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Page 1: 「図解 エネルギー工学」 サンプルページガスタービン(gas turbine)の基本構造は,図2.21に示すように,圧縮機,燃焼器 およびタービンなどから構成されている.ガスタービンは,回転式の圧縮機を用いて
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「図解 エネルギー工学」

サンプルページ

この本の定価・判型などは,以下の URL からご覧いただけます.

http://www.morikita.co.jp/books/mid/067061

※このサンプルページの内容は,初版 1 刷発行当時のものです.

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  i

エネルギーは,人類が誕生して「火」を使い始めて以来,われわれの生活に欠かせないものとなった.その後,経済活動の発展とともにエネルギー消費量が増大し,近年のエネルギー危機や環境問題は世界の最大関心事となり,さまざまな国際会議で議論されるようになった.一方,資源の乏しいわが国ではエネルギーを輸入のみに頼るのではなく,風力や太陽エネルギーなどの自然エネルギーや,燃料電池など二酸化炭素を排出しないエネルギーの利用が注目され,分散型エネルギーシステムの導入が進められている.エネルギーには,一次エネルギー・二次エネルギーなどがあるが,文明が高度化した現代社会では,動力や電力の形に変換した二次エネルギーが主要である.さらに,エネルギーの有効利用という観点からは,変換効率に対する考察を避けることはできない.エネルギー変換という概念が学問体系を形成したのは,戦後の産業技術が発展した

1970年代である.ひと口に「エネルギー」といってもさまざまな形態があり,熱エネルギー,運動エネルギー,電気エネルギー,化学的エネルギーなど列挙するときりがない.また,「変換」という言葉は,熱エネルギーを電力に変換することも,その逆に電力を消費して熱エネルギーに変わることも意味する.このようなことから,従来のエネルギー変換の書物は,執筆者の視点でさまざまな内容が構成されてきた.本書では,熱流体系を中心とした熱エネルギー,風力・水力エネルギーおよび太陽電池や燃料電池にかかわる光・化学的エネルギーを扱う.また,変換とは,それらのエネルギーから動力や電力を生み出す変換と定義する.筆者は大学において三十年以上講義を行ってきたが,大学や高専の機械系学科で開

講される「エネルギー変換工学」では,授業に使えるテキストが少ないという現状がある.概論の解説はあっても,基礎的な原理や理論を初心者にもわかるように平易に解説されているテキストは見当たらない.また,自然エネルギーなどを利用・普及させる際には,変換効率に対する考察が欠かせないが,系統的に述べられているものは少ない.自治体や企業のエネルギー関係技術者にとって,変換効率は経済的視点からも必須の検討事項であり,これらのニーズにも応える必要がある.このような観点から,本書では,機械系技術者として習得しておかなければならな

いエネルギー変換の知識を,基礎からわかりやすく解説し,それらの変換効率にも言

まえがき

まえがき(五).indd 1 2011/02/22 14:48:30

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ii  まえがき

及した.また,抽象的な事柄はできるだけ具体的に説明することとし,図にはできるかぎりの注釈を加え,視覚的にも理解を助ける工夫をした.本書は,大学・高専の初学者あるいは独学で学ぶ自治体や企業の技術者を念頭にお

いて執筆されたものである.高校卒業程度の知識があれば理解できるように,可能なかぎり平易に解説することを試みた.エネルギー変換にかかわる学問は広範囲にわたり,たとえば,熱力学,流体力学および化学などの専門的基礎知識が必要である.本書では,それらの専門書を参照することなく理解できるように,各専門分野の基礎についても詳述する努力をした.しかし,限られた紙数のため,説明が十分でない箇所もあるかもしれない.本書で不十分な点は,他書を参考とされることをお願いしたい.終わりに,本書の企画・編集・出版にあたっては森北出版の加藤義之氏に数多くの

ご助言と多大なご尽力をいただいた.ここに心から感謝の意を表し,あらためて御礼申し上げる.

2011年 2月

平田哲夫 

▪ 平田哲夫  編集,第 1章,第 2章(2.1)~(2.4),付表▪ 田中 誠  第 2 章(2.5),第 3章(3.3)(3.4),第 5章(5.1)(5.3)▪ 熊野寛之  第 3 章(3.1)(3.2),第 5章(5.2)▪ 羽田喜昭  第 4 章

● 担 当 

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第 1章 エネルギーの種類とその変換 11.1 エネルギーの種類と形態 1

 1.1.1 一次エネルギーと二次エネルギー  1 1.1.2 エネルギーの種類  2

1.2 エネルギーの変換方法 5

1.3 エネルギーの変換と二酸化炭素排出量 6

第 2章 熱エネルギーから力学的エネルギーへの変換 92.1 熱力学の理論 9

 2.1.1 熱力学第一法則  9 2.1.2 理想気体の状態変化  14

 2.1.3 熱力学第二法則とカルノーサイクル  21

 2.1.4 エントロピー  24

2.2 内燃機関 27

 2.2.1 オットーサイクル  29 2.2.2 ディーゼルサイクル  31

 2.2.3 サバテサイクル  34 2.2.4 内燃機関の熱効率  36

2.3 ガスタービン 37

 2.3.1 ブレイトンサイクル  38 2.3.2 エリクソンサイクル  42

 2.3.3 ジェットエンジンサイクル  44 2.3.4 ガスタービンの熱効率  47

2.4 蒸気タービン 48

 2.4.1 蒸気の状態変化  48 2.4.2 ランキンサイクル  52

 2.4.3 蒸気タービンの熱効率  57

2.5 外燃機関 59

 2.5.1 スターリングエンジン  59

 2.5.2 スターリングエンジンの熱効率  64

演習問題 68

第 3章 熱エネルギーから電気エネルギーへの変換 693.1 火力発電 69

 3.1.1 燃焼による熱エネルギーの発生  69 3.1.2 火力発電のサイクル  77

 3.1.3 火力発電の熱効率  82

3.2 原子力発電 84

 3.2.1 核分裂による熱エネルギーの発生  84

 3.2.2 核融合による熱エネルギーの発生  88

もくじ

  iii

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iv  もくじ

 3.2.3 原子力発電のサイクル  89 3.2.4 原子力発電の熱効率  92

3.3 地熱発電 93

 3.3.1 地熱エネルギー  93 3.3.2 地熱発電のサイクル  95

 3.3.3 地熱発電の熱効率  98

3.4 海洋温度差発電 99

 3.4.1 海洋熱エネルギー  100 3.4.2 温度差発電のサイクル  101

 3.4.3 温度差発電装置  103 3.4.4 温度差発電の熱効率  103

演習問題 104

第 4章 風力・水力エネルギーから電気エネルギーへの変換 1054.1 風力・水力エネルギー 105

4.2 流体力学の理論 106

 4.2.1 連続の式とベルヌーイの定理  106 4.2.2 物体にはたらく流体力  110

4.3 風力発電 113

 4.3.1 風車の基礎理論  113 4.3.2 風車の種類  117

 4.3.3 風車の変換効率  120

4.4 水力発電 125

 4.4.1 水車の基礎理論  126 4.4.2 水車の種類  129

 4.4.3 水車の変換効率  132

4.5 波力発電 139

 4.5.1 波力エネルギー  139 4.5.2 波力発電装置  141

 4.5.3 波力発電の変換効率  142

演習問題 145

第 5章 光・化学・熱エネルギーから電気エネルギーへの変換 1465.1 太陽光発電 146

 5.1.1 太陽光エネルギーの性質  146 5.1.2 光起電力の原理  149

 5.1.3 太陽電池  152 5.1.4 太陽電池の変換効率  154

5.2 燃料電池 156

 5.2.1 化学反応エネルギー  157 5.2.2 電力発生の原理  161

 5.2.3 燃料電池の種類  167 5.2.4 燃料電池の変換効率  170

5.3 熱電発電 173

 5.3.1 熱電発電の原理  173 5.3.2 熱電発電の変換効率  175

演習問題 179

演習問題略解 180

参考文献 183

付表(蒸気表) 184

さくいん 189

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2.3 ガスタービン  37

サバテサイクル:ηth = 1− 1εκ−1

ασκ − 1α− 1 + ακ (σ − 1) (2.105)

ここで,圧縮比: ε = V1/V2,締切比:σ = V3/V2,圧力比:α = p3/p2である.図 2.20には,比熱比をκ = 1.4,圧力比をα = 1.5として,各サイクルの理論熱効

率を比較した.図より,熱効率を高めるには,いずれのサイクルにおいても圧縮比ε

を大きくすればよいことがわかる.また,ディーゼルサイクルやサバテサイクルは空気のみを圧縮するため,オットーサイクルに比べて圧縮比を高くできる特長があり,高い経済性が期待できることがわかる.

1

0.8

0.6

0.4

0.2

05 10 15 20 25

ηth

ε

オットー

サイクル

サバテ

サイクル

ディーゼル

サイクル

κ=1.4

α=1.5σ=1.5 σ=1.5

2.02.0

2.5

2.5

図 2.20 内燃機関の熱効率

図 2.19に示したように,サバテサイクルの燃焼初期は等容変化となるため,後半の等圧燃焼の容積変化はディーゼルサイクルに比べて小さくなる.したがって,サバテサイクルの締切比σはディーゼルサイクルよりも小さくなる.図 2.20でこのことを考慮すると,ディーゼルサイクルとサバテサイクルの熱効率には大きな相違がないことがわかる.

2.3 ガスタービン

ガスタービン(gas turbine)の基本構造は,図 2.21に示すように,圧縮機,燃焼器およびタービンなどから構成されている.ガスタービンは,回転式の圧縮機を用いて空気を連続的に取り込み,燃焼器で燃焼した高温高圧の燃焼ガスでタービンを回転させて,圧縮機を駆動し,外部へ仕事を取り出す熱機関である.ガスタービンには密閉型と開放型がある.密閉型は,燃焼器は用いずに,高温の排熱などを利用することにより作動ガスを加熱して高温高圧状態にし,タービンを駆動した後,空気などで作動

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38  第 2章 熱エネルギーから力学的エネルギーへの変換

ガスを冷却して循環させる方式である.開放型は,図のように,空気を取り込み燃焼させて,排気ガスを大気中に放出する方式である.開放型ガスタービンの特長としては,小型で大出力,冷却装置が不要,回転機関であるため往復運動を回転運動に変える機構が不要などが挙げられる.熱効率はピストンエンジンに比べて低いが,排熱を利用した複合サイクルとすることにより総合効率を高めることができる.ガスタービンには,発電などに利用する産業用ガスタービンと,航空機の推力に利用するジェットエンジンとがある.本節では,その基本サイクルであるブレイトンサイクル,ジェットエンジンサイクルなどについて説明する.

