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Title 論理教育について

Author(s) 若槻, 実

Citation 長崎大学教育学部教育科学研究報告, 19, pp.95-111; 1972

Issue Date 1972

URL http://hdl.handle.net/10069/31183

Right

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp

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論理教育について

若 槻 実

1.緒 論

 論理は思考の骨組みであり,思想の形成,および伝達のためには,必要不可欠であり,

人間社会のコミニュケーションにおいて最重要な役割りを演ずる。それゆえ初等教育にお

いても,何等かの形で論理教育というものがなされなければならないが,その論理教育の

役割は主として数学が担うべきものと思われる。勿論,論理的思考というものはどの学科

においても必要であり,それぞれの学科の学習を通じて養われていくべきであるが,論理

そのものの教育のためには数学が最も適していると思われる。何故なら数学は公理系の上

に論理によって築かれた学問であるし,たとえ小学校,中学校における数学でも,万人共

通な直観を基に,論理で築かれているからである。

 従来,論理教育は主として幾何教育の中で行われて来た。万人共通な直観を基に,図形

の性質を論理によって解明していく中で,論理の教育を行って来たのである。 しかし現

在,この方法に対する批判がいくつか聞かれる。たとえば次のような意見がある。

 これまでの幾何教育では,ユークリッドの「原論」からは,原則的には一歩も出ず,そのねらいと

して,

   ①図形の法則性の探究

   ②論理的思考の訓練(論証の練習)

という2つを荷ってきた6しかし,2兎を追うことによって,1兎をも捕えることができないのは否

’定できない事実であった。幾何は論証の練習場としてはもっとも不適当な部門である。その理由とし

てつぎの2つがあげられる。

 第1に,元来,論論とは公理を組み合わせてすでに証明ずみの定理以外はたとえ直観的に自明なこ

とであってもけっして信用しないという禁欲的精神に貫かれたものである。ところが,幾何は肉眼で

見るだけで証明しようとする命題が前もって直観的に明らかになってしまう。だから,子どもたち

は,わかりきった事をなぜもったいぶって証明しようとするのかという疑問をいだく。

 第2に,描かれた図形をながめながら証明を考えていくことは代数にはない困難をともなう。たと

えば,代数では一般的な数をa,b, c,…等の交字であらわすことができるから,(a+b)2=a2

・一 Qab+b2という恒等式の証明は,その一般性を少しもそこなうことなしに完遂することができ

る。ところが,図形ではそれができない。紙の上にかいた三角形はもはや特殊な三角形であって,一

般的な三角形ではない。幾何ではつねに特殊な図形をながめながら一般的的な図形に関する命題を証

明しなければならない。 (村山貞雄氏)(1)

論理的思考の訓練のためには幾何は不適当である。公理から発展していくやり方をするには公理が

多すぎる。多すぎるばかりではなくて,公理なしでわかることが多い。だからだまし(chea七)やす

いということが1つの欠点である。むしろ論理的思考を養うというのだったら,記号論理を早くやっ

た方がよい。整数論のやさしい所から展開していった方がもっと公理的にできる。整数の公理という

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96 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第19号

のは簡単ですから。 (遠山啓氏)(2)

論理を教えるのにはユークリッドの論理は例が1つしかない。論理を教えるのにはロジックそのも

のとか,群ないし体の方がずっとよい。例がたくさんあるから。 (ケメニー氏)(2)

 原弘道氏は,数式教材についての論証の具体的な例としてつぎのようなものを取り上げ

ている。(3)

 自然数の集合Nの性質や,演算について,これを公理的に扱うには,ペアノーの公理から出発する

が,中・高等学校における指導では,数系Nを直観的に認めさせる程度でよいであろう。

 次に,数系Nについての演算を定義する。それには,Nの任意の2つの元a, bについて加法と乗

法を定義する。すなわち,

 (A)a+1=a+(記号a+は,数系Nについてaの後者を表わす)

