oxygen in sintering

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305 Tetsu-to-Hagane Vol.87 (2001) No.5 酸素富化 と排ガス循環を組み合わせた焼結プロセスの 適正操業条件 野田 英 俊*・ 坂本 登*・ 市川 孝 一・*・町 田 智*・ 六川 庄 一・*2 Operation Conditions of Iron Ore Sintering Process Combined with Oxygen Enrichment and Exhaust Gas Recirculation System Hidetoshi NODA, Noboru SAKAMOTO, Koichi ICHIKAWA, Satoshi MACHIDA and Shoichi ROKUGAWA Synopsis : An advanced sintering process was proposed on the basis of mathematical models and was verified by pot tests . This process is characterized by combining exhaust gas recirculation with oxygen enrichment in order to meet the future environmental regulations as well as to keep the productivity. The main results obtained are as follows : ( 1 ) The models clarify that the introduction of the oxygen enrichment in the first half and the exhaust gas recirculation in the latter half of the sintering process gives better coke combustion rate and sinter quality than other possible alignments . ( 2 ) The models also show that with the constant O2 quantity provided, the concentrated O2 supply in a short time helps reduce the sinter- ing time because of the balance between combustion rate and cooling rate of the sinter bed . ( 3 ) The pot test results were in good agreement with the models. The suitable O2 content of 28•`30% and O2 injection time of 2•`3 min were consequently obtained. ( 4 ) The proposed process did not cause the deterioration of sinter qualities such as reducibility although the change in O2 content would affect the occurrence of hematite/magnetite phase in sinter microstructures . Key words : sintering process; oxygen enrichment; exhaust gas recirculation; iron are sinter; productivity; sinter qualities; coke combustion; mathematical model. 1.緒 言 焼結 プ ロセ ス は 大 気 中へ の排 出 ガ ス量 が 莫 大 で あ る こ と から,欧州 各 国 で は 系 外 排 出 ガ ス 削 減 を 目的 と した 排 ガ ス 循環 プ ロセ ス1,2)が 開 発 され て い る 。 国 内 に お い て も戸 畑3 号焼結 機3)を 始 め,排 ガ ス循 環 焼 結 プ ロ セ ス が既 に導 入 実 施されている。しかし排ガス循環 プロセスでは酸素濃度の 低下により擬似粒子内粉コークスの燃焼速度が遅れ,生 産 性の低 下 が 起 こ る こ と が 認 め ら れ て い る4,5)。 一 方,高 炉 原料として適する焼結鉱の配合率維持のためには焼結機の 生産率維 持 が必 要 で あ り,そ の 対 策 の 一 つ に 酸 素 富 化 プ ロ セスが あ げ られ る6)。 そ こで本 研 究 で は,排 ガ ス循 環 と酸 素 富 化 の 両 者 を組 合 わせた焼結プロセスの可能性および適正な操業条件を明ら か とし,高 生 産 率 下 で 系外 排 出 ガ ス量 を抑 制 可 能 な次 世 代 焼結プ ロ セス を提 言 す る 。 2.酸素富化排ガス循環焼結プロセスの検討 2・1酸 素 富 化 排 ガ ス循 環 プ ロ セ ス の考 え 方 焼 結 プ ロ セ ス に お け る排 ガ ス 循 環 方 法 に つ い て は灰 谷 ら7),山田ら4)が 鍋 試 験 に よ り詳 細 な検 討 を 行 っ て お り, グ レ ー ト後 半 部 の 排 出 想 定 ガ ス を焼 結機 前 半 部 へ 循 環 させ た場合,焼 結時間は延長す るが,成 品歩留が向上するため 生 産 性 は通 常 焼 結 法 と変 化 が な い こ と,ま た,吸 引 ガ ス 中 酸 素 濃 度 の 限 界 は16~17vol%で あ る こ と を指 摘 して い る 。 さ ら に循 環 方 式 につ い て は,安 本 ら8-10)が 酸素濃度の低い グレー ト前半部の排出ガスを後半部に循環利用するいわゆ る,前 半大気/後 半排 ガス循環焼結において も,通常の焼 結 法 と 変 わ ら な い 品 質 が 得 られ,排 出 ガ ス 量 も約40vol% 削 減 で き る可 能 性 が あ る こ と を報 告 して い る。 こ こで,焼 結 時 間 は鍋 試 験 に お い て は 点 火 よ り排 ガ ス が 最 高 温 度 を示 す 点(BTP:Burn Through Point)ま での時間を 指すのが一般的で,粉 コークス(カ ーボン)の燃焼がほぼ 完 了 して い る状 態 と考 え られ る 。 実 機 プ ロ セ スの 場 合,基 本 的 にはBTPがほぼ,焼 結機 の機 長 方 向 で92%の位置 と な っ て お り,こ の 時 点 で は カ ー ボ ン燃 焼 が完 了 して い る と 推 察 され,こ の 状 態 を焼 結 完 了,す な わ ち,点 火 か ら この 間 の 時 間 を焼 結 時 間 と定 義 す れ ば生 産 性 等 へ の 影 響 効 果 に 対 して は,両 者 は 同 等 に評 価 で き る もの と考 え られ る。 これ らの知見および生産性 を考慮すると ,酸 素 富 化 と排 ガス循環の同時組合わせプロセスが生産面,環 境面の諸課 平成 12年 8月31日受成 13年 1月30日受理 (Received on Aug. 31, 2000; Accepted on Jan. 30, 2001) * NKK総 合材料技術研究所 (Materials & Processing Research Center, NKK Corp., 1 Kokan-cho Fukuyama 721-8510) *2NKK総合材 料 技 術 研 究 所(現:鋼 管 ドラム(株)) (Materials & Processing Research Center,NKK Corp., now Kokan Drum Co., Ltd.) 101

