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KIZUKU 2009.03.04VOL.33NO.1 1 平成20年度後期ゼミナールBで「版築」による小屋を建 てることにした。版築とは型枠を組んで、その中に土を入 れ締め固めて壁を造る、いわゆる壁式構造の建造物のこと である。屋根は軽量な材料で造ることとした。建築物の規 模にもよるが壁の厚さは 35 ~ 100cm ほどにもなる。土は 質量で砂と粘土の比が 6 : 4 ~ 8 : 2 で適量な水を含まぜる ことによってうまく締め固め出来るとされている。更にこ の土の中に消石灰やニガリを混入することで、より良い強 度を有する版築が出来上がる。セメントは環境を考える場 合は遠慮したい。ただ、この版築を建造するに当って、締 め固めるときの作業がはなはだきつい。タコと称する木の 塊の左右に柄を付け、それを持ってドスンドスンとふりお ろす作業が大変なのである。 版築工法は大変古い歴史を有し、それによって建造され た建造物は世界ではかなり知られている。古くは万里の長 城の一部、アフガニスタン、チベット、ラオスなどでは施 設建設が行われている。ブータンでは農家などの家屋に多 用される。構造としては、建物自体は 2 階か 3 階建てで、 地階から 2 階の下層階を版築で造る。日本では法隆寺、竜 安寺、熱田神社の土塀(信長塀)などがそれに当る。最近で は愛知県常滑市にあるINAXの土・どろんこ館(博物館)が 日本で一番規模の大きな版築建築物として注目を浴びてい る。大学などの研究室でも幾つかこの工法で建物を造り、 現在社会的に深刻になっている地球温暖化などの環境問題 の解決策の一つと位置づけて版築を研究し、低層建物の間 仕切壁や、衣裳壁など、デザイン的な使い方をしていると ころさえ見かけられる。版築の材料である土が持つ適度な 調湿・調温機能から、その有効性を見直されている。 さて、今回の版築であるが、ゼミナール B は 3 年後期火 曜日 5 時限に設置してあるから開始時間は 16 時 20 分であ り、それまでは他の授業があるため出席不可能とのことで あった。この時期は日が落ちるのが早く仕事にならない。 やむを得ず、出入りの業者に助っ人を頼むこととし作業に 取り掛かった次第である。遣り方、型枠工事、土の混合、 土の型枠への投入、締め固めと、出入りの業者もこういう 仕事は初めてだということで、当初予定した日数より若干 日を経て出来上がった。残念なことに小屋の周りが公園の 一角のようなところであったから写真で示すように一見公 衆便所のような構造物になってしまった。まあ、何はとも あれ始めての版築にしては満足のいくものであり一人悦に 入っている。 小生はかねがね「ものつくり」を主体とした授業に魅力 を感じている。実際に建築物を建ててみてそこから学ぶも のは非常に多くあると考えており、授業の科目数をやたら 多くしても限られた教員でその科目を教えるのは大変であ る。予習は絶対に欠かせないし、時間の配分を考えて講義 しないとノルマがこなせないし、おろそかな授業になりか ねない。講義内容がつまらないと授業中の学生の態度はど うなるかは予想がつく。いくらこの科目は大事であること を力説しても興味のない科目には耳を傾けてくれない。 生産工学部は産業界に最も近いところに位置し、生産す る学部であるから、難しいことを教えるよりは実践から教 えることのほうが学生も自ら手を動かし、体を動かすため に、講堂で講義を受けるようなわけにはいかない。他の課 題の内職や、机に付して眠るわけにも行かない。携帯電話 でメールやゲームをやっているわけにも行かない。作業を しているか、体を休ませながらも皆がやっている作業に参 加していなければならない。 更に講義を時々挟みながらの「ものつくり」ならば、か なりの学生は興味を持つものと思う。ただ、この方針で授 業を実施する最大の難関はおそらく準備に時間が掛かるこ とと予算が多くかかることであろう。その辺りをうまくク リヤーして今後の教育を是非考えたいものである。 (教授 地盤工学) KIZUKU 2009.03.04VOL.33NO.1 日本大学生産工学部 巻頭言 版 築 川 村 政 史 写真 版築工法により建造した小屋

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Page 1: KIZUKU - Nihon University...KIZUKU 2009.03.04VOL.33NO.1 1 平成20年度後期ゼミナールBで「版築」による小屋を建 てることにした。版築とは型枠を組んで、その中に土を入

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平成20年度後期ゼミナールBで「版築」による小屋を建てることにした。版築とは型枠を組んで、その中に土を入れ締め固めて壁を造る、いわゆる壁式構造の建造物のことである。屋根は軽量な材料で造ることとした。建築物の規模にもよるが壁の厚さは35~100cmほどにもなる。土は質量で砂と粘土の比が6:4~8:2で適量な水を含まぜることによってうまく締め固め出来るとされている。更にこの土の中に消石灰やニガリを混入することで、より良い強度を有する版築が出来上がる。セメントは環境を考える場合は遠慮したい。ただ、この版築を建造するに当って、締め固めるときの作業がはなはだきつい。タコと称する木の塊の左右に柄を付け、それを持ってドスンドスンとふりおろす作業が大変なのである。版築工法は大変古い歴史を有し、それによって建造され

た建造物は世界ではかなり知られている。古くは万里の長城の一部、アフガニスタン、チベット、ラオスなどでは施設建設が行われている。ブータンでは農家などの家屋に多用される。構造としては、建物自体は2階か3階建てで、地階から2階の下層階を版築で造る。日本では法隆寺、竜安寺、熱田神社の土塀(信長塀)などがそれに当る。最近では愛知県常滑市にあるINAXの土・どろんこ館(博物館)が日本で一番規模の大きな版築建築物として注目を浴びている。大学などの研究室でも幾つかこの工法で建物を造り、現在社会的に深刻になっている地球温暖化などの環境問題の解決策の一つと位置づけて版築を研究し、低層建物の間仕切壁や、衣裳壁など、デザイン的な使い方をしているところさえ見かけられる。版築の材料である土が持つ適度な調湿・調温機能から、その有効性を見直されている。さて、今回の版築であるが、ゼミナールBは3年後期火