2.3.1 ブレイトンサイクルガスタービンの基本サイクルをブレイトンサイクル(Brayton cycle)といい,燃焼

過程が等圧で行われるため,等圧燃焼サイクルともいう.図 2.22に,開放型ブレイトンサイクルの構成図と p-V線図を示す.図(a)の構成図は,図 2.21の構造図を簡略化して表したものである.また,図 2.22(a),(b)の状態の番号は対応している.次に,それぞれの過程における状態変化について状態番号を用いて説明する. 1) 1→ 2:断熱圧縮過程  圧縮機に取り込んだ空気を断熱的に圧縮する過程であり,式(2.42)より次式の関係がある.

T1

T2

=p1

p2

(κ−1)/κ

(2.106)

2) 2→ 3:等圧加熱過程  燃焼器において,燃料と圧縮空気が流動しながら連続的に燃焼するので,等圧過程と考える.燃焼ガスが受ける熱量Q1は,等圧変化の式(2.33)より次式となる.

Q1 = mcp (T3 − T2) (2.107)

3) 3→ 4:断熱膨張過程  高温高圧になった燃焼ガスが,タービンを回転させて仕事を取り出す過程である.断熱膨張することから,1)断熱圧縮過程と同様に,次式の関係がある.

圧縮機

空気

燃料燃焼器

タービン

排気

動力

静翼動翼

図 2.21 ガスタービンの構造

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2.3 ガスタービン  39

T4

T3

=p4

p3

(κ−1)/κ

=p1

p2

(κ−1)/κ

(2.108)

4) 4→ 1:等圧放熱過程  この過程では,実際には燃焼ガスが放熱するわけではない.図 2.22(a)でわかるように,状態 4では燃焼ガスを大気へ放出し,状態 1では大気中から新しい空気を取り込むことになるので,等圧での放熱過程とみなす.燃焼ガスの放熱量をQ2とすると,等圧変化の式(2.33)より次式となる.

Q2 = mcp (T4 − T1) (2.109)

熱効率は?以上から,理論熱効率は式(2.53)と式(2.107),(2.109)より次式のように求まる.

ηth = 1− Q2

Q1

= 1− T4 − T1

T3 − T2 (2.110)

また,ブレイトンサイクルでは,圧縮過程における圧力比(pressure ratio)ϕを,次式で定義する.

ϕ = p2p1

(2.111)

圧力比を用いると,式(2.106),(2.108)はそれぞれ次式となる.T1

T2

= 1ϕ(κ−1)/κ ,

T4

T3

= 1ϕ(κ−1)/κ (2.112)

上式を式(2.110)に代入すると,ブレイトンサイクルの理論熱効率が次式のように求まる.

ηth = 1− 1ϕ(κ−1)/κ (2.113)

1

2 3

4

Q1

Q2

タービン

空気 燃料燃焼器

圧縮機

2 3

Q1

燃焼器での等圧加熱

等圧変化

断熱膨張により

タービンで外部

に仕事をする

等圧冷却

実際には燃焼ガスを大

気中に放出し新たに空

気を取り込んでいる

4Q2

1等圧変化

圧縮機での

断熱圧縮

断熱変化

断熱変化

( a) 構成図 ( b) p-V線図

V

p

図 2.22 ブレイトンサイクル

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40  第 2章 熱エネルギーから力学的エネルギーへの変換

ブレイトンサイクルの熱効率を高めるには?ブレイトンサイクルの熱効率は,式(2.113)で与えられるから,圧力比ϕを大きくすればよいことがわかる.ほかには,以下に述べる大気へ放出する燃焼ガスのエネルギーを回収する方法(再生サイクル)や受熱量を高める方法(再熱・中間冷却サイクル)などがある. (1) ブレイトン再生サイクル

ブレイトンサイクルの排気ガスは,比較的高温で高い熱エネルギーを有している.それをそのまま廃棄せずに,その熱を回収することにより熱効率を向上させることができる.このサイクルをブレイトン再生サイクル(regeneration Brayton cycle)といい,図 2.23に構成図と p-V線図を示す.図(a),(b)の状態の番号は対応している.再生サイクルでは,図(a)に示すように,状態 4の排気ガスの熱エネルギーを,熱

交換器を用いて,状態 2の圧縮空気を加熱する.このとき,熱交換器での熱交換が理想的(交換効率が100%)に行われたとすれば,両者のガス流量が等しいので,

T2 = T4 , T2 = T4 (2.114)となる.すなわち,T4 → T4の排熱(QR2)をT2 → T2の加熱(QR1)に再利用することができる(QR1 = QR2).このとき,正味の加熱量Q1および放熱量Q2は,

Q1 = mcp (T3 − T2) (2.115)

Q2 = mcp (T4 − T1) (2.116)

となる.以上より,理論熱効率は,式(2.114)~(2.116)より次式のように求まる.

ηth = 1− Q2

Q1

= 1− T4 − T1

T3 − T2= 1− T2 − T1

T3 − T4 (2.117)

熱交換器で排

熱により加熱

燃焼器での

等圧加熱

断熱膨張により

タービンで外部

に仕事をする

熱交換器で圧縮

したガスを加熱

圧縮機での

断熱圧縮

等T線

断熱変化

断熱変化

1

2 3

4

2

1 4

2′

4′

3

Q1

Q2

QR2

QR1

QR2Q2

Q1

QR1

空気

熱交換器4′

2′

燃焼器

燃料

タービン圧縮機 V

p

( a) 構成図 ( b) p-V線図

図 2.23 ブレイトン再生サイクル

第2章(五).indd 40 2011/02/22 15:01:41

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2.3 ガスタービン  41

また,温度比(temperature ratio)τを次式で定義する.

τ = T3

T1 (2.118)

式(2.117)を式(2.112)を用いて変形し,式(2.118)を代入すると,次式が得られる.

ηth = 1− ϕ(κ−1)/κ

τ (2.119)

(2) 再熱・中間冷却ブレイトンサイクル

一般的に,熱機関の熱効率を向上させるためには,熱効率の式(2.53)からわかるように,受熱量Q1を大きくすればよい.したがって,ブレイトンサイクルのタービン出力を向上させるためには受熱量を大きくすればよいが,大きくしすぎるとタービン入口温度が上昇してしまい,タービン翼損傷の原因となる.そこで,図 2.24(a)に示すように,タービンを多段にし,タービン 1で仕事を取り出し,膨張させることによりガスの温度を下げ,それを再度燃焼させて,タービン 2でも仕事を取り出す方法がとられる.このサイクルをブレイトン再熱サイクル(reheat Brayton cycle)といい,この T-S線図を図(b)に示す.破線で示したサイクルは,ブレイトンサイクルである.再熱サイクルを用いると,タービン 1で断熱膨張(状態3→ 4)して温度が下がるので,ブレイトンサイクルに比べて燃焼ガスの最高温度を下げることができ,タービンの最高許容温度の制限内に収めながら,タービン出力を増加できる.また,タービンを 2軸に分割できるため,負荷変動に対しても 1基は高効率で稼働できる定格運転が可能となるので,全体の熱効率を高めることができる.図 2.25に,タービン入口の燃焼ガス温度を下げるもう一つの方法を示す.図(a)に

空気

圧縮機 タービン 1 タービン 2

( a) 構成図 ( b) T-S線図

燃焼器 1 燃焼器 2

燃料 燃料

1

2 3

4

5

6

T

53

46

S

1

2 等圧変化

燃焼器 2での

等圧加熱

燃焼器 1での

等圧加熱

燃焼ガスの最高温度を

下げることができる

断熱膨張によりタービン

2で外部に仕事をする

断熱膨張によりタービン

1で外部に仕事をする

燃焼ガスを大気に放

出するので等圧放熱

断熱圧縮によりエン

トロピーは一定

等圧変化

3′

図 2.24 ブレイトン再熱サイクル

第2章(五).indd 41 2011/02/22 15:01:43

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42  第 2章 熱エネルギーから力学的エネルギーへの変換

示すように,圧縮機を 2段にし,圧縮機 1からの圧縮空気を中間冷却器で冷却して,圧縮機 2で再度圧縮する.この T-S線図を図(b)に示す.破線で示したサイクルは,ブレイトンサイクルである.中間冷却によりT2からT3へ温度が下がるので,圧縮機2の出口温度T4も低下する.その結果,燃焼ガスの最高温度が低下し,再熱サイクルと同様な効果が得られる.ブレイトン再熱サイクルおよび中間冷却を用いるサイクルの熱効率は,単純なブレイトンサイクルの熱効率と比べて低くなるが,比出力(単位質量のガスが単位時間にする仕事)を高くできるという特長がある.

2.3.2 エリクソンサイクル前項で述べた再熱および中間冷却を多段にした場合の T-S線図を,図 2.26(a)に

示す.段数を無限にすることにより,理論的には等温圧縮(状態1→ 2)および等温膨張(状態3→ 4)が可能である.さらに,等圧加熱(状態2→ 3)および等圧放熱(状態

4→ 1)の温度範囲が同一であることから,熱交換器を用いて等圧放熱時の排熱QR2を等圧加熱QR1に利用することができる.このようなサイクルをエリクソンサイクル(Ericsson cycle)という.エリクソンサイクルは二つの等圧変化と二つの等温変化からなり,この p-V線図を図(b)に示す.図(a),(b)の状態の番号は対応している.次に,それぞれの過程における状態変化について状態番号を用いて説明する. 1) 1→ 2:等温圧縮過程  圧縮過程が等温変化であるので,放熱量 Q2は式(2.29),(2.30)より次式となる.

空気

中間冷却器

燃料燃焼器

圧縮機 1 圧縮機 2 タービン

( a) 構成図

1

23 5

4

6

( b) T-S線図

T

55′

6

S

1

2

3

燃焼ガスを大気に放

出するので等圧放熱等圧変化

等圧変化

燃焼器での

等圧加熱

圧縮機 2での断熱

圧縮によりエント

ロピーは一定

圧縮機 1での断熱

圧縮によりエント

ロピーは一定

中間冷却器に

より等圧冷却

4

断熱膨張により

タービンで外部

に仕事をする

燃焼ガスの最高温度を

下げることができる

図 2.25 中間冷却を行うブレイトンサイクル

第2章(五).indd 42 2011/02/22 15:01:48

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2.3 ガスタービン  43

Q2 = mRT1 lnp2p1

(2.120)

2) 2→ 3:等圧加熱過程  放熱時(状態4→ 1)の熱により,熱交換器を用いて作動ガスの加熱を行う過程であり,等圧変化となるため,受熱量QR1は式(2.33)より次式となる.

QR1 = mcp (T3 − T2) (2.121) 3) 3→ 4:等温膨張過程  膨張過程が等温変化であるので,受熱量Q1は 1)等温圧縮過程と同様に次式となる.

Q1 = mRT3 lnp3p4= mRT3 ln

p2p1

(2.122)

4) 4→ 1:等圧放熱過程  放熱過程が等圧変化であるので,2)等圧加熱過程と同様に,放熱量QR2は式(2.33)より,次式となる.

QR2 = mcp (T4 − T1) = mcp (T3 − T2) = QR1 (2.123)

熱効率は?以上から,エリクソンサイクルの理論熱効率は,式(2.53)と式(2.120),(2.122)よ

り次式のように求まる.

