企業の持続的成長における cfoの果たすべき役割 ·...

CFO VISION 2013 『Change the Future Of… 持続的成長に向けた変革シナリオ』 2013年8月27日 於:帝国ホテル 参加者98社 / 146名 基調講演「危機を超える経営 ~日本企業の持続的成長に必要なもの~」 一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤邦雄対談「日本のマネジメントモデルを問い直す」 元 富士フイルム株式会社 代表取締役専務執行役員CFO 髙橋俊雄一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤邦雄基調講演「グローバルカンパニーが求める経営参謀」 株式会社LIXILグループ 取締役代表執行役社長 兼 CEO 藤森義明インタラクティブセッション「Japan CFO VISION~日本企業のCFOは世界をどう見ているか?~」 [モデレータ] デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 マネージングパートナー(当時) 近藤 聡 [コメンテータ] 有限責任監査法人トーマツ パートナー(当時) 手塚正彦 デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 パートナー(当時) 日置圭介 デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 ディレクター(当時) 伊藤 薫 パネルディスカッション「CFOの役割をどう捉え、どう実行していくか」 [パネリスト] オリックス銀行株式会社 代表取締役社長 浦田晴之味の素株式会社 取締役 常務執行役員 大野弘道三井物産株式会社 監査役 岡田譲治日清食品ホールディングス株式会社 取締役・CFO 横山之雄[コメンテータ] 一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤邦雄 [モデレータ] デロイト トウシュ トーマツリミテッド グローバルボード副会長 (当時) 小川陽一郎 CFO VISION 2014 『Change the Future Of… 未来を統べるCFOの眼差し』 2014年8月27日 於:帝国ホテル 参加者 99社 / 141名 インタラクティブセッション「情報の真価を問い直す」 [コメンテータ] デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 執行役員 パートナー(当時) 日置圭介 有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター長 パートナー(当時) 大山 剛 [モデレータ] デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 C&IP クロスセクター 執行役員 パートナー(当時) 萩倉 亘 パネルディスカッション「コーポレートガバナンスの潮流」 [パネリスト] キリンホールディングス株式会社 取締役 伊藤彰浩株式会社リコー 常務執行役員 内部統制・財務担当 コーポレート統括本部 副本部長 瀬川大介日本たばこ産業株式会社 執行役員 財務責任者 見浪直博[コメンテータ] 早稲田大学 商学学術院 教授 宮島英昭[モデレータ] デロイト トウシュ トーマツリミテッド グローバルボード副会長 有限責任監査法人トーマツ Deputy CEO(当時) 小川陽一郎 未来を築く企業の挑戦 企業の持続的成長における CFOの果たすべき役割 デロイト トーマツ グループ CFO プログラム (有限責任監査法人トーマツ内) 〒108-6221 東京都港区港南 2-15-3 品川インターシティC 棟 E-mail: [email protected] | www.deloitte.com/jp/cfo-program 2015年12月号より抜粋 CFOプログラムとは CFOプログラムは、日本経済を支える企業 のCFOを支援し、CFO組織の能力向上に 寄与することで、日本経済そのものの活性 化を目指すデロイトトーマツ グループによる 包括的な取り組みです。信頼のおけるアド バイザ(the Trusted Advisor)として、さま ざまな領域のプロフェッショナルが連携し、 CFOが抱える課題の解決をサポート致しま す。さらに、企業や業界の枠を超えたCFO のネットワーキング、グローバル動向も含め た最新情報の提供を通じ、日本企業の競 争力向上を目指します。 CFO VISION カンファレンス 開催実績 お問い合わせ デロイトトーマツ グループは日本におけるデロイトトウシュトーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームおよびそのグループ法人(有限責任監査法人 トーマツ、 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人およびDT弁護士法人を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を 提供しています。また、国内約40都市に約8,500名の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデ ロイト トーマツ グループWebサイト(www.deloitte.com/jp)をご覧ください。 Deloitte(デロイト)は、監査、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、リスクマネジメント、税務およびこれらに関連するサービスを、さまざまな業種にわたる上場・非上場の クライアントに提供しています。全世界150を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを通じ、デロイトは、高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて、深い洞察に基づき、 世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを提供しています。デロイトの約220,000名を超える人材は、“making an impact that matters”を自らの使命としています。 Deloitte(デロイト)とは、英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイトトウシュトーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびその関係会 社のひとつまたは複数を指します。DTTLおよび各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織体です。DTTL (または“Deloitte Global”)はクライアントへのサービス提供を行いません。 DTTLおよびそのメンバーファームについての詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください。 本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本資料の 作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を 異にする可能性があることをご留意いただき、本資料の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。 デロイト トーマツ グループ 監査 税務 ファイナンシャル アドバイザリー リスク マネジメント コンサルティング DIAMOND ハーバード ビジネス レビュー

