long ssd 法における全身照射用 tmr tps の計算精度

6
1. 緒言 血液性悪性腫瘍に対する骨髄移植前の全身照射 (Total Body Irradiation, TBI) は、腫瘍細胞の根絶、 特に抗癌剤治療において薬効が得られにくい部位に も有効に働き、移植幹細胞の生着に不可欠な免疫不 全効果を期待することができる 1TBI 50 年以上 前から実施され 2、確立された方法といえるが、現 在でも clinical trial に組み込まれる等、適応の拡大 が期待されている 3TBI における照射方法は種々 報告されているが 4、滋賀県立成人病センターでは 汎用型 LINAC 装置を利用した Long SSD (4 m) 検討している。処方および照射スケジュールは、照 射方法同様に種々提案されているが 4) 、いずれにし ても投与線量の正確性および体内線量分布の把握は 対応すべき課題の一つであり、CT を用いた治療計 画装置 (Treatment planning system, TPS) が有効とな る可能性がある。 現在一般的に使用されている TPS ではコミッショ ニング時の SAD での測定結果が登録されている。 TPS を利用した Long SSD 法での DMU の計算には TMR、吸収線量の変化に注意が必要であり、この確 認には long SSD での水ファントムによる正確な測定 が不可欠である。SAD 法を用いた TMR 測定には通 常照射野よりも大きな水ファントムが用いられ、線 量計に十分な散乱線量が寄与できるような環境下で の測定が行われている。しかし Long SSD 法を用い TMR 測定の際には、4m での照射野が 160 cm 160 cm と、その照射野を十分に覆うことのできる水 ファントムを用意することが困難であり、水ファン トムより照射野が大きくなるために正確な測定実施 が難しくなる。この問題に対応するため、Podgorsak らにより提案された換算係数 5) を使用して無限大の 大きさを持つ水ファントムでの TMR を推定する必要 がある。この換算係数は深さ 2.5 cm, 5.0 cm, 10.0 cm, 20.0 cm 4 点のみ与えられており、他の深さにおけ る換算係数は明瞭ではないが Fig. 1 に示すように 2 次関数にて補間した結果は良好である 4一方で Long SSD 法における DMU の計算は、距離 の逆二乗則が 2% 以内で成り立つ場合にのみ、SAD 法にて測定された TMR を用いて計算により求めるこ とができる 6) 。そこで本論文においては、下記の 3 項目について比較を行っている。 1. SAD 法にて得られた TMR(以後、TMR SAD )、水 ファントムよりも照射野が大きい条件において測 定された long SSD における TMR、(以後、 TMR CF() )および同条件にて Podgorsak らにより 提案された換算係数を使用して得られた long SSD Jpn. J. Med. Phys. Vol. 29 No. 2: 23–28 (2009) 23 Long SSD 法における全身照射用 TMR吸収線量測定と TPS の計算精度 福田 篤志 * 滋賀県立成人病センター 放射線部 (現 滋賀県立小児保健医療センター 放射線科) 研究論文 * 滋賀県立小児保健医療センター 放射線科〔〒 524–0022 滋賀県守山市守山 5–7–30〕: Shiga Medical Center for Children, 5–7–30 Moriyama, Moriyama-city, Shiga 524–0022, Japan Fig. 1 Multiplicative correction factors to adjust data measured in a limited phantom size (30 cm 30 cm) to data representing infinite phantom conditions.

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Page 1: Long SSD 法における全身照射用 TMR TPS の計算精度

