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旬レポ中国地域 2013 4 月号 1 「人材と現場の生産性向上に向けて」 ~「人材戦略講演会in山口」開催報告~ 地域経済部 産業人材政策課 TEL 082-224-5683 中国経済産業局では、平成22年度から地域の中小 企業等を対象として、国内・国外の事業・経営環境の 動向を睨んだ今後の事業展開に係るヒントを提供し、 特に人材戦略、人材マネジメントが中小企業等におけ る経営戦略において効果的に活かされることを促進す るため「人材戦略講演会」を毎年度開催しています。 今回は公益財団法人やまぐち産業振興財団との共催 により、人材の生産性向上のあり方、生産プロセスの 効果的な革新方策をテーマとした内容で開催しました。 講師は、地元企業等の事例紹介として宇部市を中心 に経営コンサルティングを展開されている有限責任事 業組合アクセル統括組合員住吉廣純氏、長門市に本 社を置く水産練製品を中心に国内・海外に展開されて いるフジミツ株式会社代表取締役社長藤田雅史氏お二方と、講演講師として富士通株式会社松下直久 株式会社富士通総研小田 樹氏をお招きして、 貴重なお話をいただきました。 (主催者挨拶の様子) やまぐち産業振興財団 中国経済産業局 当日は約70名が参加 赤司事務局長 中村産業人材政策課長 ※末尾に人材育成・確保の事例を御紹介している冊子の御案内があります! 調査・報告

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Page 1: 「人材と現場の生産性向上に向けて」 - METI€¦ · お二方と、講演講師として富士通株式会社の松下直久 氏、株式会社富士通総研の小田

旬レポ中国地域 2013年 4月号 1

「人材と現場の生産性向上に向けて」 ~「人材戦略講演会in山口」開催報告~

地域経済部 産業人材政策課

TEL 082-224-5683

中国経済産業局では、平成22年度から地域の中小

企業等を対象として、国内・国外の事業・経営環境の

動向を睨んだ今後の事業展開に係るヒントを提供し、

特に人材戦略、人材マネジメントが中小企業等におけ

る経営戦略において効果的に活かされることを促進す

るため「人材戦略講演会」を毎年度開催しています。

今回は公益財団法人やまぐち産業振興財団との共催

により、人材の生産性向上のあり方、生産プロセスの

効果的な革新方策をテーマとした内容で開催しました。

講師は、地元企業等の事例紹介として宇部市を中心

に経営コンサルティングを展開されている有限責任事

業組合アクセル統括組合員の住吉廣純氏、長門市に本

社を置く水産練製品を中心に国内・海外に展開されて

いるフジミツ株式会社代表取締役社長の藤田雅史氏の

お二方と、講演講師として富士通株式会社の松下直久

氏、株式会社富士通総研の小田 樹氏をお招きして、

貴重なお話をいただきました。

(主催者挨拶の様子)

やまぐち産業振興財団 中国経済産業局 当日は約70名が参加

赤司事務局長 中村産業人材政策課長

※末尾に人材育成・確保の事例を御紹介している冊子の御案内があります!

調査・報告

Page 2: 「人材と現場の生産性向上に向けて」 - METI€¦ · お二方と、講演講師として富士通株式会社の松下直久 氏、株式会社富士通総研の小田

旬レポ中国地域 2013年 4月号 2

第1部 事例紹介

「~人材の確保・育成・研修のポイントとは~」

●有限責任事業組合アクセルとは

2006年1月に中小企業経営に関わる全般の経営支援

・人材育成を目的として設立しました。構成員としては、

中小企業診断士、社会保険労務士、行政書士等で、専門家

による中小企業の総合支援、自由で企画・運営・縛りがな

い、という特徴があります。

人材育成事業への取り組みは、企業の人材育成に関する

強い要望を背景に、中小企業の実状の課題の把握により、

独自の人材育成方法を地域で創出しようとするものであり、

「徹底した現場主義」(中小企業に絞った研修/理論では

なく実務主義)、「対話型研修」(目的の明確化/参加者/

企業とのキャッチボール)、「ターゲットの明確化」(階層

別・受講対象者の絞り込み)を特徴とします。

●人材の確保・育成・研修等のポイント

最初のポイントは「認識すること」。時代の変化、相対

する相手の個性、そして、分からないところが分かって

いないということを認識する必要があります。

次に、「育てる気がないと育たない」ということ。明確な人材育成像がありますか?教える上

司に教える気と技量がありますか?そして、「スタッフと向き合う」ことを大切にしましょう。

10年後のこと、出来ること出来ないことを聴いてみましょう。

最後に、「必ず理解させている項目」を御紹介します。スタッフの成果=考え方×能力×時間

であること、会社の仕組み=スタッフと企業と顧客の関係であること、仕事の仕方(論理的思考)