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Page 1: 企業の持続的成長における CFOの果たすべき役割 · 行われた、米国標準に合わせるためのて、「2・0」は一九九〇年代以降にまでの日本的経営を支えたもの。そしバナンス「1・0」は、一九八〇年代

CFO VISION 2013 『Change the Future Of… 持続的成長に向けた変革シナリオ』

2013年8月27日 於:帝国ホテル 参加者98社 / 146名

基調講演「危機を超える経営 ~日本企業の持続的成長に必要なもの~」一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤邦雄氏

対談「日本のマネジメントモデルを問い直す」元 富士フイルム株式会社 代表取締役専務執行役員CFO 髙橋俊雄氏一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤邦雄氏

基調講演「グローバルカンパニーが求める経営参謀」株式会社LIXILグループ 取締役代表執行役社長 兼 CEO 藤森義明氏

インタラクティブセッション「Japan CFO VISION~日本企業のCFOは世界をどう見ているか?~」[モデレータ]デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 マネージングパートナー(当時)近藤 聡

[コメンテータ]有限責任監査法人トーマツ パートナー(当時)手塚正彦デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 パートナー(当時) 日置圭介デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 ディレクター(当時) 伊藤 薫パネルディスカッション「CFOの役割をどう捉え、どう実行していくか」

[パネリスト]オリックス銀行株式会社 代表取締役社長 浦田晴之氏味の素株式会社 取締役 常務執行役員 大野弘道氏三井物産株式会社 監査役 岡田譲治氏日清食品ホールディングス株式会社 取締役・CFO 横山之雄氏

[コメンテータ]一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤邦雄 氏

[モデレータ]デロイト トウシュ トーマツ リミテッド グローバルボード副会長 (当時) 小川陽一郎

CFO VISION 2014 『Change the Future Of… 未来を統べるCFOの眼差し』

2014年8月27日 於:帝国ホテル 参加者 99社 / 141名

インタラクティブセッション「情報の真価を問い直す」[コメンテータ]デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 執行役員 パートナー(当時) 日置圭介有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター長 パートナー(当時) 大山 剛

[モデレータ]デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 C&IP クロスセクター 執行役員 パートナー(当時) 萩倉 亘パネルディスカッション「コーポレートガバナンスの潮流」

[パネリスト]キリンホールディングス株式会社 取締役 伊藤彰浩氏株式会社リコー 常務執行役員 内部統制・財務担当 コーポレート統括本部 副本部長 瀬川大介氏日本たばこ産業株式会社 執行役員 財務責任者 見浪直博氏

[コメンテータ]早稲田大学 商学学術院 教授 宮島英昭氏

[モデレータ]デロイト トウシュ トーマツ リミテッド グローバルボード副会長有限責任監査法人トーマツ Deputy CEO(当時) 小川陽一郎

未来を築く企業の挑戦

企業の持続的成長におけるCFOの果たすべき役割

デロイト トーマツ グループ CFOプログラム (有限責任監査法人 トーマツ内)〒 108-6221 東京都港区港南 2-15-3 品川インターシティC 棟E-mail: [email protected] | www.deloitte.com/jp/cfo-program

2015年12月号より抜粋

CFOプログラムとはCFOプログラムは、日本経済を支える企業のCFOを支援し、CFO組織の能力向上に寄与することで、日本経済そのものの活性化を目指すデロイト トーマツ グループによる包括的な取り組みです。信頼のおけるアドバイザ(the Trusted Advisor)として、さまざまな領域のプロフェッショナルが連携し、CFOが抱える課題の解決をサポート致します。さらに、企業や業界の枠を超えたCFOのネットワーキング、グローバル動向も含めた最新情報の提供を通じ、日本企業の競争力向上を目指します。

CFO VISION カンファレンス 開催実績

お問い合わせ

デロイト トーマツ グループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームおよびそのグループ法人(有限責任監査法人 トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人およびDT弁護士法人を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています。また、国内約40都市に約8,500名の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トーマツ グループWebサイト(www.deloitte.com/jp)をご覧ください。

