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「日本人の食事摂取基準(2015年版)」における重症化予防 について 誌名 誌名 日本栄養・食糧学会誌 ISSN ISSN 02873516 著者 著者 多田, 紀夫 巻/号 巻/号 69巻3号 掲載ページ 掲載ページ p. 101-108 発行年月 発行年月 2016年6月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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Page 1: 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」における重症化予防 に ...(2015 年版)を理解していただくために書かせていただ いた既報の拙著)-3)

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」における重症化予防について

誌名誌名 日本栄養・食糧学会誌

ISSNISSN 02873516

著者著者 多田, 紀夫

巻/号巻/号 69巻3号

掲載ページ掲載ページ p. 101-108

発行年月発行年月 2016年6月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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日本栄養・食糧学会誌第69巻第3号 101-108(2016) 重j

「日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jにおける

重症化予防について

多 田紀夫氏l

(2015年8月28日受付;2015年 10月27日受理)

要旨:このほど「日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jが策定された。この「日本人の食事摂取基準2015

年版」は,わが国の高齢化の進展や糖尿病など生活習慣病の範障にある疾病の増加を踏まえ,平成 25年度

から開始された第2次「健康日本21Jに掲げられた基本概念である主要な生活習慣病の発生予防と重症化

予防の徹底を視野に入れ策定されたものである。ここで述べる「重症化予防」とは,これまでの「日本人の

食事摂取基準」が健康な個人または集団を対象としたのに対しさらに予防概念の範障を広げ,高血圧,脂

質異常症,糖尿病,慢性腎臓病といった生活習慣病の発症リスクを持つ個人あるいは集団に至るまで,すな

わち保健指導レベルに達した領域にある対象者を念頭におき,好ましい食事摂取のあり方を導入するもので

ある。そして,疾患を有していたり,疾患に関する高いリスクを有していたりする個人ならびに集団に対し

て,治療を目的とする場合は,食事摂取基準におけるエネルギーおよび栄養素の摂取に関する基本的な考え

方を理解した上で,その疾患に関連する治療ガイドライン等の栄養管理指針を用いることとなる。このよう

に. I重症化予防」が図られることにより,健常な国民から疾病を有する個人,集固までをシームレスに捉え,

食事摂取のあり方を展開することが可能となった。本稿では「重症化予防」に関わる方策と食事摂取の内容

に言及する。

キーワード:日本人の食事摂取基準,生活習慣病,重症化予防,食事指導,栄養診断

1.はじめに

わが国において国民の健康を保持・増進させ,疾病発

症を予防することを目的に,日本人にとって望ましいエ

ネルギー摂取量および各栄養素摂取量の基準が「日本人

の食事摂取基準」として 5年ごとに見直され発表されて

きた。

このほど. I日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jが

策定され,平成 27(2015)年度から平成 31(2019)年

度の 5年間にわたり使用されることになった。この「食

事摂取基準Jでは平成 17年度以来. Dietary Reference

Intakes (DRI)の概念に基づき エネルギーおよび各栄

養素の摂取量基準が策定されてきたが,とりわけ. I日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jでは,近年我が国に

見られる高齢化の進展や糖尿病有病者数の増加などを踏

まえ,栄養に関連した代謝機能の維持・低下回避の観点

から,従来掲げてきた発症予防に加えて重症化予防も視

野に入れた策定となった(図 1)。

本文は依頼総説であり,あくまで「表題」の趣旨に沿っ

*連絡者・別刷請求先 (E-mail:[email protected]お)

て書きおろしたものであるが, 日本人の食事摂取基準

(2015年版)を理解していただくために書かせていただ

いた既報の拙著)-3)と重複する箇所が生じることを,ご

容赦いただきたい。一方. I日本人の食事摂取基準 (2015

年版)J策定報告書4)の全体像を把握するため,こうし

た総説も参考にしていただければ幸いである。

2.重症化予防とは

これまでの「日本人の食事摂取基準」は健康な個人ま

たは集団を対象とし策定され,高血圧症,脂質異常症,

糖尿病,慢性腎臓病といった生活習慣病の発症リスクを

持たず,保健指導レベルに達しない領域にある対象者を

念頭とするものであった。今回の策定から「重症化予防」

という用語がはじめて現れたが,ここで用いられる「重

症化予防」とはさらに対象者の領域を拡大し,図 2に示

すように高血圧,脂質異常,高血糖,腎機能低下に関す

るリスクを持つ個人あるいは集団にまで予防手段を実行

するためのものである。すなわち,それぞれの保健指導

レベルにあるものに対して食事摂取基準に掲げる内容を

l公益財団法人柏市医療公社柏市立介護老人保健施設はみんぐ

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102 日本栄養・食糧学会誌第 69巻第3号 (2016)

