osaka university knowledge archive : ouka...アグリロイル系アミノ酸のラジカル...

146
Title アクリロイル系アミノ酸のラジカル重合に関する研究 Author(s) 池田, 能幸 Citation Issue Date Text Version ETD URL http://hdl.handle.net/11094/1123 DOI rights Note Osaka University Knowledge Archive : OUKA Osaka University Knowledge Archive : OUKA https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/ Osaka University

Upload: others

Post on 06-Jul-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

Title アクリロイル系アミノ酸のラジカル重合に関する研究

Author(s) 池田, 能幸

Citation

Issue Date

Text Version ETD

URL http://hdl.handle.net/11094/1123

DOI

rights

Note

Osaka University Knowledge Archive : OUKAOsaka University Knowledge Archive : OUKA

https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/

Osaka University

Page 2: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

アグリロイル系アミノ酸のラジカル

重合に関する研究

1984年

池 田 能幸

Page 3: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

緒 言… 1

第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液重合… 7

経 言… 7

第1節

1.1

1.2

1.3

アグリロイルグリシンおよびメタクリ1コイルグリシンの

溶液重合・・一・

緒 言・・一・

実験・…・・…・・

結果と考察…・

第2節

2.I

2.2

2.3

アグリロイルアミノ酸およびメタクリロイルアミノ酸の

溶液重合………..’.’…

緒言・・…一・………

実験・一・・…

結果と考察…・

16

16

16

17

総括(第1章)・ 26

文 献… ・…@27

第2章.アグリロイル系アミノ酸の水溶液重合… 29

結 言… 29

Page 4: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

第1節 アグリロイルグリシンの水溶液重合……

1.1緒言…一・・……・・…一一・・…・

1.2 実験……・

I.3 結果と考察一・.………I一.I

30

…・・ 30

・・・… @ 30

・・・… @ 31

第2節

2.1

2,2

2.3

メタクリロイルグリシンの水溶液重合…一…

緒言…一 …・・実験…一結果と考察一.....……I…・

・・・… @ 36

36

37

37

第3節 アグリロイルアミノ酸の水溶液重合…

3.1緒言……………・・…一・一・………・・…

3.2 実 験…………………………………

3.3 結果と考察・一……・・…’..’.

44

44

45

45

第4節

4.1

4.2

4.3

メタクリロイルアミノ酸の水溶液重合…

緒言……………一・一…………・・・…

実験……………一・・………………

結果と考察…・・一………I

50

50

・一・・・・… @一・一一・・… 一・・ 50

51

第5節.メタクリロイルグノレタミソ酸の水溶液重合…

5.1緒言……

5.2 実験…一

5.3 結果と考察・….’’一.’.…’’I’1……’‘.’…“’.’

57

57

57

58

第6節

6.1

ε一アグリロイルー,ε一メタクリロイルー.リジンの

水溶液重合……・I…‘…

緒言一…

63

63

Page 5: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

6.2 実 験…

6.3結果…

6.4考察…

64

65

68

総括(第2章)・…・… 72

文 献… 76

第3軍 アグリロイル系アミノ酸の天然ゴムヘのグラフト重合… 79

緒 言… 79

第1節アクリル酸およびメタクリル酸の天然ゴムヘのグラフト重合80

1.1緒言・・・…………・・・………・・一……………………・・…一…80

1.2 実験……………・・・・・・・・・・・…一・・・・・・・…一・…………・・一…80

1.3 結果と考察……………・・…一…………一・一一…一・…… 81

第2節 メタクリロイルグリシンおよびそのエステルの天然ゴム

ヘのグラフト重合……………一・・…………一…・・…………・93

2.1緒言……一・・……………………………………一…・・…・93

2.2 実験……………一一…一・………………………・…・一・g3

2.3 結果と考察………’ 94

第3節 メタクリロイルグルタミン酸およびそのジエチルエステ

ルの天然ゴムヘのグラフト重合……………………………… 105

3.1緒言………・………・・… 105 3.2 実 験・…一・……………一・・ 105

3.3 結果と考察…………・・・・・・… 106

Page 6: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

第4節 アグリロイルーω一アミノ酸およびそのエチルエステル

の天然ゴムヘのグラフト重合…・

4.1緒言……………・…・・……………………………一1……

4.2 実 験……………一・一……………・・一…一・・……・・…

4.3 結果と考察……………・・・…………………・・’…’..……

115

115

116

116

総 括(第3章)・ 128

文 献… 131

第4軍 キレート樹脂としての応用・^ 133

1.

2.

3.

緒言………

実 験・一一

結果と考察…

… 133

133

… 134

総 括(第4章)・・ 137

文 献… 137

結 論… 139

謝 辞… 143

論文目録… 144

Page 7: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

緒 言

ポリペプチドの有機化学的合成法は, これまで種々知られているが1)~3),

その内α一アミノ酸W一カルボキシ無水物4)’5)(NCA)の重合法が最も優れて

おワ,数多くのモデルタンパクが合成され,その構造,物性および生化学的・医

化学的な基礎研究がなされ,とりわけその応用技術については,合成繊維への

利用を中心に,各分野への利用研究へと発展してきている。

しかし,これらのペプチド合成は,原始時代の地球上ではおそらく起こりえ

なかったことである。従って,アミノ酸の熱重縮合については原始地球上にお

けるタソバク質合成と関連して甚だ興味ある問題である6)川10二

これに関しては,グリシンの熱重縮合については,封管中で,Oro工1)らはア

ンモニア水存在下,また,岡本12〕らばり1/酸中で加熱することによりポリグリ

シンを得ている。

さらに香西13)’工4)らは,水,酸,有機塩基および塩の影響を調べ,適量の水が

存在するときグリシンの重縮合に最適であることを認めた。

他の有機塩基,塩は単独では効果がないが,水と併用するとポリグリシンの

生成に有効であり,有機酸もまたグリシンの重縮合に有効であるが,この場合

W一末端がアシル化される。このとき,尿素15)も重縮合剤として有効であるこ

とを認めている。

また,グリシン以外の各種アミノ酸を,酢酸工6)およびアンモニア水17)存在

下で熱重縮合が検討され,興味ある反応機構を提出している。

以上の結果中,特にカルボン酸の存在下でのグリシンの熱重縮合反応は,ま

ずM一末端のアシル化が起こり,これが溶融状態でグリシンを溶解して両者間

で縮合を起こし,以下縮合を繰返し,ポリグリシンを与えると結論している。

この反応において,アシル化剤として不飽和カルボン酸を用いると,二次重

合可能なポリグリシンの不飽和アシル化体が得られることを期待して,アクリ

ル酸,メタクリル酸,クロトン酸などの不飽和酸とグリシンとの熱重縮合を種

々検討したが,予想に反して生成物の不飽和度の低いところから目的を達成す

一1一

Page 8: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

王8)るには至らなかった 。

そこで,アクリル酸やメタクリル酸などの不飽和酸にアミノ酸またはペプチ

ドを結合させ,それを重合すると上記の目的が達成されると考えられる。これ

らポリマーは普通のビニル系ポリマーとアミノ酸ポリマーとの中間的なポリマ

ーと考えることができ,従来,この種のポリマーは若干の研究者により注目さ

れており,施光度からポリマーの構造19)を,また,アミノリシスに対する構

造の影響20㌔さらには,高分子鎖のミクロ環境の性質21)が検討されている。

しかし,その重合条件に関する詳細な報告は見当らない。そこで,アミノ酸

華を結合した種々のアグリロイル系アミノ酸を合成し,そのラジカル重合を反

応速度論的に検討することによワ,ビニル化合物のラジカル連鎖重合のそれと

比較するのも意義あると考えられる。

このような観点から,本研究の第1章,第2章においては,アグリロイル系

アミノ酸のラジカル重合について詳細に検討した。

すなわち,第1章では,アグリロイルグリシン,メタクリロイルグリシン,

アグリロイルーβ一アラニン,メタクリロイルーβ一アラニン,メタクリ1コイルグ

ルタミン酸などの有機溶媒,主としてジオキサン中におけるラジカル重合を詳

細に検討し,重合条件と重合率および極限粘度との関係を明らかにした結果,

いずれのモノマーの場合もほぼ同一の傾向を示し,通常のビニル化合物の重合

挙動と類似していることを認めた。

第2章では,アグリロイル系アミノ酸の水溶液重合を,モノマーのアミノ酸

種を種々変えて,過硫酸アンモニウム,アゾビスイソブチロニトリルなどを開

始剤として,主として重合速度のpH依存性について詳細に検討した。その結

果,アグリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,β一アラニン,γ一アミノ

酪酸,ε一アミノカプロン酸)の場合には,重合速度が酸性領域では両開始剤と

も,アクリル酸などと同様にpHの増大に伴って減少するが,アルカリ性領域

では,モノマー種,.開始剤種によってかなワ異なることを認めた。

メタクリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,DL一アラニン,肌一バリ

ン,β一アラニン, ε一アミノカプロン酸)の場合には,両開始剤とも,酸性

一2一

Page 9: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

領域ではpHの増大に伴い重合速度も増大するが,アルカリ性領域ではほぼ一

定であり,アグリロイルアミノ酸の場合とは異なることを認めた。

ジカルボン酸モノマーであるメタクリロイルグルタミン酸の場合には,両開

始剤とも,先のメタクリロイルアミノ酸とはかなり異なる挙動を示すことを認

めた。その時,カルボキシル基の解離が大きくこの重合反応に影響することを

見出した。

両性モノマーである,ε一アグリロイルー, ε一メタクリロイルーリジンの

場合も,やはりα一メチル基の有無による影響は顕著であり,さらに開始剤種

の影響も大きいことを認めた。この場合も静電的相互作用の異なることが重合

反応に大きく影響していることを見出した。

また,比較のため側鎖に第3アミン基を持ちアミド結合した塩基性モノマー

であるN一(2一ジエチルアミノエチル)一アクリルアミドおよびメタクリル

アミドの重合を過硫酸アンモニウムを開始剤として検討し,両モノマーとも中

性付近で重合速度は最大となワ,アグリロイル系アミノ酸の重合挙動とは異な

ることを認めた。

第3章,第4章では,これまでの基礎研究をふまえて,アグリロイル系アミ

ノ酸の応用に関する研究を行った。

すなわち,第3章では,第1章においてそのラジカル重合が詳細に検討され

たアグリロイル系アミノ酸の天然ゴムヘのグラフト重合を試みた。

モノマーとしては,メタクリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,グルタ

ミン酸),アグリロイルアミノ酸(アミノ酸:β一アラニン,γ一アミノ酪酸,

ε一アミノカプロン酸)ならびにそれらのエステルを便用し,各種条件下で検

討し,その様相を明らかにするとともに,得られたグラフトポリマーの性質を

調べ,アミノ酸基ならびにエステル基の炭素数の変化が耐溶媒性およびかたさ

に影響を与えることを認めた。

第4章では,両性基を含むε一アグリロイルリジン」から架橋剤としてN,パ

ーメチレソビスアクリルアミドを用いてキレート樹脂を合成し,その樹脂の各種金

属イオン吸着能を測定し,その吸着性は鋭敏なpH依存性を示すことを認めた。

一3一

Page 10: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

文 献

1)

2)

3)

4)

5)

6)

7)

8)

9)

10)

11)

12)

13)

14)

15)

16)

17)

18)

E.Schrδder and K.Lubke,“The Peptides^Vo1.1,Academi c

press.一(1965).

芝哲夫,“タンパク質化学は(赤堀四郎他編),共立出版(1969).

泉屋信夫,加藤哲夫,大野素徳,青柳東彦,“ペプチド合成“丸善

(1975).

H.Leuchs,σんem.Beγ.,38・857(1906).

C.J.Brown,D.Co1ernan and A.C.Farthi ng,Nα肋γe,163,384

(1949).

赤堀四郎,科学,25,54(1955).

S.Akabori,K.Okawa and M.Sato,3”工、Cんe仇.∫oc。∫αρα%,29,

608 (1956).

S・Sak包kibara,3物;;二C危e肌.Soc.∫αpαm,32,13 (1959).

H.Hanafusa and S,Akabori,五m〃.Cんe肌.Soc.∫α刀αm,32,687

(1959).

A.Vegotsky,K.Harada and S-W Fox,∫、λ伽.Cんe伽、8oc.,80.

3361 (1958).

J.Oro and C.L.Guidry,λ“ん. Bづ。cんe肌.3づ。ρ加.,93,166(1961).

岡本奨,中原篤信,日本農芸化学雑誌,38,28(1964).

渡辺煕・香西保明・目李化学雑誌・84・744(1963)・

渡辺煕,香西保明,日本化学雑誌,87,613(i966).

Y・Koza i・Y・Ikeda and M・Yoshi da・3m〃.Cんe伽・∫06.Jmαm・47・

3125 (1974).

H.Watanabe and Y.Kozai肋〃.〃sf.Cん舳.地8.,幼。loσmづ一,

γo{. 50,318 (1972).

香西保明,吉田公一,高分子化学,30,129(1973).

渡辺煕,香西保明,日本化学雑誌,91,581(1970).

一4一

Page 11: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

19) R.K.Ku1kami and H.Morawe tz,∫ Po~肌.Sc{.,54,491(1961).

/ / )20) P.Rejmarova,J.Lobsky and J.Kopecek,Mαんγo肌。エ.Cんe帆.,

178. 2159 (1977).

21) T.Y.Fu,and H.Morawetz,∫別。2.0加物、,251.2083(1976).

山5一

Page 12: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

第1章 アグリロイル系アミノ酸の溶液重合

緒 言

α一アミノ酸のポリマーはN C A法の開発以来,タンパク質のモデル物質と

して多数のものが合成され,研究されているが,ビニル系ポリマーなどの側鎖

としてアミノ酸を結合させた高分子体も別の意味で若干の研究者によって注目

されている。たとえば,Ku1kariおよびMorawetz王)はアグリロイルーおよ

びメタクリロイルーα一アミノ酸の施光度の研究からポリマーの構造を論じて

いる。また,上村2)らはアグリロイルーα一アミノ酸およびα一アミノ酸一ρ一

ビニルアニリドの架橋ポリマーを合成し,光学分割への応用を検討している。

そして,Hass3)らはポリアクリロイルグリシソアミド及びその共重合体が熱可

逆性のゲルを形成することからゼラチンのモデルとして検討している。

この種のポリマーはビニル系ポリマーとα一アミノ酸ポリマーとの中間に位

すると考えられ,いくつかの特徴がある。まずモノマーは精製しやすい結晶で,

重合が簡単であり,容易に光学活性のポリマーを得ることができる。また,側

鎖をペプチドにすることにより分子の形状その他を調節できる可能性がある,

などである。これらの点に興味をもち,著者もまたこの系統の高分子体の研究

に着手したが,基礎的なことで不明な点が多く,たとえば重合条件に関しても

詳細な報告が見あたらないので,まずアグリロイルグリシンおよびメタクリロ

イルグリシンを用いて検討し,さらにアグリロイルーβ一アラニン,メタクリ

ロイルーβ一アラニンおよびメタクリロイルグルタミン酸について検討を行っ

た。

第1節 アグリロイルグリシンおよびメタクリロイルグリシンの溶液重合

1.1 緒 言

アグリロイル系アミノ酸に関しては,その重合条件の詳細が不明であるとこ

ろから・最も簡単なアミノ酸であるグリシンを結合した,アグリロイルグリシ

一7一

Page 13: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

ソ(A-G1y)およびメタクリロイルグリシン(Ml-G!y)について,その重

合条件を重合率と極限粘度との関係から詳細に検討した。

1.。2 案 験

1.2.1 試 料

A-G1yおよびM1-GIyは,グリシンと倍当量の水酸化ナトリウムを水に溶

解し,一5~O℃でかきまぜながら当量の塩化アグリロイルあるいは塩化メタ

クリロイルを滴下,同温度でさらに1時間がきまぜたのち,塩酸で酸性とし,

酢酸エチルで抽出し結晶を得た。収率はA-GIy54,5%,Ml-G1y71.4%で

あった。

A-G1y mp 132~133℃

分析値 C46.51%, H5.46%, N1O.75%

C5H7N03としての

計算値 C46,51%, H5.47%, N1C.85%

M-GIy mp 107~108℃

分析値 C50.47%, H6.40%, N9.84%

C6HgN03としての

計算値 C50.34%, H6.34%, N 9179%

開始剤に関しては,過酸化ベンゾイル(B P O)はクロロホルムーメタノー

ルで3回再沈澱し,mp104~105℃のものを,アゾビスイソブチロニトリ

ル(A I B N)はエタノールから再結晶し,mp103℃のものを,過酸化ラウ

ロイル(L P O)はクロロホルムーメタノールで再沈澱によワ精製し,mp53

~55℃のものを,そして,ジーご一ブチルペルオキシド(DTBP),t一ブ

チルヒドロペルオキシド(T B H P)は市販品をそのまま使用した。溶媒はす

べて常法により精製した。

一8一

Page 14: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

1.2.2重合方法 重合はすべて封管窒素中一定温度に静置して行った。一定時間後,内容物を

蒸溜水に溶解一昼夜イオン交換水中でセロハン透析,減圧乾固後恒量に達する

まで減圧乾燥した。

1.2.3 極限粘度(1η〕)の測定

A-G1yのポリマーはO,5M水酸化ナトリウム溶液中,M-GIyのポリマー

は0.5〃塩酸溶液中,30℃でウベローデ型粘度計により測定した。

1.3 結果と考察

1.3.1 開始剤の検討

まず,A-G1yおよびM-G1yの重合を各種開始剤を使用して検討した。

A-GIyは1.O mo1/Z,M-G}yは王.4mo1/Jの濃度で,いずれの場合も開始

剤の濃度は4.!3mmo1/Zとし,60℃で,重合時間は前者で2時間,後者で5

時間とした。その結果を表1に示す。

Tab1e l. Polymerization of A-Gユy and M-G1y by various

initiators in dioxane at 60oC.

一3 エIniti亀tor]; 4.13買10 mo1/1.

Monomer 〔mo1/1〕 工nitiator Po1ymerization Po1ymer

t ime Convers ion [?】

騎r) (号)

BPO AI BNA-G1y 1.C LPO

DTBP TBHP

毘PO AIBNM-Gユy 1,4 LPO

DTBP TBHP

92. .97

94. .98

90. 、95

80. .90

83. .89

81. .17

80. .17

79. .17

26. .19

24. .23

一9一

Page 15: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

以上のことから,A-G1yの重合にぱいずれの開始剤も有効であり,M-G1y

の場合には,B P0,A I B NおよびL P Oが有効であることがわかった。ま

た,A-GIyの方がM一一GIyよワも重合はよワ連やかである。そして,生成ポ

リマーの〔η〕は,溶媒が異なるのではっきり比較は出来ないが,A-G1yの

方がかなり大きいようである。

1,3.2 開始剤およびモノマー濃度の影響

A-G1yおよびM-G1yの重合におよぼすB P O濃度の影響を調べた。先と

同様にA-G1y1.Omo1/1,M-G1y1.4mo1/2で一定とし,B P O濃度をO

~11mmo1/互まで変化させ,60℃で,それぞれ1時間および8時間重合させ

た。その結果を図1,2に示す。

100 1.4

80τ

三60……

.あ

お40…

8 20

1.2

■ 〔

1・u ^

“0.8〕

0.6

0 2 4 6 8 10

1BPO×1031m・1/1〕

Fig. 1. Effo〔t of a㎜ount of 目PO on poly㎜eri一目ti011 iη

dio!ane 邊t 60o⊂.

[^一G1川・工・O皿Wユ;My㎜州=a市nti・日・1り『・一

いずれの場合もBPO無添加においても熱重合は起こワ,その重合率はそれ

ぞれ15%,27%であった。しかも,〔η〕はA-G1yでは1.21,Ml-G1yで

はO.195であワ,B P0添加量の増大と伴に〔η〕は直線的に減少した。また,

重合率はこの条件下では両モノマーともB P O濃度約4m mo1/工以上ではほ

ぼ一定となった。つぎにモノマー濃度の影響を検討するために,B P O濃度を

一10一

Page 16: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

一定にし,A-G1y, M-G1y濃度を変化させて重合を行った。その結果を図

3,4に示す。

100

^80◎

)60⊆

④40)⊆o0 20

O.20

O.18

0.16 τ

O.14ε

O.12

0 2 4 6 8O.10

10 12〔8P◎〕X1031叩◎1/1)

月g・2・ Eff・・nf・㎜・・いfBPO㎝p。工〃・iエ目ti㎝i.dio工目ne 目t 60oC.

[}1・Glyl,三。4冊。lハ;Poly皿eri蜆tionti爬.昌h・.

100

80○

求60E◎Iあ

』40⑭)仁。

0 20●

O.5 1.0 1.5

1.4

112

1.0^ ○

議O.8〕

O.6

O.4

2.O

〔A-Glカ4固q1/1,

Fig・ ヨ・ Eff60t of th8 ㎜o掘。Illor 〔011contl■8tion on po1γ皿ε一

ri-atio皿 i】1 dio■an巴 呂t 60oC.

一3 1BPOl,4.13川O ㎜o1/1;Poユy皿eri!ationti而e,1hr、

一11一

Page 17: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

1◎0 020

800

三60……

.あ

あ40…

8 20

②、18

⑤一16 ^

ε

冒O.14〕

0j2

010

01.02.03.O 〔M-Gly〕‘11101/1,

「i!. 4. Effe〔t of the 皿。no皿。r 〔on〔8ntrミItion on po1y㎜o_

riエation in dio■ミ■ne at 60・C.

lEPOl,4.lMポ3冊W1;Pψ皿・・i…i。。ti㎜。畠h。.

モノマー濃度の増大による重合率の変化は,それぞれA-G1yは1,0mo1/

’,Ml-G1yは1.4mo1/J付近をピークとするわずかに山形の曲線で示される。

一方,ポリマーの〔η〕はほぼ直線的に増大している。

1.3.3 重合時間および重合温度の影響

重合時間と重合率との関係を検討し,A-G1yの場合を図5に,M-G1yの

場合を図6に示す。

A-G1yにおいては約1時間で90%の重合率を示し,以後ほぼ一定となっ

た。また,〔η〕は重合時間による変化はあまワ認められなかった。M-G1y

の場合は温度を60℃と80℃で行ったところ,重合時間を延長すれば60℃

でも十分好収率でポリマーを得ることが出来る。一方〔η〕は時間と伴にわず

かに増大するが,8ポCのものは60℃のものよワ常に著しく低い。

つぎにMl-G1yのみにっいてではあるが,重合温度の影響について検討する

ために,温度を30,45,60,および8ポCに変化させ重合を行った。その

一12一

Page 18: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

100 1.4

80

次60EO‘あ

』 40⑭,

EoO .20

1.2

1.0^ ε

0.8〕

O.6

O.4

0 1 2 3 4 5

POlyme・i・・ti0・time(hr)

rig・5・ 旺fE亡tofpoエγ鵬ri岨tionti皿‘onpoiア面eri胴tio皿ir! dioxa11e 田t 60oC.

正A-o1yl,1.o固。1/1; 一BPo】,4.1;■1〇一3回。1/1.

100

^ 80㌣

ε

実60…、9

ω』 40o)ヒ

0 20

02

01 ^ ◆.

01ト

00

0 2 4 6 8 10

PO1yme了iZa-iOn time{hr〕

Fig・6・ 酎f。仁t“剛y■。・i岨ti㎝ti皿。㎝p.1y血。・iエ割ti㎝

in dio■a司。 目t 60oC or 80oC,

lM-o1γ1,1,4■o1/1; 観Pol

◎1●、6れ;◇,●,80.C一

.4.1MO一 `。1/1.

一13一

Page 19: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

結果を表2に示す。

Tab1e 2. 君ffect of po1y㎜erization te㎜peτatuTe of po1一

y㎜eriZatiOn i】l diOXalle

[M-G1y], 1,4 moユ/1; 一3【BPO], 4・13x1O ㎜o1/1・

Po1γmerizatioIl

te㎜p ビC〕

Po1ymeτization Po1ymeτ

time Convers ion 一?】

(hr〕 〔著〕

30

45

60

80

50

4

4

4

14.8 0,21

5.2 0.19

59.1 0.16

85.3 0.08

30℃では重合は困難で長時間の重合を必要とするが,得られたポリマーの

〔η〕は他と比較して最も高い値を示す。重合温度を高めると重合率は急速に

増大する。そして〔η〕は低下するが,特に60℃と80℃では差が顕著であ

る。

1.3.4 重合溶媒の影響

M-G1yのみについてではあるが,溶媒の影響を調べるためジメチルスルホ

キシド,N,w一ジメチルホルムアミド,テトラヒドロフランおよびアセー gソ

中での重合を試みた。その結果を妻3に示す。M-G1yの重合溶媒としてジオ

キサンが最もすぐれていた。

Tabユe3、 Effect of soユvent on po1y㎜erization at 60oC

-3工M-G1y], 1.4 皿。1/1; 正BPO], 4x10 mo1/ユ.

S◎1vent po1ymerization Po1ymer

ti皿e Converミ;ion 工η]

(hr〕 (考〕

DMSO

DM戸

THl=

Acetone

DiOxane

8.S ユ3.9

8,5 27.8

8,5 39.2

8,5 40.4

9,0 90.O

O,1フ

O.05

0,04

0,06

0.18

一14一

Page 20: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

1.3.5 重合系における酸素の影響

重合反応におよぼす酸素の影響を検討する目的で,この場合もMl-G1yにつ

いて,共存気体の窒素:酸素の比率を変化して行った実験結果を表4に示す。

表から明らかなように共存する酸素は重合を抑制するとともにポリマーの〔η〕

も低下させる。

Tab1e 4. 正…ffect of oxygen on po1ymerization in dioxa-

ne at 60oC

[M-G1y], 1.4 mo1/1; 一BP0], 4x1O 〕mo1/1.

At皿。spheric COnditiOnNitrogen : Oxygen

Po1ymerization Po王ymel-

time Convers ion 正η]

(hr〕 (考〕

95 5

90 10

80 20

60 40

40 60

0 100

0 100

10

22

22

22

22

22

30

74,6

85,4

78,6

70,8

63,2

50,1

57.5

O.13

0.ユ1

0,10

0,08

0,07

0,06

0.06

100

^ 80◇

実60…

9340雲

8◎ 20

05

04

03

02

O,1

1.4

t2

1.0^。

“α8〕

α6

⑤14

0 2 4 6 8 10 Iπadiati◎n time ‘hr,

Fig1 7. Eff6ct of irradiati011 ti皿。 o日 po1y皿8ri2目tion by

highpr85則ro皿町㎝町1刮皿pin砒㎝mo砒1520.C. .3[^一〇1yL1・O皿。1/1; lM・Clyl、,1・4皿。1/1; 1艀O1一心10 ・

㎜o1/1.

◎.●。;^’Oユy;◇.◆,;H-Cly・

一15一

Page 21: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

1.3.6 光重合

A-G1yおよび.Ml-G1yの光重合に対する照射時間の影響を図7に示す。た

だし,光源は超高圧グライダー水銀灯(日本電池製HL-250型250W)で20

㎝の距離から常温(15~20℃)で照射した。光重合は熟重合よワ有効で,短

時間で重合が完結し,熱重合の場合と〔η〕が同程度のポリマーを与える。

第2節 アグリロイルアミノ酸およびメタクリロイルアミノ酸の溶液重合

2.・1 緒 言

第1節においてし,A-G1y,M-G1yは通常のビニル系モノマーと同様の重

合挙動を示すことが認められた。ここではアミノ酸基として,β一アラニン,

トグルタミソ酸を結合した,アグリロイルーβ一アラニン(A一β一A1a),

メタクリロイルーβ一アラニン(M一β一A1a) およびメタクリロイルグルタ

ミン酸(M-G工u)について,前節と同様に重合条件を重合率と極限粘度との

関係から検討を行った。

2.2 実一 験

2.2.1 試 料

モノマーであるA一β一A1a,M一β一A1a,M-GIuおよびN一(2一ジエ

チルアミノエチル)一アクリルアミド(DAEA),一メタクリルアミド(D

A瓦立)は第1節と同様の方法で,塩化アグリロイルあるいは塩化メタクリロ

イルと当該アミノ酸あるいはアミンとのS・hotten-Bauma㎜法によワ合成し

た。その結果は一合わせて表5に示す。

また,使用した開始剤および溶媒は前節と同様にして精製した。

2.2.2 重合方法

第1節で述べたのと同様の方法により行った。ただし,DAEAおよびDA

一16一

Page 22: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

瓦Mについては重合終了後,沈澱剤として石油工一テルを加えてポリマーを得

た。

↑日1・leS. SylltllOSOSOf・lOlπ〕l1ielI

Products Yie1d 1引p bp

(老〕 (oC〕 (oCハ]11HH9〕

^一R一^1.目 57. 98-lOO

M_8_A】a 45. 77-78

M-G1u 39, 129_1三〇

D^F^ 49. 1-R-1三〇/1

M跡1 6;. ]34-1.36/1

111c冊1・ilto・)リlll;1ユ)・・i・1毛〕

fouηd c日⊂1d.

C!・lN C月NSn.21 6,17 9.hR 50134 6,34 9.79

52,82 7.Ol R.87 53,49 7,05 8.9ユ

;O.22 6.2三 6.刈6 ;O.23 6,09 6.S1

03,41 1{〕.80 !O.一刈 63.49 10.66 16.4ア

“.M H.]8 15.12 65.18 10.94 五S.26

2.2.3 極限粘度([η/)の測定

A一β一A1aのポリマーはO.5N水酸化ナトリウム溶液中,M一β一A1a,

M-G1uおよびD A E AとD A E MlのポリマーはO.5N塩酸溶液中,30℃で

測定した。

2.3 結果と考察

2.3.1 M-G111の重合

まず,開始剤としてB P Oを使用し,ジオキサン中でのM-G}uの重合条件

を検討した。

2.3.1.1 開始剤およびモノマー濃度の影響

モノマー濃度を一定としB P O濃度を変化させて60℃で7時間重合させた。

その結果を図8に示す。B P O無添加でも熱重合は起こり,その重合率は23

%であワ,しかもその〔η〕はO・44である・そしてBPO濃度の増大と伴に

〔η〕は直線的に減少する。

また,重合率はこの条件下ではB P O濃度約4m mo1/1以上ではほぼ一定

となる。これらの関係はM-G1yの場合とほぼ同一傾向である。

つぎにB P O濃度を一定にし,M-G1u濃度を変化させて重合を行った。そ

一17一

Page 23: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

の結果を図9に示す6図から明らかなようにモノマー濃度の増大は重合率と

〔η〕を共に増大するようである。

100

080

ε60‘5

仁40oU 20

Oo 2 ム 6 8 10 12

0.7

0.6

O.5 ^ 3

種0ム 〕

O.3

0.2

〔BPO〕X l03{mo一/1)

Fig. 8.EffG0t of amou日t of BPO on po1y㎜8ri28tio皿in dio■3no at60℃・

[M-Glu】,0193㎜o1〃;Polymori2atio11timo,71π一

100

080“

o60.9

£

・.=40oU 20

0.5

O.4 ^ ●.