1. 緒言

血液性悪性腫瘍に対する骨髄移植前の全身照射

(Total Body Irradiation, TBI) は、腫瘍細胞の根絶、

特に抗癌剤治療において薬効が得られにくい部位に

も有効に働き、移植幹細胞の生着に不可欠な免疫不

全効果を期待することができる 1)。TBIは50年以上

前から実施され 2)、確立された方法といえるが、現

在でも clinical trialに組み込まれる等、適応の拡大

が期待されている 3)。TBIにおける照射方法は種々

報告されているが 4)、滋賀県立成人病センターでは

汎用型LINAC装置を利用したLong SSD法 (4 m) を

検討している。処方および照射スケジュールは、照

射方法同様に種々提案されているが 4)、いずれにし

ても投与線量の正確性および体内線量分布の把握は

対応すべき課題の一つであり、CTを用いた治療計

画装置 (Treatment planning system, TPS) が有効とな

る可能性がある。

現在一般的に使用されているTPSではコミッショ

ニング時の SADでの測定結果が登録されている。

TPSを利用した Long SSD法でのDMUの計算には

TMR、吸収線量の変化に注意が必要であり、この確

認には long SSDでの水ファントムによる正確な測定

が不可欠である。SAD法を用いた TMR測定には通

常照射野よりも大きな水ファントムが用いられ、線

量計に十分な散乱線量が寄与できるような環境下で

の測定が行われている。しかしLong SSD法を用い

たTMR測定の際には、4 mでの照射野が 160 cm�

160 cmと、その照射野を十分に覆うことのできる水

ファントムを用意することが困難であり、水ファン

トムより照射野が大きくなるために正確な測定実施

が難しくなる。この問題に対応するため、Podgorsak

らにより提案された換算係数 5)を使用して無限大の

大きさを持つ水ファントムでのTMRを推定する必要

がある。この換算係数は深さ2.5 cm, 5.0 cm, 10.0 cm,

20.0 cmの4点のみ与えられており、他の深さにおけ

る換算係数は明瞭ではないがFig. 1に示すように 2

次関数にて補間した結果は良好である 4)。

一方でLong SSD法におけるDMUの計算は、距離

の逆二乗則が 2%以内で成り立つ場合にのみ、SAD

法にて測定されたTMRを用いて計算により求めるこ

とができる 6)。そこで本論文においては、下記の 3

項目について比較を行っている。

1. SAD法にて得られたTMR(以後、TMRSAD)、水

ファントムよりも照射野が大きい条件において測

定された long SSDにおける TMR、(以後、

TMRCF(�))および同条件にてPodgorsakらにより

提案された換算係数を使用して得られた long SSD

Jpn. J. Med. Phys. Vol. 29 No. 2: 23–28 (2009)

23

Long SSD法における全身照射用TMR、吸収線量測定とTPSの計算精度

福田 篤志*

滋賀県立成人病センター 放射線部(現 滋賀県立小児保健医療センター 放射線科)

研究論文

*滋賀県立小児保健医療センター 放射線科〔〒 524–0022 滋賀県守山市守山 5–7–30〕: Shiga Medical Center for Children, 5–7–30 Moriyama, Moriyama-city, Shiga 524–0022, Japan

Fig. 1 Multiplicative correction factors to adjust datameasured in a limited phantom size (30 cm�30 cm) to data representing infinite phantomconditions.