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Page 1: Oxygen in sintering

305

論 文鉄 と 鋼 Tetsu-to-Hagane Vol.87 (2001) No.5

酸素富化 と排ガス循環を組み合わせた焼結プロセスの

適正操業条件

野 田 英 俊*・ 坂 本 登*・ 市 川 孝 一・*・ 町 田 智*・ 六 川 庄 一・*2

Operation Conditions of Iron Ore Sintering Process Combined with

Oxygen Enrichment and Exhaust Gas Recirculation System

Hidetoshi NODA, Noboru SAKAMOTO, Koichi ICHIKAWA, Satoshi MACHIDA and Shoichi ROKUGAWA

Synopsis : An advanced sintering process was proposed on the basis of mathematical models and was verified by pot tests . This process is characterized

by combining exhaust gas recirculation with oxygen enrichment in order to meet the future environmental regulations as well as to keep the

productivity. The main results obtained are as follows :

( 1 ) The models clarify that the introduction of the oxygen enrichment in the first half and the exhaust gas recirculation in the latter half

of the sintering process gives better coke combustion rate and sinter quality than other possible alignments .

( 2 ) The models also show that with the constant O2 quantity provided, the concentrated O2 supply in a short time helps reduce the sinter-

ing time because of the balance between combustion rate and cooling rate of the sinter bed .

( 3 ) The pot test results were in good agreement with the models. The suitable O2 content of 28•`30% and O2 injection time of 2•`3 min

were consequently obtained.

( 4 ) The proposed process did not cause the deterioration of sinter qualities such as reducibility although the change in O2 content would

affect the occurrence of hematite/magnetite phase in sinter microstructures .

Key words : sintering process; oxygen enrichment; exhaust gas recirculation; iron are sinter; productivity; sinter qualities; coke combustion; mathematical

model.

1. 緒言

焼結プロセスは大気中への排出ガス量が莫大であること

から,欧 州各国では系外排出ガス削減を目的とした排ガス

循環プロセス1,2)が開発 されている。国内においても戸畑3

号焼結機3)を始め,排 ガス循環焼結プロセスが既 に導入実

施されている。しかし排ガス循環 プロセスでは酸素濃度の

低下により擬似粒子内粉コークスの燃焼速度が遅れ,生 産

性の低下が起 こることが認められている4,5)。一方,高 炉

原料として適する焼結鉱の配合率維持のためには焼結機の

生産率維持が必要であり,そ の対策の一つに酸素富化プロ

セスがあげられる6)。

そこで本研究では,排 ガス循環 と酸素富化の両者を組合

わせた焼結プロセスの可能性および適正な操業条件を明ら

かとし,高 生産率下で系外排出ガス量 を抑制可能な次世代

焼結プロセスを提言する。

2. 酸素 富化 排 ガ ス循 環 焼 結 プ ロ セ ス の検 討

2・1 酸素富化排ガス循環プロセスの考え方

焼結プロセスにおける排 ガス循環方法については灰谷

ら7),山 田 ら4)が鍋試験 により詳細 な検討 を行っており,

グレー ト後半部の排出想定ガスを焼結機前半部へ循環 させ

た場合,焼 結時間は延長す るが,成 品歩留が向上するため

生産性は通常焼結法と変化がないこと,ま た,吸 引ガス中

酸素濃度の限界は16~17vol%で あることを指摘 している。

さらに循環方式につ いては,安 本 ら8-10)が酸素濃度の低い

グレー ト前半部の排出ガスを後半部に循環利用するいわゆ

る,前 半大気/後 半排 ガス循環焼結において も,通 常の焼

結法と変わらない品質が得 られ,排 出ガス量 も約40vol%

削減できる可能性があることを報告 している。

ここで,焼 結時間は鍋試験においては点火より排ガスが

最高温度を示す点(BTP:Burn Through Point)ま での時間を

指すのが一般的で,粉 コークス(カ ーボン)の 燃焼がほぼ

完了している状態と考えられる。実機プロセスの場合,基

本的にはBTPが ほぼ,焼 結機の機長方向で92%の 位置 と

なっており,こ の時点ではカーボン燃焼が完了 していると

推察 され,こ の状態を焼結完了,す なわち,点 火からこの

間の時間を焼結時間と定義すれば生産性等への影響効果に

対 しては,両 者は同等に評価できるものと考えられる。

これ らの知見および生産性 を考慮すると ,酸 素富化 と排

ガス循環の同時組合わせプロセスが生産面,環 境面の諸課

平成 12年 8月 31日 受付 平成 13年 1月 30日 受理 (Received on Aug. 31, 2000; Accepted on Jan. 30, 2001)* NKK総 合材料技術研究所 (Materials & Processing Research Center, NKK Corp., 1 Kokan-cho Fukuyama 721-8510)*2NKK総 合材料技術研究所(現:鋼 管 ドラム(株)) (Materials & Processing Research Center,NKK Corp., now Kokan Drum Co., Ltd.)

