koto実験に用いる新たな 円筒型ガンマ線検出器...
TRANSCRIPT
KOTO実験に用いる新たな 円筒型ガンマ線検出器 Inner Barrelの開発
(株)日立製作所 日立事業所 豊田高士日本物理学会 2014年秋季大会 @佐賀大学 2014年9月20日(土)
1
目次*KOTO実験 *新たな円筒型ガンマ線検出器「Inner Barrel」 *Inner Barrel開発 ①波長変換ファイバーの光量測定 ②要求性能を満たすための対策 ーポリマーライトガイド ー波長変換ファイバーの最適な分配法 ③テストモジュールの製作と試験 *まとめ
2
�̄
- 非常に稀な崩壊(Br~2.4×10-11)
実験KL � ⇥0��̄・KOTO実験の目的: 崩壊の探索
- CP対称性を破る崩壊
標準理論の検証とNew Physicsの探索
:CKM行列の複素成分 �Br(KL � ⇤0⇥⇥̄) � �2-
3
- 崩壊分岐比の理論的不定性~2%
崩壊KL � ⇥0��̄*
実験*場所:J-PARC ハドロンホール
KLビームライン
Primary Proton Beam
Target
KL
detector4
検出器とシグナルイベントの同定方法
・KL→π0ννの終状態:π0由来の2γと2つのニュートリノ
�0KL
�
�
��̄
⇒「π0由来の2γ以外観測されない=シグナルイベント」5
Main Barrel
主な背景事象と横方向検出器
・主な背景事象 :KL→2π0(→4γ)の2γを見失う・Main Barrel(MB)の内側に新検出器「Inner Barrel」を追加
→検出効率をあげて、この背景事象を減らす(65%減)
Inner Barrel
�0KL
�0
γ
γ
γ
γ
×
×
6
ガンマ線検出器「Inner Barrel」 断面図
Main Barrel
Inner Barrel
~2m
●直径2m,長さ3m,厚さ16cm(5X0)の円筒形●鉛-シンチレータ積層型検出器
(鉛1mm厚+シンチレータ5mm厚)×25層
●全周を32個のモジュールで構成
~3m
~16cm
×32
●各モジュールごとに 波長変換ファイバー(WLSF)で読み出す
→各シンチレータの溝に埋め込み PMTまでシンチレーション光を導く
7
8
Inner Barrelのガンマ線検出原理
②シンチレーション光発生③波長変換④ファイバー内伝播→PMTへ
シンチ
鉛板
γ
①電子対生成e+ e-
*電子対生成せず光核反応が起こる →エネルギー損失小さい→不感事象につながる! γ
n p不感事象の原因の1つ
Inner Barrelに要求される性能*光核反応が起こるとエネルギー損失小さい →エネルギー閾値を0.5MeVに設定する
PMTから5m離れた地点で 5.0p.e./MeV以上の光量が必要
Inner BarrelPMT PMT
5m
⇒両側PMTで十分な獲得光電子数(5p.e./MeV)が必要*粒子の入射位置も測定するため、PMTは両読み
↓最大読み出し距離=5mのとき→光の減衰のため光量は最小
9
{
←ビーム上流 ビーム下流→
波長変換ファイバーの 光量測定
研究内容①
10
要求性能を保証するための検査
*Inner Barrelの光量は
・シンチレータの性能と ・波長変換ファイバーの性能
→波長変換ファイバーの性能にばらつきがある可能性→性能検査が必要
11
*大量の波長変換ファイバー(~70km)を使用
で決まる{
Inner Barrelに用いる波長変換ファイバー*St.Gobain社 BCF-92(φ1.5mm)
*発光量•減衰長にばらつき がある可能性
12
吸収•発光スペクトル
・PMTの感度に適した発光波長 ・長い光減衰長(>3.5m) → 光減衰小さい ・短い発光時間→ 良い時間分解能 (BCF-92 : 2.7 ns, Y11:8.8 ns)
特徴
→WLSFの5m地点での 光量測定法が必要
波長変換ファイバーの光量測定法
PMT①
Clock Generator
PMT②
ADCLED 電源
波長変換ファイバー5m
クリアファイバー
LED
PMT②:LEDの発光出力を測定→LEDの出力変動を補正PMT①:波長変換ファイバー(5m)からの発光を測定
13
測定時のセットアップ
14
LED
LED照射器断面 PMT②へ接続
LED照射器
PMT①接続部
クリア ファイバー
WLSF
波長変換ファイバーの光量評価法と測定精度
PMT①
PMT②
15
0 500 1000 1500 2000 2500 3000
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500 / ndf 2� 429.8 / 29
