「震災ビッグデータ」から見えてきた 東日本大震災の姿 ·...

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Studies of Broadcasting and Media 「震災ビッグデータ」から見えてきた 東日本大震災の姿 阿部博史(NHK 報道局) 1 はじめに 2 震災ビッグデータとは何か 3 ビッグデータが可視化した震災「その時」 4 ビッグデータを復興に生かす 5 ビッグデータ活用、NHK の模索 6 おわりに──あらゆる場面で震災ビッグデータの活用を!

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Studies of Broadcasting and Media

「震災ビッグデータ」から見えてきた東日本大震災の姿

阿部博史(NHK 報道局)

1 はじめに2 震災ビッグデータとは何か3 ビッグデータが可視化した震災「その時」4 ビッグデータを復興に生かす5 ビッグデータ活用、NHKの模索6 おわりに──あらゆる場面で震災ビッグデータの活用を!

阿部博史(あべ・ひろふみ)

NHK 報道局 社会番組部 ディレクター2004 年 NHK 入局。東日本大震災発生時、『ニュースウオッチ9』を担当。緊急報道対応だけでなく、地震・津波・原発被害の現場を取材してきた。これまで震災関連の『NHK スペシャル』『クローズアップ現代』

『ドキュメンタリー番組』を制作。2013 年 3 月には、携帯電話の位置情報やカーナビの記録などから、当時、人はどのように行動したのかを紐解く NHK スペシャル『震災ビッグデータ』を放送。この震災ビッグデータを「被災状況把握」「救助「支援」など様々な場面で活用できないか、行政、民間企業と連携を進めると共に、新たな緊急報道体制の構築を進めている。

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1 はじめに

2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は,史上最も多くの情報が記録された災害だと言われている。地震や津波などの観測データだけでなく,被災地では多くの人たちが携帯電話やスマートフォンを使って写真や動画を撮影し,被害状況や安否情報をメールやツイッターなどを使って発信した。現地に入った研究者は,津波の高さや浸水域の範囲をデジタルデータにして公開。原発事故後は,国や自治体だけでなく,個人でも放射線量を測定する動きが加速した。さらに,携帯電話やカーナビなどに搭載されている GPS によって,避難行動の解明につながる貴重なデータも蓄積されていた。「被害の実態」そして「命の軌跡」そのものであるこれらのデータは,被

災者の方々のお気持ちを考えると軽々に触れられるものではない。しかし,当時,何が起きていたのか被害実態を解明しなければ,再び大災害が発生したときに多くの命が奪われることになる。筆者は,震災 1 年を機にこれらの膨大なデータを「震災ビッグデータ」と名づけ分析を始めた。2012 年の秋には,Google や Twitter Japan などによって開催された「東日本大震災ビッグデータワークショップ」にも局内でプロジェクトチームを立ち上げて参加し,国・民間企業・研究者など約 500 人とともに分析を行った。

その分析結果をもとに生まれたのが,震災 2 年目の 2013 年 3 月と 9 月の2 回にわたって放送した NHK スペシャル『震災ビッグデータ』である。第1 回は,発災後 1 週間の記録をひもとき,避難行動の解明や住民孤立の実態,SNS による救援/救助の可能性を検証。9 月放送の第 2 回では,解析範囲を2 年半に広げ,被災地域の人口変遷や復興格差を示し,地域再生を牽引する企業の存在をデータから明らかにしている。

 本稿では,NHK スペシャルをもとに震災ビッグデータが明らかにした東日本大震災の姿と,NHK は放送でビッグデータをどのように活用しようとしているのかを報告する。

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2 震災ビッグデータとは何か

 東日本大震災以降,さまざまな企業や防災関係機関がビッグデータの活用方法を探ってきた。その過程で,ビッグデータだからこそ解明できた震災の姿が見えてきた。その一端を NHK スペシャル『震災ビッグデータ』から紹介したい。

