医療分野における ai と人間の共存 - 法政大学 藤村博之24 法政大学...

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24 法政大学 藤村ゼミ F 医療分野における AI と人間の共存 AI が医療に参入したら、医師の仕事はなくなってしまうのか 藤村ゼミ F 駒井・美里・机・新実・漆原・後藤・日根野

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  • 24 法政大学 藤村ゼミ F

    医療分野における AI と人間の共存 AI が医療に参入したら、医師の仕事はなくなってしまうのか

    藤村ゼミ F 班

    駒井・美里・机・新実・漆原・後藤・日根野

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    目次

    序章 はじめに

    第 1 章 迫りくるシンギュラリティ

    第 2 章 医療現場に使われる AI

    第 3 章 医師と Watson

    第 4 章 医師の重要性

    第 5 章 今後の課題

    終章 まとめ

    参考文献

    序章 はじめに

    人類は、長い歴史の中で発明を繰り返すと共に、そこから得られた知識を蓄積、利用す

    ることで現代のような高度な社会を作り上げてきた。これは、現在進行形でもあり、未来

    の人間社会は想像できないような進化を遂げる可能性を秘めている。この進化を加速させ

    るのに大きな期待をされているのが人工知能である。

    人工知能は、既にあらゆる分野に登場している。最近では、新人の棋士が連勝記録を更

    新し話題になったが、この強さの秘訣は人工知能を用いた将棋ソフトを使った研究だとい

    う。人工知能は、その特性(詳細は、本論文にて)から人間が思いつかないアイデアを導

    きだすため、将棋界には今までなかった勝利への一手を生み出したのである。このように

    人工知能は、活用すれば新たな可能性を生み出すものであり、大変画期的なものだ。しか

    し、その大きな可能性を秘めているからこそ人間にとって不都合なものが生じ、未来に人

    間を脅かす脅威にもなるのではないだろうか。

    本論文では、人工知能の活用の現状、先行例に触れ、人工知能と人間がうまく共存して

    いく方法を医療の分野、特に医師という職業に焦点を当て、論じていく。

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    第1章 迫りくるシンギュラリティ

    人工知能という言葉を多く聞くようになった昨今、その汎用性は多岐に渡り、現在我々

    はすでに生活の利便性を考える上で必要不可欠な存在になっている。やがて将来は人間と

    人工知能が共存する世界が来ると提唱する研究者も少なくない。人工知能が人類の能力を

    超える境界点「シンギュラリティ」を提唱し、その概念を世界に広めた人工知能の世界的

    権威レイ・カーツワイル氏。同氏は「シンギュラリティ」に達すると人間生活は後戻りで

    きないほど変容すると主張している。しかし現在、人工知能の脅威を感じながら生活して

    いる人は少ない。同氏は著書『The Singularity Is Near: When Humans Transcend

    Biology』中で 2045 年に「シンギュラリティ」を迎えると予言している。この「シンギュ

    ラリティ」を地球が迎えたその時、我々人間は人工知能をどう受け止めれば良いのだろう

    か。 「人工知能」とは我々人間と同じような知能を我々の内側ではなく、外側に人工的に作

    りあげる技術である。しかし、そもそも「人間の知能とは何か」が研究されていないため、

    「人工知能」に関する明確な定義はない。人工知能は AI の和訳語であるが「人間の頭脳が

    行う知的作業をコンピュータで模倣したシステムやソフトウェア」の事であり具体的には、

    「人間が使用する自然言語の理解や、論理的推論の実行、経験から学習するコンピュータ

    プログラムなど」のことをいう。「人工知能」によって経済や社会はどのように変わるので

    あろうか。Google や Facebook は「われわれはモバイル中心の世界から人工知能中心の世

    界に移りつつある」「モバイルファーストから人工知能ファーストへと移行する」と宣言す

    るなど人工知能は急速に我々の社会に溶け込みつつある。もはや、ヒト・モノ・カネから

    脱却し、人工知能によって未来の変化を創り出すことが出来なければ、将来は描けない段

    階に達している。今後は間違いなく、医療、自動運転、製造などあらゆる分野において人

    工知能が広まっていくといえるだろう。

    このような汎用人工知能は人間を助けることができ、人間の知能を実現することができ

    る。レイ・カーツワイル氏は近い将来、「汎用人工知能」が登場し大きく時代が変化すると

    予想する。従来の、チェスだけに強い「特化型人工知能」からチェスをしたり、会話をし

    たり、事務作業を担ったりする「汎用人工知能」が実現するかもしれないということであ

    る。「汎用人工知能」は研究開発の段階にあり、まだこの世には存在していない。しかし、

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    「汎用人工知能」が実現されると、人間の仕事を奪っていく可能性がある。