務学的担割早の集積

健康日本21(第2次)の推進〈平成~5-34年度〉主要な生活習慣病(力1ゐ、循環望疾患、糖尿病、∞pω@黍症予防と重症化予防の徹底

図 1 日本人の食事摂取基準 (2015年版)の策定方針4)

健常者

発症予防の目安 重症化予防の目安

図2 I日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jの対象とする個人ならびに集

団の範囲

もとに食生活介入を進め 病態の増悪回避を図る。そし

て,疾患を有していたり,疾患に関する高いリスクを有

していたりする個人ならびに集団に対して,治療を目的

とする場合は,食事摂取基準におけるエネルギーおよび

栄養素の摂取に関する基本的な考え方を理解した上で,

その疾患に関連する治療ガイドライン等の栄養管理指針

を用いることとなる4)。このように. I重症化予防Jが

図られることにより,健常な国民から疾病を有する個人,

集固までをシームレスに捉え 食事摂取のあり方が展開

可能となった。

3.重症化予防のための方策

こうしたことにより,策定に当たっては関連する各種

疾患ガイドライ ンとの融和性も考慮され. I日本人の食

事摂取基準 (2015年版)J策定委員会のメンバーも増員

され. I日本高血圧学会JI日本動脈硬化学会JI日本糖

尿病学会JI日本腎臓学会」のガイドライン作成に関与

した人材が加えられた。そして,食事栄養と生活習慣病

との関連性に関する数多くのリサーチクェッションが新

たに提起きれ,それに基づき関連論文が集められた。そ

れらの論文のピアレビューを経てエピデンス・テーブル

などが作成され. I日本人の食事摂取基準の策定に資す

る代謝性疾患の栄養評価に関する研究5)Jとしてまとめ

られ. I日本人の食事摂取基準 (2015年版)J策定に資

された。

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「日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jにおける重症化予防について

