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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 高校生のファストフード利用にかかわる要因(Related factors to fast food intake in high school students) 著者 Author(s) 加藤, 佳子 / 西田, 真紀子 掲載誌・巻号・ページ Citation 神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要,5(2):39-45 刊行日 Issue date 2012-03 資源タイプ Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 版区分 Resource Version publisher 権利 Rights DOI JaLCDOI 10.24546/81003902 URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81003902 PDF issue: 2020-09-20

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Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le

高校生のファストフード利用にかかわる要因(Related factors to fastfood intake in high school students)

著者Author(s) 加藤, 佳子 / 西田, 真紀子

掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要,5(2):39-45

刊行日Issue date 2012-03

資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI 10.24546/81003902

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81003902

PDF issue: 2020-09-20

− 38− − 39−- 1 -

1.はじめに 今日,ファストフードは若い世代を中心に多くの人から受け入れ

られている 1)~4)。そして,食のグローバル化に伴うファストフード

市場の拡大により,世界中で画一的な食べ物が安価に迅速に入手で

きるようになった。 しかしその一方で,複数の問題も生起している。特にファストフ

ードに含まれるトランス脂肪酸の量と,健康への影響は欧米を中心

に問題視されている 5),6)。また,ファストフードと身体的健康との関

連に加えて,精神的健康との関連 7) ~15),安全性の問題 16),17),経済シ

ステムへの影響などが危惧されている 16)。さらに,ファストフード

利用による食生活スタイルへの影響についても注目されており 18),19),

ファストフードの普及により地域固有の多様な食文化の継承にも危

機感がもたらされている 16)。そして,これらの問題を解決し,食の

多様性や伝統的な食文化を守り,食の価値を見直そうとする活動と

して,ファストフードに対するスローフード運動も展開されている20),21)。

以上のように,ファストフードのもたらす弊害が明らかにされ,

その問題を解決しようとする動きがあるにもかかわらず,ファスト

フードは世界中に広がり摂取されている。 これは,ファストフード産業が消費者のニーズや嗜好を十分に調

査し,消費者のニーズや嗜好に応じたサービスやマーケティングを

展開している結果であると考えられる 22),23)。 しかし,健康で豊かな食生活を営み,これを次世代に伝えていく

ためには,現代社会のニーズや嗜好を受けて企画されたサービスや

マーケティングに,食行動を無意識のうちに制御されていてはいけ

ない。消費者一人一人の食行動に何が影響しているかについて知り,

食行動を主体的に自己制御する必要がある 24)。 そこで,本研究ではファストフードの利用に関連している心理的

要因について,検討することを目的として研究を行った。具体的に

は,高校生を対象として次のような仮説をたて調査を行った(図 1)。ファストフードに対する肯定的イメージは,ファストフードの利用

を促進し,否定的イメージはファストフードの利用を抑制すると考

えられる。しかし,ファストフードに対する否定的な情報について

認知しながら,ファストフードを摂取する人が多いことを考えると,

肯定的なイメージがファストフードの利用に与える影響は,否定的

イメージがファストフードの利用に与える影響よりも強いと仮定で

神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要 研究論文 第 巻第 号

高校生のファストフード利用にかかわる要因 Related factors to fast food intake in high school students

加藤 佳子* 西田 真紀子**

Yoshiko KATO* Makiko NISHIDA**

Abstract : Although the negative effects of fast food consumption on health and eating style are well established, fast foods remain popular among the young. The objective of this study was to investigate to reveal some of the factors that affect fast food intake, and guiding possible eating education to promote self-regulating eating behavior. It was hypothesized that image of fast food affects fast food intake, and positive image promotes fast food intake and negative image restrains the intake. Moreover it was postulated that positive image is affected by the degree of fast food shop usage since young child, and negative image is affected by the consciousness and knowledge towards food. The relationship between fast food intake and subjective health was also examined. The subjects in this study were 198 high school students. Results demonstrated that subjects were more likely to be influenced by their preference for fast food than by any understanding of its negative effects. There were no relationships between eating fast food and subjective health. These results suggest that it would be beneficial when providing nutrition education to young people to focus on emotional elements, like preference formation through experience, not only on simply imparting knowledge. Key words : Fast food, high school students, positive image, negative image, eating behavior キーワード:ファストフード,高校生,肯定的イメージ,否定的イメージ,食行動