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Page 2: Oxygen in sintering

306 鉄 と鋼 Tetsu-to-Hagane Vol.87(2001)No.5

題を同時達成する新プロセスとして考 えられる。

本研究では,こ の新プロセスに対 し,適 切な組合わせ方

法,酸 素富化の適正領域および最適な酸素濃度を明 らかに

することにより,全 系プロセスの構築 を図る。

2・2  数学モデルによる検討

酸素富化および排ガス循環 を行った場合の酸素濃度変化

に対する焼結層内の各種プロセス変数を予測するため,焼

結 プロセスシ ミュレーションモデルによる評価 を行 った.

本数学モデルの構成は基本的には既存モデル(以 下,初 期

プロ トタイプモデルと称す)11,12)と同様である。ただし,初

期 プロ トタイプモデルでは原料の粒子径は規定されている

ものの,焼 結プロセスの基本となる擬似粒子の概念は考慮

されていない。このため本モデルでは,高 温場で起 こる各

種反応現象の単位 を擬似粒子と考 えている。 したがって,

焼結ベ ッド内の粉コークスの燃焼は擬似粒子内部に酸素が

拡散 していき,こ こに存在する粉 コークスに着火 し,CO2

となって擬似粒子外部へ出てい くといった現象を数学モデ

ルに取 り込んだ。石灰石の熱分解反応,マ グネタイ トの酸

化反応についても同様 な取 り扱いを行った。その模式図を

Fig.1に 示す。さらに,微 分層内のエ ンタル ピー収支に強

い影響を及ぼす空隙率については溶融開始温度 と溶融完了

温度およびそれぞれの温度に対応する最大,最 小の空間率

を設定 し,こ の間を固体温度の一次関数と定義 した。初期

プロ トタイプモデルは原料粒子径と粉 コークス粒子径を独

立に扱い,後 者の燃焼反応は化学反応 と境膜物質移動を考

慮 している。これに対 し本モデルは,Fig.1に 示す ように

擬似粒子内の酸素の粒内拡散および微分層内での固気対流

伝熱量ΔO(W/m3)は,

(1)

ただし,%=6(1-ε の)/(iPdp):擬似粒子比表面積(m2/m3),hp:

熱伝達係数(W/(m2・℃)),Tg:ガ ス温度(℃),T,:固 体温度

CC),ε の:溶 融反応を考慮 した固体温度Tの 関数で表 され

る空隙率(一),φ:形 状係数(一),dp:擬 似粒子径(m)と し,溶

融反応に伴 う空隙率変化が比表面積に影響 を及ぼし,最 終

的に対流伝熱量が変化することを考慮 した。これにより擬

似粒子径の大 きさによる粉コークスの燃焼速度,ベ ッド微

分層内でのエンタル ピー収支が現実に則 して評価できると

考えられる。 また,初 期プロ トタイプモデルではベ ッド内

の質量速度を一定としてモデルを構築 しているが,本 モデ

ルでは負圧一定操業条件 をシミュレー トするため,吸 引負

圧を一定 としてErgunの 式13)により風速を算出する方法を

取 り入れている。本検討では焼結主排風機吐出側からの排

ガスの一部を取 り出 して焼結機上に循環 させ,酸 素富化お

よび大気との混合吸引を前提に,ベ ッド表面上で負圧また

は正圧 とならないようなバランスを想定 している。換言す

れば,ベ ッド吸引ガス中の酸素濃度が焼結過程にどのよう

な影響 を与えるかを明 らかにすることに主眼をおいて負圧

一定下での検討 を行った。また,焼 結ベッド内の熱履歴は

ベ ッド内を通過する風量に ,通 過風量はベッド内の層空間

率に強 く依存す る。本モデルはこれ らを考慮すべ く,乾 燥

帯,湿 潤帯,冷 却帯の層空間率をそれぞれ独立 に設定 し

た。

粉コークスの燃焼に大 きな影響を与えるガス等の物性値

につ いては,熱 伝達係数(hp)お よび物 質移動係 数(kg)は

Ranz14)の式,kgの 計算に必要なガスの粘度(μ)はThodosら15)

