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個別化を実現する個別計画 一人一人のニーズに基づく 個別の指導計画、支援計画 新潟大学教育学部 長澤正樹

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個別化を実現する個別計画

一人一人のニーズに基づく 個別の指導計画、支援計画

新潟大学教育学部 長澤正樹

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内容

1. 個別計画とは 2. 個別の教育支援計画 3. 個別の指導計画 4. 記録と評価 5. 本人参加による計画の作成 6. まとめ

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なぜ個別の計画が必要か?

• 子どもに必要な支援は一人ひとりが異なる • かかわる指導者が共通の対応をすることが大切

• 保護者に個別の指導の必要性を理解してもらい、一緒にかかわってもらう

• 重点的に指導する目標と対応が明確になる • 文書化することで、権利が確実に保障される

合理的配慮・個にあった指導を保障する道具

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個別の教育支援計画(文部科学省)

• 障害のある子どもにかかわる様々な関係者(教育、医療、福祉等の関係機関の関係者、保護者など)が子どもの障害の状態等にかかわる情報を共有化し、教育的支援の目標や内容、関係者の役割分担などについて計画を策定するもの

個別の教育支援計画とは、 みんなと同じ学習が保障されるための支援をまとめた書類

指導内容だけではない 介護保険の「ケアプラン」のようなもの

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個別の指導計画(文部科学省) • 児童生徒一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導が行えるよう、学校における教育課程や指導計画、当該児童生徒の個別の教育支援計画等を踏まえて、より具体的に児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して,指導目標や指導内容・方法等を盛り込んだもの

個別の指導計画とは、 一斉指導ではできにくい特別な指導や

特別な場面(通級指導、自立活動など)での指導を まとめたもの

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個別計画の特徴 幼児期 初等教育 中等教育 後期中等教育 高等教育 成人期

個別の(教育)支援計画 個別の指導(保育)計画

個別支援計画

個別の移行計画

支援のための書類(契約書) 幼児期から成人まで継続支援

指導のための書類 学校ごとに作成

進路計画 就労計画

それぞれの特徴や目的を知り、用途に合わせて作成する

サービス等利用計画

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個別計画の基本理念 ・できること ・ほめてのばす

・できそうなこと ・そうなって欲しいこと

・指導目標にする

・今はできないけれど、 子どもにとって必要なこと

・必要な支援を考える ・必要な支援を考える

個別の指導計画

個別の教育 支援計画

基本理念:伸ばすこと、教えること、支援することを考える

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個別計画(まとめ) • 個別の教育支援計画

– 他の子どもと同じ教育条件(合理的配慮・特別な指導)を保障する契約書

• 個別の指導計画 – 特別に指導すべき内容をまとめた指導のための計画書

• 個別移行計画 – 卒業後の生活や進路のために必要なさまざまな支援をまとめた支援計画

重要:本人を交え、本人の意向を尊重して計画を

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忘れてはいけないこと • 個別計画は道具(支援ツール)る

– 指導や支援のために使うもの • 道具は使うもの、便利なもの

– 子ども、保護者、教師にメリットがある • 不便だったら、改良する

– 作りやすく、修正しやすい • デザイン(見た目)の良さ

– 所有したくなるデザイン、形、仕様

形式にとらわれず、支援計画の理念を大切に!

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内容・構成

• 支援計画に何を取り入れるのか – 必要最小限の情報 – 使用する人のニーズに合わせた内容

• どのような構成にするのか – 使いやすさを重視 – 紙媒体? 電子媒体?

• 入力の方法 – 手書き、パソコン入力、ポートフォリオ方式

集めた情報を簡単に ファイリングする方法

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評価

学力向上 問題行動の改善 子どもの成長発達 指導の有効性

検査・行動観察

認知特性、IQ 行動特性・問題行動

社会的スキル・対人関係

学力の実態把握

各教科の習熟度 学習の遅れ

実技系教科の得意不得意

願い

本人の願い 保護者の願い 教師の願い

人的支援 補助教員、ピアチューター

物理的支援 座席、クールダウンの部屋、学習場所

教示の仕方 指示、説明、提示の工夫

教材・機器 理解のための支援教材、ICTの活用

カリキュラムの修正 (学習への支援) 個別の年間指導計画 補習・補講

個別指導 問題行動 SST 日常生活の指導

個別の教育支援計画

個別の指導計画

評価

支援の有効性 継続、打ち切り、新設

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2.個別の教育支援計画

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支援計画の作成:「どこで」「誰が」

• 保護者の参加(将来は本人の参加も) • 保護者が要望を述べる

– 願い、全体的支援など • 実態と願いに基づき原案を作成 • 学校、保護者による確認 → 実行

インフォームド・コンセント (十分な説明と同意)

