mono-laspartyl chlorin e6による光線力学的治療時の · 2019. 10. 28. ·...

10
624 二医大誌 54(6):624~633,1996 Mono-Laspartyl chlorin e6による光線力学的治 ヒト大動脈.血管内皮細胞への影響 東京医科大学内科学第三講座(指導:林 徹主任教授) 【要旨】病巣部位にある種の光感受性物質を投与した後にレーザー照射して,腫瘍や粥状動脈硬化巣を縮小 させる光線力学的治療(photodynamic therapy:PDT)が研究されている.近年,新しく開発された光感受 性物質であるmono-L-aspartyl chlorin e6(ME2906)の使用により, PDTの効果が更に高まる 作用を軽減できると報告されている. PDTは動脈硬化の治療や診断への応用も試みられ,動脈硬化の発現進展には血管内皮細胞の障害や凝固能 の充進などが関与することが示されている.しかし,PDTが血管内皮細胞機能におよぼす影響の詳細は未だ 明らかにされていない.そこで,ME2906を用いたPDTの血管内皮細胞への影響を培養ヒト大動脈血管内皮 細胞(human aorta endothelial ce11:HAEC)を用いて検討した. HAECにME2906を10.0,100.0μg/ml添加し,3時間培養した場合のHAEC中のME290 ぞれ0.25,2.17μg/106cells,6時間培養したものは0.29,2.98μg/106 cellsであり,培養時間 ME2906添加濃度依存的に増加した. HAECにPDTを行なう前後の細胞数はME2906を3,0μg/ml添加しても非レーザー照射群では変化を 認めなかった.ME2906非添加群で,10 J/cm2レーザーを照射しても細胞数に変化を認めなかった. ME2906 を3.0μg/ml添加直後にレーザー照射を行った群では残存細胞数は11.5±6.5%と有意に減少した. ME2906を無添加で,10 J/cm2レーザー照射のみではHAECの細胞数障害は認めなかったが, ME290 加直後にレーザー照射を行った場合は添加濃度依存性にHAEC障害が認められ, ME2906添加4時間後に レーザー照射を行った場合は添加濃度が高濃度(3。0μg/ml以上)でHAEC障害が認められた. 活性酸素のクエンチャーであるアスコルビン酸(AA)をME2906とともに添加した直後にレーザー照射 を行った場合はHAEC障害が見られたが,添加後4時間培養を行った後にレーザー照射を行った場合はA。 A濃度依存的にHAEC障害の改善が認められた. PDT施行前のHAEC表面のトロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)活性は568.0±28. ME2906を0.3,1.0μg/m1添加後4時間培養を行った後にレーザー照射をしてもTM活性は有意な変化を認 めなかった.しかしME2906とともにA.A,を添加した場合はA.A濃度依存的にTM活性は増加した. 以上より,動脈硬化に対するME2906を用いたPDTはHAECに障害を与える場合もあり,生体でも正常 内皮細胞が障害される可能性もある.なおこの研究でA.A.の併用がME2906を用いたPDTの内皮障害の 軽減に有用であることが示唆された.今後はin vivoで内皮細胞が障害されにくいPDTの条件の検:討が必要 と考えられた. はじめに 腫瘍に親和性を示す光感受性物質ヘマトポルフィ リン誘導体(hematoporphyrin derivative:HPD) が合成1)されて以来,悪性腫瘍の光線力学的治療 (photodynamic therapy:PDT)が試みら 有効性が報告されている2”一3).光感受性物質を静脈注 射し腫瘍に集積させ,その部位に光感受性物質の吸 収波長帯のレーザーを照射すると,光感受性物質は 光化学反応をおこし光エネルギーを吸収し励起状態 1996年9月11日受付,1996年10月18日受理 キーワード:内皮細胞,光線力学的治療,粥状動脈硬化,アスコルビン酸,トロンボモジュリン. (別刷請求先:〒160東京都新宿区西新宿6-7-1東京医科大学内科学第三講座 高橋友乃) (1)

Upload: others

Post on 04-Feb-2021

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 一 624 一

    二医大誌 54(6):624~633,1996

    Mono-Laspartyl chlorin e6による光線力学的治療時の

            ヒト大動脈.血管内皮細胞への影響

    東京医科大学内科学第三講座(指導:林  徹主任教授)

          高  橋  友  乃

    【要旨】病巣部位にある種の光感受性物質を投与した後にレーザー照射して,腫瘍や粥状動脈硬化巣を縮小

    させる光線力学的治療(photodynamic therapy:PDT)が研究されている.近年,新しく開発された光感受

    性物質であるmono-L-aspartyl chlorin e6(ME2906)の使用により, PDTの効果が更に高まるとともに副

    作用を軽減できると報告されている.

     PDTは動脈硬化の治療や診断への応用も試みられ,動脈硬化の発現進展には血管内皮細胞の障害や凝固能

    の充進などが関与することが示されている.しかし,PDTが血管内皮細胞機能におよぼす影響の詳細は未だ

    明らかにされていない.そこで,ME2906を用いたPDTの血管内皮細胞への影響を培養ヒト大動脈血管内皮

    細胞(human aorta endothelial ce11:HAEC)を用いて検討した.

     HAECにME2906を10.0,100.0μg/ml添加し,3時間培養した場合のHAEC中のME2906濃度はそれ

    ぞれ0.25,2.17μg/106cells,6時間培養したものは0.29,2.98μg/106 cellsであり,培養時間依存的かつ

    ME2906添加濃度依存的に増加した.

     HAECにPDTを行なう前後の細胞数はME2906を3,0μg/ml添加しても非レーザー照射群では変化を

    認めなかった.ME2906非添加群で,10 J/cm2レーザーを照射しても細胞数に変化を認めなかった. ME2906

    を3.0μg/ml添加直後にレーザー照射を行った群では残存細胞数は11.5±6.5%と有意に減少した.