    コンピュータの技術革新がすさまじい勢いで進む中、従来の人間にしかできないとされ

    てきた仕事がロボットなどの機械によって代わってしまう。例えば、「Google Car」のよう

    な無人で走る自動運転車は、これから世界中に普及されるだろう。そうなればタクシーや

    トラックの運転手は仕事を失ってしまう。これはほんの一例であり機械によって代わられ

    る人間の仕事は多岐に渡るだろう。

    「人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる」そんな衝撃的な予測をするのは、オック

    スフォード大学で人工知能の研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授である。そのオズ

    ボーン氏がカール・ベネディクト・フライ研究員と共著で発表した「雇用の未来―コンピ

    ュータ化によって仕事は失われるのか」という論文が世界で話題となっている。同論文で

    は 702 の職種が今後どれだけコンピュータ技術によって自動化されるかを分析したもので

    ある。例えば、バーテンダーの仕事がコンピュータに代わられる確率は 77%だという。論

    文の結果、米国の総雇用者の仕事のうち、47%が 10 年から 20 年後には機械によって代わ

    られるという予測になった。また 90%以上の確率で無くなる可能性が高い職業は 50 以上に

    も及ぶ。

    具体例を一部挙げると、「銀行の融資担当者」「レストランの案内係」「給与・福利厚生担

    当者」「仕立屋」「カメラの修理工」など多岐に渡る。

    将来、多くの仕事が無くなったらどうなってしまうだろうか。我々は今後、人工知能の

    発達によって多くの仕事がコンピュータにとって代わられ、人間の仕事が減少し、多くの

    失業者が発生するのではないか。そのような問題意識が芽生えた。

    その中でも、我々は医師に焦点を当てることにした。その理由は、医師という職業が、

    我々人間の命に最も直接的に関わるからである。医師の仕事がAIに奪われることがあれば、

    その精度や利用方法次第で、より多くの命を救うことができるかもしれないが、危険にさ

    らされてしまう可能性も生じるだろう。現在、今後高齢化が進む中で患者は増える一方医

    師不足になるのではという懸念や、診察を受けるまでの長い待ち時間から行くのが面倒に

    なり診断しない患者がいるという医療の問題もある。果たして、AI の参入はこれらの問題

    を解決する手掛かりになるのか、医師の仕事は奪われてしまうのか。我々は医療現場で活

    躍を見せる AI 「Watson」とその他の研究・利用を AI の歴史から基づいて説明していく。

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    第 2章 医療現場に使われる AI

    この章では医療現場に用いられている AI と今後使われるであろう AI について歴史とと

    もに説明していく。東京大学工学系研究科の松尾豊氏によると、近年テレビや新聞で話題

    になってきている AI は、実際は 1956 年から研究されていて現在は第三次ブームにある。

    第一次ブームは 60 年代の頃で数学の定理を証明するなど早く考える事の出来る人工知能

    であった。第二次ブームの 70 年代初めには医療診断などができるようになり、AI が血液

    検査結果から血液疾患を見つけて抗生物質の処方に成功した事例もある。現在の第三次ブ

    ームでは、技術がさらに進歩し、データ分析だけでなく画像認識技術も向上している。人

    間であれば 10 日はかかるレントゲン・CT・MRI からの画像解析や、膨大な検査結果か

    らの細胞診断、腫瘍の検出・異常値の発見を AI は瞬時に行える。さらに患者の表情から

    も異変を感知することできるようになってきたと言われる AI が医療現場でどのように使

    われているのか述べていく。

    現在医療で実用化されている AI は「IBM Watson」である。Watson は診断のお手伝い

    や新薬開発において活躍している。

    診断の手伝いという点では、東京大学医科学研究所ががんゲノムの解析への活用に向け

    て 2015 年に導入した Watson が、特殊な白血病患者病名を 10 分ほどで見抜き生命を救

    った例がある。東京医科学研究所の Watson は複数の医師の医学論文を突き合わせた

    2000 万件以上のがんに関する論文を学習しているので、診断が難しい白血病患者の診断に

    役立った。もし患者が Watson に出会わなければ白血病の原因が分からず症状が悪化し、

    免疫不全から敗血症に陥り、最悪は死亡していた可能性すらあったと言われている。その

    患者は現在治療を受けている段階であるが、Watson は他にも 41 名の患者の治療や診断

    のアドバイスも提供している。

    また、新薬開発という点では、アメリカのヒューストンのベイラー医科大学で、生化学

    分野の文献を Watson に考察させたことで、1 年で体内の働きがまだわかっていない 3 個

    のタンパク質の機能を特定し新薬開発につなげることができた例がある。人間が調べると

    1 年に 1 個のタンパク質の機能特定ができるペースである。このように、Watson の学習

    機能を使うと、数千、数百万という作業を超高速で同時に行うことができ、がん治療に有

    益な新薬開発につながる。

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    ここからは、Watson の様々な能力を利用し診断を手助けするために進められている AI

    の事例を 4 点挙げる。

    (MENTAT)