   a十b+=(a十b)+

を満足するように1つの数を対応させ,これをaとbの和といい,a+bで表わす。この(A)の定

義から,任意の数aとbの和はただ1通りに決まりしかも数系Nに属することがわかる。和を求める

演算を加法という。

(M)a×1=a

   a×b+=aXb十aを満足するように1つの数を対応させ,これをaとbとの積といい,a×bで表わす。この(M)の

定義から,任意の数aとbとの積はただ1通りに決まりしかも数系Nに属することがわかる。積を求

める演算を乗法という。

 次に,加法と乗法について,それぞれ次の演算の法則が成り立つことを確かめる。

 結合法則,交換法則

 また,加法と乗法の両者については分配法則が成り立つことを確かめる。これらの法則はペァノー

の公理や,加法,乗法の義定から証明できるのであるが,われわれの指導では,これらが成り立つこ

とを確める程度でよいであろう。

 原氏はこの後整数,有理数についても考察を進めているのであるが,これをどの学年で

指導するのかが不明であり,「これらが成り立つことを確める程度でよい」ということが

原氏のいうように公理や定義からの証明を意味しないのだとしても,論証の例である以.

上,結合法則や交換法則を単なる直観的納得でよいとしているのではなかろう。やはり定

義(A),(M)から導くことを求めているものと受け取るる。これをどの学年で指導し

ようとするのか不明であるが,この方法は前に述べた村山氏の主張,「子どもたちは,わ

かりきったことをなぜもったいぶって証明しようとするのかという疑問をいだく」という

事には正反対のように見える。筆者はこの形式的定義に対して,つぎのようなポ・アンヵ

レの言葉を引用したい。

 よい定義とは何であるか。……それは定義されるすべての対象に,そしてかかる対象にのみ,適用

されるごとき定義論理の法則を満足するごとき定義である。しかしながら教育においては事情が異一

なり,よい定義とは生徒の理解する定義のことである。…理解するという語にはいくつかの意味があ

るから,ある入にとっては最も理解され易い定義も,すべての人に適する定義であるとは限らない。

その形を思い浮べさせようとかかる定義もあれば,またあらゆる内容を抽象してしまった……空虚な

形式の組合せに過ぎない定義もある。小学校に於ては分数を定義するためには林檎の餅を切ってみせ

る。……これに反して高等師範学校または大学においては「分数とは横線で界された2つの整数の集

合である」という。しかしもしかかる定義を初心者に与えたならばそ㊦狼狽することは如何ばかりで

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論理教育について(若槻) 9τ

あろう。揖判ずることを知るのはよい。しかし創造すことを知るのはさらによい事である。(4)

 なる程分子は原子の結合されたものであるかも知れないが,原子の状態にまで立ち入ら

ずに直なら水の状態のままで考察を進めてもよい時期があろう。結合法則や交換法則が,

加法や乗法の定義から導かれるものだとしても,子どもにとってこのような抽象的形式的

定義やそこからの論証が有意義だとは思われない。論証は重要であるが”論証を強調する.

余り,生き生きとしたイメージを失わせてはいけないと思う。

 小学校6年生を対象に授業を行ったパピイの教科書では,自然数を有限集合の基数によ

って定義し,次に和,積をそれぞれ和集合,対応によって定義してから,結合法則,交換

法則,分配法則などを証明しているが,明快で見事である(5)。この明快さの理由は集合が

用いられているため;自然数,加法,乗法のイメージがはっきりするからであると思われ

る○

 初等教育の段階では,論理教育は具体的直観的で生き生きとした姿でなされるべきであ

る。余りにも形式的抽象的な取り扱いはかえって正常な発達をさまたげる。はじめにおけ

るイメージの豊かさこそ,むしろ後に抽象化された時の伸び方を容易にするのである。ま

た余りに形式的抽象的な取り扱いは,数学嫌いを多くつくる結果になりかねない。子ども

の段階では直観的に自明な事柄はあたかも公理のように取り扱ってよいのではないか。数

学的にいえば,たしかに公理の独立性は重要なことだが,この独立性が失われたからとい

って教育上は何等差支えは起らないのである。円周が平面を内部と外部に分けることを証

明なしに認めていたからといって,何等差支えがなかったように。初等教育においてはあ

まりにも自明な事柄を証明させるという方法はとるべきではない。論理教育の場はもっと

他にある筈である。その一つが集合であろう。

 Z,D,ディーソズは

 (1)大きい,小さい  (大きさ)

 (2)厚い薄い     (厚さ)

 (3)赤,青,黄    (色)

 (4)正方形,長方形,三角形,円(形)