ηth = 1− Q2

Q1

= 1− T1

T3

= 1− 1τ (2.124)

上式からわかるように,理想的なエリクソンサイクルはカルノーサイクルの効率と同じになる.

圧縮・中間冷却

による等温放熱

再熱・膨張に

よる等温加熱 4→1の放熱過程の排

熱により等圧加熱

4→1と 2→3は温度変化の過程が

同一であるため,熱交換器を用い

てQR1を排熱QR2で加熱

( a) T-S線図 ( b) p-V線図

圧縮・中間冷却

による等温圧縮

タービンで外部

に仕事をする再

熱・膨張による

等温膨張

熱交換器を用いて排熱を

2→3の加熱過程に利用

V

p

等圧変化

等圧変化

QR2

Q2

QR1

QR1

QR2

QR1

Q2

QR2

Q1

T

S

3

21

4

等温変化

等温変化Q1

等圧変化1

4

32

等圧変化

図 2.26 エリクソンサイクル

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44  第 2章 熱エネルギーから力学的エネルギーへの変換

2.3.3 ジェットエンジンサイクルジェットエンジン(jet engine)には,巡航速度により,ターボジェットエンジン,

ターボファンジェットエンジン,ターボプロップエンジンおよびラムジェットエンジンなどがある.ジェットエンジンでは,燃焼ガスを推進ノズルから噴出し,その運動エネルギーにより推進を行う.したがって,理論熱効率は,燃焼の熱エネルギーのうちどれだけを運動エネルギーに変換できたかを表す内部効率(internal efficiency)ηi

と,その運動エネルギーをどれだけ推進仕事に変換できたかを表す外部効率(external

efficiency)ηeで定義され,全体の効率ηthは,ηth = ηiηe (2.125)

で表される.以下では,ターボジェットエンジンの内部効率について説明する. (1) ターボジェットエンジン

ターボジェットエンジンは,図 2.27に示すように,ガスタービンの動力取り出し軸の代わりに推進ノズルを設置し,燃焼ガスの噴出により推進力を得る構造である.エンジンは高速で前方へ動いているため,ディフューザーに流入した空気は動圧により圧縮され,さらに圧縮機により断熱圧縮される.その後,燃焼器で等圧加熱し,高温高圧の燃焼ガスによりタービンを回転して圧縮機が必要な仕事を得た後,推進ノズルで膨張させて推進力を得る.また,さらに推進力を増加させるために,アフターバーナーを設置し,推進ノズル内で再度燃焼させる場合もある.

0

空気

2 3 4 51

燃料

燃焼器

ディフューザー アフターバーナータービン

推進ノズル圧縮機

動翼 静翼

図 2.27 ターボジェットエンジンの構造

図 2.28に,ターボジェットエンジンの p-V線図を示す.図中の状態の番号は図2.27と対応している.大気から取り込んだ空気(状態 0)は,動圧により断熱圧縮(状態0→ 1)されて,さらに圧縮機で圧縮され(状態1→ 2),燃焼器で等圧燃焼(状態2→ 3)する.高温高圧の燃焼ガスは,タービンと推進ノズルで断熱膨張(状態3→ 5

)する.状態5→ 0は,燃焼ガスが排出されて,新しい空気が取り込まれる過程であり,等圧変化である.

第2章(五).indd 44 2011/02/22 15:01:56

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2.3 ガスタービン  45

ジェットエンジンは高速で飛行しているため,大気から取り込む空気は,その相対速度に相当する運動エネルギーを有している.したがって,系に入るエネルギーとしては,燃焼の燃料による受熱量Q1のほかに,取り込む空気の運動エネルギーWcを考える必要がある.系から出るエネルギーは放熱量Q2であるから,それぞれ次式の関係となる.

系に入るエネルギー  E1 = Q1 +Wc (2.126)

系から出るエネルギー E2 = Q2 (2.127)

図 2.28において,状態0→ 1は動圧による断熱圧縮であるから,ジェットエンジンとしては,圧縮機の入口すなわちp1を基準に考えると,サイクル1−2−3−4−1はブレイトンサイクルと同じである.したがって,受熱量と放熱量は,式(2.107),(2.109)よりそれぞれ次式となる.

Q1 = mcp (T3 − T2) (2.128)

Q2 = mcp (T4 − T1) (2.129)

また,ジェットエンジンの速度をc1とすると,取り込む空気の運動エネルギーWcは次式で与えられる.

Wc =12mc21 (2.130)

熱効率は?式(2.128)~(2.130)を式(2.126),(2.127)に代入し,式(2.112)の関係を用いると,

内部効率は次式となる.

Q1

Q2

3

4

0

1

2

6

5 7

WC

W

燃焼器での

等圧加熱

断熱膨張しタービンを

回転して圧縮機を駆動

アフターバーナーを用

いて再加熱し等圧加熱

ノズルで断熱膨張

して推進力を得る

p

V

断熱変化

断熱変化

圧縮機での

断熱圧縮

動圧による

断熱圧縮

大気中に燃焼ガスを排気

することにより等圧冷却

4′

図 2.28 ターボジェットエンジンサイクルの p- V線図

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46  第 2章 熱エネルギーから力学的エネルギーへの変換

ηi = 1− E2

E1

= 1− Q2

Q1 +Wc

= 1− 1

ϕ(κ−1)/κ

1 +

c212cp (T3 − T2)

(2.131)

温度(T3 − T2)における音速caおよびマッハ数Mは,次式の関係がある.

ca =κR (T3 − T2) , M =

c1ca

(2.132)

上式より,温度(T3 − T2)は次式となる.

T3 − T2 =c21

κRM 2 (2.133)

上式を式(2.132)に代入すると,内部効率は次式のように求まる.

ηi = 1− 1

ϕ(κ−1)/κ

1 + κ− 1

2M 2

(2.134)

アフターバーナーを用いて再度燃焼させる場合は,図 2.28に示すように,断熱膨張(状態3→ 5)の途中から状態 4→ 6→ 7→ 5へと変化する.このときの熱効率も同様な考えで求めることができる.

(2) その他のジェットエンジン

ターボファンジェットエンジンは,図 2.29に示すように,回転軸に大型のファンを取り付けて,大量の空気を吸入,噴出させることにより推進力を得るエンジンである.ファンで圧縮された空気は,その一部が圧縮機に入り,残りはエンジンの側路にバイパスさせ,これによっても推力を発生させる.大型の長距離航空機ではバイパス空気流量を増やして,燃費の減少を図っている.このバイパス空気流量と圧縮機に入

空気

燃料

燃焼器圧縮機

タービン推進ノズル

カバーファン

図 2.29 ターボファンジェットエンジンの構造

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2.3 ガスタービン  47

る空気流量との比をバイパス比といい,通常 3.5 ∼ 4.0以上とされている.ターボプロップエンジンは,図 2.29に示すターボファンジェットエンジンのファンとカバーの代わりに,プロペラを取り付けたものである.タービンでプロペラを駆動することによる推進力と,排気ガスの噴出力を利用する.ラムジェットエンジンのラムとは,ディフューザーに流入した空気が動圧により圧縮されることを意味し,圧縮機を用いずに,ラム効果のみで圧縮して等圧燃焼させ,推進ノズルで推力を得るものである.高マッハ数でのエンジンとして用いられる.

ジェットエンジンの熱効率を高めるには?ジェットエンジンの内部効率は,式(2.134)で与えられるから,圧力比ϕとマッハ数Mを大きくすればよいことになる.マッハ数は飛行速度で決まるので,圧力比を高めることとなる.しかし,圧力比を高めると燃焼温度(図 2.28の状態 3)が高くなるため,タービン翼の高温耐熱性能によって制限される.

2.3.4 ガスタービンの熱効率本節で求めた各サイクルの理論熱効率を再掲すると,次のとおりである.これらの熱効率について考察してみよう.

ブレイトンサイクル: ηth = 1− 1ϕ(κ−1)/κ (2.135)

ブレイトン再生サイクル: ηth = 1− ϕ(κ−1)/κ

τ (2.136)

エリクソンサイクル: ηth = 1− 1τ

(2.137)

ターボジェットエンジン(内部効率):

ηi = 1− 1

ϕ(κ−1)/κ

1 + κ− 1

2M 2

(2.138)

ここで,圧力比:ϕ = p2/p1,温度比:τ = T3/T1である.図 2.30には,比熱比をκ = 1.4として,各サイクルの熱効率を比較した.ブレイトンサイクルとブレイトン再生サイクルを比較すると,圧力比ϕの低い条件では,ブレイトン再生サイクルのほうが熱効率が高くなるのに対し,圧力比を高くできる条件では,ブレイトンサイクルのほうが高い効率を示すことがわかる.また,ブレイトン再生サイクルでは,温度比τが大きくなると熱効率が高くなることがわかる.エリクソンサイクルは,再熱および中間冷却を無限回繰り返す理想的なサイクルであり,熱効率は圧力比に関係なく,カルノーサイクルと同様,温度比のみで決まることが示されている.

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48  第 2章 熱エネルギーから力学的エネルギーへの変換

ブレイトンサイクルとターボジェットエンジンサイクル(内部効率)を比較すると,ターボジェットエンジンのほうが熱効率が高い.これは,ジェットエンジンは高速で飛行するため,式(2.126)に示したように,取り込む空気の運動エネルギーWcを受熱量として加算できるためである.したがって,マッハ数Mが大きいほど,内部効率 ηiが向上することがわかる.

2.4 蒸気タービン

蒸気タービン(steam turbine)は,火力発電所や原子力発電所において用いられ,化石燃料の燃焼熱や核燃料の反応熱により水を加熱・蒸発させ,水蒸気を作動流体としてタービンを駆動し,仕事を取り出すものである.この際,作動流体である水蒸気は,蒸発や凝縮といった状態変化を伴っており,理想気体とはかなり異なる性質をもっているので,2.1.2項で述べた理想気体の状態式は適用できない.本節では,水の蒸発過程における特性を学び,蒸気タービンを用いて仕事を取り出すサイクルについて説明する.

2.4.1 蒸気の状態変化蒸気は,ボイラで水を加熱してつくられる.このとき,水(水蒸気)にかかる圧力の大きさにより,蒸発に必要な加熱量が異なる.また,蒸気に含まれる水分の割合により,湿り蒸気や過熱蒸気などのように区別する. (1) 水の等圧蒸発過程

図 2.31に示すように,水をシリンダーに入れ,ピストンに 1気圧(p = 0.1013 MPa)の一定圧力を加えながら加熱したときに,水が蒸発していく過程を考える.図(a)の

ターボジェットエンジンサイクル

1

0.8

0.6

0.4

0.2

00 5 10 15 20 25

M=2

τ=5

τ=5κ=1.4

1

4

3ブレイトンサイクル

ηth,η

i

ブレイトン再生サイクル

43

エリクソンサイクル

ϕ

図 2.30 ガスタービンの熱効率

第2章(五).indd 48 2011/02/22 15:02:11

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4.3 風力発電  113

ただし,図 4.9(b)に示すような翼の場合には,翼表面の摩擦抗力が大きいため,式(4.20)の面積 Aは流れ方向に平行な面への投影面積を用いる.また,代表的な翼形状の場合には,次式で翼の揚力が求められる.