できることを実行へ

特別支援学校などの外部機関と連携し、校内委員会で作成

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支援チーム

全教員

コーディネーター

生徒指導 保健室

医療・福祉機関

ハロー ワーク

個別の教育支援計画

14

担任 生徒 保護者

支援会議 (高等学校の例)

行政

支援チーム、支援会議、個別の教育支援計画は三位一体

参考:サービス等利用計画

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支援会議:支援計画の作成と評価

1. 要支援児童生徒の認定

2. 支援チーム組織と支援会議の開催

3. 支援計画作成

4. 実践と評価

Niigata Univ.-Nagasawa Labo.

気になる子、自己申告など。診断にこだわらない

コーディネーター、必要なメンバー、本人参加、協働作業

自己決定支援。合意できた内容を書面にまとめる

できたことを認め、次につなげる。データの活用

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簡略された支援計画

校内委員会による 実態把握から支援計画の作成

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実態把握リスト(例) 生徒名

主 訴 発達障害の疑い

緊急度 優先順位

1-2 A

学習の遅れ 生活上の問題 対人関係

1:学習障害 2:ADHD 3:高機能自閉症

4:該当せず

1:担任対応 2:学年対応 3:学校対応

コーディネーターが優先順位をつける

障害の有無にこだわらず、指導につながる実態把握を 対象の認定基準は、学校で定めて良い

校内委員会で対応

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支援計画(例) 生徒名

主 訴 支 援 担 当 評 価

1-2 A

・同級生とうまくかかわれず、孤立している

・SCによる定期的なカウンセリング ・B(生徒)による声がけ ・実技系教科の授業での記録

・SC、相談部 ・担任 ・実技系教科担任

・定期的にカウンセリングを受けた ・Bに質問す

るようになった

適切な役割分担

主訴を明確にし、継続可能な支援をきめ、文書にまとめる

校内で対応できる支援内容をきめる

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個別の教育支援計画(通常学級)

1. 子どもの実態(実態、願い) 2. 支援、カリキュラムの修正、教育措置 3. 個別の指導計画

– 自己管理 – 対人関係 – 教科学習

4. 個別の移行計画(進路計画)

使えそうなモデル・様式を捜し、 自分の学校の現状に合わせてアレンジを

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1-1子どもの実態、願い • 実態

– 行動観察(行動の特性、好きなこと・苦手なこと) – 諸検査の結果(WISC、K-ABCなど)

• 願いと目標 – 本人、保護者、担任の願い – 願いから考えられる目標

• 現在の教育措置 • 福祉サービスなど

目標の原案

利用している医療機関・福祉サービスなど

関係機関との連携

支援・指導に必要最小限の客観的情報収集

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個別の教育支援計画:実態・願い・関連サービス

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1-2合理的配慮 ・カリキュラムの修正・教育措置

• 通常学級でどのような支援をするか – 合理的配慮、特性にあった支援

• 各教科ごと、子どもにあった指導内容を選択 – 年間指導計画の修正、学習内容の精選など

• 特別支援学級・通級指導教室の利用 – 通常の学級(主)+特別支援(従) – 特別(主)+通常(従)

子どもの実態に合わせ、カリキュラム、通常学級での支援、 学校で提供できる支援、合理的配慮をきめること

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合理的配慮・カリキュラムの修正・教育措置

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カリキュラムの修正とは

カリキュラムの修正なし

カリキュラムの修正あり

機器の使用 教材の工夫 補助教員 プリント類

年間指導計画の修正 個別指導

教材の工夫・プリント類

通常学級(主) 特別支援学級(従)

通常学級(従) 特別支援学級(主)

学習内容の精選

国語、 算数

生活単元 学習

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(軽度)発達障害 知的障害

年間指導計画の修正(基準の変更)

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1-3個別の指導計画

• 自己管理、対人関係、問題行動、教科の特別指導等、特別に指導する必要がある場合作成する

• 「自立活動」については作成義務 • 個別指導のための指導計画、指導案

(後で説明します)