私たちは災害時における状況をどの程度理解しているのだろうか。「東日本大震災が発生した瞬間,浸水域に何人がいたのか?」「津波警報が出た後,人はいつ避難を始めたのか?」「地震後に発生した渋滞の中で,100m 進むのにどのぐらいの時間がかかっ

たのか?」シンプルな問いだが,防災計画を立てるうえで極めて重要である。これま

図1 震災発生時の首都圏の推計人口データ棒グラフが高く,赤いほど人が密集している。

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でも,国や自治体,研究者が,被災者一人ひとりに当時の状況を聞き取り,貴重な証言を基にした報告書をまとめている。しかし,混乱の中での経験を正確に思い出すことは難しく,特に「人数」や「時間」に関する情報はあいまいになる。

番組では,こうした疑問を含め,東日本大震災の全貌を明らかにする目的を掲げ,多くの企業・研究者に協力していただいた。本田技研工業からはカーナビの 140 万台分のプローブデータ,ツイッター社からは地震後 1 週間に国内で発信された 1 億 7,900 万ツイート,ゼンリンデータコムからは携帯電話の位置情報,自衛隊には救助活動記録,他にも道路復旧情報や津波の詳細なシミュレーション結果など,デジタル化されたさまざまなデータを重ね合わせて行う前例のない試みであった。ALL JAPAN だからこそ多面的に,そして定量的なアプローチが可能だったのである。

3 ビッグデータが可視化した震災「その時」

地震発生時,浸水域にいた 70万人

浸水域の人数は,携帯電話の位置情報から算出することができる。このデータには,電話番号や利用登録されている年齢,性別,住所などの個人を特定しうる情報は一切含まれていない。また人数の算出にはデータを数百 m 単位のグリッドサイズで集計し,地域人口を推定するための統計処理も行われている。このデータを青森県から千葉県までの約 1100km にわたる浸水域のデジタルデータを掛け合わせ,3 月 11 日 14 時 46 分の地震の瞬間から,24

時間にわたる人口推移を算出した。地震発生時の人口を 546 か所の浸水域ごとに集計した結果が図 2 である。最も多くの死者・行方不明者が出た石巻市では,市街部だけで 1 万 6,000 人が滞在していたことが判明した。10m を越える津波が襲った岩手県の沿岸部は,ほぼ同一地域のリアス式海岸に居住エリアと職場があるため,浸水域人口が集中していることが分かる。最も人数

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が多かったのは,名取市から岩沼市にかけての平野部。内陸に 5km 以上浸水した地域もあったため,2 万人以上が避難を強いられた。

個別地域ごとに時系列で分析すると,さらに詳細な避難行動が見えてくる。宮城県名取市では地震発生時,約 2 万 1,000 人が浸水域にいた。最初の20 分間で人の数が減少。しかし浸水域外まで避難した人は,全体のわずか5%にとどまった。驚いたのは 15 時 05 分以降。浸水域人口は一転増加し続け,40 分後に地震発生時の人数を超えた。この後,津波が広い範囲に押し寄せた。

なぜ浸水域人口は増加したのか。図 4 は,浸水域から避難した人,浸水域にとどまった人,外から浸水域に入った人の 3 パターンに行動を分けて描いた軌跡である。

名取市の沿岸部では,多くの住民が車を利用して生活をしている。仕事や買い物の最中に強い揺れを感じ,津波警報を耳にした住民は一旦自宅に戻り,家族とともに避難しようとしていた。こうした動きを “ ピックアップ行動 ”と呼んでいる。戻った人の多くが,仙台周辺など車で 30 分から 1 時間ほど

図2 2013年 3月11日,地震発生時の浸水域人口黄色い棒グラフが高いほど,多くの人が浸水域にいたことを示している。

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離れた場所にいたことが,時間差で浸水域人口が増加した要因だと考えられる。地震の後,浸水域に入った人の方が多い市町村は,3 つの県(岩手・宮城・

