後脛骨動脈完全閉塞の再開通に athlete wizard pv が有用 ...閉塞部にpcb...

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後脛骨動脈完全閉塞の再開通に ATHLETE Wizard PV が有用であった1例 術者:佐藤 友保 先生 (土谷総合病院 放射線科) JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT Vol. 017 CTA 3年前に右SFA閉塞に対しFP bypassが施行された。2年前に両下肢血行障害が見られ、両側腸骨 動脈・左SFAにステントが留置された。以後経過良好であったが、2ヶ月前から右足の冷感、安静時痛 が見られるようになったため、血管拡張を行うこととなった。 腸骨動脈・左SFAのステントには狭搾は見られなかった。右FP bypass吻合部に狭搾が見られたが、程度的には軽度で、下 腿動脈病変が症状の原因と考えられた(Fig.1)。右下腿動脈はATAPTAは起始部近くで完全閉塞となっていたが、腓骨動脈 は比較的保たれていた。血流改善にはPTAを再開通し、足底動脈血流を増やすことが必要と考えられた。PTA近位閉塞端は一 般的なCTAMIP像)では確認できなかったが(Fig.2)、MPR像にて血管走行を詳細に観察するとやや太い筋肉枝に繋がる索 状影が観察され閉塞しているPTAと考えられた(Fig.3)。 症例:75歳男性  基礎疾患:糖尿病、血液透析歴10年 CTA(骨除去MIP像) MIP像 MPR像 Fig.1 Fig.2 Fig.3

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Page 1: 後脛骨動脈完全閉塞の再開通に ATHLETE Wizard PV が有用 ...閉塞部にPCB 2mm径15mm長での前拡張を行った後(Fig.8)、Bandicoot 2.5mm径10cm長でのPTA全長の拡張を行った(Fig.9)。腓骨動脈起始部

後脛骨動脈完全閉塞の再開通にATHLETE Wizard PV が有用であった1例

術者:佐藤 友保 先生 (土谷総合病院 放射線科)

JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT Vol. 017

CTA

 約3年前に右SFA閉塞に対しFP bypassが施行された。2年前に両下肢血行障害が見られ、両側腸骨

動脈・左SFAにステントが留置された。以後経過良好であったが、2ヶ月前から右足の冷感、安静時痛

が見られるようになったため、血管拡張を行うこととなった。

 腸骨動脈・左SFAのステントには狭搾は見られなかった。右FP bypass吻合部に狭搾が見られたが、程度的には軽度で、下

腿動脈病変が症状の原因と考えられた(Fig.1)。右下腿動脈はATA、PTAは起始部近くで完全閉塞となっていたが、腓骨動脈

は比較的保たれていた。血流改善にはPTAを再開通し、足底動脈血流を増やすことが必要と考えられた。PTA近位閉塞端は一

般的なCTA(MIP像)では確認できなかったが(Fig.2)、MPR像にて血管走行を詳細に観察するとやや太い筋肉枝に繋がる索

状影が観察され閉塞しているPTAと考えられた(Fig.3)。

症例:75歳男性  基礎疾患:糖尿病、血液透析歴10年

CTA(骨除去MIP像) MIP像 MPR像Fig.1 Fig.2 Fig.3

Page 2: 後脛骨動脈完全閉塞の再開通に ATHLETE Wizard PV が有用 ...閉塞部にPCB 2mm径15mm長での前拡張を行った後(Fig.8)、Bandicoot 2.5mm径10cm長でのPTA全長の拡張を行った(Fig.9)。腓骨動脈起始部

JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT

 右大腿動脈を順行性に穿刺した。FP bypass吻合部、膝窩動脈の軽度狭搾にPOBAを行った。

 ATAは起始部から2cmの部位で、PTAは起始部付近で完全閉塞の状態であった(Fig.4)。腓骨動脈のみが保たれた状態で、

下腿遠位部レベルでは側副血行路を介してPTAが良好に描出された。血流改善のためにはPTAの再開通が必要と考えられた

が、断端部の把握はDSAでも把握できなかった(Fig.5)。

 4Fr.血管造影用catheterを膝窩動脈遠位部まで進め、3Fr.microcatheter(Excelcior)をtibioperoneal trunk遠位部まで

