定められた報酬を同意なく減額した会社側が敗訴した事例も ...no.786...
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No.786 2019.5.134
最初に紹介する裁判事例は、非上場企業である被告会社の取締役であった原告が被告会社に対して、定められた取締役報酬を入院による長期欠勤により減額されたことを不服として減額分の支給を請求していたものである。 事実関係をみていくと、被告会社は平成26年6月の定時株主総会で原告を取締役に選任する旨の決議をし、原告は取締役に就任した(任期は平成28年6月までの2年間)。被告会社における取締役報酬は、定時株主総会の決議により取締役会に一任することとされていた。そこで被告会社の取締役会は、原告の取締役報酬を月額約65万円とすることを決議していた。ところが、原告は平成27年5月下旬に入院し、その後は平成28年6月に任期満了により取締役を退任するまで欠
勤が継続する状態となった。被告会社の代表取締役は、原告の欠勤が続いたことから、取締役会に諮ったうえで平成27年9月分から11月分の月額報酬を約20万円、平成27年12月分から平成28年6月分の月額報酬を約10万円に減額した(なお、被告会社には当時、取締役の長期欠勤の際の報酬の取扱いに関する特段の定めはなかった)。定められた報酬の減額には本人の同意が必要 東京地裁はまず、最高裁平成4年12月18日判決を引用するかたちで、定められた報酬額は取締役と会社との間の契約内容となり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するから、仮に取締役の職務内容に著しい変更があり、株主総会等でこれを変更する旨の決議をしても、その取締役がその変更に同意
定められた報酬を同意なく減額した会社側が敗訴した事例も
ニュース特集
取締役の報酬や解任をめぐる会社法の訴訟トラブル取締役の報酬や解任をめぐる会社法の訴訟トラブル
取締役が入院で長期欠勤、定められた報酬の減額の可否が問題に
報酬の減額や解任といった取締役と会社との間の会社法をめぐるトラブルが訴訟にまで発展するケースも見受けられるなか、本特集では、報酬の減額や解任をめぐり元取締役が会社を訴えた最近の裁判事例を2つ紹介する。1つめの事例は、入院による長期欠勤により定められた取締役報酬を減額された元取締役が会社に対して減額分(未支給額)の支給を請求したもの。地裁は、減額支給には取締役本人の同意がなかったとして、被告会社に対して減額分の支払いを命じた。2つめの事例は、任期途中で解任された元取締役が会社に対して残存任期中の取締役報酬相当額の損害賠償などを請求したもの。地裁は、取締役としての職務遂行能力や適性に著しく欠けるところがあったとして解任には正当な理由があったと判断している。
No.786 2019.5.13 5
しない限り、その取締役は報酬請求権を失わないことになるという解釈を示した。 そして本件について地裁は、被告会社は原告の月額報酬を減額する旨を原告の自宅にFAXしたことが認められるものの、単に入院中である原告から月額報酬を減額する旨に対する明示的な異議申し出がないということ
のみでは、原告が平成27年9月以降の減額について黙示的にこれに同意していたものと解することはできないとした。そのうえで地裁は、平成27年9月分以降の減額分の合計約523万円について、被告会社に対して原告への支払を命じた(東京地裁平成30年9月7日判決・確定済み)。
株主総会の決議による役員の解任に「正当な理由」がない場合には、解任された役員は会社に対して解任によって生じた損害の賠償を請求することができる(会社法339条)。 次に紹介する裁判事例は、上場企業(東証第一部上場)である被告会社の臨時株主総会において取締役を解任された原告が被告会社に対して、解任には「正当な理由」がないと主張して、損害賠償(残存任期中の取締役報酬相当額)などを請求していたものである。 事実関係をみていくと、上場企業の専務取