図3 宮城県名取市〜岩沼市にかけての浸水域人口

図4 宮城県名取市〜岩沼市にかけての避難/救援行動青:避難した人,緑:地震後浸水域に入った人,赤:浸水域にとどまった人

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福島)で 24 にのぼった。命の危険を伴うピックアップ行動だが,家族を助けたいという強い意志に

よるもので,当然,否定することはできない。私たちは「津波警報が出されたら,ほとんどの住民は避難するだろう」という思い込みを捨てたうえで,季節や気温,天候,時間帯によって,浸水域には何人いるのか,平時からしっかり調査し,対策を立てる必要がある。浸水域人口は,ビッグデータを使った同様の方法で調査することは可能なのだ。すでに,研究者と自治体によって,津波に強い街づくりのシミュレーションが進められている。

超渋滞現象 “グリッドロック ”の実態

東日本大震災では,約 17 万台もの車が津波によって流された。約 4,000

人の犠牲者を出した宮城県石巻市では,深刻な渋滞が発生していたことが確認されていた。しかし,いつどこで渋滞が発生し,最終的にどこまで広がったのか。警察による調査でも,壊滅的な被害が出た地域での調査は難しく,当時の状況は分からないままであった。

番組では,本田技研工業から提供された約 140 万台のカーナビデータを用い,交通工学の専門家,東北大学の桑原雅夫教授とともに分析した。図 5

は,震災から 30 分後の石巻市の渋滞状況である。時速 10 キロ以下の道路が赤く塗られている。渋滞は,街を埋め尽くすように発生。実は石巻市の都市構造に課題があった。市街地は,東側に流れる川と西側の水路によって挟まれ“島のような構造”になっていた。さらにその中を横切るように線路があった。地震発生後,避難車両は限られた橋や踏切に集中し,同時多発的に渋滞が発生した。さらにピックアップ行動による “ 島の外 ” から入る車両も入り乱れ,交差点ではどの方向にも車を進めることができない超渋滞現象「グリッドロック」が発生したと考えられている。取材の了解を得たドライバーの軌跡を分析すると,地震から 18 分後,交差点手前で渋滞に巻き込まれ,1 時間経っても 342m しか進むことができなかった。このドライバーの車は,迫

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る津波でタイヤを濡らしながら間一髪避難できたが,車列の後ろでは身動きがとれぬまま津波に流された数多くの車があった。

図5 地震から30分後の車速赤:時速 10 キロ以下の渋滞箇所

図6 超渋滞現象=グリッドロック

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渋滞は,市街地だけにとどまらなかった。石巻市と隣接する女川町からも,多くの車が石巻市街地方向に向かっていた。海岸沿いの道が限られているためである。広域解析を行った結果(図 7),女川町,石巻市,東松島市をつなぐ石巻街道~女川街道が,わずか 1 時間で渋滞し,全長約 30km もの沿岸部で車が動けない状況になっていたことが分かった。沿岸部の主要道路と内陸に抜ける市街地の道路が共にふさがれたことで,被害は拡大したとみられている。

4 ビッグデータを復興に生かす

“ 実質人口 ”を割り出すビッグデータ

震災ビッグデータは,1 分 1 秒を詳細に分析するだけでなく,複数年にまたがる長い期間見つめることで,まったく異なる結果を引き出すことができる。第 2 回の放送では,解析期間を 2 年半に延長し,復興格差を明らかにした。

図7 石巻市〜女川町の渋滞状況

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図 8は,携帯電話の位置情報から算出した市区町村別推計人口の推移である。震災直前を 100%としている。ここで示す推計人口には,住民だけでなく,隣町から移り住んだ人や復旧工事によって長期滞在する人も含まれている。一方,住民票を残していても東京など別の場所で暮らす住民は含まれていない。ビッグデータから得られる人口は,まさに “ その地域で生活・活動する人たち ” の “ 実質人口 ” を表しており,経済活動を捉える基礎データとなる。