進めた。CTAの画像を参考にしながら、PTA分岐部と思われる位置にATHLETE Wizard PV3を慎重に進めたところ、わず

かな抵抗とともにPTA内に進むことに成功し、wireに回転を加えながら末梢へと進めた(Fig.6)。

拡張前のDSA側面Fig. 4 拡張前のDSA正面Fig. 5

血管拡張

 閉塞遠位端には石灰化を伴う病変があり貫通できなかったため、Astato

XS 9-12にて開存しているPTA遠位部に到達することに成功した(Fig.7)。

Plaque shiftに備え腓骨動脈には0.014inch wire(syncro2)を挿入した。PTA

閉塞部にPCB 2mm径15mm長での前拡張を行った後(Fig.8)、Bandicoot

2.5mm径10cm長でのPTA全長の拡張を行った(Fig.9)。腓骨動脈起始部

にも拡張を行い血流再開通に成功した(Fig.10, 11)。ATAの拡張も試み

たがwireが内膜下走行となってしまい、拡張は断念した。

Fig. 6

Rt ATA Pre

閉塞部にWizerdを進めることに成功した。

Page 3: 後脛骨動脈完全閉塞の再開通に ATHLETE Wizard PV が有用 ...閉塞部にPCB 2mm径15mm長での前拡張を行った後(Fig.8)、Bandicoot 2.5mm径10cm長でのPTA全長の拡張を行った(Fig.9)。腓骨動脈起始部

開存しているPTAに到達可能であった。

Fig. 7

PTA閉塞部をPCBにて前拡張した。

Bandicoot にてPTA全長の拡張を行った。

Fig. 8 Fig. 9

拡張後のDSA側面Fig. 10

拡張後のDSA正面Fig. 11

Rt PTA Post

Page 4: 後脛骨動脈完全閉塞の再開通に ATHLETE Wizard PV が有用 ...閉塞部にPCB 2mm径15mm長での前拡張を行った後(Fig.8)、Bandicoot 2.5mm径10cm長でのPTA全長の拡張を行った(Fig.9)。腓骨動脈起始部

2011-02-15-01

JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT

昭和59年 広島大学医学部卒業

平成 元年 広島大学大学院 終了 広島大学病院 放射線部 助手

平成 2 年 国立福山病院 放射線科 医長

平成 5 年 広島赤十字原爆病院 放射線科 医師

平成 6 年 スウェーデン フッディンゲ大学病院留学

      下肢インターベンションを本格的にトレーニングを受ける

平成 7 年 広島大学医学部 放射線医学教室 助手

平成 9 年 土谷総合病院 放射線科 部長

土谷総合病院 放射線科

佐藤 友保 先生

術者紹介

日本ライフライン株式会社 TVI事業部:Tel. 03-6711-5232本 社:〒140-0002 東京都品川区東品川2-2-20 天王洲郵船ビル  http://www.jll.co.jp

〈企画発行〉

 Wizard PVは、先端部が0.010inchと強くテーパーかかっているため、先端の約1~2mmをangle型に曲げて使用すること

が多い。先端部が細いためwire先端の細かいコントロールができ、血管壁の小さな凹凸を見付ける事が可能である。 Wizard

PVには先端が柔軟に作られたPV1と、CTO wireほどではないがやや硬く作られたPV3があり病変部の特性により選択が可

能である。病変部の性状に合わせて選択することで狭窄性病変から閉塞病変までの多くの病変に対応が可能である。

 狭窄性病変ではわずかでも造影剤の流れが確認できれば、コントロールしながら細い内腔にwireを進めることが可能であ

る。また、閉塞性病変でも閉塞部の一部には比較的柔らかい部位が存在するので、そのポイントを見つけてwireを進めるこ

とで通過可能なことも多い。あまり強くおしつける操作をせず、回転を加えることでwireがルートに沿って進み始めるのを

辛抱強く待つことが肝要である。Wizard PVの先端は非常に細く繊細に作られているため、硬い石灰化閉塞に突き当たった

状況で無理にwireを押し進めようとすると、先端がたわんで変形してしまいそれ以上先に進めないことがある。また、変形

のためwireも使用できなくなることがしばしば経験される。PV3の先端は少し硬く作られているので、より閉塞病変を通過

し易いが、高度石灰化病変には、より貫通性にすぐれたいわゆるCTO wireが必要となることもある。

 Wizard PVは使用法を理解し、丁寧な guidewire 操作を行うことで、狭窄性病変から閉塞性病変までの幅広い下肢動脈硬

化性病変症例に対応可能な guidewire と考えられる。

まとめ

考察