    1 つ目の MENTAT は Watson の自然言語処理能力を活用し、精神科の電子カルテ解析

    に利用予定のものである。MENTAT は電子カルテの自由記述文から類似症例や統計データ

    を探し、患者の入院長期化や再発に影響を及ぼす因子を見つける。また、それらのデータ

    からいち早く対応すべき項目を医師と看護師、ケースワーカーの 3 者が共有できるように

    整理することができる。これにより時間短縮と作業の効率化に役に立つと我々は考えた。

    現在は患者の家族構成や職業及びアレルギーなどの文書を読んでから検診を行う。今後は

    MENTAT が忙しい診断の間に見やすくグラフにまとめたり、リスク要因がわかるように色

    を付けしてくれることで、検診を綿密に行う時間が増えたり、人間の見落としが減少する。

    医師が患者に説明する時は、その見やすくまとめられたデータを用いることで安心感を与

    える事につながる。また患者に関わる医療関係の人間にとっても書類作成を行ってくれる

    ため、患者とより丁寧に接することができ、別の仕事の取組みを行うことができるように

    なると考える。MENTAT を使用することで患者の入院期間などのデータを共有し、すぐに

    それぞれの視点から問題点を見つけ共有できるようになると考えられており、早期退院や

    再発予防につなげることができると期待されている。

    (ホワイトジャック)

    2 つ目のホワイトジャックは自治医科大学が開発中の双方向対話型の AI 診療支援シス

    テムである。患者の問診から疾患を特定するプロセスで活用される。これは、蓄積された

    ビッグデータから予診情報を学習によって疑われる病名を提示し、医師の判断を支援する

    ものである。先ほどの MENTAT との違いは 2 点あると考える。まず、リアルタイムの情

    報収集ができるため感染症の流行も解析・予測もできるということである。MENTAT は機

    械学習で膨大な数の文献から病名を見つけ出すものである。対するホワイトジャックは医

    療データをもとに考えられる病名の確率を計算し、インフルエンザなどのタイムリーな問

    題にも対応できるように常に学習している。次に、MENTAT は患者の病気が長引く可能性

    やリスク分析を専門とするに対して、ホワイトジャックは専門医と非専門医が診断した結

    果を比較し病名をいくつか導き出せる点である。具体的ないくつかの病名候補の中には、

    確率が低くても見落としてはならない危険な病名も含まれているため、医師の見落としが

    さらに減少するのではないかと考える。ホワイトジャックは医師の診察での身体所見の検

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    査結果を追加・入力すると、再解析を進め精度の高い病名を提示してくれる。しかし、医

    師の診療を支援するためのシステムであって、診断はあくまで医師の判断で行われるとい

    うことに注意しなければならない。

    (救急搬送支援システム)

    3 つ目は開発途中の救急搬送支援システムである。これは、救急医療にスマートフォンア

    プリ Join と端末人工知能を組み合わせたものである。複数の医療関係者間でチャットを交

    わし、画像映像をリアルタイムで共有できるため、離れていても的確な治療をその場で始

    めることができる。問診アプリ、脈拍や血圧を測定できるリストバンド型端末を使い、救

    急搬送中に患者の問診情報やバイタルサインを収集し治療することで、時間との勝負であ

    る救急搬送の大きな手助けになる。

    (統合的がん医療システム)

    最後に挙げるのは、総合的がんの医療システムである。国立がん研究センターは AI を

    活用して臨床情報やゲノム血液などの情報を統合的に解析メカニズムで明らかにし、診断

    や治療創薬に応用する予定である。これによりさらに、1人1人に最適化された医療を実

    現することを目指している。これらは AI を使った夢のようなシステムである。

    第 3 章 医師と Watson

    AI(人工知能)はすさまじい速度で発展し、医療の分野で活躍し始めている。AI は、

    24 時間稼働し続けられる上に、人間の頭脳では処理することのできないような、膨大な量

    のデータを高速で学習することが出来る。前章で紹介した IBM の「Watson」は、自身が

    学習した膨大な医学論文を自分なりに解釈し、それぞれを関連付けてデータベースに保管

    しているため、患者の情報を入力すると、その症例に関わる文献を瞬時に探しあてること

    が出来る。生命科学の論文の公表件数は 2016 年末時点で、約 2700 万件もの膨大な数に上

    るが、日常業務の負担が大きい現場の医師にとって、これら全ての論文を読破し、正確に

    把握することは困難である。しかし、AI はこのような人間には不可能な事象を可能にする

    ことが出来る。

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    このまま AI が、人間には不可能な速さで学習し、発展し、進化し続けるならば、医師な