0.3 〕

0.Z

00.51.01.52.O 〔M-Gl・〕lmol/1)

戸ig,9.酬㏄tonho皿㎝o㎜・・oo掘。o・t胞ti㎝o皿剛胆“刎i㎝in dio㎜m at60oC. エBPO】、3-74x1O-3mol〃;Po1}㎜orimtio-1ti㎜o,7hr一

一18一

Page 24: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

2.3.1.2 重合温度および重合時間の影響

重合温度を30,45,60および80℃と変化させて重合を行い,重合率と

〔η〕の関係を妻6に示す。30℃では重合困難で長時間の重合を必要とする。

Tab1e 6.Effect o{Polymeri2ation temperatureon poly回1erizatioIl in dioxane

[M-G11ユ]、O.93mo一〃;【BPO],3.74x10-3皿。l〃.

PoIynユ6ri2ation

temp. (。C)

Polyme1=ization

time

(hr)

Po-y掘er

Conversion [η]

(%)

30 30

45 4

60 4

80 4

81.0 -

37.3 0.45

70,0 0.38

81,4 0.20

また得られたポリマーの〔η〕は一部不溶化しており測定不能であった。そし

て,重合温度を高めると重合率は増大するが〔η〕は低下する。

重合時間の影響をM-G玉u O.93mo1/i,B P03.74m moI/’,重合温度

60℃で行った。その結果を図10に示す。重合率は時間と伴に増大するが,

〔η〕は時間に無関係にほぼ一定値をとる。

100

080

【602ω

o)

仁ム0ou

20

/O-5

0.4 ^ ●

O.3

Pig.1o.

0 0 2 ム 6 8 10

Polyl’nerizat一◎n time‘hr)

Effeot of po1ymeri!ミ■tion time o口polymori脱tio11iIl dio畑no at60oC.

エM・G1山],O.93mol〃;[BP0]一、3.74x lO-3mo1〃.

一19一

Page 25: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

2.3.1.3 重合系における酸素の影響

重合反応におよぼす酸素の影響を検討する目的で,封管中を窒素置換の代り

に,酸素で置換,あるいはそのままで重合を行った。その結果を表7に示す。

lTab1e 7.Effect of oxygen on po!ymerizatio皿in dioxane at60.C

[M-Glu],0.93mo1〃;【BP0],3.74x10■3mol〃。

Atmospberic Po1ymerization

time

(hr)

PolymerCOnd1t10n Co-1version

(%)

[η]

NitrOgen

Air

Oxygen

6 83.5

32 92.9

32 64.8

O.39

0,13

0.1O

これよワM-G1yの場合と同様に共存酸素は重合を抑制するとともにポリマー

の〔η〕をも低下させることがわかった。

2.3.・1.4 光重合

光源としては,先のA-G1y,M-G1yの場合と同様のものを使用し,同条

件で照射,照射時間の影響を図11に示す。光照射は加熱によるよワも有効で,

④>

E0U

100

80

60

40

20

0 1 2 3 4

Ir1・adiation tin,e{hr)

Fig. 11.Eff田。t of ir閉di3tion time on I〕olymori2atio11by hi前

pr8言su肥m甘。u町蛤mp in dio畑110at15一一2ぴC. エM-GIu】。O.93mo1〃;一BPO].3.74X10■コmo一〃.

一20一

Page 26: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

短時間で重合は完結するが,得られたポリマーは網状構造を形成するためカ㍉

水に不溶で〔η〕は測定不能であった。

2.3.2 A_β一Ala,M一β一A1aの重合

つぎに,A一β一A1a,M一β一A1aについても,開始剤としてB P Oを使用

し,ジオキサン中での重合について若干検討した。

2.3.2.1 開始剤およびモノマー・濃度の影響

A一β一A1aおよびM一β一A1aの重合に及ぼすB P O濃度の影響を検討し

た。それぞれのモノマーを1.O mo1/1で一定とし,B P O濃度を変化させ60

℃で,前者は1時間,後者は7時間重合させた。その結果を図12,叉3に示す。

A一β一A1aはA-G!yに比べてさほど差異は認められず,B P O濃度約4m

mo1/Z以上で重合率はほぼ一定となった。M一β一AlaはB P O無添加の熱重

合においては,M-G1yと同程度で重合率約22%であるが,B P Oを添加した

100 2,O

80○

ま60仁◎

’あ

」40④)

Eo0 20

1.5

ε1.o円

O.5

0 2 4 .6 8 10

1BPO〕X103(m.1/1〕

Fig・ 12・ Effe仁t of a皿。unt of BPO oη 1〕oユ}・meriエ邑tioη in

dio■ane at 60oC1

一^1皇一^ユ目]一・O.而。1/1;P小皿・山・・i㎝・i… 1h・・

一21一

Page 27: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

100 0.5

{80◎

一608◎

⑫40)=◎

o 20

0,4

0.3^ ’●

〔 ト0.2日

⑦.1

・O 2 4 6 8 1018P◎〕X柵31耐・W

肘筥・13・ 垣ffootofa皿。㎜tofBPO㎝poエアn町i蝸ti㎝i聰dio■目。0 8t 60oC.

:M・8一^1’1,LO皿。1!1;Po1y山町i-atio皿ti皿。,汕r.

岬0 2.O

800

三60ε

一あ

お40……

8 2G

一.5

●1.⑨〕

0.5

0.5 1」0 1.5 2.O

〔A+A1・〕lm・1/ll

Fig-4・E帆仁いf舳m・舳“・口側t・田・i㎝。・剛岬一rizatiOn in dio■a皿。 目t 60oC.

1目・Ol,・・13列ガ㌦1/1;・ωy血。市日・i・。伽。,1h。.

一22一

Page 28: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

100 0,5

800

き60…≡

’あ

540…

0 20

04

0.3 ^

ε 口O.2〕

O.1

O0 0二5 1.0 1,5 20

竈M-O-Ala〕1{mol/1,

Fig. 1三。 1…ffe仁t of tho 而。no而。r con〔ontr副tio口 on po1y㎜o-

riz目tion in dio■旦n6 8t 60.C.

I3一目POl, 4.1一■lO ㎜ol/1; Po1y…8ri!31=ioη time. 7hr.

場合はM-G1yに比べて重合率は全体的に低くなっており,この実験範囲内で

はB P O濃度増加に伴い重合率も増大する。また〔η〕はこれまでと同じくB

P O濃度増大に伴い減少した。この場合,先のA-G1y,M-G1yと比べて見

ると,いずれの場合も〔η〕は高いようである。

つぎに,BPO濃度を一定としてA一β一A1a,M一β一A1a濃度を変化さ

せ重合を行った。その結果を図14,15に示す。モノマー濃度増大による重合

率の変化はA一β一A1aの場合は1.5mo1/Z付近をピークとするわずかに山形

の曲線となり,A-G1yとほぼ同傾向を示した。また,Ml一β一A1aの場合は,

モノマー濃度増大とともに重合率も増加し,Ml-G1yとは少し異なるが,M-

G1uとはほぽ同傾向を示した。これはモノマーの溶解度が大きく影響している

ものと考えられる。

なお,これまではすべて酸性モノマーのみについてであったので,比較のた

めに,アグリロイル系アミノ酸とは少し異なるが,アミド結合と3級アミン基

を有する塩基性モノマーであるD A E A,D A EMについての重合を検討した

一23一

Page 29: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

結果を図16に示す。 開始剤濃度の増大に伴い,D A E AおよびD A E Mの重

100

80

を60琶

ε40U

20

’●‘....’○・

’●’ ●’ 、・’ 一一▲一一一一▲‘

一」1・ ’『 一一・ 一

’’ 轣f’ 一一◆一一一一一’’ 一■・一◆申

’!

ツ/ク

Q3」

Q28一

ミO.1む

Pig。

05101-52C 弘田N川03㈹〃

16,Theo丘㏄to“beiniti日toroo皿㏄皿tr2tio皿。ntho卵1y匝。ri2ation -of jV一(2一出iothy1^匝□i口。et-1yl)一aory1目r口id巴 (I) aod一皿10tbaory-a口1ido

(II〕indio■㎜o.

〔Mo口。mor〕:1.5皿。1〃.Poly皿。ri胆ti011temp.:70℃ (SolutioI1

poly皿。ri囎tio口)、18-2ぴC 〔PhotoPolymeri腕tion),Po吋固。ri腕tioo

timo17.高r lPolymori記tio-10fI.一・・・・・・・…lPoly皿。ri鴉tio回。fII

○、●lCom眺io口(Solution卵1y㎜ori胴tion)、 △.▲:Con甲ersion(PbotoPoly㎜ori2目tion),

口、■:ω(So1日tio皿回y皿。ri■atio皿)一

◇、◆:〔”〕 (PhotoPolyπ記ri2ation〕

合率は伴に増大し,アグリロイル系アミノ酸の場合とほぼ同傾向を示した。ま

た,見掛け上,DAEAにおいては光重合の方が,DAEM1においては溶液重

合の方が重合は速やかに進むようである。しかし得られたポリマーの〔η〕は

開始剤濃度にあまワ影響されずほぼ一定である。これは重合過程において,モ

ノマーまたは開始剤への連鎖が起ったためではないかと考えられる。

2.3.2.2 重合時間の影響

重合時間と重合率との関係を検討し,図17,18に示す。A一β一A1aの場

合は重合率は約1時間で90%を越え,それ以後はほぼ一定となった。M一β一

A1aの場合は8時間後でも重合率は80%程度で,かなり重合速度の遅いのが

わかった。また〔η〕はいずれの場合も,これまでと同様に重合時間による変

化はほとんど見られずにほぽ一定値を示した。

一24一

Page 30: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

10ρ 2.O

^80○

〕60E0竈

⑩40)=

o0 20

1.5

?1,O)

O.5

1 2 3P◎1ymeriZa{iOn time‘11r〕

Fig,17. 匿ff・仁tofpo1ym・・i・・ti㎝ti皿・㎝po1y皿・・i珊tio・

in diox目nE 目t 60oC.

[^一昌一A刺,1,Omol/1; lBPOl,4・13州O皿。ユバ・

100 ③.5

8◎◎

き60ミ≡≡

④40)仁◎

0 20

◎.4

013^ ●

~02〕

0,1

2 4 6 8①

10

Polyme・i・ati㎝{ime(hr〕

1=ig. 18, Effe仁t of polγ㎜eri1目tion ti而。 on po1ymeriエ。tion

i11 dioエミ■no at 60oC.

一31M一昌一^1al,LO固。1/1; lEPOL一一H・1O皿。ユ/I・

一25一

Page 31: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

2.3.2.3光重合 光源としてはこれまでと同様のものを使用し,同条件で照射し,B P O無添

加のものと,4.13m mo1/・4添加したものの照射時間と重合率との関係を図19

に示す。やはり光重合は熟重合より有効で,重合はかなワ短時問で完結するよ

うである。ただし,M一β一A1aのB P O無添加の場合は,照射時間5時間で

重合率約45%となり,その後重合率はほぼ一定となった。

oe6)60ま

仁◎

ω』o,1=

oO

100

W0

U0

S0

Q0

@0

0.5

O4

Of

O5

Oj

n0 2 4 6 8 10

05

04

03^ 久 ◆02

01

2 4 6 8 101rradiation ltime(hr)

2.o

1.6

0 ・’1.0一

O.5

■0

Fig, 19. Eff8ct of ir1.adiation ti皿e on po1y㎜E1-iz目tion by.

high prE;;uro mer〔ury 1目mp in dio■目no ミlt 1ヨ 20oC・ 工Mono㎜orユ.

一1.O皿。ユノ1;

O、θ.θ.○,1^.B一肌;◇丁◆;◆.◆,:ll一日’^1・;

一3 0,○,◇,◆,1正BP01・O.O,O,e,◆、.・1目POl・州O㎜州1・

総 括

アグリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,β一アラニン),メタクリロ

イルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,β一アラ三ソ,L一グルタミン酸)の溶

液中におけるラジカル重合を検討した。

その結果,溶媒としてはジオキサンが最適であり,開始剤としてはB P O,

A I BN,L P Oなどが適当であった。そして,開始剤としてB P Oを使用し

一26一

Page 32: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

た場合,開始剤濃度は約4m mo1/Z・までは重合率を増加させるが,それ以

上では重合率はほぼ一定となった。しかし,M一β一A1aのみは開始剤濃度

増大に伴い重合率も増加した。この時〔η〕はいずれの場合も開始剤濃度増

大に伴いほぼ直線的に減少した。モノマー濃度増大は,モノマーの溶解度が

小さいと重合率は1.0~エ.5moI/Z付近にピークを持つわずかに山形の曲

線となるが,溶解度が大きい場合はモノマー濃度増大に伴い重合率も増大し

た。そして〔η〕はいずれの場合もモノマー濃度増大に伴い増大した。重合

温度を高めると重合はより短時問で完結するが,〔η〕はかなワ低下した。

また,共存する酸素は重合を抑制すること,さらには光重合も有効である

ことを認めた。さらに比較めため側鎖に第3アミン基を持ちアミド結合した

塩基性モノマーである,W一(2一ジエチルアミノエチル)一アクリルアミ

ド,一メタクリルアミドの重合を試みたところ,その挙動には顕著な相違は

認められなかった。

従って,以上のことからアグリロイル系アミノ酸のラジカル重合挙動は通

常の酸素抑制型ビニルモノマーのそれと類似していると結論される。

文 献

1) R.K.Ku1karni and H.Morawetz. ∫Po~肌.∫c4.,54,491(1961).

2) 上村多嘉彦,山下徹志,中村暢夫,日本化学雑誌,88.1238(1967).

3) H.C,Hass and N.W Schu1er,∫戸。lm.Scづ.,B,2.1095(1964).

一27一

Page 33: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

第2章 アグリロイル系アミノ酸の水溶液重合

緒 言

近年,合成高分子電解質の適用の範囲は飛躍的に発展してきておワ,その生

長反応を規制して期待する分子量およびその分布,立体規則性や結合様式,交

互性を含めたSequenCeを規制した重合体を得ることは重要な課題となってい

る。たとえば生長末端ラジカルと攻撃モノマー,または,モノマー間における

著しい誘起分極あるいは静電的相互作用が立体規則に重要な役割を果している

ことはよく知られている。したがって反応媒質中で電荷を有するモノマーの重

合を行ない,これらモノマーの反応性や反応様式を相互作用と関連させながら

解析することは,素反応を規制する有力な知見となる。

これまでに,水溶液中でのアクリル酸(AA)やメタクリル酸(MlAA)のよ

うなイオン解離可能なモノマーの重合は,一般の非イオン性モノマーと比較す

ると,解離,イオン結合の特殊性,静電的,そして疎水性の相互作用などの多

くの付加的要因があるため興味ある結果がすでに報告されている1)~エ0)。

これらの重合の顕著な特徴は,重合速度(遍p)が酸性領域ではpHを増大

すると急速に減少し,pH6~7で極小となり,そしてアルカリ領域では,pH

の増大に伴って徐々に上昇し,p亘9~王2でほぼ一定値となるか,もしくは

pH l O付近で極大となる。このことに関しては,Pimer2)ならびにB1測er3)

によれば,酸性領域では解離および未解離モノマーの共重合と考え,また,ア

ルカリ領域での児pの上昇は,荷電マクロラジカル間の静電反発作用のため停止

速度定数が減少することによると考えられている。しかし,近年Kabanov8)~1o)

はAAやMAAを種々の塩基で中和し,pH変化による況pは塩基種によって

異った挙動を示し,また立体規則性も対イオンによって大きく異なることを認

め,モノマーおよびラジカルの反応性が対イオンの影響を受けることを明らか

にしている。これらはいずれも解離基が二重結合と共役しているモノマーにつ

いてである。ところが,イタコン酸11)においてはメチレン基を隔ててのカル

ボキシル基が解離しても的に変化はなく,また,ジメチルアミノエチルメタ

一29一

Page 34: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

クリレート4)においても抑はpH変化に上る影響を受けないとされ,このよ

うな解離基が二重結合牟ら離れると,その影響はほとんどなくなるとされてい

る。

以上のことから,アミノ酸基を結合することにより,解離基が二重結合から

離れたモノマーの重合挙動がどのように変化するのか興味深いことである。

本研究においては,イオン解離モノマーであるアグリロイル系アミノ酸の水

溶液重合を行った。この場合,側鎖にアミノ酸基を結合することにより,とく

に重合系の初期pHが重合挙動にどのような影響を与えるかを検討し,従来の

イオン性モノマーであるA AやMA Aなどの水溶液重合のそれと比較した。

さ・らに結合するアミノ酸基をlDL一アラニン,」DL一バリン,β一アラニン,

γ一アミノ酪酸, ε一アミノカプロン酸と変化させ,また,ジカルボン酸モノ

マーであるメタクリロイルグルタミン酸,ならびにアミノ基およびカルボキシ

ル基を有する両性モノマーであるε一アグリロイルー, ε一メタクリロイルー

リジンの水溶液重合についても検討した。

第1節 アグリロイルグリシンの水溶液重合

1.I 緒 言

アグリロイルグリシン(A-G1y)の水溶液重合を,過硫酸アンモニウム

(APS)ならびに分解速度がpHによって変化しないとされているアゾビス

イソブチロニトリル(AIBN)を開始剤として行い,主として重合速度のp宜

依存性について検討し,さらにはモノマー濃度,開始剤濃度の影響などについ

ても調べた。

・1.2 実 験

1.2.I 試 料

A-G1yは第1章で述べたのと同様にして合成した。また,アグリロイルグ

一30一

Page 35: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

12)。リシンアミド(AGAm)はHass bの方法に順じて,グリシンアミドと塩化

アグリロイルより合成し,mp129℃(文献値129℃12),135~工36℃13))

であった。A P SならびにA I B Nは市販特級品を再結晶し,その他の試薬は

すべて市販特級品をそのまま,そして水はイオン交換水を使用した。

1.2.2 重合方法 重合はかきまぜ装置と窒素ガス導入管を備えた300m一の三ツロフラスコ中

50℃で行い,pH調整は水酸化ナトリウムの希薄溶液によった。開始剤の添

加は,A P Sの場合は固体のまま,A I B Nの場合はメタノール溶液を用いた

(メタノールの使用は5%vo1に限定した)。重合率は逐次反応溶一液を取り出

してWijs法14)による残存モノマーの定量によワ求め,重合率一時間曲線よ

ワ初期重合速度(刃p)を求めた。

1.2.3 極限粘度1(η)1の測定

重合溶液を一昼夜水中で透析,さらにイオン交換樹脂I R-120Bをとお

した試料を減圧脱水乾燥し,0,5W水酸化ナトリウム溶液中30℃でウベロー

デ型粘度計により測定した。

1.2.4 A P SおよびA I B Nの定量

A P Sは周15)の方法に準じて,亜ヒ酸法によワ定量し,A I B Nlまガスビ

ュレット法16)により定量した。

I.3 結果と考察

1.3.1 重合速度および1η1のpH依存性

AP SおよびA I BNを開始剤とした場合の児pならびにポリマーの〔η〕

のpH依存性をそれぞれ図20,21に示す。これらの図から明らかなように,

児pのpH依存性は,両開始剤とも酸性領域pH2から5までは,その増大に伴

って児pは急速に減少し,pH5付近で極小となる。そしてpH5以上に増大

一31一

Page 36: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

15

書10∫

匝 5

o

〔 ㌔10~ o] E

匝 5 征、

24681012 pHFig 20..Depe・d㎝㏄ofthoraloofpo1州。ri姻一 iion and b】of polymer on p1トl or Pdym6riz刮ion

modium帥5ぴCl [A-Gly].0.l mol〃;一APS1,41・=一〇’目moI〃.

2 ^ 6 3 ,o 口

PHPig.21.D田岬d㎝・oo川・・舳一〇f- oo1州・・i硯io・

and Iη】of polymer on pH of p⑪1ソmerizaiion mo_

dium at5ぴC1 [A-Gly】,O.2mol〃;【AlBN】.4一、lO口且mol〃一

すると,児pはA P Sを使用した場合,pH8まで急上昇し,その後はほぼ一

定となる。。またAIBNを使用した場合,亙pはいったん上昇しpH6で小さ

な極大となり,その後減少し,pH7で極小,再び上昇しp直9で極大となった

後減少する曲線が得られた。図中両開始剤ともRpがpH5で極小となるが,

この点は,Ponratnam17)らヂAAやMAAとアクリルアミド(AAm)との水

溶液中での共重合において述べているように,モノマーのpKaとpHが一致

するところであると思われる(A-G1y;pKa=4.23)。また,pH5以上で

の児pのpH依存性に相違が見られるが,これは開始剤種によるものではない

かと思われる。このことは,伊藤6)らによるA P S,Kabanov8)~1o)らによ

るAI BNを関始剤としてのAAの重合においても認められているところであ

る。そこで両開始剤の分解速度のpH依存性を図22に示す。A P Sは酸性領

域から中性領域までpHの増大に伴って分解速度も漸次増大し,pH7付近以

後はほぼ一定である。またAIBNはpHに無関係にほぼ一定である。これら

の結果は,周15)ならびにKabanov8)らが行った過硫酸カリウム(KPS)

およびA I B Nの分解速度のpH依存性と類似している。

一32一

Page 37: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

1o

.;

E〕 6

回○実

2 4

24681012 pHPig.22.Depe口dence of decompos汕。n rate of

舳ia…oronpHofpoly㈹r1zad㎝medium…nthe presen㏄of monomers at50℃:

○,APS;△,AIBN一

以上の結果よワ,酸性領域に

おいて,開始剤の分解速度の規

定を受けることなく兎pが低下

するのは,やばワ従来のイオン

性モノマーと同様に,解離モノ

マーの生長マクロラジカルヘの

付カ鉋が未解離モノマーに比べて

遅いためであると考えられる。

中性からアルカリ性領域におい

て,A P Sの場合,刃pがpH8

付近まで急速に上昇するのは,

対イオン効果もあるが,開始剤

の分解速度に大きく影響されて

いると推定される。また,A I B Nの場合,兎pのpH6付近での極大は,イ

オ1/化モノマーの解離したカルボキシル基と非イオン化マクロラジカルのアミ

ド結合との間の静電的相互作用によるものではないかと考えられ}8),また

pH7付近での児pの低下はマクロラジカルのイオン化によるものであると考

えられる(Po1y-A-G1y,pKa-674)。

それ以後の亙pの上昇は,イオン化した生長マクロラジカルの近傍でのNa+

の局所濃度の増加が対イオン形成を促し,モノマーアニオンとの静電的反発が

減少し,生長速度定数が増大したため伽が増大したと考えられる。

また,/η〕のpH依存性については,図20,21に示したように,APS

の場合,pH6以下では児pとpHの関係とほぼ一致するが,pH6以上にな

ると児pと異なり減少の様相を示す。これはAPSの分解速度がこの領域に

おいては非常に大きいためだと考えられる。一方,A I退Nの場合は刃pとpH

の関係とほぼ一致した。

一33一

Page 38: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

1.3.2 NaC1存在下での重合

先に,児pがアルカリ領域で上昇する理由として,生長速度定数の増加によ

ると推定した。この考えが妥当ならば,低分子電解質であるNaC1の添加は,

イオン化した生長ラジカル近傍のNa+の局所濃度を増大し,イオン対形成が

促進され,柳は増加するはずである。そこで,NaC1をモノマーと当モル加

えて,A P SおよびA I B Nを用いてpHを2~12まで変化させて重合を行

い,Rpおよび〔η〕への影響を調べた。その結果を図23に示す。Rpおよ

び[η〕は重合系にNaOHを添 20 5

如しない場合においては,開始・

剤種に関係なく共存塩の影響を

受けないが,NaOHを添加し

た」pH領域においては増加の傾

向を示した。この結果は,胞banov

8)らあAAやMAAにおける

結果と1ま幾分異なるが,伊藤19)

らのAAの結果とはよく類似し

ている。したがって,この場合

もやはワ伊藤らが述べているよ

,うに,NaC1を添加すること

によワ生長ラジカルに吸着され

るNaイオン量が増加し20),モ

^15く

△甲

\10ちε

ox 5位圧

(3 . 2

P

2ム681012 pHI=ig. 23、’Dependen㏄of-the胞te of polymeri訟一

tion a耐d[ηl of po-ymer On ionic strength of poly一.

me㎡zation medium at50.C.

○,●:8A-G1y】,0,1mol〃;NaCl],0.1mo1〃;

江APSl,4×10■9】=nOl”

△,▲:圧A一αy],O-2moI〃;[Na01,O.2mo1〃;

[A肥Nl,4×10-3mo一μ.

ノマーと生長ラジカルとの間の静電反発が弱められたためによると考えられる。

さらには,アルカリ領域においては対イオン形成によるものもあるのではない

かと推察される。

1.3.3 AGAmの重合 A A mのK P Sによる水溶液重合15)・21)において児pがpHの影響を受け

亭ことが知られているところから,A-G1yについても,そのカルボキシル基

一34一

Page 39: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

をアミド基に変えたAGAmの重合をAPSを用いてpH2~11の範囲で行っ

た。その結果は図24に示すようにpHに関係なく児pはほぼ一定となった。

したがって,アミド基の解離に10

^ 69

\石E

H ム岬。

xo.

o=

o o

24681012 pトlF i g. 24.i)ependence of the rate of po-ymerization

on pH of polymerizatioh medi口m at50℃:

エAGAm】、O.1mo1〃;エAPS],4x10一目mol〃.

よる影響ははなはだ小さく,二

重結合と共役していない場合は,

一亙pにほとんど変化ないものと

考えられる。

このことは,次の事実からも

支持される。

すなわちAAmの場合,その

解離はpH2.4~2.7において

1.3~O.7%がカチオンに,pH

4~7でほとんど解離せず,ア

ルカリ性でわずかにアニオン構

造をとるとされている。

一a0

○匡_ム.0

3

一5,O

刀’’ 。灯 一・’’ 一’’

一一一一ポ ,一/’、、ダニ

、。’ @ 、・・^!タ・’ ’方 一’’

、一方�P〆者㌧/ボニう含’ノ 斤/ 、、一口’’

’’ ’■’ 』r ’’ 9・’ 一・’’’ @ ’■’

■1’

一1.2 -1.O -O足 一〇.6 -O.ム

1ぺ・一・1。〕

Pig.2S.Dependen㏄of the rate of polymerization

on the A-G-y concentration at50℃一 m,4×10一割

㎜01〃.

r APS, PH1○,1.70;①,4.10;○,5.20;

●,7.lO;◎,lO,02. 一一一,AIBN,P直:口,1.70;[□,5.00;□,6.15;

■,7.00;▲,9.lO;▲,10.20.

1.3.4 モノマー初濃度の

影響

開始剤であるA P Sおよび

A I B Nの濃度を一定にし,モ

ノマー濃度を変化させ,各種

p Hのもとで児pのモノマー初

濃度依存性について検討し,両

者の対数をプロットして,図25

に示す。この傾きよワモノマー

濃度次数を求めた。A P Sを使

用した場合,AAと同様に,酸

性領域においてはモノマー濃度

一35一

Page 40: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

に関しては1次,中性ならびにアルカリ性領域においては1.5次に比例した。

この理由としては,モノマーの解離,未解離の差による錯体形成とは考えにく

いことと,さらにはRiggs22)らがK P SによるAAmの重合においてもかご

効果と推論していることから,この場合もかご効果によるものと考えるのが妥

当ではないかと思われる。一方,AI BNを使用した場合は,pHに関係なく

モノマー濃度に関して1次に比例した。

1.3.5 開始剤濃度の影響

モノマーの濃度を一定にして,A P SおよびA I B Nの濃度を変えて,開始

剤濃度の的に及ぼす影響について検討し,1og五p-og〔I〕の関係を図

26に示す。この直線の傾きよ

り開始剤濃度次数を求めた。そ

の結果,開始剤種そしてpHに

関係なく,いずれの場合も伽

は開始剤濃度のO.5次に比例す

ることより,停止反応は2分子

停止機構であると推定される。

一3-O

’ 口呈.、。」一イ’二二,一一一一・’て、

3 ’’ !’△’一 ’4’ ’’片一 ’一也 ’o’

!o’ ’一『 一■・’ ’[r ’ 一 ’ ’’□ ’’『 ’’■・’’

’’■一 ’一斤’ 一5.O ’

一2.8 ,2.6 -2.4 -2.2 -2.O

l・g〔I〕

F ig.26.Dependence of the rate of polymeriza。一

tion on the initiator concentration at5ぴC:エA-Gly]、

0.2m0]”、

Symbols arc the same as in Fig.25

第2節 メタクリロイルグリシンの水溶液重合

2.1 緒 言

第1節において,A-G1yは従来のイオン解離モノマーで一あるアクリル酸

(AA)やメタクリル酸(MAA)とよく類似した重合速度(Rp)のpH依存性

一36一

Page 41: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

を示すことを認めた。ここでは,メタクリロイルグリシン(Ml-G1y)につい

ても同様に,RpのpH依存性を主として検討し,ビニル基に置換したα一メ

チル基が及ぼす影響について検討した。

2.2 実 験

2.2.1 試 料

M-G1yは第1章で述べたのと同様にして合成した。また,メタクリロイル

グリッソアミド(M1GAm)の合成は,M-GlyよりT&y1er23)の方法により

合成し,mp至38~14ポC(文献値23)工39~140℃)のものを使用した。

そして,メタクリロイルグリシリグリシン(MGG)は,1〉トG1yをTay1er23)

の方法によりオキサゾロソとし,それにグリシンを縮合させて得た。mp199

~200℃(文献値24)200~201℃)。その他使用した試料はすべて第王節

と同様に精製した。

2.2.2 重合方法ならびに極限粘度の測定

重合方法は第1節と同様である。(1η1)も第王節とほぼ同様で,ポリマー

を透析後,イオン交換樹脂IR-120遷にとおして,減圧乾燥後,O.5W塩

酸溶液中で測定した。

2.3 結果と考察

2.3.1 重合速度および1η〕のpH依存性

APSを開始剤とした場合の児pならびに/η/のpH依存性を図27に示

す。この図からわかるようにκpはpH2付近から7にかけて急速に増加した。

そしてpH7以上では一ほとんど変化なかった。この時のポリマーの1η〕は図

に示したように伽の」pH依存性とほぼ同様の傾向を示した。この結果は,第

1節において述べたA P Sの分解速度のpH依存性ともよく一致しているが,

一37一

Page 42: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

^らOε

\石

ε

も1・G㌻

£u一

O.2

」〔 や◎.1 〕

0 0

24681012pH

Fig.27. D・p・・d㎝・“fth… t一・・fp・1ym・・i・・ti㎝・・d

{?] of po1ymer on pil of po1ymeriza.tion mediu㎜ at 50oC:

一3 [M-G1y1, o.I mol/1; rAPs], 4坑10 mo1/1.

A AやMA A1)~10)ならびにA-G1yの場合とは全く異なっている。

従来,AAやMAAのようなイオン性モノマーにおいては,解離モノマーの

方が未解離モ.ノマーに比べて生長ラジカルヘの付加が遅いとされ,実際,A-

G1yの場合には,開始剤の分解速度に関係なく,酸性領域においては,pH

の増大に伴い帥は減少したが,この場合には全く逆の様相を示した。また,

pHによって分解速度が変化しないAIBNを開始剤として重合を行い,その

結果を図28に示す。図からもわかるように,児pはpH2から7にかけてわ

ずかに上昇し,pH7以上ではほぼ一定となる。しかし,AP Sを用いた場合

に比べてその増加ははなはだ小さい。このことよワ,A P Sを開始剤とした場

合のpH2から7にかけての五pの増加は,開始剤の分解速度に大きく影響さ

れていると考えられる。

一38一

Page 43: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

2.0

o 1.5

ω

Σ◎ 1.O.・

ε

ポ◎1■

Xq O15匝

◎ ◎◎

0.5

0.4

0.3^ ε

蟹O,2〕

O.1

24681012pH

Fig- 28- Dependence of the rate of po1ymerization 目nd

[π1 of po1ymer on pH of po1ymerization ㎜edium 目t 50oC:

一3 [M-G1y], 0.2 mo1/1; r^IBN], 4x1O mo1/I.