L = CL12ρv2∞A (4.21)

ここで,CLは翼形状で決まる揚力係数(lift coefficient)である.

表 4.1において,Reはレイノルズ数であり,流速,物体の代表長さおよび流体の動粘性係数をそれぞれv [m/s], d [m]およびν [m2/s]とすると,Re = vd/νで定義される.

4.3 風力発電

風力発電(wind power generation)で用いる風車には,翼の形状やその回転軸の方向によって多くの種類がある.また,風のもつ運動エネルギーを回転力に変換する方法も,風車の種類によって異なる.風車の回転部分は,風からエネルギーを吸収するために回転する翼(ブレード)や,翼をロータ軸に固定するハブおよびシャフトなどで構成されており,その全体を風車ロータ(wind turbine rotor)という.本節では,風のエネルギー量や風車の種類およびその変換効率について説明する.

4.3.1 風車の基礎理論地球上に吹く風は一様ではなく,速度が地表からの距離により変化したり,また,時間的に変動したりする.ここでは,そのような場合の扱い方について説明する.

風のエネルギーはどのように求めるのか?4.2節で述べたように,流体が単位時間に流れる質量流量をG [kg/s]とし,流速を

v [m/s]とすると,その運動エネルギーはGv2/2となる.したがって,図 4.10に示すように,風速v [m/s]の風の中に受風面積または掃過面積(swept area)A [m2]の風車

受風面積 A

風速 v

密度 ρ

図 4.10 風車が受ける風のエネルギー

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114  第 4章 風力・水力エネルギーから電気エネルギーへの変換

ロータを設置した場合の風力エネルギーE [W]は,式(4.3)または式(4.4)と同様に,次式で表される.

E = 12

(ρvA)v2 = 12ρv3A (4.22)

ここで,ρは空気の密度 [kg/m3]である.実際には,風が風車ロータを通過するとき翼の抵抗により風速が低下するが,ここでは風速が変化しない理想的な場合を考える.式(4.22)より,風力エネルギーは「受風面積に比例し,風速の 3乗に比例する」ことがわかる.このことより,風車を設置するにあたっては,できるだけ安定した速い風速が得られる場所を選択することが重要になる.

単位時間に単位受風面積で受ける風のエネルギーE/A [W/m2]を風力エネルギー密度といい,式(4.22)を変形すると次式で表される.

EA

= 12ρv3 (4.23)

空気には水蒸気を含んでいるが,日本付近では空気の密度に対する水蒸気の影響は小さいので無視できる.よって,空気の密度 ρ [kg/m3]は,式(2.19)で示した気体の状態方程式から求められる.大気圧 p [Pa],気温の絶対温度T [K]とすると,

ρ = pRT (4.24)

となる.ここで,Rは空気のガス定数(= 287.2 J/(kg·K))である.日本の平地での平均値として,1気圧,15 ℃の場合 p = 1.013× 105 Pa,T = 288.15Kを用いるとρ = 1.224 kg/m3となる.この値を用いて,式(4.23)の風速と風力エネルギー密度の関係を求めると,図 4.11の破線のようになる.しかし,風のエネルギーがすべて風車へ伝達されることは不可能であり,後述するように,理論的には風のエネルギーのうち風車へ伝達される割合は最大で59.3%である.図の実線は,この値に基づく理

2500

2000

1500

1000

500

0

E/A[

W/m

2]

0 5 10 15

v[m/s]

風力エネルギー密度

理想的な風車で得ら

れるエネルギー密度

図 4.11 風と理想的風車のエネルギー密度

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4.3 風力発電  115

想的風車で得られるエネルギー密度である.図 4.11より,エネルギー密度は風速に大きく依存することがわかる.風力のエネルギーは式(4.22)で求められるが,実際には風車を設置する地表の粗度

や地表から鉛直方向への高さによって風速分布が異なるので,それについて次に説明する.

地球上の風速分布はどのようになっているのか?地球上における風速は,地表や海面の摩擦力によって異なる.一般的に,地表の付近では風速が遅くなり,上空ほどその影響が少なくなるので風速は速くなる.図 4.12

に示すように,地表から約 100 mまでを地表境界層といい,この領域内での鉛直方向の高さ hにおける風速 vは,次式の指数法則で表される[5].

v = v1

hh1

1/n

(4.25)

ここで, v1は高さh1における風速である.また,上式の n値は,表 4.2に示すように,地表が市街地か草原かなどの条件によって決まる.図 4.12には,n = 2, 4, 7,

10の場合の定性的な風速分布形状を示した.海面近くでは大都市の中心付近の地表近くと比べ,高度の違いによる風速の変化は小さくなる.

約 100 mv1

n=2 n=4 n=7 n=10

v

hh1

地表

境界層

平野森林大都市

海面

図 4.12 地表境界層内の風速分布

表 4.2 地表状態とそのべき指数 n

地表の状態 n

非常になめらかな面,静かな海面など平野,草原森林,高い建物のない市街地大都市の郊外周辺大都市の中心付近

10

7

4

3

2

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116  第 4章 風力・水力エネルギーから電気エネルギーへの変換

それでは,高度による風速の違いを確かめてみよう.

例題 ₄.₃ 大都市中心部と静かな海面において,それぞれ高度 20 mにおける風速を測定したらどちらも 5 m/sであった.高度 50 mでの風

速をそれぞれ求めよ.

解 表 4.2より,大都市の中心部と静かな海面での n値はそれぞれ 2と 10である.式(4.25)より高度 50 m/sでの風速は,

大都市  v = v1

hh1

1/n

= 5×5020

1/2

= 7.91m/s

海面   v = v1

hh1

1/n

= 5×5020

1/10

= 5.48m/s

となり,海上では高度による風速の違いは小さいことがわかる.

なお,風速は時間的に絶えず変化し一定ではない.そのため,風速の瞬間値を数秒から数年内で統計的に平均した平均風速が用いられる.また,ある時刻の平均風速には,通常,正時前 10分の平均値(10分間平均風速)が用いられる.長期間に対しては,月平均風速および年平均風速が使われる.

風速の変動はどう扱うのか?実際の風速は絶えず変動しており,座標系の横軸に風速をとり縦軸に瞬間風速の度数をとると,その分布形状は平均風速より弱い風速の度数が大きくなり,平均風速に対して左右非対称になる.この度数分布を数式で表すためにいくつかの関数形が提案されているが,ここでは,風速出現率を推定するのによく用いられるレイリー(Rayleigh)分布f (v) [s/m]を次式で示す.

f(v) = π2

vv2

exp− π

4

vv

2 (4.26)

ここで,vは平均風速である.図 4.13は,式(4.26)に基づいて算出した平均風速が4 ∼ 8m/sでのレイリー分布である.ある場所の平均風速が求められれば,任意の風速範囲vi ±∆v/2 [m/s]の出現率がF (vi) = f (vi)×∆vで算出できるので,この出現率F (vi)を用いると,風速の年間出現時間は8760× F (vi)[h]となる.したがって,風速viでの風車の発生電力をP (vi)[W]とすると,年間電力量Py[Wh]は,

Py =

P (vi)× 8760× F (vi) (4.27)

で計算できる.ただし,風車は発電に一定風速以上(カットイン風速)が必要になる一

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4.3 風力発電  117

方,ある風速以上(カットアウト風速)になると危険防止のため発電を停止するので,式(4.27)での計算には,カットイン風速からカットアウト風速の範囲を用いる必要がある.一般的に,カットイン風速は2.5 ∼ 4m/sであり,カットアウト風速は 25 m/s

程度である.なお,定格出力 900 Wの小型風車では,カットイン風速が 0.7 m/sで,カットアウト風速が 7 m/sのものもある[6].

4.3.2 風車の種類風車の種類は,図 4.14に示すように,風車の回転軸が風向に対して平行な水平軸形風車と,その軸が風向に垂直な垂直軸形風車に分類できる.また,風車を駆動する原理で分類すると揚力形風車と抗力形風車になる.揚力形風車とは,風を受ける羽根(ブレード)形状が翼形のとき,風向に対して直角方向に揚力が生じ,また,流れと同一方向に抗力が生じるが,これらの合力によって回転力が与えられる風車をいう.一方,抗力形風車とは,風向に垂直な面に作用する抗力を利用して,風車に回転力が与えられる風車をいう.

0.2

0.1

00 5 10 15 20

f(v)[

s/m]

v[m/s]

v=4 m/s

5 m/s6 m/s

7 m/s

8 m/s

図 4.13 風速に対するレイリー分布

風車

水平軸形

垂直軸形

揚力形

抗力形

揚力形

抗力形

プロペラ形

多翼形

オランダ形

セイルウィング形

パドル形

ダリウス形

ジャイロミル形

サボニウス形

クロスフロー形

パドル形

図 4.14 風車の分類

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118  第 4章 風力・水力エネルギーから電気エネルギーへの変換

(1) プロペラ形風車

図 4.15に示すように,プロペラで構成される風車をプロペラ形風車(propeller

type wind turbine)という.ブレードの枚数は通常2 ∼ 3枚である.風向に対して回転面を正対させるために方位制御が必要であり,風向変化に対する追従性が垂直軸形風車に比べ劣るが,タワーを高くすることによって高出力の大型風車が可能である.空気力学的損失を小さくするため,プロペラのねじれはブレード取り付け部で大きく,先端部で小さくしたものが多い. (2) 多翼形風車

19世紀にアメリカの農場や牧場で揚水用に開発され,図 4.16に示すような多数の翼から構成された低速回転,高トルクの風車を多翼形風車(malti-bladed wind turbine)という.最近になって発電用に開発された小型の多翼形風車は,低風速で起動し騒音が小さいという特長がある. (3) オランダ形風車

15世紀にオランダで利用されるようになった図 4.17に示すような 4枚羽根をもつ風車をオランダ形風車(Dutch windmill)という.動力調整は,羽根に張られた帆の面積の増減やブラインド状のシャッターの開度で行う.風向によって風車小屋全体を回転させ,風向と風車の回転面を正対させる小型の箱型風車(ポストミル)と,羽根を取り付けた小屋の上部のみを回転させる塔型風車(タワーミル)がある. (4) セイルウィング形風車

地中海地方で古くから使用され,製粉や排水用に利用されてきた風車をセイルウィング形風車(sailwing wind turbine)という.図 4.18に示すように,帆船の帆と同じような布を羽根に取り付け,その枚数は6 ∼ 12枚のものが多い.