4. 重症化予防のための具体的方法

「日本人の食事摂取基準Jにおいては図 3に示すよう

に栄養素の指標と して 3つの目的からなる 5つの指標が

設けられている。すなわち,各栄養素の役割によって「摂

取不足の回避を目的とする指標である推定平均必要量,

推奨量あるいはこうした値が推定できない場合用いる目

安量J.i過剰摂取による健康被害の回避を目的とする指

標である耐容上限量J.i生活習慣病の予防を目標とする

指標である目標量」が設けられ,それぞれの指標の到達

目標値が策定され公表されてきた。

生活習慣病発症ならびに重症化予防を目的とするため

には,図 3のうち. i目標量」が前面に出ることになる。

しかし食事内容,様式の疾病リスクに対する直接的な

影響や関連性についてはまだまだ解明されていないこと

も多くあり,また「レスポンダー, ノンレスポンダーJで表されるごとく,食事の効用を示す感受性には個人差

が付きまとう。そのため,到達目標値の設定に資するた

めの文献検索には多くの労力が払われたにもかかわら

ず,明確な到達目標値が推定されていないことも多い。

しかし今回の検索によって図 4に示すように,例えば

「心筋梗塞」の発症,増悪にはいかなる危険因子(いわ

ゆる冠動脈疾患危険因子)が関与しそれぞれの冠動脈

疾患危険因子に対する食事の関わり方について次第に明

らかとなり,次章に示すようにエネルギー, 栄養素摂取

と疾病との関連を概念図として表すことができた。こう

した概念図は今後の更なるエピデンスの集積によ って,

さらに的確,そして詳細なものに変化していくものと考

えられるが,現時点では対象となる個人あるいは集団に

おける身体的所見,臨床検査などを勘案しながら概念図

を参照しかかわりの深い食生活の是正とその強化を行

うことで「重症化予防Jを達成していくことが可能となっ

たと思われる。

く目的>

摂取不足の回避

Y時八

γ時八

過剰摂取による

健康障害の回避

生活習慣病の予防

103

5. 動脈硬化性疾患危険因子への

摂取エネルギー,栄養素の関連

「日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jでは,生活習

慣病として「高血圧症J.i脂質異常症J.i糖尿病J.i慢性腎臓病」が取り上げられ,生活習慣病発症,重症化に

関与する摂取エネルギー,栄養素の関連が文献レビュー

され,明らかとなった事象が概念図として表現された。

この概念図の作成は,まさに「数値をつくるための科学

から活用のための科学」への大きなパラダイムシフトで

あり,これまでの到達目標値としての摂取基準量の達成

に加え. i摂取量を加減するjという コンセプトを導入

したことで大変意義のある ことと考える。実際, 目の前

の個人あるいは集団の病態,病症に則したテーラーメイ

ドの栄養食事指導を展開することが可能となり. i重症

化予防Jに大いに活用できるものである。

それぞれの項目については以下に記述するが,減量や

肥満の是正は高血圧,高血糖,脂質異常の改善,重症化

予防に基本的な方策となる。

5.1 高 血 圧

高血圧の原因は様々あり, 血圧の高い個人を見た場合,

その人の呈する血圧の高さが何に由来するかを探り,そ

の診断により治療法の選択をしていただきたい。一方,

図 4 心筋梗塞に関連する生活習慣要因20)

(一部改変)

<種類> <関連栄聾素>

たんぱく、

y声明崎亨ι宗主|必須脂肪酸._, ~...........一一一司一一一一- .など

耐容上限量)脂組ビタミ

ン、ミネラルなど

)食塩飽和脂肪酸

など目標量

食物(栄養素)綾取の基準値設定には3つの要素があり、摂取不足の回避を目的とした推定平均必要量、あるいはこの値から算定される推奨量にれが不明な場合は目安量で代用)、過剰摂取による健康被害を回避するため設定される耐容上限量、それに生活習慣病を予防する目的の目標量がある。

図 3 栄養素摂取の基準量(指標)の目的と種類(文献 4) から図を解説)

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104 日本栄養・食糧学会誌第 69巻第3号 (2016)

食生活を含めた生活習慣の適正化は高血圧の改善,発症

予防ならびに重症化予防に重要である。そして,血圧値

の管理においては,個人あるいは集団の有するリスクの

度合いを勘案することから始めるとよい。こうした方策

は血圧値の管理に限ったことではなく,脂質異常症,糖

尿病においても同様で、あり,高血圧症の場合は血圧値と

保有するリスクの度合により治療法の選択と推奨度合が

変わってくる。つまり,高血圧患者におけるリスク評価

は血圧値のみで行わず,対象の年齢,喫煙や肥満の有無,

脂質異常症やメタボリツクシンドローム,糖尿病の擢病

の有無,若年発症心血管病の家族歴,対象者の脳・心臓・

腎臓・血管・眼底などの臓器障害や心血管病の既往歴な

どを考慮するということである。

実際の食事療法では,高血圧とエネルギー摂取量,な

らびに栄養摂取との関連を示す概念図である図 5を参考

に様々な要因を考慮しこれらの要因を加減しながら血

圧値にフィードパックするとよい。主たる要因について

解説する。

①ナトリウム

血圧の食塩感受性(食塩摂取時の血圧上昇の程度)に

は個人差があるが,ナトリウム(食塩)過剰摂取が血圧

上昇の原因の一つであることに間違いない。「日本人の

食事摂取基準 (2015年版)Jでは一般成人男性は 8.0g/

日未満,一般成人女性は 7.0g/日未満を減塩目標値とし

ている。いきなりの厳しい減塩は実施に困難を伴うため,

より低い値を目指そうという考えに根差したものであ

る。しかし減塩で降圧効果を期待するためには,これ

まで報告された大規模臨床試験からは 1日6gあるいは

それ以下の塩分制限が必要とされる。この値は, 日本高

血圧学会高血圧治療ガイドライン 20146)の提言,あるい

は日本腎臓病学会の「エビデンスに基づく CKD診療ガ

イドライン 2013J)に記載される食塩摂取量低減目標値

と一致する。一方, 2013年における司直Oの一般成人

の減塩目標は 5.0g/日未満であり,諸外国ではより厳し

い減塩目標が設定されている。

栄養素摂取と高血圧との関連(特に重要なもの)