をもつ48種類の積木をつくって,これらの一つ一つに,たとえば大きい厚い赤い正方形の

ように名前をつけ,“答えと推論のゲーム(game wi七h answers and deductions)”

 更更否定” 更写一ム(na七gane)”矛盾ゲーム, くヒかまたは”ゲームなど,数十種類のゲ

ームを通じて,5~7才児に対して論理的関係を学ばせる実験を南オーストラリア,ケベ

ック,ボストン,ハワイ,レスターシャー二,ジュネーブ,パリ,サリー,カリフォルニ

ア,ニューギニヤ,といった世界各地で行って成果があることを報告している。またウィ

リアム・ハルも色や形で区別できるものを用いて論理的関係を学ばせるとき,5才児でも

ある種の高度な論理的思考が可能であることを実際的な方法で示して見せた(6)。ディーン

ズの場合はいわば48個の積木を定義域として,大きい,厚い,赤い,円い,……などの述

語があり,これらの述語の一つ一つあるいはその組合わせに対して,それぞれ定義域の部

分集合が対応するのである。このデイーンズやハルの方法は,実際に目で見ることのでき

る具体的なものの集合を通じて論理的関係を学ぶという意味で,幼児にとって適切なもの

と思われるが,幼児ではない生徒に対する論理的教育に対しても極めて示唆的である。

集合と論理の関係は極めて密接である。それは以下に述べる同型性にある。以下で集合

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98 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第19号

と論理の関係を考究し,

る。

集合指導と論理的思考の関係に関する若干の調査め結果を述べ

]1.論理と集合との関係について。

 a.アリストテレスの論理単の集合への翻訳

 M,ボールは,『論理学が客観的であるためには,採用された記号体系において,アリ

ストテレス論理学の

    くソクラテスは死すべきものである〉

乏いう句は

    く物・=ソクラテスは死すべき有機体の集合に属する〉

という表現に翻訳されなければならない』としている(7)。これによれぽ

    く人間は死すべきものである〉

    <ソクラテスは人間である》

・ゆえに

    くソラクテスは死すべきものである〉

という,アリストテレス論理学は

    く人間は死すべき有機体の集合に属する〉

    〈アリストテレスは人間の集合に属する〉

ゆえに

    くアリストテレスは死すべき有機体の集合に属する〉

,ということになる◎

 b.述語と集含との対応

 命  題

    くソクラテスは人間である〉

二には,主部く叱ソクラテス”と述部く璽……は人間である”がある。一般に命題の述部にあた

るものは述語といわれる。述語く喝……は人間である”の主部に“ソクラテス”や璽壁ガン

ジー”などをあてはめれば,その命題は真となるが“富士山”をあてはめれば偽となる。

述語が与えられたとき,その主部にあてはめるべきものの範囲を,その述語の定義域とい

う。述語く驚……は人間である”の定義域としては, 働物全体”、、 .生物全体”などが自

然であろうが,星砿物全体”でも旧本人全体”でも論理的にはかまわな:い。もし

       ノ    〈山田君は中村君より年上である〉

のような命題で

    〈……は中村君より年上である〉

.という述語と

    〈……は……より年上である〉

という述語が考えられる。後者においては,喝星……はカに代入されるべき変数の定義域V

と…より”に代入されるべき変数の定義域,Wが考えられる。このときV, Wの直積V×

Wがこの述語の定義域である。述語αが与えられると,その定義域Uを指定すれば,述語

αにあてはめて命題が真となるようなく尾もの”の全体(αの真理集合)は定義域Uの部分集

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論理教育について(若槻) 99

合として,ただ一つ定まる。(この存在は分出公理(9)による)変数の数によらないことは

明らかであろう。

 逆にある集合Pが与えられたとすると

   賦……はPに属する”

という述語αをつくることができる。述語αの定義域として,ある集合Uを指定すれば,

αの真理集合は,Uの要素であってしかもPの要素であるものの全体,すなわちUとPと

の共通集合,U∩Pとなる。もしはじめからUがPを含むものとしておけば…,αの真理集

合はPとなる。ここでわれわれは,つぎのことがわかる。

 性質1.1っの述語αとその定義域Uが与えられると,αの真理集合Uの部分集合とし

 てただ1っ定まる。

 性質2.ある集合Uとその部分集合:Pが与えられると,Pを真理集合とする述語αが少

 くとも1っ存在する。

 いま述語αを

 更く……は2等辺三角形である”                 ’