締役を退任した原告は、平成28年6月の定時株主総会により被告会社の新たな取締役として選任されたものの、同年10月の臨時株主総会により取締役を解任されることになった。解任理由として臨時株主総会の招集通知書には、①被告会社に告知することなく他社の代表取締役に就任していた事実の発覚、②秘密保持誓約の締結拒否などが取締役としての善管注意義務及び忠実義務に違反するほか、原告の合弁事業計画は被告会社の目指す戦略と乖離する一方で、原告が高額な報酬を
日本監査
監査
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アメリカ
押印がある申告書(第二次申告書)を法定期限後に提出。
期限後申告を理由に無申告加算税の賦課決定処分。
押印のない相続税の共同申告書(第一次申告書)を法定期限内に提出。
押印がないため申告書を改めて提出するよう依頼。
被告会社
【図1】資本金額の説明義務違反により、約950万円の賠償命令が下された事件【図1】押印のない相続税の共同申告書が期限内申告書として有効と判断された事件【図1】取締役が入院で長期欠勤も、本人の同意がない報酬の減額は認められないと判断された事例
【図2】金地金の申告漏れに関する相続税更正処分および重加算税賦課決定処分が取り消された事件
【図表1】開示スケジュールの国際比較
❶
❷
❸
被告税理士原告
(元取締役)
原告代表者
被相続人
請求人(相続人)
裁判所
▶医療法人設立の主な目的は節税であった。被告税理士は節税の目的に沿うよう資本金を1,000万円未満にするように説明・指導する義務があったにもかかわらずこれを怠った。
▶資本金を1,000万円未満とした場合に免除されるはずであった2期分の消費税1,574万円のうち、その全額が経費計上されていたことによる減税効果(1,574万円×法定実効税率39.24%)を差し引いた956万円について被告税理士に対し賠償命令。
節税対策として個人医院の法人化を相談。
法人化をした方が節税効果あり。医療法人設立認可などの手続きなどの一部を被告税理士が行う旨の本件契約を締結。
金地金18.4kgを業者から取得。18.4kgのうち1.5kgは親族へ贈与。
金地金14.8kgを申告漏れ財産と認定。相続税更正処分および重加算税賦課処分。
❶❶入院による長期欠勤により、取締役会に諮ったうえで取締役報酬(月額)を減額して支給
❷取締役報酬の減額に同意していないと主張して減額分(未支給分)の支給を請求
❸被相続人の死亡時の住所地は「老人ホーム」であり、その所轄庁はB税務署であるため、A税務署(原処分庁)に重加算税の賦課決定権限はないと主張。重加算税の取消しを求める。
❹設立後2期分の消費税が免除となるように、資本金を1,000万円未満とするよう指導すべき義務があった。設立後2期分の消費税相当額(1,574万円)の損害賠償を請求。
国税不服審判所
国税不服審判所
資本金1億円超で原告医療法人を設立。設立後2期分の消費税1,574万円を納付。
被告税理士が一部敗訴
▶第一次申告書は請求人の意思に基づいて提出されたものと認められる。また、第一次申告書は、押印を除き、申告書の要件を具備しているため、押印がないことは単なる押印漏れにすぎない。したがって、第一次申告書は、期限内申告書(通則法17)に該当する。無申告加算税を全部取消し
▶原処分庁が主張する事情(①生前、被相続人の下に多数の金地金が保有されていたこと、②調査対象業者等に売却した事実がないこと、③被相続人が金地金を贈与した事実がないこと)は、本件相続開始日に本件金地金が被相続人の相続財産として存在したと認めるには十分とはいえないため、本件金地金は請求人が取得した相続財産であるとは認められない。相続税更正処分および重加算税を全部取消し
裁判所