* 神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授 ** 九州女子大学講師

年 月 日 受付

年 月 日 受理*  神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授

** 九州女子大学講師 2011年9月30日 受付 2012年1月16日 受理( )

神戸大学大学院人間発達環境学研究科 研究紀要第5巻第2号 2012                

Bulletin of Graduate School of Human Development and Environment Kobe University, Vol.5 No.2 2012

高校生のファストフード利用にかかわる要因

Related factors to fast food intake in high school students

加藤 佳子*  西田 真紀子**

Yoshiko KATO*  Makiko NISHIDA**

研究論文

(211)

− 40− − 41−

- 2 -

過去および現在の

ファストフードの

利用頻度

食に対する

意識

ファストフードに対する

肯定的イメージ

不定愁訴

現在の

ファストフードの

利用頻度 ファストフードに対する

否定的イメージ

図 1 ファストフードの利用とファストフードに対するイメージおよび不定愁訴との関係を示すモデル

表 1 ファストフードに対するイメージ,食に対する意識および不定愁訴に関する質問項目

ファストフードに対する肯定的イメージ(α=.86) ファストフードに対する否定的イメージ(α=.92)1 おいしいと思う 1 健康的に良くない2 安いと思う 2 塩分が多い3 行きやすいところにある 3 カロリーの摂りすぎになる4 早くできあがるから待たなくて良い 4 脂肪分の摂りすぎになる5 話題性があり、食べてみたい商品がある 5 野菜があまりとれていない6 店の雰囲気が好き 6 栄養が偏っていると思う7 量が多くて満腹になる 「全く思わない」(1点)、「あまりそう思わない」(2点)8 その時の気分に合っている 「ややそう思う」(3点)、「とてもそう思う」(4点)

「全く思わない」(1点)、「あまりそう思わない」(2点)「ややそう思う」(3点)、「とてもそう思う」(4点)

食に対する不安(α=.91) 食品の表示に対する重視度1 食品の安全性に不安を感じる  馴染みのある食品表示(α=.67)2 食品添加物に不安を感じる 1 賞味期限3 偽装表示に不安を感じる 10 価格4 遺伝子組み換え食品に不安を感じる 11 内容量5 残留農薬に不安を感じる6 生活習慣病に不安を感じる 詳細な食品表示(α=.89)

「全く感じない」(1点)、「あまり感じない」(2点) 2 原産国「やや感じる」(3点)、「とても感じる」(4点) 3 製造者

4 原材料栄養情報に対する認知(α=.84) 5 食品添加物

1 塩分を摂りすぎると高血圧症などの病気になりやすい 6 遺伝子組み換え2 カロリーを摂りすぎると肥満症になる 7 栽培方法(無農薬、有機栽培など)3 脂肪分を摂りすぎると動脈硬化症などになりやすい 8 カロリー4 1日350gの野菜をとることがのぞましい 9 カロリー以外の栄養成分表示5 栄養が偏ると生活習慣病にかかりやすい 「全く重要視しない」(1点)、「あまり重要視しない」(2点)

「全く知らない」(1点)、「あまり知らない」(2点) 「やや重要視する」(3点)、「とても重要視する」(4点)「やや知っている」(3点)、「とても知っている」(4点)

食生活への配慮(α=.83) 不定愁訴(α=.82)1 食生活に気をつけている 1 体がだるいことがある2 規則ただしい生活リズムになるようにしている 2 目が疲れる3 1日3食、食べるようにしている 3 朝なかなか起きられない4 間食をしないようにしている 4 立ちくらみがすることがある5 栄養バランスがとれるようにしている 5 疲れやすい6 食べ物の素材にこだわるようにしている 6 イライラすることがある7 薄味にするようにしている 7 肩が凝ることがある8 好き嫌いをしないようにしている 8 気が散ることがある9 食べすぎないようにしている 9 頭が痛くなることがある

10 あまり外食をしないようにしている 10 おなかが痛くなることがある「全く気をつけていない」(1点)、「あまり気をつけていない」(2点) 「全く思わない」(1点)、「あまりそう思わない」(2点)「やや気をつけている」(3点)、「とても気をつけている」(4点) 「ややそう思う」(3点)、「とてもそう思う」(4点)