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1-4個別の移行計画

• 将来の「就労」「生活」「余暇」について目標をきめ、目標達成のために獲得すべきことがらを整理した計画書

• 個別の教育支援計画の一種。高校で作成

就労、卒業後の生活のビジョンを具体化し、 この1年で学ぶことを具体化すること

入学後、できるだけ早期に作成することが望ましい 本人、保護者の参画を

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個別移行計画=進路計画

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事例

• 普通高校3年生(軽度知的障害) • 支援チーム、支援内容

– 就業生活支援センター、基幹相談センターと連携 – 個別の移行計画の作成。就労、生活、対人の3領域について、家庭、学校、支援機関と連携し取り組む

• 結果 – 就職がきまる。自己肯定感の高まり。支援会議の継続決定。

Niigata-Univ. Nagasawa-Labo.

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3.個別の指導計画の作成と例 (特別な指導のための計画書)

考え方、内容、作成手続き

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3-1個別の指導計画作成と 評価の流れ

1. 実態把握 – 検査、行動観察 – 保護者のニーズの把握

2. 計画作成 – 原案作成、保護者提示、確定

3. 実行(記録) 4. 評価

– 評価 – 計画の修正

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3-2個別の指導計画作成の手順(1)

―検査・テストから目標設定―

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検査(テスト)から目標設定

• 発達検査 – 遠城寺式発達検査 – 津守式発達検査

• 知能検査 – その他

できることとできないことを見極める 次に指導する目標を見つける

子どもの知的能力を見つける 子どもの認知特性を見つける

目標をきめるときに参考にする

つかまり立ちができる○ 手を添えられると歩く△

ひとりで歩く×

目標

検査は目標をきめたり指導の手だてを見つけるために実施

中・重度知的障害 教科学習

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実態・ニーズ 目 標 必要な支援 関連サービス

つかまり立ちができる 手を支えると歩こうとする 公園に散歩させたい

両手を支えると3メートル歩く

両手を支える 歩行器 車いす

ガイドヘルパー

重度重複障害のある子どもの個別の指導計画

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教科指導

• 学力の実態把握 • 教科別の対応

– 国語、算数:理解できるレベルから始める – 社会、理科など:個人目標、学習内容の精選

• 個人内評価

理解している単元、題材、知的能力を調べる

個別指導 未学習に対応し、基礎学力を

身につける

基本:できることからはじめ、できることを伸ばすこと 子どものペースに合わせ、わかりやすく、繰り返し教える

子どもの能力に応じた目標 子どもの能力に応じた年間指導計画

チェックリスト:資料

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算数(1年)チェックリスト

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子どもの学力を調べ、目標を設定する 教科の年間指導計画を修正する

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3-3個別の指導計画作成の手順(2) ―願いから目標設定―

願い:こうなりたいという未来の姿 こうなってほしいという期待する姿

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(1)長期目標 • こんなふうになって欲しいという理想像

• 長期(1年)の見通しに立った目標

• 子どもにとって役立つ目標を

• 知的能力、発達段階を考慮すること

長期目標とは、願う姿、指導の方向性

(例) 自分の気持ちをことばで伝えることができる

一人で身の回りの支度ができる 自ら進んで学習に参加する

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長期目標と短期目標(例) (領域:コミュニケーション)

長期目標 短期目標 (指導目標)

自分の気持ちを相手に伝えることができる ご飯のとき「おかわり」と言う

おもちゃをかして欲しいとき「かして」と言う

わからないときに「教えて」と言う

やりたくないとき「いや」と言う

どれをさきに指導するか?

たくさん考え、優先順位をつけ、できることから始める

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(2)短期目標(具体目標)

• 長期目標を達成するための具体的な目標 • 曖昧な表現を避ける • 観察可能な表現で

(例) 条件:朝起きたとき、絵カードを見ながら 標的行動:ひとりで服を着る 基準:Tシャツとズボン。10分以内

短期目標 = 具体目標

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(3)指導場面、指導者

• 学校 – 授業中、休み時間、個別指導

• 家庭 – 遊び、お手伝い、食事、入浴、挨拶

• その他 – 塾、サークル、おばあちゃんの家、レジャー施設

子どもにかかわるすべての人が指導者です 指導にふさわしい場面では必ず指導すること

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(4)指導方法 • 目標通りできるための工夫

• 目標通りできたときの対応

• うまく行かなかったときの対応

スケジュール表、絵カード・写真カード 適切なことばかけ、モデルの提示など 知能検査から得られる認知特性を考慮

ほめことば、ごほうび、トークン

身体プロンプト、モデリング,言語プロンプト 好ましくない行為に対しては教育的な罰

目標達成のために、子どもにあった指導方法の選択

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問題行動に対応した指導計画 問題行動の禁止ではなく、望ましい行動ができることを