このグラフは,震災直後の 3 か月,1 年後,2 年半後と切り分けて読み解くことができる。市の中心部に壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市は,地震直後の 3 か月,一時的に 3 割近く減少したことが分かった。しかし,1

年後の 4 月以降,再び人が戻り始め,上昇に転じている。釜石市は地元企業が他地域に比べて早く事業再開したため,人口流出が最小限に食い止められていた。その後,復旧工事が始まり,周囲の被災地住民が働きに来るなど,実質人口は震災前を上回った。震災ビッグデータから得られた新たな指標を

図8 岩手県5市町の推計人口

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使うことで復興格差を定量的に評価しながら,「施策の効果はいつどの程度現れたのか」「復興格差が生まれた課題はどこにあるのか」などについて毎週のようにモニターし,修正することもできる。

75万社の企業データが描く “被災地経済の傷 ”

震災前後の変化を知るデータの中には,現地調査によって丹念に収集されたものもある。企業信用調査会社・帝国データバンクは,約 100 年前から国内企業の経営状況を調査している。震災後も速やかに被災地に入り,データの更新を続けてきた。震災前後で被災地の経済はどのように変化したのか。75 万社の企業情報とそれぞれをつなぐ数百万本の取引関係をひもといていきたい。

まず,岩手県,宮城県,福島県の 3 県の中で,地震や津波による被害が大きかった地域に立地する企業約 4,500 社を抽出し,震災前後の移転状況を調べた。(図 9)。赤い点が移転前,黄色い点が移転後の所在地を表し,移転の軌跡を黄色い線で結んでいる。原発事故の影響で,多くの住民が避難している福島県では,東京電力福島第一原子力発電所から 20 ~ 30km 圏内の市町村からの移転が顕著であった。特に南部のいわき市,内陸の福島市や郡山市への移転が多いことが分かる。企業移転は,建物や工場だけでなく,従業員や取引関係を伴って移るケースも少なくない。働き口がなければ住民は戻らず,働き手がいなければ企業は再開できない。企業が移転先でのビジネスが軌道に乗れば乗るほど,ふるさと再生が厳しくなるという厳しい現実が見えてくる。

企業間取引データでたどる全国への影響

震災の影響は,被災地にとどまらない。図 10は,2011 年 1 月における,岩手県,宮城県,福島県にある企業の取引関係を表している。線は,モノやカネの動きと置きかえることができる。47 都道府県すべてとつながっており,一般的に震災の影響が伝播するといわれる 2 次取引先までたどると,実

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に国内の企業の半数が影響を受けていることが分かった。図 11は,震災後に断絶した 2 万本超の取引を示している。水産物・水産加工品を出荷していた石巻市や気仙沼市は,東京との取引を多く失っていた。取材ではこうした視覚的なつながりだけでなく,取引維持率,断絶率,新規率,外部依存度,売上増加率などを地域ごとに算出し,先述した実質人口なども重ねながら進めていった。

ビッグデータの強みは,さまざまな情報の掛け合わせによって浮かび上がる地域差をふかんできることである。国や県では,復興支援の 1 つとして被災地企業と県外企業をつなぐマッチング事業に力を入れている。どこに支援の手を差し伸べるべきなのか。定量的に迫ることができる。

図9 被害甚大地域にある約4,500社の所在地と移転場所赤点が震災前の企業所在地,黄点が震災後の移転先。黄色いラインは移転の軌跡。

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図11 震災後に被災3県企業が失った取引関係

図10 震災前の被災3県企業の取引関係

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5 ビッグデータ活用,NHKの模索

ここまで,ビッグデータによって明らかにされた東日本大震災の姿を紹介した。次に,こうしたビッグデータを NHK ではどのように活用しようとしているのか,現時点での取り組みについて触れておきたい。