     ME2906を無添加で,10 J/cm2レーザー照射のみではHAECの細胞数障害は認めなかったが, ME2906添

    加直後にレーザー照射を行った場合は添加濃度依存性にHAEC障害が認められ, ME2906添加4時間後に

    レーザー照射を行った場合は添加濃度が高濃度(3。0μg/ml以上)でHAEC障害が認められた.

     活性酸素のクエンチャーであるアスコルビン酸(AA)をME2906とともに添加した直後にレーザー照射

    を行った場合はHAEC障害が見られたが,添加後4時間培養を行った後にレーザー照射を行った場合はA。

    A濃度依存的にHAEC障害の改善が認められた.

     PDT施行前のHAEC表面のトロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)活性は568.0±28.5 nmで,

    ME2906を0.3,1.0μg/m1添加後4時間培養を行った後にレーザー照射をしてもTM活性は有意な変化を認

    めなかった.しかしME2906とともにA.A,を添加した場合はA.A濃度依存的にTM活性は増加した.

     以上より,動脈硬化に対するME2906を用いたPDTはHAECに障害を与える場合もあり,生体でも正常

    内皮細胞が障害される可能性もある.なおこの研究でA.A.の併用がME2906を用いたPDTの内皮障害の

    軽減に有用であることが示唆された.今後はin vivoで内皮細胞が障害されにくいPDTの条件の検:討が必要

    と考えられた.

    はじめに

     腫瘍に親和性を示す光感受性物質ヘマトポルフィ

    リン誘導体(hematoporphyrin derivative:HPD)

    が合成1)されて以来,悪性腫瘍の光線力学的治療

    (photodynamic therapy:PDT)が試みられ,その

    有効性が報告されている2”一3).光感受性物質を静脈注

    射し腫瘍に集積させ,その部位に光感受性物質の吸

    収波長帯のレーザーを照射すると,光感受性物質は

    光化学反応をおこし光エネルギーを吸収し励起状態

    1996年9月11日受付,1996年10月18日受理キーワード:内皮細胞,光線力学的治療,粥状動脈硬化,アスコルビン酸,トロンボモジュリン.

    (別刷請求先:〒160東京都新宿区西新宿6-7-1東京医科大学内科学第三講座 高橋友乃)

    (1)

  • 1996年11月 高橋:ME 2906によるPDT時のヒト大動脈血管内皮細胞への影響 一 625 一

    となる.その際に,放出されるエネルギーにより病

    巣組織内の酸素が励起され,一重項酸素などの活性

    酸素が生じる4).この一重項酸素が細胞に障害を与

    え病巣組織に変性壊死をおこさせる反応を利用した

    治療方法がPDTである.

     近年,HPDよりも腫瘍治療効果の高い光感受性

    物質であるmono-L-aspartyl chlorin e6(ME2906)

    が開発された5一’7).本剤は粥状動脈硬化巣にも集積す

    ることが報告され,ME2906の吸収波長帯である

    664nmのレーザーを照射すると粥状動脈硬化巣が

    退縮することが明らかとなっている8).

     動脈硬化の発生・進展は血管内皮細胞が大きく関

    与することが指摘され,1970年代に提唱された障害

    反応仮説9)においては,血管内皮細胞の障害が粥状

    動脈硬化発生の引き金であるとされている.しかし

    PDTが血管内皮細胞の動態におよぼす影響につい

    ては不明な点が多く,この点を明らかにすることは

    動脈硬化に対するPDTの臨床応用を進めていく上

    で重要である.

     そこで筆者は培養ヒト大動脈血管内皮細胞

    (human aorta endothelial cell:HAEC) に

    ME2906を用いたPDTを施行し, ME2906のHAECへの取り込みや内皮細胞障害への関与につ

    いて検討を行った.そして血管内皮細胞が有する抗

    血栓形成機能に関与する物質であるトロンボモジュ

    リン(thrombomodulin:TM)活性のPDT施行前

    後での変化を検討した.さらに,活性酸素のクエン

    チャーであるアスコルビン酸(ascorbic acid:A.A.)

    の投与により,内皮細胞障害性やTM活性がどのよ

    うに変化するかについても検討した.

    研究材料および方法

     正常ヒト大動脈血管内皮細胞(クラボウ,東京)

    を,増殖培地ブレットキットEGM-MV添加セット

    (三光純薬,東京)を用いて培養した.光感受性物質

    はME2906(明治製菓,東京)を用いた.レーザー照

    射には半導体レーザー(松下産業機器,大阪)を用

    い,発振波長664nm,出力150 mW/cm2で行った.

     1.HAECへのME2906の取り込み

     直径10cmの培養用dish(FALCON)にHAEC 1.0×106個/wellを播種し,24時間培養後,

    培地交換を行い,ME2906を10.0,100.0μg/mlに

    なるように添加した.それぞれ30分から24時間培

    養した後,PBS溶液で洗浄し,0.4%EDTA/50 mM

    HEPES緩衝液(PH 7.4)2mlを加え,セルスクレ

    イパーで細胞を剥離した.次に,HAEC浮遊液を超

    音波破砕機で10分間細胞を破砕し,細胞破砕液:

    EDTA/HEPES緩衝液:75%メタノールを1:0.5=

    7の割合で混和して遠心分離(1000rpm 5分間)を

    行い細胞膜成分を沈降除去し,上清中のME2906濃

    度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定し

    た.

     2.PDTによるHAECの障害性 24well plate (FALCON)に5.2×104個/well

    のHAECを播種し,24時間培養後,培地交換を行

    い,ME2906 をO.1から5.0μg/ml添加した.