(++)

高血圧

肥満を介する経路と介さない経路があることに注意したい。

この図はあくまでも概要を理解するための概念図として用いるに留めるべきである。

図 5 高血圧症とエネルギー摂取量,ならびに栄養摂取との関連を示す概念図4)

②カリウム

カリウム摂取は血圧低下や脳卒中のリスク低下に繋が

ることが期待される。ナトリウムの尿中排池を促すカリ

ウム摂取が重要視され「日本人の食事摂取基準 (2015

年版)Jでは,摂取目安量として 1日当たり男性 2.5g,

女性2.0gが設定されているが, WHOからの提案では

高血圧予防のためには 1日90mmol (3.51 g)程度のカ

リウム摂取が推奨される。一方,腎障害者では高カリウ

ム血症に陥らないよう過剰摂取に注意が必要となる。

③アルコール摂取

アルコールは血管を拡張し短期的には血圧を低下さ

せるが,長期にわたり多量摂取すると血圧は増加に向か

うことが知られている。そして,アルコール摂取制限に

は有意な降圧効果がある。

④エネルギー摂取

肥満自体が高血圧症の重要な発症因子であり 8) エネ

ルギー過剰摂取は戒めるべきである。そして,エネルギー

摂取減少の結果生じる体重減少そのものが血圧低下に関

連することを示す成績も多く見られる。

⑤炭水化物,脂質

飽和脂肪酸とコレステロール摂取が少ない DASH食

パターン9)は血圧を下げる。また, OmniHeart研究10)で

は炭水化物を減らして,その分をタンパク質あるいは不

飽和脂肪酸に置き換えることで血圧が低下することが示

される。炭水化物摂取,とりわけ糖質摂取,果糖摂取,

高グリセミック・インデックス (GI)食摂取などは血

圧増加と正の相関性がある。さらに,炭水化物摂取制限

は肥満是正を介しでも血圧低下を促す。

5.2 脂質異常症

脂質異常症の中でも高 LDL-コレステロール (LDL-C)

血症,低 HDL-コレステロール (HDL-C)血症,高トリ

グリセライド (TG)血症の 3つの病態がとりわけ心血

管病発症と関連性が強い。図 6は高 LDL-C血症,低

HDL-C血症,高TG血症とエネルギーならびに栄養素

摂取との関連性を示す。

日本動脈硬化学会では空腹時採血において LDL-C値

140 mg/dL以上を高 LDL-C血症とし, 120-139 mg/ dL

を境界域高 LDL-C血症としている11)。また。 HDL-C値

が40mg/dL未満を低HDL-C血症とし,血清TG値が

150 mg/dL以上を高TG血症と定義し,是正の必要性を

唱っている。 LDL-C値は空腹時採血における血清コレ

ステロール値, HDL-C 値,血清TG値から Friedewa1d

の公式 [(LDL-C)= (血清コレステロール)一 (HDL-C)一

(血清TG/5)]で算定する。しかし空腹時血清TG値

が400mg/dL以上あるいは非空腹時採血の場合は,血

清コレステロール値から HDL-C値を差しヲ!いた値であ

るnonHDL-C [(non HDL-C) = (血清コレステロール)一

(HDL-C)] で評価することができる。そして non

HDL-Cはリスクの高い個人や集団では 130mg/dL未満

にするよう, リスク評価が低い個人や集団では 190mg/

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「日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jにおける重症化予防について 105

栄養素摂取と指質異常症との関連(特に重要なもの)