曜日5時限に設置してあるから開始時間は16時20分であり、それまでは他の授業があるため出席不可能とのことであった。この時期は日が落ちるのが早く仕事にならない。やむを得ず、出入りの業者に助っ人を頼むこととし作業に取り掛かった次第である。遣り方、型枠工事、土の混合、土の型枠への投入、締め固めと、出入りの業者もこういう仕事は初めてだということで、当初予定した日数より若干日を経て出来上がった。残念なことに小屋の周りが公園の一角のようなところであったから写真で示すように一見公衆便所のような構造物になってしまった。まあ、何はとも

あれ始めての版築にしては満足のいくものであり一人悦に入っている。小生はかねがね「ものつくり」を主体とした授業に魅力

を感じている。実際に建築物を建ててみてそこから学ぶものは非常に多くあると考えており、授業の科目数をやたら多くしても限られた教員でその科目を教えるのは大変である。予習は絶対に欠かせないし、時間の配分を考えて講義しないとノルマがこなせないし、おろそかな授業になりかねない。講義内容がつまらないと授業中の学生の態度はどうなるかは予想がつく。いくらこの科目は大事であることを力説しても興味のない科目には耳を傾けてくれない。生産工学部は産業界に最も近いところに位置し、生産す

る学部であるから、難しいことを教えるよりは実践から教えることのほうが学生も自ら手を動かし、体を動かすために、講堂で講義を受けるようなわけにはいかない。他の課題の内職や、机に付して眠るわけにも行かない。携帯電話でメールやゲームをやっているわけにも行かない。作業をしているか、体を休ませながらも皆がやっている作業に参加していなければならない。更に講義を時々挟みながらの「ものつくり」ならば、か

なりの学生は興味を持つものと思う。ただ、この方針で授業を実施する最大の難関はおそらく準備に時間が掛かることと予算が多くかかることであろう。その辺りをうまくクリヤーして今後の教育を是非考えたいものである。

(教授 地盤工学)

築K I Z U KU

2009.03.04VOL.33NO.1日 本大学生産工学部建 築 工 学 科 教 室

巻頭言版 築

川 村 政 史

写真 版築工法により建造した小屋

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信頼性理論に基づく高層免震建築物の構造パラメータ推定に関する研究(耐震性能と耐風性能の相反性への対応)

神田研究室  河上 祐之

1.序論

我が国は世界有数の地震多発国であり、さらに台風の通り道となっているため、日本の建築物は厳しい条件下で安全性を確保しなければならない。建築物の構造設計を行う上で、地震外乱と風外乱は多くの相違点を有し、それらは建築物に作用する際に与える影響が異なることに注意しなければならない。高層免震建築物には、高層化に加え、免震構造の構造形式上の特徴により、地震外乱と風外乱の相違点から生じる問題が顕著に表れている。この問題により、耐震性能と耐風性能は、一方の性能を向上させることでもう一方の性能が損なわれてしまうような相反性を有している。そのため、建築物の耐震性能と耐風性能は確定論的に評価するのではなく、信頼性理論に基づき、確率論的に評価することが求められる。確率という同一の尺度を用いて性能を評価することで、耐震性能と耐風性能の相反性に対応することができる。以上より、建築物の耐震性能と耐風性能の相反性を考慮して考えるためには性能を確率的に評価することが望ましいと考えられる。そこで本論文の目的は、信頼性理論に基づいて高層免震建築物の構造パラメータの推定法を提案するとともに、その推定例を示すこととする。2.推定法の提案

本推定法では構造性能のクライテリアに対する超過確率より、構造パラメータを推定する。2.1. 超過確率

地震外乱により応答値がクライテリアを超過する事象をE、風外乱により応答値がクライテリアを超過する事象をWとする。E とWは独立であると考えられるため、超過確率P(E∪W)は式(1)で表わされる。P(E∪W)=P(E)+P(W)-P(E)P(W)…(1)

P(E)=P(ECL1∪ECL2∪…∪ECLn)P(W)=P(WD∪WL)P(WD)=P(WDCL1∪WDCL2∪…∪WDCLn)P(WL)=P(WLCL1∪WLCL2∪…∪WLCLn)

ここで、添え字Dは風方向外乱、Lは風直交方向外乱を、CL1~nは設定するクライテリアを意味する。また、P( )は( )内の事象に対する確率とする。式(1)により求められた超過確率P(E∪W)が最小となり、かつ許容確率以下である構造パラメータを推定する。超過確率P(E∪W)は、P(E)、P(W)を各々応答の確率分布から算定し、式(1)により求める。3.推定例

本章は提案する推定法を適用した推定例を示す。3.1. 対象建築物

対象建築物は高さ125m、幅・奥行き共に25mの高層免震建築物とし、耐用年数は50年とする。3.2. 構造設計クライテリア

本推定例の建築物に対する構造設計クライテリアは、免震層の最大変位、一階部分の最大層せん断力、上部構造の

最大層間変形角とする。さらに風に対しては免震層の疲労損傷を加える。クライテリアの値は、免震層の最大変位に対して40cm、一階部分の最大層せん断力に対してシア係数で約0.2と設定する。また、免震層の疲労損傷は文献1より、0.4Qmaxに対して2Qy/3と設定する。ここで、Qmaxは免震層のせん断力の変動成分の最大値である。さらに、上部構造の最大層間変形角に対して1/200、1/300、1/400radと3通り設定する。3.3. 応答の確率分布

応答の確率分布はモンテカルロシミュレーション(以下、MCS)を行い、作成する。3.3.1. 外乱の最大値分布

MCSで用いる外乱の最大値分布は対象建築物の耐用年数を考慮し、50年最大値分布とする。50年最大値分布は、年最大値分布を基に作成する。3.3.1.1. 地震外乱の最大値分布