    ME2906添加直後に10 J/cm2のレーザー照射を行

    った群と,ME2906添加後4時間培養した後に培地

    を交換して10J/cm2のレーザー照射をおこなった

    群で残存生細胞数を算出し,PDTによるHAECの

    障害性を検討した.残存生細胞はトリプシン処理に

    て剥離した後トリパンブルーにて染色し,トリパン

    ブルーに染色されなかった細胞を残存骨細胞として

    位相差顕微鏡にてカウントし,未処理の生細胞数

    (100%)と処理後の残存生細胞数の比を計測した.

     さらに,ME29063.0μg/mlとともにA.A.を25

    から200μg/ml添加し残存生細胞数の変化を検討

    した.

     3.PDTによるHAEC表面のTM活性の測定 96well plate(FALCON)に1.4×104個/wellの

    HAECを播種し,24時間培養した後に培地交換を

    行い,ME2906を0.3から3.0μg/m1添加して4時

    間培養した後10J/cm2のレーザー照射をし,

    HAEC表面のTM活性を測定した. TM活性の測

    定は,HAECをトロンビン,プロテインCおよびカ

    ルシウム存在下に培養したときに生じる活性型プロ

    テインCの産生量を合成基質の水解量から標準メ

    チルクマリンアミドの螢光強度(螢光光度計:励起

    波長380nm/螢光波長460 nm) に対応させて求め

    た10~11).

     さらに,ME29060.3μg/mlとともにA.A.を

    100.0また200.0μg/ml添加し,4時間培養した後

    に10J/cm2のレーザー照射を施した場合のTM活

    性を測定した.

    【略語表】

    PDT:photodynamic therapy

    ME2906:mono-L-aspartyl chlorin e6

    (2)

  • 一 626 一 東京医科大学雑誌 第54巻第6号

    HAEC:human aorta endothelial cell

    TM:thrombomodulinA.A.:ascorbic acid

    HPD:hematoporphyrin derivative

    結 果

     1.HAECへのME2906の取り込み

    IME2906を10.0μg/ml添加した場合のHAEC

    中のME2go6濃度をFig.1白四角で示してある.

    (ug/106cells)

        4

      3

    g 2ct

    1

    o

    ME2906・10ptg/ml

    ME2906100ptg/ml

    O.5 1 3  6慧一 培養時間(hrs.)

    Hg.1HAECへのME 2906の取り込み.

    ME2906の濃度は30分後で0.16μg/106 cells,6時

    間後には0.29μg/106cellsで,後述する100.0μg/

    ml添加とは異なりほぼ一定であった.

     一方,ME2906 を100.0μg/ml添加した場合の

    HAEc中のME2906濃度をFig.1黒丸で示してあ

    る.HAEC中のME2906濃度は,30分後で1.55μg/

    106cells,6時間で2.98μg/106 cells,24時間後で

    4.10μg/106cellsとなり,培養時間依存的に増加し

    た(Fig.1).

     2.PDTによるH:AECの障害

     Fig.2は縦軸に細胞数で,横軸にME2go6の投与

    量を示してある.Fig.2aはME2906添加直後にレ

    ーザー照射を行った群で,Fig.2bはME2906添加

    後4時間後にレーーザー照射した群を示してある.

    ME2906を3.0μg/ml添加しレーザー照射を行わ

    ない群の残存生細胞率は80.9±6.4%(平均±標準

    偏差),ME2906を添加せず10 J/cm2レーザー照射

    のみを行った群の残存生細胞率は89.4±10.0%で

    あった.この結果はコントロールと有意差がなく,

    高濃度のME2906添加およびレーザー照射のみで

    はHAECの障害を認めなかった(Fig.2a).

     ME2906をO.1から3.0μg/m1添加した直後に

    (o/o)

    100

    細  80

    数60

    40

    20

    o

    P〈O.Olr一一一’一一一一一一一一一一一一一一一i n==4

    霧。髪

          M±SD

    ロレーザー照射なし.

    國レーザー10J/cm2照射.

    P 〈 O.Ol

    (%)

    100

     80胞

    rny一一一一一一一m一一一一一一 n=4

    髪、

    ぢア

    。  o

    {t2,?{va..t

    O.1 O.5 1.0 3.0 3.O

    ME2906 (yg/ml)

    60

    40

    20

    o

      aFig.2PDTによるHAECの障害性.

    M±SDロレーザー照射なし.

    囲レーザー10J/cm2照

    難曲

    〆・1ζ

    Z三・

    ヨ馨

    形liζ

    ]笏

    !「」,

    O O.1 O.3 1.0 3.0 10.0 10.O

        ME 2906 (ptg/ml)

           b

    (a):ME2906添加直後に,レーザーを10 J/cm2照射を施した群

    (b)ME2906添加4時間後,レーザー10 J/cm2照射を施した群

    (3)

  • 1996年11月 高橋:ME 2906によるPDT時のヒト大動脈血管内皮細胞への影響 一 627 一

    10J/cm2レーザー照射を行った場合,濃度依存的に

    残存生細胞率は有意に減少した.ME2906を3.0

    μg/ml添加した直後にレーザー照射した後の

    HAECを顕微鏡下に観察すると,一部の細胞は原型

    をとどめずに破砕されていた(Fig.2a).

     ME2906添加し4時間培養した後にレーザー照射

    を行った場合(Fig.2b), ME2906を。.1から1.o

    μg/mlの濃度で添加しても残存生細胞率は有意な

    変化を示さなかった.しかし,3.0μg/ml以上の濃度

    のME2906を添加しレーザー照射を施行すると,残

    存生細胞率は有意に減少した.