以上のように,児pに及ぼすpHの影響はA-G1yの場合とは大きな差異が

認められる。

これはビニル基に置換したα一メチル基に起因するものと考えられるが,さ

らに後節において,種々のアグリロイルー,メタクリロイルーアミノ酸につい

て検討した上で明らかにする。

2.3.2 NaC I存在下での重合

A-G1yは,低分子電解質であるNa C1存在下で重合を行うと,A P Sお

よびA I BN両開始剤とも況pの増大が認められた。そこで,この場合にはど

のようになるかを検討するため,両開始剤を用いて,モノマーと当モルの

NaC1を添加して重合を行った。その結果を図29に示す。A-G1yとは全

く異なり,侃pはほぼ全pH域において低下した。

一39一

Page 44: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

2.O

え◎ 1,5

ω

Σ◎ 1,Oε

邊◎支

。。α50=

O.5

O.4。

03^ ∴ 三

02〔 ~

O.1

2 4 6 8 10 12

p卜1

Pig, 29. Dependence of the rate of po1y㎜erization and

[?1 of po1ymer on ionic 5trength of po1ymerization ㎜ed-

iu㎜ at 50oC.

O,●: [M-G1yl,O.1mo1/1; [Na.C1],0.1㎜o1/1;

一3 工APSl, 4x1O 皿。1/1.

◇,◆: [M-G1y], O・2 mo1/1; [NaC1], O・2 皿。1/1;

一3 [AIBN], 4x1O mo1/1.

これは溶液のイオン強度の増大が帥の低下を招くことよワ,二分子停止定

数が増大したものと考えられる。したがって,2.3.1における酸性領域から中

性領域にかけての児pの上昇は,荷電した生長マクロラジカルの静電反発によ

る停止速度定数の減少によるものではないかと考えられる。

ただし,A P Sを用いた場合の児pは開始剤の分解速度に依存する部分が大

きく,両者の効果が相加的に現われたものと思われる。

2.3.3 MGAmの重合

第1節においてアグリロイルグリシソアミド(AGAm)はpHに関係なく児p

一40一

Page 45: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

はほぼ一定であった。この場合も,M-G1yについて,カルボキシル基をアミ

ド基に変えたMlGAmの重合をA P Sを用いてpH2~11の範囲で行った。そ

の結果は図30に示すように,AGAmと同様に,伽はpHに関係なくほぽ

一定となり,A P Sの分解速度5.0

ム、O

㌧300ε

宴ZOX

o.

o=

1.O

o o0 0

2468モ012 pトlPig.30-Dependen㏄of沽e剛e Of Poiym前za. tion on pH of polymerization med…um at50℃;

MGA剛、0.1mol〃;エAPSl,4x1O一割mo1〃.

に影響されないことがわかった。

これは前節にも述べたように,

アミド基のカチオン解離

(一CONH2H+)あるレ、はアニ

オン解離(一CONH一),そして

未解離における差は,二重結合

と共役していない場合ははなは

だ小さく,その影響はほとんど

ないようである。

2.3.4 MGGの重合

ジペプチドであるグリシルグリシンを結合したMGGの重合をA P Sを用い

てpH2~11の範囲で行ったところ,図31に示すように,M-G1y と同様

の石pのpH依存性を示すことより,解離基がより。二重結合から離れても,そ

の重合挙動はM-G1yと類似しており,前述したMGAmとは全く異なる。こ

のことより,カルボキシル基のイオン化はアミノ酸基が2個結合してもモノマ

ーの反応性に関しては同様の様相を示すことがわかる。

一41一

Page 46: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

5.O

\ 3り石∈

o◎ 2ゴ0「★

.直

庄1.O

0 2 4 6 8 10 12

pH

P ig. 3エ。 Dependence of the rate of po1ymer i za1=ion on

pH of po旦ymerization medium at 50oC:

正MGG1, o;1 ㎜o1/1; [APs】, 4x1o mo1/1.

2.3.5 モノマー初濃度の影響

開始剤であるA P SおよびA I B Nの濃度を一定にし,Ml-G1yの濃度を変

化させ,各種pHのもとで伽のモノマー初濃度依存性について検討し,両者

の対数をプロットしたのが図32である。この直線の傾きよりモノマー濃度次

数を求めたところ,開始剤種に関係なくほぼ1次となり,通常の均一系ラジカ

ル重合とみなすことができる。

一42一

Page 47: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

一4.0

α匝

α◎

一 一5.O

値6り

、、二亭’’

、一�フ! .’・’

、◆’

一1.2 -1.O -O.8 -O.6 -0.4

1og〔M-Gly〕

Fig. 32, Dependence of the rate of po1γmerization on

-3the πlonomer concentration at SOoC。 圧I], 4yユO ㎜oエ/ユ.

_, APS, pH: ○ , 2.20,θ , 4-O, ◎ , 6七90, (主, 王0.70.

一一一由 A工BN, pH: ◆ , 2.10,◇ 里 7.10,く〉 , 且O.50、

2.3.6 開始剤濃度の影響

モノマー濃度を一定にして,A P SおよびA I B Nの濃度を変えて,開始剤

濃度の児pに及ぼす影響について検討し,}og亙p一且。g!I〕の関係を図33

に示す。この直線の傾きより開始剤濃度次数を求めた。その結果,pHに関係

なく.,いずれの場合も伽は開始剤濃度のO・5次に比例することより,停止反

応は2分子停止機構であると推定される。

一43一

Page 48: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

一4.O

α0=

o◎

■一 T.O

一6.O

.一..〃二事二’

....、ニニ〃傘幸≡一・… ...

.、.・=二寧’‘‘..’一‘‘

二。寧ニニ’’...一一一‘

一3.O -2.8 一2.6 -2.4 -2.2 ・2.O

lOgll〕

Pig・ 33・ Dependence of the rate of po1y皿erization on the

i11itiator concentration at 50oC.

[M-G1y1, 0.1 mo1/1; 一 , APs; 一一一 , AIBN.

Symbo1s are the s早me a5 in Pig. 32.

第3節 アグリロイルアミノ酸の水溶液重合

3.1 緒 言

第1節および第2節で,A-G1y,M-G1yの水溶液重合においてはビニル

基のα一メチル基が重合速度のpH依存性に大きく影響を及ぼすことを認めた。

ここではアグリロイルアミノ酸について,アミノ酸基の主鎖の炭素数を増し,

解離基と二重結合との距離を大きくした時の重合反応がどのように変わるかを

検討するため,アグリロイルーβ一アラニン(A一β一A1a),アグリロイルー

γ一アミノ酪酸(A一γ一Abut)そしてアグリロイルーε一アミノカプロン酸

(A一ε一Acap)の重合を行った。

一44一

Page 49: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

3.2 実 験

3.2.1 試 料

モノマーはすべてこれまでと同様の方法で,塩化アグリロイルと当該アミノ

酸とのSchotten-Baumann法により合成した。それぞれmpは,A一γ一Abu七,

101~102℃(文献値98~100℃25…1o1~103℃26)),A_ε_A cap,

87~88℃(文献値78.5~8む℃25),87~88℃27))であった。その他の

使用した試料はすべてこれまでと同様にして精製した。

3.2.2 重合方法および極限粘度([η/)の測定

重合はこれまでと同様の方法で行った。1η〕の測定は,A一β一A1aの場合

はこれまでと同様に,一昼夜水中で透析,さらにイオン交換樹脂I R-120B

をとおした試料を,また,A一γ一Abut,一A一ε一A capの場合は,重合溶液

を希塩酸で酸性とし沈澱させ,水で十分洗浄した試料を,減圧脱水乾燥し,

O.5W水酸化ナトリウム溶液中30℃で行った。

3.2.3 紫外吸収スペクトル(UV)の測定

UVは㈱日立製作所製124型ダブルビーム分光光度計を使用し,溶媒は水

を用いて測定した。

3.3 結果と考察

3-3.1 重.合速度および1η1のpH依存性

AP S,A I BNの両開始剤を用いてA一β一A1aの重合を行い,児pならび

に=/η〕のp旺依存性を図34に示す。この図から明らかのように,両開始剤

とも児pはpH2~4において急速に上昇し,pH4付近で極大となり,それ以

後pH6付近まで急速に低下する。そしてpH6以上においては刃pはほとん

ど変化なく,A-G工yの場合に見られたような,.アルカリ領域での児pの上昇

一45一

Page 50: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

25

20くl

O〕15中

く石E10

ポ2Xα庄 5

5 一

く3 。 ●

P2〕

24681012 PH

Fig. 34・1)6pendenceoftherateofpolymerization andエη】ofpolymer on pH ofpolymerization medium

at50.C: ○,●=エA一β一Alaエ,q.コmo1〃;エAPS】,4x10一割mo1〃.

△,▲=【A一β一A1al,O.2mdl〃;【AI児N],4×10’雪mo1μ

20

(15くl

o

910く石E

gx 5o『

く3

?2〕

24681012 pトIFig.35.・Dependen㏄of the rate of po-yme曲atio皿

and【η】ofpolymer on pH ofpo-ymerlzatlon medlum

at50oC: 圧Mommer],O」mol〃;エAPSl,4x lO一島mol〃;

○,●,A一アーAbut; △,▲,A一ε一Acap.

あるいは開始剤種による差も認

められなかった。

つぎにA P Sを開始剤として

A一γ一AbutおよびA一ε一Acap

の重合を行い,その結果を図35

に示す。これらモノマーにおい

ても,A一β一AIaの場合と同

様に,伽はA一γ一Abutの場

合pH4付近,A一ε一Acapの

場合はpH5付近において極大

となワ,中性からアルカリ性領

域においてはほぽ一定となる。

1η1のpH依存性は図34,

35に示すように,児pとpH

の関係とほぼ一致する。

以上の結果より,これらいず

れのモノマーもpH4あるいは

pH5以下において児pの低下

が認められた。この理由として

は,例えば,A一ε一Acap に

おいてはpH4以上でないと完

全に溶解しないし,また,A一

γ一Abut,A一ε一Acapにお

いては,このpH領域で重合の

進行とともに系が不均一となる

こ一とが見られることよワ,アミ

ノ酸のメチレン基数の増大により疎水性が増し,モノマーの溶解度,さらには

生長マクロラジカルの溶解性が低下したためと思われる。さらにpHを増大す

一46一

Page 51: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

ると,モノマーの解離による静電反発が児pに大きく影響を与え,マクロラジ

カルヘの解離モノマーの付加が未解離モノマーに比べて遅くなり,伽が減少

すると考えられる(A一β一A1a;PKa=4.71,A一γ一Abut;PKa=5.11

A一ε一Acap;pKa.=5,24,PoIy-A一β一A1a;pXa:8.10,Po1y-

A一γ一Abut;pKa=8.78,Po1y-A一ε一Acap;pKa=9.74)。 しか

し,A-G1yの場合,RpはpH5以上において,A P Sの分解速度の増大に

伴い増加が認められたが,これらのモノマーの場合には認められず,先の説明

とは矛盾することになる。そこで,従来二重結合の反応性の評価にしばしばU

Vスペクトルが用いられていることから28), この場合も,モノマーのUVス

ペクトルを,未解離ならびに解離状態において測定した。その結果を表8に示

す。未解離状態においては, Tab1e 8.UV s榊胞。f monome固 アミノ酸基のメチレン基数が Monomer」〕 礼㎜(nm) 1ogε

A一αyA・β一Ala

A一アーAbut

A一ε・Acap

200 (199)b) 4.10 (4.04)b)

200 (200) 4.09 (4.02)

199.5(199.5)4100(4.Ol)

198・5(198.5)一4107(4.06)

’〕A-Gly・…y1・y~y・㎞・;A一β一Al・,・剛・y1一β一

aIanine;A一アーAb口t,ac町1oy1-7-amino一〃一bu取ric acid;

A一ε一Acap,ac町1oy1一ε一amillo一〃一。aproic acid.b〕Ic口.

iZed mOnOmer.

増すにつれ,わずかではある

が浅色移動している。したが

って,共鳴エネルギーも小さ

く,Q値も小さくなるものと

考えられる。また,モノマー

の解離状態においては,A一

G王yの場合のみ,浅色移動していることより,未解離よワも解離状態の方が,

そのρ値は小さく,生長ラジカルの反応性が上昇し,兎pはA P SのpH依存

性と類似の傾向を示したものと推察される。また,その他のモノマーの場合に

は,明確なスペクトルの移動は見られない。そして,アミノ酸のメチレン基数

を増すと,解離に伴う児pの低下の幅は幾分減少し,解離,未解離による児p

の差は小さくなるようであるが,これはQ値による影響だけではなく,さらに

はアミノ酸のメチレン基数を増すことによるカルボキシル基の解離定数の変化

が,対イオンの固定度に差を生じたためによるものもあると思われる。また,

前末端基ならびに生長鎖全体とモノマーとの相互作用も無視できないものと考

えられる。このことに関連しては,PIochocka29)らもアクリル酸金属塩と

一47一

Page 52: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

A Amの共重合において認めている。

3.3.2 NaC1存在下でのA一β一A1aの重合

つぎにA一β■A1aについて,低分子電解質であるNa C1の添加が柳にど

のような影響を与えるか調べるため,pH6ならびに9付近におけるNaC1を

添加した場合と,添加しない場合の児pおよび1η〕を表9に示す。児pおよび

T・b1e9・D・p。・d㎝㏄・flhε・・1・市dym。・i刎i.H・舳{ωmi“i舵。.iWη1川po1脚・・㎝ io11ic st肥I1gth of polymori㎜tion medium剛5ぴC

A一β一A13 ㎞i“舳。r・〕 pH(mol〃〕

0.1 ^PS

0.2 AlEN

NaCl 〃’x lO一 【η]

(ml〃) (mol〃・舌)

6.05 nono 5,13

6,05 0.1 5.2I

9.一7 I1ono 5,10

9,17 0.1 6.21

6.20 no皿e 5,07

6-20 0.2 5.2τ

9.05 110no 4,86

9,05 0.2 -O.42

1.4]

1.46

I.50

1.79

1,70

1,74

1,65

2.41

ωTIlo conoontration of APS(ammonium persu1『ate)or A1EN(躯。bisisob舳yr011i㍍ilo)w舶4x10-l mo1〃.

1η1は両開始剤ともpH-6付近ではNaC I添加による顕著な差異は認められ

ないが,pH9付近では明らかにその増大が認められる。このことは先のA-

G1yの場合とは少し異なる。.そして,アルカリ領域において,五pおよび

[η1の増大が認められるのは,対イオン形成によるので1まないかと考えられ

るが,さらには荷電生長マクロラジカルの前末端基ならびに生長鎖全体とモノ

マーとの相互作用の塩添加によるための変化も考慮する必要があるように思わ

れる。

3.3.3 モノマー初濃度の影響

開始剤であるA P SおよびA I.B Nの濃度を一定にし,モノマー濃度を変化

させ,各種pHのもとで柳のモノマー初濃度依存性について検討し,両者の

対数をプロットし,合わせて図36に示す。この傾きよりモノマー濃度次数を

求めた。いずれのモノマーにおいても,A-G1yと同様に,APSを使用した

一48一

Page 53: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

一3.o

α庄 一如。o

一5.O

£’

’θ’

’σ

二一

’石

1一ノ

一1.ム 一.2 -O -08 -O.6

1.9〔M〕

Fig. 36.王)ependence of the rate of poiymeriz乱tion

on the monomer con㏄ntration at50℃:口】,4×

10’品mol〃;r APS;一_一一,AIBN.

pH:(monomer,A一β一Ala)○,○,2.20;①,8.00;

●,8.20,

pH:(monomεr,A一γ一Ab口t)口,3.50;9,8.00.

pH:(monomer,A一ε一Acap)△,4.80;▲,8.90.

一〕.o

匝騒 一4.o目。

一5.O

、!

・2」B ・2.6 -2.4 .2.2. 一2.O

l・glI〕Fig.37.Depe血dence of the rate of polymeriza-

tion on the initiatbr concentration at50℃:エA一β一

Ala】,O.2mo1〃;互A.γ一Ab剛,正A中Acapユ,0.1molμ

Symbols町6th6same as in Fig.56

場合,酸性領域においてはモ

ノマー濃度に関して1次,中

性ならびにアルカリ領域にお

いては1.5次に比例した。こ

の理由としては,A-G1y

においても述べたように,か

ご効果と考えるのが妥当だと

思われる。一方,AIBNを

使用した場合は,pHに関係

なくモノマー濃度に関して1

次に上ヒ例した。

3.3.4 開始剤濃度の影

各モノマーの濃度を一定に

して APSおよびAIBN ,

の濃度を変えて,開始剤濃度

の帥に及ぼす影響について

検討し,両者の対数をプロッ

トして,合わせて図37に示

す。

この直線の傾きより開始剤

濃度次数を求めたところ,開

始剤種そしてpHに関係なく,

いずれの場合も恥は開始剤

濃度の0.5次に比例した。

一49一

Page 54: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

第4節 メタクリロイルアミノ酸の水溶液重合

4.1 緒 言

前節までにおいて,アグリロイルアミノ酸は従来のイオン性モノマーである

A AやMA Aと類似した重合速度(児p)のpH依存性を示すが,Ml-G1y

は全く異なる挙動を示すことを見いだした。

そこで,ここではその原因を明らかにするため,第3節と同様にアミノ酸種

を変えて,メタクリロイルアラニン(M-A1a),メタクリロイルバリン

(M」VaI),メタクリロイルーβ一アラニン(M一β一A1a)およびメタクリ

ロイルーε一アミノカプロン酸(M一ε一Acap)などの七ノマーを合成し,ア

ミノ酸基の炭素数の変化が重合反応に及ぼす影響を明らかにするため,開始剤

としてA P Sを用いて,これらモノマーの抑のpH依存性を主として検討し

た。また,比較のためA I B Nを用いての重合も行った恥さらには,モノマー

の紫外(UV)ならびに赤外(IR)吸収スペクトルを測定し,λmaxおよび

ビニル基とアミドのカルボニル基の伸縮振動の波数とα一置換基との関係につ

いても検討を行い,モノマーの反応性の評価を行った。

4.2 実 験

4.2.1 試 料

モノマーであるメタクリロイルアミノ酸の合成は,これまでと同様に当該ア

ミノ酸と塩化メタクリロイルとのSchott・n-Baumam法によワ合成した。そ

れぞれのmpは,Ml-A1a,117~118℃(文献値3G)/18℃),Ml-Va1,

102℃(文献値30)102℃),Ml一ε一A・ap,48~50℃(文献値31)47

~50℃)であった。そめ他使用した試料はすべてこれまでと同様に精製した。

4.2.2 重合方法と極限粘度([η〕)の測定

重合方法はこれまでと同様である。1η〕も第3節とほぼ同様で,M-A1a,

一50一

Page 55: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

M一β一A1aのポリマーは透析後,イオン交換樹脂をとおして,また,M-Va1

M1一ε一A.apのポリマーは,重合液に希塩酸を加え沈澱させ,水で十分洗浄

した試料を,前者は0・5M塩酸溶液中で,後者はO.5W水酸化ナトリウム溶液

中で測定した。

4.2.3 UVならびにI Rの測定

UVは第3節と同様の方法で測定した。一I R分光器は㈱日立製作所製215

型を使用して,臭化カリウム錠剤法によって測定した。なお吸収波数はポリス

チレン膜を用いて補正した。

4.3 結果と考察

4.3-1 重合速度および/η〕のpH依存性

A P Sを開始剤とした場合の各モノマーの兎pならびに[η1のpH依存性を

図38,39に示す。これらの図からわかるように帥は岬2付近から7に

かけて急速に増加した(ただし,M-Va1,M一いA.apはpH4以上でな

いと完全に溶解しない)。そしてpH7以上ではほとんど変化なかった。この.

1。。〃

看/xo

o=

o

三∵皿ヂ1ニサ

。1。き

。 o

2ム68101~ pH戸三g 38. Depe竈denc60f-hεr田te of poIyme5iエat;on

and一η】of po工y㎜εr On PH of P0-ym6ri訟tion mo-

dium a-5ぴC:圧Mo皿。m剛,O.l mo1〃;一APS】,4x

10i5molμ;O㎜d●,M-Ala:△舳d▲,M-VaL

5.o

{ω3叩

一コ.o

\ε

ポ2P2○

匡 1.o

o

.5 5-O

o.4 4.o

ド O.3 3.0 ? ?

~ o.2 2.o]

o,1 {.o

o o

2468-012 pH

戸ig 39.D・P㎝dε皿㏄o〔h…loofp・Iym・d・・一 一ion a掘d向]of po1ymεr o皿 pH of polymeriza-ion

n1edium刎5ぴC=一Mo皿。m剛.0」mol〃;エAPSl,

4川O・3mol〃;O馴d●,M一β.A13;△舳d▲, M・ε・AcaP.

山51一

Page 56: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

時のポリマーの〔η〕は各回に示したように児pのpH依存性とほぼ同様の傾

向を示した。この結果はM-G1y32)一の場合とはよく相関しており,また,第

1節において述べたA P Sの分解速度のp亘依存性ともよく一致しているが,

1)~A AやM1A Aならびにアグリロイルアミノ酸の場合とは全く異なっている

1O),33)

従来,A AやMlA Aのようなイオン性モノマーにおいては,解離モノマーの

方が未解離モノマーに比べて生長ラジカルヘの付加が遅いとされ,実際,アグ

リロイルアミノ酸の場合には,開始剤の分解速度に関係なく,酸性領域におい

ては,pHの増大に伴い兎もは減少したが,この場合は全く逆の様相を示した。

また,α一アミノ酸に比べて,β一, ε一アミノ酸を結合したモノマーの方が

pH増大に伴う伽の増加はかなり大きい。すなわち,アミノ酸基の主鎖のメ

チレ!基数が増すほど,解離モノマーの伽は大きくなるようである。

つぎに,pHによって分解速度が変化しないA I B Nを開始剤として,Ml-

A1a,M-V&1およびM一β一A1aの重合を行い,.その結果を図40に示す。

図からもわかるように,いずれ

の場合も児pはpH2から7に 2ρ

かけてわずかに上昇し,pH7

以上ではほぼ一定となる。しか

し,A P Sを用いた場合に比べ

てその増加ははなはだ小さく,

置換基のアミノ酸がα一,β一

体と変化しても,児pにはほと

んど影響しない。このことより,

A P Sを開始剤としたこれらメ

タクリロイルアミノ酸の重合に

おけるpH2から7にかけての

児pの増加は,開’始剤の分解速

度に大きく影響されていると考

^1.5甲

ぐる

ε

ち1りX Oo.o=

O.5

2 4 6 8 10 12

PH

l=ig. 40.Dependence or the rate o『polymeriza-

tion on pH of po1ymeriza-ion m6dium at50uC:

【Monom剛,O.2mo1〃;エAIBN】,4x m■3moI〃;○,

M-Ala;△,M-Va1;□,M一β一A1a.

一52一

Page 57: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

えられる。そして,α一アミノ酸を結合したモノマーよりも,β一,ε一アミ

ミノ酸を結合したモノマーの方が,その解離に伴う刃pの増加がより大きいの

は,解離モノマーの硫酸イオンラジカルとの反応性の差によるものではないか

と考えられる。

4.3.2 モノマーの紫外ならびに赤外吸収スペクトル

メタクリロイルアミノ酸の況pのpH依存性は,本質的にアグリロイルアミ

ノ酸とは全く異なる。これはビニル基のα一メチル基に起因するものと推定さ

れる。すなわち,メチル基による立体障害のための生長反応への抑制効果,ア

ミノ酸基との間の立体相互作用による共鳴禁止,さらには電子供与基としての

α一メチル基の超共役効果が原因ではなかろうかと考えられる。そこで,第3

節でも述べたように,伊藤28)らはビニルモノマーのUVスペクトルを測定し,

λmaXとQ値の相関性を認め,二重結合の反応性の評価に利用していること

と,また,大津34)らはメタクリル酸アルキルモノマーについて,そして横田

35)らはW一置換アクリルアミドについて,それぞれI Rスペクトルにおける

ビニル基およびカルボニル基の伸縮振動の変化を,置換基効果によるモノマー

の反応性の評価に利用していることより,この場合も,モノマーのU Vならび

にI Rスペクトルを測定し,そのλmaxおよび1ogεを表10に,そしてビニ

ル基(C=C)およびアミドのカルボニル基(C=O)の伸縮振動を表11に示

す。

Tab1e 1O.UVミpoo…raofmo皿。mer;

Monomer^〕 j掘.■〔nm〕

Tab1e ユ1,IR呈poαrao『monomers

1o9ミ MonomolIA-Gly 200 (199』帥 4.lO {4.04)向〕

A一β.Ala 200 {200} 4.09 {4」02〕

A・ε一Ac目p 198.5{198.5〕 4.07 (4,06,

M-Gly 205 {205〕 4.OO 14.08}

M・A1日 208 に08工 4.i6 {4.lU

M.Va1 212 {212』 4.〕1 f4,201

M一β一Ala 204 (204} 4.04 14-OO〕

M一直一Ao叩 〕O] {20〕〕 コ.99 (].961

G-Glツ 2i2 4.18

一A,M,md C,res閑。-ivdy,re脚to且。けloyl,

mεth日。けloyl.and cro-onyl. b〕ioniエ色d monomor.

‘Cn1’■, {Cm’I〕

^一Glソ 1“ラ lhlO

A.V日1 1653 1619

A.β.A1目 1幽6 iωO

A。!.A㎝p 1654 162]

M-Gly 1制9 i5舳M・Aia ,652 1611

M-V31 1640 1600M一’弓一^13 1650 1608

M.ε。Ac3p i652 1606

C-Gly 16フO 161〕

一53一

Page 58: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

UVスペクトルは明らかにアグリロイルアミノ酸に比べて深色移動しており,

し一だがって共鳴エネルギーも大きく,Q値も大きくなると考えられる。すなわ

ち,α一メチル基による超共役効果により,その遷移状態がよワ安定化され,

そのため生長ラジカルの反応性は低下したものと推察される。さらに,アミノ

酸基の主鎖のメチレン基数が増すにつれ浅色移動している。

なお比較のために,β一置換体であるクロトニルグリシン(C-G1y)の場

合も併記した。このモノマーは全pH域でA P Sを用いての重合は全く進行し

なかった。この場合UVスペクトルは深色移動しているが,M-Va1と比べて

も何.ら異常性を示しているとは思われない。したがって, β一メチル基の存在

による反応性の激減は立体障害に基づくものと考えられる。

ところで,アグリロイル系アミノ酸は,N一置換アクリルアミドと同様に」,

二重結合,アミドのカルボニル基および窒素上の非共有電子は非交叉共役系を

構成していると考えられる35)。表11より明らかなように,メタクリロイル

アミノ酸の〃。士。はアグリロイルアミノ酸に比べてかなり大きく低波数側ヘジ

フトしてv■る。これはα一メチル基の電子供与性によるもので,したがって,

先にも述べたように,@値は大きくなり,生長ラジカルの反応性がアグリロイ

ルアミノ酸に比べて低下し,児pのpH依存性が全く異なるものになったと推

察される。

また,結合したアミノ酸基の主鎖のメチレン基数を増すほど,すなわち,非

交叉共役系であるため,置換基の電子吸引性が大きくなるほど,〃.C=。,〃。=o

ともに高波数側ヘジフトする傾向がある。また,カルボキシル基は未解離状態

では電子豚引性であるが,解離状態においては電子供与性であり,結合したア

ミノ酸基が,α一体の方がβ一, ε一体に比べてその電子供与性は大きく,カ

ルボニル基とMとの共役が大きくなり,さらには,カルボニル基とビニル基と

の共役の程度も大きくなり,硫酸イオンラジカルとの反応性に差が生じ,図38,

39において見られたように,モノマーの解離に伴い児pにも大きな差が生じ

たものではないかと考えられる。しかし,開始剤としてAIBNを用いた場合

には,図40に見られるようにRPに大差はないこと,そして表10に示した

一54一

Page 59: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

ように,モノマーを中和した場合と,しない場合のUVスペクトルにほとんど

差がないことから,Q値よワもθ値による影響が大きいものと考えられる。

しかしながら,これらのことに関しては,数種類のモノマーとの共重合を組

み合わせた上での,Q,e値よワ評価されなければならない。

4.3.3 重合温度の影響

M-A1a,M-Va1,M一β一A1aの3種のモノマーについて,重合温度を,

40,50,60,8ザCと変化させて,児pを求め,その結果をアレニウスフロ

ットしたのが図41である。図よ一3S

上4.O

創匝α一4.5

2

一5.O

一5.s

2.8 2.9 ;ヨ.0 3.、 3,2

1/アX103(鼠一1)

F ig. 41.Arrhen1us polt of the rate of polymeriza-

tion:[Monomer】,0.l mol〃;【APS〕,4一・;一0■3市。W;

州,7・/1020;○,M・Ala;△,M-Va11口.Mr号・A1鉋.

り,それぞれの活性化エネルギー

を求めると,M-A1&,14.8Kca!

/mo王ヨM-V a1,15.3Kca1/

mo1,M一β一Ala,13.9Kc&且/

mo丑となった。

この値は,メタクリル酸の場合

の且5.6Kca且/mo王36)にほぼ近い

が,一般のラジカル重合における

値よりは少し低いようである。

4.3.4 モノマー初濃度の影響

A P SおよびA I B Nの濃度を一定にし,各モノマーの濃度を変化させ,各

種pHのもとで児pのモノマー初濃度依存性について検討し,両者の対数をプ

ロットしたのが図42であ肌この直線あ傾きよりモノマー濃度次数を求めた

ところ,いずれのモノマーにおいても,開始剤種に関係なくほぽ1次となり,

通常の均一系ラジカル重合とみなすことができる。なお,M1一ε一A・apのみ

は,pH4~5での重合において,重合の進行とともに系が不均一となるので ,酸性領域でのモノマー濃度次数の検討は行わなかった。

一55一

Page 60: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

一35

一ム.o

Pig

一4-5○匝

σ〇

一一 TC

一5.5

一6,O

一・。’ ’二7

、・・ 、=ガ’

、グ’’

〆’

一1.2 一泡 一〇.8 -OポーOム

loq〔M〕

42.Dependence of the rate of polyn1erizadon

on the monomer concentration at5ぴC.:圧Inhia一

一〇r],4x10-3mol〃;r A声S;___,A1BNl

pH(monorner,M-Alo〕 :●,2.30;○,7」0;

①,H.30.pH(rnonomer,M-Val) :■,4-10;口、6.80;

[■,H.oo.pH(monomor,M一β一Ala) :◆,2.30;◇.7.10;

〈レ,H.10.pH(monomer,M一ε一Acap〕=▲,6.90;△,11.90。

4.3.5 開始剤濃度の影響

各モノマーの濃度を一定にして,

A P SおよびA I B Nの濃度を変

えて,開始剤濃度の児pた及ぽ†

影響について検討し,両者の対数

をプロットしたのが図43である。

この直線の傾きより開始剤濃度次

数を求めた。その結果,pHに関

係なく,いずれの場合も伽は開

始剤濃度の0.5次に比例すること

より,停止反応は2分子停止機構

であると推定される。

一3.5

一4.o

一4.5o.