定められた報酬額は会社と取締役の双方を拘束するから、仮に取締役の職務内容に著しい変更があり、株主総会等でこれを変更する旨の決議をしても、取締役がその変更に同意しない限り、取締役は報酬請求権を失わないことになる。被告会社は原告の月額報酬を減額する旨を原告の自宅にFAXしたことが認められるものの、入院中である原告から月額報酬を減額する旨に対する明示的な異議申し出がないということのみでは、原告が平成27年9月以降の減額について黙示的にこれに同意していたものと解することはできない。
被告会社に対し取締役報酬の減額分(合計約523万円)の支払いを命じる
原告医療法人個人医院
被告会社
【図2】職務遂行能力が著しく欠けることなどから解任には正当な理由があると判断された事例
原告(元取締役)
❶信頼関係を構築できない状態に至ったことなどにより任期途中で取締役を解任
❷正当な理由なく中途解任されたと主張して会社法339条2項に基づき損害の賠償(残存任期中の取締役報酬相当額)を請求
裁判所
被告会社は原告を取締役に選任することにより売上の飛躍的増加を期待するとともにこれに応じた報酬の支払いを企図した一方で、原告は売上目標を繰り返し一方的に下方修正したにもかかわらず報酬金額の支払いに固執したことによる信頼関係の崩壊があるというべきである。原告には被告会社との信頼関係の崩壊・悪化に繋がる不誠実な職務を行った者として取締役としての職務遂行能力や適性に著しく欠けるところがあったというべきであり、解任には正当な理由があるというべきである。
残存任期中の取締役報酬相当額の損害賠償を求めた原告の請求を斥ける
原処分庁(税務署)
原処分庁(税務署)
請求人(相続人)
❶
❷
❷❸❹押印がある申告書(第二次申告書)を法定期限後に提出。
❺
期限後申告を理由に無申告加算税の賦課決定処分。
❸
❹
金地金2.3kgを被相続人の相続財産として申告。
金地金14.8kgを申告漏れ財産と認定。相続税更正処分および重加算税賦課決定処分。
❸金地金2.3kgを被相続人の相続財産として申告。
❹
押印のない相続税の共同申告書(第一次申告書)を法定期限内に提出。
押印がないため申告書を改めて提出するよう依頼。
無申告加算税の取り消しを求め審査請求。
被相続人に関する相続が発生。
❷
❺更正処分等の取り消しを求め審査請求。
被相続人の死亡により相続が発生。
決算から3月後(6月)に集中
決算から4~5月後
アニュアルレポート(任意)
❺更正処分等の取り消しを求め審査請求。
請求人(相続人)
被相続人
金地金18.4kgを業者から取得。(18.4kgのうち1.5kgは親族へ贈与。)
【図】被告税理士法人が提案した相続税対策
被告税理士法人 原告会社代表者 原告会社
(債務超過)
❶
❷
❸原告会社に対する債権(約11億円)の相続税対策を相談
DES方式を採用し、債権(約10億円)を現物出資
清算方式とDES方式を提案
原告会社に債務消滅益が発生
【図】被告税理士法人が提案した相続税対策
被告税理士法人 原告会社代表者 原告会社
(債務超過)
❶
❷
❸原告会社に対する債権(約11億円)の相続税対策を相談
DES方式を採用し、債権(約10億円)を現物出資
清算方式とDES方式の2つの方式を提案
【図】被告税理士法人が提案した相続税対策
被告税理士法人 原告会社代表者 原告会社
(債務超過)
❶
❷
❸原告会社に対する債権(約11億円)の相続税対策を相談
DES方式を採用し、債権(約10億円)を現物出資
清算方式とDES方式を提案
原告会社に債務消滅益が発生
【図】被告税理士法人が提案した相続税対策
被告税理士法人 原告会社代表者 原告会社
(債務超過)
❶
❷
❸原告会社に対する債権(約11億円)の相続税対策を相談
DES方式を採用し、債権(約10億円)を現物出資(原告会社に債務消滅益が発生)
清算方式とDES方式を提案
原告会社に債務消滅益が発生
税務署(原処分庁)
【図2】生命保険金の一部申告漏れを隠ぺいと認定した税務署の課税処分が取り消された事例
請求人(相続人)