Page 2: Long SSD 法における全身照射用 TMR TPS の計算精度

におけるTMR(以後、TMRCF(�))の三つのTMR

の比較

2. SAD法にて得られたTMRから計算した long SSD

における吸収線量(以後、Dcalc)、水ファントム

よりも照射野が大きい条件において測定された

long SSDにおける吸収線量(以後、DCF(�))、同

条件にてPodgorsakらにより提案された換算係数

を使用して得られた long SSDにおける吸収線量

(以後、DCF(�))の三つの吸収線量の比較

3. TPSにより計算された水ファントム吸収線量(以

後、DTPS)と実測吸収線量の比較

上記の三つの比較により、下記の項目を確認して

いる。

1. TMRSADの long SSD条件下における有効性

2. DCF(�)に対するDcalcの精度

3. DTPSの精度

本論文の目的は、long SSD条件下におけるTMRSAD

およびDcalcの有効性を確認し、コミッショニング時

の SADでの測定結果が登録されているTPSにおい

て、Long SSD法での応用に言及することである。

2. 方法

2.1 TMRCF(�)、TMRCF(�)、DCF(�)、DCF(�)の測定

Long SSD法におけるTMRの測定のためのジオメ

トリをFig. 2に示す。当院で使用したLINACはVar-

ian Clinac 21 EX、測定に使用したエネルギーは10

MV-X線 (TPR20,10�0.736)、線量率はターゲットか

ら 1 mの距離において600 cGy/min、4 mの距離にお

いて 37.5 cGy/min、測定に用いた線量は 500 MU、

全身照射目的のため照射野は全開 (40 cm�40 cm at

SAD, 160 cm�160 cm at 4 m) とし、コリメータは45

度回転させた。Fig. 2に示すように SCDを 4 m

とし、30 cm�30 cmの Solid water (Gammex/RMI,

Middleton, WI) を使用してdepth 2.5cmから29.5cmま

で0.5 cm間隔でTMRおよび500 MU当たりの吸収線

量を測定した。この際後方散乱を考慮の上、Solid

Waterを線量計後方に 10 cm配置した 4)。線量計

は 0.6 ccのリファレンス線量計 TN 30013 (PTW,

Freiburg, Germany)、電位計はRAMTEC 1000 plus

(Toyo medic, Tokyo, Japan) を使用して得られたMraw

から下記の式にて吸収線量を測定した。

DCF(�)�Mraw·kTP·kpol ·ks ·kelec ·ND,w·kQ·CF . . . . . .①

ここでMrawは電位計の指示値、kTPは温度気圧補正

係数、kpolは極性効果補正係数、ksは再結合補正係

数、kelecは電位計校正定数、ND,wは水吸収線量校正

定数、kQは線質変換係数7)、CFはPodgorsakらによ

り提唱された30 cm�30 cmのファントムから得られ

た吸収線量を無限大のファントムでの吸収線量に変

換するための換算係数である 5)。kpol、ksはLong SSD

における照射条件下において測定により取得した。

また kelecは 1.000、kQは SAD法にて得られた 10 cm

�10 cm照射野でのTPR20,10から得られた値を使用し

た。CFは Fig. 1に示すように深さ 2.5 cm, 5.0 cm,

10.0 cm, 20.0 cmの4点を経由する2次関数にて近似

して使用した。左縦軸はCF、横軸はdepth (cm)を示

している。2次関数にて補間した結果は以下の式に

て示された。

y�0.00004x2�0.00065x�1.01367 (r2�0.9969). . .②

本論文では与えられた係数を上記②式で補間し、さ

らにより深い方向へ係数を拡張した。またステムお

よびケーブル効果は、ケーブルの設置が照射野内の

場合と照射野外の場合でケーブル長1 mあたり0.2%

の相違が検出されていたが、本測定における補正は

行わず、かつケーブル効果を最小限に抑えるために

照射野内に含まれるケーブルの長さは常に一定とし

た 5)。

2.2 Dcalcの計算

Khanにより解説されているLong SSD法における

DMUの計算は以下の式である 6)。

DMU�Dcalc�TMR(d, re) ·Sc(rc) ·Sp(re) · (f /f �)2·OAR(d) ·TF . .③

ここでDMU�Dcalcは1 MU照射した場合における線

量 (mGy)、TMR(d, re) は深さd、等価照射野 reにお

けるTMR、Sc(rc) はアイソセンターに投影された照

医学物理 第29巻 第2号

24

Fig. 2 Diagram of phantom set-up for measure-ments of TMR and absorbed dose.

Page 3: Long SSD 法における全身照射用 TMR TPS の計算精度

射野 rcにおけるガントリー散乱係数、Sp(re)は等価照

射野 reにおけるファントム散乱係数、f, f � は各々

SAD、ターゲット-Long SSD法における処方ポイン

ト間距離、OAR(d)は深さ dにおけるプロファイル、

TFはトレイファクターである。

TMR(d, 40�40)は治療装置のコミッショニング時

の測定データを使用し、Sc (40�40) ·Sp (40�40)はミ

ニファントム法により算出した 8)~ 12)。f, f �は各々

100 cm, 400 cm、OAR(d)およびTFは1.000とした。

得られたDcalcを上記2.1のDCF(�)、DCF(�)と比較し

た。

2.3 DCF(�)とDTPSの比較

当院で使用している TPSである Eclipse (Varian

Medical System, Palo Alto, CA)にてSTD: 4 mの距離

のDTPSを計算するために、30 cm�30 cm�39.5 cm

のSolid waterをSensation OPEN CT (Siemens AG,

Forchheim, Germany)にて撮影し、TPSへ転送した。

照射条件は、ガントリー角度 90度、コリメータ 45

度、500 MU、STD: 4 mとなるように配置し、ター

ゲットの depthを 2.5 cmから 29.5 cmまで 0.5 cm間

隔で計算した。ここで用いた線量計算アルゴリズム

はAAA13)とし、グリッドサイズは2.5 mmとした。

TPSにて計算されたDTPSを2.1にて得られたDCF(�)