の式か ら求めた単一ガスの値 をwilke16)の式より多成分系

に拡張 した。hpの 計算に必要 なガスの熱伝導度は同様 に

wilke17)の式 より求めた。気相中の拡散係数は藤田18)の式

より求め,こ れをwilkeの 式 より多成分系に拡張 した。粉

コークスの燃焼反応はHottelら19)の式 を用い,Hottelら の

モデルでは評価できない粒子内酸素拡散はFig.1に 示 した

構成 とし,擬 似粒子径,嵩 密度の影響も考慮 した。その他

数学モデル,基 礎反応式および数値計算方法などはすべて

既報20)に従 った。なお,今 回の シミュレーシ ョン計算にあ

たっては排 ガス循環時の酸素濃度の影響推定を主目的と

し,循 環 ガスとしての吹込みガスは酸素濃度のみを変化 さ

せることとし,ガ ス温度,H2O,CO2濃 度等については考慮

していない。また,計 算上,点 火より最下層部の粉コーク

ス燃焼完了までの時間を便宜的に焼結完了時間と捉え,鍋

試験,実 機操業との比較検討を行うこととした。本数学モ

デルを基に したシ ミュレーショ ンにより,焼 結時間に対す

る焼結ベッドの深 さ方向の温度,粉 コークス燃焼率や石灰

石の分解率,こ れに伴うガス組成変化等が得 られる。一例

として焼結ベッ ド内の温度分布をFig.2に 示す。同様の表

示方法 を示す児子 らの結果21)と比較すると冷却速度が遅

れ,高 温領域が広い点が特徴である。

2・3  シミュレーションによるプロセス評価

2・2の 数学モデル を用い,こ こでは,特 に酸素富化と排

ガス循環 を組合わせた場合,焼 結生産性への影響が大きい

Fig. 1. Mass transfer model in a quasi-particle.

102

Page 3: Oxygen in sintering

酸素富化と排ガス循環を組み合わせた焼結プロセスの適正操業条件 307

粉コークス燃焼速度の観点から最適な酸素吹込み位置,濃

度のプロセスの評価 を行った。焼結プロセスにおいて酸素

富化と排ガス循環を同時に行 う方法は種々考 えられるが,

上述した点を考慮すると基本的な組合わせは以下に示す3

ケースで整理できる。ケース1:循 環排 ガスに酸素を富化

し,吸 引ガス中の酸素濃度 を大気中の濃度に合致 させ,

ベッド全領域に均一に吹き込む条件である。この考 え方は

循環排ガスの酸素濃度 を調整 してベ ッド全領域に吹 き込む

という点でEOSプ ロセス1,2)の方式 と合致す るものである.

ケース2:排 ガスの循環供給 と酸素富化 をベ ッド上で独立

に行い,ケ ース1と 比較 し焼結機前半での焼結速度の改善

を意図した。ここでは点火炉後の相対的に前半の部分(以

下,前 半)に 酸素富化 を,相 対的に後半の部分(以 下,後

半)に 排ガス循環を行 うプロセスを想定 している。ケース

3:ケ ース2と 同様,焼 結速度向上 を意図 した。ただ し,

ここでは前半に排ガス循環を,後 半に酸素富化 を行 うプロ

セスを想定している。ケース2と ケース3で は焼結生産性

を意識した場合,燃 焼開始初期に酸素富化を行い,焼 結初

期段階で粉コークスの燃焼速度向上 を図る,あ るいは一般

に燃焼帯が焼結ベ ッドの下層域に達 し,そ の幅が拡大 して

くる焼結後期での粉コークスの燃焼速度向上を図るいずれ

のケースが適正かを予測することを目的とした。これ らの

焼結プロセスフローをFig.3に 示す。なお,こ れ らの焼結

プロセスのシミュレーションにあたっての主要条件 は以下

のとおりである。焼結 ベッ ド層厚:500mm,吸 引負圧:

14.7kPa,点 火温度/時 間:1200℃/90s(点 火炉内 を想

定),擬 似粒子径:25mmφ,粉 コー クス添加量:3.0

mass%,原 料中の石灰石(CaO換 算):9.0mass%,原 料初

期,限 界,平 衡水分率:6.0,1.0,0mass%,ま た,ケ ース2,

3における酸素富化 ガスおよび排ガス中の酸素濃度:26,

16vol%,そ れぞれのガスの吹込み時間:400sと し,通 常

焼結状態(大 気吸引:O2=21vol%)に てほぼ,中 層温度

が上昇開始す る400s後 より吹込み開始 した。 ここでは,

最終排出ガスの一部を循環す ることを狙いとしてい るの

で,想 定循環ガス側の酸素濃度 は焼結排ガス平均酸素濃度

の16vol%(大 気組成 よ り-5vol%)と し,ま た,想 定酸

Case 1 : Oxygen and exhaust gas are mixed before injection

Case 2: Oxygen injection before exhaust gas recycling

Case 3: Exhaust gas recycling before oxygen injection

素 富 化 濃 度 を26vol%(大 気 組 成 よ り+5vol%)と 設 定 し

た 。 な お,上,中,下 層 の温 度,排 ガ ス 組 成 等 の 計 算 ポ イ

ン トは 各 々 上 面 よ り1/3,2/3,3/3(原 料 層 と床 敷 の 境 界 面)