地震外乱では工学的基盤上での1つの最大地動速度が年最大値分布に従うとする。年最大値分布は文献2の上下限値を有する経験的な極値分布とする。また、求めた地動速度は工学的基盤上での値であるため地盤増幅率を乗じて地表面最大地動速度の値とする。年最大値分布のパラメータは簡易的に近年の大地震を考慮して上限値ωを40cm/s とする。また、その他のパラメータはレベル1、2の再現期間にみあうよう調整する。地盤増幅率は簡便のため硬質地盤の平均的な地盤増幅率2.5倍3)を用いる。3.3.1.2. 風外乱の最大値分布

風外乱では対象建築物における頂部平均風速が年最大値分布に従うとする。年最大値分布は文献4を参考に第1型極値分布とする。年最大値分布のパラメータは再現期間100年の基本風速を36m/s、再現期間500年の風速を40m/sとして文献4を参考に設定する。3.3.2. 外乱の時刻歴波形

MCSにおいて時刻歴応答解析に用いる外乱は、波形1つ1つが確率的に独立であるように作成する。3.3.2.1. 地震外乱の時刻歴波形

地震外乱の時刻歴波形は1組の振幅スペクトルと位相スペクトルから作成される模擬地震波とする。振幅スペクトルはClough-Penzienスペクトル5)、位相スペクトルは一様乱数とする。これらを逆フーリエ変換し、さらに包絡線関数を与える。包絡線関数はOhsakiモデル6)を、地震波の継続時間は久田式6)を用いる。なお、各波形を確率的に独立とさせるため相互相関がゼロの一様乱数を位相スペクトルとして用いる。模擬地震波のサンプリング間隔は0.01秒、サンプリング数は5100、継続時間は51秒とする。3.3.2.2. 風外乱の時刻歴波形

風外乱の時刻歴波形は変動風圧場をパワースペクトル密

修士論文

金 井 賞

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度、コヒーレンス、フェイズによって定め7)、多次元自己回帰式8)によって発生させる模擬風力波形とする。その波形の標準偏差および平均値は文献7の風力係数に見つけ面積と建物頂部の基準速度圧を乗じて求める。なお、文献8では変動の頻度分布が正規分布になるようにするため正規乱数を用いている。その正規乱数の相互相関がゼロとなるため、各波形は確率的に独立となる。また、風方向外乱と風直交方向外乱は独立とする。模擬風力波形のサンプリング間隔は0.01秒、サンプリング数は81916とし、内10分間を評価対象とする。また、地表面粗度区分は2とする。3.3.3. 時刻歴応答解析諸元

時刻歴応答解析に用いる振動モデルは、対象建築物をせん断バネマスモデルに置換し、上部構造は弾性体、免震層の復元力特性はノーマルバイリニア型に置換する。また、単位体積質量が異なる2つのモデルを作成する。モデル1は単位体積質量がほぼ鉄筋コンクリート構造に近い約300kg/m3とし、モデル2ではほぼ鉄骨構造に近い約200 kg/m3

とする。3.4. 解析パラメータ

解析対象とする構造パラメータは、バイリニア係数(α)と降伏荷重比(β)とする。ここで、α初期剛性と第二剛性の比、βはQyとQysの比(β=Qy/Qys)である。ただし、Qy

は解析に用いる降伏荷重、Qysは文献9を参考に定めた降伏荷重(以下、基準降伏荷重)である。αとβはそれぞれα=0.01~0.15までの0.02刻みで8パターン、β=0.2~1.8までの0.2刻みで9パターンとする。さらにモデル1はβ=2.1、モデル2はβ=3.0についても解析を行う。ちなみに、このβはレベル2相当の風荷重に対して免震層の降伏を許容しない降伏荷重比である。基準降伏荷重は、モデル1は9360kN、モデル2は6140kNとする。3.5. 解析結果および考察

式(1)より求めた超過確率をFig.1,2にそれぞれ示す。ここでFig.1,2は上部構造の層間変形角のクライテリア(以下、CLa)が1/300radの超過確率である。Fig.1,2よりCLaが1/300radの場合には、Fig.1よりモデル1はα=0.13、β=0.6、Fig.2よりモデル2はα=0.07、

β=1.2と推定できる。Table 1,2に推定した構造パラメータとその超過確率(Case1)とレベル2相当の風荷重による降伏を許容しない場合の最小超過確率(Case2)を示す。Table 1,2よりモデル1でCLaが1/200radの場合を除き、Case1はCase2の1/2~1/7程度となっていた。そのため、クライテリアやモデルによっては風荷重による降伏を許容してパラメータを設定するほうが超過確率は小さくなる。さらに、文献10を参考に現行示方書へのキャリブレーションを行い、許容確率を5.25%と定めた。これより、モデル2のCLaが1/300radと1/400radの場合は許容確率を超えているため、構造計画もしくはクライテリアの設定を再考する必要がある。このように超過確率はクライテリアにより変動するため、クライテリアを適切に設定することが重要である。4. まとめ

以上、本論文では信頼性理論に基づいて高層免震建築物の構造パラメータを推定する手法を提案した。さらに、2つのモデルに対する構造パラメータの推定を行った。その結果、次のような知見を得た。q 高層免震建築物の耐震性能と耐風性能を超過確率で評価することで、構造パラメータを推定できる可能性を示した。

w クライテリアやモデルによっては、風荷重による免震層の降伏を許容するほうが許容しない場合に比べ、超過確率が小さくなる。

e 超過確率はクライテリアにより変動するため、クライテリアを適切に設定することが重要である。

参考文献1)オイレス工業技術資料:高層免震建物における強風時のLRBの挙動、2004. 3

2)Jun Kanda:A New Extreme Value Distribution with Lower and UpperLimits for Earthquake Motions Wind Speeds, Proc. 31st Japan NationalCongress for Applied Mechanics, 1981, pp.351-360

3)日本建築学会:地震荷重-地震動の予測と建築物の応答、19924)日本建築学会:建築物荷重指針・同解説(2004)、2004. 95)Clough, Penzien, : Dynamics of Structures, MCGRAW-HILL Inter-

national Edition, 19866)大崎順彦:新・地震動のスペクトル解析入門、鹿島出版会、1994. 57)田村ら:基本角柱模型の層風力に関する研究、1996. 28)岩谷祥美:任意のパワースペクトルとクロススペクトルをもつ多次元の風速変動のシミュレーション、日本風工学研究会誌、第11号、昭和57年1月