と比較した。

3. 結果

3.1 TMRCF(�)、TMRCF(�)およびDCF(�)、DCF(�)の

比較

TMRCF(�)、TMRCF(�)およびTMRSAD、またその差

異をFig. 3に示す。左縦軸はTMR、右縦軸は各TMR

の差異 (TMRCF(�) or CF(�)�TMRSAD)/TMRSAD(%)、横

軸は depth (cm) を示している。TMRSADに比較し、

TMRCF(�)は�1.3%以内の差異であるが、TMRCF(�)は

深さの増加に伴い差異も増加し、最大�4.0%となっ

ている。

DCF(�)、DCF(�)の測定結果をFig. 4に示す。左縦軸

は吸収線量 (mGy/MU)、右縦軸は各吸収線量の差異

(DCF(�) or CF(�)�Dcalc)/Dcalc(%)、横軸はdepth (cm) を

示している。③式にて得られる D calcに比較し、

DCF(�)において最大�2.1%、DCF(�)において最大

�6.6%の差異が認められた。

3.2 DCF(�)とDTPSの比較結果

DCF(�)およびDTPS、またその差異をFig. 5に示す。

左縦軸は吸収線量 (mGy/MU)、右縦軸はTPSと測定

における吸収線量の差異(DCF(�)�DTPS)/DTPS(%)、横

軸は depth(cm)を示している。TPSにて得られる計

算結果に比較し、4 mでの測定結果は最大�1.6%の

差異であり、深さの増加に伴い差異が小さくなる傾

向が認められた。

Jpn. J. Med. Phys. Vol. 29 No. 2 (2009) 研究論文

25

Fig. 3 Comparison between TMRSAD, TMRCF(�) andTMRCF(�).

Fig. 4 Comparison between DCF(�)、DCF(�) and Dcalc.

Fig. 5 Comparison between DCF(�) and DTPS.