と した 。

Fig.4に こ れ ら3ケ ー ス の プ ロ セ ス シ ミュ レ ー シ ョン結

果 を示 す 。Fig.4の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン結 果 よ り,ベ ッ ド各

層 の ヒ ー トパ タ ー ンか ら3ケ ー ス の 問 で 顕 著 な差 は 見 られ

な い が,粉 コ ー ク ス の 燃 焼 速 度 に は差 が 認 め られ る。 す な

わ ち,基 準 と な る ケ ー ス1に 比 べ,ケ ー ス2の 粉 コ ー ク ス

燃 焼 速 度 は 速 く,酸 素 富 化400sの 期 間 に 下 層 部 の 粉 コ ー

ク ス まで 完 全 に燃 焼 が 完 了す る。 こ の た め,後 半 に酸 素 濃

度 の低 い排 ガ ス を吹 き込 ん で も粉 コ ー ク ス の 燃 焼 の 遅 延 に

は至 らな い 。 これ に対 し,ケ ー ス3で は 後 半 の 酸 素 富 化 に

よ って 下 層 部 の 粉 コ ー ク ス の 燃 焼 速 度 は ケ ー ス1,2に 比 較

Fig. 2. Temperature distribution in sintering bed evaluated by the simulation model.

Fig. 3. Typical sintering processes supposing oxygen en-richment and exhaust gas recirculation.

103

Page 4: Oxygen in sintering

308 鉄 と鋼 Tetsu-to-Hagane Vol,87(2001)No.5

し早い。ただ し,前 半の酸素濃度の低い排ガス吹込みによ

り上,中 層部粉コークスの燃焼が遅れ,結 局ベ ッド全体の

粉コークス燃焼速度 は遅延する。以上のシ ミュレーション

結果を総合すると,吸 引負圧一定下では,ベ ッ ド内通過ガ

ス量は前半が少なく,後 半が多い。このため,ケ ース2と

ケース3を 比較 した場合,酸 素吹込み総量ではケース3の

方が多いことが認められる。それにもかかわらず,前 半に

酸素富化するケース2の 方がコークス燃焼面では効果があ

ることが予想 される。

3. 実 験 に よ る プ ロ セ ス の 検 証

シミュレーションによるケース1~3の プロセス評価に

よってベ ッド内各層の粉コークスの燃焼速度は通過ガス中

の酸 素 濃 度 に 強 く依 存 す る こ と を 明 らか と した。 こ こ で は

実 験 に よ っ て酸 素 濃 度 の違 い に よ り,焼 結 プ ロ セ スの 生 産

率,シ ミュ レー シ ョ ンで は 得 られ な い 焼 結 時 間,成 品 焼 結

鉱 の 品 質,歩 留 等 を求 め,ケ ー ス1~3を 評 価 す る。

3・1  試 験 装 置 と焼 成 試 験 条 件

Fig.5に 使 用 した 試 験 装 置(ポ ッ トグ レー ト炉)を 示 す.

配 合 原 料 は福 山4号 焼 結 実機 使 用 原 料 を用 い,Tablelに し

た が っ て 配 合 し,ド ラ ム ミキ サ ー(内 径:600mm,回 転

数:30rpm)に て混 合,造 粒 各 々3minで 行 い,造 粒 後 水

分 は 約7mass%と し た 。 層 厚 は450mm,原 料 装 入 量 は 約

50kgで 床 敷 鉱 の 厚 さ は50mmと し,負 圧9.8kPa(一 定)

で 焼 成 を行 っ た 。 酸 素 濃 度 の 変 更 は点 火 後,吸 引 大 気 中 に

速 や か に 予 備 試 験 に て 把 握 して い る焼 成 風 量 よ り計 算 した

所 定 の 酸 素(50~2001/min)お よ び 窒 素(340, 6001/min) を

Fig. 4. Simulation results showing influence of injection gas conditions on the sintering process.

104

Page 5: Oxygen in sintering

酸素富化と排 ガス循環を組み合わせた焼結プロセスの適正操業条件 309

ポット上部より吹 き込んだ。湿分の焼結性への影響につい

ては細谷ら22)が指摘 しているが,本 実験では酸素濃度の影

響に主眼をおき湿分の調整は行っていない。吸引ガス中酸

素濃度は最終的に各試験における焼成風量と吹込み時間よ

り求めた。焼結層内の温度測定はFig.5に 示すように上下

方向に3点 およびグ レー ト直下の排ガスについて実施 し,

排ガス分析は連続式の赤外線式ガス分析計(CO, CO2), 磁

気式酸素計を用いた。実験精度の観1点から,Fig。3に 示す

3ケースの実験の代わ りに吸引ガス中の酸素濃度が焼結プ

ロセスに及ぼす影響 を明 らかにすることで ,ケ ース1~3

のプロセス評価を行った。

3・2 焼成試験結果

吸引ガス中の酸素濃度と焼結諸性状(焼 結時間,生 産率,

歩留,シ ャッター強 度)の 関係をFig.6に 示す。Fig.6よ り,

酸素濃度増加に伴い焼結時間は直線的に減少 している。生

産率は焼結時間とは負相関 となるので酸素濃度増加 に伴

い,成 品焼結鉱+5mm値,+10mm値 でのいずれの生産率

でもほぼ同様に増加傾向となっている.ま た ,酸 素濃度が

21vol%(二 大気中酸素濃度)未 満では歩留,シ ャッター

強度共に悪化傾向が見 られ,こ れらの結果は従来の知見鋤

とほぼ一致するものである。…方,酸 素濃度が21vo1%以

上となっても歩留,シ ャッター強度には変化は見 られない.