述語α’を

 賦……は2角が等しい三角形である’

とすると,αとα’の真理集合は一致する。このように真理集合の一致する2っの述語ば

同値であるといってα≡αノとかきαとα’は区別しないことにする。C監……は2等辺三

角形である”と更尾……は正三角形である”とは定義が一般の三角域形全体であれば同値で

はないが,定義域を一つの角が60度であるように三角形の全体とすれば同値となる。この

ように述語の同値性は定義域にも依存する)同値の述語を1っのものと見なすとき上の性

質2はつぎのようにいいかえることができる。

 性質3.ある集合Uとその部分集合Pが与えられると,Pを真理集合とする述語αがた一

 だ1っ定まる。 (ただしαの定義域はUとする)

 性質1と性質3によって,結局われわれはつぎのことを得る。

 性質4.集合Uを定i義域とする述語の全体とUの部分集合の全体とは1対1に対応する。

 今後は簡単のために,述語αに対して∫(α)とかけば,αの真理集合を意味し,集合

Pに対して∫一1(1))とかけば,Pを真理集合とする述語(定義域はPを含むある集合)

を意味することにする。

C.順序に関する同型性

  (このことは後のd項から導かれるものである)

 定義域の等しい2つの述語α,βにおいて,αの真理集合∫ (α)がβの真理集合ブ

(β)に含まれることを,α≦βと定義すれば,定義域の等しい述語α,β,γ……にお

いてはつぎのことが成り立つ。

  (a)α≦α

  (b)α≦β,β≦γならばα≦γ

  (c)α≦β,β≦αならばα=β’

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ユ00 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第19号

なぜならα,β,γの真理集合をそれぞれP,Q, Rとすれば

  (a’)P⊆P

  (b’)P⊆Q,Q⊆RならばP⊆R

  (c’)P⊆Q,Q⊆Pならぽ:P=Q

が成り立つからである。このことからつぎのことがいえる。

 性質5,定義域の等しい述語の全体は,順序⊆に関して順序集合をなす。

 また集合Uの部分集合の全体は,順序⊆に関して順序集合をなすが,性質4によってU

を定義域とする述語の全体とはノ●によって1対1に対応し,かつ,α≦βに対して∫(α)

≦≡ノ’(β)が成り立つ。したがってつぎのことがいえる。

 性質6,集合Uを定義域とする述語の全体と, Uの部分集合の全体とは,順序集合と

して同型であり,同型写像は∫である。

  (ただしそれぞれの順序は≦,⊆と

一する。)

 述語のことは,よく条件ともいわれ

るが,α≦βは,条件αを満足するも

のはつねに条件βを満足すると同義で

ある。あるいは性質αをもつものはつ

ねに性質βをもつ,ということと同義

である。

 d.演算に関する同型性

α,β,γ,などが与えられたとき,

 曼璽……はαを満足するか,またはβを満足する”

という述語を α〉β,

 璽叱……はαとβを同時に満足する”

.という述語を α〈β

 璽驚……はdlを満足しない”

という述語をαとそれぞれ表わすことにする。

 そして述語α,β,γ,の真理集合(∫(α),ノ(β),∫(γ),をそれぞれP,

穐,R……)とすれば,

  ∫(αVβ) ={κ匪∈Pまたはκ∈Q}1

         =PUQ=∫(α)U∫(β)

  ∫(α〈β) ={κ1ズ∈Pかつκ∈Q}

         =P∩Q=・∫(α)∩∫(β)

  ∫(α)  ={κμ隼P}=P=∫(α)

、となる。 (ただしPは集合Pの補集合とする。)

 これはuを定義域とする述語における演算V,〈,一に対し,uの部分集合における演

算∪,∩,一が∫によって対応することを意味する。ところで,Uの部分集合P, Q, R

,・…・・ヘ次の(1)~⑫を満足するから,U上の述語α,β,γ……は(亜γ~⑫’を満足する。

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論理教育について(若槻) 101

(1)

(2)

(3)

(4)

(6)

(7)

(8)

(9)

(1①

(1ユ)

(1)’

(2)ノ

㈲ノ

(4)’

(5)’

〈6)’

〈7)ノ

(8)’

〈9)’