     Fig.3は縦軸に細胞数で,横軸にA.A.の投与量を

    示してある.Fig.3aはA.A.とME2906添加直後

    にレーザー照射を行った群で,Fig.3bはA.A.と

    ME2906添加後4時間後にレーザー照射した群を示

    してある.ME29063.0μg/mlとどもにA.A添加直

    後にレーザー照射を行った群では,A.A.濃度依存的

    に残存生細胞率は減少する傾向を認めたが有意差は

    認めなかった(Fig.3a).一方, ME2906を添加し

    4時間培養した後にレーザー照射を行うと残存生細

    胞率は38.3±6.2%に減少したが,ME2906ととも

    にA.A.を添加すると, A.A.濃度依存的に細胞数の

    減少が抑制された.A.A.200.0μg/m1添加時には

    残存生細胞率は,85.1±10.0%と非添加時に比べ有

    意に高値であった(Fig.3b).

     3.PDTによるH:AEC表面のTM活性の測定

     Fig.4では縦軸に螢光強度で,横軸にME2906の

    投与量を示してある.未処置のHAECのTM活性

    は568.0±28.5nmであった. HAECにME2906を

    0.3または1.0μg/m1添加し4時間培養した後に

    10J/cm2レーザー照射を行った場合のTM活性は

    それぞれ609.0±49.8nm,563.0±27.4nmで有意

    な変化を認めなかった(Fig.4).

     一方,Fig.5では縦軸に螢光強度で,横軸にA.A.

    の投与量を示してある.HAECにME29060.3μg/

    m1とともにA.A.を100.0また200.0μg/ml添加し

    て4時間培養した後に10J/cm2レーザー照射を行

    った場合のTM活性は,それぞれ805.5±52.4nm,

    (o/o)

    100

    80

    胞60

    40

    20

    o

    P 〈 O.Ol

    rr一’一一”一一一’一’N一’一’一d”’一”一一一一一一一一’一一’1

    88無添加

    n=4

    M±SD

    ロレーザー照射なし.

    國レーザL10J/cm2照射.

    !i・UZ2.

    (o/o)

    100

    80

    胞60

    40

    20

    O O 25 50 100 200 アスコルビン酸(μg/ml)

    o

        P 〈 O.Ol

    n==4

    M±SD「一ロレーザー照射なし.

    工臨bδ

    國レーザー10J/cm2照射. 7iζ

    ヤ鳴く◎「

    8 弼客z ≧8①

    羅 ,ノ・…抽Eゐ ’」、、

    無添加

    ノノ’・

    俄フ 1加縫!FC

    名=∴を”

    雛ζ4%づ鵜才二形

    hを%

    C  .!

    裟:…篇∠惚髭難擁

    髪雛

    雛 〃7”霧’膨

    嚢 ’  ノ ‘客’”

    √F乞. ノ,・u・z

    霧 1’

    o

        aFig.3PDTによるHAEcの障害性とA.A.の効果

    O 25 50 100 200 O 200 アスコルビン酸(μg/ml)

         b

    (a)ME29063.0μg/mlとA.A,を0~200μg/ml添加直後,レーザー10 J/cm2照射

    を施した群

    (b)ME29063.0μg/mlとA.A.を0~200μg/ml添加4時間後,レーザー一 10 J/cm2

    照射を施した群

    (4)

  • 一 628 一

    (nm)

    600

    光 400強度

    200

    東京医科大学雑誌

     n=4

    M±SD

     o    O O.3 1.O      ME2906 (ptg/ml)

    Fig.4PDTによるHAEc表面のTM活性. ME2906を0,3,1.0μg/ml添加4時間後,レー

     ザー 10J/cm2照射を施した群

    ロレーザー照射なし.

    □ レーザー10J/cm2照

    ;二つ’雛

    笏勿 『・1・:’吻彰,.F, =’・

    多選易’・『饗

    �Sv劣’、ンμ・/、

    惣:饗%吻

    鰍笏・1ンリ ’

    卿iん’∴ノ惣勿笏

    ;繊iー∫勿勿’”「’∠.’〆’

    (nm)

    1200

    1000

     800螢光

    強600度

    400

    第54巻第6号

        **「一一一一一騨一一目凹一一願一一一で

    r.m 一一 一一一 = し

       **「■■一一噌冒一■一一一一一一’1

    r 一 m “nyl

        /7([・  //一一・

    /Zf/

      /

    //fi.・-

    亥/・ti

    一 Control一 e一 ME2906 O.3ptg/ml

    一一 チ一一ME29061.0μg/ml

     ** P〈O.O1

    1129.75±93.9nmでA。A.濃度依存的に有意に増

    加した.またME29061.0μg/mlとともにA.A.を

    添加した場合もTM活性はA.A濃度依存的に有意

    に増加した(Fig.5).

    考 察

     1。PDTと動脈硬化

     PDTは主に悪性腫瘍の治療法として研究されて

    きた.粥状動脈硬化巣に対するPDTの試みは1985

    年頃よりLitvackら12)がコレステロール食により

    作成した動脈硬化家兎にHPDを投与後レーザー照

    射をした報告に始まる.血管内カテーテルを介して

    胸部大動脈にPDTを行い粥状動脈硬化部位を観察

    した.肉眼的観察では粥状動脈硬化巣部位が一部で

    減少し黄味をおび,光学顕微鏡を用いた組織学的検

    討ではPDTを行った部位は内膜がきれいに消失し

    中膜には損傷が認められなかったと報告している.

    それ以降PDTによる粥状動脈硬化巣の治療効果に

    ついては軽度改善から著効例まで種々の報告がなさ

    れている13~15).

     近年,従来より使用されているHPDよりも長波

    長側に吸収帯を持ち励起効率も高い物質である

              100 200     アスコルビン酸(μg/ml)

    Fig.5PDTによるHAEc表面のTM活性とA. A.の効果.

