正常圧水頭症 - 学校法人東邦大学...2010/11/18 ·...
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2010年11月13日東邦大学医療センター佐倉病院市民講座
正常圧水頭症正常圧水頭症正常圧水頭症
脳神経外科脳神経外科
脳脊髄液(CSF)Cerebro-Spinal Fluid
(簡単に髄液と呼ぶことも多い)
‒ 髄液は体の中で一番透き通っている液体(99%水)
‒ 脳室と呼ばれる風船のような脳の中心部の部屋の中で髄液が作られる
‒ 脳室内で作られた髄液は脳と脊髄の周りを循環して静脈に吸収される
‒ 髄液は1日に約450ml産生され、2,3回入れ替わる
水頭症とは
何らかの原因で髄液の流れや吸収が妨
げられると脳室に髄液
が溜まってパンパン
なり、脳室が大きくな
り脳を圧迫する。
頭蓋内圧が高くなり、
症状が出てくる。
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頭蓋内圧が正常範囲(150~180㎜H2O)でありながら、
脳室拡大と神経
症状が現れる
ことがある。
(高齢者)。
正常圧水頭症
正常圧水頭症
特発性正常圧水頭症(iNPH: idiopathic Normal
Pressure Hydrocephalus )
続発性正常圧水頭症
正常圧水頭症
特発性正常圧水頭症(iNPH: idiopathic Normal
Pressure Hydrocephalus )
続発性正常圧水頭症
拡大した脳室のCT像拡大した脳室のCT像
脳萎縮? 水頭症?
iNPHの画像所見の特徴iNPHの画像所見の特徴
• 脳室の拡大。シルビウス裂の拡大。• 高位円蓋部の髄液腔の狭小化。• MRI上の脳室周囲および深部白質変化は健常者に比べて高頻度で強いが必須の所見ではない。
アルツハイマー病 血管性痴呆
頭頂部の脳溝と脳室拡大の程度が相関していない
頭頂部の脳溝と脳室拡大の程度が相関している
特発性正常圧水頭症
脳萎縮? 水頭症?
・脳室拡大・高位円蓋部のくも膜下腔狭小化(脳溝消失)
・シルビウス裂拡大
正常圧水頭症は高齢者に多く発症
特発性正常圧水頭症:原因が不明で、先行疾患が明らかでないために見過ごされる可能性がある。
続発性正常圧水頭症:くも膜下出血の後に多く、先行疾患が明らかなため的確に治療されている。
正常圧水頭症は高齢者に多く発症
特発性正常圧水頭症:原因が不明で、先行疾患が明らかでないために見過ごされる可能性がある。
続発性正常圧水頭症:くも膜下出血の後に多く、先行疾患が明らかなため的確に治療されている。
水頭症の治療水頭症の治療◇髄液シャント術(短絡術)◇◇髄液シャント術(短絡術)髄液シャント術(短絡術)
現在ではほとんど行われません
シャントシステムシャントシステム
なぜ、iNPHになるの?なぜ、iNPHになるの?