p0 0.001958± 1.185
p1 1.012± -17.96
/ ndf 2� 429.8 / 29
p0 0.001958± 1.185
p1 1.012± -17.96
Graph
PMT②の出力
PMT①の出力
*LEDの出力を変えたときのPMT①とPMT②の出力相関
*5m地点でのWLSFの相対光量PMT②の出力= PMT①の出力 で評価
*同一のWLSF繰り返し測定→測定精度~1.3%
波長変換ファイバーの光量測定結果
*各バッチごとにサンプリング測定(バッチ内のばらつき~5%)
●要求「5.0p.e./MeV@5m」を 満たさないWLSFも存在する
*使用するWLSF = 13000本(大量!)→152の製造バッチからなる
対策が必要
h_allEntries 152
Mean 5.242
RMS 0.9092
2 3 4 5 6 7 8 9 100
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
18000
20000
h_allEntries 152
Mean 5.242
RMS 0.9092
読み出し距離5 mでの獲得光電子数[p.e./MeV]2 3 6 7 84 5 9波
長変換ファイバーの長さ
[m]
8000
12000
4000
16000
20000
*1つのバッチをシンチレータに接着し、獲得光電子数を測定→相対光量を獲得光電子数に規格化
16
波長変換ファイバーの光量分布
要求性能を満たすための 対策
研究内容②
17
要求性能を満たすための対策
18
•対策①:光量の大きいWLSFのみを使用する
→要求性能5p.e./MeV@5mを満たさないWLSFも存在
問題点
•対策②:光量のばらつきを均一化し、全てのシンチが 要求を満たすようにWLSFを分配
*WLSFの5m地点での光量にばらつき
{
h_all_wPLGEntries 112Mean 5.608RMS 0.6696
2 3 4 5 6 7 80
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000 h_all_wPLGEntries 112Mean 5.608RMS 0.6696
h_allEntries 152Mean 5.227RMS 0.901125%
cut
use
# of photo electron @5m73 5 8642
Inner BarrelPMT
5.5m対策①:光量の大きいWLSFのみを使う
PLG
4m
length of WLSF[m]
19
PMT
*1.5 mのポリマーライトガイド(PLG)に継ぐ →WLSFの使用量25%減→光量の大きいWLSFのみを使う
ポリマーライトガイド
ポリマーライトガイド(PLG)の透過率
20
*同じ読み出し距離でPMTの出力を比較
3m
PMT
2m5m
PMT
: 90Sr WLSFのみ WLSF+ポリマーライトガイド
hADC_0Entries 33746Mean 579RMS 209.4
/ ndf 2� 53.46 / 71Constant 3.3± 338.7 Mean 2.4± 532.1 Sigma 4.7± 188.5
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 18000
50
100
150
200
250
300
350hADC_0
Entries 33746Mean 579RMS 209.4
/ ndf 2� 53.46 / 71Constant 3.3± 338.7 Mean 2.4± 532.1 Sigma 4.7± 188.5
hADC_0Entries 33746Mean 579RMS 209.4
/ ndf 2� 4.756 / 2Constant 19.2± 363 Mean 0.1± 167.1 Sigma 0.098± 3.014
hADC_0Entries 33746Mean 579RMS 209.4
/ ndf 2� 4.756 / 2Constant 19.2± 363 Mean 0.1± 167.1 Sigma 0.098± 3.014
ADC分布測定結果 peak-pedestal
[ADC count]
WLSFのみ 365±2.4WLSF+PLG 361±2.6
*透過率はWLSFの99±1%⇒ポリマーライトガイド問題ない
h_4.5_mean
Entries 30
Mean 5.553
RMS 0.1303
4 4.5 5 5.5 6 6.5 7 7.5 80