肥満を介する経路と介さない経路があることに注意したい。

この図はあくまでも概要を理解するための概念図として用いるに留めるべきである。

図6 脂質異常症とエネルギー摂取量,ならびに栄養摂取との関連を示す概念図4)

dL未満にするよう設定されている。心血管病リスクが

非常に高い場合を除いて脂質異常症を対象とする場合,

3か月程度は食事療法と運動療法を続け,是正が見られ

ない場合は薬物療法の併用を考慮するとよい。

①高 LDL-C血症と栄養素摂取との関連

図6では LDL-C値を増加させるものには飽和脂肪酸,

食事性コレステロール,肥満があることが示されている。

図6にはないが,不飽和脂肪酸を工業的に処理し硬化油

にする時に派生するトランス型不飽和脂肪酸(トランス

型脂肪酸)も LDL-C値を増加させる。一方, LDL-C値

を低下させるものに多価不飽和脂肪酸,水溶性食物繊維,

減量がある。飽和脂肪酸はとりわけ LDL-C値増加と関

連性が高いが,飽和脂肪酸の中でも炭素数によって寄与

度は異なり,ラウリン酸, ミリスチン酸,パルミチン酸

はLDL-C増加作用が高いがステアリン酸はあまり影響

していない。しかしこれらそれぞれの飽和脂肪酸の含

有量は食品表示として示されていないため, I日本人の

食事摂取基準 (2015年版)Jでは飽和脂肪酸を総体とし

て捉え,エネルギー摂取比で 7%を超えないよう勧告し

ている4)。しかしながら,わが国の食品表示に関する法

律は世界レベルから遅れており,飽和脂肪酸やトランス

型脂肪酸の加工食品中含量の表示義務がないことは消費

者の立場からは不利益となる。

脂肪,炭水化物などの摂取栄養素を置換することでも

血清脂質の値が変化することを知ることは大切である。

たとえば,多価不飽和脂肪酸を等エネルギーの炭水化物

に置換することで LDL-C値は増加する。飽和脂肪酸を

等エネルギーの不飽和脂肪酸や炭水化物に置換すること

でLDL-C値は低下する。また, トランス型脂肪酸を不

飽和脂肪酸に置換すると LDL-C値は低下する。

摂取コレステロールについては事実を歪曲する報道が

ある。そもそもコレステロール摂取目標量は図4にある

冠動脈疾患をはじめとする動脈硬化性疾患発症,重症化

予防との関わりで設定されるわけで、あり,その場合は摂

取量が少ない方が望ましい。しかしコレステロールそ

のものが生体でも生成することができるものであるた

め,必須摂取量の算定は困難である。一方「日本人の食

事摂取基準 (2010年版)Jに記載されていたような, Iコレステロールを少なく摂取した場合,血中総コレステ

ロール値が減少し脳出血の擢患増加が危倶される」と

いう記述は,近年の疫学的成績から事実として支持され

ていなしミ。さらに「日本人の食事摂取基準 (2010年版)J

では,コレステロール摂取量(目標量:上限)を男性

750 mg/日,女性 600mg/日と記述されていた。腸管の

コレステロール吸収には受容体が存在しそのため吸収

量には闇値が存在し摂取量が多くなるほど吸収量は低

下し実際500mg/日以上の摂取では吸収率が著滅する。

「平成 22年, 23年国民健康・栄養調査」の結果に基づく,

日本人 30-49歳のコレステロール摂取量の中央値は 297

mg/日(男性), 263 mg/日(女性)である。このよう

にこれまでの摂取目標量は実際の摂取平均値よりも高い

値に設定されていた。しかも,目標量は生活習慣病の予

防の観点から設定されるものであり,コレステロール摂

取目標量に上限を設定することが意味のないものであ

る。そのために「日本人の食事摂取基準 (2015年版)J

ではコレステロール摂取量(目標量:上限)という用語

が撤廃されたわけで、ある。この用語が撤廃されたからと

いってコレステロールはいくらでも摂取しでもよいとい

うことにはならない。 LDL-C増加への寄与度は飽和脂

肪酸よりも高くはないが,やはり食事中のコレステロー

ル量の増加は LDL-C値を増加させるため, LDL-C高値

