paper desk feb09
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Think from Architecture and Design 建築とデザインから考えるTRANSCRIPT
建築とデザインから考える
PA P E R D E S K feb0 9
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RAD PRESS
建築が成立する背景には、様々な“力”が網の目のように働いており、それら諸力のネットワークが凝縮していく一点に立ち現れるものが建築物である、と言えるでしょう。しかし写真によって作品紹介を行う雑誌は、建築を成り立たせているこうしたネットワークをぼやかし、いわば低解像度で示す事で、建築物を固定した一個のオブジェとして提示し、その根拠を安易に建築家の作家性に担わせてしまいます。
ここで紹介する2つの雑誌『Log』と『Volume』は、ともに2000年以降に創刊され、テキスト等を中心に都市や社会について批評的に論じることを重視しています。前者はNY発の知的洗練を感じさせてくれるA5サイズ、モノクロのシンプルな装丁であり、後者はオランダの実験的デザインを感じさせてくれるアグレッシブな紙面構成が特徴的。もちろんこの対比的な特徴が内容に多少なりと反映されるのですが、その違い以上に両者は、建築を高解像度で提示すことで、私たちに建築の背後にある緒力のネットワークを意識させてくれます。
今回のPAPER DESKはこの建築雑誌のオルタナティブと言うべき『Log』と『Volume』について考えてみたいと思います。(RADが主催するリーディングサークルREAD TANKではこの『Log』と『Volume』を取り上げています。)
i s sue / 建築雑誌のオルタナティブ
その昔、船の航行速度を測定するために、船から海に、ロープをくくりつけた丸太(Log)を投げ落として、船と丸太が離れていく速度を計測していた。そこからLogという語が記録という意味を持ちlog on, log off, prologue, monologue,dialogue, catalogue, epilogue, logical, logistic, logjam・・・と言う風に現在では現実の世界からネットの世界に至るまで遍在するようになっている。そんな「Log」という言葉をタイトルに持つ雑誌が、NYのAnyoneコーポレーションから出版されている。Anyoneコーポレーションは90年代に行われた建築の国際的コンファレンスであるANY会議の仕掛人であり、「Log」は言うなればANY以後の、それも9.11以後の世界の中で建築を語る事のプラットフォームとして用意されたと言う事が出来るだろう。発行人であるCynthia Devidsonが述べているように、インターネットによる情報速度の加速は、メディア環境の変化をもたらし、「建築を書くこと」、または批評の場の存在を危ういものとしている。しかしこのことは「Any」自身が、図らずも示してしまった建築を語る事の限界や不可能性に端を発するがゆえに、『Log』は『Any』という影を乗り越える事が求められている。そこで「Any」が建築的概念を自律的に作用させていたのに対して、『Log』ではサブタイトルに『Observations on architecture and the contemporary city』とあるように建築を都市や社会と言った外部に開いていくことが目論まれる。毎号納められている20ほどの小論は、最新の建築についての論考から、都市やランドスケープに関するものまで幅広い領域にまたがって展開され、単に今おこっている事の記録(log)というよりは、現在おこっている事の意味の注意深い測定であると言える。例えば12号では、Kurt W. Forsterによる「NEW MUSEUM」による論考、Joseph Clarkeの「アルゴリズムの無意識性」についての考察といった最近の話題があつかわれ、Albert Popeによるドバイの都市計画や香港のハウジングについての都市的な議論、さらには「近代の再考」という歴史的考察がWes Jonesによってなされている。その他執筆陣として、R&Sie(n) やAlejandro Zaera-Poloといった建築家、Sanford Kwinter、Giorgio Agambenといった思想家が名を連ねている。とも
するといわゆるNYのインテリな雑誌と思われるかもしれないが、そう切り捨ててしまうにはあまりにももったいない。『Log』の裏表紙には丸太(log)のイラストが描かれており知的な雰囲気の中にユーモアを感じさせてくれる。死んでしまっているかのように見える丸太からは新芽がのぞき、「建築を書くこと」の瀕死の時にあって、なお新しい可能性を生み出す苗床としての『Log』という存在を表しているのかもしれない。