=段取りの付け方であること、以上の3点です。

【事例紹介①】

有限責任事業組合アクセル 統括組合員 住吉 廣純 氏

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旬レポ中国地域 2013年 4月号 3

「~我が社の成長戦略~」

●会社紹介

当社は1887年(明治20年)創業の魚肉練製品を

中心に展開してる会社です。現在、本社・仙﨑・三隅の

3カ所に工場を有し、また、山九水産、博多魚嘉などの

関連会社があり中国山東省にも現地関連会社があります。

●我が社の成長戦略

我が社の重点方針として、①デフレの中でも収益が取

れる経営体質の構築、②事業領域拡大のための商品開発

力と営業技術力の強化、そして、③全ての仕事を「自分

ごと(他人事ではない)」として動ける社員の育成、この

3つに取り組んでいます。

収益獲得経営体質の構築に向けては、主力製品工場を

集約し新規開発型(練り惣菜型)工場への転換による、

生産効率、物流効率の向上、さらに、原料投入から包装

まで製造ラインごとの一気通貫管理を行い製品に対する

責任と権限の明確化、製品品質の向上、ロス削減の実現

に取り組んでいます。

商品開発力と営業技術力の強化については、「野菜+素材」の商品開発、シニア層をターゲッ

トにした「健康・簡便志向」の商品開発、サラダをメインにしたり地域素材を使用したメニュー

提案とともに、成功事例を基にした横軸展開(OJT教育)の実施により、事業領域の拡大につ

なげるべく取り組んでいます。

最後に、「自分ごと」として動く社員の育成について。例えば我が社では、開発部門の社員に、

仕入れ・企画等からすべて一人で任すようにしています。そうすることで、自分で考えて自らが

行動するようになりますし、それが自主的かつ積極的な取り組みにつながり、本音で語り合う環

境が生まれ、コミュニケーションの活発化、協働意識の向上につながります。このようにして、

持続的な企業成長を促していきたいと考えています。

【事例紹介②】

フジミツ株式会社 代表取締役社長 藤田 雅史 氏

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旬レポ中国地域 2013年 4月号 4

第2部 講演

「~ものづくり革新のポイントとは~」

●日本のものづくり産業が直面する課題

ビジネスのグローバル化、マーケットのグローバル

化と地産地消化という環境変化に日本のものづくり企

業は直面しています。日本製品がグローバル市場で弱

い理由は、技術力(性能/品質重視)に偏っていたか

らです。技術優位性だけで海外企業に勝てる時代は終

わりました。

●富士通が目指すこと

当社が目指すのは、メーカーとしての“ものづくり”

への回帰=「ものづくり革新」であり、海外メーカー

とのコスト競争に負けないローコスト生産体制の構築

です。このため、導入していたトヨタ生産方式等の取

り組みから導き出された富士通版トヨタ生産方式:

「FJPS」の確立に向け取り組んでいます。

ポイントは、「全社一体のものづくり革新」、「ものを

作らないものづくり」、「製造現場でのICT活用とロ

ーコスト生産プラットフォームの構築」です。「ものを作らないものづくり」とは、ものづくり

全領域を先端ICTでつなぐ(すり合わせる)ことであり、ものづくりをコンピューター上(仮

想空間)で検証できるようにすることです。そのために、「仮想試作プロセス構築」「バーチャル

試作・量産製造シミュレーション」「生産ラインシミュレーション」などにより従来の改善手法

にICTを付加して生産の効率化・高付加価値化を実現させようとするものです。

この自社のノウハウを他社にも提供できるパッケージサービス「ものづくり革新隊」を平成2

4年10月からサービス供用開始しています。

富士通株式会社 ものづくり推進本部 松下 直久 氏

株式会社富士通総研 第一コンサルティング本部 小田 樹 氏

松下氏 小田氏

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旬レポ中国地域 2013年 4月号 5

●富士通のものづくり革新を通して感じたこと

~内製化・国内生産の重要性

大事なものは手元に置いておかないと改善できませ

ん。外に出せばリードタイムが長くなり何が起こるか

わからない世の中に対応できません。現場がない設計

部隊は長続きしません。

●ものづくり人材の確保に向けて

会社が、社員に成長できる場を与えることも重要な

ことですが、それ以上に、社員が与えられたことだけ

をやるのではなく、自発的に挑戦して新しい価値を自

ら生み出すことで、自己肯定感と成長実感を得ること

ができる環境をつくることが大切です。

●「ものづくり革新隊」の思い

お客様の製品・サービスに富士通の製品・技術を加

えて新しい価値を新たに提供すること、特に製造業向

ソリューションパッケージとして富士通のものづくり

現場で活用していることを御提供したいと考えます。

「ものを作らないものづくり」の実践のノウハウ=

富士通ならではのサービス(ものづくりの全ての領域

で最先端ICTをフル活用)の御提供を通じて、今後

の日本のものづくりの継続・発展の力になりたい。

活動を通じて見えたお客様の課題は、市場及び顧客

追従のための海外への進出(グローバル対応)、現場

及び経営の見える化(判断(経営・現場)スピードの

向上)、効率化・現場改善(コスト削減)、事業拡大に

向けた新たな領域へのチャレンジ(製品・技術を活か

した新たな取り組み)が中心です。

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旬レポ中国地域 2013年 4月号 6

「「「~~~ひひひととと~~~ 中中中国国国地地地域域域にににおおおけけけるるる人人人材材材育育育成成成・・・確確確保保保ベベベススストトトプププラララクククテテティィィススス集集集」」」 (当局ホームページに掲載されています。是非、御覧ください。)