の方はコレステロール摂取量をさらに制限することが大

切である。

②低HDL-C血症と栄養素摂取との関連

HDL-Cは肥満で減少し運動,体重減少で増加する。

一般的に女性では男性より高値を呈するが,閉経ととも

に低下し男性と同様な値となる。食事摂取との関連性

において HDL-C値は糖質の過剰摂取で低下し,グリセ

ミック・ロード (GL)値と反比例する。糖質摂取を減

らし,代わりに等摂取エネルギーの飽和脂肪酸,一価不

飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸のいずれの脂肪酸に置き

換えても HDL-C値は増加する12)。また,多価不飽和脂

肪酸過剰摂取は HDL-C値を低下させる。喫煙も HDL-C

値を低下させる。飲酒は HDL-C値を増加させるが,飲

酒で増加した HDL-Cが冠動脈疾患発症予防するという

成績はない。

③高TG血症と栄養素摂取との関連

糖質摂取を減らし,代わりに飽和脂肪酸,一価不飽和

脂肪酸,多価不飽和脂肪酸のいずれの脂肪酸に置き換え

ても血清TG値は減少する12)。とりわけ,魚由来の長鎖

n-3系脂肪酸は血清TG、値を低下させる。食物繊維も肥

満の予防の点から血清TG値の低下に関与する。アル

コール摂取に関するメタ解析からはアルコール摂取と血

清TG値との直接的関連性は見ていなし、。むしろ,酒席

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106 日本栄養・食糧学会誌第 69巻第3号 (2016)

でつきもののエネルギー摂取増加が血清TG値増加と関

連するようである。

5.3 糖原病

糖尿病の発症原因の基盤には千ンスリンの供給不足と

インスリン感受性の低下がある。特に,内臓脂肪型肥満

ではインスリン抵抗性により,耐糖能異常が発現する。

インスリン抵抗性を基盤として発症する 2型糖尿病にお

ける食事療法の効用は総エネルギー摂取量の適正化によ

り肥満を解消し,インスリン抵抗性を改善することが大

切である。図7に示す糖尿病と関連深いエネルギー,栄

養素についての概念図にて説明する。

① エネルギー摂取

体重減少は糖尿病発症あるいは糖尿病発症リスクを

50%以上低下させたという生活介入研究がある 13)14)。保

健指導レベルの高血糖を持つ個人の基礎代謝量は耐糖能

正常者と比べ大きな差はない。したがって. PALおよ

び総エネルギー消費量共に健常人とほぼ同じと考えて体

重管理に当たってよい4)とされている (PAL:身体活動

レベル)。 しかし 2型糖尿病発症予防のために適切な

BMIはどの程度であるかはまだ同定されていない。総

エネルギー摂取制限と活動量増加という介入を行い最大

13.5年間追跡調査した結果,介入群では非介入群に比べ

有意な体重減少と HbA1c値の低下を確認したという大

規模臨床試験15)があるが この試験では経過中 LDL-C

値は変化せず,心血管系疾患の累積発症率に有意な差異

は見られていない。

② 炭水化物

炭水化物はその細分類によってその栄養学的意味は異

なる。エネルギー摂取制限を加えなくとも,炭水化物制

限食が体重を減少させ. HDL-C値を増加,血清TG値

を低下に導くことがDIRECT研究で報告されている16)。

炭水化物制限食が食欲を低下させ,エネルギー摂取制限

を二次的に生じる可能性がある。日本糖尿病学会の提言

では炭水化物摂取エネルギー比率は 50-60%とし,タン

パク質摂取エネルギー比率は 20%以下,残りを脂質と

している 17)。

栄養素摂取と高血穂との関連(特に重要なもの)

発症予防と重症化予防の対象となるのは2~捕尿病

(++)

(-)

肥満を介する経路と介さない経路があることに注意したい。

高血穂

この図はあくまでも栄養素探取と高血穂との関連の概要を理解するための概念図として用

いるに留めるべきである。

図 7 糖尿病とエネルギー摂取量,ならびに栄養摂取との関連を示す概念図4)