第一に考えている

個別の指導計画(個別保育計画:魚沼市)(続き)

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4.記録と評価

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4-1記録と評価

• 何を記録するのか

• どうやって記録するのか – 主観的記録、チェックリスト、検査、ビデオ

• 何がわかるのか

記録で成長と指導の有効性がわかる

子どもの行動、教師のかかわり

子どもの成長、指導の効果

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正しい評価のために • 短期目標を具体的に • 条件、標的行動、基準を意識する

条件:朝起きたとき、絵カードを見ながら 標的行動:ひとりで服を着る 基準:Tシャツとズボン。10分以内

ひとりで着たかどうか? 着られた衣服は?

時間は? チェックするのは?

目標に基準を設ける

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記録や評価の手段

• できごと、行動を記述する • チェックリスト(あとで説明) • テスト、検査 • ビデオ:同じ場面を録画 • 評定尺度法 • 自己記録、評価

主観的記録 (通常の記録)

発達検査 社会生活能力検査

学力検査

5:とても良い 4:良い

3:ふつう 2:悪い

1:とても悪い

無理なく続けられる手段で必ず記録 指導前と指導後で比較すると変化がわかる

自分で記録、評価

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主観的記録の例 問題が起きた場面・状況

問題行動 対応 結果

・朝のあいさつ ○○くんの手が顔にぶつかる

・○○くんのおなかを叩く

・「いけません。あやまりなさい」と叱る

・「僕は何もしていない」と言う

時系列的に分け、事実に基づき記述する 記録から、次の指導が見えてくる

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チェックリスト

月 日 月 日 月 日 月 日

服を着る

着られた服

時間

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チェックリスト

7月3日 7月4日 7月5日 7月6日

服を着る ○ ◎

着られた服

Tシャツ Tシャツ

時間 7分 5分

◎:ひとりでできた ○:手伝ってできた △:できなかった

記録しやすい、まとめやすい工夫を

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自分でできた割合

0

20

40

60

80

100

セッション

割 合

(%) <指導前>

<指導中>

<指導後>

1 2 3 4 1 2 3 1 2

結果を図に表すと変化が一目でわかる 表計算ソフトの有効活用

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カリキュラムに基づく記録と評価

• 学習内容から、学ぶべき目標を具体化する • 課題分析の手法で、スモールステップ化

– 下位目標を選択し、系列化を図る • 項目の設定は自由

– 子どもの実態に応じて弾力的に • できるだけ数値で評価を

カリキュラムに基づく記録と評価とは、 目標(スキル)をチェックリスト化すること

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カリキュラムに基づく記録と評価

11月21日 11月28日 12月5日 12月12日

店に行く 物を選ぶ

レジに並ぶ お金を支払う おつり・物を受け取る

家に戻る

目標:一人で買い物をする

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カリキュラムに基づく記録と評価

11月21日 11月28日 12月5日 12月12日

店に行く ○ ○ ○ 物を選ぶ ○ ◎ ◎ レジに並ぶ

△ △ ○

お金を支払う

△ △ △

おつり・物を受け取る

◎ ◎ ◎

家に戻る ◎ ◎ ◎

目標:一人で買い物をする

何ができるようになったかを客観的に記録・評価する

◎ひとりで ○援助されて △できない

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検査による評価 • 発達検査

– 継続的に実施→子どもの成長を評価 • 知能検査

– 知的能力や能力の偏りを調べる – 指導の評価には向かない

• 適応行動尺度(社会生活能力検査など) – 適応行動の獲得が評価できる

• 学力検査 – 読み書き計算能力(参考、K-ABCⅡ)

Niigata-Univ. Nagasawa-Labo.

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発達検査

指導前

指導後

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• 目標が達成できた、約束が守れた!

