安アンケート

Page 100: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

107

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

    表 5-3-a.検査に対する不安感の減少値及び変化率

 表の値からも読み取れる様に、5.、6.、7. でデザインありの検査室を利用した被験者の不安感の方が、減少した変化率が高いことがわかる。各質問毎に得点の検定を行うと、「質問④検査時間が長い」以外の全ての質問について、デザインの有無に関わらず 5%水準で有意差が見られた。そのため、デザインのありの検査室の利用した被験者の不安感の変化率の方が高い値を示しているが、明確な差は見られないことになる。 また、「質問③検査時間が長い」ことに関する不安は、空間に関係なく検査行程を経るに連れて増大するものと思われ、有意差が見られなかったのではないかと考察する。従って、検査室のデザインが不安感の低減に効果的な影響を与えることは非常に難しいと考えられる。

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5-3.検査に対する不安アンケート

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Page 101: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

108

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 5-3-2.男女別評価 検査に対する不安度を、男女別で比較して有意な差があるか分析をする(図 5-3-c ~図 5-3-f)。

 グラフで比較を行うと、男女で質問項目に対しての捉え方の違いが見られる。例えば、男性では「質問④検査時間が長い」ことに対する不安がデザインに関わらず突出しているが、女性では全質問を通して不安度が高いことがうかがえる。また、男女ともにデザインありの検査室を利用した被験者の方が不安感が減少しているように見られる。 この属性分けの中で、アンケート1とアンケート3における各質問の得点の差の検定を行った。なお、この検定においても質問①と質問②は除外して行った。各質問項目の検定結果は、巻末の資料編を参照のこと。 その結果、男女ともにデザインありの P(T≦ t)の値は 0.05を下回り、5%水準で有意差が見られた(表 5-3-b)。ただし、デザインありの女性については「質問③検査で放射性物質を使用する」、男性については「質問④検査時間が長い」ことに関してのみ有意差が見られなかった。デザインなしの検査室に関しては、質問③のみ男女ともに有意差が見られ、デザインによる差はないという結果になった。 しかし、他の3つのパターン全てにおいて有意差の見られな

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図 5-3-c.不安感得点推移(デザインあり/男性) 図 5-3-d.不安感得点推移(デザインあり/女性)

図 5-3-e.不安感得点推移(デザインなし/男性) 図 5-3-f.不安感得点推移(デザインなし/女性)

5-3.検査に対する不安アンケート

Page 102: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

109

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

かった「質問④」に関しては、デザインありを使用した女性にのみ 5%水準で有意な差が認められた。反対に、他の属性では有意差が見られた「質問⑤ PET/CT 検査の装置に入る」ことに対する不安では、デザインなしを使用した女性にのみ有意な差が見られなかった。 以上のことから、デザインのある検査室はより女性に有効に働き、特に時間の感覚や機械そのものへの不安感を低減することに効果的であるといえる。

表5-3-b.デザインあり/なし 男女別不安得点推移の有意差一覧

5-3.検査に対する不安アンケート

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第 5章  分析・考察

110

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 5-3-3.年代別評価 同じデータを、年代毎に比較しその傾向を考察する(図5-3-g ~図 5-3-j)。なお、年代の分類は前章と同じものとする

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図 5-3-i、60 ~ 69 歳デザイン別不安感の推

図 5-3-j、70 歳以上デザイン別不安感の推

5-3.検査に対する不安アンケート

Page 104: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

111

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 年代別のグラフを比較すると、2種類の傾向があることがわかる。1つは、50代、60代の被験者に共通して見られる傾向で、デザインありよりもデザインなしの検査室を利用した被験者の方が、全ての質問項目に対して不安感が明確に減少している。反対に、49 歳以下と 70 歳以上については、デザインありの検査室を利用した被験者の方が全ての質問を通して不安感が低減しているが、デザインなしの方を利用した被験者は検査を通して不安感がほとんど変わっていない。 以上のことから、検査室のデザインは、若年層及び熟年層には効果的であるが、中年層にはあまり効果が見られないことが分かった。

5-3.検査に対する不安アンケート

Page 105: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 5章  分析・考察

112

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 5-3-5.特性不安別評価 最後に、属性を STAI の特性不安による標準得点で分類したもので分析をする(図 5-4-k ~図 5-4-m)。

 STAI の特性不安標準得点別に見ると、特性不安の低い「低不安」と「中不安」については、デザインありの検査室を利用した被験者の方がより不安得点の減少が顕著に見られる。「高不安」については、デザインなしの方が顕著な減少を見せているが、サンプル数が少ないので偶然によるものかもしれない。

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図 5-3-k.低不安の不安得点推移(デザイン別)

図 5-3-l.中不安の不安得点推移(デザイン別)

図 5-3-m.高不安の不安得点推移(デザイン別)

5-3.検査に対する不安アンケート

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第 5章  分析・考察

113

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

5-4.SD法による検査室の   印象評価 5-4-1.因子の抽出 形容詞対の因子を抽出するために、被験者全体の回答に対する因子分析を行った。最尤法を用いて抽出し、バリマックス法を用いて回転した。2つの共通因子が抽出され、第一因子を「好

感」因子、第二因子を「活気」因子と名付けた(表 5-4-a)。

     表 5-4-a.共通因子と形容詞対の相関   

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5-4.SD法による検査室の印象評価

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第 5章  分析・考察

114

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 5-4-2.因子得点の分析 抽出した2個の共通因子をもとに、各被験者の検査室に対する印象評価の因子得点を2因子軸上にプロットした結果を図5-4-a に示す。

