札幌sv会報告 - jica€¦ · ペナンにおいては、感覚的にマレー系が4 割、中...
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■マレーシアってこんなところ マレーシアで一番大きな都市クアラルンプールとペナンしかまだ知らないので、私の理解不足で間違いがあ
るかも知れませんが、そこはご容赦ください。 ご存知のようにマレーシアは 2020 年までに先進国入りすることを国家目標として掲げる中進国で、特にク
アラルンプールは高層ビルが立ち並び、先進国と見間
違うほど開発はかなり進んでいる。道路、水道・電気
や街中のインターネットに至るまで生活インフラが整
備され、停電することも断水することもほとんどない。 街には自動車と
バイクがあふれ、
車はほとんどどれもきれいだ。病院さえ日本と変わらない設備を備え
ている。
マレーシアは多民族国家で、クアラルンプールや
ペナンにおいては、感覚的にマレー系が 4割、中華系が 3割、インド系が 2割くらいの比率かと思う。宗教もイスラム教の他、仏教、キリスト教、
ヒンドゥー教など様々。複数の宗教施設がすぐ隣
に並んでいるなんて光景も良くある。各民族/宗教がお互いの文化の違いを認め合い、干渉しないよ
うにしながら、でもほとんど交わることなく平和
に過ごしている。
Vol.1 2017/02/09
マレー語が公用語だが、私が知るこれら二つの都市では多
くの人が英語を話すことができ、中国語での会話もよく耳
にする。かたことの日本語をしゃべる人も少なからず居る。
人々は温和で親切で、大変親日的である。ASEAN諸国の中でも目覚ましい経済発展を遂げたこの国では、日系企業
の看板や製品を目にすることも多い。日本がこれまで行っ
てきた開発協力、貿易、投資が相乗効果を発揮し、その発
展に大きく寄与していることがわかる。
マレーシアの食べ物はマレー系、中華系、インド
系やタイやベトナム料理など種類が豊富でしかも
安くておいしい。 またペナンは世界遺産ジョージタウンを始めとし
て島のあちこちに観光スポットがあり、たくさん
の外国人旅行者が訪れている。
■マレーシアに政府開発援助が必要なのか?私の活動意義は? マレーシアに来て数日間はこの環境
に浮かれていたが、すぐに「ここは
二本松訓練所で想定されていた一般
的な開発途上国のイメージとはずい
ぶん違うぞ」と思うようになった。 正直な所、いわゆる途上国といわれ
る国々に派遣された JICA ボランティア仲間の Facebookへの投稿には、水が無い、久しぶりに電気が通じた、
大量の虫やネズミ、部屋はカビだら
け、、、それらの投稿を見るたび、こ
の恵まれた環境の写真を投稿する事が憚られた。 一方で、そしてこの国に開発援助なんて必要なのだろうか、税金で私がこの国に派遣された意味は何だろう、
それに応えるために何ができるだろうと、その後 2か月ほど考え続けていた。実際、JICAもこの国への援助額を減らしているし、過去には援助終了という話もあったようだ。 私は日本がマレーシアに政府開発援助を行う意味をいろいろ調べてみた。それについての答えは直ぐに見つ
かったが、自分がこの国に派遣された意義、それに応えるために自分は何ができるのか?に対する納得のい
く答えが出るまでには、派遣先に着任後さらにもう少し時間が必要だった。 ■派遣先について 話しは前後するが、日本を発ってから最初の 1か月はクアラルンプールでマレー語の語学研修を中心に、任国事情に即した安全講習、各種オリエンテーションなどの講義を受けた。 その後派遣先である JMTI(日本・マレーシア技術学院)に着任した。JMTI は国内に32 校ある人的資源省労働力局管轄下の国立職業訓練学校の一つで、その中で唯一、日
本とマレーシアの両政府の合意に基づき
1997年に設立された。設立にあたって日本から多くの資金、設備・機械と専門家等の
人的協力が投入された。 JMTIはペナン州ブキット・ミニャック工業団地に位置し、その設立目的は電子、コン
ピュータ、生産及びメカトロニクスの先進
技術分野において日系企業やマレーシア産
業界のニーズに応えるべく、より高いレベ
ルの熟練した訓練プログラムを通じて質の高い熟練労働者を育成し、技術の急速な進歩に挑む学生を送り出
すことと、地域産業、特に中小企業の発展を支援することである。