    ME2906が開発され研究に用いられるようになっ

    た.ME2906はテトラピロール環のD鎖にある二重

    結合が一つ解裂したクロリン系の炭素17位置にア

    ミド結合によりアスパラギン酸塩を一つ側鎖につけ

    た構造をもち,分子量は799.7kDである.クロリン

    はアルブミンと1:1で結合し,この構造をもつ

    ME2906は生体内ではアルブミンと1:1で結合す

    ることが知られている16).さらに,ME2906はリボ

    蛋白には1:3で結合し,吸収されても代謝産物にな

    らずそれ自体が活性体である.

     HayashiらはHPDに比べME2906が動脈硬化部位の内膜に選択的に取り込まれること,レーザー

    照射後にはプラークの扁平化や色調の変化,動脈硬

    化巣の消失などが認められることを報告してい

    る17~19).また,ME2906は粥状動脈硬化の治療のみ

    ならず,光CTを用いた粥状動脈硬化部位診断にも

    用いられている20).HPD投与後の正常動脈壁と粥状

    動脈硬化壁との濃度比は,投与6時間後で1:2.6,

    24時間後で1:3.1であるが,ME2906投与後の濃度

    比は投与6時間後で1:10.1,24時間後では1:20.8

    と高く,ME2906はHPDに比べ粥状動脈硬化壁へ

    の集積性は高い8).またME2906の664 nmの吸収ピ

    ークを単純に比較すると,664nmのレーザーを照射

    (5)

  • 1996年11月 高橋:ME 2906によるPDT時のヒト大動脈血管内皮細胞への影響 一 629 一

    した時の同一濃度でのHPDの吸収度を1とすると

    ME2906は8.8となり, ME2906は吸収特性が優れ

    ていることが明らかである.以上の結果から

    ME2906を用いてPDTを行うと, HPDに比べ効率

    よく活性酸素を生じさせることができ,治療効果が

    高いと思われる.

     さらに,従来の光感受性物質よりもME2906は副

    作用が少ない17).すなわちHPDの吸収帯は

    360~410nmの紫外線近位に存在するが,400 nm付

    近には赤血球中のヘモグロビン等の吸収帯も存在す

    るためPDTにより赤血球が崩壊する可能性があ

    る.しかしME2906の治療に用いる吸収帯は664

    nmであり,これはヘモグロビンの吸収波長帯から

    離れた波長である.しかも血漿中ではME2906は血

    清アルブミンに強く結合した形で存在しているた

    め,PDTによる赤血球崩壊などは起こしにくい16)21).またME2906の正常組織からの排泄率が高

    いことから皮膚光線過敏症を起こしにくい.

     以上のことより,ME2906は従来のHPDに比べ

    治療効果が高いうえに副作用の発現も少ないため,

    従来行われてきた血管内視鏡を利用しての体内から

    のレーザー照射だけでなく,体外からのレーザー照

    射によっても治療効果があげる可能性があると思わ

    れる.さらに粥状動脈硬化壁への集積性が高いこと

    から動脈硬化に対するPDTにME2906を用いた場

    合の有用性が期待される.しかし,今までにin vitro

    での検討がないため今回HAECを用い動脈硬化の

    観点から,検討を行った.

     2.HAECとPDT一動脈硬化の観点から

     HAECへのME2906の取り込みを高速液体クロ

    マトグラフィーを用いて検討すると,取り込みは24

    時間まで培養時間依存的に増加した.ME2906が

    HAECにいかにして取り込まれるか,どの細胞内器

    官に取り込まれるかは不明で今後の検討が必要であ

    る.腫瘍を移植したBALB/cマウスの細胞内器官に

    おけるME2906の取り込みの検討では,核膜,ミト

    コンドリア,ミクロゾームに集積していることが示

    され22“’24),とくに腫瘍細胞内のミトコンドリア分画

    には強い集積が認められる.一方,腫瘍細胞への

    HPDの取り込み機序に関しては,著しい増殖性を

    維持するために癌細胞膜にLDL受容体が発現増強

    され,油と水の両方にとける両溶媒性のHPDが

    LDL受容体に選択的に結合し細胞内にとりこまれ

    ると考えられている25).動脈硬化巣の内皮細胞膜で

    はLDL受容体のみならず酸化LDLやアセチル化

    しDLを取り込む受容体が存在することが知られて

    いることから26),HPDと同様にME2906は内皮細

    胞膜の各種LDL受容体を介しME2906が細胞内に

    取り込まれる可能性がある.

     今回の検討では,細胞外に存在するME2906の

    HAECへの影響を検討する系としてME2906添加

    後ただちにレーザー照射する群を,細胞内に取り込

    まれたME2906のHAECへの影響を検討する系と

    してME2906を添加し4時間培養した後に培地を

    交換しME2906を除去してレーザー照射する群を

    用いた.その結果,PDTを施行した場合には細胞外

    に存在するME2906は濃度依存的にHAECを障害

    し,また細胞内に取り込まれたME2906は高濃度の

    場合にのみHAECを障害することが明らかとなっ

    た.またME2906が3.0μg/ml以上の濃度ではその

    存在が細胞内外に関係なくHAECを障害すること

    が示された.すなわち,細胞外に存在するME2906

    がH:AECを障害する可能性が示されたわけである

    が,in vivoにおいては血流やME2906と結合しや

    すい脂質,アルブミンなどが血液中に存在するため

    投与したME2906が血中に持続的に高濃度に存在

    しうるか不明である.従って,今後は実験的にin

    vivoにおけるME2906の内皮細胞への取り込みや

    障害性を動物実験などで検討し,内皮細胞に障害を

    与えないME2906濃度,レーザー照射量などの設定

    について解析する必要があろう.