Deloitte(デロイト)は、監査、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、リスクマネジメント、税務およびこれらに関連するサービスを、さまざまな業種にわたる上場・非上場のクライアントに提供しています。全世界150を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを通じ、デロイトは、高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて、深い洞察に基づき、世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを提供しています。デロイトの約220,000名を超える人材は、“making an impact that matters”を自らの使命としています。

Deloitte(デロイト)とは、英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびその関係会社のひとつまたは複数を指します。DTTLおよび各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織体です。DTTL(または“Deloitte Global”)はクライアントへのサービス提供を行いません。DTTLおよびそのメンバーファームについての詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください。

本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本資料の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本資料の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

デロイトトーマツグループ

監査

税務ファイナンシャルアドバイザリー

リスクマネジメントコンサルティング

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Page 2: 企業の持続的成長における CFOの果たすべき役割 · 行われた、米国標準に合わせるためのて、「2・0」は一九九〇年代以降にまでの日本的経営を支えたもの。そしバナンス「1・0」は、一九八〇年代

2627PR

企業のCFO(Chief Financial Officer)が一堂に会するイベントでは日本最大規模であるデロイト トーマツ グループ主催の「CFO VISION」。今年で3回目となる 「CFO VISION 2015」が9月9日、119社のCFOの参加を得て帝国ホテル 東京で開催された。「未来を築く企業の挑戦」をテーマに、企業の持続的成長とそれを支えるCFOの役割について、深い議論が交わされた。