❶相続税の申告書を期限内に提出(生命保険金11口のうち7口を申告書に記載せず)。
❷税務調査を実施。無申告保険金の存在を隠ぺいしたと認定し、重加算税及び配偶者の税額軽減の適用を否定する課税処分。
❸無申告保険金の申告漏れは仮装隠ぺいではないと主張。重加算税を含む課税処分の取消しを求める。
国税不服審判所
請求人は無申告保険金が振込送金された口座の預金通帳等を逡巡なく提示していて無申告保険金の発見を困難にさせるような意図や行動はうかがわれないことなどを踏まえれば、故意に当初申告の対象から除外したものとは認め難い。請求人が当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたうえでその意図に基づく過少申告をしたものとは認めることができない。
重加算税及び配偶者の税額軽減の適用を否定した課税処分を取り消す
税務署(原処分庁)
【図3】被相続人名義の米国不動産に関する代金債権を課税価格に算入した課税処分が取り消された事例
請求人(相続人)
❶被相続人名義の米国不動産を長女に譲渡する旨を記載した売買契約書などを作成。米国不動産の名義人を被相続人から長女へ変更。
❷米国不動産の売却代金は未払いであるため、代金債権を被相続人に係る相続税の課税価格に算入する課税処分。
❸米国不動産の所有者は請求人であり、売買契約書などは虚偽のものであると主張。代金債権を課税価格に算入した課税処分の取消しを求める。
国税不服審判所
売買契約書作成の際に買主とされる長女は関与していないこと、長女は金銭消費貸借契約書記載の金員を受け取っておらず、返済もしていないこと、請求人及び長女の間では米国不動産の長女の所有名義は便宜上のもので真実は請求人が所有者であることを確認する旨の合意書が作成されていることなどを踏まえれば、売買契約書などは実態を伴わない架空の内容を記載した契約書であるため、米国不動産の代金債権は発生していない。
代金債権を相続税の課税価格に算入した課税処分を取り消す
税務署(原処分庁)
【図3】被相続人名義の米国不動産に関する代金債権を課税価格に算入した課税処分が取り消された事例
請求人(相続人)
❶被相続人名義の米国不動産を長女に譲渡する旨を記載した売買契約書などを作成。米国不動産の名義人を被相続人から長女へ変更。
❷米国不動産の売却代金は未払いであるため、代金債権を相続税の課税価格に算入する課税処分。
❸米国不動産の所有者は請求人であり、売買契約書などは虚偽のものであると主張。代金債権を課税価格に算入した課税処分の取消しを求める。
国税不服審判所
売買契約書作成の際に買主とされる長女は関与していないこと、長女は金銭消費貸借契約書記載の金員を受け取っておらず、返済もしていないこと、請求人及び長女の間では米国不動産の長女の所有名義は便宜上のもので真実は請求人が所有者であることを確認する旨の合意書が作成されていることなどを踏まえれば、売買契約書などは実態を伴わない架空の内容を記載した契約書であるため、米国不動産の代金債権は発生していない。
代金債権を相続税の課税価格に算入した課税処分を取り消す
決算日
決算短信(取引所規則)
アニュアルレポート
アニュアルレポート
事業報告(会社法)
招集通知
招集通知
公告
コーポレートガバナンス報告書
(取引所規則)+
アニュアルレポート(任意)
プレスリリース等
プレスリリース等
4つの異なる開示書類
株主総会
株主総会
株主総会
株主総会
株主総会
株主総会
短い開示期間
1つの開示資料
1つの開示資料
充分な開示期間
充分な開示期間
(金商法)
有価証券報告書
(金商法)
(出典:未来投資会議(第4回)小林会長資料)
【図表2】開示・コーポレートガバナンス関係の改革
1.企業と投資家の建設的な対話の促進(情報提供・開示)・企業の経営戦略、他社との差別化要素、無形資産への投資戦略等の非財務情報に関する開示を含む情報提供を充実。