50
100
150
200
250
300
350
400
h_4.5_mean
Entries 30
Mean 5.553
RMS 0.1303
h_all_wPLG
Entries 112
Mean 5.568
RMS 0.6521
h_all_wPLG
Entries 112
Mean 5.568
RMS 0.6521
シンチレータの枚数h_all_wPLGEntries 112Mean 5.608RMS 0.6696
2 3 4 5 6 7 80
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000 h_all_wPLGEntries 112Mean 5.608RMS 0.6696
h_allEntries 152Mean 5.227RMS 0.9011
use
# of photo electron @5m73 5 8642
対策②:光量のばらつきを均一化
混ぜる
55 6 7 84
21
光量:大 光量:小
*光量大きい/小さいWLSFを交互に並べて光量を均一化
# of photo electron @5m
均一化前
均一化後
0 2 4 6 8 10 12 14 16 180
5
10
15
20
25
Graph
入射粒子光量が最小になる場合
⇒光量が最小になる場合を想定 →シンチレーション光の広がりを測定 →全出力に占める割合から算出
粒子の入射位置による光量の差
0 2 4 6 8 10 12 14 16
PMT
90Sr:2mmφコリメータ
*一本ずつ個別に読み出し →出力比を比較
*β線をfiber#9の真上に照射
fiber#
各W
LSFの出力比
[%]
18
fiber#9の 真上に線源
全出力にしめる各WLSFの出力の割合
22
*入射位置付近のWLSFの光量が 全体の出力に最も影響
5
10
15
20
25セットアップ
対策①&対策②をした場合の獲得光電子数
*光量が最小となる場合でも すべてのシンチレータで 5.3p.e./MeV以上
h_4.5_minEntries 30
Mean 5.427
RMS 0.1023
4.6 4.8 5 5.2 5.4 5.6 5.8 6 6.20
100
200
300
400
500
600
700 h_4.5_minEntries 30
Mean 5.427
RMS 0.1023h_5.5_minEntries 38Mean 5.055
RMS 0.03205
h_5.5_minEntries 38Mean 5.055
RMS 0.03205
800
読み出し距離5 mでの獲得光電子数[p.e./MeV]
シンチレータの枚数
光量が最小になる場合の 各シンチレータの獲得光電子数
無
5 5.2 5.4 5.6 5.84.8 6
800
ポリマーライトガイド有
23
→バッチ内でのばらつき~5% を考慮しても要求みたす
テストモジュールの 製作&性能試験へ
テストモジュールの 製作と性能試験
研究内容③
24
テストモジュールの製作シンチとWLSFの接着
25
手順①:シンチの溝に接着剤を塗布手順②:ファイバーを張り…↑ファイバー分配は最適化手順③:紫外線で接着剤を硬化↑溝に入る泡を取り除きながら
完成!生産速度~10枚/日
テストモジュールの製作
26
モジュール化*シンチ→反射剤→鉛板の順に積層•圧縮*ステンレスのバンドで縛り、一体化
27
テストモジュールの製作PMT接続面
WLSFとポリマーライトガイドの接続
ビーム上流側ビーム下流側
テストモジュールの性能試験目的①:光量の要求「5 p.e./MeV」を満たすか確認
*最長読み出し距離5mでの獲得光電子数の測定
28
目的②:モジュールの基本性能の評価
●hit位置の測定法 →両読みPMTの時間差から粒子のhit位置を測定 →物理解析において有用な情報
*モジュール中の光速*時間分解能
*モジュール中の光の減衰長hit位置の測定精度を評価
テストモジュールPMT① PMT②
性能試験のセットアップ*モジュールを上下からはさむようにトリガーシンチを設置
トリガーシンチ:幅 5 cmμ
→両者のヒットを要求して、宇宙線ミューオンが貫通するイベントを選択
WLSF
29
*PMT①,②の読み出し距離d1,d2を変えて各評価項目を測定
d1 d2
*PMTの出力はすべて500MHzのFlash ADCで記録
30
獲得光電子数の測定
● 1 p.e.あたりのADC値 ● MIPのエネルギー損失
を用いて、 1MeVのエネルギー損失あたりの 獲得光電子数を算出
要求5.0 p.e./MeVを満たす!