(212)

− 40− − 41−

- 3 -

きる。さらに,肯定的イメージに影響する要因には幼いころからの

ファストフード店の利用頻度が,否定的イメージには食に対する意

識の高さが影響していると仮定した。あわせて,ファストフードの

利用が実際に健康状態に影響しているかを確認するために,不定愁

訴との関連についても検討した。

2.方 法 (1)調査対象者と調査時期

F 県内の高校 1 年生 198 名(男性 81 名,女性 117 名:居住形態自

宅 100%)を分析対象とした。調査時期は 2009 年 6 月から 9 月であ

った。

(2)測定尺度(表1)

1) ファストフードの利用頻度:現在のファストフードの利用頻度に

ついて,「全く利用しない」(1 点)から「とてもよく利用する」(4 点)ま

での4段階評定で回答させた。そして,ファストフードを具体的に

どのくらい利用するかについて,週または月あたりの利用回数を回

答させた。

2) ファストフードに対するイメージ:F県内の大学の家政学部に所

属する大学4年生12名を対象に,ファストフードに対するイメージ

について自由記述で回答させ,得られた意見文を参考に尺度項目の

検討を行った。最終的に,ファストフードに関する肯定的イメージ

8項目,否定的イメージ6項目を採用し4段階評定で回答させた。

3) 過去および現在のファストフード店の利用頻度:本人の記憶によ

る小学生,中学生,高校生時(現在)のファストフード店の利用頻度(以

下ファストフード店の利用頻度とする。) について,「全く利用しな

い」(1点)から「とてもよく利用する」(4点)までの4段階評定で回答さ

せた。

4) 食に対する意識:食に対する不安(6 項目),栄養情報に対する認

知(5項目),食生活への配慮(10項目),食品の表示に対する重視度(11

項目)などの質問について4段階評定で回答させた。

5) 不定愁訴:上西 25)が行った調査で利用された不定愁訴を測定する

17項目のうち,一定の頻度でみられる上位10項目の質問に対して4

段階評定で回答させた。

(3)分析方法

ファストフードに対するイメージ,食に対する意識,不定愁訴に

ついて要因ごとに主成分分析を行い,尺度構成を確認したうえで,

クロンバックα係数を算出し信頼性の検討を行った。要因ごとの平

均値を算出し,t 検定により性差の検討を行った後,ピアソンの積

率相関係数を算出したうえで,重回帰分析を行った。分析は SPSS

Ver.16.0で行った。

3. 結 果

(1)尺度の検討

ファストフードに対する肯定的,否定的イメージ,食生活への配

慮,食に対する不安,栄養情報に対する認知,不定愁訴についてた

ずねる質問項目それぞれについて主成分分析を行ったところ,第一

主成分の寄与率は 38.12%以上で第二主成分の寄与率よりも極めて

高く,因子負荷量も. 46以上で,一次元構造が認められた。

食品表示への重視度についてたずねた質問項目について主成分分

析を行ったところ,第一主成分の寄与率は43.53%、第二主成分の寄

与率は14.94%であった。しかし,固有値1以上を基準としたとき二

つの主成分が抽出されることと,因子負荷量.40以上の質問項目を採