    どの専門的な職業は必要なくなり、人間の仕事が減少していくという労働問題に発展して

    しまうのではないだろうか。

    2011 年 2 月、アメリカの人気クイズ番組「ジョパディ!」に Watson が登場し、歴代チ

    ャンピオン二人に圧勝したことは、多くの人々に衝撃を与えた。しかし、AI 対して不安や

    恐怖を感じた視聴者も少なくなかっただろう。最先端の自然言語解析技術により、出題者

    の質問を人間の手を借りずに、Watson 自身で理解し、膨大なビッグデータの中から正解を

    見つけ出すのにかかった時間はわずか三秒であった。IBM 社は同年 9 月には、アメリカの

    大手医療保険会社 WellPoint 社と提携し、Watson の医療分野への応用を開始した。

    Watson を応用したソフトウェアは、実際に導入が進んでいる。Watson を使った治験マ

    ッチングシステム「Watson for Clinical Trial Matching(CTM)」に関する検証では、2620

    人の肺がん及び乳がん患者のデータを CTM で処理し、治験に適した患者の調査を行ったと

    ころ、CTM は全体の 94%もの治験不適格者を自動的に除外した。従来の被験者選択時間の

    1 時間 50 分を、24 分にまで短縮した。患者とその患者にふさわしい治験をマッチングする

    システムは、それまでに存在せず、CTM の導入は従来の治験におけるコストと時間の削減

    へと繋がった。

    2016 年 12 月に、韓国では初めてカチョン大学ギル病院で、米 IBM 社の「Watson for

    Oncology」が導入された。これは、Watson を使ったがん専門医のための治療支援システム

    であり、腫瘍学に関する専門知識や医学学術誌 300 冊、医学教科書 200 冊など 150 万ペー

    ジ分もの医療データが構築されている。Watson for Oncology は乳がん、肺がん及び大腸が

    んに対して推奨される治療法を提供する。Watson for Oncology が提供した治療方法を実際

    に患者に適用するかどうかは、医師が判断することになっている。同病院の人工知能基盤

    精密医療推進団のイ・オン団長は、「このソフトウェアは、車両用ナビゲーションのような

    役割を果たすことになる。」と述べた。このまま AI の導入が進めば、その存在が医師にと

    って大きな助けとなることは確実である。しかし、同病院で実際に Watson for Oncology

    が提示した治療法と医師の提示した治療法が微妙に違うというケースが生じた際、医師の

    提示した治療法ではなく、Watson の治療法を選択した患者が存在したと医師が話した。こ

    れは、患者が医師(人間)よりも Watson(AI)を信頼したという信じがたい事実であった。

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    米国腫瘍学会の発表された資料によると、Watson for Oncology の提示した治療法と、腫

    瘍学会の推奨する治療法では、肺がんの症例で 93%、大腸がんでは 98%、直腸がんでは

    93%と、全体的に非常に高い診断一致率となった。

    2016 年 12 月 6 日から 10 日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウムでは、イン

    ドのバンガロールにある Manipal 病院で行われた、二重盲検安全性確認試験の結果が発表

    された。同病院の乳がん患者 638 人の症例データから、診断一致率の調査が行われたのだ

    が、本試験の筆頭著者である Manipal 病院の理事長によると、乳がんにおいての診断一致

    率は乳がんのタイプによって異なった。Watson for Oncology の推奨は、非転移がんではほ

    ぼ 80%が一致したが、転移がんでは 45%しか一致しなかった。乳がん全体の約二割を占め

    る、トリプルネガティブ乳がんでは、Watson for Oncology の推奨は医師の推奨と 68%一

    致したが、HER2(ハーツー)陰性乳がんでは 35%しか一致しなかった。同病院理事長は、

    「トリプルネガティブ乳がんは HER2 陰性乳がんよりも、治療方法の選択肢が少ないため、

    診断一致率に差が生じることは、不思議なことではない。」と述べたが、この調査結果から、

    AI は未だ、完璧な存在ではないことが数値として明確に表れた。

    Watson の診断一致率の水準は全体的に高いものではあるが、100%には達していない。

    ましてや、乳がんにおいては、診断一致率に大きな差が生じている。しかし、AIの意見

    を選択した患者が実際に存在するということは、これからAIがさらに進化し、実用例が

    増え、信頼性が高まれば、それに伴って医師よりも AI の意見を尊重する患者も増加してい

    く可能性は否定できないのではないだろうか。

    2014 年、イギリスのデトロイト社は、「英国の仕事のうち、35%が、今後 20 年でロボッ

    トに置き換えられる可能性がある」と発表した。そして、1章にも述べたが、オックスフ

    ォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が、「雇用の未来―コンピュータ化によって

    仕事は失われるのか」の論文の中で、今後 10 年から 20 年で 47%の職業が機械によって自

    動化されるだろうと述べ、アメリカの発明家であるレイ・カーツワイル氏は、人工知能が

    人間の能力を上回るとされる、技術的特異点(シンギュラリティ)は 2045 年にやってくる

    と予言した。これは一般に 2045 年問題と呼ばれ、世界中の職者・研究者によって議論がな

    されている。現在においてはWatsonを開発した IBMの他にも、Google、Apple、Facebook、

    Microsoft など、多くの企業がAIの開発に積極的に取り組み、競争を繰り広げている。そ

    のため、AI は今後さらなる発展を遂げていくだろう。

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    近い将来、AI と人間の労働関係の在り方は、確実に問題となるだろう。私たちは進化す