Page 4: Long SSD 法における全身照射用 TMR TPS の計算精度

4. 考察

TBIは骨髄移植および末梢血幹細胞移植前の前処

置として重要な役割を果たしている。さまざまな

TBIスケジュールが最適化のために提案され、それ

に伴い生存率の増加が達成されるとともに、長期的

な副作用の評価およびQOLが重要視されるように

なってきた。TBIによる線量の正確な把握は上記副

作用を予期する上で重要な項目である。

SAD法における TMR測定の幾何学的配置は SAD

にて40 cm�40 cmの照射野を十分に覆うことのでき

る大きな水ファントムが用いられ、その計測結果が

TPSに登録されている。しかし、TBI測定の幾何学

的配置では、4 m離れた位置での照射野が 160 cm�

160 cmとなり、その照射野を十分に覆うこのできる

水ファントムを配置することは困難である。その問

題を克服するため、Podgorsakら 5)によって提案さ

れた換算係数を補間して使用した。Podgorsakらの

換算係数は 20.0 cmより深い状況下において提案さ

れておらず、本論文では外挿することにより本係数

を拡張した。 Fig. 3に示すように、 TMRSADと

TMRCF(�)は深さにともない差異が変化するが、概ね

1%以内となっている。ここから外挿にて拡張した

Podgorsakの換算係数は有効であることがうかがえ

る。

Fig. 4に示した吸収線量の結果より、Podgorsakら

の換算係数を使用した場合、Dcalcと比較し、�2.0%

程度の差であることが確認された。①式にて電位計

で得られた指示値を吸収線量に変換したが、ここに

はND,w、kQの不確定要素が含まれている。ND,wは以

下の式で示すことが定義されている 7)。

ND,w�Nc ·kD,X

Ncは医用原子力技術研究振興財団より与えられたコ

バルト校正定数、kD,Xは標準測定法01で提示されて

いる校正定数比である。この kD,Xは各々の線量計と

使用する環境(鞘を有す水ファントムか否か)に依

存する。今回の測定において校正定数比は日常使用

している kD,X,�S1を使用した。この kD,X,�S1は防水鞘

が 1 mmの場合に用いる係数であり、本来水ファン

トム内に線量計を配置した場合には使用することが

できない。しかし標準測定法01ではファントムを水

としており、固体ファントムにおける kD,Xの使用は

述べられていない。一方で kD,Xと kD,X,�S1を用いた

ND,wの誤差は 0.1%であり、Solid Waterの kD,Xと水

の kD,Xが不変であれば今回の測定結果に影響を及ぼ

さない。

さらに kQは防水材アクリル樹脂鞘厚の有無 (none,

0.5 mm, 1.0 mm) とTPR20,10、使用するリファレンス

線量計の表として与えられ、このTPR20,10は照射野

10 cm�10 cmにて求められた値を使用してkQを求め

るように定義されている。ゆえに今回のような大き

な照射野の場合 10 cm�10 cmにて求められた kQを

使用することは誤りであるが、この論文で議論して

いる領域での吸収線量の深さ方向の傾きが校正条件

とほぼ同等であることから、この kQ (0.981) をそ

のまま適合させている。10 cm�10 cmの照射野を

40 cm�40 cmに拡張すると、ガントリーからの低エ

ネルギー光子の増加が避けられず、結果的に実効エ

ネルギーの低下が起こる 14)。実効エネルギーの低下

により kQは増加し、定量的な評価はできないもの

の、結果3.1で得られた�2.1%の差異はさらに小さ

くなる。

DTPSとDCF(�)の測定結果は概ね�1.5%以下であ

り、良い結果を示している。HuiらはCTを用いて

TBIの全身線量分布の評価をTLDにて行っており、

線量計算結果と吸収線量測定結果の差は測定精度

(5%) の範囲内に入る結果であったと報告してい

る 15)。放射線治療において、患者への投与線量の全

不確定度は 5%以内であり、これを達成するために

はファントム内の出力線量評価として2.5%以内、患

者への投与線量の計算として 4.2%以内が求められ

る 16)。上記結果よりファントム内の出力線量評価と

してTPSでの計算結果は2.5%以内を担保しており、

臨床にてTBIの線量を評価する性能を有している。

しかし、実際の全身照射の状況下では種々の補償体

や遮蔽体を使用することが多い 4,17)。これらの補償

体や遮蔽体を有効に活用した場合の計算精度は今回

の測定において確認していない。Huiらが頭頚部に

アクリルを用いた補償体を近接させ、線量分布の向

上を行わせた上でTLDでの測定結果を比較している

が 15)、TPSがPinnacleTM (Philips, Milpitas, CA)であ

りアルゴリズムも異なることからEclipseでの計算精

度の更なる確認が不可欠である。

医学物理 第29巻 第2号

26

Page 5: Long SSD 法における全身照射用 TMR TPS の計算精度

5. 結論

Long SSD法における測定において、以下の3点を

確認した。

1. TMRの測定において、Podgorsakらによって与え

られた換算係数を乗じた場合に、4 mにて測定し

たTMRと SADにて得られたTMRが�2.0%以内

に一致する。

2. Long SSD法における吸収線量の測定において、

Podgorsakらによって与えられた換算係数を乗じ

た場合に、4 mにて測定した吸収線量とSADにて

得られたTMRから計算した吸収線量が�2.5%以

内に一致する。

3. Long SSD法におけるTPSの線量計算において、

吸収線量の測定結果から線量計算に十分な精度

(�2.5%以内)を有する。

TBIは従来TPSを使用することなく線量の計算が

行われ、結果肺等のリスク臓器に照射された吸収線

量を正確に把握することが困難であった。しかし、

上記の測定結果から SADにおけるTMRが登録され

た現在のTPSにおいてもLong SSD法の線量計算に

十分な精度を有すことが確認された。しかし、ここ

では補償体や遮蔽体を挿入した場合におけるTPSの

計算精度が確認されたわけではなく、臨床応用の前

に更なる検証が不可欠である。

6. 謝辞

本研究にあたり当センターの安井清氏、山田茂樹

氏、番野仁司氏に測定方法の助言をいただいた。ま

た、文章構成および技術的助言を同センターの伊藤

未希氏、元新潟大学の富樫厚彦先生よりいただい

た。各先生方の有益な助言なしに本研究はなし得な

かった。ここに御礼申し上げる。

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Jpn. J. Med. Phys. Vol. 29 No. 2 (2009) 研究論文

27

Page 6: Long SSD 法における全身照射用 TMR TPS の計算精度

医学物理 第29巻 第2号

28

Measurements of TMR, Absorbed Dose using Long SSD TBI Dosimetryand Calculation Accuracy of Treatment Planning System

Atsushi FUKUDA*

*Department of Radiology, Shiga Medical Center for Children

Keywords: long SSD TBI dosimetry, calculation accuracy, TMR, absorbed dose

Abstract

Over the last 50 years, total body irradiation (TBI) has become widely used in conditioning regimens for

the treatment of hematological malignancies prior to bone marrow or peripheral blood stem cell transplanta-

tion. Many techniques and prescriptions have been proposed, and the use of a treatment planning system

(TPS) may be best in terms of preventing toxicity to normal tissues and insufficient low dose in bone marrow.

Since many measurement data in TPS can be applied at source axis distance (SAD) (1 m), absorbed dose at

long source surface distance (SSD) calculated by TPS must be verified prior to clinical use. The aim of this

study is to evaluate the difference between (1) TMR measured at long SSD (4 m) and TMR at SAD and (2) the

absorbed dose measured at long SSD and the absorbed dose calculated by TPS. TMR measured at long SSD

agreed with TMR at SAD within 2.0%, while absorbed dose measured at long SSD agreed with that calculated

by TPS within 2.5%. These verifications show that the CT-based treatment planning system of TBI can calcu-

late prescription MU within an acceptable tolerance.

Received September 16, 2008; revision accepted April 27, 2009