創刊号(平成20年度版) 【掲載企業】 神鋼 JFE 機器株式会社(鳥取県倉吉市) 有限会社糸賀製作所(島根県出雲市) エイコー電子工業株式会社(島根県出雲市) 有限会社エヌ・イー・ワークス(島根県奥出雲町) 池田精工株式会社/株式会社アイ・エス

(岡山県鏡野町) 中国精油株式会社(岡山県岡山市) オタフクソース株式会社(広島県広島市) 株式会社テイケン(広島県呉市) 株式会社野村工電社(山口県宇部市) 三田尻化学工業株式会社(山口県防府市) http://www.chugoku.meti.go.jp/pamph/jinzai/h21chance.html

第 2号(平成21年度版) 【掲載企業】 鳥取県金属熱処理協業組合(鳥取県米子市) 安田精工株式会社(鳥取県鳥取市) 株式会社トリコン(島根県邑南町) 森下建設株式会社(島根県江津市) IKOMA ロボッテック株式会社(岡山県津山市) 株式会社トンボ(岡山県岡山市) 株式会社石崎本店(広島県広島市) 株式会社ニイテック(広島県坂町) 旭興産株式会社(山口県岩国市) フジマグループ(山口県柳井市) http://www.chugoku.meti.go.jp/pamph/jinzai/h22hito.html

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旬レポ中国地域 2013年 4月号 7

第3号(平成22年度版) 【掲載企業】 株式会社鳥取メカシステム(鳥取県鳥取市) 株式会社明治製作所(鳥取県倉吉市) 株式会社テクノプロジェクト(島根県松江市) 堀江化工株式会社(島根県江津市) 豊和株式会社(岡山県倉敷市) みのる化成株式会社(岡山県赤磐市) 株式会社ケミカル山本(広島県広島市) シグマ株式会社(広島県呉市) 有限会社宇部機械設計(山口県宇部市) 大晃機械工業株式会社(山口県田布施町) http://www.chugoku.meti.go.jp/pamph/jinzai/h23hito.html

第4号(平成23年度版) 【掲載企業】 株式会社田中製作所(鳥取県鳥取市) 気高電機株式会社(鳥取県倉吉市) 丸高工業株式会社(島根県松江市) ヒラタ精機株式会社(島根県出雲市) オーティス株式会社(岡山県真庭市) 株式会社キャリアプランニング(岡山県岡山市) 株式会社今西製作所(広島県広島市) 太洋電機産業株式会社(広島県福山市) 株式会社ひびき精機(山口県下関市) フジミツ株式会社(山口県長門市) http://www.chugoku.meti.go.jp/pamph/jinzai/hito_04.html

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旬レポ中国地域 2013年 4月号 8

最新号 第5号(平成24年度版)を平成25年3月発刊!

~御案内~

第5号では従来

からの企業事例に

加え、大学、団体、

自治体の事例まで

新たに収録。

「人」の育成と

確保に関わる中国

地域の取り組みを

広角で捉えました。

是非、御一読を!

(掲載事例の一部を画像で御紹介)

山陰コンテンツビジネスパーク協議会 海士町教育委員会

くらしき作陽大学 広島経済大学 有限責任事業組合アクセル

【問い合わせ先】

中国経済産業局 地域経済部 産業人材政策課 藤村、高城

電話082-224-5683

第5号(平成24年度版) 【掲載事例】 一般社団法人山陰コンテンツビジネスパーク協議会(鳥取県米子市) 鳥取環境大学(鳥取県鳥取市) 飯南町教育委員会(島根県飯石郡飯南町) 海士町教育委員会(島根県隠岐郡海士町) 興南設計株式会社(岡山県倉敷市) 学校法人作陽学園くらしき作陽大学(岡山県倉敷市) 株式会社サタケ(広島県東広島市) 学校法人石田学園広島経済大学(広島県広島市) 有限責任事業組合アクセル(山口県宇部市) 国立大学法人山口大学農学部(山口県山口市) http://www.chugoku.meti.go.jp/pamph/jinzai/hito_05.html

経済産業省 中国経済産業局 広報誌

Copyright 2013 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry.