nc フライス makino ke-55 を用いた z軸曲面加工の汎用化 · ncフライスmakino...
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NCフライス MAKINO KE-55を用いた Z軸曲面加工の汎用化
高木 誠*、澤木弘二**
*工学研究科・工学部技術部 装置開発技術系**工学研究科・工学部技術部 電子・情報技術系
はじめに
これまで工学部各専攻工作室に置かれていた工作機械の多くが、今年度赤崎ファクトリー
や工学部実験実習工場に集中化された結果、それらが装置開発系技術職員相互でこれまで以
上に使用されることが多くなった。また研究・教育の高度化により、高精度の加工・多機能
を備えたマシニングセンターでの加工が必要とされる工作依頼も多くなってきた。しかし、
全ての加工をマシニングセンターで加工するまで必要はないが、その加工の一部に必要だと
いう依頼も多い。そこで、外部からの制御で精度のよい加工が可能な NC フライス MAKINO KE-
55 の機能を生かし、汎用的な三次元加工が出来るようにすることは、当該フライスの加工性
能を広げつつ当該フライスに不慣れな技術職員にも操作の輪が広がることになる。このこと
は工作機械の集中化のメリットを促進させると同時に、我われにとってもプログラミング・
制御・通信技術の研鑽に繋がると考え今回の研修を行なうことにした。そしてその第1歩と
して X-Z 面(3次元、縦方向)における「円弧加工」と「斜面加工」を対象として実施した。
具体的には、以前工学部研修で行なった「放物面加工」の経験を生かし、プログラミング
の改善や Visual Basic を使ってのデータ打ち込み画面の作成(視覚化)で、加工ミスの減少
や NC 言語などを意識しない加工操作の実現に努めた。また、前述のように技術職員相互によ
る工作機械の操作の機会が増えたこともあり、「汎用部」(但し X-Y 面の二次元加工のみ)
の操作性も良く使い易い NC フライス「MAKINO KE-55」の紹介も大きな意義があると考え、そ
れらも念頭に置き研修を行なった。
以下「NC フライス『MAKINO KE-55』紹介」「X-Z 面曲面加工の汎用化」「加工操作手順」
「試作結果」「今後の課題」「まとめ」の順で報告する。
1.NCフライス「MAKINO KE-55」紹介NC フライス「MAKINO KE-55」は、刃物ヘッドが X-Y 軸(操作者から見て前後・左右)方
向にのみ動き、Z 軸(上下)に関してはテーブルが対応する構造になっており、テーブル
が前後左右に動かない分他のフライスと比べて場所を取らないという特徴を持っている。
1) 手動汎用部加工
X-Y 面上の下記のような多様な加工が操作盤上でのデータの打ち込みにより可能で、
X-Y-Z 各軸可動範囲内で様々な制限機構が働き、操作しやすい。
・ 円弧加工 文字通り、中心・半径を指定しての円・弧加工。
・ 角度加工 X-Y 位置指定か、角度指定による斜め加工。
・ 直線上等ピッチ送り 固定などのための X-Y 各等間隔での多数穴加工。
・ 円弧上等角度送り フランジの等角度での穴用加工。
・ ポケット加工 材料の中に X-Y 位置を指定しての、穴・くぼみ加工。
・ 島残し加工 上記と反対にその部分のみ残し、それ以外を切削する加工。
2) NC 部加工・制御、駆動方法
以下の3つの方法があり、それぞれ長所・短所がある。
・ 操作盤でのプログラミングによる駆動
操作盤で NC コマンドを直接打ち込み、駆動する。簡単な加工の場合は簡便である
が、フライスの内蔵メモリの制限を受ける。
・ 外部パソコンを使っての駆動
1) NC コマンドプログラム送信による駆動
外部PC上で NC コマンドプログラムをあらかじめ作成し、そのデータをフライス
へ送信して駆動する。やはり、フライスの内蔵メモリの制限を受ける。
2)プログラミング制御直接駆動
外部PCであらかじめ入力された必要データを元に計算しながら、それによる数値
を加えた NC コマンドをその都度送信しながら直接駆動する。フライスの内蔵メモ
リの制限を受けず、複雑な加工も可能。
2.X-Z面曲面加工の汎用化NC フライス「MAKINO KE-55」NC 部の制御・駆動機構を活用し、加工寸法などの打ち込
みだけで簡単に3次元(X-Y-Z 面)上の多様な加工(X-Z 面上での、円弧・角度・円錐・