• 「自分はできる」

• 「自分は○○は得意。でも◎◎は苦手」

自己肯定感・自己有能感

自己理解(客観的な自己像) 将来の進路を考える元

評価で自信がつき、前向きな自己理解ができる

賞賛・承認、振り返り

4-2評価の意義

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個別の指導計画の評価

• 短期目標を定期的に評価 – 達成できた→次の目標へステップアップ – 達成できない→指導方法、目標の再検討

• 長期目標・短期目標の評価 – 達成できたこと、できないことを整理する – 標準化された検査で評価

時期をきめて必ず評価→記述 次の学年(担任)、学校へ必ず引き継ぐこと

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個別の教育支援計画の評価

• 提供された支援の有効性を評価 – 支援によって獲得したこと、支援でできていること

• 今後必要な支援の検討 – 現在の支援が必要かどうか – さらに必要な支援は?

• 教育措置にかかわる支援の検討 – 通級、支援学級、支援学校の利用

• 障害認定の必要性

有効な支援は打ち切らず、できるだけ引き継いでいくこと

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小学校

中学校

高等学校

進学 社会生活

幼・保、小、中、高の連携

幼稚園・保育園

うまくつながる工夫を ・連絡会 ・観察

・保護者面談 ・相談支援ファイル

早期に支援計画を作成し、次の段階へバトンタッチ

個別の教育支援計画

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さまざまな支援を保障し、継続するための支援ツール

新潟県

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5.本人参加による 個別の計画作成と評価

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5-1個別計画作成と評価への本人参加

• 当事者と支援者との協働作業 – 当事者の思いを理解し、共感すること – 当事者が自分できめられるように支援すること

• 自己評価から自己理解へ – できることとできないことを知る – 自分の特性を知る – 自分にあった進路を決める

本人参加 → 問題解決の意識、自信(自己肯定感)

ソーシャルワーク

64 Niigata Univ.-Nagasawa Labo.

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5-2本人参加の手続き

• 本人に関する情報提供 – 学力、実態把握データ、学校・社会の情報

• 本人の悩み、困難さの受け止め – 自己認知、自己理解の重要性

• 願う姿の具体化 – 現状から、具体目標の自己選択

• 必要な支援の選択 – 丁寧な情報提供とメリット、ディメリットの紹介

本人参加,決定ができるように、条件をそろえる

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個別計画での自己決定のために • 子どもの自己決定の保障を

– 自分自身についての情報提供 – 必要な目標と支援決定に参加 – 個別計画作成と評価への参加

• 自己決定のためのカリキュラムを – エンパワメント:きめられるための力をつける – アドボカシー:権利擁護 – セルフアドボカシー:自分自身で、権利を主張し、守ること

条件整備と、本人の力の強化を

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5-3手続き • 目標をきめる

• 必要な支援をきめる

• 計画作成 • 定期的に評価する

困っていることを聞き、どうなりたいのかを一緒に考える

そのために必要な支援、して欲しくないことを考える

できたこと、がんばったことを言わせる できたこと、がんばったことをほめる

本人の参加 → 問題解決の意識、自信へ

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短期目標 して欲しいこと・して欲しくないこと

結果・がんばったこと

長期目標

次の目標

自分はどうなりたいのか(自立生活を送る)

今できることは 何か

(週2回洗濯する)

教師・親に 手伝って欲しいこと、 して欲しくないこと

(洗剤の分量を見てほしい。 ほかは口出しをしないで

ほしい)

できるようになったこと がんばったこと (洗濯機の使い方を

マスターした)

洗濯物を干す

Niigata-Univ. Nagasawa-Labo

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5-4今後の課題

• 自己理解の困難さへの対応 – 自己理解の手続き、資料、支援

• 自己理解から気づきへ – 視覚的な支援 – カウンセリング

• 気づきから目標設定へ • 必要な支援の自己選択 • ふり返りによる自己認識のさらなる向上

Niigata-Univ. Nagasawa-Labo

資料(親の会提案)

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親の会の場合

• 当事者をよく知る親(母親)が事前に対応 – 1時間程度、聞き役になり子どもの率直な気持ちを聴き取る

– めざす姿、受け入れられる支援を一緒に考える

• 実態にある程度即した「当事者の考え」を尊重した支援計画(案)の作成

• 子どもの成長をともに評価し喜ぶ • 対応する(できる)親の確保(育成)が課題

Niigata-Univ. Nagasawa-Labo

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6.まとめ

• 個別の教育支援計画は、支援を保障する道具

• 本人、家族の願いを中心に作成する • 様式にこだわらず、便利さを追求する • 定期的に評価し、有効性を確かめる • 支援計画を引き継ぎ、支援を保障し続ける

支援チームを結成し、本人や家族を入れ、 定期的に会合を開くこと