。O一一 T.O

一5.5

一6り

一,;;一’’’ @.二‘∫4:

ノニ=〃’二つ二’’

一3.O -2-8 -2.6 -2ム 一2.2 -2C

l・g〔1〕

Pig,43.Dependence of th6rate of polymerization

on the initiator oonc㎝舳一ion at50℃:TMom-

merl,01n1ol〃, ,APS,一_一,AmN Symbols are the same as i!1R9,42

一56一

Page 61: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

第5節 メタクリロイルグルタミン酸の水溶液重合

5二1 緒 言

これまで種々のアグリロイルー,メタクリロイルーアミノ酸の水溶液重合に

おける重合速度(児p)のpH依存性について検討を行ってきた32)’33)’37㌧

その結果,アグリロイルアミノ酸は従来のイオン解離可能なモノマーである

AAやMAA1)~10)とほぼ同一傾向の況pのpH依存性を示したが,メタクリ

ロイルアミノ酸の場合は全く異なる挙動を示すことを認めた。この理由として

は,ビニル基に置換したα一一メチル基の超共役効果,ならびにその立体効果が

大きく関与しているものと推論した。また,これらモノマーにおいては,結合

したアミノ酸基の種類により,カルボキシル基の解離による畠値の変化が重合

反応に大きく影響することを認めた。そこでここでは,これまですべてモノカ

ルボン酸モノマーであったが,ジカルボン酸モノマーであるメタクリロイルグ

ルタミン酸を用いて,その解離が重合反応に及ぼす影響を明らかにする目的で,

主として児pのpH依存性について,開始剤としてAPSならびにA I BNを

用いて検討した。

5.2 実 験

5.1.1 試 料

M-G1uは第1章で述べたのと同様にして合成した。また, N一(2一ジエ

チルアミノエチル)一アクリルアミド(DAEA),一メタクリルアミド(DAEMl)

も第1章で述べたのと同様にして合成した。そ.の他使用した試料はすべてこれ

までと同様にして精製した。

5.2.2 重合方法ならびに極限粘度(1η〕)の測定

重合方法はこれまでと同様にして行った。1η〕は,M-Gエuの場合はO.5

ぺ水酸化ナトリウム溶液中で,D A E A,D A EMの場合は0.5ぺ塩酸溶液中

一57一

Page 62: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

で測定した。

5.3 結果と考察

5.3.1 重合速度および[η〕のpH依存性

APSおよびAIBNを開始剤とした場合の左pのpH依存性をそれぞれ図

44,45に示す。この図からもわかるように,A P Sを使用した場合,モノマ

ー初濃度が0.2mo玉/iの時は,従来のメタクリロイルアミノ酸と同様のpH

依存性を示し,pH2付近から7にかけて徐々に増加したが,その割合は非常

に小さいものである。しかし,この場合もA P Sの分解速度のpH依存性とよ

く類似しておワ,児pが開始剤の分解速度に依存するという一般則に従ってい

る。また,モノマー初濃度がO.1mo1/1の時は全く異なる様相を示し,pH

4.5付近以上ではpHの増大に伴い柳は急速に減少し,PH7以上ではほと

んど重合は起こらなかった。この様にモノマー初濃度の変化によって亙pのp亘

依存性が大きく異なることは,これまでのメタクリロイルアミノ酸においては

認められなかったことである。これはやはワ,両カルボキシル基がほぼ完全に

解離した状態において,硫酸イオンラジカル(SOべ’)とのイオン反発が大

きく,かご効果により,希薄溶液中においては開始反応が起こり難いためでは

ないかと考えられる。すなわち,解離モノマーおよび溶媒分子が生成ラジカル

対の分離をさまたげ,相互再結合を助長するような一種の障壁を形成するよう

な状態となっていると考えられる。また,分解速度がp亘によって変化しない

A I B Nを使角した場合,五pはMl-G1y32)とは異なりpHの増大に伴い僅

かに減少の傾向が見られる。これはM-Lys38)のそれとはよく類似している。

従って,この場合は,側鎖のかさ高さに基づく,工,1一ジ置換エチレンの立体

効果によるモノマーの反応性の低下によるものと考えられる。このことに関し

ては,アグリロイル系アミノ酸はw一置換アクリルアミドの一種と考えられ,

そしてM,w一ジ置換アクリルアミドは容易に単独重合するが, M,M一ジ置

換メタクリルアミド35)・39)は,その立体障害により全く単独重合を行わない

一58一

Page 63: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

^ 3 ◇

o

\ 2石

1…

ポ9Xα 1征

◎◎

2^ ●

Pig。 44.

24681012 pH

Dependence of the rate of polymerization a血d 一η] of

poIymer on pH of polymeri2ation medium at5ぴC.

[APS]I4×10-3mol〃;○and●I[M-Glu],0,2mo亘〃・

◇、[M-G!u],0.1mol〃一

O

ω

\石E 1

ポ9Xα厳

4

0

3 ) 〔 ト 〕

rig.

2 4 6 8 10 12

pH

45.Depende皿。e of the rate of polymerizatio口and rη]of

polymer on pH of polymerization medium at50.C.

[M-G1u],0.2mol〃;[AIBN],4x10一宮m⑪1〃.

一59一

Page 64: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

ことからも推察される。また,アクリルアミドはア.クリル酸エステルに比べる

とC(0)一N結合の回転が遅いため,この場合にはカルボキシル基の解離に

より,その立体障害はより顕著となり,pHの増大に伴い帥は減少したもの

と考えられる。この時得られたポリマーの1η1は,図44,45に示したよう

に,児pのpH依存性とほぼ同一の傾向を示した。

5.3.2 D A E AおよびD A E Mの重合

これまではモノカルボン酸,ジカルボン酸についてであったが,この場合も

第1章の場合と同様に比較のため,塩基性モノマーであるDAEAおよび

D A E Mについて,A P Sを開始剤として児pのpH依存性について検討を行

った。その結果は図46に示す通りで,両モノマーとも児pは中性付近で最李

大きいようである。この場合は,しかし,APSが三級アミンによりレドック

ス分解したためアルカリ領埣で伽は低下したものと思われる。このことに関

しては,すでに,ジメチルアニリンがB P Oと酸化還元反応を行うことや40),

pH

24681012100

80

〕60[

.9

u40書

8 20

’’...’’▲一.

◆’ ▲’ ’’ ’’.’・.. 、’ 一。○’’ ◇

← 、! 、・◆

1! 、、二!二一ヤーノノ/’/γ 、

1,仔 ㌧1’ 一’’.’[■

1.6

聾1.2言

δo£〔 む

○ム

Pig・46。

oO 1 2 3 4 5

Po)merization{ime{hr〕

Aq蝸。u彗 polymeri肥tion of M一(2-diethy1aminoeuly1)一

目。rylamid日(I)目nd・一面ethaor}1目而ido{口)with APS.

二Morlomer二:工。O mol〃,こAPS二11,Ox lO一!mo1〃.

Polymeri囎tion temp.160二C

一一一一・・一・一・=fPol}mo1=i2ミltion of 工.一・………・・・・・… l Polym巴ri2目tioo of H

Initi目1pH = 1012.20, 、二 17.OO, 1-11 lO.55.

● :2-96, ▲ =6q5. ■ = lO.80

、,◆:〔珊二(Polymeri肥tio口ti㎜e13hr〕

一60一

Page 65: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

41)KPSとトリエタノールアミンの系 ,さらにはKP Sとメタクリル酸ジメチ

ルアミノエチルの系42)においても同様な現象が認められている。すなわち,

三級アミノ基を有するモノマーであるD A E AおよびD A E Mlが過酸化物であ

るA P Sと酸化・’還元反応を起こし,A P Sの分解を加速させ,その効果が激

し過ぎるためA P Sが途中で完全に分解し,重合開始にあずかるA P Sが消失

したためアルカリ領域で況pは低下したものと考えられる。従って,アグリロ

イル系アミノ酸とは少し異なる重合挙動を示したものと思われる。なお,得ら

れた塩基性ポリマーは低温溶解型であった。

5.3,3 モノマー初濃度の影響

開始剤であるA P SおよびA I B Nの濃度を一定とし,各種pHのもとで

M-G1uの濃度を種々変化させ,帥とlM〕の関係を対数にプロットしたの

が図47である。この直線の傾きよりモノマー初濃度次数を求めた。その結果,

児pはAP Sを使用した場合,pH4.5以下においてはモノマー初濃度の且次

一3.5

一ム.O

一4.5α叱

α

2-5,O

一5.5

彩’ う 。ターケ’ 、兜二刀’

4ク 一炉’’ V

力’

一6.O

一1.O -O.8 -O.6 -O.4 _O.2

一剛M-Gl・〕

Fig.47.Dependence of the rate of polymerization on the monomer co皿。entration at50oC.[Ihitiator],4×玉OI3mo1〃;

一一_、APS,pH:O,2.00;①、4.50;○,7.lO;●,10.20;

一一一・・,AIBN,pH:◇,2,OO;◇,7.20;◇,ユO.lO.

一61一

Page 66: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

に比例するが,それ以上のpH域においては1次より高次となり,アルカリ領

域においてはおよそ1.25次に比例した。これはこれまでのメタクリロイルア

ミノ酸においては認められなかったことであり,明らかに,先に述べたような

かご効果によるものだ・と考えられる。また,A I B Nを使用した場合も,やは

り.pH2付近ではモノマー初濃度の1次に比例,pH7および10付近では

1.5次に比例した。これもA P Sの場合と同様にかご効果によると考えられる。

5昌3昌4 開始剤濃度の影響

M-G1uの濃度を一定にして,A P SおよびA I B Nの濃度を変えて,開始

剤濃度の伽に及ぼす影響について検討し,1og児p-1og/I/の関係を図

48に示す。この直線の傾きよワ開始剤濃度次数を求めた。その結果,APS,

A I B N両開始剤とも,pH2付近では開始剤濃度に関してO次,pH7付近

では1次に比例した。すなわち,前者では停止反応は1次ラジカル停j止,そし

て後者では1分子停止機構であると推察される。

一3.5

一4,0

一4.5o一

。,

2-5.O 6レ’ 。ひ’ ’少’一舟‘二一◇一一φ一一似一

一5.5

一6.O一2.6 -2.ム 一2.2 -2.0 -1.8

1◎9〔1〕F ig・48・De1〕endence of the rate of polymerizatio皿011the initiator

concentration at5ぴC、正Mommer】,0.2mo1〃; Symbols are the same as in Fig.47

一62一

Page 67: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

このように,ジカルボン酸モノマーであるM-G1uの水溶液重合においては,

A-G1y,M-G1yに比較して,単に重合系のpHを変更するだけで,重合

挙動がその素反応の内容まで容易に変化しうることを示し興味深いことである。

5.3.5 重合温度の影響

A P Sを開始剤として,重合温度を40,50,60,80℃と変化させて児p

を求め,その結果をアレニウムプロットしたのが図49である。図よりその活

性化エネルギーを求めると,9.4K・a1/mo1となった。この値は一般のラジ

カル重合における値よりもかなり小さい様である。

山3.5

一4.O

一4.5

αo=

α◎ 一5,O

一5.5

一6.O

一2.8 -2.9 -3.O -3.1 -3.2

1/TX103(K’1)

Fig. 49,Arrhenius plot of the rate of po1ymerization・

[M-Glu」,O.2mo1μ;[APS],4x1O一一moψ;pH.7=二0.lO.

第6節 ε一アグリロイルー,ε一メタクリロイルーリジンの水溶液重合

6.1 緒 言

ここでは,さらにアグリロイル系アミノ酸の重合反応に関する知見を深める

ため,これまでのモノマーのような解離基としてカルボキシル基のみを持つイ

一63一

Page 68: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

オン性モノマーの代りに,アミノ基とカルボキシル基を持つ両性モノマーであ

るε一アグリロイルリジン(A-Lys)及び・ε一メタクリ1コイルリジン(M-

Lys)の両モノマーを合成し,これら両モノマー一の水溶液重合を,開始剤と

してA P S及びA I B Nを使用し,さらには単独水溶液中では熱分解しないが,

アクリルアミドの水溶液重合において,その有効性が認められているメタ過ヨ

ウ素酸ナトリウム(SM1P)43)を使用して,主として児pに及ぼすpHの依存

性を検討し,その相違性を明らかにした。

6.2 案 験

6.2.1 試 料

モノマーはM1orawetz44)らの方法を用いて,塩化アグリロイルあるいは塩

化メタクリロイルとリジン銅錯体から合成した。なお,リジンはL一体を使用

した。

A-Lys

分析値 C 54,06%, H8110%, N 13.87%

CgH16N203としての

計算値 C 53.98%, H8.05%, N 13.99%

M-Lys

分析値 C 56.11%, H8.52%, N 13.01%

C1oHI8N203としての

計算値 C 56.06%, H8.47%, N 13.07%

Sδrens.nのフォルモール滴定によるA-Lysの分子量:198.6(計算値

:200.2),M1-Lysの分子量:212.8(計算値:214.3)。S M=Pは試

薬特級品をそのまま,その他の試薬はこれまでと同様に精製し使用した。

6.2.2 重合方法

重合系のpHの調整は,塩酸と水酸化ナトリウムの希薄溶液を使用して行っ

一64一

Page 69: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

た。その他,重合方法及び重合率の測定はこれまでと同様である。

6.2.3 SMPの定量 周43)の方法に準じて,亜ヒ酸法により定量した。

6.3 結 粟

6.3.1 重合速度のpH依存性

6.3.1.1 A P Sによる重合

A P Sを開始剤としてA-Lys,M-Ly・両モノマーの重合を行い,児pと

pHの関係をそれぞれ図50,51に示す。A-Lysの場合,柳はpH2から

4にかけてわずかに増加した後pH7付近までほぼ一定,その後pH9まで急

激に増大し,pH9付近で極大となり,それ以後はpHの増大とともに減少す

る。M-Lysの場合,児pはpH2から7まではほぼ一定で,その後pHの上

昇とともに増大した。

\石ε

ε

x匝

\ちE

Xol

2 ^ 6 0 10 12

pHPig.S0.D・岬d・鵬舳h・舳・r叩1ym・・i刎i・・ on pH of polymeri瑚don m6dium田t5ぴC:一A- Lys】,O-1mo1〃;圧APS1,4x lO一,molμ。

2 4 6 8

pHFig-51.De岬d㎝㏄o〔he・ateofpolymε・i・ali㎝ on pH or po-ymerization medium a15ぴC=一M-

Lys1,O.1molμ;【APS】,4x lOI畠moI〃.

一65一

Page 70: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

.6.3.1.2 A I B Nによる重合

p早によって分解速度が変化しないA I B Nを開始剤として,雨モノマーの

重合を行い,その結果を図52,53に示す。A二Lysの場合,児pはpH2か

ら6付近までは,p豆の増大に伴いわずかに減少するが,それ以上pHを増大

E

9買

\一

石E

2貫

~4601012 pHp ig. 52, Dependon060『thc rat60『polym61-i2ati0皿

on pH or polymeriza-ion modi1』m at50oCニュA.

Lysl,0-1mo一μ;【A1BNl,4x10一.lmo1μ

2‘601012 pH

】=ig 53.Dope掘d6nco0『一11e1.刎e0『PoIymo『izali011

0n pH or叩一ymGri囲一ion modiユm at5ぴC:エM.

Lys]、0.l mo一〃;【AIBNl,4x10■,mo1μ.

すると急激に減少しpH8以上では非常に小さいものとなった。また,M-Lys

の場合は,pHの増大に伴い児pは徐々に減少した。

6.3.1.3 S M Pによる重合

単独水溶液中では熱分解しないS MPを開始剤として両モノマーの重合を行

い,その結果を図54,55に示す。いずれの場合も抑一は酸性領域でははなは

だ小さいが,中性付近からpH9にかけては急激に増大し,pH9付近で極大

となり,それ以後はpHの増大に伴い急速に低下した。また,この時のS MlP

の分解速度のpH依存性をそれぞれ図54,55に併せて示す。いずれの場合も

児pのp亘依存性とよく一致し,伽が開始剤の分解速度に依存するという一

般則に従っている。

一66一

Page 71: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

o

、石1≡

9x

2 ^ 6 0 10 12

2x害

pトIF ig S4-D‘…Pend芭nco o『一I1o r蜆ie o『Po1シmoriz酬ion

帥dlhed㏄ompos11i伽舳eofini伽。ronpHor polymoriza1ion mεdium洲50℃=lA↓ysi,O.l mo1〃;

=SMPl,4x10一,rnoV^

\3E

gx値

6 10 12

21

1 一

pH

Fig. 55. Dopendenoe Or-he r酬e Or pOIymeriz丑一i0掘

and d16decompOsitiOn r且蛇。f init青酬0r On pH0ぎ

poiymeriz釧ion mεdium at50oC11M・しys】.軌ヨ

mol〃;一SMP】,4x10Iomolκ

6.3.2 モノマー初濃度の影響

開始剤であるA P S,A I B N及びS M Pの濃度を一定にし,モノマー濃度

を変化させ,各種pHのもとで児pのモノマー初濃度依存性について検討し,

両者の対数をプロットして,A-Lysの場合を図56に,M-Lysの場合を

図57にそれぞれ示す。A P Sを用いた場合,A-Lysにおいては酸性領域で

一コ、o

一〕.5

o一^o匝

一一f.5

一5.o

一5.5

4戸 4二 .一 /ノ ノ づ1}蜂

〆イ ニガー’ ’ ’ ’ ’ パκ 、〆 .r /

ター

一1.2 -10 -O.8 -O,6 -O.4

1.ql^・しy舌〕

F ig- 56.De閑ndenc60〔110r州e or polymoriza-ion

on量佃monomer ooncεn-r訓ion訓5ぴC:m,4x lO一目

molκ.__=APS:pH.(し))2.10;(,D〕640;。

(○〕9-10。一一一一:AlBN;pH,(口〕2.30;(〔一)

6.40;(臼)7-40一一一一1SMP;pH,(◇〕6.50;(◇)

7.20;(◆)9.1O.

一’ Rー5

一4.o

・ム.5

oo一 一5,o

一5.5

一6.o

・ 、〆づ二14匁

.一

|ー皿一/

一1.2 -1」O -O.O -O.6 -O.4

1州Mぺy・〕

Fig 57.I)ε陣ndεn㏄of{e r^1o of p{〕lymoriza一…on

On-h6mOnOmとr conce舳m-ion凹t50oC:{ll,4x

lO一・moIμ __: APS; pH. (○〕2.20;(●}

6.80;((D) 10.40. 一一一一: AIBN; pH, (口)2.10:

(日)6.90;([1)10.OO._一一_:SMP:pH,{◇} 8.40二{◆)9.10.

一67一

Page 72: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

はモノマー濃度に関して1次,アルカリ領域では1.5次に比例したが,M-Lys

においてはpHに関係なくユ次に比例した。A I B Nを用いた場合は,両モノ

マーともpHに関係なくモノマー濃度に関して1次に比例した。また,S MP

を用いた場合は,やはり両モノマーともpHに関係なくモノマー濃度の1.5次

に比例した。

6.3.3 開始剤濃度の影響

A-Lys,M-Lys雨モノマーの濃度を一定にして,開始剤であるAPS,

A I B NそしてさMlPの濃度をそれぞれ変えて,開始剤濃度のRpに及ぼす影

響について検討し,両者の対数をプロットしてA-Lysの場合を図58に,

M1-Lysの場合を図59に示す。この直線の傾きよワ開始剤濃度次数を求めた。

一40

呈一・¥

目。一 一45

ザ・l

藺〇

一 一50

一2.8 -2.6 -2.ム 一2.2 -2.0

ioo〔リFig.5色.D榊d㈹山h舳・市。1y㎜σi刎i㎝ 0皿量be bitiatOr oon㏄n吐atio土at50.C:圧A.Lys】,

01mo1〃 Symbols aI.6the same as1Il F1956

一2.目 一2.6 -2.4 -2.2 _2.O

lo9〔リFig,59,Dep6ndence of-he剛εofpolyme,i,a-ion

○皿th6i皿itiator cono帥tratio皿at5ぴC二1M.Lys】,

I0.1molμ Sy㎜bo-s are the samε鯛in Fig.一57

その結果,両モノマーとも,いずれの開始剤種においても,児pはpHに関係

なく開始剤濃度のO.5次に比例することより,停止反応は2分子停止機構であ

ると推定される。

6.4 考 察

APS,AIもN及びSMPによるA-Lys,M1-Lysの水溶液重合にお

一68一

Page 73: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

いて,児pのpH依存性は,これまでのアグリロイルー,メタクリロイルーア

ミノ酸の場合と同様に,α一メチル基の有無による影響が顕著に現われる。

更には,開始剤種の影響も大きく,全く異なる様相を示した。この重合挙動

の相違は,明らかにその反応機構に相違があることを示している。これについ

て,以下考察を進める。

A P Sを開始剤とした場合,A-Lysの重合においては,これまでのアグリ

ロイルアミノ酸のそれとは異なり,図50に示したように,一酸性領域でのpH

増大によるRpの減少は見られず,pH3から7にかけて況pはほぼ一定であ

肌これは両性モノマーであるため,次式で示すように,カルボキシル基及び

CH2=CH CH2=CH CH2=CH 1 i l

C=O -H+(PKa1) C=O -H+(PK a2) C=O l l l

H-N H-N H-N l +H+ i +H+ 1

(CH2)司 (CH2)4 (CH2)4 1 1 1 + +

H3N-CH-COOH H3N-CH-COO■ H2N-CH-C00一

アミノ基が解離し,この領域での静電反発がないためと考えられる。また,pH

7以上での児pの増大は,これまでにも述べたように,結合したアミノ酸基の

主鎖のメチレン基数が増すほど,硫酸イオ1/ラジカルとの反応性が増大するた

めと推察される。そして,モノマーのpKa1(=2-63)と一致するp亘以下,

p.尽a2(:9.55)と一致するpH以上では静電反発により,児pは減少したも

のと思われる。M-Lysの重合においては,図51に示したように,児pはpH

7以上においては,A P Sの分解速度のpH依存性とほぼ類似したが,pH7

以下においてはほとんど変化が見られなかった。このことも,やはりモノマー

が両性であるため,等電点(=6.08)付近では,メタクリロイルアミノ酸37)

の場合と同様に,生長マクロラジカルの静電反発による停止速度定数の減少が

ないためと考えられる。

AI BNを開始剤とした場合,A-Lysの重合においては,図52に示した

ように,pH2付近から等電点(=6.09)付近までは,伽には大きな変化は

一69一

Page 74: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

ないが,それ以上のp互においては,伽は急激に減少している。

しかし,モノマーの等電点,並びにp亙a1,PKa2でのU Vスペクトルを

測定した結果からは,全く変化が認められないところか一ら,Q値には変化がな

いものと考えられる。したがって,これは後で述べるが,カルボキシル基の解

離が進むにつれて,モノマーのθ値が正に大きくなワ,ラジカル末端とモノマ

ー間での反発によるのではないかと考えられ机Ml-Lysの重合においては,

図53に示したように,pHの増大に伴い児pは緩やかに減少したが,これは

M-G1uとよく類似しておワ,側鎖のかさ高さと,更には,カルボキシル基の

解離によワα一メチル基の立体効果がより顕著となったためと考えられる。

S MlPを開始剤とした場合,A-Lys,M-Lysの重合においては,とも

に,Rpはモノマー初濃度に関して,pBに関係なくほぽ1.5次に比例した。

このことは,S M Pがその単独水溶液中では熱分解しないが,モノマー共存下

では,重合の進行とともに1次分解することより,両モノマーとも,S MPと

ともに重合の開始反応に関与しているものと考えられる口したがって,この場

合,AAm43)と同様に,モノマーのe値が正に大きく,つまワ,ビニル基が

正に部分的に帯電しておワ,S MPのアニオン樺がモノマー分子に配位して,

コンプレックスを形成して,開始されるラジカル重合であると推察される。こ

のことに関連しては,第4節のメタクリロイルアミノ酸のAPSによる重合に

おいて,モノマーに結合したアミノ酸基のメチレン基数を増やすほど,アルカ

リ領域において児pが増大したのは,θ値の差によると推論した。更に,アグ

リロイルアミノ酸のSMPによる重合においても,表12に示すように,やは

り,結合したアミノ酸基めメチ Tabl e 12.Rat6 0『 polymel’iz訓iOn o『 acryloyI

レン基数を増やすにつれ,e値 amino add5with SMP(sodium舳aP6『iodate)as in趾iator at50oC.■〕

が正に大きくなワ,児pは増大 M。。。m。。 κ。。10・(。。。一〃一。)

したと考一えられる。これらのこ

とより,重合は,既に周がAAm

の重合において報告しているの

と同様な機構で進行するものと

A一αy - A・β.Ala O.〕

A・r・Ab山 〕.4

A・‘.Aoap 13.1

・リMommGr1,0.l mol〃;圧SMPl,4シ1O-I mol〃;

pH,9.20全0.10.

一70一

Page 75: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

思われる。すなわち,次式のように,一

δ十・

{ CH2=CH+H4106-

C=0 i

H-N l

(CH2)。 十 1

H3N-CH-COO一

CH2=CH一一一H4106 1

C=0 1

H-N 1 (CH2)。 十 1

H3N-CH-COO■

→H3105一・ 十HOM・→HO・ 十王03一 十HOM・十H20

SM1Pの工価アニオンがモノマーに配位し,コンプレックスを形成し,これ

が分解し,生じた1次ラシ’カルにより開始されるラジカル重合であると考える

のが妥当であると思われる。そこで,このコンプレックスの見掛けの平衡定数

K。は,モノマー初濃度を/M〕とすれば[M〕3/況p2-l Mllのプロットよ

り得られる直線から求められることから,A-Lys,M-Ly。,それぞれの結

果を図60,6王に示す。この傾きと切片から求めたKcの値は,A-Ly。,の

場合,pH6でO.8口/mo1,pH9で2.7エ/mo1,Ml-Lysの場合,pH9

x

八?

Ol O.!

三^一Ly・ll[ol/1〕

Fig.60-Plo-o〔M】昌〃~ag竈i口st【M】.【SMP],

4x lO■!mol〃;50oC;{◇〕,pH6.50;〔○〕,pH9.10.

x

[\

o.1 o!

lM-Lソ言〕[・・〃n

P ig-61.Plot oUMlヨ〃戸!3gaimt l-M】一 rSMP1,

4y lO■ヨmol〃;50=C;pH9.lO.

一71山

Page 76: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

でO.27Z/mo1である。したがって、KcはpHによワ異なワ,しかも,A-

Lysの方がM1-Lysよりもかなり大きい。そして,両モノマーとも,図54,

55に示したように,pH9付近で伽が極大をとることよワ,Kcの大きさ

が,この重合においては児pに大きく影響することがわかる。

総 括

アグリロイル系アミノ酸の水溶液重合を,APS,AIBNなどを開始剤と

し,主として重合速度のp亘依存性について検討した。

その結果,アグリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,β一アラニン,γ

一アミノ酪酸, ε一アミノカプロン酸)においては,いずれのモノマー一も児p

ほ酸性にて最大を示し,pH5あるいは6付近までほpHの増大に伴い低下し

た。そしてA-G1yの場合は,A P Sを用いると,伽はpH5を極小とし,

p亘8まで急速に増大,その後はほぼ一定となった。

さらにA I B Nを用いると抑はpH5と7に極小を,そしてp亘6と9に2

つの極大を持つ曲線が得られた。また,A一β一A1a,A一γ一Abu t,A一ε

一A・apの場合は,A P Sを用いると,いずれの場合も亙pはpH6付近まで

減少,その後中性,アルカリ性領域でほほぽ一定となった。この時,結合した

アミノ酸のメチレン基数が増すほど解離に伴う恥の低下の幅は減少した。ま

た,A I BNを用いてA一β一A}aの重合を行ったところ, その重合挙動は

A P Sを用いた場合とほぼ一致した。

これらの理由としては,酸性領域での児pの減少は,解離モノマーの生長マ

クロラジカルヘの付加が未解離モノマーに比べて遅いためであワ,中性からア

ルカリ領域でのモノマー種による伽の差異は,A-G1yの場合は,UVスペ

クトルによる二重結合の評価より,未解離よりも解離状態の方がQ値が小さく,

生長ラジカルの反応性が上昇したため,さらには,低分子電解質であるNaC1

の添加により児pが増大することよワ,イオン化した生長マクロラジカルが対

イオンを形成し,モノマーアニオンとの静電反発が減少し,生長速度定数が増

加したためと考えられる。その他のモノマーの場合は,結合したアミノ酸基の

一一V2一

Page 77: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

メチレン基数が増すほど,アルカリ性領域でe値が正に大きくなること,さら

にカルボキシル基の解離定数が変化することによる対イオン固定度に差が生じ

たためと考えられる。また児pはモノマー濃度に関しては,A P Sを用いると

酸性領域では1次,その他の領域では1.5次に比例した。この場合はかご効果

によるものと考えられる。AIBNを用いると全pH域で1次に比例し,通常

の均一系ラジカル重合とみなすことができる。そして開始剤濃度に関しては,

すべてO.5次に比例し,停止.反応は2分子停止機構であると推察される。

メタクリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,肌一アラニン,Dレバリ’イβ一アラ

ニン,ε一アミノカプロン酸)においては,APSを用いると,RpはpH2付近か

ら7にかけて急速に増加,pH7以上ではほとんど変化なくほぽ一定となった。

この時,アミノ酸基のメチレン基数が増すほど,解離モノマーの児pは大きく

なった。A I BNを用いると,いずれの場合も,児pはpH2から7にかけてわ

ずかに上昇し,pH7以上ではほぼ一定となった。そしてNa C}の添加は,開

始剤種た関係なくほぽ全pH域において遍pの低下を招いた。これは二分子停

止定数が増大したためである。したがって,荷電した生長マクロラジカルの静

電反発による停止速度定数の減少カ㍉ これらモノマーにおける酸性から中性領

域にかけての月pの増加の原因であると考えられる。

そして,メタクリロイルアミノ酸の児pのpH依存性がアグリロイルアミノ

酸とは全く異なる挙動を示したが,この理由としては,UVスペクトルによる

二重結合の反応性の評価,ならびにI Rスペクトルによる置換基効果によるモ

ノマーの反応性評価より,これはα一メチル基の超共役効果によワQ値が大き

くなり生長ラジカルの反応性が低下したためであワ,またA P Sを用いたとき,

アルカリ性領域で,児pが結合したアミノ酸種によワ異なるのは。値の差に基

づくものと推察された。また兎pはモノマー濃度に関しては,いずれのモノマ

ーも開始剤種に関係なくほぽ1次に比例し,そして開始剤濃度に関しては,す

べてO.5次に比例した。

ジカルボン酸モノマーであるメタクリロイルグルタミン酸の場合,A P Sを

用いると,モノマー濃度0.2mo1/4以上ではメタクリロイルアミノ酸と同様

一73一

Page 78: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

にpH2付近から7にかけて伽は増加し,pH7以上ではほぼ一定となった

が,モノマー濃度が低いとpH4.5付近において的は急速に減少した。また

A I B Nを用いると,亙pはpHの増大に伴いわずかに減少の傾向が見られた。

これらの理由としては,カルボキツル基の解離による硫酸イオンラジカルと

のイオン反発,そして側鎖のかさ高さに基づく1,1一ジ置換エチレンの立体効

果によるモノマーの反応性の低下によるものと推察される。この時,両開始剤

とも,児pはモノマー初濃度に関しては,pH4.5以下においては1次,pH4.5

以上においては1次より高次に比例した。開始剤濃度に関しては,p百2付近

で舛O次,pH7付近.では1次となり,通常の2分子停止は起っていない。し

たが一って,ψ一G1uにおいては,モノカルボン酸モノマーに比べ,単に重合

系のpHを変化させるだけで,重合挙動がその素反応の内容まで変えるという

興味ある結果が得られた。

両性モノマーであるε一アグリロイルー, ε一メタクリローイルーリジンの重

合においては,これまでのアグリロイルー,メタクリロイルーアミノ酸と同様

にα一メチル基の影響が顕著であり,さらには開始剤種の影響も大きい。

A P Sを用いると,A-Lysでは,亙pはpH3から7にかけてほぼ一定で,

pH7から9にかけて急速に増大した。またM-Lys一では,児pはpH2から。

7にかけては一定で,その後はpHの上昇に伴・って増大した。抑がpH7付

近までほぼ一定であるのは,両性モノマーであるため,この領域では静電反発

がないためだと考えられ,pH7以上での恥の増加は,硫酸イオンラジカル

との反応性の増大に上ると推察される。A I B Nを用いると,A-Lysでは,

pH2付近から等電点付近までは児pはほぼ一定で,それ以上のp宜では急激

に減少した。またM-Ly・ではpHの増大に伴い児pは緩やかに減少した。

これはカルボキシル基の解離が進むにつれて,モノマーのε値が正に大きくな

ワ,ラジカル末端とモノマー間での反発のため,さらにM二二Lysの場合は,側

鎖のかさ高さと,カルボキシル基の解離による・α一メチル華の立体効果が顕著

になったためと考えられる。SMPを用いると,両モノマーとも伽は中性付

近からpH9まで急激に増大し,pH9付近で極大となった。’この場合は,

一74一

Page 79: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

S MPのアニオン種がモノマー分子に配位して,コンプレックスを形成し,開

始されるラジカル重合であると推察される。この時のコンプレックスの見掛け

の平衡定数K cは,A-Lysの場合,p亘6で0-81ユ/mo1,pH9で2,7一

/mo1,Ml-Lysの場合,pH9でO.271/mo1であった。また,児pはモノ

マー濃度に関しては,A P Sを用いた場合,A-Lysでは酸性領域で1次,ア

ルカリ性領域では1.5次に比例した。M-Lysでは全pH域で1次に比例した。

また,A I B NあるいはSM=Pを用いると,両モノマーともpHに関係なく,

前者では1次,後者では1,5次に比例した。そして開始剤濃度に関しては,pH

に関係なくすべて0.5次に比例した。

一75一

Page 80: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

文 献

1) A.Katcha1sky’and G.B1auer, Tγm8.Fα伽ぬψ 8oo一, 47,、

1360(1951).