⑩ノ

⑪ノ

⑫ノ

       P=・P

       P=P

P∩P=P

P∩QrQ∩P(P∩Q)∩R=P∩(Q∩R)

P∩(QUR)=(P∩Q)U(P∩R)

P∩(PUQ)=P

P∩Q=PUQP∩P=φ

PUU=PP∩φ=φ

℃  =φ

α〈α≡α

α≡≡α

α≡α

α〈β≡β〈α

(α〈β)〈γ≡≡α〈(β〈γ)

α〈(βVγ)≡(α〈β)〉(α〈γ)

α〈(α〉β)≡α

αAβ

α〈π

α〈1

α〈0

≡α〉β

≡φ

≡α

≡三〇

≡0

部門P=P

PUQ=QUP(PUQ)UR=PU(QUR)PU(Q∩R)=(PUQ)∩(PUR)PU (P∩Q)=P

PUQ=P∩QPUP=UPUφ=P

PUU=Uφ  =u

αVα≡α

αVβ≡β〉α

(αVβ)Vγ≡α〉(βVγ)

α〉(β〈γ)≡≡(αVβ)〈 (α〉γ)

αV(α〈β)≡α

 ただし1は真理集合が定義域と一致する述語,

る。

αVβ

αVα

αVoαVI

O

≡α〈β

≡1

≡α

≡…1

…≡1

0は真理集合が空集合となる述語とす

e.命題と集合との対応

定義.命題P,qに対してつぎの定義をする。

 Pとqの離接:Pまたはqのどちらかが真となるときに限り真となる命題でP>qと

かく

 Pとqの合接:Pおよびqが同時に真となるときに限り,真となる命題でP〈qとか

く。

 Pの否定:Pが偽となるときに限り真となる命題で, Pとかく。

 Pがqを導く:Pが真となるときはつねにqが真となることで,P≦q(またはP→

q)とかく。

 Pとqとは同値である:Pとqとの真偽がつねに一致することである。

 Pの定義域:Pの主部に代入すべき要素の集合の範囲のことである。

 Pの真理集合:Pの述語の真理集合で’ある。もし多変数の述語のときは注目する主語

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102 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第19号

 の所だけ変数とした述語の真理集合とする。

  P,qの定義域が等しいときには次のことが成り立つ。

  PVqの真理集合はPの真理集合とqの真理集合の和集合である。

  Pの真理集合はPの真理集合の補集合である(ただし全体集合はPの定義域とする)

  P≦qのときPの真理集合はqの真理集合の部分集合で,その逆も成り立つ。

 P≡qのときは,Pの真理集合とqの真理集合とは,等しい。そこで定義域の等しい命

題P,q,γに対しては,つぎのことが成り立つ。(a)”

(b)”

(c)”

①”

(2)”

(3)”

(4)”

(5)”

(6)”

(7)”

(8)”

(9)”

⑩”

⑪”

⑫”

P≦PP≦q,q≦γ ならばP≦γ

P≦q,q≦P ならばP≡q

       P≡P

       P≡P            、

P〈P≡≡P              PVP…≡P

P〈q…≡≡q〈P               P>q≡qVP

(P〈q) 〈γ≡P〈 (q〈γ)      (P>q) Vγ≡P> (qVγ)

P〈 (q>γ)≡≡(P〈q) 〉 (P〈γ) PV (q〈γ)≡≡(PVq) 〈 (PVγ)

P〈(PVb)≡P          PV(P〈q)≡≡P

P〈q

P〈P

P〈I

P〈0了

≡P>q

≡0

≡P

≡0

≡O

PVqpVPpVoPVIす

≡P〈q

≡1

≡P≡≡1

≡1

 ただし1は恒真命題(真理集合が定義域と一致),0は恒偽命題,(真理集合が空集合)

 Uを定義域とする述語全体は,Uの部分集合の全体と1対1に対応することを述べたが

Uを定義域とする命題全体については,このことはいえない。ただ命題においても,集合

や述語の場合と類似の法則が成り立つことに注目したい。

 f.条件文と集合との対応

命題P,qに対してつぎの定義をする。

 P→qとはP-Vqのことである。 Pならば

qとよむ。このとき次のことが成り立つ。

 P→砿の真理集合は,Pの真理集合の補集

合とqの真理集合の和集合である。(pVq

より)