用した場合を考慮すると,二次元構造としてとらえるほうが妥当で

あった。第一主成分は「原産国名」,「製造者」,「原材料」,「食品添加

物」など食品に関する詳細な表示内容に関するものであったので「詳

細な食品表示」と命名した。第二主成分は,「賞味期限」,「価格」,「内

容量」など一般的によく注目される食品表示の内容であったので,

「馴染みのある食品表示」と命名した。因子負荷量はそれぞれ.60以上

と.52以上であった。

尺度ごとにクロンバックα係数を算出したところ,「馴染みのある

食品表示」では.67 とやや低めの値となった。これは,項目数が 3

項目と少なめであったためであると考えられる。そのほかの項目で

は、82 以上で高い値が示された。

以上の結果から一定の妥当性と信頼性が確認されたので,それぞ

れの尺度項目の合計平均点を算出し分析を進めた。

(2) 男女別のファストフードの利用頻度,ファストフードに対する

イメージ,ファストフード店の利用頻度,食に対する意識および不

定愁訴の得点の比較

各要因について男女差を比較するために平均値を算出し,t 検定

を行った(表2)。現在のファストフードの利用頻度および具体的なひ

と月当たりのファストフードの利用回数については,男女差はみら

れなかった。また,利用頻度別人数分布を図2に示した。

性別 M SD t 値 有意差

男性 2.75 0.86

女性 2.79 0.60

男性 4.09 5.24

女性 3.02 2.39

男性 2.80 0.64

女性 2.96 0.49

男性 2.85 0.73

女性 3.21 0.56

男性 2.21 0.77

女性 2.53 0.72

男性 2.63 0.81

女性 3.09 0.68

男性 2.49 0.91

女性 2.77 0.81

男性 2.24 0.84

女性 2.52 0.61

男性 2.56 0.81

女性 2.96 0.58

男性 2.45 0.63

女性 2.54 0.47

男性 2.81 0.66

女性 3.04 0.47

男性 2.22 0.75

女性 2.42 0.55

男性 2.54 0.65

女性 2.76 0.49

ひと月当たりのファストフードの利用頻度

1.72 n.s.

ファストフード店の利用頻度

**

***

2.91

4.14

*

***

**

*

*

注) 利用頻度:ファストフードの利用頻度,イメージ:ファストフードに対するイメージ,肯定的:肯定的イメージ,否定的:否定的イメージ,不安感:食に対する不安,栄養情報:栄養情報に対する認知,配慮:食生活への配慮,馴染み:馴染みのある食品表示,詳細:詳細な食品表示

食に対する意識

不定愁訴

配慮

不安感

栄養情報

馴染み

詳細

2.56

1.04

2.50

3.78

2.77

2.11

*

n.s.

表2 男女別ファストフードの利用頻度,ファストフードに対するイメージ,ファストフード店の利用頻度,食に対する意識および不定愁訴との関連

項目

2.25

1.88

3.80

0.39

n.s.

***

n.s.

肯定的

否定的

小学生時

中学生時

高校生時

利用頻度

イメージ

(213)