2) S.宜.Pinner. ∫.Po~m.S6づ.,9, 282(1952).

3)G.B1auer, ∫.Po~m.Sc4., 11, 189(1953).

4) T.A1frey,Jr., C.G.Overberger and S.H.Pinner, ∫.λm.

C允e杭. Sθ6., 75. 4221(1953) .

5)伊藤博夫,清水昭二,鈴木重成,工業化学雑誌,57,658(1954).

6)伊藤博夫,清水昭二,鈴木重成,主業化学雑誌,58,194(1955).

7) G.B1auer. Tγα燗.Fα㈹伽〃S06., 56, 606(1960)。

8) V.A.Kabanov and D.A.Topchiev,γV80κomoユ.Soe〃m.,Sm.

五 13 1324(1971).

9) D.A.To脾hiev,V.Z.Sh易kirov,L.P.Ka1inina,T.M.Karaputadze

and V.A.Kabanov, γVsoκo“ゆ。’一Soemm。,8〃.λ,14,

581(1972),

10) V.A.Kabanov,D.A.Topchiev and T.M.Karaputadze,J.Poωm.

S6づ., Poユψ肌.8Vmρ., No.42, 173(1973)一

11)永井 進,吉田経之助,高分子化学,17, 748(1960).

12)H.C.Hass anδN.W.Schu1er,J.Poエm.S64.,B,2,

10.95(1964).

13) Y.Iwakura,F.Toda, Y.Tori1 and R.Seki i, ∫.Po幻m.8〃.,

五一1, 5. 1585(1967).

14)杉山 登,!t有機化合物の徴量確認法’’培風館.東京 (1966),P.50.。

15)周 廣福,高分子化学,30, 437(1973).

16)有機徴量分析研究懇談会編,’一有機徴量定量分析’’南江堂,東京

(玉969), p.519.

17) S,Ponratnam and S.L.Kapur, Mακ㈹mo’一Cんe肌., I78,

一76一

Page 81: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

エ029(1973).

18)井上正己,大津隆行,高分子論文集,32, 634(1975)。

19)伊藤博夫,清水昭二,鈴木重成,工業化学雑誌,58, 274(1955)一

20)香川銃美,津村健児,工業化学雑誌,47二 435,576(1944);

坂井 渡,清山哲郎,工業化学雑誌,5全 377(1951)・

21)井本 稔,大津隆行,樋口泰一,高分予化学,16, 324(1959)一

22) J.P.Riggs and F.Rodriguez, ∫.PoJψ肌.8c4.,λ一1,5.

3151(1967).

23) L,D.Tay1er and T。瓦.Plat七, J.Po~伽.Scづ.,刃,7,

597(1969).

24) D.V.Ioffe and S.G.Kuznetsov,Zんm,0ろs加んeポK危古帆., 29.

3804(1959).

25)香西保明,池田能幸,友国治隆,日本ゴム協会誌,45,三081(1972)一

26) B・U・Kaczmar and S・Traser,Mα伽。肌。グCんe伽., 177.

1981(工976).

27) T.Y.Fu and H.Morawet2, ∫.別。互.Cんe肌., 251.2083(玉976).

28) T.I to,T.Otsu and M-Imoto,J,po~伽.S凶., 3, 4,

81(1966)、

29)K.P1ochocka and T.J,Wojnarowski,”m.Po互m.∫.,7,

797(ユ97ユ).

30) Y.Iwa㎞ra-F.Toda and H.Suzuki, J.0γg.Cんe伽.,32,

.440(1967).

31) H.G.Batz and J.Ko1dehoff,M’α后γo伽。J.C加肌.,177,

683(ユ976)、

32)香西保明,池田能幸,藤井 茂,高分子化学,30,99(1973)・

33)池田能幸,上野邦弘,吉田 肇,香西保明,高分子論文集,38,

515(1981)、

34)大津隆行,伊藤俊男,井本 稔,工業化学雑誌,69,986(1966)、

一77一

Page 82: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

35)横田鐸二,今村名鼠石井義朗,工業化学雑誌,68.2280(1965)

;横田健二,織田純一郎,工業化学雑誌,73,224(1970)、

36) Y.Kiuchi&nd Y.Yamada,∫.Soづ,∬伽08励杭ασ犯伽.,A21,

143(1957).

37)池田能幸,西村和雄,河田政広,香西保明,高分子論文集,38,

781(198王).

38)池田能幸,村上慎次,香西保明,高分子論文集,39,435(1982).

39) T.Otsu, B.Yamada,T.Mori and M.Inoue, ∫.Po切伏.S凶.,

Po’〃m. 乙e“. 刀d., 13, 505(1975) .

40)Y.Im・t・,S.Ch・・,∫.Pψ仏志・づ.,1㍉485(1955).

4王)林 晃一郎,岡村誠三,高分子化学,11,59(1954).

42)松本恒隆,大久保政芳,尾上 勧,高分子論文集,32,162(1975).

43)周 廣福,高分子化学,29,225(1972).

44) H,Morawetz 狐d瓦,Sam皿塾k、∫.P物8.0加狐,61.1357(1957)一

一78一

Page 83: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

第3章アグリロイル系アミノ酸の天然ゴムヘのグラフト重合

緒・ 言

高分子の改質の点からもグラフトポ.リマーは,韓ポリマーと枝ポリマーの性

質の相違,幹,枝ポリマーの重合度,枝の数および位置などの諸条件により物

性が変化すると考えられ,それゆえ,グラフトポリマーの構造と物性の関係が

明らかにされるならば目的にあったグラフトポリマーを合成することが出来る

ところから,近年この方面の研究も盛んに行なわれている。しかし,天然ゴム

ならびにその誘導体に対するグラフト重合はあまり数多くはない。

古くは,天然ゴムまたはゴムラテックスとアクリロニトリルとのグラフト重

合に関して,B1oomfi・1d1)ら,Watson2)ら,国沢3)ら,香西4)などにより

検討されている。国沢らは天然ゴ・ムの溶液中でアクリロニトリルを重合させ,

含窒素量4.65%以下のグラフト重合物を合成,また,ゴムラテックスとアク

リロニトリルを過硫酸カリウムを触媒とし,乳化重合を行い含窒素10.25%

以下のグラフト重合物を合成している。さらにこれらのグラフト重合物を加硫

して,その物理的性質を測定しN B Rに匹敵し,十分実用に耐えるものである

と報告している。また香西は,天然ゴムヘのアクリロニトリルのグラフト重合

の条件を詳細に検討し,ゴムの素練り度および濃度が高いほど,また開始剤お

よびアクリロニトリルの添加量が多いほど,さらに重合温度が高く,そして重

合時間が長くなるほどグラフト重合は起こリ易いとしておワ,得られたグラフ

トポリマー中,窒素含有量10%前後のものがゴムとアクリロニトリルのグラ

フト重合物として顕著な性質を示し,弾性は乏しいが硬く強靱で耐油耐溶媒性

がかなワ認められるとしている。

そこで本章においては,天然ゴムの改質を目的として,第1章,第2章にお

いてそのラジカル重合が検討された,メタクリロイルグリシン,メタクリロイ

ルグルタミン酸,アグリロイルーβ一アラニン,アグリロイルーγ一アミノ酪

酸,アグリロイルーε一アミノカプロン酸などのアグリロイル系アミノ酸,な

らびにそのエステルの天然ゴムヘのグラフト重合を各種条件のもとで検討し,

一79一

Page 84: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

その様相を明らかにするとともに,得られたグラフトポリマーの物性について

も調べた。

第1節 アクリル酸およびメタクリル酸の天然ゴムヘのグラ7卜重合

1.互 緒 言

天然ゴムヘのアグリロイル系アミノ酸のグラフト重合を試みるにあたって,

それとの比較の基礎となるアクリノレ酸およびメタクーリル酸の柔然ゴムヘのグラ

フト重合について,開始剤ならびにモノマー濃度,重合温度,重合時間などの

影響を検討した。さらに,得られたグラフトポリマーの性質を若干調べた。

1.2 実 酸

1.2.1 試 料

天然ゴムは素練りしたスモークドシートで分子量15万のものである。モノ

マーであるアクリル酸およびメタクリル酸,開始剤であるB P O,A I BN,

ならびに溶媒はすべて常法によワ精製した。

1.2.2重合方法 共栓三角フラスコに所定量のゴムと溶媒を加え,50℃前後に加温し溶解後,

冷却し開始剤とモノマーを加え窒素置換し,密栓し恒温器中で加熱重合させた。

この時反応系の溶液粘度は初期に幾分低下し,その後上昇して溶液全体がゲル

化した。一定時間後冷却し,沈澱剤として,アクリル酸の場合はメタノールを,

メタクリル酸の場合はアセトンを使用し,ポリマーを沈澱させた。

1.2.3 グラ7トポリマーの単離

乾燥,秤量後の試料をソックスレー抽出器により,抽出溶媒として,アクリ

ル酸の場合は水を,メタクリル酸の場合はメタノールを使用して20時間抽出

一80一

Page 85: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

してホモポリマーを除去し,減圧下真空乾燥したものをグラフトポリマーとし

た。なお,グラフト用語の定義は次に示す通りであるロ

モノマーの全重合量 全重合率(%)= × 100 モノマーの重量

グラフトしたモノマーの重量グラフト率(%)= × 100

ゴムの重量

グラフトしたモノマーの重量グラフト効率(%)= × 100

モノマーの全重合量

グラフトしたモノマーの重量グラフト重合率(%)= x 100

モノマーの重量

1.2.4 グラフトポリマーの膨潤度ならびに溶解率の測定

グラフトポリマーの膨潤度5)ならびに溶解率6)はそれぞれ次式により求めた。

膨潤試料の重量一膨潤後乾燥した試料の重量膨潤度=

膨潤後乾燥した試料の重量

浸せき前の試料の重量一浸せき後乾燥した試料の重量溶解率(%)=

浸せき前の試料の重量

x 1O O

1.3 結果と考察

1.3.1 天然ゴムヘのアクリル酸のグラフト重合

1.3.1.1 開始剤濃度の影響

開始剤としてB P OおよびA I B Nを使用し,その濃度の重合に及ぼす影響

一81一

Page 86: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

について検討した。重合条件ならびに得られた結果を妻13に示す。

Tabユe 15. ]…:ffeCt Of CO司Cen1=ratiOn Of i!li七iatOr

C㎝diti㎝・1〔剛,O.01㎜州〔AA〕,O.ρ1・・1;

To1uen6, 20cc; 80oC; 5 hr.

・・舳…芸1芸計・・・…㎎G「詰;lng・ぎ;「;畿鷺。

(㎜oユ/1) (%) (%) (%) (%)

O.625 12,5 15.2

1.25 51,4 52.9

BP0 2.50 75,0 76.5

5.O0 86,1 90.4

7.50 ・ 92,4 95.6

O.625 48,6 47.0

1.25 75,0 76.5

AIBN 2・50 90,5 88.2

5.O0 87,5 91.9

7.50 92,4 90.9

100・0 12・5

97,5 50.O

g6,5 72,2

99,5 85,4

98,8 90.3一

91,4 44,4

96,5 72,2

90,8 85.・5

99,2 86,8

95,8 86.1

全重合率,グラフト率およびグラフト重合率はB P Oを使用の場合は5-O×

10-3mo1/工以上,AIBNを使用の場合は2.5x10■3mo1/工以上におい

て85%以上の値を示し;グラフト効率は開始剤濃度に無関係にしてきわめて

高く95%以上の値を示す。したがって,このグラフト重合には開始剤として

B P OとA I B Nがともに有効である。

I.3.1.2 重合時間の影響

表14にグラフト率を示した。重合時間の増大とともに高くなっているが,

大体3時間程度から平衡状態を示す。しかし,アクリル酸量を増すほどその平

衡値は高い。

一82一

Page 87: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

工ab1e14.Eff・ctof胆㎡ti㎎廿㎜eongr証祉ngC㎝出i㎝s:〔㎜〕,O.O1面。1;〔Initiator〕,2.5㎜oユ/1;

To1uene, 20 oc; 80oC.

NR : AA 工nitia七〇r Ti口1e Grafting

(㎜oユ ratio) (hr) (%)

1 1 】ヨPO

1 1.5 AIB工百

115 A工珊

1 8.1

2 54.4

5 76.5

4 84.0

5 87.5

60.5

155,8

14C.0

141.9

141.9

O.75 2=52.4

2 508.1

5 294.9

4 500.0

5 300.O

図62,63,64に表14で示したと同一重合条件下における全重合率,グ

ラフト効率およびグラフト重合率をゴムに対するアクリル酸のモル比別に表わ

した。全重合率およびグラフト重合率はいずれのモル比の場合も同様な関係を

示し,重合時間に比例して増大する。しかし,アクリル酸量を増大するほど短

時間内で一定値をとる傾向にある。

グラフト効率は重合初期においては低いが時間を延長すると,モル比に全く

無関係に一定の95%を示す。したがって,グラフト効率はモノマー量に依存

しないようである。

一83一

Page 88: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

実100

^ 凶^求 自求)一) “.“塙

暮温畠。

○ 凶} 自 0H 一ξ著警・・

目 ■ 一 〇 自 一 〇

〇 一〇 X ■ o {

く1

正i砂62.

一{. 3 。{ b

-iI1,e (hr)

Eff80tof9軸fthgti皿。㎝tota1O。㍗肺ユ㎝・距㎡卿g・ffiOi・nCyand por08n七age of gr日fting.

(面。1ratiol NRlM・い1〕

^ 凹(求 目求)一) ψ

.6温書岩島。

○ 凶} 肩 〇一 一〇 “ o

ち憶旨自 ^ “ ○ 目 . o◎ ・o x ■ o 一

く1

r犯6ラ.

? 3 4

-i皿8‘㎞〕

Eff80t of gr畠fting 七i1118 0n tot8ユ

。oIiv8r日io皿, 9rafting 6ffioionoy

a皿d p81oont邑g60f grafti皿g・

(卵1地t地;鴉R;^・い1・5)

^ 的(求 自決)・一) 十3

.べ為ト } ■o o oooO b0-H ■ o宕お。そ』 } 団◎ 固 “目 』 “ o q● o

◎ . o X ■ o {

10C

εo

40

’ r ’

Fig・64.

C 2 3 4

Time (hr)

5

Effectofgで㎡ti㎎セi㎜eon七〇拓ユ。onver8ion, gエーafting efficiency

and percen1;age of graf七ing・

(㎜o1 ra七io; NR : AA 目 1 : 5 )

一84一

Page 89: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

1.3.1.3 モノマー濃度の影響

ゴムO.O1mo1(0.68g)につき,モノマー(アクリル酸)o-o05~o.05

mo1にわたって重合させた。 その結果を表15に重合条件ならびにグラフト

率を,そのほかの結果を図65に示す。

T.bユ。15.附。。t・f。㎝㈱t珊舳Hf・・町1i・・。id

Ong蝸ftingG舳i舳・・:〔NR〕,0.O1・山〔BPO〕,2・5㎜。1/1;

To1uene, 20 Cc; う hr.

MOnOmeτOOnCent■atiOn (㎜o1)

Grafting

(%)

O.005

0.010

0.015

0.020

0.050

0.050

29,6

76.5

140.4

197.8

506.6

414.7

渓 ( oo

(渓 目 渓) ・H ) 十=

■ !H ・ } 雨 ト } ■ ■ ④ 凶 o ○ 凶、→ 賞 0 H ,H 句 そ』 o そ』 一H 凶 ○ 記 d 自 』 “ o q ・ ⑭

O .o X ■ ⑩ ~

くl

Fig.65.

1C0

90

80

70

60

50 0

買r’其’ 。κ一.’・、ミ。 、・ 、其 ! 、 1 、△

77

OC1 0,02 0-03 α04 つ.05

〔皿〕(㎜1)

Effec1= of concen七ration of acryユic

ac id on 1=〇七aユ o onve工一9i on, 9raft ing

effi c i ency aハd perc en七age Of graf七ing.

グラフト率はモノマー

濃度の上昇に伴い急激に

増加しているが,全重合

率およびグラフト重合率

は極大値をもつ曲線が得

られ,そして低濃度では

きわめて反応が遅い,グ

ラフト効率はごく高モノ

マー濃度の部分を除いて

はモノマー濃度に無関係

である。

一85一

Page 90: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

1.3.I.4 重合液量の影響

これまではすべてトルエンを溶媒とし,重合液量を20ccに調整して重合

させた結果である。ここで,その液量を変化させて検討した。その結果を妻

16に示す。

Tab1e 16. Effec七 〇f a皿。unt 3◎1vent

C・ndi舳閑:〔NR〕,O.O1・山一〔心〕,O.◎15皿・1;

〔AI酬〕,2.5㎜・1/ユ;80.C;5㎞.

Amoun七 〇f Tota1 Graf1:ing 】≡,ercentage・。1。。。・ 。㎝。.G蝸fti㎎ 。ff. 。fg。。性i㎎

(㏄) (%) (%) (%) (%)

15 98.1 150.1

20 92.1 140.0

50 88.9 ・ 140.0

4C 87・0 150.1

50 82.4 125.5

96・2 94,4

95,5 88,0

99・0 88,0

94・1 81,9

94・4 77.8

全重合率,グラフト率およびグラフト重合率は重合液量の増大に伴ってわず

かではあ亭が逐次低下する。しかし,グラフト効率は94%以上を示し,液量

には無関係である。

1.3.1.5 重合温度の影響

これまではすべて重合温度80℃における結果である。ここで,それ以下ま

たほそれ以上の温度で検討した。その結果を表17に示す。

重合温度6ガCでは重合に長時間を必要とすることが予想される。重合温度

ユO O℃では重合は短時問で完結するようであるが,重合温度80℃の場合よ

りグラフト結果は劣る。したがって,重合温度は80℃付近が最も適当である

と考えられる。

以上重合に及ぼすそれぞれの因子について述べたが,アクリル酸は天然ゴム

ヘ容易にグラフト重合するようである。

一86川

Page 91: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

匝ab1e 17・ Effect of grafセing te皿p6rat岨e

C・ユ砒i㎝・1〔㎜〕,O.Olm1;〔刈,O.O15㎜・1; 〔ムエ別〕.2.5㎜・ユ/ユ;T。ユu・雌20㏄.

晦㎡ting te㎜p.

(.C)

互i匝e

(庇)

T01=aユ

。㎝v.Gr雌ing(%) (%)

Grafting eff.

(%)

二Pere e】ユtage

Of距近ting (%)

60 15 58.9 55.9 90.5 55.2

亭0

1

2

3

59,8 60,5

87.5 155,8

92.1 140.O

95,5

96,5

95。.5

58,0

84,3

88.O

100O.5

1

5

75.5 110.◎

86.1 125,0

95.4 150.9

92,0

91,4

86.4

69,4

78,7

82.4

1.3.2 天然ゴムヘのメタクリル酸のグラフト重合

1.3.2.1 開始剤濃度の影響

開始剤濃度の重合に及ぼす影響について, 得られた結果を表王8に示す。

Tab1e 18・ Effect of concentration of i協itiator

C㎝砒i㎝・1〔㎜〕,O.01皿・ユ;〔舳〕,C.01画・1;

To1uene, 2◎oc; 80oCε ヲbr.

工nitia・1;or

(㎜o1/1)

Tot81 Gτ砥祉ngCOnV.(%) (%〕

Gra.fting eff.

(%)

P6τCθntageof grafti亙g (%)

BPO

O.625

1,25

2,50

5,00

7.50

0

57,2

82,6

89,6

90.7

26,5

58,8

64,7

67.6

0

45,5

56,3

57,2

59.O

0

11,6

46,5

51,1

55.4

A工BN

O.625

1,25

2,50

5.O0

7.50

45・5

87,2

84,9

89,4

86.O

14,7

56,8

58,2

27,9

19.1

25,6

54,2

54,7

24,7

17.6

11,6

29,0

50,2

22,1

15.1

一87一

Page 92: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

一3 全重合率80%以上を示す開始剤濃度はB POでは2.5x1O mo1/1以上,

またA I B Nでは1.25x1O-3mo1/1以上を使用した場合である。グラフト

率,グラフト効率およびグラフト重合率はB P0の場合はその濃度の増大に伴

って上昇する。しかし,A I B Nの場合はその濃度が2.5x1O-3mo1/ユで極

大値をとる。そして,それらの値は一般にB P0の場合より低い。したがって,

この重合においては開始剤としてA1B NよりB P Oが有効であワ,以下の実

験はB P Oを使用することにした。

1.3.2.2 重合時間の影響

重合時間の重合に及ぼす影響について,その重合条件ならびに,得られた結

果の一部を表19に,またそのほかの主要な結果を図66,67に示す。

グラフト率は重合時間の延長とともに増大し,ゴム:メタクリル酸のモル比

1:1では3時間から,またモル比1:3では2時間からほぼ平衡状態一をとワ,

そしてその値は後者が高い。全重合率はゴム:メタクリル酸のモル比が1:1

では4時間以上,1:3では2時間以上の重合において大体一95%以上の値を

示す。グラフト重合率もまた同様な関係を示し,重合時間2時間以後一定の値

Tab1e19.酎fectof距㎡ting祉皿eongr近ti㎎…砒・…:同,・.。1回・・;1班6〕,・.5㎜・・/・;

To1uene, 20 ce;80oC.

亙R ; M^ Ti回1e Gra」=ting

(囮。1晩tio) (㎞) (%)

1 8.8

2 59.71 : 1 5 58.8

4 57.4

5 54.4

1 17.6

2 219.11 ; 5 5 229.4

4 250.6

5 240.1

川88一

Page 93: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

訳 ^ 凶^津 目黒〕 一).む1義邑、。」

○ 固 1日 自 o宅岩由ち塙ぎlO白お着

8・9 X葛 ~

く1

趾血。(hr)

ri‘‘ 66ヨ 兎ff.≡ot Of grafti莇g ti回e o肛七〇t目1

oonvor国ion, 9r且f七ing offioionoy 目nd ,eroont且go of gr旦fting・

(皿飢r且七i}川い岨A1;1〕

三…lll「

;着

1身ξ601

一 一 凶○ 田 は

目 ^ 一 〇 日● o

o - o X ■ o』 円

く1

〆^

Ti㎜o‘hr)

Fig. 67’ Eff80t ρ重 gエ・旦fting ti11記 on tot目1

oon¶or日io日, 9rafting 6ffioienoy

and poroent且go of grafting.

{皿。1蝸tiol NR;肌^ ■;3)

をとワ,ゴム:メタクリル酸のモル比1:1よワも1:3の場合が高い。グラ

フト効率は重合時間の極めて短かいところ以外では2時間以後一定の値をとり,

グラフト率およびグラフト重合率と同様にゴム:メタクリル酸のモル比1:3

の場合が高い。したがって,モノマー濃度の影響はきわめて大きいことが予想

され,さらに検討することにした。

1.3.2.3 モノマー濃度の影響

ゴムO.01mo1(o.68g)にっき,モノマー(メタクリル酸)0,005~O.05

mo1にわたって重合させた。その結果を妻20に重合条件ならびにグラフト率

を,そのほかの結果を図68に示す。

グラフト率はモノマー濃度と共に急激に増加するが,グラフト重合率は極大

値をもつ曲線が得られる。全重合率およびグラフト効率はごく低濃度のほかは

大体モノマー濃度に無関係にして,前者は98%,後者は60%の一定値をと

る。したがって,先のアクリル酸の場合に比較すると全重合率とグラフト効率

においてその傾向が異なり,そして全重合率以外の値はすべて低い。

一89一

Page 94: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

ケ。肌。20.鮒。。t.f。。n。・肺胞ti・Hf㎜・胞・・yuc

aCidOu距㎡祉皿g

C㎝砒ti…:〔輔,O.O1聰州1班0〕,2・5㎜・1!1; 援。1種eユe, 20 cc; 80.C; 5 h1・

脆n㎝e■ G池舳g00!1Cent工一atiOn

(㎜o1) (%)

O.005

0.010

0.015

0.020

0.050

0.050

25,5

58,8

92.6

167.7

229.4

270.5

( lOO 渓 ( 固(渓 日渓)一 80) 十=

■ ,H. } 耐

ト ← ■■ o 固 60

0 6o} 冒 ol・一1 ・H

ω ,』 ω

ち塙霊40目 ■ そj

o ■■ o

O ・o 20 X ■ o 一 <l C

/1、!_。//

ノ△ /△!

O α01 0,02 0,03 0.04 -O.05

〔剛(m1)

Fig. 68. 瓦ffeot of mo皿。㎡er concentra七iOn

on t〇七a1 conversユ。n, 9raft■】=」9

eff■㏄nCyandperC舳切geOf grafting三

1.3.2.4 重合液量の影響

これまではすべてトルエンを溶媒として,重合液量を20ccに調整し重合

させた結果である。ここで,その液量の影響を調べた。その結果を表21に示

す。

グラフト率,グラフト効率およびグラフト重合率は重合液量の増大に伴って

一90一

Page 95: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

Tabユe 21. ]…:ffect of a皿。un七 〇f s o]・vent

Gωi舳・・;〔NR〕,O.O1㎜。ユ;〔舳増,O.0h机;

〔B=PO〕, 2.5 ㎜㎜o1/1; 80oC; 5 hr.

Amoun1;ofso1vent (㏄)

Tota1O OnV・

(%)

Grafセing PerC ent ageG「af七i㎎ 。ff. 。fg。。f七i㎎

(%) (%) (采)

15

20

50

40

5C

100

82,6

89.ラ

95,3

77.9

72,1 57・0

58,8 56,5

44,2 59,0

59・8 55・0

25,0 25・4

57,0

46,5

54,5

51,4

19.6

逐次低下する。したがって,先のアクリル酸の場合と比較して異なるのは特に

グラフト効率が重合液量の増大に伴って低下することである。

1.3.2.5 重合温度の影響

重合温度を60,80,100℃と変化さ世,その影響について調べた。その

結果を表22に示す。

丁早b1e 22. 毘ffec竜 of graf七ing 七emperature

C㎝diti㎝・:〔輔,O.O1㎜1;〔舳〕,O.Ol㎜・1;

〔BPq〕,2.5㎜・1/1;工伽・鵬20㏄。

Gエ・fti・g Ti。。

temp. (。G) (hr)

1Tota1 Grafting。。。。.G胞f七i㎎ 。ff.