     3.A.A.がPDTにともなうHAEC障害におよ

      ぼす影響

     ついで一重項酸素のクエンチャーであるA.Aが

    PDTにともなうHAEC障害におよぼす影響について検討した.A.A.は生体内では細胞質に存在し水

    素供与体として抗酸化的に働き,とくに膜内脂質の

    ラジカル発生にともなう酸化反応を抑制することが

    知られており27~30),PDTにともなうHAEC障害を

    軽減する作用が期待される.今回はA.A.を投与直後

    にPDTを施行した群,すなわちAA。が細胞外に存

    在している系と,A,A.を投与後4時間培養した後に

    PDTを施行した群,すなわち細胞質内にAA.を取

    り込ませた系で比較検討を行ったが,細胞質内にA.

    A.を取り込ませた系でHAEC障害がA.A.濃度依

    存的に抑制されたことより,細胞質内にとりこまれ

    たA.A.がPDTにより生じた活性酸素を消去し細

    胞を保護したと考えられた.結果は示さなかったが,

    (6)

  • 一 630 一 東京医科大学雑誌 第54巻第6号筆者の実験では,スーパーオキシドのクエンチャー

    であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を細

    胞に添加すると,有意なHAEC障害抑制効果は得

    られなかった.PDTによって発生する活性酸素は主

    に一重項酸素であるため,スーバ一町キシドジスム

    ターゼではPDTによるHAEC障害の有意な抑制効果が得られなかったと推測された.

     4.抗凝固四一特にTM活性とPDT

     一方,動物実験において腫瘍に対してPDTを施

    行すると,レーザー照射直後に腫瘍中の微小血管が

    白色血栓により閉塞し,腫瘍が壊死を起こし縮小す

    ることが最近明らかにされ31),PDTにより血小板や

    血管内皮細胞などが活性化され凝固充進状態が生じ

    ている可能性が示された.また動脈硬化を基礎とす

    る脳梗塞や心筋梗塞では凝固能が充刑しているとい

    う報告があり31),PDTを施行することで凝固能がさ

    らに促進されると逆に動脈硬化の進展につながる可

    能性がある.そこで内皮細胞の抗凝固作用の中心的

    役割を果しているTM活性がPDTによりどのよ

    うに変化するか検討した.TMは内皮細胞膜上に存

    在し,トロンビンと1:1の複合体を形成することに

    よりトロンビンのもつ凝固作用を消失させるととも

    に,トロンビンによるプロテインCの活性化を著し

    く高め,内皮細胞上における凝固促進状態を抑制す

    る.今回の検討では,HAECが死滅しない条件下で

    (ME2906濃度:1.0μg/ml以下かつレーザー照射:

    10J/cm2)PDTを施行した場合のTM活性には影

    響がみられなかったが,A.A.を併せて投与した場

    合にはTM活性が増加した. A.A.併用投与による

    TM活性増加機序は不明である.丸山らはdouble

    Strand c-AMPを添加して内皮細胞を培養すると

    2~3時間後より細胞表面のTM発現が150~200%

    増加することを明らかにし,mRNAレベルも増加

    していることからTM発現増強は転写促進による

    と考察している32~33).一方A.A.はHAEC中のミト

    コンドリアでのチロシンの代謝経路,とくにTCA

    サイクルを活性化し。-AMPが増える酵素反応の活

    性化における共同因子として重要であることが明ら

    かにされている.以上のことより,A.A.は。-AMPを

    増やし細胞表面のTMを発現増強した可能性が考

    えられる.

     これらの結果は,少なくともHAECが死滅しな

    い条件下でのME2906を用いたPDT施行に際して

    は,A.A.の併用が抗凝固作用を活性化しPDTによ

    る動脈硬化進展を抑制すると考えられた.今後,

    PDT施行にともなう組織因子,エンドセリン,組織

    プラスミノーゲンアクチベーターなどの内皮細胞

    の凝固に関する各種分子の変化の検討が必要である

    と思われる.

     画期的な腫瘍の治療法として研究されてきた

    PDTは,現在,動物実験レベルでは粥状動脈硬化の

    治療にも有効性が確認されている.しかし,PDTに

    より正常内皮細胞が障害される可能性もあり,今後

    は正常内皮細胞に影響を与えないME2906の投与

    濃度や障害を抑制する方法などの検討が必要であ

    る.

    結 論

     HAECを培養して,新しい光感受性物質ME2906

    を用い,レーザー照射し,その影響を種々の条件で

    検討を行った.

     1.ME2906は濃度依存的,培養時間依存的に

    HAECへ取り込まれた.

     2.in vitroではME2906投与後レーザー照射を

    行うと,細胞外に存在するME2906は濃度依存的に

    HAECを障害し,また細胞内に取り込まれたME

    2906は高濃度の場合にのみHAECを障害すること

    が明らかとなった.

     3.ME2906が3.0μg/ml以上の濃度ではその存

    在が細胞内外に関係なくHAECを障害することが

    示された.

     4.細胞質内にA.A.を取り込ませた系でHAEC

    障害がA.A.濃度依存的に抑制されたことより,細

    胞質内にとりこまれたA.A.がPDTにより生じた

    活性酸素を消去し細胞を保護したと考えられた.

     5.HAECが死滅しない条件下で(ME2906濃度:

    1.0μg/ml以下かつレーザー照射=10 J/cm2)PDT

    を施行した場合のTM活性には影響がみられなかった.

     6.HAECが死滅しない条件でかつ細胞質内に

    A.A.を取り込ませた系ではTM活性は増加し,

    PDT施行の時にA.A。を併用することは, PDTに

    よる動脈硬化進展を抑制すると考えられた.

     謝辞 稿が終わるに臨み,御懇篤な御指導,御校閲を賜

    りました林徹第三内科主任教授に深甚なる謝意を表

    します.また,本研究にあたり直接御指導,御教示

    を頂きました會沢勝夫第二生理学教授,ならびに調

    (7)

  • 1996年11月 高橋:ME 2906によるPDT時のヒト大動脈血管内皮細胞への影響 一 631 一

    進一郎博士,明治製菓薬総研斉藤光一研究員に深く

    感謝致します.