    る AI とどのように向き合えばよいのだろうか。私たちの生命に直接携わる“医師”という

    職業は、AI に置き換えられて必要なくなってしまうのだろうか。

    第 4 章 医師の重要性

    3 章では、今もなお発展、普及し続けている AI の代表例として挙げられる「Watson」が医

    療現場でどのように活用されているか述べてきた。そしてこの Watson は、まだ完璧なもの

    ではないが、確実に医療現場での利用において、医師つまり人間の仕事を手助けするのに

    有効であるということを示してきた。さらに患者が医師よりも Watson の提示した治療法を

    選択したという事例まで挙げられている。今後も人間は AI の発展を期待し、AI を医療に

    限らず様々な現場で活用していくことは間違いないだろう。しかし、本当に我々人間は AI

    を活用する側でいられるのだろうか。人間より AI が信用されてしまった事実があったよう

    に、信用度だけでなく、人間の仕事も AI の有能性、効率性に負け、奪われてしまうのでは

    ないか。このようなことが現在、社会では危惧されている。本当に人間の職が AI に置き換

    えられてしまう世の中がくるのだろうか。AI はうまく利用すれば、悪いものではない。そ

    して、我々人間が AI に職を奪われることはない。この章では”人間にしかできないこと”と”

    現在、求められている医療のあり方”に沿って、その理由を述べていく。

    2 章でも述べたように、診断が極めて難しく、治療法も多岐にわたる白血病を Watson は

    わずか 10 分程で導き出している。このような特殊な病気の診断は、現時点では複数の医師

    が患者のデータと数多くある医学論文などを細かく照らし合わせながら行ってきている。

    しかし、あまりに情報が膨大なために時間がかかる上、必ずしも正しい結論にたどり着け

    るかどうかわからない。多くの医学論文をデータとしてもつ Watson は診断時間の短縮など、

    医師を大きく手助けしているだけでなく、患者への負担も減らしていることは紛れもない

    事実である。

    しかし、Watson for Oncology による診断一致率はまだ 100%に到達していない。3 章で

    も述べたように、特に乳がん(転移がん、HER2 陰性乳がん)においては低い診断一致率

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    を出している。もちろん、医師も、いついかなる状況でも 100%の診断一致率を出すことが

    できると言い切ることは不可能である。人間には絶対に不可能な程の膨大な量の情報を蓄

    えることができる AIならば、いつかは 100%の診断一致ができるようになるかもしれない。

    しかし、少なくとも 100%とは言えない現状況では、小さなミスによって命を失ってしまう

    ことさえあり得る医療現場では医師による最終判断が絶対に必要だと言えるだろう。なぜ

    ならば、責任の所在をはっきりさせるためであり、実際に治療をするのは人間である医師

    だからだ。AI からヒントをもらい診断の参考にするのは当然推奨されるべきことだが、万

    が一、AI に頼り切った診断によって、患者になにか異常をきたしてしまった場合、誰が責

    任をとるのか。担当の医師がきちんと患者と向き合い、事実を患者やその家族に説明する

    必要がある。医師が納得した上で診断結果を出し、患者に説明をする。そこから、医師と

    患者のコミュニケーションを通して治療方法を選択し、実際に治療を行う。そして、その

    後の様々なケースに備えて準備していく。今後 AI が 100%の診断一致率に到達したとして

    も同じことが言えるだろう。あくまで、医師が判断し、決断することによって、患者はそ

    の命を預けることができる。治療をおこなう医師と治療を受ける患者としての関係が成立

    する。つまり、医師が納得し、責任を持って判断することによって、その患者のその後の

    病状について、最悪のケースも含めあらゆる想定ができ、何かあったときにも迅速に対応

    することができる。

    いくら Watson が進化を遂げて立派な診断結果を出せるようになっても、医師の仕事が完

    全に AI に置き換えられることはない。また、AI 以上と言うのは不可能かもしれないが、

    AI の診断結果に押され負けせずに自分たちで責任を持って考え、判断することができるよ

    う、より高度で専門的かつ最先端の知識と技術を持つ医師が必要である。AI の発展ととも

    に、このような医療現場で働く人々のための教育機関を今よりもさらに充実させていくこ

    とが、今後ますます社会に求められるだろう。

    日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は、約 3 年に一度実施している「日本の医療に

    関する意識調査」の調査結果を 2015 年 1 月 29 日に公表した。この調査によると無作為に抽

    出された 20 歳以上の国民 1,122 名(個人面接聴取法)のうち、9 割近くが受けた医療に対

    して”満足”と回答している。WEB モニターによる調査では、無作為に抽出された 20 歳以

    上の国民 5,667 名のうち、8 割が”満足”と回答した。いずれも、医療への満足度に影響する

    一番大きな要因は「医師による説明」であることがわかった。これは「医療について詳しい、

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    人工知能を持ったロボットによる説明」に代えられる部分ではない。また、患者は、患者ひ