− 42− − 43−

- 4 -

ファストフード店の利用頻度は,小学生時から高校生時のすべて

の段階において女性のほうが高かった。ファストフードに対する肯

定的なイメージについては,男女で有意な差はみられなかった。否

定的イメージの程度は,男性よりも女性のほうが強かった。 食に対する意識についてみてみると,食生活への配慮では男女差

がみられなかった。しかし,そのほかの項目については,男性より

も女性の平均値のほうが高かった。不定愁訴の程度も,男性よりも

女性のほうが高かった。 (3) 男女別ファストフードの利用頻度,ファストフードに対するイ

メージ,ファストフード店の利用頻度,食に対する意識および不定

愁訴との間の関係 男女別にファストフードの利用頻度,ファストフードに対するイ

メージ,ファストフード店の利用頻度,食に対する意識および不定

愁訴との間の相関係数を算出し,その結果を表3に示した。男女と

もファストフードの利用頻度は,肯定的イメージとは関連していた

が,否定的イメージとは関連していなかった。また,ファストフー

ドに対する肯定的イメージは,男性では,中学生時,高校生時のフ

ァストフード店の利用頻度と正の関連があった。しかし,女性では

どの時期においても,全く関連がみられなかった。ファストフード

に対する否定的イメージは,男女とも食生活に対する意識すべての

項目と正の相関関係がみられた。不定愁訴とファストフードの利用

頻度との間には,相関関係がみられなかった。図1に示したモデル

に従って,重回帰分析を行い,その結果を表4に示した。 はじめに,ファストフードの利用に影響している要因についてみ

てみる。男女ともファストフードに対する肯定的イメージは,利用

頻度に影響していたが否定的イメージは影響していなかった。 一方,男性では,ファストフード店の利用頻度は,ファストフー

ドの利用頻度に影響していないが,女性では高校生時のファストフ

ード店の利用が影響しており男女で異なった結果が得られた。また,

男性では食生活に対する不安感がファストフードの利用に影響して

いた。 イメージについてみてみると,女性では今回測定したどの項目も

ファストフードに対するイメージに影響していなかった。しかし,

男性では高校生時のファストフード店の利用頻度と食生活への配慮

が肯定的イメージに影響しており,馴染みのある食品表示への重視

度と,詳細な食品表示への重視度が否定的イメージに影響していた。 さらに,不定愁訴との関連についてみてみると,ファストフードの

利用は不定愁訴の程度に影響していなかった。その一方で,女性で

は高校生時のファストフード店の利用頻度が不定愁訴に影響してい

た。

表3  男女別ファストフードの利用頻度,ファストフードに対するイメージ,ファストフード店の利用頻度,食に対する意識および不定愁訴との間の相関係数

1.00 .42 *** .00 n.s. .16 n.s. .27 * .41 *** .07 n.s. -.11 n.s. -.09 n.s. -.13 n.s. .03 n.s. .07 n.s.

肯定的 .20 * 1.00 .09 n.s. .09 n.s. .30 ** .46 *** .13 n.s. .17 n.s. .11 n.s. .21 n.s. .24 * .21 n.s.

否定的 -.07 n.s. .22 * 1.00 -.04 n.s. .15 n.s. -.02 n.s. .35 ** .35 ** .27 * .61 *** .53 *** .15 n.s.

小学生時 .08 n.s. .06 n.s. -.17 n.s. 1.00 .37 ** .33 ** .11 n.s. -.11 n.s. -.18 * .16 n.s. .00 n.s. .08 n.s.

中学生時 .28 ** .11 n.s. -.15 n.s. .34 *** 1.00 .67 *** .06 n.s. -.01 n.s. -.22 n.s. .14 n.s. -.07 n.s. .03 n.s.

高校生時 .48 *** -.02 n.s. -.25 ** .35 *** .55 *** 1.00 -.01 n.s. -.03 n.s. -.20 n.s. .06 n.s. -.03 n.s. .15 n.s.

不安感 -.15 n.s. .10 n.s. .27 ** -.07 n.s. -.27 ** -.38 *** 1.00 .45 *** .40 *** .54 *** .56 *** .45 ***

栄養情報 -.02 n.s. .15 n.s. .25 ** -.12 n.s. -.18 n.s. -.26 ** .26 ** 1.00 .23 * .47 *** .39 *** .46 ***

配慮 -.23 * .03 n.s. .19 * -.08 n.s. -.17 n.s. -.27 ** .12 n.s. .29 ** 1.00 .42 *** .53 *** .13 n.s.

馴染み -.03 n.s. .14 n.s. .30 ** -.04 n.s. -.17 n.s. -.28 ** .27 ** .31 ** .27 ** 1.00 .64 *** .49 ***

詳細 -.10 n.s. .10 n.s. .29 ** -.14 n.s. -.22 * -.22 * .49 *** .15 n.s. .29 ** .51 *** 1.00 .33 **

.07 n.s. .00 n.s. .00 n.s. .12 n.s. -.02 n.s. .17 n.s. .10 n.s. .05 n.s. -.15 n.s. -.13 n.s. -.08 n.s. 1.00

*:p<.05,**:p<.01,***:p<.001

上段:男性,下段:女性

不定愁訴

食に対する意識

不定愁訴

ファストフード店の利用頻度 食に対する意識

不安感 栄養情報 配慮 馴染み 詳細中学生時 高校生時否定的肯定的利用頻度

利用頻度

イメージ

小学生時

イメージ

ファストフード店の利用頻度

(214)

− 42− − 43−

- 5 -

.05 n.s. -.04 n.s.

肯定的 .41 ** .17 * .00 n.s. .00 n.s.

否定的 .15 n.s. -.02 n.s. -.18 n.s. .05 n.s.

小学生時 .06 n.s. .05 n.s. -.18 n.s. -.10 n.s. .02 n.s. -.11 n.s. -.02 n.s. .08 n.s.

中学生時 .25 n.s. .17 n.s. .24 n.s. .03 n.s. -.02 n.s. .02 n.s. -.21 n.s. -.18 n.s.