③ グリセミック・インデックス (GI)および食物繊維

GIあるいは GLの高値と糖尿病発生との因果関係に

ついては相関性を肯定するものとしないものの双方があ

る。しかし食後高血糖が糖尿病患者の心血管病発症に

関与することへの異論はなく,食物繊維においては,と

りわけ穀物由来の食物繊維摂取が食後高血糖を是正し

糖尿病発症リスクもあわせて減少させるようである。

④脂質

前向き研究では総脂質摂取量は糖尿病発症のリスクに

なっていない。しかしその脂肪の中身を見ると,飽和

脂肪酸はインスリン抵抗性を増悪させ,糖尿病発症のリ

スクとなっていることを多くの研究が示している。一方,

多価不飽和脂肪酸は糖尿病発症リスクを低下させ,多価

不飽和脂肪酸の摂取量増加は HbA1cの低下をもたらす

とのメタ解析の結果もある18)。

5.4 慢性腎臓病

慢性腎臓病 (CJ①)の定義は,尿異常(特にタンパ

ク尿の存在が重要).画像診断,血液,病理で腎障害の

存在が明らかであること. GFR (糸球体摘、過率)が60

mL/分/1.73m2未満ーである ことのいずれか,あるいは双

方が3か月以上持続するものとされ,末期腎不全や心血

管病のリスクとして包括的に捉えられる7)。

CJ①の治療の第 1の目的は,末期腎不全に陥るこ と

を未然に防ぐことであり 第2の目的は CJ①を治療す

ることにより心血管系疾患の発症,重症化を防ぐことで

あるが,一方,これまで述べてきた高血圧,脂質代謝異

常,糖代謝異常を改善することからも CJ①重症化予防

が達成可能となる。CJ①から見た食事摂取改善の対象

者は CKDステージで G1から G3a程度,すなわち GFR

が45mL/分/1.73m2までの症例が保健指導レベルの食

事指導の対象者となる。それ以上に進行した症例は食事

療法においても腎臓専門医が行う診療治療に委ねられ

る。図8に栄養素と CKDの発症,重症化との関連につ

栄養素摂取と慢性腎臓病 (CKD) の重症化との関連(重要なもの)

業矢印は、全て正の関連

慢性

腎臓病

(CKD)

高血庄・脂質異常症・糖尿病に比べると栄養素摂取量との関連を検討した研究は少なく、

結果も一致していないものが多い。また、重症度によって栄養素摂取量との関連が異なる

場合もある。

この図はあくまでも栄養素摂取と慢性腎民病 (CKD)の重症化との関連の概念を理解する

ための概念図として用いるに留めるべきである。

図 8 慢性腎臓病とエネルギー摂取量,ならびに栄養摂取

との関連を示す概念図4)

Page 8: 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」における重症化予防 に ...(2015 年版)を理解していただくために書かせていただ いた既報の拙著)-3)