    とりひとりの性格や職業、生活環境、本人の希望など個人的な状況に合わせた医療を求め

    ると同時に、医師に対して、患者の病気やけがの治療だけではなく、心のケアまで行うこ

    とを求めている、ということも調査によって示された。これらの例として、「漠然とした不

    安を解消したい」や「とりあえず仕事が落ち着くまで、今の症状を和らげたい」、「ただ話を

    聞いてほしい」など三者三様な患者からの要望が挙げられる。患者本人が病気を受け入れら

    れない、もしくは本人ではなく患者の家族が受け入れられないといったケースも考えられ

    る。この場合、医師の仕事はただ診断、治療をすることだけではなく患者が病気と向き合

    うために手助けをすることや、患者やその家族に対して、選択肢として挙げられる治療法

    への理解度や納得度を高めてあげることである。医師とのコミュニケーションを通すこと

    で、患者本人も気づけることがあるだろう。第一、「医師が自分の状態をわかってくれて、

    治療してくれる」という状況そのものが患者に安心感を与え、医療に対する付加価値を高

    めるのである。これらは決して AI に担える仕事ではない。患者に寄り添い、患者の求める

    医療に近づくために医師の存在は欠かせないのである。

    一方、日医総研の調査結果によると、国民が訴える不満の中には、「待ち時間」が挙げら

    れる。この待ち時間に Watson を利用することで、簡単な問診を済ませ、「待ち時間」の体

    感時間を短くし、医師による問診時間も短縮することができる。AI の活用によって、医師

    が患者との治療方法について相談する時間を増やし、より患者に寄り添った医療に近づけ

    るだけでなく、「待ち時間」といった不満の解消にもつながるだろう。

    AI を利用することは決して悪いことではない。しかし、AI に頼り切るのも違うだろう。

    コミュニケーション能力と枠組みに固執せず、臨機応変に物事に対応できる柔軟性の両方

    といった、人間にしかできない能力を生かしつつ、膨大な量のデータを蓄え、探索するこ

    とや迅速に計算することなどの、AI だからこそできる能力をうまく利用することによって

    医師と患者の信頼関係構築にも役立ち、今よりももっと患者が満足できる医療現場を作る

    ことができるだろう。

    以上のことから、医師の仕事が AI によって奪われ、医師が必要なくなることはないと考

    えられる。AI は今後さらに医療現場で活用されるようになるだろう。同時に、医師は「医

    師」、AI は「AI」、それぞれの役割を明確にしていくことが重要である。

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    第5章 今後の課題

    前章で述べたように、医療分野での人間と AI の「役割分担」が、今後の人間と AI の共

    存において大きな課題となってくる。現在人間が持っている 1 つの仕事を、まるまる AI に

    任せるのは「役割分担」とは言えず、共存とはかけ離れたものである。医療現場を例にと

    って、簡単な問診の時間を、医療知識を豊富に搭載できる Watson に任せ、その診断結果を

    もとに最終的な判断、施術及びコミュニケーションによる心のケアを医師が担当するとい

    う構図、これがまさに「役割分担」そのものではないだろうか。

    しかしAIが時代の主流になろうとしているこの時代、乗り越えなければならない問題は「信

    頼」と「責任」である。この点に関して、AI 側とそれを扱う医師側の双方に欠点や課題に

    ついてこの章では述べていきたい。

    まず、医療現場における AI 導入の課題を考える前に、AI が抱える根本的な欠点につい

    て考える必要がある。AI に与えるデータは人間が与えることになるが、人間はまだ人間の

    脳が持ち合わせている能力を全く理解していない。そのため人間が技術的に人間を理解し

    ない状況が続く以上、AI もやはり限界を持ち続けることになる。

    まず、AI は自ら問題を作り出すことができない点が挙げられる。身体もなく命も持ち合

    わせていないので、問題を必要とせず、何かに悩んで問題を新たに作り出す意味も存在し

    ない。人間であれば普通に感じ取れる微妙なニュアンスの違いを、AI は機械であるために

    理解できないことが AI の限界である。

    また、ネットコマース株式会社・代表取締役である斎藤昌義氏は、AI の抱える課題と限

    界について、リーダーシップを発揮できない、意思がない、人間のように知覚できない、

    事例が少ないと対応できない、問いを生み出せない、枠組みをデザインできない、ひらめ

    きがない、常識的な判断ができないことを挙げている。これらの「AI の限界」から、医療

    現場に AI を導入した際の課題が見えてくる。

    AI 側の欠点は 3 つあり、1 つ目に、患者は今までのかかりつけの医師の言葉にはある程

    度信頼を寄せていると思うが、その判断の仲介に AI が導入された場合、不安を感じる患者

    もいるという点だ。もし仮に誤った判断をしていなくても、今まで信頼していた医師が何

    か別のものに頼り始めたことに対する不安が生じるのでないか。生身の人間ではないもの

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    に自分の症状を語りかけることは、なにか実体のないものに自分の病気を委ねる気がする