図 4.15 プロペラ形風車(提供:三菱重工業(株))

図 4.17 オランダ形風車(提供:本田昭生氏)

図 4.16 多翼形風車提供:西沢良史氏(足利工業大学総合研究センター)

��

��

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4.3 風力発電  119

(5) ダリウス形風車

1931年にフランス人のダリウスによって発明された風車をダリウス形風車(Darrieus wind turbine)という.図 4.19に示すような曲がりブレードは,回転時に遠心力による曲げ変形が生じず,なおかつ,引っ張り応力のみが作用するような形状になっている.装置が簡単で,風向に無関係に回転できるという特長がある.風車の重量およびコストあたりの出力は大きいが,起動性に問題があるため,サボニウス形風車との併用や起動用にモーターを使用する必要がある. (6) ジャイロミル形風車

図 4.20に示すように,対称翼のブレードが垂直に取り付けられている風車をジャイロミル形風車(gyromill wind turbine)という.1回転中に 2回ブレードの向きを変えながら回転する複雑な機構であるが効率はよい. (7) サボニウス形風車

1929年にフィンランド人のサボニウスによって発明された風車をサボニウス形風車(Savonius wind turbine)という.図 4.21に示すように,半円筒状の羽根を向かい合わせにして,少し重なるように組み合わせた構造である.半円筒状の羽根は 2枚のもののほか,起動トルクを大きくするために 3枚組み合わせた形式もある.また,効率を向上させるために,羽根に加速流が流れ込むように流路を取り付けた風車もある. (8) クロスフロー形風車

図 4.22に示すように,上下円板の円周上に多数の細長い曲面板ブレードを取り付け,ブレードの凹面と凸面に作用する抗力の差で駆動する風車をクロスフロー形風車(cross-flow wind turbine)という.ブレードの凹面に作用した気流がロータ内部に流

図 4.18 セイルウィング形風車提供:西沢良史氏(足利工業大学総合研究センター)��

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��

�� 図 4.19 ダリウス形風車

提供:西沢良史氏(足利工業大学総合研究センター)��

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��図 4.20 ジャイロミル形風車

提供:西沢良史氏(足利工業大学総合研究センター)��

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120  第 4章 風力・水力エネルギーから電気エネルギーへの変換

入し,貫流する際にブレードの凸面で再度流れ方向が変わり,このとき付加的なトルクをもたらす.出力係数は10%程度と低いが,低風速で回転し騒音が少ないという特長がある. (9) パドル形風車

前進側と後退側の受風面の空気抵抗の差をトルクとして回転する風車をパドル形風車(paddle wind turbine)という.比較的簡単な構造であるが,風車の重量およびコストあたりの出力は小さい.図 4.23に示すロビンソン風速計で知られる風杯型(カップ型)は,風杯の凸面と凹面の空気抵抗が異なることを利用してトルクを得ている.

日本の風力発電の課題は?① 日本の山岳地域のように複雑な地形では,風速や風向の変動が大きく,羽根の疲労損傷の可能性がある.② 台風,着雪,着氷,塩害や落雷などの気象条件が厳しいため,風車の損傷の可能性がある.③ 風車の設置場所と電力利用地域との距離が長いため,送電コストが高くなる.④ 風車設置の候補地が国立公園などの自然公園にあたる可能性があり,建設に関する法的制限がある.

4.3.3 風車の変換効率ここでは,風のエネルギーを風車で回転力に変換し,電力を生み出すときの各種効率について説明する.まず,4.2節で述べた風がもつエネルギーのうち,風車が取り出しうるエネルギーの限界値を,ベッツの運動量理論から算出する.図 4.24に示すように,翼枚数が無限で受風面積が Aの円板状の風車ロータを仮定し,その円板か

図 4.21 サボニウス形風車提供:西沢良史氏(足利工業大学総合研究センター)��

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��図 4.22 クロスフロー形風車

提供:西沢良史氏(足利工業大学総合研究センター)��

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��図 4.23 バドル形風車(風杯型)

提供:西沢良史氏(足利工業大学総合研究センター)��

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4.3 風力発電  121

ら十分に離れた上流面(Ⅰ-Ⅰ)と下流面(Ⅱ-Ⅱ)に断面積がそれぞれA1,A2の検査領域を考える.Ⅰ-Ⅰ面とⅡ-Ⅱ面の風速と圧力をそれぞれ v1, p0および v2,p0とし,また,風車ロータを通過する風速を v0,その前後での圧力をそれぞれ p0+,p0−とする.検査領域内における流出入の運動量の差は,式(4.19)より風車に作用する力 Fに

等しいので,次式がかける.F = ρ (v21A1 − v22A2) (4.28)

連続の式よりv1A1 = v2A2が成り立つので,上式は次式に変形できる.F = ρv2A2 (v1 − v2) (4.29)

一方,式(4.13)のベルヌーイの定理をⅠ-Ⅰ面と O-O面,および O-O面とⅡ-Ⅱ面にそれぞれ適用すると,

12ρv21 + p0 =

12ρv20 + p0+ (4.30)

12ρv20 + p0− =

12ρv22 + p0 (4.31)

が成り立ち,上式から次式が得られる.

p0+− p0− = 12ρ (v21 − v22) (4.32)

また,風車ロータに作用する力 F は,その前後での圧力差が p0+− p0−であるから,F = (p0+ − p0− )A (4.33)

とかける.したがって,上式に式(4.32)を代入すると,

F = 12ρ (v21 − v22)A (4.34)

となり,上式に式(4.29)と連続の式v0A = v2A2を代入すると,風車ロータを通過する風速v0は,次式のように求まる.

圧力変化

速度変化

v0

v1

p0-p0+

p0

v2

p0

O

O

A2AA1

検査領域風車ロータ

図 4.24 風車の検査領域

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122  第 4章 風力・水力エネルギーから電気エネルギーへの変換

v0 =(v1 + v2)

2 (4.35)

(1) 理論効率

風車ロータの出力P [W]はFv0で求められるので,式(4.34),(4.35)を用いると,

P = 12ρ (v21 − v22)Av0 = ρA

4(v1 + v2)2(v1 − v2) (4.36)

となる.ここで,減速比をa = v2/v1で定義すると,式(4.36)は次式の形で表される.

P =ρv31A

4(1 + a)2(1− a) (4.37)

風車が受ける風の全エネルギーは,式(4.22)よりE = ρv31 A/2であるから,風車の理論効率は次式となる.

ηth = PE

=(1 + a)2(1− a)

2 (4.38)

上式の最大理論効率 ηmaxは dηth/da = 0で求められ, a = 1/3のとき ηmax =

16/27 = 0.593となる.図 4.25に,減速比 aと風車の理論効率との関係を示す.式(4.35)に a = v2/v1 = 1/3を代入すると,風車ロータ部を通過する風速が v0 =

(2/3)v1のとき理論効率が最大になることがわかる.

減速比 α

ηth

1

0.8

0.6

0.4

0.2

00 0.2 0.4 0.6 0.8 1

図 4.25 風車の理論効率

(2) 風車の出力係数

風車が自然の風から取り出すことができる出力割合を,出力係数(power coeffi-

cient)Cpといい,次式で定義される.

Cp =P

ρv3A/2 (4.39)

ここで,Pは風速 vの中に置かれた風車の実際の出力[W]であり,Aは風車の受風面積 [m2]である.風車の効率は,出力係数を用いて評価する.出力係数は,翼型によ

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4.3 風力発電  123

り 0.50程度の値が得られる.そのほかに風車の性能にかかわる係数として,次のものがある.風速 vに対する風車のブレード先端の速度との比を周速比(tip speed ratio)λといい,次式で表す.

λ = ωRv

= 2πnRv

(4.40)

ここで,ω はロータの回転角速度 [rad/s],Rはロータ半径 [m],nは風車の回転数[rps]である.また,揚力形風車の場合には,ブレード面で発生する揚力の成分による回転モーメントがあり,抗力形風車の場合には抗力の成分による回転モーメントがある.それらのモーメントが風車のトルクであり,実際に得られる風車のトルクをTQ [Nm]とすると,トルク係数(torque coefficient)CTは次式で表される.

CT =TQ

ρv2AR/2 (4.41)

ここで,Aおよび Rはそれぞれ受風面積とロータ半径である. (3) 風車の出力係数とトルク係数

実際の風車の出力係数を求めるには,実験によるところが大きい.図 4.26,4.27

には,各種風車の周速比λとトルク係数CTの関係,および周速比と出力係数Cpの関係をそれぞれ示す.揚力形風車のプロぺラ形はトルク係数が小さく,その反面,周速比と出力係数はほかの種類の風車に比べて大きい.したがって,プロぺラ形風車は,低トルクで高速回転可能な発電に適した種類の風車である.一方,サボニウス形や多翼形の風車は,出力係数は小さいがトルク係数が大きい風車である.

多翼形

サボニウス形

オランダ形

プロペラ形(3枚翼)

プロペラ形(2枚翼)

0 2 4 6 8 10

1

0.8

0.6

0.4

0.2

0

CT

周速比 λ

図 4.26 風車のトルク係数出典:T. Ackermann and L. Soder

「Renewable and Sustainable Energy

Reviews」6(2002),p.86.

���

���

���

��� 図 4.27 風車の出力係数出典:T. Ackermann and L. Soder

「Renewable and Sustainable Energy

Reviews」6(2002),p.86.

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���

���

���

周速比λ

多翼形

サボニウス形

オランダ形

プロペラ形(3枚翼)

プロペラ形

(2枚翼)

0 2 4 6 8 10

1

0.8

0.6

0.4

0.2

0

Cp

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124  第 4章 風力・水力エネルギーから電気エネルギーへの変換

風力発電による電力と各種効率の関係は?図 4.28に,風力発電システムの各要素効率を示す.風力発電では,風車ロータの回転速度をギヤボックスによって増速し,その回転を発電機に伝達するため,それぞれの要素でエネルギーの損失が生じる.したがって,風車の効率(出力係数)をCp,ギヤボックスの効率を ηgb,発電機の効率をηgとすると,

P = CpE (4.42)Pgb = ηgbP (4.43)Pg = ηgPgb (4.44)

の関係が成り立つ.ここで,E,P,PgbおよびPgは,それぞれ風が受風面積を通過する単位時間あたりの運動エネルギー,風車の出力,ギヤボックスの出力および実際に得られる電力である.式(4.42)~(4.44)より電力Pg [W]は,

Pg = CpηgbηgE (4.45)

となり,各要素の効率の積が発電システム全体の効率になる.なお,大型のギヤボックスの効率はηgb = 0.8 ∼ 0.95,小型のギヤボックスでは ηgb = 0.7 ∼ 0.8である.また,大型発電機の効率は ηg = 0.8 ∼ 0.95,小型発電機ではηg = 0.6 ∼ 0.8である[7].

風 風車 ギヤボックス 発電機 電力

E Cp P ηgb Pgb Pgηg

図 4.28 風力発電の各要素効率

それでは,風車の出力とロータ直径の関係を計算してみよう.

例題 ₄.₄ プロペラ形風車の定格風速を 12 m/sとし,その風車の出力係数が Cp = 0.45,ギヤボックスの効率 ηgb = 0.9,発電機の効率

ηg = 0.9とする.800 kWの出力を得るにはロータの直径をいくらにする必要があるか.ただし,空気の密度はρ = 1.224 kg/m3とする.