未来を築く企業の挑戦企業の持続的成長におけるCFOの果たすべき役割

グループ全体としての成長と収益性の

両立を図るとともに、専門性の向上や

人財・技術の高度化と融合を実現する

ことで新事業の創出力を強化していく。

 こうした中長期の経営計画策定、事

業ポートフォリオの転換においてはC

FOとそのスタッフが主導的な役割を

果たしている。そして、来年からはI

T戦略の統括がCFOの役割として新

たに加わる予定で、同社においてその

位置付けはますます重みを増している。

 そうした中で浅野氏は、「時にはC

EOと意見が異なる場合もあるかもし

れないが、CFOとしての覚悟を持っ

てその役割、責任を果たしてもらいた

い」と確固たる気構えを求める。そし

て、「理念やビジョンなど企業のコア

となるものの伝道師として、CEOと

同じ役割を果たしてほしい」と、会場

に集まったCFOたちに期待を寄せた。

ガバナンス改革に向け

CFOは勝負の時

 基調講演の二人目は、経営戦略の専

門家である甲南大学特別客員教授(神

戸大学名誉教授)の加護野忠男氏。

「コーポレートガバナンス3・0」と

いうテーマで、株主至上主義の近視眼

経営に警鐘を鳴らした。

 投資家と企業の利益相反の典型例と

してまず例に挙げたのが、一人目の講

謝を促すための構造改革などを含め、

持続的な成長のために果敢に挑戦する

企業の在り方とCFOの果たす役割を

考えたい」と続けた。

多角化による成長は

挑戦の証し

 次に「旭化成の挑戦〜昨日まで世界

になかったものを〜」と題して旭化成

社長の浅野敏雄氏が基調講演を行った。

現在の旭化成は「ケミカル・繊維」

「住宅・建材」「エレクトロニクス」

「ヘルスケア」の四つの領域で事業を

展開しており、傘下に一〇社の事業会

社を持つ純粋持ち株会社となっている。

 浅野氏はまず最近のトピックとして

二つの海外M&A(合併・買収)の事

例を挙げた。一つは二〇一二年に買収

した米医療機器メーカー、ゾール・メ

ディカル。AED(自動体外式除細動

器)で世界シェア一位の会社で、「医

療分野での橋頭堡を固めるため、救命

救急機器で高いプレゼンスと強い事業

演者である浅野氏が語った旭化成の多

角化戦略。欧米の機関投資家は、多角

化は利益率向上につながらないとする

考え方が主流。「リスクを取って多角

化に投資するお金があるならば、投資

家に還元せよというのが彼らの立場。

その考え方に従ったことで経営破綻し

たのがコダックだ」と加護野氏は指摘

する。写真フィルム事業に固執し、多

角化できなかったことで、コダックは

破綻してしまった。「逆の例が富士フ

イルムで、医薬品や化粧品など、そこ

までやるのかとも思ったが、結果的に

多角化が存続につながった」。

 企業が破綻しても投資家にとっては、

多様なポートフォリオの一つがなくな

るだけ。「投資家の利益を最優先する

ガバナンスは間違いだ」と加護野氏は

断言する。

 加護野氏が定義するコーポレートガ

バナンス「1・0」は、一九八〇年代

までの日本的経営を支えたもの。そし

て、「2・0」は一九九〇年代以降に

行われた、米国標準に合わせるための

旭化成株式会社代表取締役社長兼社長執行役員

浅野敏雄氏

甲南大学 特別客員教授

加護野忠男氏

基盤がある会社を買収した」と浅野氏

はM&Aの狙いを語った。買収に伴う

のれん償却負担を含めてもすでに黒字

化しており、ゾール・メディカルの成

長の勢いは続いている。

 もう一つは、二〇一五年八月に買収

を完了したばかりの米ポリポア・イン

ターナショナルだ。同社はバッテリー

(電池)の主要部材であるセパレータ

(絶縁材)の製造大手。実はノートパ

ソコンやスマートフォンなど民生用リ

チウムイオン電池のセパレータでは旭

化成が世界一位のシェアを持っている

が、ハイブリッド車や電気自動車など

車載用ではポリポア社が強みを持つ。

「高い成長ポテンシャルを持つバッテ

リーセパレータ事業でシナジーを創出

する」(浅野氏)のが狙いである。

 繊維事業から始まって、石油化学事

業、住宅事業、LSI事業と、多角的

に成長を遂げてきたDNAを持つ旭化

成だが、一九九〇年代以降は事業の再

構築を進めるとともにグローバルな事

業展開に注力してきた。その集大成と

もいえるのが、二つの大型M&Aだっ

たのである。

 旭化成は二〇一五年度を最終年度と

する五カ年の中期経営計画において、

既存事業に五四〇〇億円、非連続成長

(M&A)に四六〇〇億円、合わせて

累計一兆円の戦略投資を実行してきた

が、非連続成長投資の大半をこの二社

の案件が占めたことからも、高い意気

込みのほどがうかがえる。

 同社の多角化の歴史は、時代のニー

ズに応えて事業構造を柔軟に変え続け

てきた「挑戦の証しでもある」と浅野

氏は説明する。そのキーワードは「変

化と不変」。市場の変化に対応して新

たな事業や技術を創出しながらも、変

えてはならないものは決して変えない。

それは「絶えず挑戦を求める企業風土

であり、その挑戦を許容する自由闊達

で風通しの良い社風」である。

 今後も持続的な成長のために果敢に

挑戦し、変化し続けることを目指す旭

化成だが、二〇一六年度からスタート

する次期中期経営計画では、現在の四

つの事業領域を「マテリアル」「住

宅」「ヘルスケア」の三つに再編する。

マテリアルは高収益化、住宅は安定継

続成長、ヘルスケアは高成長と各事業

領域の位置付けを明確化することで、

実施概要日時:2015年9月9日 場所:帝国ホテル 東京

オープニングデロイト トーマツ グループ CEO小川陽一郎氏

基調講演1旭化成の挑戦~昨日まで世界になかったものを~旭化成株式会社 代表取締役社長兼社長執行役員浅野敏雄氏

基調講演2コーポレートガバナンス3.0甲南大学 特別客員教授加護野忠男氏

パネルディスカッション企業の挑戦を支え、成長を加速させるCFOの役割

〈パネリスト〉オムロン株式会社 代表取締役副社長CFO鈴木吉宣氏株式会社ニコン 代表取締役兼副社長執行役員兼CFO伊藤純一氏富士重工業株式会社 取締役専務執行役員CFO髙橋充氏

〈コメンテータ〉デロイト トーマツ コンサルティング合同会社グローバル マネジメント インスティテュート 執行役員 パートナー日置圭介氏

〈モデレータ〉有限責任監査法人 トーマツ執行役 開発・C&I,エリア統括担当 CFOプログラムカントリーリーダー久世浩一氏

懇親会 デロイト トーマツ グループ CEO

小川陽一郎氏

 開会のあいさつに登壇したデロイト

トーマツ

グループCEOの小川陽一

郎氏は、「企業は今、さまざまな変化

を余儀なくされているが、リスクをチ

ャンスと捉えれば、大きな飛躍の可能

性が広がる」と語り、“未来を築く企

業の挑戦”と題した今回の「CFO

VISION」では、「事業の新陳代

P r o g r a m

E x e c u t i v e S e m i n a r R e p o r t

CFO VISION 2015には、国内有力企業119社のCFOが参加した。

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2829PR

後半のパネルディスカッションでは「企業の挑戦を支え、成長を加速させるCFOの役割」がテーマとなった。参加者たちはiPadを使って質問に回答し、その場で集計結果が発表されるなど、インタラクティブな議論が繰り広げられた。