    のではないか。

    これは時間をかけて AI が信頼を勝ち得ていくしかないのが現状であるが、今まで AI が乗

    り越えてきた単純計算などの分野とは全く違い、「生物の命」に関わる非常にシビアな分野

    である。導入段階だからといって決してミスは許されない。

    2 つ目に、責任の所在が明確ではない点である。AI に仮に不具合が生じ問題が発生した

    場合、考えられる責任の所在は、現場の医師、現場に導入した担当者、AI の開発者の 3 ヵ

    所である。2017 年 3 月 8 日、厚生労働省は「保健医療分野における AI 活用推進懇親会の

    資料」を公表している。その中で示されている今後の方向性としては、AI の推測には誤り

    が生じることがあるが、その AI が示した方向性をもとに最終決定は医師が下すため、現場

    の医師が責任を負うべきなのではないかという意見が挙がっている。しかし本当に医師の

    みが責任を負うべきなのだろうか。医療現場に実際に導入してからこの問題と向き合うの

    では遅く、あらかじめ責任の所在を明確にしておくことが今後の課題である。

    3 つ目に、AI 導入に際するコストについても言及したい。AI を導入する際の費用及び維

    持費と、対してそれを人間の手で行い続けた場合の人件費、どちらが高いのであろうか。

    生命保険分野を例に出すと、2016 年 12 月、富国生命保険が、文脈や単語を解読する日

    本 IBM の AI「ワトソン」を使ったシステムを翌年 1 月から導入し業務効率化を図り、医

    療保険などの給付金を査定する部署の人員を 3 割近く削減すると発表した。医師の診断書

    などから、病歴や入院期間、手術名といった入院給付金支払いなどに必要な情報を、AI が

    自動的に読み取り、給付金額の算出のほか、契約内容に照らし合わせて支払い対象となる

    特約を見つけ出すことも可能で、支払い漏れの予防も期待されている。富国生命保険によ

    ると、この場合システム導入に約 2 億円、保守管理に年 1500 万円程度かかるという試算が

    でている。この一方、医療保険などの給付金を査定する部署の人員を、34 人人員削減する

    ことによる人件費軽減効果は年 1.4 億円程度と見られている。この例では、Watson を導入

    すれば、約 1 年半で元が取れる計算になる。その 1 年半が経過した後は、年間 1.4 億円の

    支出が 1500 万円に抑えられ、毎年約 1.25 億円の節約になる。また、10 年間の合計支出額

    では Watson を導入した場合は 3.5 億円、ワトソンを導入しなかった場合は 14 億円、その

    差はなんと 10.5 億円にも達する予想だ。

    この富国生命保険の例は、医療現場に AI を導入した際にも同じように成功することを保

    障するものではない。実際の対効果がどれだけのものかはまだ不明確な部分も多い。具体

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    的な試算は出ていないが、AI に搭載する医療データの整備、AI の開発、改良整備にどれほ