・四半期開示について、義務的開示の是非も含めた更なる効率化を検討し、見直しについて平成30年春を目途に一定の結論。
・制度間で類似・関連する記載内容の共通化が可能な項目について必要な制度的手当て、法令解釈や共通化の方法の明確化・周知等について本年中に成案を得る。
(株主総会日程・議決権行使プロセス)・議案検討に必要な情報を投資家により迅速・効率的に提供するため、株主総会の招集通知添付書類の原則電子提供を検討。
・株主総会の日程の見直しや、議決権行使プロセス全体の電子化等の取組をフォローアップ。
2.経営システムの強化(取締役会・企業経営陣)・上場企業のCEOの選解任や、取締役会の構成・運営・評価等の取組強化を促す。また、指名・報酬委員会の活用、経営経験者の社外取締役の活用、インセンティブ報酬の導入等の状況などを本年度中に分析・公表。
(相談役・顧問)・退任した社長・CEOが就任する相談役、顧問等に係る開示制度を本年夏頃を目途に創設。投資家は、相談役、顧問等が企業において果たす役割やその待遇をチェックできるように。
3.事業再編の円滑化・大胆な事業再編を促進するための方策について関係制度の検討を行い平成30年度を目途に制度的対応を講じる。企業は、事業ポートフォリオを機動的に見直し、撤退・売却を含む事業再編を断行して、稼ぐ力の向上に向けた投資を行う。
(出典:未来投資戦略2017より)
取締役の中途解任に「正当な理由」があったか否かが問題に
No.786 2019.5.136
強硬に要求するなど信頼関係を構築できない状態に至った旨が記載されていた。取締役としての職務遂行能力を問題視 東京地裁は、被告会社は原告を取締役に選任することにより売上の飛躍的増加を期待するとともにこれに応じた報酬の支払いを企図した一方で、原告が目標の売上を繰り返し一方的に下方修正したにもかかわらず報酬金額の支払いにだけは固執したことによる信頼関係の崩壊があるというべきであると指摘。原告には信頼関係の崩壊に繋がる不誠実な職務遂行を行った者として取締役としての職務遂行能力や適性に問題があったというべきであるとした。また、地裁は、原告が代表取締役
に就任した会社の事業が被告会社との関係で競合に当たらないことなどに関して被告会社に十分な説明を行っていないことなどにより、原告及び被告会社間の信頼関係はさらに悪化したものというべきであるとした。 これらの事情を踏まえ地裁は、原告は信頼関係の崩壊・悪化に繋がる不誠実な職務遂行を行った者として取締役としての職務遂行能力や適性に著しく欠けるところがあったというべきであると指摘。原告に対する取締役解任には「正当な理由」があると判断したうえで、原告の請求を棄却する判決を下した(東京地裁平成30年11月29日判決・控訴あり)。
200%定率法への変更、監査上の取扱いは?取締役解任の理由の記載、記載事項は名誉毀損に当たらず
2番目に紹介した裁判事例のなかで原告は、適時開示情報システム等及び臨時株主総会の招集通知に解任の理由として記載された事項は原告の社会的信用を著しく低下させる名誉棄損に当たると主張して、被告会社に損害賠償を求めていた。これに対し地裁は、記載された事項の重要な部分は真実であると認定したうえで、原告に対する人身攻撃に当たるということはできないことなどから、名誉毀損には当たらない旨の判断を示した。
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押印がある申告書(第二次申告書)を法定期限後に提出。
期限後申告を理由に無申告加算税の賦課決定処分。
押印のない相続税の共同申告書(第一次申告書)を法定期限内に提出。
押印がないため申告書を改めて提出するよう依頼。
被告会社
【図1】資本金額の説明義務違反により、約950万円の賠償命令が下された事件【図1】押印のない相続税の共同申告書が期限内申告書として有効と判断された事件【図1】取締役が入院で長期欠勤も、本人の同意がない報酬の減額は認められないと判断された事例