9)日本免震構造協会:免震構造入門、199510)星谷勝、石井清:構造物の信頼性設計法、鹿島出版会、1986. 5

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1.はじめに

近年、環境問題に対する関心が社会的に高まり、リサイクル化の推進が図られている。ところが最終処分場の容量不足は深刻化し、新しい最終処分場の確保も困難な状況にある。このような社会的課題を背景に一般廃棄物を高温で溶融し冷却固化することで減量・無害化する技術が開発された。この技術により産出した溶融固化物(以下、ごみ溶融スラグと称する)は道路用骨材やコンクリート用骨材としての利用が期待され、2006年にJIS A 5031(一般廃棄物、下水汚泥又はそれらの焼却灰を溶融固化したコンクリート用溶融スラグ骨材)1)が制定された。しかし、ごみ溶融スラグの生産量増加が予測される中で、現状では道路用骨材やプレキャスト製品での利用に止まっている。今後の普及促進に向けて、現段階ではコンクリート用骨材としての品質が十分に解明されたとは言い難く更なる研究の積み重ねが必要である。一方、建築物の解体時に発生するコンクリート塊は2000

年に制定された「建設工事に係る資材の再資源化に関する法律」を基盤とし、コンクリート塊を破砕して製造される再生骨材の有効利用を図るためのJISが規格された2)~4)。しかし、JISの制定後においても大半が道路用骨材として消費されコンクリート用骨材としての利用は僅かである。これらのことを鑑み、本研究はごみ溶融スラグと再生粗

骨材を併用し鉄筋コンクリート構造物に適用する可能性を検討することを目的とした。この提案が実用できれば循環型社会の形成に大きく貢献できると思われるため、本研究はその基礎としてごみ溶融スラグと再生粗骨材を併用した鉄筋コンクリート梁部材の付着割裂強度を検討したものである。2.実験概要

Table 1に試験体詳細を示す。ごみ溶融スラグと再生粗骨材を併用したコンクリートの基本的な性状を把握するため、コンクリートの種類はごみ溶融スラグを細骨材に50%置換したRMNSシリーズと100%置換したRMSシリーズの2シリーズとした。なお、粗骨材は再生粗骨材を50%置換している。Table 2に調合表を示す。コンクリートの調合は材齢4週

時に25N/mm2になるよう複数回の試し練りを行い決定した。Table 3に骨材の品質を示す。本実験で用いた再生粗骨材は、JIS A 50223)に相当するものである。ごみ溶融スラグは習志野市芝園清掃工場のガス化高温溶融一体型直接溶融炉で製造され JIS A 50311)の基準値である絶乾密度2.5g/cm3以上、実積率53%以上、吸水率3%以下を全て満たしていた。Fig.1に試験体形状を、Fig.2に断面図を示す。試験体は

付着割裂強度を検討するため純曲げ区間の下端に重ね継手(重ね長さ30db db:公称径)を設けた単純梁形式とし地震力を想定した正負繰返し載荷実験を行った。

ごみ溶融スラグと再生粗骨材を併用した鉄筋コンクリート梁部材の付着割裂強度に関する基礎的研究

櫻田研究室  a橋 幸裕

修士論文

斎 藤 賞

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3.乾燥収縮性状

Fig.3に材齢1年時の乾燥収縮ひび割れを示す。Fig.3 a)のRMNS1K、Fig.3 b)のRMS1KはFig.3 c)の再生粗骨材を50%置換し、天然砂を100%使用した既往のRM1K5)と比較して乾燥収縮ひび割れの発生が減少する傾向を示した。これは、ごみ溶融スラグの吸水率の低さが乾燥収縮ひび割れの発生の低減に影響しているものと考える。4.実験結果

Table 4に実験結果一覧を示す。RMNS1Kは曲げ降伏が先行しその後付着割裂破壊を生じたが、他の試験体は重ね継手区間に付着ひび割れが急激に進展するサイドスプリット型の付着割裂破壊となった。5.付着割裂強度の評価

Fig.4に各試験体の付着割裂強度を示す。付着割裂強度は式(1)により求めた。

ここで

5週時のFig.4 a)では、ごみ溶融スラグを50%置換したRMNSと再生粗骨材を50%置換したRM、さらに細骨材に再生砂を50%置換したRMM、普通コンクリートである00N6)の付着割裂強度はほぼ同等であった。しかし、ごみ溶融スラグを100%置換したRMSはRMNSと比較して約33%の付着割裂強度の低下が認められた。これは、ごみ溶融スラグの骨材表面が平滑なガラス質でありセメントペーストとの付着強度が小さいことが付着割裂強度の低下に影響を及ぼしたと推察される7)。1年時のFig.4 b)において、RMNS1Kの付着割裂強度は既往のRM1K、RMM1K、00NKと同程度であった。RMS1K の付着割裂強度はRMNS1Kと比較して5週時と同様に低下したが、コンクリート強度の増加によって低下率は約19%となり5週時(約33%)と比較して減少した。これらのことからごみ溶融スラグの置換率の差異が付着割裂強度の低下に影響を及ぼす可能性が認められた。6.結論

ごみ溶融スラグと再生粗骨材を併用した鉄筋コンクリート梁部材の付着割裂強度を検討した結果、本実験の範囲内で以下の知見が得られた。1)ごみ溶融スラグを置換したコンクリートの乾燥収縮ひび割れは、ごみ溶融スラグを置換していない場合と比較して減少する傾向を示した。

2)5週、1年時ともにごみ溶融スラグを100%置換すると50%置換した場合と比べて骨材表面の平滑さが原因と考えられる付着割裂強度の低下が認められた。以上、ごみ溶融スラグと再生粗骨材を併用し鉄筋コンク

