■事例研究②

札幌駅南口地下街増改修工事

佐々木薫

KAORUSASAKI(㈱ア-ル・ビ一番市建築設計)

はじめに

札幌市が中心となり,札幌駅周辺整備事業構想

による札幌駅南口広場の拡張整備に合わせ,既存

地下街の有効利用を図ることで計画された。特に

歩行者ネットワークの再構築を図ることにより,

交通ターミナル間の連携強化,地上交通の円滑化,

積雪寒冷地における歩行者の安全,かつ快適な通

行の確保を目的として,都市機能の向上を目指す

ものである(写真11,写真-2,図-1)。

1.建物概要

名称札幌駅地下街増改修工事

所在地札幌市中央区北5条西3丁目,4丁目

事業主札幌駅地下街開発㈱

設計監理日本設計・アール・ビ一都市建築設

計DAIMARU

写寛一1　広場4

井上安市近藤剛司

YASUICHIINOUETSUYOSHIKONDOH(㈱アール・ピー都市建築鞄計)

施　　工

〔建築(増設工区) 〕

〔建築(改修工区) 〕

〔電気・防災設備〕

〔空明設備〕札交機

(㈱アール・ピー都市建築設計)

伊藤・札建・清水・熊谷JV

伊藤・大林・大成・鉄建・札

建・JRビルトJV

ドゥデン・電設工特定建設工

事JV

・高砂・ダイダン・東熱特定

建設工業JV

〔給排水設備〕西原・池田特定建設工事JV

〔ガス設備〕北ガス㈱

〔昇降横設備第1工区〕㈱東芝

〔昇降機設備第2工区〕槍下電器産業㈱

〔昇降樺設備第3工区〕㈱日立製作所

工期平成10年5月～平成11年9月

地域地区商業地域,防火地域,高度利用地区,

駐車場整備地区

敷地面積19,720.28mz

建築面積1,024.74m2

延床面積29,810.0m2

3階248. 5m2

2階248. 5m2

1階1,705.4m2

写鳶-2　広場6

2000蝣5蝣建築設備士　　43

図-1　地下1階平面図

地下1階22,131.2m2

地下2階5,476. lm2

建ペい率5%(許容80%,耐火100%)

容積率149%(許容800%)

用途別公共地下歩道12,418.3m2

店舗9,381.2m2

駐車場1,105.0m2

防災センター60.0m2

バス発券所70.8m2

機械室その他6,774.7m2

階数地下2階,地上3階

構造鉄筋コンクリート造,一部鉄骨・鉄筋

コンクリート造,鉄骨造

地下街床高5.5m

駐車台数27台

地上への階段23カ所

ドーム構造システムトラス構造,側面DPGテン

ショントラス工法(倍強度ペアガラス),

断熱トップライト(複層ガラス)

店舗区画数107区画(複合店舗3区画)

昇降横エレベーター6台,カーリフト1台,

エスカレーター6台

2. 電気設備概要

隣接ビルである札幌ターミナルビルとの設備共

用受電方式を採用しており,地下街においては,

高圧配電方式である。 照明については,全体面積

の1/2以上が公共通路となっており,基本照明

として蛍光灯を主としている。 点滅については夕

〟建築設備士2000・5

イマ一による段階的に制御を行うとともに,外部

と接している部分については昼光センサーを組込

み,スケジュール点灯を行い,ランニングコスト

の低減を図っている(図-2)。

受電方式SNW3回線受電,札幌ターミ

ナルビルとの設備共用受電

主変圧器3¢3W33kV

5,OOOkVAx3台

配電方式3¢3W6.6kV2回線受電用

3^3W210-105V電灯,コ

ンセント

3¢3W210V動力

1¢2W105V非常照明

変圧器容量東電気室3,400kVA

西電気室2,850kVA

自家発電設備3め3W6.6kV-l,000kVAx

l基

ディーゼルエンジン×1基

直流電源装置据置型密閉式鉛電池(HS400)

×2基

(l)照明設備

本地下街は東西に260mと長大であり,かつ公

共地下歩道である。

商業施設の照明計画としては,

快適で安全な明るさなどの機能性と5つに分けら

れた街並みの表情を演出する仕上げと多彩な光源

の組合せによる環境計画,そして,自然光を明る

く爽やかに取込む広場照明,、また,省エネや自然

に優しいエネルギーの供給と還元の角度からも貢

献できる計画を目標としている。

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図-2　電気設備単線結線囲

写真-3中央監視室

基本照明ダウンライト,光天井,間接照明

演出照明建築空間と一体の照明デザイン,列

柱照明

光源ベースは蛍光灯(FL,FDD

制御グループによるタイマー制御,外部

については昼光センサーおよびタイ

マー制御

(2)中央監視設備

地下2階に監視室を設け,電力,空詞,衛生設

備等の機器の監視,記録,制御等の一元化自動運

転管理を行い,快適で安全な環境を確保するとと

もに,設備管理業務の効率化を図っている。 また,

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一般負荷　　　　　　防汲保安負荷

写真-4防災センター

テナントごとの電気,水道等の使用量も自動検針

を行い,省力化を図っている(写其-3)0

(3)電話設備

テナント専用交換機を設置している。

収容外線INS15003回線(69回線相当)