Log
summary91年から00年まで開催された『Any』会議の仕掛人であるシ
ンシア・デヴィッドソンが03年から始めたNY発の建築理論誌。
出版はAnyコーポレーション。写真中心の紙面構成が建築雑誌
の主流を占める中、A5サイズ、全ページ白黒で、挿絵をのぞくと
ほぼテキストのみのシンプルな構成からは、硬派な印象を受ける
が、一方で現在的な問題に立脚した刺激的な執筆陣と各論のタ
イトルは、非常に刺激的かつ魅力的である。現在14号まで出版
されており、各号ごとにテーマが掲げられる事はないが、巻頭に
あるシンシアのイントロダクションからは、隠された“意図”を知
る事が出来る。例えば最新号では40年目という節目を向えた
「1968年」の再考が意図され、ヨナ・フリードマンやポール・ヴ
ィリリオ,ロバート・ヴェンチューリなどの当時を体験した世代か
ら、FOAのザエラ・ポロまで幅広い執筆陣によって議論されてい
る。年3回発行。日本では南洋堂等で購入可能となっている。
建築批評を育む実験場
毎回ヒリヒリするようなスローガンを掲げながら、一貫して「力」を扱う建築雑誌が「Volume」です。本誌にとって、いわゆる建築雑誌が扱うようないわゆる建物写真に用はありません。作品を生み出す単一の作者としての建築家に黄色い声援を送りつづける献身的で狡猾な同時代誌を尻目に、それでもなお「建築雑誌」を謳う本誌は以下の三組によって制作出版されています。まずはその前身を含めると約80年も続く建築雑誌「ARCHIS」、そしてレム・コールハース率いる建築集団OMAのリサーチ部門である「AMO」、最後に建築における新たなコミュニケーション方法を発展させるために組織されたコロンビア大学の「C-Lab.」が来ます。この三組、とりわけ雑誌ARCHISの背後にいる「Archis」のあり方は特徴的で、地域性とそこで興る即興性を旨としながら公共空間への介入を組織する部門と、財団とによって構成されています。さらにその財団は本誌も出版している出版部門、国際的な運動を組織する部門(らしきもの)、建築都市に関わるアドバイスを政府や私企業に与えるコンサル部門(らしきもの)の三部門からなっています。国際的に議論するプラットフォームを用意し、実際に世界中でローカルなイベントを起こしながら建築・都市の抱える問題を拾い上げていく「Archis」の姿勢が本誌に投げる影は小さくありません。 こうした背景を持つ雑誌「Volume」が「それでもなお」建築雑誌であるその理由とは、とりもなおさず本誌が「力」を扱っている点にあります。人々はときに建築をなし、ときにそれを壊します。その裏側にある力。そして生み出された建築は物理的にも権利的にも多くの人を巻き込んでいく。その細部に宿る力。本誌で問われる力とはつまり建設に不可欠である物理的な力ではなく、建築自体にまとわりつく力のことを指しています。力は建築を利用して自らを表し、またそれによって自らを組織するのです。こうした建築をめぐる力学、いわば建築にまつわる政治性を前にして、建築は「建物を建てる」というそれまでの定義を自ら乗り越えなければなりません。安逸な縮小再生産にも、反論しがたい「政治的な正しさ」にも惑わされることなく、正しく政治的であろうとする姿勢。今よりもっと目を見開いて、私たちが新たに直面せざるを得ない不安やペシミズムに対し毅然とした態度でウィットを投げるユーモアにこそ本誌の特徴があります。「Volume」は尋ねます。私たちは建築の文化的政治的重要性を再び取り戻せるか、と。
summaryデザインが取り組むべき課題を見定め、伝達するインディペンデ
ントな実験的季刊誌。 制作出版にはOMAのシンクタンク部門で
あるAMO、コロンビア大学「Laboratory for Arch i tectura l
Broadcast ing」通称C-Lab.、四分の三世紀続く建築雑誌
ARCHISが携わっており、出資者にはロッテルダム「オランダ建築
基金」そしてアムステルダム「モンドリアン財団」が並んでいます。「
建物をつくる」という建築の一般的な定義を飛び越え、環境をデ
ザインするという包括的な視野を持ち、社会構造に対するより広
い姿勢を提唱して建築の文化的政治的重要性を再び取り戻すこ
とを目的とする雑誌が「Volume」です。
Vo lume煽動する建築雑誌
Feb, 2009 RADスケジュール詳細はwebで・・・http://www.radlab.info
プロジェクトメンバー募集RADの各種プロジェクトの企画、運営に関わってくれる
メンバーを募集しています。専門的な知識は必要ありま
せんので、興味を持って一緒にやってみたいと思われた
方、建築やデザインの文化的、社会的な役割について興
味のある方のご応募をお待ちしています。
●活動内容
各プロジェクトにおける企画、運営、作業などメンバーと