図5-4-a.被験者因子得点の「活気」-「好感」平面上プロット

 

 因子分析を行った結果、デザインによって影響され易い因子があることが分かった。平面プロット図にも現れている様に、デザインなしの検査室を利用した被験者は、好感因子の因子得点が高いが、活気因子は負の値になっていることが見て取れる。また、デザインありの検査室を利用した被験者については、活気因子は非常に高い因子得点になっているが、好感因子については負の因子得点として現れている。 これについて考察すると、デザインありの検査室は、訪れる患者に快適で活発な印象を与えるが、必ずしもそれが好感の持てる空間ではないことを示している。実際に、自由記述のコメントなどで、「楽しげだが、親しみの持てる空間ではない」といった様な記述もあり、多彩な空間構成に戸惑いもある様に見受けられた。

デザインなし

デザインあり

5-4.SD法による検査室の印象評価

被験者因子得点の「活気」-「好感」平面上プロット

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PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

まとめ第6章

6-1.STAI

6-2.短縮版 POMS

6-3.検査に対する不安アンケート

6-4.SD 法による検査室の印象評価

6-5.検査室のデザインの違いによる   効果の比較

6-6.展望

Conc l u s i onC h a p t e r 6

Page 109: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 6章 まとめ・展望

116

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-1.STAI

6-1.STAI 状態不安の推移  □ 全被験者を利用した検査室のデザインの有無だけで分類する場合、デザインありの検査室とデザインなしの検査室では、検査を通した状態不安の変化率にあまり顕著な差は見られなかった。

 □ デザイン別の中でも、被験者を男女別に分類すると、デザインありの検査室を利用した女性は状態不安が大幅に減少し、検査室のデザインの効果が見られた。

 □ 60歳未満の被験者に対しては、デザインのない検査室の方が状態不安の低減に効果的に働いたことから、この世代には通常のデザインなしの検査室の方が安心感を与えるといえる。

 □ 特性不安によって表される、普段から抱えている不安度が低い人は、デザインなしの検査室の方が状態不安の低減に有効に働く。

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第 6章 まとめ・展望

117

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-2.短縮版 POMS

 □ デザイン別で見ると、「活気」が変動している人は同程度だが、デザインありの検査室を利用した人の「疲労」が軽減する傾向がある。

 □ 女性は、デザインなしの検査室を利用した人の方が疲労の増加が見られた。

 □ 70歳以上の世代では、検査室のデザインがあることによって疲労が軽減する傾向にある。

 □ 特性不安の得点が低い人の方が、デザインありの検査室を利用した人の方が活気が増加し、疲労が下がった人が多かったことから、気分の変化に良い効果をもたらしたといえる。

6-2.短縮版POMS

Page 111: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 6章 まとめ・展望

118

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-3.検査に対する   不安アンケート □ デザインありの検査室は、特に女性により効果的に作用し、検査そのものの不安だけでなく時間に対する不安や、PET装置に入っていくことへの不安感も低減する。

 □ 中年層(50~ 69)の世代には、検査室のデザインは不安感の低減に効果的ではない。それに対して、若い世代(49歳以下)と高齢者(70歳以上)においては、デザインありの検査室を利用した人には検査に対する不安感の顕著な減少が見られた。

 □ 特性不安が低い、または中程度の被験者は、デザインありの検査室の方が検査を通しての不安感に大きな減少が見られた。

6-3.検査に対する不安アンケート

Page 112: PETCT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

第 6章 まとめ・展望

119

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-4.SD法による検査室の   印象評価

 □ デザインなしの検査室を利用した被験者は、好感因子が正の値を示すものが多かったが、活気因子は負の値を示すものが多く、検査室に好感は持っているものの活気的な印象を受けない。

 □ デザインありの検査室を利用した被験者は、活気因子が正の値を示すが、好感因子は負の値になっているものが多い。これらの被験者は、検査室の活気や快適性が感じられても、好感を持つ人が少なかったことを示している。

 □ SD法による因子分析の結果、検査室のデザインがあることで快適な印象を与えることが分かった。

6-4.SD法による検査室の印象評価

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第 6章 まとめ・展望

120

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

6-5.検査室のデザインによる   効果の比較 本研究を通して判明した、PET/CT 検査室のデザインの有無による患者への心理的な効果の比較を表 6-5-a に示す。

    表6-5-a.検査室のデザインによる効果の比較表

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6-5.検査室のデザインによる効果の比較

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第 6章 まとめ・展望

121

PET/CT 検査室における不安感低減のためのデザイン評価に関する研究

 6-5.展望

 今回の調査では、検査室のデザインが患者の不安感低減に効果的であるかどうかを検証した。しかし、検査室そのものに対する不安感だけを抽出することが困難であったため、複数のアンケートを利用してアプローチを図った。 その結果、様々な傾向が見られたが、顕著に出たものは少なく、個人差や、テストの回答のしやすさなどによって偏りが出たものと思われる。 しかし、特に強い傾向として見られたのは、検査室のデザインは男性より女性に効果的であるということだ。逆に、データにはそれほど顕著に現れなかったが、男性のコメントには「絵が不気味だ」など、検査室のデザインに違和感を覚えるものが多かったことなどから、デザインのない検査室の方が不安感を与えないという可能性もある。 今後は、男女の空間の捉え方の違いに焦点を当て、検査室のデザインだけでなく植栽や音楽など、様々なしかけを用意して検証することで、双方にとってより快適な病院空間を提案することができると考える。また、デザインの内容によっても与える印象が変わることを検証し、一人一人の患者にあった検査空間を設計の指針とすることができる。

6-4.展望