【図2】金地金の申告漏れに関する相続税更正処分および重加算税賦課決定処分が取り消された事件
【図表1】開示スケジュールの国際比較
❶
❷
❸
被告税理士原告
(元取締役)
原告代表者
被相続人
請求人(相続人)
裁判所
▶医療法人設立の主な目的は節税であった。被告税理士は節税の目的に沿うよう資本金を1,000万円未満にするように説明・指導する義務があったにもかかわらずこれを怠った。
▶資本金を1,000万円未満とした場合に免除されるはずであった2期分の消費税1,574万円のうち、その全額が経費計上されていたことによる減税効果(1,574万円×法定実効税率39.24%)を差し引いた956万円について被告税理士に対し賠償命令。
節税対策として個人医院の法人化を相談。
法人化をした方が節税効果あり。医療法人設立認可などの手続きなどの一部を被告税理士が行う旨の本件契約を締結。
金地金18.4kgを業者から取得。18.4kgのうち1.5kgは親族へ贈与。
金地金14.8kgを申告漏れ財産と認定。相続税更正処分および重加算税賦課処分。
❶❶入院による長期欠勤により、取締役会に諮ったうえで取締役報酬(月額)を減額して支給
❷取締役報酬の減額に同意していないと主張して減額分(未支給分)の支給を請求
❸被相続人の死亡時の住所地は「老人ホーム」であり、その所轄庁はB税務署であるため、A税務署(原処分庁)に重加算税の賦課決定権限はないと主張。重加算税の取消しを求める。
❹設立後2期分の消費税が免除となるように、資本金を1,000万円未満とするよう指導すべき義務があった。設立後2期分の消費税相当額(1,574万円)の損害賠償を請求。
国税不服審判所
国税不服審判所
資本金1億円超で原告医療法人を設立。設立後2期分の消費税1,574万円を納付。
被告税理士が一部敗訴
▶第一次申告書は請求人の意思に基づいて提出されたものと認められる。また、第一次申告書は、押印を除き、申告書の要件を具備しているため、押印がないことは単なる押印漏れにすぎない。したがって、第一次申告書は、期限内申告書(通則法17)に該当する。無申告加算税を全部取消し
▶原処分庁が主張する事情(①生前、被相続人の下に多数の金地金が保有されていたこと、②調査対象業者等に売却した事実がないこと、③被相続人が金地金を贈与した事実がないこと)は、本件相続開始日に本件金地金が被相続人の相続財産として存在したと認めるには十分とはいえないため、本件金地金は請求人が取得した相続財産であるとは認められない。相続税更正処分および重加算税を全部取消し
裁判所
定められた報酬額は会社と取締役の双方を拘束するから、仮に取締役の職務内容に著しい変更があり、株主総会等でこれを変更する旨の決議をしても、取締役がその変更に同意しない限り、取締役は報酬請求権を失わないことになる。被告会社は原告の月額報酬を減額する旨を原告の自宅にFAXしたことが認められるものの、入院中である原告から月額報酬を減額する旨に対する明示的な異議申し出がないということのみでは、原告が平成27年9月以降の減額について黙示的にこれに同意していたものと解することはできない。
被告会社に対し取締役報酬の減額分(合計約523万円)の支払いを命じる
原告医療法人個人医院
被告会社
【図2】職務遂行能力が著しく欠けることなどから解任には正当な理由があると判断された事例
原告(元取締役)
❶信頼関係を構築できない状態に至ったことなどにより任期途中で取締役を解任
❷正当な理由なく中途解任されたと主張して会社法339条2項に基づき損害の賠償(残存任期中の取締役報酬相当額)を請求
裁判所
被告会社は原告を取締役に選任することにより売上の飛躍的増加を期待するとともにこれに応じた報酬の支払いを企図した一方で、原告は売上目標を繰り返し一方的に下方修正したにもかかわらず報酬金額の支払いに固執したことによる信頼関係の崩壊があるというべきである。原告には被告会社との信頼関係の崩壊・悪化に繋がる不誠実な職務を行った者として取締役としての職務遂行能力や適性に著しく欠けるところがあったというべきであり、解任には正当な理由があるというべきである。