有限責任監査法人 トーマツ 執行役 開発・C&I,エリア統括担当 CFOプログラムカントリーリーダー

久世浩一氏

ガバナンス改革。

そして今、投資家

中心の「2・0」では企業経営が良く

ならないという認識が広がり、欧州で

は「3・0」へ向けて動き始めている。

それなのに、「日本の規制当局はいま

だ2・0の世界にいる」と加護野氏は

手厳しい。

 メインバンクによる経営の監視やエ

クイティ(資本)の供給、株式持ち合

いによる相互監視、経営者の自律的ガ

バナンスといった特徴を持つ「1・

0」はバブル崩壊で破綻した。

 そして、日米構造協議における米国

側の強い要求もあって、米国ルールが

日本でも採用されていく。それが、

「2・0」だ。

 例えば、銀行に対する自己資本規制

強化や株式保有制限によって、銀行は

持ち株を放出せざるを得なくなった。

バブル崩壊で暴落したその株式を安値

で買い集めたのが米国の機関投資家で、

それがガバナンスの米国化に拍車を掛

けることにつながった。

「一般企業にまで時価会計ルールが適

用された。しかも、デフレ下でそれが

行われたから企業は投資できなくなり、

成長のチャンスを奪われた」(加護野

氏)。株主代表訴訟や四半期決算など、

その後も米国ルールが次々と導入され、

「企業がリスクテークできなくなる悪

循環に陥っていった」。

「2・0」が悪影響を及ぼしたのは、

日本だけではない。英国では政府から

の諮問を受け、ロンドン・スクール・

オブ・エコノミクスのジョン・ケイ教

授が、機関投資家の短期主義、株式市

場の構造的問題、ガバナンス上の課題

などについて調査・分析を行った。そ

の結果、二〇一二年七月に発表された

のが『ケイ・レビュー』で、その結論

をひと言で言うと、「短期主義がまん

延して英国企業が長期的な視点で投資

をしなくなった。資本市場は英国企業

の競争力強化に貢献していない」とい

うものだった。大部の報告書だが、加

護野氏は「最初のサマリーだけでも読

むといい」と勧める。

 報告書発表を受けて、英国ではスチ

ュワードシップ・コードとコーポレー

トガバナンス・コードが導入され、そ

れらを参考にしてそれぞれの日本版も

策定されることとなった。それだけに

加護野氏は、「この二〜三年は、CF

Oにとって勝負の時。将来のガバナン

スの礎を築くべき時期であり、今なら

それができる。長期的視点に立つ機関

投資家には、自ら足を運んで意見を聴

くべきだ」と会場のCFOたちを激励

し、基調講演を締めくくった。

新たな価値を生み出す

CFOの役割とは

 セッション後半はオムロン、ニコン、

富士重工業のCFOをパネリストとし

て迎え、「企業の成長を支え、成長を

加速させるCFOの役割」をメインテ

ーマにディスカッションした。

 モデレータの有限責任監査法人トー

マツ執行役、久世浩一氏が「日々、世

界で戦っている三社の実際の取り組み

と成功要因をお話しいただきたい」と

水を向けると、ニコンの伊藤純一氏は、

大きな転換期を迎えている同社の新た

な挑戦について次のように語った。

 ニコンは二〇一三年以降の世界的な

デジタルカメラ需要の急減により、主

力の映像事業が大きな試練にさらされ

た。そこで、まず取り組んだのが大幅

なコストダウン改革で、調達や開発・

生産の効率化などにより、年間約二〇

〇億円のコストダウンを実現した。

 次に着手したのが、既存事業を含め

た抜本的な構造改革と人材の流動化。

これにより、「新規事業の創出を加速

するため」(伊藤氏)である。

「トップの意志がスピーディに反映で

きるように」との考えから、一五年間

続いたカンパニー制を廃止し、社長直

轄の事業部制に改編した。

 カンパニー制時代には停滞していた、

事業部をまたぐ人事異動も活発化させ

た。幹部候補生に広い視野を持たせる

と同時に、成長事業である医療機器分

野にハイエンドな技術を持っている半

導体装置分野から人材をシフトさせる

など経営リソースの配分見直しという

目的もある。

 外部リソースの活用という点では、

オムロンの鈴木吉宣氏も「自前主義で

やれるものと、自前主義を超えてやる

べきものがあり、最近は後者が増えて

いる。例えば、IoTも一社ではでき

ない。他社と組んで新しいスタンダー

ドを考えるべきだ」と共鳴する。

 一方、鈴木氏が二〇一三年に就任し

