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医薬品添加剤の安全性評価 に関する考え方 医薬品医療機器総合機構 笛木

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Page 1: 医薬品添加剤の安全性評価 に関する考え方医薬品添加剤の安全性評価 に関する考え方 医薬品医療機器総合機構 笛木修 はじめに 本発表は発表者の個人的見解に基づくものであり、

医薬品添加剤の安全性評価に関する考え方

医薬品医療機器総合機構

笛木 修

Page 2: 医薬品添加剤の安全性評価 に関する考え方医薬品添加剤の安全性評価 に関する考え方 医薬品医療機器総合機構 笛木修 はじめに 本発表は発表者の個人的見解に基づくものであり、

はじめに

本発表は発表者の個人的見解に基づくものであり、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の公式見解を示すものではありません。

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Page 3: 医薬品添加剤の安全性評価 に関する考え方医薬品添加剤の安全性評価 に関する考え方 医薬品医療機器総合機構 笛木修 はじめに 本発表は発表者の個人的見解に基づくものであり、

医薬品添加剤の安全性評価に必要なデータは何か?

単回投与毒性

反復投与毒性

生殖発生毒性

遺伝毒性

光毒性(全く新規の添加剤で光毒性情報が不足している場合)

局所刺激性(外用製剤等)

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医薬品添加剤の安全性評価においてしばしば問題となる点

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全く新規の添加剤の場合、安全性評価に必要なデータは添加剤メーカーによって収集されていることが多く、それらを活用することによって比較的容易に申請資料の作成が可能である。

一方、新規性の低い、従来から用いられている添加剤で使用前例量を超えたのみといった場合では、全ての安全性評価資料を毒性試験に基づいたデータで揃えることは困難な場合が多い(特に古くから使用実績のある添加剤でこの傾向が強い)

どうすれば良いか?

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医薬品添加剤の安全性評価データが不足している場合の対応

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新たにGLP条件下で足りない試験を実施するのが一番確実だが…

既存の情報やデータを活用して解決できないか?

コスト、試験期間等の問題が…

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パターン16

文献情報の活用

信頼できるものであれば、文献中の安全性評価データを活用可。

工業分野等で汎用される物質の場合は、公的機関での安全性評価報告書が存在するものも多い。

ただし、あまり古い報告や、評価物質の純度や規格の同一性に疑問がある場合には、限定的な評価となることも…。

最新のデータベースで、十分な検索を行うこと。

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パターン27

食品添加物での使用実績等の活用

経口投与製剤の添加剤の場合、食品添加物としての使用実績を考慮することができる。

ADI(1日摂取許容量)等のデータが活用できる。

食品として摂取されている実績があれば、この点も考慮される。

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パターン38

化粧品・部外品での使用実績の活用

外用製剤の添加剤の場合、化粧品・医薬部外品添加剤としての使用実績を考慮することができる。

ただし、十分な安全性データの収集が行われているわけではないので、これらのデータのみから、完全な安全性担保は困難。

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パターン49

有効成分としての使用実績の活用

有効成分として用いられている成分を添加剤として用いる場合、有効成分としての使用時における安全性情報を安全性担保の一部として考慮することができる。

ただし、添加剤としての使用量において薬理作用を示さず、十分な安全性が担保されていることを示す必要がある。

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パターン510

海外での使用実績の活用

海外における使用実績についても考慮することができる。

使用されている国、地域、使用実績のある期間、使用量等のデータを考慮する。

ただし、当該データのみから、完全な安全性担保は困難。

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パターン611

投与経路違いの前例データの活用

より厳しい曝露条件で、十分な量の使用前例があれば、基本的に全身毒性については担保できていると考えて良い(例えば静注10mg/kgの使用前例があり、今回皮下投与1mg/kgで申請の場合)。投与経路の差異に伴う代謝の違いについては考慮が必要。

投与経路の違いに伴う局所毒性の発現の差については、別途考察が必要。

外用で経皮吸収されない添加剤の使用実績は経皮投与の使用実績に適用可能。

歯科外用及び口中用製剤で、全量が嚥下される場合は、経口投与の使用実績に適用可能。

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パターン712

類似化合物の前例データの活用形状違いの類似化合物

構成成分が同一と考えられる場合(例:トウモロコシデンプンとトウモロコシデンプン造粒物)は、お互いの安全性データを相互利用できる。

水和物違いの類似化合物水和物違いの化合物は、お互いの安全性データを相互利用できる。

塩違いの類似化合物基本的に別物として取り扱うが、妥当な理由があれば、安全性データの一部として活用できる。

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パターン713

類似化合物の前例データの活用

重合度違いの類似化合物

近似した重合度のポリマーの安全性情報についても、部分的に活用可能(全面的な安全性担保は困難)。

該当ポリマーの上下分子量にあるポリマーで共に十分な安全性が担保されていれば、その情報は活用可能(例:n=300と600で十分な使用実績があれば、n=400の安全性担保に活用可能)。