 つぎのことは同値である。

 1。P→qがつねに真である。

 2.Pの真理集合はqの真理集合に含まれ

  る。

 3.p≦q(またはP→q)

P Q

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論理教育について(若槻)

pZ総 ・

 皿 調 査

 目 的

(i)ある前提のもとで推論をすすめると

き推論がどの程度正しく行われているかを

知る。

(ii)数学,社会,国語の成績との相関を

しらべて,数学において行われる必要条

件,十分条件,逆,裏,対偶,または,か

つなどの論理的教育がどの程度役立つかを

知る。

103

定義 P←→qとは(P→q)〈(q→

P)のことである。

 P←→qの真理集合は(P∩Q)u(P

∩Q)である。ただしP,Qはそれぞれ

P,qの真理集合とする。

 つぎのことは同値である。

 1。P←→qがつねに真である。

 2。Pの真理集合とqの真理集合が一致

  する。

 3。P≡q

 P

/Q 勿 /

(iii)各学校,各学年によって,集合,論理の指導が異なるが,この相異がどのように現

われるかを知る。

(vi)各学年における論理的思考の成長の様子を知る。

  〔対 象〕

 T中学校,各学年とも2学級

 :F中学校,各学年とも3学級

 .県立K:高等学校,各学年とも4学級,うち2学年,3学年はそれぞれ2学級づっ,A

 群,B群に分かれている。

 県立T高等学校,各学年とも2学級

 C大教養部1年(教育学部小学教員養成課程入学者)

 〔方 法〕

 数学の時間に,つぎのような問題用紙を配り十分位で答をかかせる。 (1971年10月)

                 問    題

 つぎの命題1,2,3’,4,5,6,7,8,9,10において,左門を前提,右例を結

論とするとき,推論1 2 3 4 5 6 7 8 9 10のうち,妥当であると思うも                     ゆ う   うウ  うレ            うウ ラう    ナ   シ  う 

のだけ○でかこんでください。単に推論が妥当であるか否かを問題にするのですから,前

提や結論そのものの真偽は問わないのです。前提はすべて真と見なして下さい。

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104 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第19号

1.

2.

3.

4.

5.

6.

7.

8.

9.

10.

鷹誌雛謝ミいる・}

{誘憂躰筆嫡男護豪隷、。}

{魯慕鶴綴㌍をおよぐ・}

{1灘1雑毯脅’また腔をと萬}

{き綴ま1雑舗碧:}

{1欝み磁頭嚢騰鑑鋲:}

{赤いもの論い・}

{赤いもの瞳い・}

{赤いもの幽い・}

食事をする人は話をするかまたはテレビを見る。テレビを見る人は新聞を見ない。食事をしながら新聞を見る人がある。

↓{空をとばない動物力・いる・}

∴{このダイヤモンドは上等品である}

∴{これは水中をおよがない.}

ム{いぬ腔を協}

}頭鰍しな顕す人力岡

二{とんぼはこん虫である}

ろ{・たす・が2ならば6は偶数である.}

ム{赤くないもの腫くない・}

∴{重くないものは赤くない・}

ユ{重いもの副い・}

(ただし赤いもの,重いものは定義されているものと見なします)

〔結果の分析〕

 集合の教育による影響について.

 :F中1年の平均点はF中2年の平均点にくらべてかなり高いし(グラフ1),1年の15

%は満点である。F中では1年のときに,集合の指導を十分にするが,その影響が現われ

るのではないかと一応考えられる。しかし種々な条件の相異があるので断定はできない。

 T中においては各学年による差がない(グラフ2)。2年がわずかに高いが,標本数か

らいってこの程度の差は有意ではない。T中の分布図(グラフ2,3,4)を見ると2項.