リート梁部材に適用した結果、乾燥収縮ひび割れの発生がごみ溶融スラグを細骨材に置換することで低減することが明らかとなった。また、ごみ溶融スラグを50%置換した場合の付着割裂強度は普通コンクリートと同等であったことから、ごみ溶融スラグと再生粗骨材を併用し鉄筋コンクリート構造物に適用する可能性が示されたと考える。

今後の課題として、ごみ溶融スラグの置換率をさらに変化させて長期経過時の力学的性状を検討する必要があると考える。

参考文献1)日本工業規格:JIS A 5031(一般廃棄物、下水汚泥又はそれらの焼却灰を溶融固化したコンクリート用溶融スラグ骨材)、2006年7月

2)日本工業規格:JIS A 5021(コンクリート用再生骨材H)、2005年3月3)日本工業規格:JIS A 5022(再生骨材Mを用いたコンクリート)、2007年3月

4)日本工業規格:JIS A 5023(再生骨材Lを用いたコンクリート)、2006年3月

5)師橋憲貴、桜田智之:乾燥収縮の抑制を目的とした再生コンクリート梁の付着性状、日本建築学会大会学術講演梗概集(中国)、2008年9月、pp.1165-1166

6)師橋憲貴、桜田智之:再生コンクリートを用いた梁部材の付着割裂強度-横補強筋の効果と乾燥収縮ひび割れ-、日本建築学会大会学術講演梗概集(関東)、2006年9月、pp.693-694

7)斉藤丈士、菅田雅裕、谷山教幸、池永博威:ごみ溶融スラグの細骨材としての利用がコンクリートの調合および品質に及ぼす影響、コンクリート工学年次論文集、Vol.26, No.1, 2004, pp.81-86

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平成20年度修士論文題目日本大学大学院生産工学研究科建築工学専攻

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卒業設計審査会・卒業論文審査会

平成20年度の卒業設計審査会は平成21年2月12日

(木)、卒業設計審査会は平成21年2月13日(金)、津田

沼校舎体育館で開催された。

卒業設計審査会は、昨年度まで、先ず各コース(建築

工学コース、建築・環境デザインコース、居住空間デザ

インコース)毎に審査を行うコース審査会、次にコース

審査会で選出された作品を全体で審査する全体審査会の

2段階審査方式により行われていたが、本年度は、全作

品を一堂に会して展示し審査する全体審査会として行う

こととした。尚、審査会には94作品が出展された。

卒業論文審査会は、昨年度と同様に全体審査会を行う

こととし、64題の論文が出展された。

卒業設計審査会

審査会は、第1次審査と第2次審査の2段階で行い、

専任教員及び非常勤講師の43名の審査員により、1)テ

ーマ性・創造性・独創性、2)デザイン密度・プレゼンテ

ーション、3)建築工学的裏付け、4)総合評価の評価項目

に基づいて審査(記名投票)を行った。

第1次審査は、展示された全ての作品の中から審査員

が8作品を選出し投票する方法により審査が行われ、そ

の結果8票以上を獲得した15作品が第2次審査に選出さ

れた。

第2次審査は、第1次審査で選出された15作品につい

て、プレゼンテーション及び質疑応答を行った。このプ

レゼンテーションの内容を踏まえて、審査員1人につき

6点の持ち点として3作品を選び採点する方法にて投票

を行った。その結果11点以上を獲得した8作品が選出さ

れた。尚、2位の点数を獲得した2作品は同点であった

ため再投票を行い、1票差で2位・3位の作品が決定され

た。審議を経て、獲得点数の上位から、桜建賞2作品、

UIA記念賞1作品、建築工学科デザイン賞5作品が決定

された。

受賞作品のテーマは多様であり、今日的課題を建築の

有する社会性と重ね合わせて読み解き、環境・景観・空

間・場所性等の関係を見出し、それらを含み込んだ建築

的方策を表現した作品はいずれも力作であると共に、展

示形式の第1次審査とプレゼンテーションを経た第2次

審査において、それらの表現がより明確となった。

卒業論文審査会

審査会は、第1次審査と第2次審査の2段階で行い、

専任教員及び非常勤講師の21名の審査員により審査(記

名投票)が行われた。

第1次審査は、ポスター展示形式により出展した学生

が審査員の質疑に対して説明を行い、審査員が5題を選

出し投票する方法により審査が行われた。その結果4票

以上を獲得した10題が第2次審査に選出された。

平成20年度 卒業設計審査会・卒業論文審査会4年クラス担任

卒業設計審査会(平成21年2月12日) 卒業論文審査会(平成21年2月13日)

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第2次審査は、第1次審査で選出された10題について、

プレゼンテーション及び質疑応答を行った。プレゼンテ

ーション並びに審査員の質問に対する回答内容を踏まえ

て、審査員は5題を選出し投票を行い、その結果10票以

上を獲得した6題が選出された。審議を経て、獲得票数

の上位から、桜建賞3題、建築工学科論文賞3題が決定

された。

受賞論文のプレゼンテーションには洗練された発表も

みられると共に、個人やグループにより取り組まれた研

究が含まれており、また研究テーマも多岐にわたってお

り、新しい視点からの研究や独自性を有するテーマ、多

様な実験・調査・分析の成果を含む研究が受賞論文とし

て選出された。

卒業設計展

卒業設計審査会に伴い、卒業設計の成果を広く発表す

る場として卒業設計展が企画され、本年度は体育館を会

場として平成21年2月11日に開催された。

卒業設計展には、卒業設計審査会に出展される全94

作品が展示された。来場者は一般:120名、学生:142

名、合計262名の多くの方々にご来場いただいた。

学生生活4年間の集大成として、卒業する学生の作品

を関係各位にご高覧いただくと共に、学生のご家族の

方々の来場も多く、加えて大学院生から学部学生まで、

そして来場いただいた卒業生を交えた様々な交流・意見

交換の機会としても有意義な展示となった。

卒業設計 受賞作品

【桜建賞】

「国境博物館」 遠藤孝弘

「荒海や佐渡によこたう天の川」 関佳子

【UIA記念賞】

「人の為の森、森の為の建築」 後藤侑希

【建築工学科デザイン賞】

「ペロットハウス」 板谷慎

「2.2kmの山脈」 砂川慶太

「ひび割れる都市」 勝又啓太

「浮遊団地」 巣木大輔

「橋上の街」 住谷泰明

卒業論文 受賞論文

【桜建賞】

「SF映画にみる建築空間の変容」 a田圭

「衝撃弾性波による構造物の損傷度評価に関する研究」

高野創・武井一樹

「エッフェル塔の図式力学による応力計算法に関する考

察(不静定立体構造を如何にして解いたか)」

a橋秀幸・桑邑薫・長孝則

【建築工学科論文賞】

「建築外装材料の美観性に関する研究 -雨筋よごれの

評価方法-」 大西智哲・鈴木正行・須藤まり子

「グループリビングに関する研究 -新しい高齢者の住

まい方-」 廣澤南・保田智宏

「木造住宅用語から見た生活文化の変容」 a木司

卒業設計展(平成21年2月11日) 懇親会(平成21年2月13日)