何らかの原因で、髄液循環がスムースでなくなる
脳室や髄液腔(クモ膜下腔)が拡大すると周囲の
脳組織を 圧迫したり、血流が悪くなる。
歩行障害・痴呆・尿失禁といった症状が進行する。
何らかの原因で、髄液循環がスムースでなくなる
脳室や髄液腔(クモ膜下腔)が拡大すると周囲の
脳組織を 圧迫したり、血流が悪くなる。
歩行障害・痴呆・尿失禁といった症状が進行する。
高血圧・糖尿病などがINPHになる危険因子
特発性正常圧水頭症が注目されてきたのは
特発性正常圧水頭症が注目されてきたのは
• 高齢者の増加
• 歩行障害、認知症、尿失禁といった症状の改善によって介護度が軽減可能
• シャント有効例の選択が高い確率で可能となり装置も改良された。
• 特発性正常圧水頭症診療ガイドラインの発行(平成16年5月)
• 高齢者の増加
• 歩行障害、認知症、尿失禁といった症状の改善によって介護度が軽減可能
• シャント有効例の選択が高い確率で可能となり装置も改良された。
• 特発性正常圧水頭症診療ガイドラインの発行(平成16年5月)
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アルツハイマー 50%血管性痴ほう 15%前頭葉型痴 10%パーキンソン 5%特発性INPH 5%その他 15%
前頭・側頭型痴呆:10%
パーキンソン病:5%
iNPH:5%
その他:15%
アルツハイマー病:50%
脳血管性痴呆:15%
iNPH患者現時点で9万人
特発性正常圧水頭症:iNPH認知症状を伴う脳の疾患
特発性正常圧水頭症:iNPH認知症状を伴う脳の疾患
歩行障害(94~100%)、認知症(69~98%)、尿失禁(54~83%)歩行障害(94~100%)、認知症(69~98%)、尿失禁(54~83%)
特発性正常圧水頭症:iNPH三徴候の頻度は?
特発性正常圧水頭症:iNPH歩行障害の症状
•小刻み歩行 (小股でよちよち歩く)
•外股歩行 (足が開き気味で歩く)
•すり足歩行 (足が上がらない状態)
•不安定な歩行(特に転回時)•第一歩が出ない (歩きだせない)
•突進現象 (うまく止まれない)
•号令や目印で歩行改善が乏しい。
•小刻み歩行 (小股でよちよち歩く)
•外股歩行 (足が開き気味で歩く)
•すり足歩行 (足が上がらない状態)
•不安定な歩行(特に転回時)•第一歩が出ない (歩きだせない)
•突進現象 (うまく止まれない)
•号令や目印で歩行改善が乏しい。
特発性正常圧水頭症:iNPH認知症/尿失禁の症状
•記銘力低下•知的作業速度低下•反応性・自発性の低下
•切迫性尿失禁
認知症
尿失禁
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iNPHガイドライン:診断フローチャート60歳以上、症状(歩行障害、認知障害、尿失禁の一つ以上)他の神経・非神経疾患で説明不可
脳室拡大:Evans index>0.3先行疾患不明
[高位円蓋部脳溝狭小化]
腰椎穿刺:圧20cm水中以下、細胞蛋白増加なし実際には髄液が水様透明でCSFタップテストを可能とする
CSF タップテスト :30ml/回
症状改善 症状非改善
シャント術実施
経過観察
再度CSF tap test改善あればシャント術実施
オプション:CSFドレナージテスト髄液流出抵抗測定ICPモニタリング 等
(適応あれば)
神経内科、脳神経外科に紹介
*CSFタップテストまたはオプションが陽性ならprobable INPHとする。
iNPH
possible
probable*
・30mlほどの髄液を排出
症状 +脳室拡大+
髄液排除試験≪タップテスト≫
CSFタップテスト
歩行障害などの症状の改善が得られたら髄液シャントが有効とわかります。
脳室・くも膜下腔の術前・後の変化
術前 術後シャント術後
手術後シルビウス裂、脳室ともに縮小
シャント前後での変化
脳室の容積の低下とともにシルビウス裂の容積も低下した。
シャント術前 シャント術後
INPH術後の短期, 長期予後はわかっているか?
早期改善率:歩行障害80~90%, 痴呆30~80%, 尿失禁20~80%
術後3ヶ月~5年の追跡では、シャント効果は短期(3ヶ月~2年)で31~100%、長期(3年~5年)で67~91%とする報告(1,2,3)があり、高齢者であっても長期間効果の持続する例も多い。
(1) Krauss JK ら, 1996 (2) Raftopoulos C ら, 1994 (3) Mori Kら, 2001
≪まとめ≫
•歩行障害、認知症、尿失禁といった症状がある原因不明の水頭症,
特発性正常圧水頭症(iNPH)が注
目されている。
•このiNPHは髄液シャント術によって症状が改善し得る。