酸素濃度上昇時にコークスの燃焼速度が向上 し,こ れに伴

い焼結時間が短縮 されることによって歩留や強度悪化する

と思われる現象は確認 されなかった。酸素濃度が成品焼結

鉱のJIS-RI,RDIお よびFeOに 及ぼす影響 をFig.7に 示す.

これ よりJIS-RI,RDIは,酸 素濃度 によって変化が認め ら

れない。ただし,焼 結鉱中FeOに ついては酸素濃度の増加

に従い低下傾向となった。

以上より,酸 素富化によって生産率の向上が図られ,当

初懸念 された品質の悪化は酸素濃度が21vol%未 満の領域

以外では認められない。これ らの実験結果により,点 火炉

直後に酸素富化を行い,排 ガス循環の前にベ ッド全体の粉

コークスの燃焼 を完了 させるケース2が ケース1 ,3と 比較

して優れることが実験によっても考察 された。逆にケース

3の よ うに前半に排ガス循環 を行 う場合,ベ ッド上,中 層

部の強度や歩留の悪化が懸念 される。

3・3  焼結鉱組織観察結果

酸素濃度を変化させた場合の焼結鉱組織について顕微鏡

による組織観察を行った。試料はいずれ もポッ トテス トよ

Fig. 5. Experimental apparatus for the sintering test.

Table 1. Raw material conditions of pot tests and target CaO/SiO2 and SiO2 of sinter products.

Fig. 6. Effect of O, content on characteristics of the sinter-

ing process.

Fig. 7. Influence of O2 content on JIS-RI, RDI and FeO of

sinter products.

105

Page 6: Oxygen in sintering

310 鉄 と 鋼 Tetsu-to-Hagane Vol.87(2001)No.5

(a) Base(02=21vol%) (b) 02=35vo1% (c) 02=11vo1%

(a) Base(02=21vo1%) (b) 02=35vo1% (c) 02=11vo1%

り得 ら れ た 各 焼 結 ケ ー キ の 中 層 部 よ り採 取 し た 。Fig.8に

べ ー ス(大 気 中 通 常 焼 結:ケ ー ス1に 該 当 し,酸 素 富 化 排

ガ ス 循 環 な し)お よ び 酸 素 濃 度 約35volo/。,llvo1%条 件F

(ケ ー ス2,3に 該 当)で の 焼 成 試 験 で 得 られ た 焼 結 鉱 の ミ

ク ロ組 織 写 真 を示 す 。 ま た,同 一・試 料 で の 画 像 処 理 装 置 に

よ る組 織 定 量 も実 施 し,こ の 結 果 をFig.9に 示 す 。

Fig.8よ り,酸 素 濃 度 が35volo/。 の 条 件 下 で 焼 成 した(b)

で は ベ ー ス(a)に 比 べ ヘ マ タ イ ト相 が 増 加 して い る が,肥

大 化 した2次 ヘ マ タ イ ト粒 子 は あ ま り 見 られ ず 過 溶 融 組 織

も 少 な い 。(c)で は 酸 素 濃 度 が 低 下 し組 織 中 の 酸 化 鉄 が ヘ

マ タ イ トよ り マ グ ネ タ イ トに 変 化 して も,そ の マ グ ネ タ イ

ト粒 子は 高 シ リカ焼 結 鉱 中 に 見 られ る 粗 大2次 ヘ マ タ イ ト

か ら変 化 した2次 マ グ ネ タ イ ト23)に比 較 し粒 径 は 小 さい の

が 特 徴 で あ る、,

4. 考 察

4・1 酸素濃度の粉 コークス燃焼性に及ぼす影響

酸素富化時の焼結排ガスの組成分析結果(焼 結開始から

終 了までの平均組成)をFig.10に 示す。排 ガス中co濃 度

は酸素濃度によらずほぼ 一定であるが,排 ガス中CO2お よ

び酸素(02)濃度は共に増加 している。ただ しその増加割合

は,02に 比較 しCO2は 微増に留 まっている。最近の事前

処理 を強化 した焼結プロセスでは,焼 結ベ ッド内での粉

コークスは単独に存在す ることは少な く,そ の大部分は

Fig.1に 示すよ うに擬似粒子内部に存在する。このため,

擬似粒子内粉コークスは着火直後には化学反応律速 と擬似

粒子外表面境膜内拡散律速によって燃焼が進行するが,中

期以降 は擬似粒子内部 を酸素が拡散する拡散律速に移行す

る。このため,酸 素富化により酸素濃度を ヒげても十分に

燃焼せず,Fig.10に 示す排ガス中の酸素濃度の上 昇に至っ

たものと推定される。しか し酸素濃度の上 昇により,排 ガ

ス中のCO2も 上昇 しており,粉 コークスの燃焼速度向上へ

の寄与は十分認められる。Fig.11に 酸素濃度とFFS(Flame

FrontSpeed:焼 結ベ ッ ド高さを焼結完了時間すなわち,点

火か らポッ トグレー ト炉直下の排ガス最高温度到達までの

時間で除 した値で,火 炎前面の平均移動速度 と定義)の 関

係 を示す。 これより,酸 素濃度 が増加するに したがって

FFSは 増加 していることが分かる。これは酸素富化により,

Fig. 8. Effect of 0, content in injection gas on the exhaust gas composition.

Fig. 9. Microstructure of sinter products.

Fig. 10. Mineral composition and porosity of the sinter structures measured by an image analyzer.

Fig. 11. Effect of 0, content on Flame Front Speed ob-tained from the pot tests.

106

Page 7: Oxygen in sintering

酸素富化と排ガス循環を組み合わせた焼結プロセスの適正操業条件 3屑

擬似粒子内への拡散ガス中の酸素分圧上昇によって粉コー

クスの燃焼速度が向上 し,そ の結果,充 填層内通気性が大

幅に変化 しなければ粉コークス着火に必要な熱量供給が図

られ,Fig.11に 示すようにFFSの 上昇につながったと推察

される。

以上より,酸 素濃度の上昇に見合った酸素の有効利用 を

図るためには,粉 コークス燃焼時に拡散律速段階となる時

期を極力遅 らせることが望 ましく,そ のためには例えば,

粉コークスを擬似粒子表層部に被覆する方法24)が効果があ

るものと考えられる。また,こ のような方法 を導入す るこ

とによって,ケ ース2の プロセスは短時間に粉コークスの

燃焼が完了 し,焼 結速度の向上が期待できる。擬似粒子内

の粉コークスの燃焼速度論的観点からは粒内酸素の拡散距

離を短縮化することが効果的である。このため,擬 似粒子

径を小さくすることが対策の一つ と考えられるが,こ の場

合はベ ッドの通気性の悪化につながるため,好 ましい方法

とは言えない。Fig.12に 吸引ガス中の酸素濃度 とポ ット炉

内部における高温保持時間の関係 を示す。 これより酸素濃

度が増加す るにしたがって1100℃ 以上の保持時間が増加

し,焼 結ベ ッドの上層,中 層,下 層となるに従い,そ の傾

向は顕著 となることが認められ る。これはFig.7に 示すよ

うに酸素富化では焼結鉱中FeOが 低いことから,酸 素濃度

の上昇により粉 コークスの燃焼速度が向上 し,擬 似粒子内

の未燃カーボンが酸化鉄(Fe2O3)の直接還元に寄与す るより

も燃焼反応,す なわち,CO2へ の転換に寄与する割合が大

きかったため層内温度が上昇 し,結 果的に高温保持時間が

延長傾向となったと推察 される。ただし,そ の燃焼 メカニ

ズムの詳細は今後の検討課題である。

当初,燃 焼速度の向上により高温保持時間が短縮 し,酸

素富化焼結時の焼結鉱品質の低下が懸念 されたが,こ のよ

うにベ ッド層内の高温保持時間が延長傾向 となったため,

Fig.6に示 したように吸引ガス中の酸素濃度が増加 して も

シャッター強度,歩 留が低下 しなかったものと考えられる。

4・2 酸素濃度の焼結鉱組織への影響

Fig.8の 組織観察結果から,(b)で は粗大2次 ヘマ タイ ト

と過溶融組織の減少がRDIが 悪化 しなかった原因の一つ と

考 えられ る。 また,(c)で は組織が全体 的に多孔質で,各

種鉱物相がスラグマ トリックスか ら晶出した緻密組織とは

異なっていることが分かる。 これはTableIに 示 したよう

に,成 品焼結鉱中シリカ含有量が5mass%以 下と比較的低

シリカ傾向 となるような原料配合を行ったことに起因 して

いると推察 された25)。これによりFig.9に 示すように,組

織中にマグネタイ トが相対的に増加 しても還元性の悪化に

は至 らず,Fig.8に 見られるような多孔質組織が形成 され

るものと推察できる。この結果 より,酸 素富化排 ガス循環

プロセスでは,相 対的に融液生成量の少ない低 シリカ焼結

鉱製造を指向することが品質面から見て優位と考えられる.