解 この風車全体の効率は,η = Cpηgbηg = 0.45× 0.9× 0.9 = 0.365

になる.風車の出力 800 kWを得るための風車が受けるべき運動エネルギー E

は,式(4.45)より次式のように求まる.

E =Pg

Cpηgbηg= 800

0.365= 2192 kW

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4.4 水力発電  125

式(4.22)よりE = ρv3A/2であるから,受風面積は,

A = 2Eρv3

= 2× 2192× 1031.224× 123

= 2073m2

となる.ロータの直径をD[m]とすると,

D =

4Aπ

=

4× 20733.14

= 51.4m

となり,ロータ直径は約 51 mの大きさとなることがわかる.

風力発電の効率を高めるには?プロペラ形風車では,効率を向上させるために,風向きを瞬時に検出し,それに追随してブレードの回転面を風向きに対して正対させるための方位制御装置を搭載し,さらに,風の状況によりブレードの取り付け角(ピッチ角)が変更可能な可変ピッチ方式を採用している.また,広範囲のロータ速度に追随して運転が可能な発電機を使用し,発電機端の電圧を高電圧にすることで送電による損失を低減し,発電効率を向上させている[8].風のエネルギーを効果的に集めるために,図 4.29

に示すような集風装置をブレードの回転面の外周に沿って取り付けた風レンズ風車も考案されている[9].小型風車に集風装置を設置することで,それを設置しない場合に比べて約4 ∼ 5倍の発電効率が得られている.今後は大型風車への集風装置の実用化が課題となっている.

4.4 水力発電

水力発電(hydropower generation)は,水の力学的エネルギーを水車の羽根車に作用させ,その回転力を利用して発電機を稼働させる発電方式である.水力発電は,発電の際に地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないことや,単位出力あたりのコストが太陽光発電などに比べて安く,安定した電力が供給できるという長所がある.本節では,水車に関する基礎理論や水車の種類およびその変換効率について説明する.

図 4.29 風レンズ風車(提供:大屋裕二氏(九州大学))

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これまで説明したように,火力発電をはじめ多くのサイクルでは,化石燃料を燃焼することにより熱エネルギーを発生させ,それを電気エネルギーへと変換している.そのため,多くの二酸化炭素が排出されることとなり,地球温暖化などの問題が進行してきたといえる.環境負荷の低減のためには,自然エネルギーの活用や,二酸化炭素を排出しないエネルギーの変換方法が望まれる.本章では,そのような要求に応えることのできる 3種類の直接変換について述べる.光エネルギーから電気エネルギーへの変換については太陽光発電(太陽電池),化学的エネルギーから電気エネルギーへの変換については燃料電池,さらに,熱エネルギーから電気エネルギーへの変換については熱電発電を取り上げ,それらの変換のしくみや効率について説明する.

5.1 太陽光発電

太陽光発電(photovoltaic power generation)とは,シリコンなどの半導体に光エネルギーを照射した際に発生する電荷により,電力を取り出すものである.太陽エネルギーを直接利用する太陽光発電は,可動部分がないため静粛であり,運転維持も簡便で,無人化・自動化に適しているといえる.さらに,発電装置の規模の大小にかかわらず一定効率の発電ができるなど,未来の人類が利用するのに相応しい発電方法といえる.本節では,太陽光発電の原理やその変換効率について説明する.

5.1.1 太陽光エネルギーの性質太陽光発電の源である太陽は,地球から平均 1億 4950万 km離れており,太陽の

半径は約 69.6万 kmで地球の約 115倍の大きさである.太陽エネルギーの大きさに直接関係する太陽の表面温度は,太陽光のスペクトル(spectrum)より見積もることができる.図 5.1は,大気圏外および地表上の単色(単波長)ふく射熱流束を示している[18].地球上で受ける太陽エネルギーは,大気による散乱やH2O,CO2などの吸収により減衰するため,大気圏外よりも少ない値となる.地球に到達する光の波長は,0.17 ∼ 24μmの範囲にあるが,太陽光エネルギーの

光・化学・熱エネルギーから電気エネルギーへの変換

第₅章146  

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5.1 太陽光発電  147

99%は, 0.17 ∼ 4μmの波長範囲に含まれている.可視光の波長領域は0.35 ∼0.75μmであり,これよりも短い波長の光を紫外光,長い波長の光を赤外光という.図に示した太陽光スペクトルをみると,約 0.5μmの波長にエネルギーのピークがあることがわかる.ここで,太陽を黒体(black body)と仮定して,太陽の表面温度を求めてみる.黒体とはふく射率(emittance)が 1の仮想物体をいう.ウイーンの変位則(Wien’s dis-

placement law)は,黒体からのふく射エネルギーのピーク波長λmax [m]は温度T [K]

に反比例するという法則であり,次式で表される.

λmax =0.002898

T (5.1)

上式に,太陽光スペクトルのピーク波長λmax = 0.501μm (= 0.501× 10−6 m)を代入すると,太陽の表面温度は 5780 Kと見積もることができる.図 5.1の破線は,太陽を 5780 Kの黒体とみなしたときのスペクトルであり,太陽光スペクトルに近い値となることが示されている.太陽表面単位面積あたりのふく射エネルギー(ふく射熱流束)qs [W/m2]は,次式のステファン・ボルツマンの法則(Stefan-Boltzmann’s law)より求めることができる.

qs = σT 4 (5.2)ここで,σはステファン・ボルツマン定数(= 5.67 × 10−8 W/(m2 ·K4))である.式(5.2)に,T = 5780Kを代入すると,太陽表面のふく射熱流束は qs = 6.33× 107

W/m2と求めることができる.この値に太陽表面積を乗じると,太陽表面全体からは3.85× 1026 Wという膨大なエネルギーが宇宙に放出されていることがわかる.

O3

O3

H2O

H2O

H2O

H2OH2O, CO2

H2O, CO2 H2O, CO2

O2, H2O

0.25

0.20

0.15

0.10

0.05

00 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

波長[μm]

単色ふく射熱流束[

W/(

m2 ・

A)]。

大気圏外

黒体(5780 K)

地表上

図 5.1 太陽光スペクトル

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148  第 5章 光・化学・熱エネルギーから電気エネルギーへの変換

太陽から地球へのふく射エネルギーはどのくらい?式(5.2)で得られた太陽表面のふく射エネルギーをもとに,地上で受ける太陽からのふく射エネルギーを求めてみよう.

例題 5.1 太陽表面のふく射エネルギーが6.33×107 W/m2で,図 5.2に示すように,太陽の半径を rs=6.96×108 m,太陽と地球との距離を re=1.495×1011 mとしたとき,地球の公転軌道上でのふく射熱流束 qeを求めよ.

太陽

地球

rs

qs

re qe

図 5.2 地球と太陽との関係

解 半径rsと半径 reの球体を考える.各球体面上における総熱量は等しくな

ければならないから, qs × 4πr2s = qe × 4πr2eとかける.これより,地球が大気圏外で太陽から受けるエネルギーは,次式のように求まる.

qe =

rsre

2

qs =

6.96× 1081.495× 1011

2

× 6.33× 107

= 1372W/m2

 太陽から地球公転軌道上で垂直に受ける単位面積,単位時間あたりのエネルギー量を太陽定数と定義し,その値は1370W/m2である.なお,最近では太陽全放射量が太陽周期とともに変化することがわかり,定数とはいわなくなっている.

例題 5.1で求めたエネルギー量は大気圏外におけるふく射受熱量であるが,地上でわれわれが受けるエネルギーは,太陽光が大気内を通過する際,大気による反射や吸収を受けるため減少する.地表に到達したエネルギーは,大気や地表,海洋を暖め,植物の光合成などを通じて多くの生命活動の源となる.しかし,熱などの形で大気圏内に留まっていたエネルギーは,最終的には赤外線などとして宇宙へ再放射される.この様子を地球のエネルギー収支として図 5.3に示す.大気圏外の太陽光エネルギーの30%は大気圏内の反射で宇宙に放出されている.このように,大気圏外で約1370W/m2であった太陽ふく射エネルギーは,地球上

に到達するまでに減少するため,太陽光発電の入力の標準値として1000W/m2を採用している.この標準値を用い,地球半径を 6356 kmとして太陽に対する地球の投影面積を求めて地球上で得られるエネルギーを算出すると, 1.27× 1014 kWという膨大なエネルギー量となる.これは,全世界の平均消費電力の数十万倍にも達する.

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5.1 太陽光発電  149

5.1.2 光起電力の原理太陽光発電には,太陽電池(solar cell)を使用している.太陽電池は光起電力の原理を利用したもので,シリコンなどの半導体材料に光を照射することにより半導体内部に電荷を発生させ,外部回路に抵抗を接続して電力を取り出すものである.太陽電池は,一次電池や二次電池のように電気を蓄えるのではなく,光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である.太陽電池の材料には,シリコン半導体が多く使用されている.ここでは,シリコン半導体を例にとり,光起電力の原理を説明する.図 5.4に,シリコン原子の電子配列を示す.シリコンは 4価の半導体であり,シリコンの単結晶ではシリコンどうしが最外殻電子を共有して結合(共有結合)している.したがって,結合に使われている電子はそれぞれの原子核に束縛され,自由に動くことはできない.半導体は,図 5.5に示すように,価電子帯(valence band)と伝導帯(conduction

太陽エネルギー

の入射 100%雲や大気により

反射 26%

雲や大気による

吸収 19%

地球表面から

反射 4%

地球表面,海面

による吸収 51%

雲や大気,地球表面から

宇宙へ放射 70%

地球表面,海面から

大気へ伝達 51%

図 5.3 地球のエネルギー収支

Si SiSi

Si SiSi

Si SiSi

価電子

最外殻電子を

共有している

図 5.4 シリコン原子の電子配列

価電子

自由電子

励起状態の電子は

伝導帯へ移行する 自由電子が存

在する領域

伝導帯

禁制帯

(電子は存在できない)Eb(バンドギャップ)

価電子帯

図 5.5 半導体のエネルギーバンド

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150  第 5章 光・化学・熱エネルギーから電気エネルギーへの変換

band)から成り立っている.通常,結合に使われている電子は自由に動くことはできず,価電子帯に存在する.単結晶シリコン(single crystal silicon)がこれに相当している.しかし,単結晶シリコンに熱や光などで最外殻電子に一定以上のエネルギーを与えると,電子が励起され,軌道から飛び出す現象が起こる.その電子は,原子の格子の間を自由に動けるので自由電子(free electron)という.この状態を励起状態といい,励起状態の電子は価電子帯から伝導体へ移行し,外部へ電気エネルギーとして取り出すことができる.価電子帯と伝導帯の間を禁制帯といい,電子はこの間のエネルギー状態になることはできない.禁制帯のエネルギー差Ebをバンドギャップといい,シリコンの場合,この禁制帯幅は約 1.1 eV(電子ボルト)である.なお,1 eVとは,1 Vの電位差がある自由空間内で電子一つが得るエネルギーに相当する.自由電子が抜けた原子は,電子が負の電荷をもつため正に帯電する.シリコン単結晶では,自由電子の数と電子の抜けた正孔の数は同数で,4価の原子のみの半導体を真性半導体という.シリコンの単結晶に 5価のヒ素(As)やリン(P)などの不純物を加えると,最外殻電