JMTI では職業訓練校だけに技術に関する単なる知識だけでなく実践力を養うことに
も重点を置き、さらに日本語教育の他、5Sや改善といった日系企業独特の文化を教え
ている点がユニークだ。また入学基準も他の
国立職業訓練学校より厳しく、ディプロマ
(准学士号)取得コースだけでなく、アドバンスド・ディプロマ取得コースを提供している
点も JMTIの特長である。 私は JMTI のコンピュータエンジニアリング学科に配属され、第一の主要テーマは日本
から JMTI へ組込みシステム開発に関する技術移転をすることであり、それは JMTIの明示的なニーズ(要請)である。 組込みシステムというのは、例えば携帯電話、液晶 TVや CTスキャナなどの医療機器等、マイコンを使った特定用途向け電子機器の総称である。今やマレーシアでも組込みシステムは欠くことのできない技術であ
るが、その開発・設計は主に先進国で行われ、マレーシアではその製造を手掛けているようである。私は JMTIの組込みシステムのシラバスを改定し、その指導に当たるインストラクターを育成・助言して、学生達がそ
の開発・設計に携わることができるようになることを目指したい。 また私は JMTIで現状把握を進め、カウンターパート、校長先生や同僚たちと話をするなかで、彼らの潜在的
なニーズに気が付いた。それは、この地に進出してい
る日系企業との関係を強化したいというというもので
ある。設立後 20年の月日が経つうちに、日系企業でインターンシップ(実務研修)したり、就職したりする
学生がいなくなり、日系企業との産学協同プロジェク
トも行われなくなっていた。JMTI の外部・内部からはこの現状を指して、なぜ今も JMTI の名前にJ(Japan)が付いているのか、どこが Japan たる学校活動なのかと問われ、その答えに窮していると校長先生が心境を話してくれた。 ■第二の主要活動テーマ
私は自分の第二の主要活動テーマとして、JMTIと日系企業との連携強化を取り上げることにした。 JMTI の優秀な学生がインターンシップあるいは就職先として日系企業で働くという構図は、JMTIの設立目的にも合致し、従来の援助国・被援助国
との垂直的な関係ではなく、二国間の利益を追求
するために協力を行う、水平的な真のパートナー
としての関係という新たな開発協力の一つのモデ
ルになると考えた。
■マレーシアに日本の政府開発援助が必要な理由と私の活動意義 ここで、もう一度それらについて整理しておこうと思う。 マレーシアは日本の安全、経済に重要な国の一つである。 ・安定した穏健イスラム国家として国際的な発言力が高い ・マラッカ海峡の沿岸国として地政学的に重要 ・日本の主要な天然ガスの輸入先である ・多くの日系企業が進出するなど経済的重要性が高い また、経済的、人的な強いつながりがある親日国である点も重要なポイントである。 私のこの国での活動意義は、
・経済活動の高付加価値化:マレーシアが 2020 年に先進国の仲間入りをする上で重要なのは国内経済活動の高付加価値化である。 マレーシアで国内のニーズに合った組込みシステムの開発・設計がで
きれば、高い付加価値を生み出すことができる。 ・日本とマレーシア、二国間の利益を追求するための水平的な真のパ
ートナー関係の構築。 特に JMTI は日本の協力(=税金)を得て設立された高等職業訓練校であり、日本の理解を含む指導内容が組まれている点で、日系企業との
Win-Winな関係を築き、連携強化を推進するベストな位置にある。
■現在の活動状況 組込みシステムについては、現行のシラバスや関連科目
のシラバスを精査し、何を教えているのかを理解した。
またインストラクターや組込みシステム科目を受講し
た生徒、また地元の組込みシステム関連企業にヒアリン
グを行い、課題や改善点、ニーズを把握した。現在シラ
バス改定に向けて、指導内容項目のピックアップと構成
の検討を始めた。 日系企業との連携強化についても、手を打ち始めてい
る。 年末から年始にかけ、日本大使館や総領事館主催の各種
パーティがあり、こちらに進出している日系企業の方々
と名刺交換をする機会が何度かあった。この機会を利用して、日系企業とのコンタクトを取り始めた。 また来週は、JACTIM(マレーシア日本人商工会議所)にも伺って JMTIのご紹介をする予定である。