    文 献

    1) Lipson RL, Baldes E. J, Minn R:The photo-

       dynamic properties of a particular hemato-

       porphyrin derivative. Areh. Dermatol. 82:508

       t-s16, 1960

    2) Hayata Y, Kato H, Konaka C, Ono J, Takizawa

       N:Hematoporhyrin Derivative and laser photor-

       adiation in the treatment of lung cancer. Chest

       81:269”v277, 1982

    3) Hayata Y, Kato H, Ono J, Matsushima Y, Haya-

       shi N, Saito T, Kawate N:Fluorescence fiber-

       optic bronchoscopy in the diagnosis of early stage

       lung cancer. Recent Results in Cancer Res. 82:121

       t・一一一130, 1982

    4) Parker JG, Stanbro WD:Dependence of

       photosensitized singlet oxygen production on

       porphyrin structure and solvent. in Porphyrin

       localization and treatment of tumor. 170:259

       t-284, 1984

    5) Nelson JS, Roberts WG, Berns MW:In vivo

       studies on the utilization of Mono-L-aspartyl

       chlorin (NP e6) for photodynamic therapy. Can-

       cer Res. 47:4681’v4685, 1987

    6) Aizawa K, Okunaka T, Ohtani T, Kawabe H,

       Yasunaka Y, Ohata S, Ohtomo N, Nishimiya K,

       Konoka C, Kato H, Hayata Y, Saito T:Locarzia-

       tion of Mono-L-aspartyl chlorin e6 (NP e6) in

       mouse tissues. Photochem. Photobiol. 46:789

       ’一v793, 1987

    7) Roberts WG, Shiau F-Y, Nelson JS, Smith KM,

       Berns MW,:In vitro characterization of

       Monoaspartyl chlorin e6 and diaspartyl chlorin e6

       for photodynamic therapy. J. Natl. Cancer lnst.

       80:330e-336, 1988

    8) Yasunaka Y, Aizawa K, Asahara T, Koto H,

       Hayata Y, lshikawa 1:In vivo accumulation of

       photosensitizers in atherosclelotic lesions and

       blood in atherosclerotic rabbit. Lasers in the Life

       Sciences 4:53”一一65, 1991

    9) Ross R:The pathogenesis of atherosclerosis. a

       perspective of the 1990s. Nature 362:801’N・809,

       1993

    10) Dittman WA, Majerus PW:Structure and func-

       tion of thrombomodulin:A natural   anticoagulant. Blood 75:329一一336, 1990

    11)石井秀美,木崎景一郎,堀江修一:培養血管内皮細胞

       のトロンボモジュリンの測定法.血管と内皮.2:405

       n-409, 1992

    12) Litvack F, Grundfest WS, Forrester JS, Fishbein

       ML, Swan HJC, Corday E, Rider DM, McDermid

       IS, Pacala TJ, Laudenslager JB:Effects of

       hematoporphyrin derivative and photodyuamic

       therapy on atherosclerotic rabbits. Am. J. Car-

       diol. 56:667・一t671, 1985

    13) Pollock ME, Eugene J, Hammer-Wilson M, Berns

       WM:Photosensitization of experimental ather-

       omas by porphyrins. JACC 9:639”v646, 1987

    14) Neave V, Giannotta SL, Hyman S, Schneider JH:

       Hematoporphyrin uptake in athero sclerotic

       plaques:Therapeutic potentials. Neurosurgery

       23:307”一312, 1988

    15) Tang G, Hyman S, Schneider JH, Giannotta SL:

       Application of photodynamictherapy to the treat-

       ment of atherosclerotic plaques. 32:438t’一443,

       1993

    16) Tsuchida T, Aizawa K, Konaka C, Kato H:Inter-

       action of bovine serum albumin with Mono-L-

       aspartyl chlorine e6 by spectrophotometry.

       Lasers in the Life Sciences, 5:155n-164, 1993

    17) Hayashi J, Kuroiwa Y, Sato H, Saito T, Aizawa

       K:Transadventitial localisation of atheromatous

       plaques by fluorescence emission spectrum analy-

       sis of Mono-L-aspartyl chlorin e6. Cardiovasc.

       Research, 27:1・’一4, 1993

    18)林潤一,佐藤秀昭,會沢勝夫:粥状動脈硬化の光力

       学的治療診断と治療81:857~861,1993

    19) Hayashi J, Saito T, Sato H, Kuroiwa Y, Aizawa

       K:Direct visualization of atherosclerosis in small

       coronary arteries using the epifluorescence

       stereoscope. Cardiovasc. Research, 30:775’v780,

       1995

    20)林潤一,會沢勝夫:循環器系におけるMono-L-as-

       partyl chlorine e6の診断と治療への応用.日本レー

       ザー医学会誌14:3~9,1993

    21)菅縮充郎,Ilyar Xiahedin,指扇信,加藤治文,會沢

       勝夫:レーザー照射によるMono・L-aspartyl chlor-

       in e6の赤血球に対する作用.東京医大雑誌54:1

       t’一8, 1996

    22)大友信也,會沢勝夫,河手典彦,斉藤 誠,河部博文,

       加藤治文,早田義博:光感受性物質によるミトコン

        ドリア運動変化について.日本レーザー医学会誌8:

       35rv36, 1987

    23)安中ゆかり,河部博文,山本秀樹,會沢勝夫,加藤治

       文,早田義博:Mono-L・aspartyl chlorine e6の細胞

       内分布とその経時変化.日本レーザー医学会誌9:

       331’一v334, 1988

    24)會沢勝夫,黒岩ゆかり,土田敬明,11丁目r Xiahedin,渋

       晶晶,斉藤光一:光感受性物質の細胞内動態.癌と

       化学療法23:22~26,1996

    25)益子信郎:癌治療と活性酸素・フリーラジカル.J.