てCFOとして最初に取り組んだのが、

グローバルなマネジメントポリシーと

マネジメントルール作りだった。海外

 過去三年で営業利益を一〇倍近く伸

ばす急成長を遂げた富士重工業の髙橋

充氏は、企業としての強みを伸ばすこ

との重要性を説いた。「当社はグロー

バルな自動車メーカーとしては小さい

規模なので、経営リソースは限られて

いる。弱点を克服して平均的なパフォ

ーマンスを挙げても競争には勝てない。

リスクはあるが、強い特徴を生かして、

局地戦で勝つ必要がある」。

 一九五八年発売の軽自動車「スバル

360」で同社の自動車事業はスター

トを切ったが、軽自動車専業メーカー

との競争で長らく赤字となったため、

二〇〇五年にトヨタ自動車と提携、軽

自動車はトヨタグループからのOEM

(相手先ブランドによる生産)に切り

替えた。軽自動車に投入していたリソ

ースを収益性の高いSUV(スポーツ

タイプ多目的車)に振り向けたことで、

事業好転の歯車が回り始めたのだ。

 急成長を遂げる中で、髙橋氏が危惧

しているのは「もう十分やったじゃな

いか」という声が社内で聞かれるよう

になったこと。「それは違う、現状維

持のマインドでは駄目だとボード(取

締役会)でも言い続けている」という。

 ニコンの伊藤氏は、企業が大きく変

わろうとするときは、「社員より先に

役員が変わらないといけない」と語る。

「役員にリスクテークするマインドが

ないと、社員は新しいことにチャレン

ジできない」からだ。

 オムロンの鈴木氏は最近、自ら率先

して動くことを心掛けているという。

社内で重要なポジションに就けば、部

下にやらせて自分は管理する立場に回

ることも増えるが、「何かを変えなく

てはいけないときは、自分がどんどん

動く。その遂行力の大切さをあらため

て感じている」と力を込めた。

 こうした発言を受け、コメンテータ

のデロイト

トーマツ

コンサルティン

グ合同会社執行役員、日置圭介氏は

「当社で定義しているCFOの重要な

役割の一つが、カタリスト(触媒、触

発者)。経営と現場、投資家と経営者

など利害関係、価値観が異なる人たち

をつなぐことが、新しい価値を生み出

すことにつながる」と解説。

 そして、モデレータの久世氏は、

「社内で熱く語り、経営をやり切る。

CFOがそうしたリーダーシップを発

揮することの重要性を再度認識した」

と語り、パネルディスカッションを締

めくくった。

オムロン株式会社代表取締役副社長CFO

鈴木吉宣氏

富士重工業株式会社取締役専務執行役員CFO

髙橋充氏

株式会社ニコン代表取締役兼副社長執行役員兼CFO

伊藤純一氏

デトロイト トーマツ CFOプログラム(有限責任監査法人トーマツ内)〒108-6221 東京都港区港南2-15-3 品川インターシティC棟 E-mail:[email protected]. jp www.deloitte.com/jp/cfo-program

パネリスト

新しい価値を生み出すためのCFOの役割

強みを伸ばす経営リソースが限られているので、弱みの克服より強みを伸ばして際立つ

ブランド力を高めるハード面での品質や機能だけでなく、製品スペックに表れない情緒的価値を提供する

終わりなき成長を目指す急成長を遂げた満足感に浸ることなく、中長期的な成長を持続させる

成長戦略を支える安定的財務基盤事業ポートフォリオの大転換期なので財務の安全性を保ちつつ、新規事業に投資する

経営と事業のコミュニケーション経営陣と事業部との円滑な意思疎通や価値観、業績評価指標の連携など

資産戦略重要な資産は人材、技術、設備の3つ。設備については事業部の枠を超えた工場再編が大きなテーマである

グループマネジメントポリシーグループ全体でマネジメントポリシーとルールを再定義した上で、社員の自律的な行動を促す

ROIC・PPM経営ROIC(投下資本利益率)経営も3年目に入り、現場での活用に力点。現場ごとにKPI(重要業績評価指標)を作り、行動にブレークダウンしPDCAを回す

人財育成システム人間の成長可能性を信じて、能力をどう引き出していくか。グローバルな人財育成制度を持つが、コーチングにも注目

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 グローバル マネジメント インスティテュート 執行役員 パートナー