高校生時 .42 ** -.05 n.s. -.18 n.s. -.08 n.s. .19 n.s. .52 *** .18 n.s. .29 *

不安感 -.06 n.s. .05 n.s. -.04 n.s. .12 n.s. .27 * .05 n.s. .33 * .21 n.s.

栄養情報 .11 n.s. .15 n.s. .03 n.s. .12 n.s. -.20 n.s. .09 n.s. .20 n.s. .12 n.s.

配慮 .35 * -.05 n.s. -.09 n.s. .04 n.s. -.08 n.s. -.14 n.s. -.10 n.s. -.13 n.s.

馴染み -.17 n.s. .09 n.s. .46 ** .15 n.s. -.29 n.s. .13 n.s. .39 * -.09 n.s.

詳細 .05 n.s. .06 n.s. .31 * .09 n.s. .05 n.s. -.08 n.s. -.14 n.s. -.09 n.s.

.29 .00 .40 .11 .25 .20 .18 .03

*:p<.05,**:p<.01,***:p<.001

表4 ファストフード利用にかかわる要因に関する重回帰分析結果

肯定的 否定的

イメージ利用頻度 不定愁訴

⊿R2

食に対する意識

男性 女性男性 女性

利用頻度

イメージ

ファストフード店の利用頻度

女性男性男性 女性

4. 考察 本研究の目的は,ファストフードの利用に関連している心理的要

因について検討することであった。 仮説通りファストフードに対する肯定的なイメージは,ファスト

フードの利用に影響していたが,否定的なイメージはファストフー

ドの利用に影響していなかった。つまり,ファストフードに対する

肯定的イメージは,ファストフードの利用を促進していると予測で

きるが,ファストフードに対する否定的なイメージは,ファストフ

ードの利用の抑制要因として機能していない可能性が示された。 このことは,ファストフードの弊害に関する情報が多々報じられ

ながら,若年層を中心にファストフードがよく摂取されている背後

にある心的過程の一端を説明するものとしてとらえることができる。 そして,男性ではファストフード店の利用はファストフードに対す

る肯定的イメージに影響しており,ファストフード店に出入りする

ことが,ファストフードに対するイメージの肯定につながることが

示された。しかし,仮説とは異なり小学生時からファストフード店

に出入りすることは,かならずしもファストフードに対するイメー

ジの肯定につながらないことが確認された。本研究では回顧調査の

限界を考慮し,小学生時以降に関する調査を行ったが,これに対し

て,田中らは女子大学生を対象とした研究で幼稚園以前のハンバー

ガーの食体験時期がファストフードへの嗜好形成に影響しているこ

とを明らかにしている 4)。 最近では,ファストフード産業のマーケティング戦略として,携

帯電話を通じた割引や無料クーポンの配布,店内にインターネット

が利用できるエリアを設置するなど若年層の顧客獲得を目的とした

サービスも展開されている。ファストフードに対する肯定的イメー

ジの形成には,このような新たに展開されているマーケティング戦

略の影響についてもあわせて検討する必要がある。 さらに,ファストフードに対する否定的イメージは,男性では予

想どおり食に対する意識が影響していた。一方,女性では予測した

関連はみられなかった。しかし,相関係数をみると,男女ともで否

定的なイメージは,食に対する意識のすべての項目と関連していた。

つまり,ファストフードに対する態度を検討する上では,食に対す

る意識についても関連要因として視野に含める必要がある。 そして,肯定的イメージはファストフードの利用頻度に影響する

が,否定的イメージは直接ファストフードの利用頻度に影響してい

なかったことと併せて考えると,たとえ,栄養や安全に対する知識

がありファストフードに対して強い否定的イメージを持っていたと

しても,栄養や安全性が問題視されているファストフードの利用の

抑制にはつながらない可能性がある。これまでの研究でも高年層の

食行動が知識などの認知的要素の影響を受けるのに対して,若年層

の食行動は嗜好など感情的な要素に影響されていることが明らかに

されており 26),若年層では特に今回明らかになったような傾向が強

いと考えられる。 また,ファストフードの摂取と健康状態との関連が深刻視されて

いるアメリカにおいても,若年層の間ではファストフードが健康的

ではないと認識している程度は,ファストフードの利用頻度と関連

がなく,知識獲得重視の栄養教育が有効に機能していないことが指

摘されている 27)。今回の調査でファストフードの利用に直接影響し

ていたファストフードに対する肯定的イメージを測る項目を見てみ

てみると,ファストフードの味に対する評価に加えて,店の雰囲気

や話題性など環境や生活文化に関わる要因もあげられていた。環境

(215)