球等のような)が出来るようにすることを究極的には目指しているが、今回は X-Z 面の
「円弧加工」と「斜面加工」(Y 軸柱状)に絞った。
1) 加工方法
・ 切削掃引方向:Y 軸方向(前回の研修プログラムをベースとしたため)。
・ 荒削り加工:下図のように刃物を右端で荒削り切り込み ZD 分位置を下げ、Y 軸を
往復しながら荒削り刻み幅 XD づつ左へ進め、左端の仕上げ位置まで加工。刃物を再
び初期右端まで戻し、また刃物を荒削り切り込み ZD 分位置を下げ、同加工を繰り返
しながら ZE 面まで行なう。
・ 仕上げ加工:「円弧加工」は XE 位置から X 軸とそれを元に計算した Z 軸位置で、
仕上げ刻み幅 SXD づつ Y 軸を往復しながら、加工を進める。そして次の加工で 45 度
を超えるという位置で切削した後、45 度位置で加工する。そして今度は Z 軸位置を
元に X 軸位置を計算し引き続き Y 軸を往復しながら最後まで同様に加工を行なう。
・ 仕上げ精度の確保:上記のように、要求される仕上げ刻み幅(SXD)より Z 刻み幅
が大きくなった(X-Z 面が45度)時、刻み軸を X から Z に交換することにより精度
を確保する。「斜面加工」では、最初 XA-ZA の数値が入れられた時その角度と45
度を比較し、その面が45度より大きい時は仕上げ加工全てを、Z 軸位置を元に計算
し刻み仕上げ加工を行なう。
2) 加工操作
・ 視覚的な入力画面の制作
その加工のどの寸法を入力しようとしているか分かりやすくし、入力ミスを少なく
するためにそれぞれ下記のような視覚的な入力画面を制作した。
・ 加工操作手順
おおまかな加工操作手順は以下のように簡単であるが、実際には NC フライスの
操作や機械工作の基本など、加工者は熟知している必要がある。
1) 外部PC立ち上げ
2) NC フライス「MAKINO KE-55」起動
・ フライス起動時の原点復帰作業を行ない、操作ノブを NC 側へ変更。
・ ワーク座標系入力設定
・ 加工データ入力待ち状態設定
3) 加工ソフト「Visual Basic」の立ち上げ
・ 入力画面にて荒削り・仕上げ条件などの設定
・ 加工各数値入力
4) PCと NC フライス「MAKINO KE-55」の通信設定
5) 加工ソフト実行
3.試作結果
試作は NC 工作テスト用の柔らかいワックスを使用した。
「円弧加工」は、半径40mmで角度を60度・90度の2つを、また「斜面加工」は
縦35mm・横20mm、角度54.5度で試作した。その結果を写真で示す。
円弧加工 円弧加工 斜面加工
半径40mm、60度 半径40mm、90度 縦35mm、横20mm
上記写真のように予定通り加工できた。ただ今回の試作は、「Visual Basic」をイン
ストールした外部ノートPCと NC フライスの通信がうまく行かず、元の「FBasic」に
よるプログラミングにて加工を行なった。違いは加工時のデータ打ち込みが「視覚的」
であるかどうかだけで試作としては問題ないが、今後実際の加工に利用してもらうため
に通信不具合原因を突き止め、「Visual Basic」を使用しての加工が出来るようにする
予定である。
4.今後の課題
以下の項目が今後の課題として考えられる。特に第1項目は今研修課題の一つなので
引き続き実現をめざす予定である。
○「Visual Basic」を使用しての加工実現
○操作マニュアルの作成
○円弧加工の角度(現在最大90度)の最大180度への拡大
○円錐加工、半球加工の実現
○加工掃引方向として X-Z 軸方向を追加
○加工エンドミルにボール・エンドミルを追加
○NC フライス「MAKINO KE-55」操作技術の継承
5.まとめ
本研修では、NC フライス「MAKINO KE-55」の加工性能と汎用性を増大させるため、その
手はじめとして「X-Z 面円弧加工・斜面加工」システムを一応完成させた。また NC コマンド
やプログラミング・通信技術の再学習の場として本研修を我々も大いに生かすことが出来た
が、今後は上記「課題」が実現される中で、NC フライス「MAKINO KE-55」操作技術が継承さ
れる事を願っている。
なお、本報告では「加工フローチャート」や「加工プログラム」を載せなかったが、基本
的には H11年度工学部研修での加工方法を用いた。
謝辞
プログラミングについては電子・情報系の福森技術職員から、またデータ通信については
電子・情報系の熊沢技術職員からいろいろアドバイスいただき、有り難うございました。