4・3  酸素富化の適正化

焼結速度の上昇および高温保持時間の拡大の観点から,

ケース2の プロセスの有効性を既 に明らかとした。ここで

は同一酸素使用量において酸素富化 を有効に行わせ るた

め,酸 素濃度および酸素吹込み位置の最適化について検証

を試みた。2・2の 数学モデルにより,点 火開始後,90sよ

り最下層部の粉コークス燃焼が完了するまで酸素富化率 を

大気中濃度 に対 し,1vol%と して焼成を行った場合の計算

結果を基準 として,こ の間に吹き込んだ酸素総量を一定 と

し,吹 込み時間を変更 して吹 き込んだ場合の点火開始90s

後か ら最下層部の粉コークス燃焼が完了するまでの相対的

な焼結時間を求めた。この結果をFig.13に 示す。なお,シ

ミュレーションの計算条件および下層部の測定ポイント等

は2・3と 同一である。焼結プロセスは主として粉コークス

の燃焼による発熱 と常温空気による冷却とから成 り立って

おり,そ の影響度合いによってヒー トパターンが決定 され

る。Fig.13よ り酸素供給量が一定であって も,そ の濃度 と

供給時問によって粉コークスの燃焼速度が異なるため,適

正値のあることが予測される。シミュレーションによれば,

酸素供給 は点火直後(90s後)よ り酸素富化 を行 う場合,

Fig. 12. Effect of 02 content on the holding time above

1100•Ž.

Fig. 13. Comparison of simulation results on coke com-bustion time under a constant oxygen enrichment condition.

107

Page 8: Oxygen in sintering

312 鉄 と鋼 Tetsu-to-Hagane Vol.87(2001)No.5

酸素供給 量の総計が一定な ら約30vol%の 酸素濃度を2~3

minで 供給することが焼結時間の短縮に効果的であり,そ

れ以上,酸 素濃度を上げて吹込み時間を短縮 しても効果が

なくなることを示 している。これ を実験的に検討す るため,

ポ ッ ト炉 を用いた焼成試験 を行った。ポ ットテス トでは,

焼結の進行が一次元非定常状態のため,実 機 プロセスにお

ける酸素富化位置の設定は吹込み時間で調整する,い わゆ

る位置一時間の単位変換により実施 した。実験 にあたって

はFig.13の 結果を参考に,そ の適正範囲と考えられ る領域

を設定 した。Fig.14に 示す ような焼結機の機 長長 さ前半

1/2((1)),1/4((2)).1/8((3)).1/16((4))の領域に酸素富化空気を

吹 き込むことを想定 して酸素供給量の総計が 一定となるよ

うに酸素濃度および酸素吹込み時間を換算 して焼成試験 を

実施 した。ポ ットテス トにおける配合原料,造 粒 ・焼成方

法は3・1と 同 一である。Fig.15にFig.14の 条件を基に行 っ

たポッ トテス トの結果を示す。これより,焼 結機の機長長

さ前半部の1/8~1/4の 領域 に酸素を集中的に供給 した状況

を仮定 した条件が焼結時間,生 産率の観点か ら優れている

ことが認め られた。 したがって,実 機プロセスを想定する

と同一酸素供給量前提では,で きる限 り点火炉に近い位置

で酸素を集中的に供給 した場合に焼結時間および生産率が

各々,最 適値 を示す適正条件が存在することが予想 された.

この実験結果はシ ミュレーションの推定結果 を裏付けるも

ので,酸 素富化排ガス循環プロセスにおける最適酸素供給

方法を示唆す るものと言 える。

5. 結 言

高炉への処理鉱配合率維持の観点か ら,酸 素富化排ガス

循環焼結プロセスをシ ミュレーションによる予測と実験に

よる検討に基づき提言 した。得 られた成果は以 下のとおり

である。

(1) 酸素富化排 ガス循環プロセスでは,粉 コークスの

燃焼過程にある前半部に酸素富化,粉 コークスの燃焼の完

了 した後半部に排ガス循環を行う方式がその逆の組合わせ

あるいは循環排 ガスに酸素を富化するプロセスと比較 し,

焼結鉱の生産面,品 質面か ら有利 と推察 された。

(2) 供給酸素量が一定であれば,点 火直後に集中して

供給すると粉コークス燃焼速度の面か ら焼結時間の短縮に

有効な最適条件が存在する。シ ミュレーションおよび焼成

試験結果 より適正酸素濃度は約28~30vol%,添 加時間は

約2~3minと 推定 された。

(3) 焼結過程での酸素濃度変化は特にヘマ タイ ト相 と

マグネタイ ト相の比率に大きな影響 を及ぼす。焼結鉱中シ

リカが相対的に低下傾向となると,吸 引ガス中の酸素濃度

の低下 によって組織内にマグネタイト相が増加 してもマグ

ネタイ トの粒径あるいは多孔質組織によって還元性の悪化

は見られない。

文 献

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9 ) S.Yasumoto, M.Fukutome, T.Yamada, T.Kodama, A.Tamei, Y.Imai, M.Haitani and K.Kitazawa: Tetsm-to-Hagane, 64 (1978), S484.

10) S.Yasumoto, M.Fukutome, T.Yamada, T.Kodama, A.Tamei, Y.Imai, M.Haitani and K.Kitazawa: Tetsu-to-Hagane, 64 ( 1978). 5485.

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Fig. 14. Pot test conditions under a constant amount of in-jecting oxygen.

Fig. 15. Influence of oxygen enrichment conditions on the

sintering time and productivity at pot test.

108