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パターン814

添加剤が生体内成分の場合

生体内における恒常性を乱さない範囲の添加量であれば、安全性担保の理由として採用可能。

生体内成分といえども、大量投与され、生体内における恒常性に影響する可能性があるのであれば、十分な安全性担保が必要。

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パターン915

動態を考慮した安全性担保

外用の高分子ポリマー等で、皮膚からの透過が基本的に生じない場合には、全身毒性については限定的な評価で差し支えない。

ただし、不純物、分解物としてモノマー等が存在する場合については、これらの安全性担保が必要。

損傷皮膚への適用も考えられることから、この点も考慮する。

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パターン1016

投与経路の特殊性を考慮した安全性担保

添加剤においては十分な長期投与時の安全性担保が必要であるが、脊椎腔内投与や関節腔内投与など、特殊な投与経路であり、臨床においても連日の長期投与が行われる可能性が極めて低いと考えられるのであれば、当該投与経路で考えられる最も過酷な臨床使用実態を十分に上回る安全性が述べられるだけのデータがあれば良い。

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パターン1117

機能性を有する添加剤における安全性担保

DDSに用いられる高分子ミセルや、ワクチンのアジュ

バント等、機能性を有する添加剤については、その性質上、生体への影響を示す可能性が高い。これらについては「特定の製剤や特定の条件下においてのみ使用が認められた添加物」として取り扱う前提で、該当する製剤の用法・用量の範囲での十分な安全性担保が出来ていれば良い。

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医薬品添加剤安全性評価の要点18

適切な非臨床評価データがあれば、まずそれを活用。

上記がない場合には、他の評価可能なデータについて網羅的に調査(入手可能なデータは全て活用)。

投与経路等を考慮し、必要な評価内容の絞り込み。

単独では十分でない安全性評価資料についても、他の資料との組み合わせで活用。

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医薬品添加剤安全性評価とは?19

決定的な証拠のない中で、様々な状況証拠を収集し、論理的に組み立てて、被告人(新添加剤)の無罪を導き出すよう

なプロセス。

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医薬品添加剤の安全性評価に関するQ&Aをいくつかピックアップしてご紹介します。

添加剤Q&A20

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外用の添加剤の評価21

Q1

A1

外用基剤の添加剤における毒性評価は、経皮投与のみで全身に及ぼす影響を考察して良いか?他の経路を選択する場合の事例は?

経皮投与で基本的に十分と考えるが、通常は皮膚からの全身曝露は低いと考えられるので、十分な安全域を提示するという目的で経口投与や静注等の高曝露系の投与経路のデータがあれば、より望ましい。

ただし、それらの投与経路のデータの場合、投与経路の差異に伴う代謝の違いなどを考慮する必要がある場合がある。なお、分子量等の要因に伴い、経皮的に吸収が行われないことが適切に示されるのであれば、全身の安全性評価については限定的(モノマー等の安全性評価)で差し支えない場合もある。

Page 22: 医薬品添加剤の安全性評価 に関する考え方医薬品添加剤の安全性評価 に関する考え方 医薬品医療機器総合機構 笛木修 はじめに 本発表は発表者の個人的見解に基づくものであり、

坐剤の添加剤の評価22

Q2

A2

坐薬の基剤となる添加剤の毒性試験の代替経路は経口投与で良いか?

基本的に差し支えないと考えるが、投与経路の差異に伴い、全身移行する物質に違いが生じる場合は、適切な他の代替経路での試験を考慮する必要がある。また、直腸粘膜への刺激性については別途考慮の必要がある。

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製剤における安全性の評価23

Q3

A3

製剤での毒性試験が実施され、器官毒性が認められない場合、添加剤のみの試験は省略できると考えて良いか?

製剤を用いた毒性試験で十分な投与量まで無毒性量が得られている場合には、製剤中に含有されている添加剤の安全性担保は可能と考えられ、添加剤単独での試験は省略可能と考える。

ただし、製剤化することによって添加剤に化学変化が生じたり、他の成分との作用により毒性がマスクされる等の影響が予測される場合には添加剤単独での評価が必要となる場合もあるかもしれない。

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製剤における安全性の評価24

Q4

A4

臨床適用期間は極めて短く、生殖発生毒性試験の投与期間に達せず、胎盤通過のない場合、試験実施に関する考え方をご教示頂きたい。

臨床適用期間が短いことは生殖発生毒性試験の省略条件とはならないと考える(他の製剤で長期使用される可能性もある)。また、胎盤通過性がない場合でも、母体毒性や胎盤への毒性により二次的に胎児への影響を生じる可能性は否定できない。更に、生殖発生毒性試験においては胎児への影響のみでなく、母体への影響についても観察の必要があると考える。詳細はケースバイケースになることから、機構相談を活用することをお勧めする。