(咲) (%) (%)

PerC entage

of graf七ing (%)

60 72 85,7 75.0 7C.8 59.5

80 3

0.5

82,6 58,8 56,5

50,2 25,5 61.5

46,5

18.6

100 95,5 61,8 51,2

97,6 51,5 41.7

48,8

40.7

重合温度6ポCでは重合に長時間を必要とする。しかし,重合温度が80℃

さらに,100℃になると短時問で重合は起こるが,グラフト結果は重合温度

一g1一

Page 96: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

60℃の場合と比較してやや劣る。

以上のメタクリル酸の天然ゴムヘのグラフト重合は先のアクリル酸のそれよ

ワもグラフト化は起こりにくいようである。

1.3.3 グラフトポリマーの性質

1.3.1および1.3.2の実験で得られたグラフト率を異にするグラフトポリマ

ーをベソゼソ,水およびエタノール中に20時間浸せきした際の膨潤度と溶解

率を求め,その結果を表23に示す。

Tab1e 23. ]≡=ffeot of g=aこfti皿g on degエee of 目Ueユエing a皿d oπ so1ubi1ity

St・εpi回gt・回p・,25-2ポO;S卿pilgti口。,20.㎞・

B8皿鴉ne u邑t6r 1tha皿。ユ

Cr㎡tP。ユ岬工G「出i㎎D・畔“fS伽bi1i・y晩・・舳f・山・・ユi・y刀靱昌日… 山bi1町 (%〕 8uo11ing (%) 目we11ing (%〕 8u8ユエi皿g (,‘)

15,2 29,4 54,4 76.5Gr証t 95.6po1y口町

。f ^ 150・0

252.4 506.6 417.7

8,8 17.ε 25,0 44.20ra」ft 54.4pOユ岬趾。f H^ 72,1

92.6 167.6 229.4 270.5

7,45

1,23

0.75

o.40

4,11

2.50

L75

1,27

1.27

55,3

26.6

6.6

0

40,0

16.6

1.τ

o

o

O.20

0,50

0,77

1,17

1.69

O.77

1,05

2,43

5,94

5.56

0

0

0

1.8

5.3

0

1.6

5.5

6.5

O.8C

1,10

1.33」

2,17

4.8ラ

5.15

1,10

4,47

5,55

7.65

11.10

0

0

0

5.3

膨潤度および溶解率はグラフト率の高いポリマTほどベソゼソ中では小さく,

水およびエタノール中では大きい。この傾向をアクリル酸グラフトポリマーと

メタクリル酸グラフトポリマーについて比較すると,膨潤度はグラフト率の上

昇に伴いメタクリル酸グラフトポリマーの方が緩慢な低下を示し,水およびエ

タノール中ではアクリル酸グラフトポリマーの方が逆に緩慢な上昇を示す。ま

一92一

Page 97: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

た,溶解率はベソゼソ中では同一グラフト率を示すポリマーの比較からアクリ

ル酸グラフトポリマーの方が大きく,水およびエタノール中でグラフト率がき

わめて高いポリマーのみにおいてわずか認められる。メタクリル酸グラフトポ

リマーの方が顕著である。このような相違が起こる理由はゴム炭化水素の疎水

性とゴムにグラフトしたアクリル酸またはメタクリル酸のポリマーの親水性に

基因するものと考えられる。

なお,グラフトポリマーの外観的な性状は両者ともグラフト率の低いものは

ゴム弾性を残すが,グラフト率が高くなると弾性が乏しく強靱な塊状体となる。

第2節 メタクリ目イルグリシンおよびそのエステルの

天然ゴムヘのグラフト重合

2.1 緒 言

天然ゴムの改質を目的とし,アミノ酸またはペプチドを導入した天然ゴムま

たはポリイソプレンの合成を意図し,ここではアミノ酸を間接的に導入するグ

ラフト重合法によワ,メタクリロイルグリシンおよびそのエステルの天然ゴム

ヘのグラフト重合を,第1節と同様に各種条件下で検討した。さらに得られた

グラフトポリマーの物性についても若千調べた。

2.2 実 験

2.2.1 試 料

天然ゴムはスモークドシートを素練りして使用した。メタクリロイルグリシ

ン(M-G1y)は第1.章で述べた適ワに合成した。メタクリロイルグリシソエ

ステル(M-G1y-OR)は迫田7)らがアグリロイルーα一アミノ酸メチルエ

ステルを合成した方法を適用した。メタクリロイルグリシソメチルエステル

(M-G1y-OMe)は136~139℃/11~13㎜Hgの留分を,メタクリロ

イルグリシソエチルエステル(lV[一G1y-0Et)は148~149℃/15mm

Hgの留分を,さらにメタクリロイルグリシソプロピルエステル(M-G Iy一

一一 X3一

Page 98: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

0Pr)は116~117℃/2㎜Hgの留分を使用した。

その他使用した試料はこれまでと同様にして精製した。

2.2.2 重合方法およびグラフトポリマーの単離

重合法は第1節と同様である。重合後の操作は,M-G1yを用いた場合はポ

リマーをメダールで沈澱させ,M-G1y-ORを用いた場合はポリマーをアセ

トンで沈澱させた。グラフトポリマーの単離は,前者では温水を,後者ではメ

タノニルでそれぞれ24時間抽出してホモポリマーを除去した。

2.2.3 グラフトポりマーの膨潤度およびかたさの測定

膨潤度は第1節と同一方法で求め,かたさはショアかたさ計によった。

2.3 結果と考察

2.3.1 天然ゴムヘのメタクリロイルグリシンのグラフト重合

2.3.1.1 重合溶媒組成の検討

ゴムとM-G1yの適当な単一溶媒が見当らないので,トルエンージオキサン

系を使用し,その組成比の検討を行った。その結果は表24に示す実験範囲内

ではトルエンージオキサン1:1付近が適当であると思われる。したがって,

Ta1〕1e 24・ Effec t of graf七 so1vent o omposi ti on

C㎝diti㎝・:〔NR〕,0.01汕(㎜,150000);

lM-Gユy〕,0.O1m州〔BPO〕,1.6㎜。1/1;

Soユvent, 50 cc; 80oC; 4hr.

Soユve■セ Tota1 Graf七ing Percentage 。。岬。。岨㎝ 。㎝。.G「afti㎎ 。ff. 。fg。。fti㎎

(To1ueηe;Diox㎜e) (%) (%) (%) (%)

89,9 60,4 52,0 28・7

95,7 62,5 51,7 29,7

85,2 55.2- 50,4 25.5

一94一

Page 99: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

以下の実験はその1:1で検討した。

2.3.1.2 ゴム分子量の影響

素練ワ時間を変えてゴム分子量を約9,17,および25万の3種に調製し,

分子量の相違がグラフト重合に及ぼす影響を調べた。

その結果は妻25からわかるように,この分子量範囲内においては,その相

Tab1e 25. 皿ffec七 〇f ㎜o1ecu1aエ weight of na1;ura1 riユb1〕er

・舳・枇鵬:〔・・〕,…1…;1珊一…〕;・.・1mユ;

lBP0〕,1.6㎜。1/1;S.1・・帥t,50㏄

(To1uene :Dio文ane= 1 ミ 1); 80oC;

4hr。

Mwof NR

90,000

170.000

250,OOO

胱a1Gで出i㎎G「afti㎎p鉗…t・g・conv・ eff. of grafting

(%) (%) (茄) (%)

96,1 65・2 51,3

95,8 62,8 51,2

95,5 62,4 50.9

50,1

29,9

29.7

違による顕著な影響はほとんど認められなかった。したがって,以下の実験は

分子量約15万の素練りゴムを便用した。

2.3.1.3 重合液量の影響

トルエンージオキサン混合液量の影響について,開始剤としてB P Oおよび

A I BNの両者について検討した。その結果を表26に示す。

開始剤としては,B P0がA I BNよワ有効であり,そして重合液量は少な

いほど,すなわち,ゴム濃度が高いほどグラフト結果は良好である。しかし実

験操作上から,以下の実験は重合液量を30・・で行った。

一g5一

Page 100: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

Tab1e 26. Effec七 〇f amoun1=of s o1ven1:

Condi七ions 1〔NR〕,0.O1・州〔M-G1y〕,O.Oh州

〔I〕,1.6㎜・1/1;S.1…七,丁山…1

80oC; 4 hr.

]〕ioxaエ1e≡1:1

Ini叫ator A醐0un1;

Of SOユVen七 (CO)

Concentration of NR

(%)

To1:aユ。

c onv.

(%)

・蝸…㎎G「E㎎(%) (%)

PerCen.・;age

of graf七ing (%)

BlP0

10

20

50

40

50

6,80

5,40

2.27.

1,70

1.56

95,0

92,5

95,7

91,6

81.8

85,8

66,2

62,5

47,1

32.4

42,9

54,1

51白7

24,4

18.8

59,9

51,5

29.7.

22,4

15.4

AI]∋N

10

20

50

40

50

6,80

5,40

2,27

1.7C

1.56

99,5

95,9

95,4

84,6

50.2

21,7

17,8

14,7

10.7

8.5

7.8

8.2

-7.5

5.9

8.1

7.8

7.8

7.0

4.9

4.1

2.3.1.4 重合温度の影響

重合温度の影響について,60,80および10ポCで検討した。 その結果

は表27からわかるように,60℃においてほグラフト率,グラフト効率およ

びグラフト重合率が8ポCおよび工00℃での結果,比較して共に良好である

が,はなはだ長時間の重合を必婁とする。100℃では短時間に全重合率98

%を示すが,グラフト化は起こワにくいようである。

Tab1e 27. 瓦ffec1; of grafting 1;emperature

Coηdi1=ignS ・〔NR〕,O・O1皿・1;〔M-G1y〕,0・O1m斗;

〔BP0〕,1.6㎜。1/1;S.1v・航,50㏄

(To1uenelDiox㎝e=1:1)

Te㎜p.

(。C)

Time

(hr)

Tota1C OηV.

(%)

Graf1;ing

(%)

Grafting eff.

(%)

PerCe航ageof graf七ing (%)

12

60 2457,8

95.7

55,2

89.7.

45,7

45.5

26,5

42.7

80 4 94.8 65.7 52.O 50.5

100 98.O 11.3 5.5 5.4

一96一

Page 101: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

2.3.1.5 モノマー濃度の影響

ゴムO.01mo1,重合液量30と。に限定し,M-G1γ量のみを変化させて重

合した。その結果,重合条件ならびにグラフト率を表28に,全重合率,グラ

フト効率およびグラフト重合率を図69,70に示す。

丁且b1e 28. 瓦ffeot of I11ono㎜8r oonoentration

Condi七io皿8 :〔剛.O.O1舳;〔I〕,1.6㎜oユ/1

So1vent,50㏄(To1ue舶1Dio■帥。

11=1)

H1y(皿。1)

Initiator 丁帥p.

(’C)

Timo(hr)

cr虹ting (%〕

O.0025

0,005

.o.010

0.015

0.020

0.o5o

O.0025

0.005

0.010

0.015

0.020

0.o5o

BPO 26,5

41,0

89.?

122.1

139.7

185,3

18,9

29,4

55,1

88,9

11.8

151.9

0.005

0.010

0.015

0.020

0.050

^I]弧 80

30

80

80

80

a.1

14,6

19,5

17,5

10.8

( 靱^訳 偵訳)一) そ』

‘ }・ 、→ d

■ } ^自 皿 凹。

○ 越一H o 0H -○ そ一 〇,』 』 固○ 由 血自 肩 ’ ○ 篶 ■ o

o ・o x■一 叫

く1

1OO

ε0

60

40

20

0C

趾g.69.

呈:丑舳1■。。皿■・198:ε:1呈篶;

三:o正舳…皿“ff・1ε8:9:1竃震;

・1三;「;畿重二。㈱.1舳〕

61 ■ {目。’o,伽〕

タ)吐、益、貝デ㌧ 、、し〆’‘一一月、里、珪キ;‘

κ

α01 α02 0.03

〔H・01y〕(㎜o1)

Eff80t of 而。r■o11-er co口。entration

(垣P0).

^ 凶^氷 ■氷㌔’ ・一〕 十,

■ ,H・ } 同

書冒島。

○ 固 } 自 0d そ』 o

ち種寄・・目 ■ そ』 ○ 目 ・ 血

。 ・o x ■ 岡

くI o

Fig.70.

ooコ o,o~

〔H-G1yH・剛

Effoot of 皿。日。掘er

(ムエBN).

o.睨

。onoen七τation

一97一

Page 102: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

開始剤としてB P0を使用した場合,グラフト結果は重合温度6ポCの場合

が重合温度8ザCの場合よりわずかに良好である。しかし,長時間の重合を必

要とする。このときモノマー濃度を増すに伴いグラフト率は上昇するが,グラ

フト効率は直線的に低下する。グラフト重合率はM-G1y0.01mo1付近で極

大を示し以後低下する。したがって,グラフト率を考え合せるとゴムO.O且mo1

に対してモノマー0,015mo1付近が最も適当と考えられる。

なお,開始剤としてA I遣Nを使用した場合は全重合率は高いが,グラフト

効率ほはなはだ低い値しかとらない。したがって,A I BNではモノマーの単

独重合が起こりゴムヘのグラフト化は起こりにくいと考えられ札

2.3.1.6 開始剤濃度の影響

ゴム0.01mo1,M1-G1y0,015moI,重合液量30ccの一定条件で開

始剤濃度の影響について検討した。その結果,開始剤としてB P0を使用した

場合を図71に,A I B Nを使用した場合を図72に示す。

100標的自 き一“ uε〔」}要三ξ

〇一首

3ち畠60実害ち、お。…渇ぎ4〔j

8占着宙 ’呂一 X o○ 叫 .’’11

目 .一 くl

o O

’一、・“会

Fig.71・

n 2 4 6 8

〔服O〕(㎜。1/1〕

Effeotofo㎝㏄皿t蝸ti㎝of腿O・

〔聰R〕,O.O1面・1i〔H-01y〕・O・O15血。1;

S。ユ。㎝t,50㏄(丁舳舳州帆舳・111)1

800C; 4 br・

阯 県

3 )“ 岨皆三曇

〇一着5岩島衰冒乞、岩。き温ぎ8ξ着H .署

呈x畠8 円・ ~o

Fig.72.

80

巳0

40

20

〆〆紅芯㍉O。 。 イ き ■

[A工BN〕(皿皿。1/1〕

EffeOt Of CO皿OOlltratiOn Of 且工】ヨ㎜.

〔狐〕,O.O1皿州〔H1y〕,O.O15阯凶

Soユv帥t,50㏄‘To1鵬鵬1Diox㎜811:1〕三80oO; 4 h1.

一g8一

Page 103: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

図71からわかるように,全重合率はB P O濃度1.6×10■3mo1ハ 以上

では約98%の平衡状態を示すが,グラフト効率とグラフト重合率,特にグラ

フト率はB P0濃度3.1x10-3mo1/!付近において極大値をとる。また,

図72からわかるように,A I B N濃度1.6×10・3mo1/2付近でグラフト

率,グラフト効率およびグラフト重合率は共に低いが極大値を示す。これは先

のモノマー濃度の影響について検討した際に指摘したようにモノマーの単独重

合が起こり易く,その傾向はとくに開始剤としてA I B Nによる場合,その濃

度が高いほど著しいようである。

2.3.1.7 重合時間の影響

これまでの実験結果から最も適当と考えられる重合条件,すなわちゴムO.01

mo1,M-G1y O.O15mo1,BPO濃度3.1×10-3mo1/1に限定し,重

合温度80℃で重合時間を1~10時間にわたって検討した。その結果を図73

に示す。

渓) (100b0 渓自 )一ギ b0}^■ 80碧峯岩。 ・} } o.} 臼● ⑭b06C( bo -H渓 自 o) ・一

.“ ④ 40← } 自。

自 耐 耐。 ■ ≒P

o o看H ・.o 20的 X 』十, ω○ 白目

. O. くO

歪戸畑一一一 払

Fig.75.

0 2 4 6 8 10

晦a制ngti㎜・(hr)

瓦ffect of graf1:ing .1:i㎜e・

lNR〕,O.Ol㎜州〔㎜一G1y〕,O.O15㎜山

1BP0〕,5.1㎜o1/1;So1v・nt,30㏄(皿。1uene:]〕ioxane=1 :1); 80oC.

一g9一

Page 104: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

全重合率,グラフト率およびグラフト重合率は重合初期においては重合時間

に比例して増大する。しかし重合時間3時間後には平衡状態となる。グラフト

効率は重合時間2時間まで急激に低下し,その後は一定め値約30%を示す。

2.3.1.8 光照射によるグラ7卜重合

2.3.1.7の重合条件下で光照射によるグラフト重合を行い比較検討した。光

源は超高圧グライダー水銀灯(日本電池製HL-250型、250W)であり,

20cmの距離から常温(25~28℃)で照射した。その結果を図74に示す。

呂。o (1OO■ 菖一一 団

為裏ξ80■)“d ・}・ξ雪●⑭oo60( 固 一H渓 o o) ・1-1

さ 十, Φ

← } 田40■ o 耐O ■ 十,o o5句ジ買20+, Φo Pそ自

. <1 O◎

x

,x==′|_...一 ’一△‘一

△!

C 2 4 6 8 10

工rrad i a七ion 1=i㎜e (hr)

亙ig. 74. Effe〇七 〇f irradiation tユ㎜e.

lNR〕,O.Ol^・1;lM-G1y〕,O.O15。。ユヨ

lBP0〕,5.1㎜。1/1;S・ユ…t,50㏄

(To1u㎝・:Di・x㎜・畠111).

全重合率,グラフト率およびグラフト重合率はともに照射時間に伴い上昇す

る。特にグラフト率が熱重合よワも高い。しかしグラフト効率は熱重合と同様

で光照射初期において高い値を示すが,2時間後は約30%の一軍値をとる。

2.3.1.9 グラフトポリマーの性質

これまでの実験で得られたグラフト率を異にするグラフトポリマーについて

若干の性質を調べた。

山100一

Page 105: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

表29に,水,エタノール,ベソゼソ,四塩化炭素および石油ベソジソなど

の各種溶媒中に常温(20~25℃)で30時間浸せきした際の膨潤度を示す。

征aもユe 29・ De胆・・。f・w・11i㎎。fg平ft脾1犯・rinv旺i㎝s・o1ve航s S克eeping teエロp., 20’25o C; Steeping 七i㎜e, 50 hr.

Soユven七一

Graftユng Graf1;inga1〕ou1; ab01ユt

1O% 50%

Grafting Graf1;i皿gabout a1〕out

gO% 140%

Water

亙thamoユ

:Benzene

聖e毛raCh1Or◎me1:hane

=Pet:rOユe1】j囮

be損尼ene

O.45-O.45

0.11-C.12

2.15’2,25

5.26’5,50

0・70-O.72

2.78’2,85

0.17}O.18

0.62’O.64

0.90-O.91

0.24-O.26

5・27’5.51

C・20-O.22

0.56-O.58

0.60-O.65

0.20-O.24

5・44-5,48

0.24’O.26

0.24-O.27

0.54-O・55

0.14-O.16

水中ではグラフト率の高いものほど膨潤度が大きく,ベソゼソ,四塩化炭素お

よび石油ベソジソ中では逆に小さい。

図75に,水およびベソゼソ中での浸せき時間に伴う膨潤度を示す。浸せき

10時間以降はほぼ平衡状態を示す。

図76に,ベソゼソ中でのグラフト率と溶解率の関係を示す。グラフト率の

目目

一一

}o

oo■

一 2 _ ヒ 昌 ■0121416 1冒20222-2高2竃30

St舵P加gti皿8(hr)

Fig.75.R・1・舳^市日・・他距・・。f 8刊日11ing a工一d 8t88p11ユg ti㎜8・

St・・pingt・叩.,20-25.Cl

O,⑤,○1脆t冊;△,▲:B帥田ene・

可CO

…O

求) 60

ト“一H一ρ 40■

H0ω

20

St6epi皿g 目。1vont, Be皿雷8刑。;

Stooping te固p. , 20’:~5・C;

StooPinε ti固e , 30 hr・

正ig.76.

20 40 εO 畠O lO0 120 140 /60

G1虹t加g(,‘)

Reユ邑tion b6tHeen 801地方iユity

㎜dg閉ftin昌・

一!01一

Page 106: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

低いものはかなワベソゼソに溶

けるが,グラフト率が高くなる

につれて溶解率は減少する。

さらに,グラフトポリマーめ

かたさをショアかたさ計で測定

した。その結果は図77に示す

ように,グラフト率が高いもの

ほどかたさも大きいようである。

100

80⑭■○

ぶ 60oo

匝訟Φ 40ξ

竈20

}ig.77.

20 40 6C 80 10G 120

Graf祉ng(%)

Reユation between haエdness

and grafting.

2.3.2 天然ゴムヘのメタクリロイルグリシンエステルのグラフト重合

2.3.2.1 M-G1y-OMgのグラフト重合

ゴム。.01m⑪1,M1-G1y-0班e0.0工5mo1,溶媒トルエン,重合温度80

℃,重合時間12時間の条件下でB PO濃度を変えて重合させた。その結果を

表30に示す。

Tab1e 50・ Graft po1ymeri屠a七ion of M・■G1y-OMe dnセ0 NR

・舳i・・…ll・・〕,・.・1・・ユ;lH炉㎝4,・.・15・・1

Toユuene, 20 oc.

皿0 Te㎜p(m㎜o1/1) (oC)

T〇七a1Time COnV.(hr) (%)

7.5 80 1212.5 80 12

15・0 80 12

20.0 80 12

25.0 80 12

100 57.5 100 5

099,2

96,7

95,8

99,0

64,0

88.6

吐出七地g (%)

0

261.8

255.8

250.8

261.7

115.2

192.6

Grafting Percen七age eff. of graf七ing (%) (%)

076,1

69,7

69,5

76,7

51.O.

62.7

075,5

64,4

66,6

75,5

52,6

55.6

一102一

Page 107: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

B P0濃度が低いとグラフト化は起こワにくいが,B P O濃度を増すと高い

グラフト率を示すようになる。グラフト効率はBPO濃度に無関係にして約

70%の値を示す。このとき重合温度を1O O℃ヒすると’8ザCではグラフ

ト化が起こらなかったB P O濃度7.5×10i3mo1ハにおいても3時間の重合

でかなりのグラフト化が起こる。この結果は表30に合わせて示した。

なお,同一条件下でA I B Nを開始剤として検討したところ,結果は省略し

結論のみを述べると,グラフト化は先のM-G1yと同様で,はなはだ起こりに

くく,ただ開始剤を極めて多量用いた場合のみグラフト率が高々6~7%を示

した。したがって,このグラフト重合においてもA I B Nを開始剤として使用

することは不適当のようである。

2.3.2.2 M-G1y-O出およびM-G1y-OP互のグラフト重合

開始剤としてB P0を使用し,M-G1y-OEtおよびM-G1y-0Prのグ

ラフト重合について検討した。その結果を表3工,32に示す。

モノマーのエステル基の炭素数が大きくなるとグラフト重合は起こワにくく

なりヨB P O濃度を増すか,重合温度を高める必要がある。

聖aわ1e 31・ Graft po1y一㎜eri2盆竜ion of 満干G1y・一〇瓦t on七〇 NR

C㎝出i㎝・:〔㎜〕,O.O1㎜。ユ;〔H■y-O剛,O-O15㎜・1

To1uene, 20 cc; 1000C; 5 hr.

… 鵜モ・洲…G「慧亙gぎ呈「農二霊。(㎜o1/1) (%) (茄) (%) (茄)

7,5

10,0

12,5

15,0

20,0

25.O

0 0

97.5 159,7

95.0 145,6

99.5 161,8

99・5 152・9

99.8 154・4

058,0

40,6

45,1

40,5

59.5

C57,0

58,5

42,8

40,2

59.2

一103一

Page 108: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

旺ab1e52・G蝸ftpo1抑eri胞tionofH1y-Oh㎝切NRC㎝砒i㎝・;〔NR〕,O.Ol・・ユ;〔H1y-0P・1,C.015㎜ユ;

To1uene, 20 cc; 1000C; 5 hr.

… 芸瞭・洲…G「謡芸モ㎎(㎜。1/ユ) (%) (%) (%)

PerC e】=ユ1=age

Ofg蝸fting (茄)

10 0 0

15 24,1 14.7

20 96.1 161.8

25 99.5 157.4

.0 014.9- 5・6

41,2 59,6

58,5 58.5

2.3.2.3 グラフトポリマーの性質

先のM-Gけのグラフトポリマーと同様にメタノールおよびベソゼソ中に

浸せきして膨潤度と溶解率を求め,さらにグラフトポリマーのかたさおよび軟

化温度を測定した。それらの結果をまとめて表33に示す。

Tab1o 55. ]≡㌃opo11:y of gエー8f1; poユ;r呵81

Stoopi4国 t8皿p・, 20-25.C言 St80pi】ユg ti回8, 20 hエ,・

・洲・伽・ 。。D:甑、 ・舳・町1リ酌棚S呈芸駕・”ooo匝er G1邑f1;ing(弟〕 ”oth8腕。 en20皿。 (,‘) (Sho■8) (■C)

H-oユy-o”8

10.5 ・

54.4 ‘86.8 0.60

192・6 2・OO

一 一 65- 8,1 78

o.η ‘ 950,48 2・0 95

165

15τ

158

H・Gユy-o]≡;t 159・7 2・55

161・8 2・88

1.9, 2.3 65

1・98 2.2 80

150

110

H-c]一サ・0h

14.7 一 一

67・6 1・73 4・90

161.8 2・80 4・40

26,8 56 -4.0一 @ ‘4 78

4.0 75 90

1). SoユTe回t ;B8日28no

この実験結果のみでは不充分で明らかでないが,次のようなことが予想され

る。

グラフト率の高いものほど,膨潤度はメタノール中では大きく,ベソゼソ中

では小さくなる。また溶解率は小さくなワ,かたさは大きくなる。そして軟化

一104一

Page 109: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

温度が低下する。一方,グラフトしたモノマーのエステル基の炭素数が大きい

ものほど,膨潤度および溶解率は大きく,かたさは小さくな乱そして軟化温

度が低下し,柔軟な外観的性状をもつようになる。

第3節 メタクリロイルグルタミン酸およびそのジエチルエステルの

天然ゴムヘのグラフト重合

3.1 緒 ・ 言

前節において,主としてB P Oを開始剤として天然ゴムヘのM-G1yおよび

M-G1y-OMe,Ml-G1y-O出,Ml-G1y-OPrのグラフト重合を行い,

重合に及ぼす諸因子の影響について検討した。ここでは,モノマーとしてジカ

ルボン酸モノマーであるメタクリロイルグルタミン酸,そしてそのジエチルエ

ステルを使用し,前節と同様に重合条件を検討し,さらに得られたグラフトポ

リマーの性質を若千調べた。

3.2 実 験

3.2.1 試 料

天然ゴムは素練りしたスモークドシート(分予量約15万)を使用した。メ

タクリロイルグルタミン酸(M1-G1u)は第1章のとおりに合成した。メタク

リロイルグルタミン酸ジエチルエステル[M-G1u一(OE t)21は第2節の

M-Gけ一0Rの合成と同様にして行い,無色針状結晶体を得た。mp59~60

℃。その他使用した開始剤,溶媒はこれまでと同様に精製した。

3.2.2 重合方法およびグラフトポリマーの単離ならびにグラ7トポリマ

一の膨潤度とかたさの測定

重合法はこれまでと同様である。重合溶媒,ポリマーの沈澱,グラフトポリ

一105一

Page 110: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

マーの単離およびグラフトポリマーの測定法は前節までと同一であ札

3.3 結果と考察・

3.3.1 天然ゴムヘのM-G1uのグラフト重合

3.3.I.1 重合溶媒組成の検討

トルエンージオキサン混合溶媒を使用し,その組成比がグラフト重合に及ぼ

す影響について検討した。その結果,表34に示す実験範囲内では,先のM-

G1yの場合とは幾分異なワ,2:1~3:1付近の組成のものが重合溶媒と

して最も適当であることがわかった。したがって,以下の実験は2:1で検討

することにした。

Tab1β 54. 週ffec1= of graf1: 801丁ent co㎜po目i竜ion

C。・砒i㎝・:〔NR〕,O.Ol㎜・1;rM-G1y〕,O.Oh叫

1班0〕,5.3㎜・ユ!1;S・1・・航,30㏄;

80oC; 4 hエ.

So1venセ T〇七aユ Graf七ing Peroen七age 。㎝p。。i批㎝ 。㎝。. G「afti㎎ 。ff. 。fg。。舳㎎

(亙。1ue舶:Dioxane)(%) (%) (%) (%)

86,8 81,5

91,7 95,6

95.2 149,6

80.8 142,8

82,6 80.5

29,6 25,7

35・0 50・2

49,7 47,5

55,8 45,2

50・7 25.4

3.3.1.2 開始剤濃度および溶媒量の影響

開始剤濃度の重合に及ぼす影響について実験した結果を図78に示す。

全重合率とグラフト率はB P O濃度0.83×10-3mo1/ユ以上では平衡状態

を示し,前者は97~98%,後者は135~140%の値をとる。また,グラ

フト効率とグラフト重合率はB P0濃度3.33×1O-3mo1/1付近においてピ

ークを示し,前者は49.7%,後者は47.3%の値をとる。したがって,本実験

条件下での最高B P0濃度は3.33×10-3mo1バである。以下の実験はこの

濃度で検討した。

一106一

Page 111: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

5o ( 自(渓一渓)“) ● ,H・} 耐≒ } ■■ ω 軸。

O bO,H ■ oFl ・一.

ω 一p ④十3 {H bOo ω 耐自 ■ そ』

φ 自‘ ω

◎ ・o X肩 ω ~

<1

Fig.78田

100

80

εo

・ユ(j

20

L⊥…」」..■..oL.LL■.」..■...一

2 4 5 8

〔班d〕(㎜・1/ユ)

200

1O

1OO

O

国自

一“いd■

瓦ffec七 〇f conoen1;r邑tion of BPOo

〔NR〕,0.O1・州咋Gly〕,O.Ol・山

Solven尤, 5C oc(Toユuene :]〕ioxa損e=2:1)

80oC; 4 hr.

溶媒量の影響については,B P O濃度を一定にして,ゴムおよびモノ’マー濃

度すなわち溶媒量を変化させ,80℃,4時間重合させた。その結果を図79

に示す。このとき,溶媒量は少ないほど,すなわちゴムおよびモノマー温度が

O 10 20 30 40 50

Soユvent (ce)

Fig. 79・ 瓦ffect of a㎜ount of 801ven1;.

lNR〕,O・O1・。111M-G1・〕,O.O1・叫

1班0〕,5.5㎜。1/ユ;80“4h。;

So1vent, To1uene2Dioxaエ1e目2:1.

軸 ( ■(渓一渓)“) ■ 早H

● …H 耐参 } ■■ ⑭ 団。

0 b0-H 自 0Fl ・一耐 ・P ⑭

ギ1} 則○ 耐 ωE→ ^ そ一

む 臼■ ⑭

O .o X ■ ④ 岡

<1

渓300 靱 自 一 “200} 討 ■ d1OO ・ ●

O

一ユ07一

Page 112: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

高いほど良好なグラフト結果を与える。しかし,実験操作上の点で以下の実験

は重合液量30c・(ゴムO.01mo1につき)で検討した。

3.3.1.3 モノマー濃度の影響

ゴム0.01mo1,重合液量30ccとし,M-G1u量のみを変化させて重合

した。その結果を図80に示す。全重合率はモノマー濃度O.01mo1以上では

前10G 500 …ミ; 衰菖構 一、べ滝80 400衰 ← 伯 肩 冒 ⑭ 60 0 60- ○固一 60 300 自 Hξ・ 掌 睾岩島 片一一トx一一N 潟 ε雪ポ0∠ 2.O畠 8二§、。! 1。。3 X■ !’ ⑭ ~ 0 0 <!0 0,01 0,02 0.03 〔M-G■u〕(m1)

Fig. 80. Effect of mono㎜er ooneentraII:ion.

〔NR〕,O・Olmユ;〔BP0〕,5・5甲1/1;

So1vent, 50 oc(皿。ユuene:Dioxane=2;1);

8CoC; 4 hr.

95%の値を示す。モノマー濃度の上昇に伴いグラフト率は増大し,グラフト

効率は僅かづつではあるが低下の傾向が見られる。しかし,大体45~50%の

値をとる。

3.3.1..4 重合温度および重合暗闇の影響

ゴム,モノマー,B P Oおよび溶媒量を一定とし,重合温度の影響について

60,80,100℃で4時間重合させた。その結果は表35に示す。60℃て

ばグラフト重合は起こり難いが,80℃さらに100℃なると良好なグラフト

結果を与える。したがって,つぎの重合時間の影響については,重合温度80

℃をとり,30分から8時間にわたって検討した。その結果を図81に示す。

一108一

Page 113: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

Tabユe 55. 刃ffeot of graf七ing 七e㎜pe】=・aセure

C㎝砒i㎝・1〔剛,0.O1・・1;〔M-G1y〕,O.O1㎜・1;

〔BPO〕,5.5㎜。1/1;S・ユ・㎝t,50㏄;

(To1Ψene:】〕ioxane=2=1);4hr.

To1;a1エe1皿p・

COnV.(。C) (%)

GraftingG・出i㎎ 后ff. (%) (%)

PerCen.1;age

of grafセing (%)

60

80100

2,4

95,2

97.6

1.2 1.6

149,6 49.7

165,4 55.6

O.57

47,5

52.3

固 ( 自(渓 ・H渓) “) . 一H

■ 弓H 耐

ト } ■自 ⑭ b000 b0 『→

■ or→ ・一

耐 一p oそ』 ‘H b0○ 耐 耐E・1 ■ →』 d q

一 Φ

◎ ‘ o X ■ ⑭ {

Fig.81.

100

80

60

_一戸ル’’

40 一ノ 〆 ’ ’20

0 I 0 2 3 4 5 6 7 8

皿i鵬(hr)

300

渓200

靱 冒 一100ξ 耐 ■ o0 ●

瓦ffeot of graf七ing ti!11e.