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SF映画にみる建築空間の変容a田  圭 

卒業論文

桜 建 賞

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衝撃弾性波による構造物の損傷度評価に関する研究高野 創  武井 一樹 

卒業論文

桜 建 賞

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エッフェル塔の図式力学による応力計算法に関する考察-不静定立体構造を如何にして解いたか-

a橋 秀幸  桑邑 薫  長 孝則

卒業論文

桜 建 賞

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国 境 博 物 館遠藤 孝弘 

卒業設計

桜 建 賞

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佐渡の修景色-荒海や佐渡に横たう天の川-

関  佳子

卒業設計

桜 建 賞

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平成20年度 建築工学科各賞受賞者

《金  井  賞》 河上 祐之

《斎  藤  賞》 a橋 幸裕

《日本大学優等賞》 草柳 めぐみ・成田 静・牛込 絵理佳・池内 孝枝

《建 築 工 学 科 賞》 草柳 めぐみ

《桜  建  賞》 遠藤 孝弘・関 佳子・a田 圭・高野 創・武井 一樹a橋 秀幸・桑邑 薫・長 孝則

《建築工学科論文賞》 大西 智哲・鈴木 正行・須藤 まり子・廣澤 南・保田 智宏a木 司

《UIA 記 念 賞》 後藤 侑希

《建築工学科デザイン賞》 板谷 慎・砂川 慶太・勝又 啓太・巣木 大輔・住谷 泰明

《日本建築仕上学会 学生研究奨励賞》 山本 浩子・牛込 絵理佳・小林 由佳

《校 友 会 賞》 吉川 啓太・成田 静

《校友会建築部会奨励賞(卒業論文奨励賞)》 a田 圭

《校友会建築部会奨励賞(卒業設計奨励賞)》 遠藤 孝弘

《校友会建築部会賞》 茂手木 仁人

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[建築工学コースにおけるゼミナールの学び方]

建築工学コースでは、ゼミナールA・Bとして前

期・後期に選択科目として1単位ずつ設置しています。

建築工学コースの教員は、歴史・設計計画・構造設

計・材料施工・防災など多義に渡る専門家集団です。

ゼミナールは3年次に履修しますが、これは1・2年次

の基礎科目を踏み台にして高度な専門的学問や技能を

身に付ける上での登竜門と位置づけられています。

そこで、テーマとしても、各教員の専門性を反映さ

せたバラエティーのあるものを掲げています。傾向と

しては、ゼミナールAよりもゼミナールBの方が各教

員の専門性により直結した内容となっています。学生

諸君は、このテーマの中から興味あるものを一つだけ

選んで履修します。選び方は、それぞれに違うでしょ

うが、q現時点で興味あるもの、w将来の仕事として

興味あるものなどありますが、とにかく動機は何でも

OKです。本コースのゼミナールは、とくに少人数に

よる多面的教育を目指しています。是非、全員がゼミ

ナールを履修することを進めます。

ゼミナールを履修するには、70単位以上の単位取得

が条件となります。また、人によってはゼミナールA

もゼミナールBも同じ教員のテーマを選ぶこともでき

ますが、やりたいことがまだ確定していない人などは、

いろんな経験をしてもよいのではないでしょうか。た

だ、一つのテーマに集中するのは少人数という趣旨か

らしても困るので、ある程度人数に制約があることを

理解してください。

さー、3年生諸君、ゼミナール履修のために、未来

の明りを求めて、いざ研究室の門を叩きたまえ! 熱

い情熱を待っています。

建築工学コースのゼミナールテーマは、以下の通り

です。とくとご覧あれ!

[建築工学コース前期・後期ゼミナールテーマ紹介]

■浅野 平八 教授

A:「テクトニック・カルチャー」

建築史家 ケネス・フランプトンの著作(2002 年

TOTO出版)を輪読し、議論をし、学んだことをまと

めます。

内容は、19,20世紀の以下の巨匠達の作品と言説で

す。

1)フランク ロイド ライト 2)オーギュスト ペレ

3)ミース ファン デル ローエ 4)ルイ カーン 5)