子が五つとなり,シリコンの共有結合中では電子が一つ余る.この余った電子は共有結合に使われている電子よりも少ないエネルギー(0.05 eV程度)で自由電子になり,伝導帯より 0.05 eVほど下に位置する.この自由電子は負(negative)の電荷をもつため,このような半導体を negativeの頭文字をとって n型半導体といい,図 5.6(a)のような原子配列を示す.一方,シリコンに 3価のホウ素(B)やインジウム(In)などの不純物を加えると,最外殻電子が三つとなり電子が一つ足りず正孔ができる.この正孔は正(positive)の電荷をもつため,このような半導体を positiveの頭文字をとってp型半導体といい,図(b)のような原子配列を示す.正孔は荷電子帯より 0.05 eVほど上に位置する.シリコン系太陽電池では,n型半導体と p型半導体を接合(pn接合)した材料を用

図 5.6 不純物を混ぜたシリコン半導体

As

Si SiSi

Si Si

Si SiSi

電子がーつ

あまり自由

電子になる

( a) n型半導体

B

Si SiSi

Si Si

Si SiSi

正孔

( b) p型半導体

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5.1 太陽光発電  151

いて発電を行う.図 5.7に,pn接合の半導体を示す.半導体の接合面では,p型半導体中に存在する正孔は n型半導体の電子に引かれて,また,n型半導体中の電子は正孔に引かれて接合面方向に移動し打ち消しあっていく.その後一定の時間が経過すると,平衡状態となり移動は止まる.平衡状態では,p型半導体から移動した正孔が消滅することになり,この結果 p型半導体は負に帯電する.一方,n型半導体からは電子が移動し正に帯電する.これにより,n型半導体から p型半導体方向に電界が発生し(拡散電位),n型側から p型側への電子の移動が制限される.また,電界によって空乏層(depletion layer)という電子の存在しない領域ができる.この空乏層領域に光を照射すると,バンドギャップより大きいエネルギーが吸収され,図 5.8に示すように,シリコン半導体の電子が励起されて伝導帯へと上がり,n型領域へ移動する.また,正孔は p型領域へと拡散していく.ここで,外部回路とつなぐことによって,電子は n型半導体から外部回路を通って p型半導体へ移動する.このため,電流は電子と反対方向に流れ,電力が発生する.

太陽電池はどんな光でも発電するのか?半導体にバンドギャップを超えるエネルギーの光が当たると,半導体の電子が励起され,価電子帯から伝導帯へ移動して発電する.光エネルギーE [J]には,波長λ [m]

が短くなるとエネルギーが増大するという次式の関係がある.

E = h cλ (5.3)

ここで,hはプランク定数(= 6.626 × 10−34 J·s),cは光の速度(= 2.998× 108 m/s)である.シリコン半導体で発電するのに必要な光エネルギーの波長を計算してみる.半導体のバンドギャップEb [eV]は材料によって決まっており,シリコンのバンドギャップはEb = 1.12 eVである. 1 eV = 1.6022× 10−19 Jの関係を用いると,式(5.3)より,シリコン半導体の場合λ = 1.107× 10−6 mとなる.すなわち,1.107μm

-+

++++

---

n型pn接合部p型

拡散電位で移動

拡散電位で移動

価電子帯の頂

禁制帯(バンドギャップ)

伝導帯の底

電子

正孔

図 5.8 pn接合半導体の発電原理

p型 n型

正孔移動

空乏層

---

+++

電子

拡散電位

図 5.7 pn接合の半導体

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152  第 5章 光・化学・熱エネルギーから電気エネルギーへの変換

より短い波長の光であれば禁制帯を超えるエネルギーが得られ,電子が励起されて発電できることになる.表 5.1に,各種半導体のバンドギャップと励起状態に必要な光の波長およびその特

性を示す.表から,材料によっては紫外線領域の光照射が必要であることがわかる.

表 5.1 各種半導体とエネルギーバンドギャップ

半導体材料バンドギャップ

Eb [eV]

光の波長λ [μm]

実際の色

アンチモン化インジウム(InSb)リン化ガリウム(GaP)ヒ化アルミニウム(AlAs)ヒ化ガリウム(GaAs)ケイ素(Si)ヒ化インジウム(InAs)

6.47

2.25

2.15

1.43

1.12

0.36

0.192

0.551

0.574

0.867

1.107

3.444

紫外線可視光線:緑色可視光線:黄色赤外線赤外線赤外線

5.1.3 太陽電池太陽電池の基本原理は,すでに 19世紀に見い出されていたが,実用のきっかけとなったのは 1954年に単結晶シリコン太陽電池で6%の効率が得られた開発からである.その後,太陽電池はアメリカの人工衛星に搭載され,駆動部分がなく長期間作動が実証されて太陽電池の有用性が認められてきた.日本において太陽電池の開発が本格的になったのは,1974年のオイルショック以降であり,当時の通商産業省開発プロジェクトであるサンシャイン計画での開発研究が大きな進展となった.太陽電池を材料から分類すると,シリコン系および化合物半導体系に大別できる.

(1) シリコン系

実用化されている太陽電池の大部分はシリコン系である.シリコンはケイ素(Si)であり,地球上では酸素に次いで多い元素である.自然界では酸化物として岩石や砂などのケイ石として存在し,還元し酸素を取り除いてシリコンとなる.このため,資源量の豊富さと価格,安全性などからもっとも量産に適した材料であるといえる.単結晶シリコンは,直径10 ∼ 20 cmの円柱形につくられ,これを薄板状のウエハーに切り出して使用する.シリコン系の中でもっとも高い変換効率が得られているが,コストは高い.一方,多結晶シリコンは,溶解したシリコンを鋳型に流し込んでつくられ,複数の結晶粒に分かれている.単結晶シリコン電池より変換効率は低いが,安価に製造できる利点がある.単結晶シリコンや多結晶シリコンは光吸収係数(厚さあたりの光吸収能力)が小さいため,十分に光を吸収しその光により電子を励起状態にするためには,約300μmの材料厚さが必要である.一方,シリコン材料のうちアモ

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5.1 太陽光発電  153

ルファス(非晶質)シリコンは,電気的,光学的性質が結晶系シリコンと異なっている.たとえば,その光吸収係数は結晶シリコンに比べて大きいため,薄膜でも十分に光を吸収でき,結晶シリコンに比べて 2桁ほど厚さを薄くすることが可能である.このため,少ない材料で太陽電池の製造ができ,安価でかつ量産に向いているが,結晶シリコンに比べて太陽電池としての変換効率は低い.表 5.2に,シリコン系太陽電池の特徴を示す.

表 5.2 シリコン系太陽電池の種類と特徴

種 類 特     徴

単結晶シリコン・もっとも早く実用化された・特性が安定し,変換効率が高い・厚いため硬い

多結晶シリコン・特性が安定している・単結晶シリコンに比べて変換効率は低いが,量産が容易である

アモルファスシリコン・結晶シリコンより変換効率は低い・量産化,大面積化が可能で低コスト化が期待できる・薄いため局面形状も可能である

(2) 化合物半導体系

シリコン系以外の太陽電池としては化合物半導体太陽電池があり,シリコンに比べ光吸収係数が大きいため,薄膜セルとして使用できる特長がある.このため,低コスト化や軽量化が可能である.化合物半導体は次の二つに大別できる.一つは,周期律表Ⅲ族の元素(Ga,Inなど)とⅤ族の元素(P,Asなど)から構成される半導体,たとえば,GaAsや InPなどのⅢ-Ⅴ族化合物半導体であり,GaAsを用いたものは宇宙用太陽電池として実用化されている.ほかの一つは,周期律表Ⅱ族の元素(Zn,Cd)とⅥ族の元素(S,Se,Teなど)から構成される半導体,たとえば,CdSや CdTe

などのⅡ-Ⅵ族化合物半導体であり,カドミウムとテルルの化合物(CdTe)を材料とした CdS/VdTe系太陽電池は,電卓用や屋外用途向け太陽電池モジュールなどとして,われわれの身近で商品化されている.

太陽電池の長所と短所は?太陽電池には,エネルギー源も含め,発電装置として次の長所と短所がある.〈長所〉① エネルギー源が無尽蔵で枯渇しない.② 発電時に二酸化炭素や硫黄酸化物(SOx),窒素酸化物(NOx)などの有害物質を発生しない.

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154  第 5章 光・化学・熱エネルギーから電気エネルギーへの変換

③ 構造が簡単なため,メンテナンス性がよい.④ 単独発電ができるので系統電線が不要である.⑤ 発電効率は発電システムの規模によらないため,設計が容易である.〈短所〉① 地上での太陽光エネルギー密度が決まっているため,発電量に比例して設置面積が大きくなる.② 夜間の発電ができず,曇天・雨天時は発電量が低下する.③ 既存の発電方式より 1 kWあたりの単価が高い.

5.1.4 太陽電池の変換効率太陽電池の変換効率は,入力である太陽光エネルギーと,太陽電池の端子から得られる単位面積あたりの電気出力エネルギーEe(= IV/A )[W/m2]の比で表す.ここで,Aは太陽電池の受光面積 [m2]である.地上用太陽電池についての入力太陽光エネルギーの値は,太陽ふく射の空気通過条件がエアマス(air mass:AM)AM-1.5のときで,1000W/m2の太陽光エネルギーとしている.

η = (太陽電池からの電気出力) = Ee

1000 (5.4)(太陽電池への入力太陽光エネルギー)

ここで,エアマスとは大気圏通過空気量を示しており,大気圏外では AM-0と表示し,赤道の真上で測定する場合を AM-1,その 1.5倍の通過空気量を AM-1.5と表現する.晴天時日中での東京の直射日光が AM-1.5に相当する.

理論変換効率は?太陽電池の等価回路において,抵抗成分を無視すると,光照射時の電流(電流密度)

I [A/m2]と電圧V [V]の関係は次式で表される.

I = Is − Io

exp

qVnkT

− 1

(5.5)

ここで, Is は短絡電流 [A/m2], Io は飽和電流 [A/m2],qは素電子( = 1.602×10−19C),nは理想ダイオード因子,kはボルツマン定数(= 1.38× 10−23 J/K),T

は温度(300 K)である.n = 1としたものが pn接合の理想 I- V特性であり,以下ではn = 1として扱う.このとき,式(5.5)は次式となる.

I = Is − Io

exp

qVkT

− 1

(5.6)

短絡電流Isと飽和電流 Ioは使用材料により異なり[19],それらの値を表 5.3に示す.

