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Linked Open Data を用いた シビックテックプロジェクトの 透明性向上と協働促進
白松俊, 大囿忠親, 新谷虎松
名古屋工業大学 大学院工学研究科
2015年度 人工知能学会全国大会,2015-05-30
はじめに: 背景と目的 • 背景: 地域社会の持続可能性を脅かす諸問題
– e.g., 人口減少,少子高齢化, 行財政問題, 災害リスク, インフラ老朽化, etc. 幅広い層の協働が必要
• シビックテック (civic tech): IT技術者が市民や行政と協働して地域課題に取り組む – 技術者だけでは課題の背景文脈を把握できない – 市民や行政だけでは技術を充分に活用できない – 問題点: ICTとは無縁な人々の参画が不可欠だが,
活動内容を把握してもらうのが難しい
• 目的: 活動内容の透明性を向上させることで, より幅広い層との協働を促進する
シビックテック もしくはシビックテクノロジーとは • 「市民の技術」,地域課題解決のための技術 • 技術者との協働を通じて市民自身がICTを活用し, 公共サービス等に関する地域課題解決を行う – オープンデータを使ったサービスと親和性が高い – 活動例: 参加型の開発イベント (シビックハッカソン) の開催
他地域で開発・公開されたものを自地域へ導入・運用
• 有名なサービス事例 – Where Does My Money Go?「税金はどこへ行った?」
(Open Knowledge Foundationで開発) – FixMyStreet (英国 の非営利団体mySocietyで開発) – 5374.jp(Code for Kanazawaで開発)
本稿で対象とするプロジェクト • 本稿での焦点: シビックハッカソンにおける開発プロジェクト – ハッカソン (Hackathon): 数時間~数日の参加型開発イベント – シビックハッカソン: シビックテックの手段としてのハッカソン 地域課題を扱うシステムを,イベント参加者の協働で開発
どんなプロジェクトの透明性向上を図るのか
なぜシビックハッカソン? • 問題点: 成果物がその場限りで終わる場合も多い
– アイデアやコンセプトがもったいない – 短時間の試作なのでブラッシュアップが必要だが, 形成されたチームもその場限りになり,継続されない
• 目標とそのアプローチをLODとして記述 – 新たな協力者にプロジェクトが引き継がれる可能性を上げる – 引き継がれたプロジェクトの事例: 「すごい災害訓練DECO」
新たな協力者による プロジェクト継続
目標と アプローチの 透明性
透明性向上のためのLOD • シビックテックプロジェクトの活動内容を
LODで記述するには? – 社会課題の解決目標とそのアプローチを記述 – 本研究では部分目標の階層構造として記述することで
• どんな社会課題をどんな道筋で解決するのか • そのために今は何をしようとしているのか
に関する透明性向上を目指す
本研究のこれまで • 市民協働に必要な情報共有のために, 目標階層構造を記述するデータモデルを提案 [白松 13]
• Webアプリ「ゴオルシェア」の試作 [白松 14, Tossavainen 14]
協働促進に用いるLODとしての要件 1. 属人性: 取り組んでいる人や組織へのリンク
– 既存SNS (Facebook, Twitter) のアカウントのURIへ – 似た問題に取り組む人や組織を探しやすく
2. 地域性: 対象となる地域へのリンク – 地理情報LOD (GeoNames, GeoLOD) のURIへ – 周辺地域で似た問題に取り組む人を探しやすく
3. 具体化容易性: 具体的な部分目標への細分化 – 協力できそうな部分を探しやすく – 「総論賛成・各論反対」への対処
(4. 引用可能性: 出典がある場合はその記事へ)
4要件を満たすデータモデル
類似目標の探索
あらかじめ目標間の類似度計算により schema:isSimilarToでリンクされていた 類似目標が表示される
socia:AnnotationInfo
socia:Goal socia:Goal
socia:target socia:source
foaf:Agent
socia:annotator
socia:weight [0..1] dcterms:date
schema:isSimilarTo
類似度
シビックハッカソンでの試運用 Code for Nagoyaによる2回のシビックハッカソンで試運用 • 2014/10: 名駅地下街バリアフリーハッカソン
– 車椅子での地下街移動を支援するサービスを試作(参加者約30名) – 参加4チームによる4シナリオ(29目標) http://bit.ly/bfree-goal
• 2015/2: International OpenData Day 2015 in Nagoya – 名古屋市バスのデータを使ったサービスを試作(参加者約50名) – 参加7チームによる7シナリオ(25目標) http://bit.ly/citybus-goal
各ハッカソンでの入力方法 • 2014/10 バリアフリーハッカソン (2日間)
– ゴオルシェア使用法を教示する時間を確保 – 模造紙上に付箋で目標階層構造を作ってから チームのメンバー自身がゴオルシェアへ入力
• 2015/2 IODD (1日間) – 短時間のため,ゴオルシェア使用法を教示できず – 各チームの成果発表(5分間) の時に, ゴオルシェアに習熟した参加者1名が入力
入力された階層構造の違い バリアフリーハッカソン
(各チームメンバーが入力) IODD
(熟練者が発表を聞いて入力)
最上位ノードはハッカソンで与えられた目標
最も詳細: 13ノード
最少:1ノード
5分間の発表を聞いて 2階層,3ノード程度を入力 (例外) 入力者が
参加したチーム の部分木
(チーム毎のばらつき大) (ばらつきは小さいが 必要な文脈が落ちる)
実社会応用に向けた改善 • 教示の時間を充分にとらなくても入力できるUIへ改善
– ワークショップ等でよく使われる付箋のような直感的UI – 操作マニュアルや解説動画の整備も必要
• 類似目標の推薦だけでなく,スキルやリソースの相補性によるマッチングもサポート予定 – 新たな参加者の貢献可能性を 検討しやすく
(試作中のUI)
まとめと今後の展望 • 目的: シビックテックプロジェクトの目標と
アプローチをLOD化し,活動内容の透明性を向上 – 本稿では特にシビックハッカソンにフォーカス – 終了後にプロジェクトが引き継がれる可能性を上げる
• アプローチ: プロジェクトの目標階層構造を記述 – ゴオルシェアを2回のシビックハッカソンで試運用 – 使用法の教示あり/なしで運用,構造を比較
• 残された課題: イベントの限られた時間では 使用法を教示する時間を取らずに使えるUIが不可欠
• 今後の展望 – ワークショップ等で馴染み深い付箋ライクなUI – スキルやリソースの相補性による協働可能性マッチング