分布に近い。これは問題力灘しくてどちらかといえば解答がでたらめに近い状態であった

ことが考えられる。でたらめにつければ平均点は5点の近くにくる。1,2,3年の中で

1年生が最も2項分布に近いのでその程度がひどいことがわかる。2年と3年と比較する

と,3年は3点以下はあまりいないが,7点以上は2年25%,3年15%で,上位だけ比較

すれば2年の方がやや上である。この場合は集合の考え方が役立っているのではないだろ

うか。というのは1年,2年は移行措置で集合は習っているが3年は習っていない。6番

のでき具合が3年生が悪い(グラフ15)。これも集合を習っていないためか。3年生は下

位者が少ないが中上になると2年に劣る。集合の考え方が,問題の解答に役立てられるの

は一応中以上という仮定に立てば,集合の考え方が役に立っているようである。K高の各

学年を比較すると一応順当となっているが,T高の1年生,2年生の差とK高の1年生,

2年生の差を較べるとK:高の場合が大きい。K:高では2年生以上は集合を習っているが1

年はまだそこまで入っていない。2年生と3年生は習っている点では同じだが,受験をひ

かえて勉強中の3年生がよくできるのは当然だとすると,1年と2年の差は集合を習った

か,習わなかったかの影響もあるのではないかと思われる。     、

 各学科の相関について.

 数,国,社の中で,数学との相関が最も強い。やはり数学の中で必要条件,十分条件,

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論理教育について(若槻) 105

集合などを習う影響か。勿論逆にこういう事に強いものが数学ができるともいえるので,

原因をどちらに求めるかはむずかしい。

 各学科の成績を2学期中間テストの素点にとったのは失敗であった。こうすると学科の

成績が極端にかたよってしまう所ができて,相関を出しにくいことになった。適当にちら・

ばってしかも実力を反映していると見られる学校側の評価の点にすべきであった。全体に

相関は弱い。相関の弱さと例数の少ないことから信頼度は低い。

 問題別成績を見て。

 各学校,各学年とも6番が悪い。われわれの日常の議論においても,よく結論が正しい

と錯覚しがちである。2番も各学年低いがK高,2年,3年,F中は比較的とっている。

これは集合による考え方が役立つためか。8,9,10は高校生など逆,裏,対偶を習って

いるのだからもっとできてもよさそうに思うが案外できないのは如何なる理由によるもの

か。中でも9が最も悪いのは対偶は真であることがわかっていない事になる。

各学校各学年の平均点の比較

グラフ1

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σ=1.19

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ユ06 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第19号

9

T

 κ=5.42

σ=1.61

社会

中  γ=0.09

2

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数学

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グラフ3

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κ=5.34

σ=1.48

社会

中  ツ・=0.38

3

γ=0.63

数学

γ=0.45

κ=1.98

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社会

中   γ=9.05

1

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数学

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論理教育について(若槻) 107

F

3

κ=7.53

σ・=1.67

社会

ッ臨0.18

γ=0.13

数学

γ=0.34

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数学

ッ=0.27

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グラフ10

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108 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第19号

K高

3

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κ=6.92

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社会

ッ=0.23

γ=0.19

数学

ツ=0.26

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社会

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数学

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グラフ12

K高

社会

数学

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グラフ13

問題別全体平均

グラフ14

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論理教育について(若槻)

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 グラフ15

F中問題別

 グラフ16

丁高問題別

 グラフ17

K高問題別

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グラフ18

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110 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第19号