ヨーン ウツソン 6)カルロ スカルパ

B:「建築をつくるもののこころ」

1)村野藤吾『建築をつくる者の心』(なにわ塾叢書)を

テキストにして、建築物をつくる営為に関わる人たち

の感性や心根について考えます。

2)グループ学習として、研究したい現代の建築家を

取り上げ、文献を調べ作品を見て、その人の建築をつ

くるものの心について考察します。

3)建築家ごとの人と作品をパワーポイントに仕上げ、

ケネス・フランプトンの提起する「場所性、形態、持

続性、素材観、居住性、普遍性」という現代建築の6

つのカテゴリーで、比較をしてみます。

■川村 政史 教授

A(前期):建築基礎構造物と地盤

建物を安全に建造するための基礎知識として、地盤

と基礎構造物の関わりについて考える。一冊の教科書

を用意して輪講形式で行う。同時に4年生の卒研の手

伝いをする。

B(後期):建築基礎構造物の設計に必要な地盤調査お

よび土質調査を学習する。一冊の教科書を用意して輪

講形式により行う。同時に4年生の卒研の手伝いをす

る。

平成21年度建築工学コースゼミナール

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■神田  亮 准教授

A:構造力学の基礎を学ぶ

前期のゼミでは、1,2年生で勉強してきた構造力学

の内容を復習いたします。今迄の私の経験によれば、

力学が苦手な原因は、その勉強の仕方にあるようです。

このゼミでは、その秘伝を伝授いたします。また、力

学が得意でそれをさらに伸ばしたいと考えている人に

も、さらに力学の力を伸ばしていけるような秘伝を伝

授いたします。ゼミでは、構造力学2で学習しました

図解法を主に学習いたします。力学をよく理解するた

めには、高度な内容を理解するのではなく、基礎を十

分理解することです。力学は以外に簡単なもののよう

です。

B:自由テーマ

後期のゼミBでは、構造の分野が中心になると思い

ますが、受講希望者と教員とが話し合いテーマを個々

にあるいはグループ別に決めて半期ゼミを行いたいと

思います。テーマに関するキーワードは、“構造”、

“振動”です。

■小松  博 准教授

A:『空間構成と力の流れについて』

今まで建築の構造を学んできて、骨組の形態と作用

荷重から直感的に曲げモーメント図が頭の中に浮かぶ

とすればどうでしょう。このような構造的感覚を養う

ためのトレーニングを簡単な骨組から複雑なものまで

段階的に行うことで、力の流れの理解を深めていきま

しょう。

B:『模型実験による建築構造物の力の流れ』

構造的感覚を養う手法として、視覚的、すなわち実

際の現象を目で見ることにより理解することは重要で

す。そこで建築構造物に作用する外力により骨組に流

れる力を、骨組の模型実験により視覚的にとらえると

ともに、建築構造力学・建築応用力学で学んだ数値解

法により実験との対応を図っていきましょう。

■桜田 智之 教授

A:大規模木造に関する現状と展望

わが国でも、ヘビィティンバー・コンストラクショ

ン、つまり大断面集成材を用いた大規模木造技術の導

入の兆しがみえはじめている。本ゼミでは欧米の木造

先進国の動向、エンジニアード・ウッドと呼ばれる新

しい木質構造材料および各種の構法について学習する。

B:再生骨材を用いた構造用コンクリートの性能

建築物の解体に伴い今後大量に発生するコンクリー

ト塊のリサイクルの推進が資源の有効利用の点から課

題となっている。現在コンクリート塊の多くは道路等

の路盤材として再利用しているが今後の発生量を考え

ると限界がある。本ゼミでは再生骨材を用いた再生コ

ンクリートの鉄筋コンクリート部材への適用方法につ

いて、材料的性質から構造的性能まで総合的に学習す

る。

■広田 直行 准教授

A・B:「ル・コルビュジェ展」と「Project Bremen」

に参加

今年は上野の森に西洋美術館が竣工して50年になり

ます。これを記念して西洋美術館では6月から記念展

を開催します。この展示会は7月に発表となるコルビ

ュジェ作品の世界遺産登録へ向けての活動の一つと成

ります。ゼミナールでは、この記念展に参加すると共

に、コルビュジェの作品研究を通年で行う予定です。

上記活動と平行して、千葉県習志野市で行われてい

るまちづくり「プロジェクト・ブレーメン」

(http://www.projectbremen.jp/)に参加し、コミュニ

ティ・ビジネスの可能性について、地域住民と共に考

えます。

■藤谷 陽悦 教授

A:近代日本住宅史

我々の生活の基本になっているのは住宅である。そ

の住宅も見方を変えれば、海外からさまざまな影響を

受けながら現代まで変化してきている。明治期での最

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初の大きな変革は長崎などで建設されたベランダ住宅で

あり、同じ頃、北海道ではツー・バイ・フォーが住宅に

導入された。大正期には住宅改善運動の影響で中産階級

によるバンガロー住宅が理想とされ、それは田園都市運

動などの影響を受けて郊外住宅地で普及した。そして昭

和期・戦後には大量生産を背景とした庶民のプレファブ

住宅が小住宅の文化になり、現代の住宅の基礎を作って

いる。本ゼミでは日本の近代住宅史をたどり、生活の基

礎となっているルーツを考えることとしたい。

テキスト:『(新版)図説・近代日本住宅史』内田青

蔵+大川三雄+藤谷陽悦=編著(鹿島出版会)