「日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jにおける重症化予防について 107

いて示すが,今後のエピデンスの集積によりこの図は今

後形を変え変化していくものである。

①タンパク質

タンパク質は尿毒症の原因となる窒素代謝物の産生に

関与する。したがって,腎機能低下症例にてタンパク質

制限は尿毒症の発症を抑え延命効果があることは 1960

年代から知られていた。加えて,タンパク質制限には代

謝性アシドーシス改善,高リン血症発現抑制,尿タンパ

ク減少効果がある。一方,軽症 CI①に対して,過剰な

タンパク質摂取が腎機能に悪影響をもたらすかどうかに

ついても一定の成績がない。そして, MDRD研究19)な

どの大規模臨床研究からはタンパク質制限の明らかな有

用性は示されていない。実際 タンパク質は我々の体内

で生成されるものであり 摂取制限がどの程度,こうし

た体内生成に影響を及ぼすかも明らかでない。

したがって, G1から G3a程度の比較的軽症な CKD

に対してはタンパク質制限の必要性はなく, 1.3 g/kg標

準体重/日以上の摂取は望ましくないといわれるもの

の, 0.8-1.0 g/kg標準体重/日から指導開始する。そして,

それ以上の進行した CI①は CI①ステージにより腎臓

専門医のもとでの設定が必要となる。一方, 0.48 g/kg

実体重/日程度の厳しい制限では末期腎不全のリスクは

低下せず,死亡リスクが増大したとの報告もある4)。と

りわけ,高齢CI①患者でタンパク質摂取量が低下して

いる場合は虚弱(フレイル)が高頻度に見られるため,

健康な高齢者に適合する推奨量未満のタンパク質制限を

行うことは適切でない。

②エネルギー摂取

エネルギーの管理は健康人と同じ考え方で行う。

CI①患者は心筋梗塞や脳卒中など心血管系疾患の発症

頻度が高く,糖代謝異常,脂質代謝異常の原因となるよ

うな肥満は是正すべきである。 BMIの増加と末期腎不

全リスクが相関するとの成績もあり,当面の目標は

BMI<25kg/m2とすることが妥当で、あるへ

③ナトリウム

CKDでは食塩感受性高血圧を来し減塩にて血圧は

低下する。一方,極端な減塩では末期腎不全リスク,心

血管イベント,総死亡リスクが増加するとの報告もあり,

食塩摂取量としては CKDステージを問わず6g/日未

満, 3g/日以上が推奨されている9)。

④カリウム

カリウム摂取は血圧低下につながるが,前述のように

G3以上の症例では摂取制限が必要となる。

6.おわりに

「日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jは生活習慣病

などの代謝性疾患の発症予防に加えて,重症化予防も視

野に入れて策定され,そのため,生活習慣病に関する関

連学会ガイドラインとの整合性も考慮された。また,三

大栄養素という用語は使用せず,便宜上アルコールは炭

水化物のなかに括られた。さらに,エネルギーの摂取量

および、消費量のバランスの維持を示す指標として BMI

が採用された。そして,臨床に携わる人間にとって最大

の恩恵は,従来の推定平均必要量,推奨量, 目安量,耐

容上限量,目標量などの摂取基準の設定値に加え,摂取

栄養素と疾患との関連を示す概念図が描かれたことによ

り,摂取量の加減が可能になったことである。それによ

り個人や集団を捉える際 テーラーメイドの医療の展開

が容易になった。

今回,生活習慣病の重症化予防という観点で本稿をま

とめた。「日本人の食事摂取基準 (2015年版)Jではよ

り多くの国民が食事指導の対象者として捉えられ, I重症化予防」の文言は生活習慣病に関する関連学会ガイド

ラインとシームレスな整合性のもと対策が構築されるよ

うになった。平成 20年4月より開始された「特定健診・

特定保健指導」に引き続く平成 25年からの「第2期特

定健診・特定保健指導」では, I日本人の食事摂取基準

(2015年版)Jに書かれた内容を是非有効利用していた

だきたい。そして平成 25年から始まった「健康日本 21

(第二次)Jでの基本方針でもある「生活習慣病の発症予

防と重症化予防の徹底」をめざし「健康寿命の延伸と

健康格差の縮小」が達成できることを願ってやまない。

文 献

1)多由紀夫 (2014)日本人の食事摂取基準 (2015年版)

を理解するために(1)生活習慣病とエネルギー・

栄養素との関連.臨床栄養 125,625-33.

2)多由紀夫 (2015)I日本人の食事摂取基準 (2015年

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3)多国紀夫 (2015)第 10回日本臨床栄養協会関東地

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go.jp/sぜ!shingi/0000041824.htm15)多国紀夫 (2014)平成 25年度厚生労働科学研究費

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108 日本栄養・食糧学会誌第 69巻第3号 (2016)

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Dietary Reference Intakes (D悶)for J apanese (2015) and Dietary Management of Risk Factors for Lifes句rle-relatedDiseases

N orio Tada *,1

(Received August 28, 2015; Accepted October 27, 2015)

Summαη': Every 5 years, the Dietary Reference Intakes (DRI) for ]apanese proposes reference va1ues for de-sirab1e dietary intake of ener田rand nutrients in order for ]apanese peop1e to maintain and promote their health.

τbe applicab1e popu1ations were originally healthy individua1s and groups. Dietary Reference Intake for ]apa-

nese (2015) was issued in May, 2014, and will be applicab1e for 5 years,仕omfisca12015 to fisca12019. In this is-

sue, efforts to prevent lifesty1e-re1ated diseases such as hypertension, dyslipidemia, diabetes mellitus, and

chronic kidney disease have been intensified.τberefore, the applicab1e popu1ations inc1ude those who are re-ceiving hea1th guidance for hypertension, dyslipidemia, diabetes, or chronic kidney disease in company with

healthy individua1s and groups. Here, concepts for dietary management designed to protect the ]apanese popu-

1ation仕omprogression of 1ifes匂r1e-re1ateddiseases are summarized.

Key words: Dietary Reference Intakes, prevention of lifesty1e-re1ated diseases, dietary diagnosis, dietary man-agement

* Corresponding author (E-mai1: [email protected]) 1 Kashiwa Municipa1 Nursing Care Senior Citizens Health Facility Huming, 1-3 Fuse, Kashiwa, Chiba 277-0825,]apan