    どのコストがかかり、どれだけの対効果が得られるかを明確にしていくことが求められる。

    以上の 3 つの課題があることから今後 AI だけでなく、AI を導入される側である医師側

    にも、与えられる課題がある。

    AI を扱う医師側の課題は 3 つあり、1 つ目に前章でも述べたが、AI の出した診断結果に惑

    わされないよう、今まで以上に正確な知識、技術を持った医師を育てなければならない。

    人間が今までの歴史の中で積み上げてきた医療データをもとにAIが発展していくのと同じ

    ように、AI が導き出したデータをもとに、医師側もどんどん進化していかなければならな

    い。AI が本格的に導入された医療現場は、人工知能に依存しかねない可能性があり人工知

    能との「協業」に慣れることによって、医師たちは次第に人工知能が提示する判断を無条

    件に受け入れるようになりやすく、自ら判断する専門家的能力の低下が懸念される。また

    普段から人工知能に頼るあまり、緊急時の対処能力が低下する恐れもある。現代の将棋の

    棋士たちが、人工知能の対局を見て学んでいるのが例に挙げられるが、人間側もまた、AI

    から学ばなければならない。

    2 つ目に、AI 開発現場への医師の関与が重要であるということだ。AI の導入によって医

    療の現場は大きく変わる。自分たちが今後頼っていく AI に対して、医師側が何も知識を持

    たないのは、より患者の不安を煽ってしまう。そして、データを与えるのは人間であるた

    め、人間がどんな情報を与えるかで AI の行動も変わってくる。日々進化する AI を人間が

    超えることは不可能であるため、人間がより正確なデータをAIに搭載しなければならない。

    また、そのデータの量にも問題がある。AI には大規模かつ質の高い包括的な医療データ

    が必要であるが、日本では公開されている医療データがまだまだ少ない点も課題である。

    現在アメリカでは政府が 200 億円の予算を投下し、国を挙げて大規模な医療データを作っ

    ている。これに対して日本の医療現場においては、電子カルテと各診療科のデータベース

    が別管理になっている医療現場が多いことが問題視されており、これらを一貫させた医療

    データの作成のため、政府と医師側等々の幅広い協力関係が求められる。これに関しては、

    個人の医療データを一元化したデータベースを構築することで、より良い医療の提供を促

    進する「次世代型ヘルスケアマネジメントシステム」の作成が政府によって着手されてい

    るが、医療データ等個人情報の観点など課題が多く、実現には時間がかかることが見込ま

    れている。

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    3 つ目に、医師の役割を今一度考えなおすことだ。浜松医科大学医学部附属病院医療情報

    部教授の木村通男氏は、「そもそも患者は、医師が必要としている情報全てを話ししたり、

    最初から本当のことを話すとは限らない」と語る。AI による「診断」が可能であっても、

    診断に必要な情報を的確に引き出せるかどうかは、医師のインタビュー(問診)能力によ

    るところが大きいと指摘し、この医師には本当のことを言った方がよさそうだ、と思われ

    る能力を持ち、患者が話しにくいことを聞き出す。時には拡散する患者との会話の内容か

    ら、診療に必要な情報を選び出す。そうして集めた情報や検査結果を基に、患者との適切

    なコミュニケーションによって、施術だけでない「心のケア」をすることが求められる。

    うつ病や統合失調症などの心の病や、疲れ、更年期障害、自律神経失調症、痛み、しびれ、

    めまい、下痢、食欲不振、意欲の低下、異常な興奮などのなかなか数値化できない疾患は、

    特にこの要素が重要視される。

    最終的に AI 時代の医療では、データや画像分析は AI が下処理をして、確認や診断は医

    師が下すなど役割分担が進むと考えられている。病名を見抜き、その症状に合った薬を出

    すだけが医療であれば、それはいつの日か AI で代替されてしまうかもしれないが、患者が

    医療に求めているものは、病気を治すことのみならず、「症状を和らげてほしい」「漠然と

    した不安を解消したい」「とにかく話を聞いてほしい」など三者三様で、どれも医療の大切

    な側面である。問診から患者と深くコミュニケーションを図り、患者が真に必要としてい

    ること、そしてそれに対して医療ができることを一緒に探し出すことは現在の AI では対応

    するのはまだ難しい。少なくとも、人間と同じような知性を持った強い AI が登場するまで

    は代替できるものではないと考えられている。

    医療の価値には、病気を治すだけでなく、患者が病気と向き合うための手助けをしたり、

    病気や治療の納得度を高めることも含まれている。診療支援 AI で医療業務の補助が可能に

    なれば、医師はこれまで以上に、直に患者に向き合うための時間を持てるようになる。

    以上のように、導入する AI 側、導入される医師側の双方が課題を克服していき、ようや

    く医療現場へ AI が導入され、医師と AI の「役割分担」が達成される。

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    終章 まとめ

    人工知能には、凄まじい能力があるため第一章でも述べた通りに今後、無くなってしま

    う恐れのある職業が多数、予測されている。しかし、医療現場で活用されている「Watson」

    が医師との連携を図ることで患者に正確な診断を下し、安心感を与えるといったような人

    工知能と人間の理想的な共存も可能なのである。人工知能が得意なこと、人間にしかでき

    ないことの柔軟な融合が明るい未来をつくる方法だと我々は考える。

    参考文献

    大塚デジタルヘルス「MENTAT とは」(2016)

    九州医学研究会資料(2016)

    厚生労働省「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」(2017)

    国立がん研究センター「人工知能(AI)を活用した統合的がん医療システム開発プロジェ

    クト開始」(2016)

    医学部受験合格ナビ「人工知能診療支援システム 自治医大」(2016)

    日医総研ワーキングペーパー「第 5 回 日本の医療に関する意識調査」(2014)

    日本経済新聞 「AI、がん治療法助言 白血病のタイプ見抜く」(2016)

    IBM 「クイズ番組に挑戦した IBM Watson」(2011)

    NHK ビデオ「天使か悪魔か」(2017)

    医科歯科通信『患者の不満、「医師の説明」が影響大』(2015)

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    ガジェット通信「人工知能で皮膚がんを診断!スタンフォード大学が写真識別のアルゴリズ

    ムを開発」(2017)

    ソニー生命保険株式会社「AI で医療の未来はどう変わる?」(2017)