残存任期中の取締役報酬相当額の損害賠償を求めた原告の請求を斥ける
原処分庁(税務署)
原処分庁(税務署)
請求人(相続人)
❶
❷
❷❸❹押印がある申告書(第二次申告書)を法定期限後に提出。
❺
期限後申告を理由に無申告加算税の賦課決定処分。
❸
❹
金地金2.3kgを被相続人の相続財産として申告。
金地金14.8kgを申告漏れ財産と認定。相続税更正処分および重加算税賦課決定処分。
❸金地金2.3kgを被相続人の相続財産として申告。
❹
押印のない相続税の共同申告書(第一次申告書)を法定期限内に提出。
押印がないため申告書を改めて提出するよう依頼。
無申告加算税の取り消しを求め審査請求。
被相続人に関する相続が発生。
❷
❺更正処分等の取り消しを求め審査請求。
被相続人の死亡により相続が発生。
決算から3月後(6月)に集中
決算から4~5月後
アニュアルレポート(任意)
❺更正処分等の取り消しを求め審査請求。
請求人(相続人)
被相続人
金地金18.4kgを業者から取得。(18.4kgのうち1.5kgは親族へ贈与。)
【図】被告税理士法人が提案した相続税対策
被告税理士法人 原告会社代表者 原告会社
(債務超過)
❶
❷
❸原告会社に対する債権(約11億円)の相続税対策を相談
DES方式を採用し、債権(約10億円)を現物出資
清算方式とDES方式を提案
原告会社に債務消滅益が発生
【図】被告税理士法人が提案した相続税対策
被告税理士法人 原告会社代表者 原告会社
(債務超過)
❶
❷
❸原告会社に対する債権(約11億円)の相続税対策を相談
DES方式を採用し、債権(約10億円)を現物出資
清算方式とDES方式の2つの方式を提案
【図】被告税理士法人が提案した相続税対策
被告税理士法人 原告会社代表者 原告会社
(債務超過)
❶
❷
❸原告会社に対する債権(約11億円)の相続税対策を相談
DES方式を採用し、債権(約10億円)を現物出資
清算方式とDES方式を提案
原告会社に債務消滅益が発生
【図】被告税理士法人が提案した相続税対策
被告税理士法人 原告会社代表者 原告会社
(債務超過)
❶
❷
❸原告会社に対する債権(約11億円)の相続税対策を相談
DES方式を採用し、債権(約10億円)を現物出資(原告会社に債務消滅益が発生)
清算方式とDES方式を提案
原告会社に債務消滅益が発生
税務署(原処分庁)
【図2】生命保険金の一部申告漏れを隠ぺいと認定した税務署の課税処分が取り消された事例
請求人(相続人)
❶相続税の申告書を期限内に提出(生命保険金11口のうち7口を申告書に記載せず)。
❷税務調査を実施。無申告保険金の存在を隠ぺいしたと認定し、重加算税及び配偶者の税額軽減の適用を否定する課税処分。
❸無申告保険金の申告漏れは仮装隠ぺいではないと主張。重加算税を含む課税処分の取消しを求める。
国税不服審判所
請求人は無申告保険金が振込送金された口座の預金通帳等を逡巡なく提示していて無申告保険金の発見を困難にさせるような意図や行動はうかがわれないことなどを踏まえれば、故意に当初申告の対象から除外したものとは認め難い。請求人が当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたうえでその意図に基づく過少申告をしたものとは認めることができない。
重加算税及び配偶者の税額軽減の適用を否定した課税処分を取り消す
税務署(原処分庁)
【図3】被相続人名義の米国不動産に関する代金債権を課税価格に算入した課税処分が取り消された事例
請求人(相続人)
❶被相続人名義の米国不動産を長女に譲渡する旨を記載した売買契約書などを作成。米国不動産の名義人を被相続人から長女へ変更。
❷米国不動産の売却代金は未払いであるため、代金債権を被相続人に係る相続税の課税価格に算入する課税処分。