C 大 問題 別

κ=66.1

コース別平均点の比較

グラフ19

二L

グラフ20

7}89吐0

W 結  語

 定義域を等しくする述語の全体と,その定義域の部分集合の全体とは,1対1に対応し

かつ順序的にも演算的にも対応していることはHで述べた。いわば述語の姿および行動が

真理集合という像となって,定義域という鏡の中にそのまま写し出されるのである。そし

てある命題が真であるか偽であるかという事は,その主語が述語の真理集合に属するか否

かという事と同値なのである。したがって命題相互間の関係または演算は,その定義域の

部分集合(真理集合)相互間の関係または演算におきかえることができるのである。

 緒論で述べた如くディーンズは,形,大きさ,厚さ,色によって分けられる物の集合

(定義域)において,これらの性質(述語)をいろいろ組合わせて,いろいろな部分集合

をつくらせる遊びを通じて幼児にも論理教育が可能な事を示した。これと似た形で,例え

ば教室の生徒全体を定義域とし,さまざまな条件(述語)を与え,その真理集合を考えさ

せることによって,離接(または),合接(かつ),否定(…でない),条件文(…なら

ば…である),同値,逆,裏,対偶,背理法,全体命題,特称命題などは指導できるであ

ろう。(このような実験は試みなければならない)。このように身近な集合を通じて論理

教育がなされれば,それは極めて具体的で生き生きとしたものとなる。また集合には直観

的な模型としてベソ図がある。ペン図は集合そのものではないから厳密な証明にベン図を

用いてはならないのは勿論だが,略式ではあっても論理の直観化という意味では極めて有

意義である。このように集合を用いれば,次のような有効な推論,P〈q→P, P→PV

         ゆ     ロq, 〔P→q〕→〔q→P〕, P〈〔P→q〕→q, 〔P→q〕〈可;→i巨, 〔P一→・q〕八

〔q→γ〕→〔p→γ〕, 〔PVq〕〈P・今qなどの理解も容易である。

 従来の如く幾何教育の中で論理教育が行われるとき,図形研究の中に論理が埋没する恐・

れがある。やはり論理を論理として直接指導する方が,はっきり意識的につかめるであろ

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論理教育について(若槻) lll

う。そして図形,方程式,不等式などの教材はすべてその練習台として用いられるべきで

ある。このような練習を通じて(という事は教材を論理的に学習することによって)論理

は定着し,学習もまた数学らしい方法で行なわれるであろう。

 前述村山氏の二兎を追うものは一兎も得ないから幾何教育は論理よりも直観を主として

図形の性質の研究をすべきだという意見がもし非常に極端な形を意味しているならば賛成

できない。図形の指導が単なる直観的事実の羅列であれば,かえって興味をそぐし,論理

的な思考法さえ失わせかねない。ある事を知るときその理由を知りたくなるものだし,そ

れが証明されてこそ安心もできるし興味も湧くのは我々の経験する所である。ただ幾何学

も極めて厳密な意味では,高校でさえも論理のみで行うのは不可能である。たしかにケメ

ーニーがいうようにどこかで(chea七)だまさなければならない。ある程度は直観を受け入

れ,その上で論理的な証明が行われてもよい筈である。この事は公理の独立性を無視した

形を意味するが初等教育においては公理の独立性という形式よりも直観的内容の豊富さこ

そ重要と思われるからである。前述,原氏のような数の抽象的な取扱いの中で論理を指導す

るという考えにも賛成できかねる。(原氏の方法で自然数の和および積を当学部の小3数

学専攻生の7名に話した所,全員がよくわからないといった)。初等教育の段階では,こ

のような抽象化のまえにもつと生き生きとした具体的な対象に多く触れ,イメージを豊か

にしなければならない。その豊かなイメージがあればこそ抽象化が生きてくるのである。

直観的に明らかな事として扱われていた交換法則や結合法則を単なる論理教育の手段とし

て証明させるために要する犠牲(大学生でもわかりにくい程の数の抽象化,そこから予想

される数学嫌いの増加,準備のための時間の消費)が大き過ぎる。この事に関して中野昇

氏の言葉を引用したい。

  「論理性」と「心理性」とは,矛盾し相剋しあう性格をもつようである。一般に,論理的な取扱い

をするとき,それが子どもの理解を少しでも越えた厳密さであればあるほど,子どもたちは興味を失

い,学習意欲を喪失してしまう。(9)

 結局論理は図形,数,式などの教材によって指導するのではなく,論理そのものとして

直接指導すべきで,集合がその具体的な内容を表わすものとして扱われるのが最も望まし

いように思われる。かくして論理は内容をもち直観化されかつ簡明になる。その場合図

形,数,式などは論理の練習台として大切であり,これらの指導においても十分に論理的

な取り扱いがなされるべきである。またこれらの教材が論理教育の目的のために極端に抽

象化形式化されてはならない。

〈1)村山貞雄,論証と論理指i導の方向,数学教育 No.134、29頁,明治図書

く2)クメニー氏を囲んで,数数学セミナー7・6523頁

く3)原弘道,論理と論証の指導をどう進めたらよいか,数学教育劃。.134,12頁~13頁,明治図書。

〈4)ボアンカレ著,吉田洋一訳 科学と方法,岩波書店

く5)パピイ著,矢野健太郎,玉木和之訳 パピイの現代数学,194頁~244頁,

〈6)Z・D・ヂイーンズ著,中島健三,園田桂子訳,論理的な考えを伸ばす集会あそび,32頁,

〈7)M・ボル,J・レーナル共著,花田圭介,吉田夏彦訳,論理学の歩み,

’(8)中谷太郎著,論理,100頁,共立出版

く9)中野 昇他著,数学教育現代化, (算数編)