して主体的に活動していただきます。プロジェクト、段階
によっても異なりますが、広報、会場設営、制作などがあ
ります。PAPERDESKの企画、編集、デザイン、制作、運
営、施工、オープンラボでのキッチン業務、等
●応募条件
・満18歳以上の方。
・RADの活動に関心のある方
・可能な限りミーティングに参加できる方
●応募方法
下記1~6までの必要事項をご記入いただき、件名に
「PM希望』としてメールにて【[email protected]】まで
お申し込みください。1、氏名 2、電話番号 3、メールア
ドレス 4,年齢 5、所属 6,応募動機 (その他詳細はお
問い合わせください。)
RADResearch for Arch i tecture and Des ign
PAPER TESK 2号2009年2月1日発行
発行・編集・デザイン/RAD
編集後記。最近みた展覧会の中で「思ってもみなかった事をやってみる」という作品があった。それは展示室にゴルフの練習セットが置いてあり、来場者が思ってもみなかったゴルフをする事になるという作品。あまりのばかばかしさに思わず笑みを浮かべてしまうものの、誰もいない展示室で始めてゴルフクラブをフルスイングしてしまっていた。この衝撃的な作品に込められたメッセージはおそらく「遠く隔たったもの同士をであわせる」ということなんだろう。だからゴルフをするということは、それまで自分の世界と遠く隔たっていた世界に出会うという行為を気付かせてくれるきっかけとして与えられている。反対にインターネットがつくり出す世界というのは、近くのものをより強固に結びつけ、遠くのものを排除する世界だろう。知ってる言葉、興味のある言葉しか検索することができない。それに対して街で起こる事、知る事は少なからず遠くのものに出会わせてくれる。だから、ささやかな希望としては、この紙が色々な場所で思いもかけず「遠くにいる人達」に届いてほしいと思っている。(RAD/k)
今月の関西の建築・デザイン情報
2/14(土) Que ry c ru i se 大屋雄裕4回目時間/13:30~ 場所/radlab. 受講料/3000円(学割有)「20世紀と自己決定する個人」というタイトルで、アーキテクチャ型権力と監視の関係から、自由と幸福の未来を探る。
3/1(日) Que ry c ru i se 南後由和5回目時間/16:00~ 場所/radlab. 受講料/3000円(学割有)ルフェーブルの建築論からシチュアシオニスト、そしてグラフティと建築家を通じた無名性/有名性を巡る議論へと進んできた南後先生のレクチャーも最終回。今回は受講者による有名性についての発表です。どのような有名性が見いだされるのか?
2/6 (金) オープンラボ・・・けんちく・デザインサロン時間/13:00 ~ 深夜 場所/radlab.event: 20:00~ 上映会 建築の映像をみんなで楽しみましょう。
2/21(土) READ TANK プログラムA時間/13:00~ 場所/radlab. 参加自由海外の建築雑誌『Log』『Volume』の中から興味のある論考をピックアップし、参加者で協力しながら読み進めていく。
2/20(金) オープンラボ・・・けんちく・デザインサロン時間/13:00~ 場所/radlab.event: 20:00~ 米澤隆(HAP)トークイベント(参加自由)現在名古屋工業大学の院生でありながら、いくつかの住宅を実現させ、08年のSDレビュー入選をはたしたHAPの米澤さんを招いて、これまでの作品紹介や今後の展開、学生のうちに建築を実現することについて色々語っていただきます。
『京都工芸繊維大学大学院建築設計学専攻第4回修了制作展』京都府京都文化博物館 別館ホール 2009年2月11日(水)~15日(日)
安藤忠雄建築展 [挑戦-原点から-]TOTOテクニカルセンター大阪 2009年2月11日(水)~ 3月7日(土)
連続デザインシンポジウム「g:local」 ~GLOBAL?LOCAL?~大阪市中央公会堂 大ホール 2009年2月26日(木) 17:30~20:45
Diploma×KYOTO '092009年2月27日(金)~3月1日(日)
建築家セミナー2009 青木淳講演会「最近の仕事について」京都大学百周年時計台記念館 2009年2月28日(土)14:30~16:30
archiforum osaka大阪会館 E会場 2009年2月28日(土)17:00~19:00講師 西沢立衛 タイトル 森山邸 ・ HOUSE A ・ 十和田市現代美術館
604-8005京都市中京区河原町三条恵比須町531-13 3Ftel/fax:075-241-9126E-mai l : info@radlab. info
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