❸米国不動産の所有者は請求人であり、売買契約書などは虚偽のものであると主張。代金債権を課税価格に算入した課税処分の取消しを求める。
国税不服審判所
売買契約書作成の際に買主とされる長女は関与していないこと、長女は金銭消費貸借契約書記載の金員を受け取っておらず、返済もしていないこと、請求人及び長女の間では米国不動産の長女の所有名義は便宜上のもので真実は請求人が所有者であることを確認する旨の合意書が作成されていることなどを踏まえれば、売買契約書などは実態を伴わない架空の内容を記載した契約書であるため、米国不動産の代金債権は発生していない。
代金債権を相続税の課税価格に算入した課税処分を取り消す
税務署(原処分庁)
【図3】被相続人名義の米国不動産に関する代金債権を課税価格に算入した課税処分が取り消された事例
請求人(相続人)
❶被相続人名義の米国不動産を長女に譲渡する旨を記載した売買契約書などを作成。米国不動産の名義人を被相続人から長女へ変更。
❷米国不動産の売却代金は未払いであるため、代金債権を相続税の課税価格に算入する課税処分。
❸米国不動産の所有者は請求人であり、売買契約書などは虚偽のものであると主張。代金債権を課税価格に算入した課税処分の取消しを求める。
国税不服審判所
売買契約書作成の際に買主とされる長女は関与していないこと、長女は金銭消費貸借契約書記載の金員を受け取っておらず、返済もしていないこと、請求人及び長女の間では米国不動産の長女の所有名義は便宜上のもので真実は請求人が所有者であることを確認する旨の合意書が作成されていることなどを踏まえれば、売買契約書などは実態を伴わない架空の内容を記載した契約書であるため、米国不動産の代金債権は発生していない。
代金債権を相続税の課税価格に算入した課税処分を取り消す
決算日
決算短信(取引所規則)
アニュアルレポート
アニュアルレポート
事業報告(会社法)
招集通知
招集通知
公告
コーポレートガバナンス報告書
(取引所規則)+
アニュアルレポート(任意)
プレスリリース等
プレスリリース等
4つの異なる開示書類
株主総会
株主総会
株主総会
株主総会
株主総会
株主総会
短い開示期間
1つの開示資料
1つの開示資料
充分な開示期間
充分な開示期間
(金商法)
有価証券報告書
(金商法)
(出典:未来投資会議(第4回)小林会長資料)
【図表2】開示・コーポレートガバナンス関係の改革
1.企業と投資家の建設的な対話の促進(情報提供・開示)・企業の経営戦略、他社との差別化要素、無形資産への投資戦略等の非財務情報に関する開示を含む情報提供を充実。
・四半期開示について、義務的開示の是非も含めた更なる効率化を検討し、見直しについて平成30年春を目途に一定の結論。
・制度間で類似・関連する記載内容の共通化が可能な項目について必要な制度的手当て、法令解釈や共通化の方法の明確化・周知等について本年中に成案を得る。
(株主総会日程・議決権行使プロセス)・議案検討に必要な情報を投資家により迅速・効率的に提供するため、株主総会の招集通知添付書類の原則電子提供を検討。
・株主総会の日程の見直しや、議決権行使プロセス全体の電子化等の取組をフォローアップ。
2.経営システムの強化(取締役会・企業経営陣)・上場企業のCEOの選解任や、取締役会の構成・運営・評価等の取組強化を促す。また、指名・報酬委員会の活用、経営経験者の社外取締役の活用、インセンティブ報酬の導入等の状況などを本年度中に分析・公表。
(相談役・顧問)・退任した社長・CEOが就任する相談役、顧問等に係る開示制度を本年夏頃を目途に創設。投資家は、相談役、顧問等が企業において果たす役割やその待遇をチェックできるように。
3.事業再編の円滑化・大胆な事業再編を促進するための方策について関係制度の検討を行い平成30年度を目途に制度的対応を講じる。企業は、事業ポートフォリオを機動的に見直し、撤退・売却を含む事業再編を断行して、稼ぐ力の向上に向けた投資を行う。
(出典:未来投資戦略2017より)