〔NR〕,O.01m1;〔M-G1司,O.Ol㎜州

1班0〕,5.5㎜。ユ/1;Solv・nt,50㏄

(記。1uene:】〕ioxa皿e=2;1); 80oC.

グラフト重合は重合時間30分以内でば起こり難いが,それを過ぎると1時

間内において急激に起こる。この事実は図80の全重合率およびグラ7ト率か

ら明らかである。この両値は重合時間1時間後は幾分上昇の傾向がみられるに

すぎなヘグラフト効率も同一傾向をとワ,重合時間4時間以後大体50%前

後の値を示す。

一エ09一

Page 114: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

3.3-2 天然ゴムヘのM-G1u一(OEt)2のグラフト重合

重合溶媒としてトルエンを使用し,先のM-G1uの場合と同様に検討した。

3.3.2.I.開始剤濃度および重合液量の影響

開始剤としてのB P O濃度が重合に及ぼす影響について検討した。その結果

を図82に示す。本重合条件において,全重合率はBPO濃度0,625x10・2

mo1/工以上ではほとんど100%の値を示す。グラフト率およびグラフト効

渓 100 oo(婁ξ 200(渓) “ 求

∵■温80 )← 帖 ■ 100 oo目 o 団 自。 60 -o oo } ・P ■ O }F1- O 討ω “ ⑭ ■“ 泊 餉 40 φo o o白 肩 →’ ● ○ 目・ ●. o 20 .

O . o ’ X 目 o 7 .岡・o

・ 01234567 < 〔BPO〕(X102画・1/■)

Fig. 82. 皿ffec1=of ooncentra七ion of掲PO.

〔㎜〕,5㎜・1〔M1・一(O跣)。〕,5㎜・1;

To1uene, 8 cc; 1000C; 5 hr.

率はB P0濃度の増加に伴って上昇し3,125×・10-2mo1/2付近でピークの

値,すなわちグラフト率170%,グラフト効率42%を一示し以後低下の傾向

をたどる。このときの重合液量は図83に示すように,トルエン8㏄付近が

最も良好なグラフト結果を与える。したがって,以下の実験は重合液量8cc

で検討することにした。

一110一’

Page 115: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

( b0 黒 ■() ,H漢 ■そ』)!H {H

● ,H 耐ト ⑭ ■q b00 団○ 臼 } ・一 〇H +,耐、→ ④・P 耐 b00 ■ 越目 o ・P q‘ ● ⑭O X o 自 Φ ~

lOO

10 15 20

Toユue皿e(㏄)

200蓑

凶100 自 ・H “ } d○ 自

亙ig. 85. 瓦ffec七 〇f a㎜oun宅 of soユvent・

〔NR〕,5㎜。1;〔M-G1・一(O胱)。〕,5㎜。11

〔追PO〕,51.2㎜。1/1;10㈹;5hr・

3.3.2.2 モノマー濃度の影響

モノマー濃度の重合に及ぼす影響について検討した。その結果を図84に示

す。モノマー一濃度の増大は,M-G1uの場合と同様にグラフト率のみを著しく

上昇させるが,グラフト効率はごく低濃度の場合を除いては約50%である。

渓 b0 ’、 q

(渓H渓)“) ● …H■} 同書岩島。

O bO,H 自 0F{ ・H固 十5 Φ・P 弓H 目O○ 耐 d自 ■ →』

む 自^ Φ

◎ .o X■ ω 円 一 〇 <1

800

700裏600

艶500 冒 一 “400』 ω300 ■ む200

100●o

0.O05 0,01 0,015

〔M㎝㎝・・〕(m剛

】≡一ig・ 84. 逓ffect of㎜onomer coneentra一.=ion・

〔NR〕,5㎜。1…〔BPO〕,51.2㎜。ユ/1;

Toユue皿e, 8 cc; 1000C; 5 hr.

一111一

Page 116: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

3.3.2.3 重合温度および重合時間の影響

重合温度の影響を60,80,100。ρで検討した。その結果を表36に示す。

Tab1e 56. 亙ffec七 〇f graエ七ing 七e皿perature

舳・祉g鵬:〔・・〕,5㎜叫1・一…一(』跣)、〕,5㎜mユ;

〔BPO〕,51.2㎜。ユ!ユ5T・1・・蝸,8㏄;4㎞.

Tota1Temp. C◎工1V・(。C) ・(%).

Gra二ftingG「・fti㎎ 。ff.

(%) (%)

PerC entage

Of graf七ing(%)

60

80100

98,5

99,0

99.8

66,5 16・9

152,1 58.5

188,8 47.5

16,7

58,2

47.2

Ml-G1uの場合は80~100℃が有効であったカ㍉この場合は100℃であ

ることがわかった。さらに,重合時間の影響について検討した結果を図85に

示す。グラフト率およびグラフト効率は重合時間の延長に伴って増大するが,

渓 oo ( 自(さミ ・H渓) “) ● 弓H

・ ㌔ dト r-1 ■肩 ⑭ 凶〕

o○ 的 『H

肩 0H ・H耐 そ』 ④→一 =H 直O

○ 越 dE→ 白 ・p

o ■■ ω

◎ ・ o

X ■ ω 岡

<1

Fig.85.

100

80

6Q

40

20

〆、/

!戸

200

き100 越 崔 掌○塙

6

O

01234567 Graf1=ing time (hr)

瓦ffeCt Of graf七ing 七ime・

〔NR〕,5㎜。1;〔M-G1・一(O砒)。〕,5・血・11

〔BPO〕,51.2㎜。1/1;皿・1u・n・,8㏄三

1000C.

大体2時間までに急増し,以後一定値をとる。このときのグラフト率180砺,

グラフト効率46%である。重合の誘導期は認められないようである。

以上のM二一G1u一(OEt)2のグラフト重合結果を先のM-G1uのそれと

比較して,著しく異なる点は,重合温度とB P O濃度の影響であり,前老は

一112川

Page 117: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

M-G1uの場合よワ高い重合温度が適当であり,後者は無開始剤においてもモ

ノマーの重合のみは起こるがグラフト化は起こらない。グラフト化を進行させ

るには,M-G1uの場合よりも幾分多いめの開始剤を必要とすることである。

3.3.3 グラ7トポリマーの性質

これまでの実験で得られたグラフト率を異にするMl-G1uおよびMl-G1u一

(OE t)2のグラフトポリマーについて,その性質を若干調べた。

まず,水,エタノール,ベソゼソおよび四塩化炭素などの各種溶媒中に常温

(15~20℃),30時間浸せきした後の膨潤度を測定した。その結果を表37

に示す。

Ta1コ18 57・ ]〕6gτee of 3uo11i皿g of g-aft po】一y固。r in vaエiou日 80ユvo皿tg

St88piエ19 1;日並p., 15-20・O; S七e8ping ti掘e, 30 ㎞・

G■aj1; POユy皿8r Of ㎜一Gユ1ユ =

1〕]〕eg-oo of 日”eユ1i皿g

Gr㎡tingSoユv6nt a1〕out

20采

Oraf1;i皿g Grafting Grafti皿g GraftiIig Oraj=ti】ユg

a1〕out70“90% 120間140路 170-190郭 220’240% 40C%

Hat日r o・51 1・5o

]…thaエ1o1 O・55 1・25

]ヨe回目e皿2 4・55 2.20

T8tr邑。hユ。ro 5・40 5・55回e七ha皿8

5・15 7・?5

2・40 2・85

1・70 1,50

3,30 2.90

15・45 22・80

4・50 8・30

1・05 0,75

1・45 0・75

Gr舳po1胴・r・f固一G1u一(OEt)。:

De距日・of帥・1ユi巫g”

So1↑en七G工afti1g Gra二fting

50-70% 80-100%

later O・20 0・15

Ethaエユ。1 O・96 1・65

]ヨ8n26口8 16・55 18.90

工。t1aohユ。ro 19・66 24.OO鉋日1=ha皿e

Grafting Grafting Gエafting G1afting

邑b01ユt abOut150・150% 180-200実 ラOO% 600%

O.05 01,90 2.05

20・10 2后.65

27.60 50.70

o 0

2・91 4.11

45・57 55・00

54.85 65.70

1〕.一he鮒鯉旦ge of8ev日r邑1口自砥岨8山8皿1;8.

M-G1uグラフトポリマーにおいては,グラフト率の高いものほど水,アル

コール中で膨潤度が大きく,ベソゼソ,四塩化炭素中では小さい。また,Ml-

G I u一(0E t)2グラフトポリマーにおいては,特にベソゼソ、四塩化炭素中

で膨潤度が著しく大きい。この傾向はグラフト率の高いポリマーほど顕著であ

る。このことは,表38に示す溶解率からもわかるようにグラフト率の高いポ

皿113一

Page 118: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

リマーほど溶解性を示す。

匝ab18 58・ So1皿biユity of gra;1=t po1〃8■

St88pi皿g to阯p・, 15・200Cヨ Steoping ti藺e1 30hr・

G1aft poユy回81 of トGユ皿 =

S。ユ皿biユ町1州1〕

Soユv8皿1:Gr㎡ti皿gab01ユt20%

Graftinε Gra二fti]19

70-90% 120’140%

舳オti皿9

170^190%

G工証ti皿9

220-240%

Gr㎡tin乞邑b01ユt

400%

日ate■

E切鋤。ユ

Be皿2日並e

工e1=1aOhユ。ro

阯etba皿8

0

0

11,0

18.5

O.5 7.0

2.5 5,0

10.5 5,0

15.5 9.O

9.0

7.6

5.5

6二5

11,0 15・5

8,5 10.O

O.5 0.5

2.0 1.5

Gエ2f1; poユy皿8r of ”一〇ユ峠(O]≡=t)2=

S。ユ耐ユ岬(労)”

Soユv日ntG珊ゴti皿g

50-70完

G■afti】ユg Gr芭fti皿g

80-100弟 150-150%

○エ㎡ti掘9

180’200%

晦虹ting百1〕o1ユt

5oo%

G工afting且bo皿t6oo,‘

日目te1

Etha蜆。1

B日n蝸n0T6tτ邑。hユ。ro

固etha皿日

。 o

O.5 1,0

16・0 20,0

18・0 24.5

0

2,6

29,0

25.O

q5,6

48,5

46.O

0 0

6,8 10,565・5 80・5

51,0 53・0

1〕. Th8 邑百日工邑g日 of 88ve-a]一 ㎜e旦目u工e皿8工11;8・

つぎに,M-G1uグラフトポリマーについて,水およびベソゼソ中での浸せ

き時間に伴う膨潤度の変化を調べた。その結果を図86に示す。図86からわ

かるように,グラフト率220~

240のポリマーは例外で,その

ほかはすべて浸せき5時間以後ぽ

ぽ平衡状態をとる。

さらに,両グラフトポリマーの

かたさをショアかたさ計により測

定した。その結果は表39に示す

ように,グラフト率の高いポリマ

ーほどかたさも大きくなワ,ぽぽ

同一グラフト率をもつポリマーに

おいて,そのかたさはM-G1u一

(0Et)2 グラフトポリマーが

国自

一HH⑭貢

}o⑭④■

固④

Orafti皿g;220・240

X X

x’’. G蝸舳㎎1201εbO州 〆 ’ ’

ま O1里fti互g;120-140’

’ .’’_一一一一■x ’X■一X.一’一一X’’’’~以一ト ジ ’“70-gO,1’ダ ・1120-140 70’90. __⇒←一X一一一一一X X1

7 220-240

1. 20(abo“七〕

0 1

班g.86.

2- R45678910Steeping七i㎜e(hエ)

Re1a七ionbe七weendegreeofswe11ing and steeping time・

SteePing 1;ime, 15-20oC;

O,Water; X,Ben2ene・

一114一

Page 119: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

M-G1uグラフトポリマーよワ僅か大きいようである。

Tab1e59.H趾dnessofgra性po1ymer

第4節

Graf1:i]=ユg

(%)

020(abou1;)

50’7070^90

80’100120-150150-150

150’180

180’200

220-240うOO(a1〕out)

400( 1・)

600( 1I)

HardneSS1,

Graf七 polymer Graft po1ymer・fM-G1羽 ぱM-G1u一(O眺)。

25

58

51

55

57

72

78

1).Theaverageofseveraユmeasurement。

アグリロイルーω一アミノ酸およびそのエチルエステルの

天然ゴムヘのグラフト重合

4.1 緒 言

これまで,B P OおよびA I B Nを開始剤として天然ゴムヘのMl-G1y,M

-G1uおよびそれらのエステルのグラフト重合を行い,重合に及ぼす諸因子

の影響とさらに得られたグラフトポリマーの物性について検討した。

本節では,モノマーとして,ω一アミノ酸を結合した。アグリロイルーβ一

アラニン,アグリロイルーγ一アミノ酪酸,アグリロイルーε一アミノカプロ

ン酸を合成し,アミノ酸基の炭素数増大がグラフト重合とグラフトポリマーの

性質にどのような影響を及ぼすかを明らかにする目的で,これまでと同様にそ

の重合条件を検討し,そして得られたグラフトポリマーの性質を調べた。さら

にそのエチルエステルのグラフト重合についても若干検討した。

0115一

Page 120: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

4.2 実 験

4.2.1試 料一 天然ゴムはこれまでと同様に,素練ワしたスモークドシート(分子量約15.

万)を使用した。A一β一A1a,A一γ一Abut,A一ε一Acapは第1章,第

2章で示した適ワに合成した。また,これらモノマーのエチルエステルは,前

節までと同様にして合成した。A一β一A1a-0E tはmp.22~23℃,b p

149~150℃/10㎜Hg,A一γ一Abu卜0Etは,bp・185.5~18ポC

/14mm Hg・A一ε一A c a p-0E tはmp53~54℃,b p・168~169℃

/5m^Hgの留分を使用した。その他使用した試薬はこれまでと同様に精製

した。

4.2.2 重合法およびグラフトポリマーの単離ならびにグラフトポりマー

の膨潤度,溶解率,かたさの測定

これまでとほぽ同様の方法によって行った。ただし,A一γ一Abut,。A一ε

一A.apを用いた場合はポリマーをアセトンで沈澱させ,メタノールによるホ

モポリマーの抽出によワ,グラフトポリマーを得た。また,モノマーとしてエ

チルエステル体を用いた場合,グラフトポリマーとホモポリマー両者を沈澱さ

せる適当な溶媒が見つからないため,メタノールでグラフトポリマーのみを沈

澱させた。その他はこれまでと同一である。

4.3 結果と考察

4.3.1 天然ゴムヘのアグリロイルーβ一アラニンのグラフト重合

4.3.1.1 重合溶媒組成の検討

ゴムとアグリロイルーβ一アラニンの単一溶媒がなく,トルエンージオキサ

ン混合溶媒を使用し,グラフト重合に及ぼすその組成比の影響を調べた。その

一116一

Page 121: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

結果を表40に示す。

Tabユe 40・ Effec七 ◎f graf1; so1vent co皿P08ition

C㎝diti㎝・:〔NR〕,O.Ol・・1;〔剛,O.01m1;

〔班O〕,5.5㎜・ユ/1;S・ユ・・nt,50㏄;

80oC; 4 hr.

So1ven七 COm渥08itiOn(TOユuene;]〕iOXane)

Tota1 Graf1;ingCOnV・(%)’ @ (茄)

Grafting eff. (%〕

PerCentageof graf-1;ing

(%)

2

1

1

1

87,0 74・7

90・9 80,6

95,5 85,6

91,8 82.4

40・8 55,5

42,1 58,5

45,6 40,7

42,6 59.2

実験範囲内では,組成比2:1が適当であることがわかった。したがって,

以下の実験では重合溶媒としてトルエンージオキサン2:1の組成比のものを

使用した。

4.3.1.2 開始剤の検討

開始剤としてB P O,A I B NおよびL P Oの3種類を使用し,同一条件下

で検討した。その結果を表41に示す。B P OおよびA I B NはともにL P O

Ta1〕ユe 41・ ]≡:ffeet of initiator

C㎝diti㎝・llNR〕,O.01mユ;〔剛,O.01汕;〔I〕,5.5㎜・1/1;

So1ven七, 50 cc(To1uene;Dioxane=2;1); 80oC; 40hr.

Initia七0rT〇七a1

COnV.(%)

Graf七ing

(%)

Grafting Perc entage

eff. ofgr班批ng (%) (%)

BPO

ムエBN

工PO

95,5

98,4

80.5

85,6 45,6

78,8 58,1

54,0 20.1

40,7

57,5

16.1

よワも有効であることがわかった。したがって,以下の実験はこの両者のうち

B POを選び使用した。

一117一

Page 122: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

4.3.1.3 開始剤およびモノマー濃度の影響

B P O濃度の影響についてO~8.33×10.3mo1ハにわたって検討した。

その結果を図87に示す。全重合率はB P O濃度に無関係で90%以上の値を

渓 ) 1OO b血 ( ■ 訳 o H ) “ 潟(穿 80 占呂塙 }温 ●} 一 60 Φ 前 ( bO -H

ポ.ノ角メ 20 H ■ O 耐 X ■ 十, Φ O Pそ 臼 ・ o . <I 0 2 4 6 8 0 〔BPO〕(㎜o1/1)

Fig. 87. Effec七 〇f coneentra七ion of 刃=PO.

〔NR〕,O.Ol㎜~〔M〕,0.01・・1;

S.1…㌔.5C㏄(T・1・・n・1腕x釧・目2:1)

80oC; 4 hr・

示す。グラフト率,グラフト効率およびグラフト重合率はB P O濃度の増大に

伴って上昇し,3,33x1O-3mo1/’以上ではほぼ平衡値をとる。

つぎに,モノマー濃度の影響につ.いてゴム0.01mo1につきモノマーO.0025

~0,025mo1にわたって俸討した。その結果を図88に示す。全重合率はモノ

マー Z度と関係なくほぽ90%以上の値を示し,グラフト率はモノマー濃度に

比例して増大し,その関係は,y=ノ下(y:グラフト率,X:モノマー濃度)

をほぼ満足させる。グラフト効率およびグラフト重合率はモノマー濃度の増大

に伴って減少する。

一118一

Page 123: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

ま )1OO 凶 (嘗^渓・H渓)“80) ● 『H.} 前ト。H ■自 Φ 釦。 600 白O{H q 0Fそ 一ω そ』 ⑭

“いb040○ 耐 耐E→ ■そj d 宮6・820 X島 叫 o

<1

\共

量\\ \基

σO05 0.Ol αO15 G.02

〔M㎝㎝鉗〕(㎜剛

O.025

160( 洪 田120■ 一 着80雪 o

40●

亙ig.8臥 砒feC七〇fmOnOm鉗OO逼Cen切a七iOn・

〔NR〕,0.O1・。ユ;〔BPO〕,う・5㎜。1/1;

S。ユ。。。t,50㏄(M・帥・lDi帆則・・2:1);

80.C; 4hr.

4.3.1.4 重合温度および重合時間の影響

重合温度の影響について60,80,工00℃で検討した結果を図89に示し,

重合時間の影響についてO~6時間にわたって検討した結果を図90に示す。

凶 忍自 )一“ 阯}^■碧きお○べ種8お島^ 凶,H求自 o●“ o竃セ器。 ^“○由 膚 ω官’婁“Xoo {自

・ くl

oG工■且fti皿g te皿p. (oC)

固 求■ 〕

“ 靱蔓三ξ

o■寝・} 目■㎜凶^ 凹{Hi呉 ■ o) 一

…淘錺。 』 ・μ

o o 自

官ジε・μ o○ 店一

・ く。

4 6

Cr吐ti㎎ti㎜o(hr〕

正ig.89.酎feotofg胞ftingt8町。胞ture・

〔剛,O.01回{lH〕,O.Oh小 『BPO〕,5.5而衙。1/ユiSo1w8nt50oo

{To1皿8皿8;Dioxa皿。・2=1)… 4hr.

Fユg・ 90・ EffoOy of gr目fting ti阯e.

〔冊R〕。O.01柵1;〔剛,O.01刷1 〔BPO〕,5.3㎜。1/1;S.1丁芭nt,30・。

{To王uone:1〕io■ano■2:1); 80oC・

一n9一

Page 124: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

図89からわかるように,重合温度60℃においてはグラフト重合は起こワに

くいが,80℃そして100℃になるとグラフト結果は良好となる。また,図

90からわかるように,グラフト重合は1時間内では起こワにくいが,その後

は急激に起こる。このとき全重合率は平衡状態をとる。グラフト率およびグラ

フト重合率は重合時間1時間後はともに幾分上昇する傾向にある。

4.3.2 天然ゴムヘのアグリロイルーε一アミノカプロン酸のグラフト重合

重合溶媒としてトルエンを使用した。

4.3.2.1 開始剤の検討および開始剤濃度の影響

開始剤としてB POおよびA I BNを使用して天然ゴムヘのアグリロイルー

ε一アミノカプロン酸のグラフト重合について比較検討した。その結果を表42

に示す。

Tab1e 42. 瓦ffect of ini1;ia七〇r

C㎝砒i㎝・;1㎜〕,5㎜。1;lI〕,5,5㎜・1!1;

Toユuene, 10cc;80oC;6hr.

To1:aユIηi.1:iatO:r

ρOnV・ (%)

Graf1:ingG・afti・g .ff.

(%〕 (%)

=B=P0 59・0 77・1

ムIBN 95,9 17・7

】≡一erC entage

of graf七ing

(%)

48,0 28・5

6.9 6.5

開始剤としてA I B Nを使用した場合,全重合率は高いがグラフト効率はは

なはだ低い値をとる。すなわち,A I B Nではモノマーの単独重合のみが起こワ

ワやすく,ゴムヘのグラフト重合は起こワにくいようである。したがって,以

下の実験では開始剤としてB P0を使用した。

B P0濃度の影響について検討した結果を図91に示す。全重合率はB P O

濃度5.00x10’3mo1/正付近まで直線的に上昇し,以後緩慢となる。グラフト

ト率およびグラフト重合率はB P O濃度3.33x10-3moI/エ付近でピーク

を示す。したがって,この濃度を最適濃度と考え以下の実験に適用した。

一120一

Page 125: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

餉 渓自 )・H

“ 団

鰺暮。 ・} } 前.} 自

● ω 越

( 団=H渓 ■ o) H● 十, ω≒ 一一 b0■ 耐 耐。 』 “o o ■ ①rそ ■ o

耐X■斗3 Φo ρ→目

. <10

100

80

60

40

20

00

x

クーム、、\

__止一 _」_ 2 4 6 8

〔脚〕(㎜。ユノユ)

肘g.91. Effect of conee珂tエーa1:五〇n of BPO.

〔NR〕,5m.1;〔M〕,5㎜。1;

T0ユuene, 10 ce; 80oC; 6 hr・

4.3.2.2 モノマー濃度の影響

ゴム0-005mo1につきモノマー0.00125~O,O15mo1にわたって検討し

た。その結果を図92に示す。モノマーO.O1mo玉の場合グラフト率はピーク

渓軸 渓篶 )一一 5o電§蔓。 ・} 一H 句・} 』

● Φ 則

( b0}沃 自 o) ・H

■ 十, ④

ト 一H bO目 耐 耐。 』 →』

o o 膚 ④嚢.{§

O Pそ白

8 く1

100

80

60

40

20

千 o,

1\\ \ \ 其\㌧ \ム 目\買 、生 、、4 、△一 、、△

αO05 0.Ol O.Oi5

〔M㎝。醐パ汕)

甜g.92. 児ffeo1: of 皿一〇no耐er concen七ration.

〔NR〕,5㎜。1;〔BPO〕,5,5㎜。1/1…

To1uene, 10 co; 80oC三 6 hで.

山121一

Page 126: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

を示し,全重合率,グラフト効率およびグラフト重合率はモノマー濃度の増大

に伴って減少する。

4.3.2.3 重合温度および重合時間の影響

重合温度の影響について,70,80,100℃で検討した。その結果を図93

に示し,また重合時間の影響について,1~6時間にわたって検討した・その

結果を図94に示す。

呂^

蔓三選§婁

・べ温

●お包

謙 、二二\茸・含島名・

㍑婁ち.長目 .

δ 〈 Cr出i㎎t・岬・(’C〕

至ig.95.・砒伽いfg山ti皿g七・叩・珊t㎜8・

〔皿R〕,5㎜。1;ω,5㎜。1;

〔班0〕,5.5㎜。ユ/1一山舳一い}

6hr.

洪)㎜ ^

婁呂婁§蔓

・べ塙

.温里

謙8出さ宝{睾

婁塁 。1、。。。。 ●一 く1O Oraft1ng ti皿6 (hr)

Pig. 94・ Eff60t of gエafti日g ti㎜o.

〔剛,5㎜。1;〔H〕,5㎜。1; 〔BPO〕,う.3・㎜o1/1;

To1uo皿e, 10oo一日ΩoO.

重合温度は80℃が最適で,10ザCになると全重合率は上昇するがモノマ

ーの単独重合が起こりやすくなワグラフト率は減少する。重合時間の影響では,

全重合率が時間とともにほぼ直線的に増大するが,グラフト率およびグラフト

重合率は重合時間3時間内に急激に上昇し以後緩慢となる。グラフト効率は重

合時間2時間をピークとし,時間の延長に伴って低下する。

4.3.3 天然ゴムヘの7クリロィルーγ一アミノ酪酸のグラフト重合

アグリロイルーγ一アミノ酪酸は,そのアミノ酸基がβ一一アラニンとε一ア

ミノカプロン酸の中間に位するもので,そのグラフトポリマーの性質を比較す

一エ22一

Page 127: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

るため,これまでの4.3.1,4.3.2の実験から得られた最適条件を適用して天

然ゴムヘのグラフト重合を行った。このとき,重合溶媒としてトルエンージオ

キサン2:1の混合溶媒を使用した。その結果を妻43に示す。

Tabユe45.Graf七poユ卿erizati㎝ofA一・γ一Ab肺㎝七〇NR・ aOid OntO NR

C㎝diti㎝・1〔NR〕,0.O1㎜。1;〔工〕,5,5㎜・1/11

S・1v・n㌔50㏄(To1旭・雌リiox㎜e・2:1);

80oC; 6 hro

王逼itiatOr MO亙O㎜er

(㎜01)

ムエBN Oo01

BPO O.01

., 0.015

皿。ta五 Gr㎡tiηgCO河V.

(%) (%)

88,2 51,8

94.5 104,4

96.8 124.5

G蝸ft畑g PerCe航age eff. of graゴti皿g

倣) (%)

2504 22・峰

4708 45,1

57,1 35.9

開始剤としてはBPOがAI BNよワ有効であり,先の4.3.1,4.3,2のグ

ラフト重合とほぼ同一結果が得られた。

4.3.4 天然ゴムヘのアグリ目イルーβ一アラニンエチルエステルおよび

アグリロイルーε一アミノカプ目ン酸エチルエステルのグラフト

重合

4.3.4.1 アグリ重イルーβ一アラニンエチルエステルのグラフト重合

開始剤としてA I B Nを使用し,その濃度の影響について検討した。その結

果は図95に示す。AI BN濃度3.33x lO-3mo且/1以上ではグラフト率お

よびグラフト重合率は平衡状態をとり,グラフト率は20%前後で,このグラ

フト化は起こワにくいようである。

また,同一条件下で開始剤としてB P Oを使用したが全くグラフト化は起こら

らなかった。

一123一

Page 128: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

( 渓 渓 ) ) ④ b0b0bo 冒 飼 冒 ・一 一P ・一 “ 負 ≒P }’ω} 耐 o 越 ■ ■ ■ o ④ 5o 岡 ・ {H ● 一〇 ぐ 0 2

〔A脳〕(㎜。1/1)

Fi9.95.雌納ぱ・。説皿切・ti・HfA工BN

1“R」,5mmP1;W,5㎜・11 To1uene, 10cc; 1000C; 5hr.

4.3.4.2 アグリロィルーε一アミノカプロン酸エチルエステルのグラフ

ト重合

まず,開始剤としてB P0およびA I B Nを使用しグラフト重合結果を比較

した。表44中らわかるようにBP0がAIBNよワ有効である。したがって,

Ta.101e 44・ 旦ffec七 〇f i虹i七iaセ。r

C舳i姐・蝸;〔NRj,5㎜。1;〔剛,5㎜。1;〔工〕,5.5㎜。1/1;

Toユuene, 10 cc; 1000C; 6 hr・

工nitiatOr G工Ia抗ing

(%)

Pe万。entageof grafting

(%)

]ヨPO

A工房N

52.9

7.4

16.9

2.4

つぎに開始剤としてB P0を

使用し,その濃度の影響につ

いて検討した。その結果は図

96に示すように,グラフト

率およびグラフト重合率がと

もにB P0濃度3.33×10‘3

mo1/{以上では平衡状態を

とる。

( 決次 〕) o固 舳 凶■ “ ■

お盲≠セ葛泡占畠畠.岡

p●~。

0 2 4 6

BP0 (㎜皿。1/1〕

互ig. 96. ]≡:ffoct of oo皿08nt■atio皿 Of B20

同,5㎜。11〔H〕,5㎜。1; Toユ皿8n8, 10 oo言 100・C; 6 h1.

一!24一

Page 129: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

さらに,以上の実験で得られた最適条件下で重合温度の影響を80℃と100

℃で比較したところ表45に示すように,重合温度は80℃よワ100℃の場

Tab1e 45. 刃ffeo1: of grf1=ing tempe■・a土1ユre

C㎝砒i.n・:〔NR〕,5㎜。11ω,5㎜・1; 〔BP0〕, 5 mmo1/ユ; To1uene, 10 cc; 6 hr.

Temp.

(。C)

G珊fti㎎ pe「Cen七age of grafting (%) (%)

80 55.9

100 48.5

11,4

15.5

合がその結果は良好である。

なお,アグリロイルーγ一アミノ酪酸エチルエステルのグラフト重合につい

て,開始剤としてB P0およびA I B Nを使用して各種条件のもとで検討した

がモノマーの重合のみが起こワゴムヘのグラフト化は起こワにくいようであっ

た。

4.3.5 グラ7トポリマーの性質

4.3.i~4.3.3の実験で得られたグラフト率を異にするグラフトポリマーを

水,エタノール,ベソゼソおよび四塩化炭素中に常温(16~20℃),24

時間浸せきした後の膨潤度および溶解率を測定した結果を表46,47に示し,

また,かたさをショアかたさ計で測定した結果を妻48に示す。

膨潤度は表46より明らかなように,アグリロイルーβ一アラニングラフト

ポリマーは水,エタノール中ではグラフト率の高いものほど膨潤度が大きく,

逆にベソゼソ,四塩化炭素中では小さい。アグリロイルーγ一アミノ酪酸グラ

フトポリマーも実験データが乏しいがアグリロイルーβ一アラニングラフトポ

リマーとほぼ同一傾向を示すと考えられる。また,アグリロイルーε一アミノ

カプロン酸グラフトポリマーはベソゼソ,四塩化炭素中では,グラフト率が高

くなるにつれて膨潤度も大きくなるが,グラフト率80%付近をピークとし,

それ以上では小さくなる。

一125一

Page 130: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

工8b10 46. 1〕8岬。o of ・1’日11ユ㎎ of 亜8ft po1y口。■ i皿 ■8工io皿9

StOOPi皿‘ t001p■I 1ト20C l St●8pi皿’ ti掘。1 24

■oユ寸。一,t,

㎞.