究極のビッグデータ可視化システム「NHKデジタルアース」

本稿で取り上げたさまざまなデータを統一したフォーマットで蓄積できれば,ビッグデータは,時系列や地域別などさまざまな視点で分析可能になる。また,データベース内に格納するだけでなく,ビッグデータをビッグデータのまま可視化し(集計などの手を加えず),アニメーションさせられたならば,地図を探索しながらデータを読み解くことができる。こうしたコンセプトのもと,本番組のために開発したのが「NHK デジタルアース」である。1

億点のプロットや棒グラフ,数百万点の粒子アニメーションやラインアニ

図12 NHKデジタルアース被災地の情報を入力し即時可視化/分析取材ツールとして活用。

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メーションを瞬時に描画することができる。災害時には震度,津波の観測データ,安否情報,被災状況,ライフライン,避難所,支援物資などさまざまな情報が飛び交うが,これらをデジタルアース内に蓄積するとともに描画する。任意の画角や角度で事象を確認しながら,分析結果をさらに反映させていく。G 空間やストリームデータの取り込みも見据えながら,災害時に即座に活用できるように準備を進めている。

リアルタイムでビッグデータを活用せよ!

NHK デジタルアースよりも,さらにリアルタイム性に特化したシステムも開発している。1 日に 6,000 万~ 8,000 万ものツイートから,事件・事故・災害情報などをリアルタイムで発見する「Tweets Deep Survey(ツイート・ディープ・サーベイ)」がそれで(図 13),Survey =広く見渡し,Deep =深

図13 TweetsDeepSurvey(ツイート・ディープ・サーベイ)1 日 8,000 万ツイートの中から,事件・事故・災害などの情報や画像をリアルタイムで検出。

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く掘り下げるという意味である。ツイート内のコメントを言語解析し,救援要請や被害状況(倒壊,火災,浸水,孤立),支援物資の要望(食料,毛布,トイレ)など,さまざまなカテゴリーのふるいにかけて表示する。東日本大震災の 1 週間で発せられた 1 億 7,900 万ツイートを分析すると,災害関連ツイートは約 3.6%含まれており,検出精度は 87.5%であった。同規模の広域災害が発生した際には,被災地からの声を 1 日約 3,000 ツイートを捉えることができる。すでに報道取材の現場で活用しており,地震,竜巻や台風による倒壊,冠水などで実績を上げている。

リアルタイムで得られた情報を,実写に重ねる技術も開発している。図14は,ヘリコプターで撮影している空撮映像にリアルタイムで人口データや浸水域を重ねている。津波からの避難を呼びかけたり,甚大被害地域を特定できる可能性があり,有効な活用方法を模索している。このほかにも,NHK が日々発信するデータ(原稿テキスト,映像・天気カメラ・空撮など

図14 次世代スカイマップ生中継空撮映像にハザードマップやリアルタイム人口データを合成。

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のメタデータ)から地名を抽出しプロットすることで,NHK が報道できていない「報道空白地域」を把握する「メディア・カバレッジ・マップ」なども次の震災では活用できたらと考えている。

6 おわりに──あらゆる場面で震災ビッグデータの活用を!

将来起こるであろう首都直下地震や南海トラフ地震などの広域災害。数千km の被災予測エリアで暮らす数千万人の命をどうすれば守ることができるのか。震災ビッグデータは,「情報発信」「避難確認」「被害把握」「救援」「支援」「復興」のすべてにおいて活用することができる。しかし,データ利用に関するルール作りや国・民間が情報共有できる協議会の設置,統一フォー

図15 メディア・カバレッジ・マップNHK の原稿に含まれる地名や空撮や天気カメラなどで放送した場所をプロット(赤色の点)報道空白地域を特定する。

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マットおよびシステムの構築など始まったばかりである。私は,震災ビッグデータの適切な利用で,死者・行方不明者を大きく減ら

せるのではないかと期待している。