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5.1 太陽光発電  155

表 5.3 各種太陽電池の特性と理論変換効率

短絡電流Is [A/m

2]

飽和電流Io [A/m

2]

開放起電力Vo [V]

曲線因子F [−]

理論変換効率ηmax [−]

単結晶シリコン多結晶シリコンアモルファスシリコンヒ化ガリウムテルル化カドニウム

453

381

194

282

261

7.803× 10−10

3.892× 10−9

2.406× 10−13

1.884× 10−15

1.996× 10−12

0.700

0.654

0.887

1.022

0.840

0.846

0.795

0.741

0.871

0.731

0.268

0.198

0.127

0.251

0.160

開放起電力Voは,式(5.6)でI = 0とおくことにより求められ,次式となる.

Vo =kTqln1 + Is

I0

(5.7)

ここで,単結晶シリコンの理想 I-V特性を求めてみる.表 5.3の値を用いて式(5.6)を計算すると,特性曲線は図 5.9のように示される.図中のVoは,式(5.7)で求められる開放起電力であり,Vo = 0.7Vとなる.また,短絡電流は,近似的に式(5.6)において V = 0とおいて求められ Is = 453A/m2となる.単位面積あたりの出力電力の最大値は,図中の最大出力点Emaxで与えられ,式(5.6)より,単結晶シリコンではEmax = 268.3W/m2となる.短絡電流と開放起電力との積で得られる電力に対する最大出力を,曲線因子(fill

factor)Fといい,次式で定義する.

F = Emax

IsVo (5.8)

理論変換効率は,入力太陽光エネルギーに対する最大出力で表され,式(5.4),(5.8)より次式で与えられる.

600

300

0

最大出力点 Emax

式(5.6)

Emax=(IV)max

V[V]Vo

10 0.5

I[A

/m

2]

Is

図 5.9 単結晶シリコンの電流-電圧特性

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156  第 5章 光・化学・熱エネルギーから電気エネルギーへの変換

ηmax =Emax

1000= IsVoF

1000 (5.9)

式(5.8),(5.9)に単結晶シリコンの値を代入すると,F = 0.846, ηmax = 0.268と求まる.表 5.3には,このようにして求めた各種半導体材料を用いた太陽電池の開放起電力

Vo,曲線因子F および理論変換効率 ηmaxも示してある.

単結晶シリコン太陽電池では,表 5.3に示したように,入射光エネルギーの70%以上が利用できないことがわかる.この損失は,主に次の二つの要因による.一つ目は,半導体のバンドギャップよりもエネルギーの小さな長波長側の光は,半導体に吸収されず素通りし電気出力に寄与しないことである.二つ目は,バンドギャップよりもエネルギーの大きな短波長側の光は吸収され発電に寄与するが,エネルギーがさらに大きなより短波長では電子の励起が大きすぎて,伝導帯のはるか上方まで跳び上げられ,伝導帯に落下する際,熱になり電気として利用できないことである.このため,単結晶シリコンでの理論変換効率は27%程度の値となる.実際の太陽電池の効率は,材料表面での入力光の反射や材料厚さが薄すぎることによる光吸収量の不足などのため,理論変換効率より低下する.単結晶シリコン太陽電池の変換効率は,現在では24%程度を超える結果が得られている.

太陽電池の変換効率を高めるには?変換効率を向上する一つの方法は,いろいろな波長に合った複数の材料を重ね,広い領域の波長帯を利用して発電することである.すなわち,最上段には短い波長に合った材料を使い,長い波長は透過させる.そして,二段目,三段目と使う波長を順に長くして,光全体を発電に利用する.一例として,化合物半導体では,薄膜セルを積み重ねたタンデム構造を作製することができ,バンドギャップの異なるセルを重ねることで広い波長域の光を有効に利用できる.この方法により,30%を超える変換効率を達成した太陽電池もある.その他の方法としては,高い変換効率が得られる新しい材料の開発が必要である.

5.2 燃料電池

3.1.1項では,燃焼によって発生する熱量について説明した.燃焼反応は,火力発電所などの熱機関を代表とするエネルギー変換過程として重要な現象の一つである.一方,二酸化炭素を排出しない新たなエネルギー変換の手段として,燃料電池(fuel

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  189

さくいん

■ 英 数2サイクルエンジン 274サイクルエンジン 27n 型半導体 150,174p 型半導体 150,174

■ あ 行圧縮水 49圧縮比 30圧力比 39圧力ヘッド 108アルカリ電解質形燃料電池 

169一次エネルギー 1位置ヘッド 108ウイーンの変位則 147エリクソンサイクル 42エンタルピー 13エントロピー 26オットーサイクル 29オープンサイクル 101オランダ形風車 118温度差発電 103温度比 41

■ か 行加圧水型原子炉 90開水路形水車 127外燃機関 59外部効率 44海洋温度差発電 99海洋熱 2海洋熱エネルギー 100化学的エネルギー 4化学反応エネルギー 157可逆断熱変化 18可逆変化 15核エネルギー 3核分裂 85

核分裂反応 3核融合 88化合物半導体 153ガスタービン 37,47ガス定数 14風レンズ風車 125カットアウト風速 117カットイン風速 116価電子帯 149過熱器 77過熱蒸気 49過熱度 49カプラン水車 130火力発電 69カルノーサイクル 24乾き度 51乾き飽和蒸気 49還元井 95完全燃焼 74貫流ボイラ 78管路形水車 126機械効率 127ギブス自由エネルギー 157境界 10強制循環ボイラ 78曲線因子 155禁制帯 150空気極 161空気タービン方式 141,

143空気比 74空気予熱器 77空乏層 151クローズドサイクル 102クロスフロー形風車 119クロスフロー水車 130,

136系 10原子力発電 84,92原子炉 89

高温岩体 95工業仕事 13高速増殖炉 91高発熱量 74抗力 111抗力形風車 117抗力係数 112黒体 147コージェネレーション 166固体高分子形燃料電池 167固体酸化物形燃料電池 168コンバインドサイクル 82

■ さ 行サイクル 22再生器 62作動流体 5,9サバテサイクル 34サボニウス形風車 119サボニウス水車 131ジェットエンジン 44仕事 10自然循環ボイラ 78質量欠損 86質量流量 106締切比 33湿り蒸気 49ジャイロミル形風車 119斜流水車 131周速比 123自由電子 150出力係数 122受風面積 113蒸気タービン 48,57,79蒸気ドラム 77蒸気表 50状態量 12衝動水車 126,129衝動タービン 80シングルフラッシュ方式 96

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190  さくいん

水車 126,132垂直軸形風車 117水頭 108水平軸形風車 117水力効率 127水力発電 125スターリングエンジン 59,

64ステファン・ボルツマンの法則 147

静圧 108生産井 95生成物 70,158性能指数 176セイルウィング形風車 118絶対仕事 11節炭器 77ゼーベック効果 5,173総圧 109速度ヘッド 108ソルターダック方式 142,

143

■ た 行体積効率 127体積流量 107太陽光発電 146太陽電池 149多重連結ラフト方式 142,

144ダブルフラッシュ方式 97ターボジェットエンジン 

44多翼形風車 118ダリウス形風車 119ダリウス水車 131,136単結晶シリコン 150断熱熱落差 53地熱 2地熱エネルギー 93地熱発電 93,98チューブラ水車 131直接メタノール形燃料電池 

169定圧比熱 15ディーゼルサイクル 31低発熱量 73定容比熱 15伝導帯 149

動圧 108等圧変化 17等温変化 16等容変化 18閉じた系 10トルク係数 123

■ な 行内燃機関 27,36内部効率 44二酸化炭素排出量 7二次エネルギー 1熱エネルギー 2,9熱機関 9熱起電力 174熱効率 23熱電発電 173,175熱力学第一法則 10熱力学第二法則 22燃焼 69燃焼室 77燃料極 161燃料電池 6,156,170

■ は 行バイナリーサイクル 97パドル形風車 120波力発電 139,142反動水車 126,129半導体 149反動タービン 80バンドギャップ 150反応熱 69,158反応物 70,158光エネルギー 4光起電力効果 6比速度 128比熱 15比熱比 15標準生成エンタルピー 71標準生成ギブス自由エネルギー 160

標準反応エンタルピー 72標準反応ギブス自由エネルギー 160

開いた系 10風車 117,120風力エネルギー密度 114風力発電 113

不可逆変化 15沸騰水型原子炉 90プランク定数 151フランシス水車 130,134ブレイトンサイクル 38ブレイトン再生サイクル 

40ブレイトン再熱サイクル 

41プロペラ形風車 118プロペラ水車 130分散型エネルギーシステム 

8ヘスの法則 70ベッツの運動量理論 120ペルチェ効果 174ペルトン水車 129,132ベルヌーイの定理 109ボイラ 77ボイラ効率 79飽和圧力 49飽和温度 49飽和水 49ポリトロープ変化 20ボルツマン定数 154ポンプ仕事 53

■ ま 行マイクログリッド 8

■ や 行有効落差 126溶融炭酸塩形燃料電池 168揚力 112揚力形風車 117揚力係数 113

■ ら 行ランキンサイクル 52ランキン再生サイクル 56ランキン再熱サイクル 55力学的エネルギー 3理想気体 14理論火炎温度 75理論空気量 74臨界点 50リン酸形燃料電池 168連続の式 107

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Printed in Japan/ISBN978-4-627-67061-7

   著 者 略 歴平田 哲夫 (ひらた・てつお) 1976年 北海道大学大学院工学研究科機械工学第二専攻博士課程単位取得退学 1977年 カナダ・アルバータ州立大学博士研究員 1994年 信州大学工学部教授      現在に至る 工学博士 (北海道大学)

田中 誠 (たなか・まこと) 1975年 北海道大学大学院工学研究科機械工学第二専攻博士課程単位取得退学 1998年 通商産業省機械技術研究所研究室長 2001年 日本大学理工学部教授      現在に至る 工学博士 (北海道大学)

熊野 寛之 (くまの・ひろゆき) 1994年 東京工業大学工学部機械工学科卒業 1994年 東京工業大学工学部助手 2006年 信州大学工学部助教授 2007年 信州大学工学部准教授      現在に至る 博士(工学) (東京工業大学)

羽田 喜昭 (はねだ・よしあき) 1981年 信州大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了 2004年 長野工業高等専門学校教授      現在に至る 博士(工学) (京都大学)

落丁・乱丁本はお取替えいたします 印刷/ワコープラネット 製本/ブックアート 組版/dignet

図解 エネルギー工学 © 平田・田中・熊野・羽田 2011

2011年 3月 29日 第 1版第 1刷発行 【本書の無断転載を禁ず】2012年 5月 30日 第 1版第 2刷発行

著  者 平田哲夫・田中 誠・熊野寛之・羽田喜昭発 行 者 森北博巳発 行 所 森北出版株式会社

東京都千代田区富士見 1‒4‒11(〒102‒0071)電話 03‒3265‒8341/FAX 03‒3264‒8709http://www.morikita.co.jp/

日本書籍出版協会・自然科学書協会・工学書協会 会員   <(社)出版者著作権管理機構 委託出版物>

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