内線アナログ内線約160国線

デジタル内線約20回線

携帯電話用アンテナ13基

PHS用アンテナ12基

3.防災設備概要

本防火対象物は,不特定多数の人々が利用する

2000・5・建築設備士45

46

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図13　空調設備ダクト系統図

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図-4　空調設備配管系統図

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公共地下歩道

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図-5　排煙設備系統図

大規模地下街であり,これらの施設を利用する

人々の安全を確保するため,建物の利用形態およ

び管理形態等を考慮し,火災の感知,通報,初期

消火,避難誘導,消火活動などの防災活動を迅速

かつ的確に遂行する総合消防防艶システム評価を

受けている(写責-4)c

(1)防災投億項目

日動火災報知設備,非常放送設備,非常照明設

備,誘導灯設備,ITV監視設備,非常電話設備,

消防・警察無線通信補助設備,ガス偏れ警報設備

(2)評価の種別

消防防灸システム評価親程第2粂(1)ウ

(3)評価項目

給合消防防災システム,消火システム[固定式

ヘッド(小型ヘッド)]

(4)防災センターの機能

総合操作盤において,以下の集中管理,制御を

if**

①全館の詳細防災情報(日動火災報知設備,防

排煙設備,ガス漏れ警報設備,非常電話,消

火設備等)の表示および記録

(む全館の消防防災用設備等の制御

2000・5・建築設備士47

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48建築設壷士2000・5

国境喋撃継V監　9I囲

③全館の放送

④全館のエレベーター連行表示,管制,制御,

操作およびインターホン連絡

⑤全館の空気調和設備の表示,制御

4. 空気調和・排煙設備概要

(1)熱源設備

隣接する札幌ターミナルビルより,冷水,温水,

蒸気の暫定供給を受けて,冷温水は変流量方式に

より各空調器・ファンコイルユニットへ供給,蒸

気は(不凍液による熟交換券にて),外気1次処

理・熱源水系の加熱および蒸気加湿用に使用して

いる。 水熱源ヒートポンプユニット用および冷蔵

庫用冷却水として,密閉形冷却塔を設置している。

(2)空的設備

公共地下道系統は,変風量ユニット型(全熱交

換器組込)空調器によるオールエアにて送風を行

っている。店舗は変風量ユニット型(全熱交換器観込)外

気処理空調器で外気冷房を考慮した風量にて送風

し,飲食系は水熱源ヒートポンプユニット,物販

系はファンコイルユニットを設置している(図

-3,図-4)c

(3)換気設備

厨房給気は2次加熱用空調機にて送風し,各排

風機にて排気を行っている。なお,油脂を扱うフ

ードには簡易自動消火設備を付置し,ガス供給管

の連動遮断を行っている。(4)自動制御設備

中央監視室にて空調・衛生の機器の遠操・警

報・監視温度計測および記録を行っている。

(5)排煙設備

広場系統(自然排煙主体(1部機械排煙併用),

公共地下道系統,店舗・バックヤード系統に分け,

それぞれ機械排煙を行っている(図-5c

(6)概器

熱交換器5基(5.2Gcal),密閉型冷却塔150RT

x2台,冷水ポンプ4台,冷温水ポンプ3台,温

水ポンプ4台,冷却水ポンプ3台,選水ポンプ4

台,真空給水ポンプ2台,空調機16台,外気処理

空調器11台,ファンコイルユニット161台,水熱

源ヒートポンプユニット100台,パッケージ型空

調器2台,送排風機70台,誘引フアン4台,排煙

機21台

5. 衛生・消火設備

(1)給水設備

市給水本管より引込み,直結給水方式(150め,

iood>)にて所要箇所へ供給している。

・.2!冶溝設備

便所等の給湯は分散型電気貯湯器により供給し,

飲食店舗等はガス湯沸器および電気式給湯器によ

り個別に供給している。

(3)排水設備

排水は地下2階および1階床下の排水槽(5カ

所),涛水槽(6カ所)に集水し,市下水本管へ

揚水放流している。

(4)ガス設備

北海道ガス本管より引込み緊急遮断弁(200の

を設置して,所要箇所へ供給し,各店舗ごとにマ

イコンメーター設置およびガス連動遮断弁を設置

し,排気と連動を行っている。

(5)消火設備

店舗地下道,倉庫および居室・通路等には高感

度ヘッド使用,吹抜部の広場用には放水ヘッド使

用のスプリンクラー設備,階段部等には補助散水

栓を設置し,また全域に連結送水管設備を設置し

ている(図-6)0

◇　　◇　　◇

(6)特殊消火設備

駐車場には泡消火設備,発電機室は炭酸ガス消

火設備を設置している。

(7)衛生横器

雑用水受水槽3基,給水ポンプユニット3台,

排水ポンプ22台,スプリンクラーポンプユニット

(高感度ヘッド用)1台,スプリンクラーポンプ

ユニット(放水ヘッド用)1台

問17VI声

施工に当たっては,延面積の70%が既存躯体で

あり,地下道の新設,階段の新設および改修(ハ

ードビルド法による),既存躯体の耐震補強,工

事期間における公共地下通路のための地下道切替

え,換気塔,排煙塔,階段上屋等の都市景観規制

等により制約を受けながらの工事となった0また,当新地下街は,隣接ビルである地下鉄さ

っぽろ駅,札幌ターミナルビル(エスタ,札幌そ

ごう),JR札幌駅,札幌ステーション開発(パセ

オ),東急百貨店,住友生命札幌ビル,アスティ45

ビル,読売ビル,伊藤・加藤ビル,および札幌国

際ビルと総合共同防火管理協議会を構成し,組織

的な防火管理体制の維持,防火訓練などを行って

いる。(平成12年3月13日原稿受理)

◇　　◇　　◇

2000・5・建築設備士　　49