日置圭介氏

コメンテータ モデレータ

E x e c u t i ve S e m i n a r R e p o r t

売上高比率が六割に達し、世界三五カ

国・地域に拠点を持つオムロンにとっ

て、現地で自律的な意思決定や判断を

求められるケースがますます増えてい

る。「社員が自信を持って判断するた

めには、企業理念をよく理解してもら

う必要がある。また、ミニマムな共通

ルールを作った上で、後は自由に動い

てほしい。そのために、マネジメント

ポリシーを考え直し、三年がかりでマ

ネジメントルールを作っている」。

 この活動を通じて例えば、経理・財

務部門の統合化や内部統制のシステム

化、IT部門ではコードの統一やグル

ープ全体としてのサイバー攻撃対応な

ど、すでに具体的成果も出始めている。

Page 4: 企業の持続的成長における CFOの果たすべき役割 · 行われた、米国標準に合わせるためのて、「2・0」は一九九〇年代以降にまでの日本的経営を支えたもの。そしバナンス「1・0」は、一九八〇年代

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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 グローバル マネジメントインスティテュート 執行役員 パートナー

日置圭介氏

「CFO VISION 2015」の最後に行われた「パネルディスカッション」。壇上からの質問に、出席したCFOらが手元のiPadを使って回答し、それに対してパネリストが見解を述べる、というインタラクティブなスタイルで実施した。その際の回答結果について、昨年までの比較と併せ、有限責任監査法人トーマツの久世浩一氏とデロイト トーマツ コンサルティング合同会社の日置圭介氏に話を聞いた。

新しい価値を生み出すためのCFOの挑戦 CFO VISION 2015

パネルディスカッションより

ポイントとは何か」を問うたところ、

最も多い回答は「新しいことに挑戦す

る企業の風土」であった。これに「イ

ノベーションに携わる人材の質」や

「経営者の攻めの姿勢」が続く(図3)。

また、新しい価値を生み出すためには、

収益性の低い事業からの撤退など、新

陳代謝を続けていく必要があるが、こ

れがなかなか進まない。その要因を聞

いたところ、「過去のしがらみ」が最

多となり、「従業員の解雇・配置転換

の困難さ」が続いた(図4)。

 この結果を概観し、日置氏は次のよ

うに語った。「危機的な状況だとあら

ためて思いました。

低収益の事業を数多

く抱えていることが

経営資源の集中を妨

げ、勝てるはずの事

業でも勝ち切れない

ことにつながってい

ると理解はしていて

も、実際には内輪の

論理が先行してしま

っています。日本企

業には現在でもビジ

ネスの種となる非常

に高い技術があり、

優秀な人材も多く、

世界と伍していくこ

とは十分にできるは

ずですが、そのため

には、企業風土を変革し、パネリスト

からも指摘があったように、自前主義

からの脱却や、他社との積極的なアラ

イアンスによるビジネスデザインなど

の大局的な観点からの決断、そしてそ

れをスピーディに実行する強いリーダ

ーシップが求められます」。

 企業が新しい価値を生み出すために、

経営陣の一員であるCFOにも当然、

貢献が求められる。そこで、自身の取

り組みとして不十分な点を三つの観点

で聞いた。結果は、「Verification

:新

陳代謝を含めた厳しい目線での検証」

(六〇・六%)、「Judgm

ent

:事業内

容を理解した上での総合的な判断」

(三六・六%)、「Finance

:投資対象

に適した資金調達」(二・八%)の順

であった。

「ビジネスには目利き力やセンスが必

要と言われますが、具体的に何かと問

われるとその定義は難しい。加えて、

ビジネスを生み出すことが役割の事業

部門にとって自らの立ち上げた事業に

引導は渡し難いものです。だからこそ、

客観的事実から事業を厳しく検証し、

遅きに失しないよう新陳代謝を促すこ

とが、CFOに課せられた重責です」

と日置氏は述べる。

 新しい価値を生み出すための要とな

るCFO。これからの日本企業の飛躍

はCFOの双肩にかかっていると言っ

ても過言ではない。

有限責任監査法人 トーマツ 執行役 開発・C&I,エリア統括担当 CFOプログラムカントリーリーダー

久世浩一氏

❶ グローバル化をリードする 人材の獲得・育成❷ 世界に通用する商品・ サービスの開発❸ 経営資源の最適分配と 収益性の向上❹ 新興国市場での ビジネスチャンスの発掘❺ グループガバナンスの 見直し

❻ 海外M&Aの加速

❼ 市場・顧客情報の 迅速な収集と活用

❽ バリューチェーンの再構築

❾ 経営理念・ビジョンの浸透

10 先進国市場のシェア拡大

単位:%

75.666.3

図1 グローバル化において対応すべき課題 (三つ選択)