刀昭舶。of 8}oユユユ掘 1一

Or㎡tp01胆岨 soユ¶o皿t晦吐ti皿g8も。{t

4oメ

附虹ti皿g目1〕o凹t

5o,‘

or㎡t王n目8bout60,‘

o1吐t加881〕o咀t80,‘

G工㎡tio!8bo刊t1oo“

Or8fti■8 0■8fti皿8 Graftユ皿目 8bOut ^bO旭t 8もO阯{

120,‘ 140疋 160,‘

O■8土t po1y口。■of ^‘o・^ユ8

u8to■

B伽固。1Bo皿田。皿8

工。t■80h1o1o口。th剛鴉

O.64

0.ヨ1

2,04

4.01

o.τ6

0,50

0.79

,.42

2,96

0,94

1,14

2.5,

4.τ,

1,02

1.o,

2.01

τ.96

1.,τ

o.11

1.42

8,14

1,42

0.5τ

1.,2

Oroft po1y口。1o! ^.f一^b皿t

目8tor

胱h8回。1

此聰”聰。

-8tエ。oh1010口。tb㎜o

o.明

O,48

1.59

,.02

1,95

0,58

1,14

2.,9

Oro=一=t po1y口。■

Of ムー‘■^C8p

Hoto正

1≡伽顯。1

E011配110

,ot■oo正’1o1o掘。tho麩。

O.18

1,41

6.40

,.14

o.1‘

1,18

9.72

16.89

O.15

o・90

11.9τ

20.57

0,18

1.21

10.01

15.40

1〕.■ho 酬。正。昌。 Of 88¶8■a]. 回。ミー日岨。IlIo■to・

不出10 47. So1口bi1ity of 9r8∫t pOユyn艘■ i11¶8工10”8

stooPi掘g tε回p・. 15.20・O;

801■ont8

St08pi口昌 ti㎜■, 2411■.

S01凹biユity㈹〕1,

C■^ft po1y口。■ 5oユvo掘tG■8ft土掘8回bo“t40,‘

肘㎡ti日目8bo凹t50,‘

肺㎡tin纈8b011t60,‘

G■㎡ti皿目

且bo岨t目。,‘

or成ti皿ε8方O凹t

lOO%

○工8fti皿8 0■8ftユ回8 G■8fti記8 81〕011t 8bO、ユt 8bOut

120㌶ 140- 160,‘

G■ユft po1y口●正。f ^一〇一▲18

uoto■

Et11団101

B日並=o皿e

-8t1目。hユ。10 81=h記皿。

o

O.‘

2τ.,

29.‘

o.5

1.,

2,.目

24.1

,.τ

2.8

1后.9

14.5

8.6

,.9

15.1

12.,

12.0

4。ヨ

12.2

12,O

19.1

6,1

12.1

11.9

018ft po1;[口6正。f ^一・7■’。ち、1t

、I8t畠r

亘tb81101

Bo日日。皿。

-ot■80拍1o工・o

間。tb顯一〇

4.6

0,6

42.5

42.4

5.2

1,5

24.O

25,O

Gr8ft po1躰口。■of ^F‘一^08一,

u旦t8■

Etb昌㎜o1

Bo皿鴉日。

■Ot18C1110■O口。th固一〇

2.5

4,8

39.4

47.7

5.0

6,5

59.τ

,9.5

2.9

6,5

59.9

刃。,

,、2

9,8

56.4

55.8

1〕. Tb● OπO1目高O Of 80丁8■8ユ ロO邑8㎜O阯O日t目・

一126一

Page 131: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

Tab1e 48・ Hardness of graf1; po1y㎜er

Gr拉ting (%)

20(about)

40( ・ )

60( 。 )

80( ・ )

100( ・ )

120( ・ )

Haエdness1〕

Graftpo1胆er 眈証七po1岬er G岨ftp◎1〃erofA一・β一虹a ofA寸一舳ut ofムートAcap

27

45

65

78

98

45

64

74

21

32

57

45

55

62

1)。Th・帥e蝸ge・f舵v甑a1記ea・㎜e鵬nセ.

溶解率は表47より明らかなように,いずれの場合も四塩化炭素,ベソゼソ

中ではかなワ溶解するが,グラフト率の上昇に伴って減少するようである。

かたさは表48より明らかなように,グラフト率の高いポリマーほどかたさ

も大きく,同一グラフト率をもつポリマーにおいては,アミノ酸基の炭素数が

大きくなるにつれて低下する傾向にある。

以上表46,47,48の結果からグラフト率100前後のポリマーについて

各種溶媒中における膨潤度および溶解率,そしてかたさを比較すると,膨潤度

は’モノマーのアミノ酸基の炭素数の増加により水中で減少し,ベソゼソ,四塩

化炭素中では増大する。とくに,アグリロイルーε一アミノカプロン酸グラフ

トポリマーは他の2者に比べて数倍の大きい値を示す。溶解率はベソゼソ,四

塩化炭素中では炭素数の増加に伴って増大する。かたさも同様である。そして

外観はつぎのようである。アグリロイルーβ一アラニングラフトポリマーとア

グリロイルーγ一アミノ酪酸グラフトポリマーは脆くて粉末状となるのに対し

アグリロイルーε一アミノカプロン酸グラフトポリマーはあめ色半透明で若干

の粘性をもちゴム状である。

つぎに,4.3.4の実験で得られたグラフト率を異にするエステル体のグラフ

トポリマーについて,アセトン,エタノール,ベソゼソおよび四塩化炭素中に

一ユ27山

Page 132: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

常温(16~20℃),24時間浸せきした後の膨潤度および溶解率を測定した。

その結果を妻49に示す。

征ab1o 49・ カ。groo of 9}oユ1i皿g 8日d 801世bi1ユty of g■8ft poユ岬。■ io¶arユ01ユ9 80ユ■o皿t8

Stoopi旦g 1=畠。lp・1 16’20.C- Stoopiog ti阯。1 24㎞・

1i刃。胆帥。f・雌1ユ地g(Soユ皿biユi切%)

○工一8ft加80r畠ft po1y団昌= Soユ下書垣t a方。ut

20,‘ u就駅. 亙th顯。ユG鮒t剛胆胆 月。互鴉日。Of ^・ρ・五ユa・0]≡:1;

簑隠肝。

、一邑t8r 田1:h…蜆。ユG刺t剛岬r 垣。皿。。皿。ofムー!Iム。呂pio亜t

■otraohユ。!o 皿8th日並。

Or8二fting O■afti匝g

ab01ユt abOut

25,‘ 50,‘

1.OO {7.5) .

O.35 {O.5) ‘

Di8p日r国工。珂(61.9〕 ・

Di鞭配畠i㎝{47.2) 一

1.65 (19.6) 1.72 (11.7)

1.19 { 1.5〕 1.05 ( O.8)

Dis蔓。19ユ。珂 (61・9) . ヨ4・64 (28・4〕

Digpo18ioo {57.8〕 85.24 (54・1)

そ)・!重9宮Ψ91室ξ邑。{8e干害faユ団彗a昌晒=e画ε麩tミi・

妻49から明らかなように,エステルのグラフトポリマーは特にベソゼソ,

四塩化炭素にかなワ溶解し,しかも膨潤度ははなはだ大きく,グラフト率が低

いと分散し測定不能となる。グラフトポリマーの外観は両者ともグラ・ブト率の

低いものはゴム状であるが,グラフト率50%前後(アグリロイルーε一アミ

ノカプロン酸グラフトポリマー)となると透明のあめ状で弾性は乏しくなる。

総 括

天然ゴムヘのアグリロイル系アミノ酸のグラフト重合を行った。モノマーと

しては,メタクリロイルグリシン,メタクリロイルグルタミン酸,アグリ1コイ

ルーβ一アラニン,アグリロイルーγ一アミノ酪酸,アグリロイルーε一アミ

ノカプロン酸,ならびにそのエステル,さらに,これらとの比較の基礎となる

アクリル酸,メタクリル酸を使用した・

一128一

Page 133: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

その結果,重合溶媒としては大部分の場合,天然ゴムとアグリロイル系アミ

ノ酸の両者を溶解させる溶媒がなく,トルエンージオキサン混合溶媒を使用し

たところ,その組成比は1:1~2:1が適当であった。ただし,アクリル酸、

メタクリル酸およびA一ε一A cap,さらにはエステル体に関しては,溶媒とし

てはトルエンが適当であった。開始剤としては,大旨BPOが有効であったが,

アクリル酸ではA I BNも有効であり,また,A一β一A1a-0E tの場合は

A I BNが有効で、B P Oではグラフト化が起こらなかった。そして,A一γ

一Abut-OEtではBPO,AI BN両開始剤ともグラフト化は起らなかった。

重合温度は,Ml-G1yでは60~80℃が適当であったが,その他のモノマー

の場合には80~100℃が適当であワ,特にエステル体の時には100℃が

良好であった。グラフト率はモノマー濃度上昇に伴って増加した。また,グラ

フト効率は,アクリル酸では90~95%,メタクリル酸では約60%,M1-G1y

では約30%,M1-G1y-OMeでは約70%,M-G1y-0Et。,M1-G1y-OPr

では約40%,M1-G1u,.M-G Iu一(0Et)2では約50%,A一β一A1a,

A一γ一Abut,A一ε一Ac&pでは45~50%であった。

得られたグラフトポリマーは,グラフト率の高いポリマーほど,ベソゼソ中

での膨潤度と溶解率は小さく,水およびエタノール中では大きくなった。この

傾向はメタクリル酸の方がアクリル酸よりも,M-G1yの方がM-G1uよワも

大きい。しかし,この傾向は,アミノ酸のメチレン基数を増すとほとんど見ら

れなくなり,A一ε一Ac a pでは逆にベソゼソ,四塩化炭素中での膨潤度は大

きく,またその溶解率もわずかに低下する程度であった。そして,かたさもグ

ラフト率の高いポリマーほど大きいが,アミノ酸基のメチレン基数が増すほど

その程度は小さくなる。

エステル体・より得たグラフトポリマーについては,M1-G1y-ORの場合,

グラフト率の高いポリマーほど膨潤度はわずかにメタノール中では大きく,ベ

ソゼソ中では小さい,M-G1u一(0Et)2においては,グラフト率の高いポリ

マーほどベソゼソ,四塩化炭素中での膨潤度,溶解率はかなり大きく,その傾

向はM1-G1y-0Rに比べて著しく顕著である。A一ε一A・aザOEtのグラフ

一ユ29一

Page 134: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

トポリ.マ.一は,一般にベソゼソ,四塩化炭素にかなワ溶解し,しかも膨潤度は

はなはだ大きい。また,エステル基の炭素数が増すほど,グラフトポリマーの

ベソゼソ中での膨潤度と溶解率は大きくなった。そして,かたさは,グラフト

率に比例して増大し,ゴム状から塊状体となる。ただし,エステル基の炭素数

ならびにアミノ酸基のメチレン基数を増すにつれ柔軟となる傾向を示し,軟化

温度も低下の傾向を示した。

一130一

Page 135: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

文 献

1) G.F.B1oomfie1d,F.M.Merrett,E・J・Pophan 包nd P・Mc・L・

Swift, 児mω〃W〃〃, 131,358(王954)一

2)D.J.Angier andW.F.Wとtson,∫.Po~伽.,Scづ.,29.

1140(195.6).

3)国沢新太郎,箕浦有二,日本ゴム協会誌,33,5(1960).

4)香西保明,日本ゴム協会誌,34,920(1961).

5)香西保明,秦 栄三,池田能幸,日本ゴム協会誌,43,477(1970)、

6)香西保明,山崎慎一,日本ゴム協会誌,44,370(197ユ)一

7)迫田直一,小稲則夫,日本化学雑誌,87.1087(1967)一

一13!一

Page 136: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

第4章キレート樹脂としての応用

1.緒 言

ポリーε一アグリロイルリジンは側鎖にアミノ酸の両性基を有することよワ,

1)一その機能性が期待される。これに関連しては,既に,MoraWetZ bによるポリ

ーε一メタクリロイルリジンと銅イオンとのキレート平衡状態に関する分光学的

研究や,Rogozhin2)らによるポリー〔4一(5一アミノー5一カルボキシルペソチ

ルアミノメチル)〕スチレンのCu2+,Ni2+キレートによる光学分割が検討さ

れている。さらには,ポリスチレンから誘導したグリシン樹脂3)やアスバラギ

1/酸樹脂4)などの樹脂が合成され,その錯化学的挙動が報告されている。

’ 本章においては,ε一アグリロイルリジン(A-Ly。)とN,W一メチレンビ

スアクリルアミド(M1B A)との共重合によりキレート樹脂を合成し,その金

属イオンの吸着性について検討を行った。

2.実 験

2.1 試 料 5) A-Lysは第2章と同様にして合成した。MBAはMagatらの方法によりア

クリロニトリルとホルマリンより合成し,・np181~182℃のものを用いた。

その他使用した試薬は市販特級品をそのまま使用した。なお,金属塩はCu2+

のみ硫酸塩,その他は硝酸塩を用いた。

2.2 樹脂の合成

A-Ly。とMB A(A-Ly・に対して10wt%使用)を水に溶解し,開始

剤としてアゾビスイソブチロニトリルのメタノール溶液を加え,窒素置換し,

60℃で重合させ,ほぼ定量的に樹脂を得た。得られた樹脂は乾燥後,48メッ

シュに粉砕して使用した。このものの膨潤度は2.0~2.3であった。

一133一

Page 137: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

2.3 金属イオンの吸着及ぴ脱着

A-Lys樹脂による各種金属イオンの交換容量の測定はパッチ法によった。

すなわち,CIark-Lubs氏の緩衝液に,それぞれの金属塩を溶かして一定濃度

とし,これに樹脂O.5gを加え,4時間がくはんした後,上澄み液をキレート

滴定法により定量し,樹脂に吸着された各金属イオンの量を求めた。吸脱着は

カラム法により,樹脂2gをイオン交換水で浸漬し,直径7㎜のガラスカラム

に充てんした。そして前記と同様に調製した金属イオンを含む溶液を通液した。

溶出液として希塩酸を使用した。

3.結果と考察

3.1 A-Lys樹脂の各種金属イオン吸着能

3.1.1 バッチ法による交換容量 川 2+ 2+ ^ 2一← ( 2+ 2+

Uu,Ni,し。,しa,Mlg の各金属イオンについて交換容量をpH

1~7の範囲で測定した結果

を図97に示す。図からも明

星30ξ

{208焉

連10茎

2 4 6 8

PHFig.97.E価ect of pH on tbe adsorption of various

metal iOnS.

らかなように,いずれの場合

もイオンの吸着性は鋭敏な

pH依存性を示した。

3.1.2 カラム法による

吸脱着

交換容量以下の各金属イオ

ンをカラムに通し,希塩酸で

溶出した結果を妻50に示す。

Cu2+の場合,吸着帯はカラム上部に認められ,水洗いしてもその位置は変

化しなかったが,2M-HC工でCu2+はほぼ100%溶離された。このときのpH

3.07の場合の流出液を1r・4すっ分取した溶出曲線を図98に示す。

凹134一

Page 138: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

Ni2+(pH4.07),C02+(pH3.58)の場合,両イオンともカラム全体

に広がり,水洗いのみで100

T.bユ。50.Ad、。、pti。、、。d。】、d。。。fm,t.li。。。 %溶離された。しかし,Ni2+

Meta1 Loading Meta1 Meta1乱〕ion pH solution adsorbed eluted

(㎜Ol) (㎜01)(㎜01)Cu2+

Cu2+

Co里十

Co里十

Ni2+

Nj2+

Hg2+

3,07

3,92

3,58

5,41

4,07

6,08

0.70

5,63

4,72

1,26

2,22

2,47

4,98

0.429

5,63

4.72

0

2.22

0

4,98

0.429

5,62

4,70

2,20

4,97

0.420

ユ〕固ution,2M-HCI or6〃一HCI(Hg三十)

^20E三〇ε

ε

仁○

左108……

o○

亜コ

o 5 10 15 20

Ef続口ent VO池me (m一)

亙ig.98。日ution curve of Cu繧十with2M-HCL

(PH6.08),C・2+(PH5.41)

の場合,両イオンともカラム

上部にのみ吸着帯が認められ,

水洗いでもその位置は変化し

ないが,2M-HCZで両イオ

ンとも100%溶離された。ま

た,Cc山一のpH6以上の場合,

2M-HCZでほとんど溶離せ

ず,熱4W-H.SO。を用いて

34.3%が溶離したのみであ

った。

2+ Hg の場合は,pH O.7の

硝酸水溶液に溶解し,カラム

に通した。そして,溶出液と

して6M-HCよを便用して

97.8%溶離された。

以上の結果より,A-Lys樹

脂と各金属イオンの錯体が安定に存在するpH領域に差異があるところから,

溶出液のpHを変化させれば,金属イオンの定量的分離が可能であると考えら

れるので,以下の実験を行った。

3.2 Cu2+とNi2+及びCu2+と恥2+の分離

3.2.1 Cu2+とNi2+の分離

両イオン1m mo1を水に溶かし,緩衝液でpH3に調整し,カラムに通した。

0135一

Page 139: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

この時,Cu2+の吸着帯はカラム上部のみに認められたが,Ni2+はカラム全体

に広がった。ついで水洗いし,流出液をO12ml/minの速度で1m lずつ分取

した。この時Cu2+の吸着帯には全く移動は認められなかった。そして,Ni2+

がカラムから全く消失してから,2M-HC2を溶出液として同速度でCu2+の溶

離を行った。その結果は図99に示すように,両イオンを完全に分離すること

ができた。この時の錯解離

2+ ,3.2,

10 20 30 40

I≡≡fH口ent Ψo胞I掘e -m”

}i9’ 99.Separation of Cu里十and Ni招十:C口2+,1

㎜ol;N1里十,1㎜ol;pH,3.0;品。w互ate,0.2m〃

min;elutign,H里O(Ni2+)or2〃一HO(Cu2+).

50^ i…

ぷ40書 τε

930X

o20.9 為

冨102 8 2・ ≡;

10

ε Σ o ε § b x { 篶 .9 富 轟 9 8・ 2 耐 20 2 山 1…f刊uent Ψol口mo‘mI〕頂ig・ 1CO・Sepamtion of Cu雷十肋d Hg里十:Cu田十,1

㎜o1;Hg2+,1㎜ol;PH,1.0;How1ate,O.2m〃 mh;e1ution,O,5jV-HCI(Cu2+)or4N-HC1(Hg里十).

pH値(DpH)はNi_一 @ワ十Cu一 CO.4であった。

3.2.2 Cu2+,Hq2+の

分離

pH1.Oの硝酸水溶液に両

イオン1mmo1を溶かしカラ

ムに通した。この時Cu2+はカ

ラム全体に広がった。O.5M

-HC’を溶出液として,0.2

m工/minの速度で1m6すっ

分取し,Cu2+の溶離を行った。

Cu2+がカラムから全く消失し

てから,4M-HClを溶出液

として,同一速度でHg2+の

溶離を行った。その結果を図

100に示す。Cu2+とHg2+が

わずかに同時に溶出する部分

を除けばほとんど純粋な両イ

オンが得られた。 この時の

2+ 2+DpHはCu,1.9,Hg,O.2であった。

なお,同樹脂によるアミノ酸の光学分割について, DL一プロリンの銅錯体

一136一

Page 140: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

を通し,水を溶離液として分取し,施充分散から,わずかにD一体>ト体で

あることが認められた。

総 括

両性基を含むε一アグリロイルリジンから架橋剤としてw,パーメチレソビス

アクリルアミドを用いてキレート樹脂を合成し,この樹脂の各種金属イオン

(Cu2+,Ni2∴Co2+,Ca2+,Mg2+)に対する交換容量をバッチ法で,また,

吸着を,Hg2+,Cu2+,Ni2+,Co2+の各金属イオンを用い,カラム法で検討し

た。その結果,吸着性は鋭敏なpH依存性を示した。また,Cu2+とNi2+およ

びCu2+とHg2+との分離を試みたところ,ぽぽ100%達成された。

文 献

1) H・Morawe tz and E・Sammak,∫P物s.Cんe伽。,61.1357(1957).

2) S・V・Rogozhin・I・A・Yamsnkov and V・A・.Ravankov,γV8oん。肌。{.

∫oedづ仇.,∫eγ、B.16,847(1974).

3) K.Schlbgl and H.Fabitschowitz,”o伽tsん.Cんθ肌.,85.1223

(1954).

4) R.A.1V【ock,R.C.Ca且kins and C.A.MarshaH,U.S.Patent,

2980607 (1961), 3089079 (1961).

5) F.E-Magat and B,F.Farie,∫A肌.0ん舳.∫oc.,73.1028

(1951).

一137一

Page 141: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

結 論

アグリロイル系アミノ酸のラジカル重合ならびにその応用に関する研究につ

いて第1章から第4章にわたって論じてきた。

その結果つぎのようなことを明らかにすることが出来た。

第1章においては,アグリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,β一アラ

ニン),メタクリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,β一アラニン,グル

タミン酸)の有機溶媒中におけるラジカル重合を詳細に検討し,重合条件と重

合率および極限粘度との関係を明らかにした。その結果,溶媒としてはジオキ

サンが有効であり,開始剤としてはB P Oが最適であり,A I B N,L P Oも

有効であった。また,開始剤およびモノマー濃度ならびに重合温度と重合率,

極限粘度との関係,さらには重合における酸素の影響より,アグリロイル系ア

ミノ酸のラジカル重合挙動は通常の酸素抑制型ビニルモノマーのそれと類似す

ると結論される。さらに比較のため,側鎖に第3アミン基を有しアミド結合し

た塩基性モノマーであるN一(2一ジエチルアミノエチル)一アクリルアミド,

一メタクリルアミドの重合を試みたところ,その挙動に顕著な相違は認められ

なかった。

第2章においては,アグリロイル系アミノ酸の水溶液重合を,モノマーのア

ミノ酸種を種々変化させ,過硫酸アンモニウム,アゾビスイソブチロニトリル

などを開始剤とし,主として重合速度のpH依存性について詳細に検討した。

その結果,アグリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,β一アラニン,γ一ア

ミノ酪酸,ε一アミノカプロン酸)においては,重合速度が酸性領域では両開

始剤ともアクリル酸などと同様にpHの増大に伴って減少するが,アルカリ性

領域では,モノマー種,開始剤種によってかなり異なることを見出し,その理

論的考察として,酸性領域では解離モノマーの生長マクロラジカルヘの付加が

未解離モノマーに比べて遅く.アルカリ領域では結合したアミノ酸のメチレン

基数が増大するほど,カルボキシル基の解離定数が変化,対イオン固定度に差

を生じるためであり,さらには開始剤の分解速度にも一部依存するものと推察

一139一

Page 142: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

した。

メタクリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,一DL一アラニン,DL一バ

リン,β一アラニン, ε一アミノカプロン酸)の場合は,両開始剤とも先のア

グリロイルアミノ酸とは全く異なワ,酸性領域ではpHの増大に伴い重合速度

も増大するが,アルカリ性領域ではほぼ一定であった。これはビニル基に結合

したα一メチル基の超共役効果によりQ値が大きくなり生長ラジカルの反応性

が低下したためであワ,酸性から中性にかけての重合速度の増加は,生長マク

ロラジカルの静電反発による停止速度定数の減少によるものである。さらに,・

重合速度が結合したアミノ酸種と開始剤種により異なるのは・値の差に基づく

ことを明らかにした。

ジカルボン酸モノマーであるメタクリロイルグルタミン酸の場合は,両開始

剤とも先のメタクリロイルアミノ酸の場合とはかなり異なる挙動を示すことを

認め,これはカルボキシル基の解離によるイオン反発,さらには側鎖のかさ高

さ,ならびに1,1一ジ置換エチレンの立体効果に基づくことを明らかにした。

両性モノマーであるε一アグリロイルー,ε一メタクリロイルーリジンの場

合も,アグリロイルー,メタクリロイルーアミノ酸と同様にα一メチル基の影

響が顕著であり,さらに開始剤種の影響も大きいことを認めた。これは静電的

相互作用の異なることが大きな原因であることを明らかにした。一方,カルボ

キシル基の解離によりe値が正に大きくなること,また側鎖のかさ高さも起因

していると推察した。そして,この系で用いたメタ過ヨウ素酸ナトリウムを開

始剤とする重合は,メタ過ヨウ素酸ナトリウムのアニオン種がモノマー分子に

配位して,コンプレックスを形成し,開始されるラジカル重合であることを見

出した。

さらに,比較のためN一(2一ジエチルアミノエチル)・アクリルアミドおよ

び一メタクリルアミドについて検討し,アグリロイル系アミノ酸の重合挙動と

は異なることを認めた。なお,この原因は第3アミン基と過酸化物とによるレ

ドックス分解によると推察した。

第3章においては,応用研究として,天然ゴムの改質を目的とし,アクリロ

■140一

Page 143: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

イル系アミノ酸およびそのエステルのグラフト重合を試みた。モノマーとして

は,アクリル酸とメタクリル酸を始めとして,その誘導体であるアグリロイル

アミノ酸(アミノ酸:β一アラニン,γ一アミノ酪酸,ε一アミノカプロン酸),

メタクリロイルアミノ酸(アミノ酸:グリシン,グルタミン酸)およびそれら

のエステルを使用し,天然ゴムヘのグラフト重合の反応条件を詳細に検討し,

それぞれの最適条件を確立した。さらにはグラフトポリマーの物性についても

調べた。その結果,溶媒としては,トルエンージオキサン混合溶媒あるいはト

ルエンが適当で,開始剤としては主としてB P Oが有効であり,重合温度は

80~10ポCが適当であることが認められた。

そして,一般にグラフト化はアグリロイルアミノ酸の方がメタクリロイルア

ミノ酸より起こり易い。またグラフト率はモノマー濃度上昇に伴って増加した。

得られたグラフトポリマーは,アグリロイルー,メタクリロイルーアミノ酸

の場合,グラフト率の高いポリマーほど,ベンゼン,四塩化炭素中での膨潤度,

溶解率は小さく,水,エタノール中で大きかった。この傾向は,アミノ酸の炭

素数を増すにつれ見られなくなり,アグリロイルーε一アミノカプロン酸を用

いると逆の傾向が認められた。また,かたさはグラフト率の高いポリマーほど

大きいが,アミノ酸基の炭素数を増すにつ札小さくなった。

エステル体より得られたポリマーは,一般にグラフト率の高いポリマーほど,

ベソゼソ,四塩化炭素中での膨潤度,溶解率は大きく,アミノ酸基ならびにエ

ステル基の炭素数を増すほどこの傾向が大きくなることが認められた。また,

かたさはグラフト率に比例して増大し,ゴム状から塊状体となる。ただし,ア

ミノ酸基ならびにエステル基の炭素数を増すにつれ柔軟となる傾向を示した。

/ 第4章においては,ε一アグリロイルリジンとM,N一メチレンビスアクリ

ルアミドとを共重合させキレート樹脂を合成し,その金属イオン吸着性につい

て検討した。その結果,吸着性は鋭敏なpH依存性を示した。また,Cu2+と

Ni2+およびCu2+とHg2+の分離を試みたところほぽ完全に行なわれることを

認めた。

一ユ41一

Page 144: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

謝 辞

本論文の作成にあたり御懇篤なる御教示と御厚情を賜ワました大阪大学工学

部教授竹本喜一博士,同教授阿河利男博士,同教授園田昇博士に深く感謝の意

を表しますとともに,厚く御礼申し上げます。

本研究を行うにあたり終始御懇篤なる御指導と御鞭錘を腸ワました甲南大学

理学部教授香西保明博士に深く感謝し,厚く御礼申し上げます。

さらに本研究を行うにあたり種々御教示,御協力を戴きました甲南大学理学

部応用化学科,化学科教員の方々ならびに教室員学兄に深く感謝の意を表しま

す。

なお,研究の一部は文部省科学研究費補助金の助政的援助を受けたことを付

記し謝意を表し・ます。

一143川

Page 145: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

論 文 目 録

1.本研究に関する発表論文

1) アグリロイルグリシンおよびメタクリロイルグリシンのラジカル重合。

渡辺煕,香西保明,池田能辛,日本化学雑誌,.91,874(1970).

2) 天然ゴムヘのアクリル酸およびメタクリル酸のグラフト重合。

香西保明,池田能幸,山崎慎一,日本ゴム協会誌,44,375(1971).

3) 天然ゴムヘのメタクリロイルグリシンおよびそのエステルのグラフト

重合。

香西保明,池田能辛,高橋章,日本ゴム協会誌,44,425一(1971).

4) 天然ゴムヘのメタクリロイルーL一グルタミン酸およびそのジエチル

エステルのグラフト重合。

香西保明,池田能幸,村田博幸,日本ゴム協会誌,44,923(1971).

5) 天然ゴムヘのW一アグリロイルーω一アミノ酸およびそのエチルエステ

ルのグラフト重合。

香西保明,池田能幸,友国治隆,日本ゴム協会誌,45.1081(1972).

6) 過硫酸アンモニウムを開始剤とするメタグリロイルグリツソの水溶液

申での重合。

香西保明,池田能幸,藤井茂,高分子化学,30,99(1973).

7) Po1ymeri zati on of N一(2-Diethy1aminoe thy1)一acry1amide and

-methacry1amide.

Y.Ikeda,Y.Kδza i,Me伽。伽8Ko%αmσ%”.,8c4.8eヅ.,

18,23(1975).

’8) アグリロイルアミノ酸の水溶液重合。

池田能幸,上野邦弘,吉田肇,香西保明,高分子論文集,38,515(1981).

9) メタクリロイルアミノ酸の水溶液重合。

池田能幸,西村和雄,河田政広.香西保明,高分子論文集,

38,781 (1981).

一144一

Page 146: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...アグリロイル系アミノ酸のラジカル 重合に関する研究 1984年 池 田 能幸 次 緒 言… 1 第1軍 アグリロイル系アミノ酸の溶液

10) メタクリロイルグルタミン酸の水溶液重合。

池田能幸,甲南大学紀要理学編,28,」15(1982).

11) ε一アグリロイルー,ε一メタクリロイルーリジンの水溶液重合。

池田能幸,村上慎次,香西保明,高分子論文集,39,435(1982).

12) 両性基を含むキレート樹脂の金属イオン吸着能。

池田能幸,山本博正,香西保明,高分子論文集,39,579(1982).

n.本研究以外の発表論文

1) 塩酸ゴムヘのアクリロニトリルのグラフト重合。

香西保明,秦栄三,池田能幸,日本ゴム協会誌,43,477(1970).

2) グリシンアミドおよびDいアラニンアミドの熱重縮合。

香西保明,池田能幸,吉田公一,生垣幹男,高分子論文集,

31, 41 (1974).

3) 2,4一トリレソジイソシアナートおよび2,6一ジイソシアナートカプ

ロン酸メチルとモノメチロールアセトンとの反応速度。

香西保明,池田能幸,小南実,高分子論文集,31,356(1974).

4) The Therma1Po1ycondensa七ion of G1yc i ne in the Pre sence of

Urea.

Y-K6zai,Y.Ikeda,M.Yoshida,Bm“,0んe肌.∫oc.∫αραm,

47.3125 (1974).

5) アンモニア水の存在下におけるピペラジソー2,5一シオンの開環重合。

香西保明,林信夫,池田能幸,高分子論文集,32,49(1975).

6) ナトリウムーナフタレンによるメタクリルアミドの水素移動重合。

香西保明,池田能幸,木下裕,高分子論文集,35,345(1978).

一145一