*d2 = 5 mとなる位置にトリガーカウンターを設置 →PMT②のADC出力分布からMIPピークのADC値を求める
MIPピーク
読み出し距離5mでのPMT②のADC分布
#eve
nt
[ADC count]5.6 ± 0.2 p.e./MeV0 2000 4000 800060000
100
200
300
400
モジュールの光の減衰長の評価*読み出し距離d1,d2を変えてPMT①,②での獲得光電子数Np.e.[p.e./MeV]を測定
短い成分λ1:59 ± 25cm 長い成分λ2:389 ± 13cm
でフィット
2成分の減衰長λ1,λ2を仮定
⇒
100 150 200 250 300 350 400 450 500
6
8
10
12
14
16
/ ndf 2� 15 / 12p0 6.245± 10.47 p1 25.19± 59.91 p2 0.801± 19.98 p3 13.41± 389.9
/ ndf 2� 15 / 12p0 6.245± 10.47 p1 25.19± 59.91 p2 0.801± 19.98 p3 13.41± 389.9
読み出し距離 d1, d2 [cm]
獲得光電子数
[p.e
./MeV
]
● PMT① ● PMT②
読み出し距離と獲得光電子数の相関
WLSF単体の測定結果 とほぼ同じ
Np.e.(x) = a1 � exp(� x
�1) + a2 � exp(� x
�2)
100 200 300 400 50068
10121416
31
モジュール中の光速の測定
32
-5 0 5 10 15 20 25-100
0
100
200
300
400 / ndf 2� 3.168 / 6p0 0.02072± 17.37 p1 0.2794± 2.12
/ ndf 2� 3.168 / 6p0 0.02072± 17.37 p1 0.2794± 2.12
Graph
読み出し距離の差
d2-d
1 [cm
]
PMT①とPMT②の読み出し時刻の差 [ns]
*PMT①と②の読み出し時刻の差 = モジュール中の光速 × (d2 - d1)
⇒一次関数でフィットしたときの 比例係数=モジュール中の光速
⇒ 読み出し距離d1,d2を変えて PMT①と②の読み出し時間 の差を測定
0-5 5 10 15 20 25-100
100
200
300
400
0
17.37 ± 0.02 cm/ns↑光速の約半分
読み出し距離と読み出し時間差の相関
時間分解能の評価*時間分解能σtは獲得光電子数に依存
150 200 250 300 350 400
250
300
350
400
450 / ndf 2� 11.23 / 15
p0 26.78± 4848
/ ndf 2� 11.23 / 15
p0 26.78± 4848
獲得光電子数[p.e.]
時間分解能
[ps]
● PMT① ● PMT②
150 200 250 300 350 400
250
300
350
400
450⇒ 読み出し距離d1,d2を変えて、 獲得光電子数と時間分解能 を測定⇒ 獲得光電子数N[p.e.]と 時間分解能σtの相関を
でフィットして評価
*Main Barrelの時間分解能より1.7倍良い→WLSF選定時の結果を再現
�t(N) =a�N
33
光電子数と時間分解能の相関
hit位置の測定精度の評価
100 150 200 250 300 3500
5
10
15
20
((17.37/2)*4.848/(sqrt([0])))*sqrt(1/(10.47*exp(-x/59.91)+19.98*exp(-x/389.9))+1/(10.47*exp(-(605-x)/59.91)+19.98*exp(-(605-x)/389.9)))
Edep = 1 MeV
Edep = 10 MeV
Edep = 100 MeVσ p
os [c
m]
100 150 200 250 3000
5
10
15
20
xpos [cm]
*hit位置xposの求め方: xpos = Cmod × (t1 - t2 + l)/2
Cmod:モジュール中の光速t1, t2:PMTの読み出し時刻
l:モジュール長さ
*hit位置の測定精度σpos
�pos =Cmod
��2
t1 + �2t2
2
0 x[cm]xpos 605
t1 t2
�t1,2 =a�
Np.e.(x)Edep
34
まとめ
35
• KOTO実験では背景事象を減らすために、鉛-シンチレータ積層型の検出器「Inner Barrel」を新たに追加する。
• Inner Barrelは、0.5MeV thresholdをかけるため、発光点から5m離れた点で5p.e/MeV以上の光量が必要。
• WLSFの光量測定システムを製作し、WLSFの光量のばらつきを評価した。 • 光量を満たさないWLSFが存在するが、要求をみたすため * 光量の大きい/小さいWLSFを交互に並べ、光量を均一化する * ポリマーライトガイドに継いで光量の大きいWLSFのみを使う対策をとる。
• テストモジュールを製作し、読み出し距離5mでの獲得光電子数を測定した。→要求を満たすことを確認した。
• モジュール中の光速、減衰長、時間分解能などの基本性能も評価した
謝辞
ー指導教官の山中卓さん、
ー村山理恵さん、外川学さん、Lim Geiyoubさん 他 KOTO Collaborationのみなさま
*本研究は大阪大学大学院理学研究科の博士前期課程 在籍時に行ったものであり、お世話になった
に感謝します。
36