75.652.4

55.1 26.7

50.0 52.8

50.0 36.6

41.650.0

20.718.0

22.1 19.5

22.5 23.3

17.118.018.6

13.412.4

9.38.5

11.28.1

6.13.4

7.0

2013年2015年 2014年

❶ 企業価値最大化を達成する 投資マネジメントの徹底❷ 事業管理に資する情報の 提供❸ キャッシュマネジメントの 高度化❹ ファイナンス人材の 確保・育成❺ 資本市場との リレーション強化

❻ M&Aプロセスの洗練

❼ 会計や財務オペレーションの 効率化

❽ 内部統制の強化

❾ 税務コストの最適化

10 外部リソースの活用

80.565.2

図2 CFOにとっての重要課題 (三つ選択)

75.636.6

40.436.0

34.130.3

33.7 32.9

40.447.7

31.728.1

33.726.8

13.58.1

20.723.6

25.620.7

23.68.1

9.822.5

19.86.17.9

2.3

単位:%2013年2015年 2014年

品・サービスの開

発」など、上位の項

目に変化は見られな

かったが、「新興国

市場でのビジネスチ

ャンスの発掘」の落

ち込みが顕著となっ

た(図1)。

「成長が停滞してい

る先進諸国に加え、

新興諸国でも経済の

減速が見られます。

こうした閉塞感が景

気動向やグローバル

化に向けた課題の認

識に表れているので

しょう」と久世浩一

氏は語る。

 次に、CFOにと

っての重要課題を聞いた。昨年から順

位に変動があり、「企業価値最大化を

達成する投資マネジメントの徹底」

「事業管理に資する情報の提供」「キャ

ッシュマネジメントの高度化」が上位

三項目となった(図2)。

「投資マネジメントの徹底」は昨年ま

でに引き続き第一位となったが、八

〇・五%と高いポイントとなった。ま

た、これに関連する「M&Aプロセス

の洗練」も回答を大きく伸ばした。成

長の手段としてのM&Aを効果的に実

行することへの高い意識がうかがえる。

経営資源を生かし切り

競争力を高める

 最初の質問では、国内および世界の

景気に対する認識を確認した。注目す

べきは、国内・海外における景気の停

滞や後退への懸念が広がっていること

だ。特に「景気が緩やかながら悪化し

ている」という回答が、国内景気、世

界景気ともに急増し、昨年との比較で

は、国内では二・二%から一一・〇%

へ、世界では、一・一%から三二・

九%へと、大きく増えた。

 グローバル化が進む企業経営におい

て注力すべき課題についても、「人材

の獲得・育成」や「世界に通用する商

と認識されがちですが、そうではあり

ません。ビジネスを世界中に展開する

中、いかにグループ全体の資金を効率

的に活用し、リスクを減らしていくか。

重要な経営課題と捉えて、一定の投資

を伴って取り組むべきです」と語った。

新しい価値を生み出す

「要」となるCFO

 ここからはセッションの中核的なテ

ーマである新しい価値を生み出すため

のポイントとCFOの役割を見ていく。

まず、「企業が新しい価値を生み出す

CFOサーベイ―日本企業のCFOは世界をどう見ているか?―

図3 企業が新しい価値を生み出すポイントとは何か (N=71)

❶ 新しいことに 挑戦する 企業の風土

❷ イノベーションに 携わる人材の質

❺ 事業化するためのプロセス

❹ 事業部門間の 垣根の低さ❸ 経営者の 攻めの姿勢 12.7%

59.2%4.2%

4.2%

19.7%❸ リーダーシップ の弱さ

❹ 新しい事業の パイプラインの 少なさ

❺ 収益目標の 低さ

❶ 過去の しがらみ

図4 事業からの撤退を中心に、 企業の新陳代謝の意思決定を 困難にしているものとは (N=71)

15.5%

21.1%

7.0%

32.4%

23.9% ❷ 従業員の 解雇・配置転換 の困難さ

「投資マネジメントに対する課題感が

高まったのは非常に良いことだと思い

ます。自社の強みやビジネスの在り方

をしっかりと考えた上でR&DやM&

Aを行わないと、結局は経営資源を分

散させるだけで、競争力も高まらず、

企業体としての低収益傾向から脱する

ことはできません」と日置圭介氏は言

う。

 昨年より順位が上がった「キャッシ

ュマネジメントの高度化」に対し、久

世氏は「日本企業では、キャッシュマ

ネジメントはオペレーショナルな課題