− 44− − 45−

- 6 -

に対する感覚や生活文化が体験を通して獲得されるものであるとす

ると,若年層に対する食育には,栄養や安全に関する知識の獲得な

ど認知的要素だけでは十分ではない可能性がある。体験をとおして

食に対する嗜好などの感情的な要素を育むことに注目し,これを食

育実践につなげる試みが必要であると考える。例えば,フランスで

は食育政策の一環として,料理の価値や味および栄養の両面で質の

高い食べ物について教える味の教育が展開されており,日本におい

ても同様の教育が取り組まれている 28),29)。 今回の調査では,ファストフードの利用頻度と不定愁訴との間に

は,有意な関係は見られなかった。しかし,ファストフードの摂取

はエネルギーや塩分の過剰摂取と関連し,健康状態に影響をもたら

すことが危惧されている。そして,これまでの研究でもファストフ

ードの摂取頻度と自覚的健康度の関係が報告されている 4)。今回の

分析対象者のファストフードの利用回数は,ひと月当たり平均が,

男性で4.09回,女性で3.02回であり,この程度の摂取量では,直接

健康への影響はないものと考えられる。しかし,本調査対象者の中

にも、毎日のようにファストフードを摂取していると回答した者も

おり,数は少ないがファストフードを常習的に摂取している者も存

在している。この傾向は岡野らの研究にも見られ 3),食生活の洋風

化や簡便化など食環境の変化によっては,将来常習的にファストフ

ードを摂取する者が増加する可能性がある。実際ファストフード店

が身近にあり,頻繁にファストフードが摂取されているアメリカで

は,ファストフードの摂取量と健康への影響との関連について報告

されている 30)。日本においても,ファストフードが多くの者に日常

的に摂取されるようになればファストフードの摂取量に由来した健

康の問題が広がることが危惧される。 本研究により,ファストフードの栄養,安全,食生活等への影響

が問題視されながらファストフードへの嗜好が高く,よく利用され

ているといった矛盾した食行動の背後にある心理的要因の関係を示

すことができた。 その一方で,今回の調査では,予測とは異なった結果がいくつか

得られた。例えば,男性では食生活への配慮の程度がファストフー

ドの肯定的イメージに影響していることなどである。今後の課題と

して,このような仮説とは異なった結果について検討することで,

より詳細に人の食行動について明らかにすることができると考える。

また,今回の調査では,ファストフードの利用頻度が健康状態に与

える影響について併せて検討したが,先にも述べたようにファスト

フードの普及による食生活スタイルへの影響も問題視されており,

今後はこの点についても検討する必要があると考える。なぜならば,

若年層において直接ファストフードの摂取が健康に影響を与えなか

ったとしても,ファストフードが普及する中で定着した簡便化,洋

風化した食生活スタイルの積み重ねが,将来にわたって心身の健康

に影響を及ぼす可能性も考えられるからである。 さらに,調査対象者の運動状況など食行動に影響があると考えら

れるそのほかの要因についても調査するとともに,より広い対象者

について調査し一般化できる情報を得ることが求められる。 最後に,男性より女性のほうが食に対する不安,栄養情報に対す

る認知,食品表示に対する重視度の程度が高かった。調査対象であ

る高校生は家庭科男女共修の世代であり,男女ともに学校教育にお

いて食に対する教育がなされているにもかかわらず,男女間で食に

関する意識に差が生じる結果となった。この背景として,日本に根

強く残る伝統的性役割観やダイエット志向の強さから生じる食への

こだわりなどジェンダースキームにかかわる要因との関連が考えら

れる。そこで,食行動とジェンダーとの関連について検討すること

で,さらに健康教育に有効な知見を得ることができると考える。 謝辞 本調査を行うにあたって,ご協力くださいました小池早紀さんに

深く感謝いたします。 引用文献 1) 鈴木秀男,宮田知明.サービス・クオリティとロイヤリティの

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