    (8)

  • 一 632 一 東京医科大学雑誌 第54巻第6号

    26)

    27)

    28)

    29)

    30)

    Act. Oxyg. Free Rad. 2:356’“一363, 1991

    Kume N, Arai H, Kawai C:Receptors for

    midified low-density lipoproteins on human en-

    dothelial cells. Different recognition for acetylat-

    ed low-density lipoprotein and oxidized low-

    density lipoproteins. Biochim. Biophys. Acta

    1090:63一一67, 1991

    三木正之:生体におけるEの相乗三好酸化作用.JAct. Oxyg. Free Rad. 3:560fi-567, 1992

    重岡 成:ビタミンC.JAct. Oxyg. Free Rad.2:

    148”v155, 1991

    Frei B, Stocker R, Ames BN:Antioxidant

    defences and lipid peroxidation in human blood-

    plasma. Med. Sci. 85:9748コ口9752, 1988

    Niki E, Komura E, Takahashi M, Urano S, lto E,

    Terao K:Oxidative hemolysis of eryhtrocytes

    and its inhibitionn by free radical scavengers. J.

    Biol. Chem. 263:19809”s-19814, 1988

    31)渋谷 洋,斉藤光一,黒岩ゆかり,七四哲弥,古川欣

       也,酒井治正,小中千守,會沢勝夫,加藤治文:光線力

       学的治療法(PDT)におけるvasucular shut down

       効果一in vivoでの発現機序に関する基礎的検討.第

       16回日本レーザー医学会大会,1996

    32)三島協二:心筋梗塞,脳梗塞におけるリボ蛋白 Lp

       (a)の血栓促進作用に関する研究.動脈硬化22:948

       n-966, 1995

    33) Maruyama 1, Soejima O, Osame M:Up-

       regulation of thrombomodulin on the cultured

       endotherial cells by cAMP. Ann. N. Y. Acad. Sci.

       598:538tN-539, 1990

    34) lshii H, Kizaki K, Uchiyama H, Horie S, Kazama

       M:Cyclic AMP increases thrombomodulin

       expression on membrane surface of cultured

       human umberical vein endotherial cells. Thtom-

       bosis Res. 59:841n-850. 1990                     ’

    Influence of mono-L-aspartyl chlorin e6 upon endothelial cells in

              human aorta during photodynamic therapy

    Tomono TAKAHASHI

    Third Department of lnternal Medicine, Tokyo Medical College

              (Director:Professor Toru Hayashi)

      Photodynamic therapy (PDT), in which a tumor or atherosclerotic lesion is reduced in size by laser

    irradiation after administration of certain photosensitive substances to the lesion, was investigated. ln

    recent years, it has been reported that the use of mono-L-aspartyl chlorin e6(ME2906),aphotosensitive

    substance, can enhance the beneficial effects of PDT and reduce its adverse effects at the same time.

    Although PDT has also been applied to the treatment and diagnosis of arteriosclerosis, and it has been

    shown that disorders of vascular endothelial cells and accelerated blood coagulation capacity involve the

    development and aggravation of arteriosclerosis, the detailed effects of PDT on endothelial cells have

    remained obscure. Thus we carried out the present study to investigate the effects of PDT with ME2906

    0n cultured human aorta endothelial cells (HAEC).

      ME2906 concentration in HAEC was found to be O.25 and 2.17pt g/106 cells after incubation with

    ME2906 at 10.0 and 100.0#g/ml for 3 hours, respectively, and O.29 and 2.98 pt g/106 cells after

    incubation with ME2906 at the same doses for 6 hours, respectively, revealing incubation-time-dependent

    and ME2906-dose-dependent increases.       I

      The number of surviving cells remained unchanged after addition of ME2906 at 3.0#g/ml without

    laser irradiation, or after laser irradiation at 10J/cm2 without addition of ME2906. On the other hand,

    the number of serviving cells significantly decreased when laser irradiation was performed immediately

    after addition of ME2906 at 3.0 #g/ml. No damages to HAEC was observed after addition of ME2906

    0r laser irradiation at 10J/cm2 alone, whereas HAEC were damaged in the ME2906-dose-dependent

    manner when laser irradiation was performed immediately after addition of ME2906. When laser

    irradiation was performed 4 hours after addition of ME2906 HAEC could be damaged if ME2906 was

    added at 3.0 pt g/ml or more.

    (9)

  • 1996年11月 高橋:ME 2906によるPDT時のヒト大動脈血管内皮細胞への影響 一 633 一

      When laser irradiation was performed immediately after addition of ascorbic (A.A.), a quencher of

    active oxygen, together with ME2906, HAEC were damaged. However, HAEC damages was reduce A.

    A.一dose-dependently when laser irradiation was per{brmed a丘er incubation with A.A。 and ME2906 fbr

    4 hours.

      The activity of thrombomodulin on the surface of HAEC was found to be 568.0± 28.5 nm before PDT,

    and this activity showed no significant change after laser irradiation following incubation with ME2906

    at O.30r l.0μg/mHbr 4 hours. However, the activity of thrombomodulin increased in the A.A.一dose-

    dependent manner when A.A. was added together with ME2906.

      These results revealed that the concomitant administration of A.A. is beneficial to PDT with ME2906.

    However, the possibility of damages to the normal endothelial cells by PDT requires further studies to

    find out in vivo conditions of PDT which can more effectively protect endothelial cells.

    〈Key words> Endothelial cells, Photodynamic

    bomodulin.

    theapy, Atherosclerosis, Ascorbic acid, Throm一

    (10)