B:日本と戦後建築家たちとその群像を探る

日本の現代建築を理解するには、建築家の作品とそ

の作家の主要な論説を取り上げて、大まかな歴史と枠

組みを考えてみるのが一番よい。なぜなら、彼らの作

品群のなかには時代的背景や技術的な特色、そして時

代に対する彼らの自己主張がはっきり表れているから

である。そして、それへの理解がそのまま日本の現代

建築を理解するにつながる。本ゼミでは、そうした戦

後の建築家の歩みを輪講形式で学習していくものとす

る。ただし受講生には自分で好みと思われる建築家を

取り上げてパワーポイントで説明してもらう。そうし

た参加型の教員と学生との真摯なディスカッションこ

そが、より深い学習理解につながると信じる。

テキスト:各自で用意した建築家の調査レポート

■松井  勇 教授

A:「建築物の美観性維持」

建築物の美観性は、景観を損なうばかりではなく、建

築物の劣化の兆候として捉えることができる。美観性の

低下は、外壁、内壁、床などを構成している仕上材料に

付着したよごれや表面劣化によるもので、材料の品質、

建物の用途、部材の納まりなどと密接に関係している。

各部位のよごれ・表面劣化について、実態調査とその原

因について検討し、美観性を長期間にわたって維持でき

る対策を考える。

B:「建築仕上材料の感覚的性質の評価方法」

仕上材料の感覚的性質とは、仕上材料を選定する際

に、視覚、聴覚、皮膚感覚、嗅覚など人の感覚によっ

て評価される性質・性能をいう。感覚的性質を定量的

に取り扱うことがむずかしいので、経験やかん・ ・

によっ

て評価されている。感覚的性質を物理的に評価するに

は、官能検査による感覚の定量化と感覚を引き起こす

材料物性値との関係を示すことである。ゼミナールで

は、いくつかの感覚的性質について評価方法を学習す

る。

■丸田 榮藏 教授

A:「構造力学制覇」

構造力学を初歩から勉強する。

本ゼミナールを通して、構造力学を極め、建築士対

策としての力をつけることを目標としています。力学

が苦手な人は歓迎です。ただ、このゼミは少しハード

になるかも知れません。やる気のある人を選考します。

B:「プログラミング制覇」

Delphi言語によるプログラミングを学ぶ。

工学においてますますコンピュータの利用が必要に

なってきます。当ゼミナールでは、次年度からの卒業

研究等では、データの統計演算などにより解析結果を

検討することになります。市販の汎用ソフトでは必要

とする解析が用意されていないことが多いことから、

自らの手で簡単に制御できる能力を養い、次年度につ

なげるようにします。

■師橋 憲貴 准教授

平成21年度は日本大学長期海外派遣研究員として出

張中のため開講しません。

■湯浅  昇 准教授

A:以下のテーマをもってゼミを構成するが、本ゼミ

を通じて、実験・調査計画立案能力及び実験・調査実

施能力を養う。

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「コンクリートの表情」

コルビジェのユニテ・ダビタシオンはコンクリート

のバリまで美しい。スカルパの作品はジャンカ・豆板

まで設計したコンクリートの美を追究している。本ゼ

ミでは、これらのコンクリートの表情の再現を試み、

コンクリートの表現できる芸術性について探求する。

「鉄筋コンクリート構造物の緑化」

ヒートアイランド現象の抑制対策として、RC造の

緑化が注目されている。本ゼミでは、建物の屋上緑化、

かび・藻類・苔のコンクリートへの付着について解説

するとともに、苔の付着したRC造茶室の建設を試み、

コンクリートの芸術性、とりわけ苔を用いた「わび」

「さび」を演出する技術を検討する。

「鉄筋コンクリート構造物の健全度診断」

鉄筋コンクリート構造物の健全度の診断は、必要な

補強、補修を判断する上で重要である。本ゼミでは、

強度や耐久性に関する健全度診断方法を解説するとと

もに、実構造物に適用可能な耐久性評価方法の開発研

究を行う。

「建築解体・リサイクル」

当研究室は、先代以来、日本の建築解体・リサイク

ル技術を先導してきた。本ゼミでは、建築解体の歴史

をまとめるとともに、解体材のリサイクルのあり方を

模索する。

B:「コンクリート構造物の長期耐久性」

スクラップ&ビルトからの脱却を図るためには、コン

クリート構造物の高耐久化が重要である。本ゼミでは、

既往のコンクリート構造物の長期耐久性に関する研究を

解説するとともに、コンクリートの品質、とりわけ表層

コンクリートの品質と劣化抵抗性の関係をそのメカニズ

ムとともに実験や暴露試験により明らかにする。

本ゼミを通じて、研究の発想および展開法に触れると

ともに、結果をとりまとめる能力、プレゼンテーション

能力を養う。

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[建築・環境デザインコースにおけるゼミナールの

学び方]

ゼミナールは、以下に提示する研究室ごとのテーマ

のもと、学生が自ら研究し、発表・討論などを行う授

業として学科目を設定しています。このことから、授

業の特徴としてq学生参加型授業を中心に据え、w

没個性(anonymous)ではいられない、e常に君はどう

思うかといった応答(response)を求め、r結果として

責任感(responsibility)を育むことを目指し、研究テー

マごとに授業内容を進める予定です。学生個人にあっ

てはゼミナールAでは興味の範疇として総括的な内容

を履修し、ゼミナールBにて自らの将来に連動するテ

ーマを選ばれると効果的であると思われます。専門性

を高める一歩として、ゼミナールへの積極的な参加を

望みます。

[建築・環境デザインコース前期・後期ゼミナール

テーマ紹介]

■大内 宏友 教授

A:日本と西欧の景観の構造

伝統的に形成されてきた日本と西欧における景観と

文化の構造を把握し、街づくりや建築設計の手法とし

て構築するための基礎的な計画的方法論を、歴史風土

と景観・色彩と景観・環境心理と景観等々の様々な視

点により検討し、討論しあう場としたいと思います。

また、他大学との設計課題の共有化による合同の発

表会や国内外のコンペ等にも積極的に参加する予定で

す。

教材:日本の景観(樋口忠彦著)、新・建築入門(隈

研吾著)、都市デザイン(黒川紀章著)他

B:CAD/CG・GISを用いたデザイン手法

建築・都市・環境のデザイン分野ではCAD/CGを用

いたデザイン手法は他分野にも用いられ多様化してい

ます。その意味で3Dツール及びGIS(地理情報システ

ム)を用いたデザイン手法は有効なデザインプロセス

の一つです。ゼミナールでは、CAD/CG・GISを用い

たデザイン手法の検討をとおしてゼミナールAの景観

の構造に引き続き建築・都市の空間構造を分析すると

ともに、GIS及び3Dツールを用いたデザイン手法を学

びます。

■川岸 梅和 教授

北野 幸樹 専任講師

A:集住と余暇

コーポラティブ・ハウジング等居住者参加型の住ま

いづくりや街づくりの理念、歴史、計画・デザイン手

法と居住者の余暇活動及びその受け皿となる施設・空

平成21年度建築・環境デザインコースゼミナール

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間から紡ぎ出される合意形成やコミュニティ形成の手

法(ワークショップ)について学習すると共に、日本人

の意識構造と住宅・都市との関係性について学習す

る。

B:都市・建築・生活空間デザイン

都市・建築・生活空間を市民・居住者の意識と種々

の活動の視座から捉え、「人と人」「人と活動」「人と空

間」「活動と空間」の相互浸透性・相互関係性に注目し

ながら時間の流れの中から生み出されるコミュニティ

を含み込んだ種々のデザインの特性と手法について学

習すると共に、資源循環型社会と環境共生手法・活動

について学習する。

■坪井 善道 教授

A:まちづくりと建築のデザイン

都市空間の構成要素である個々の建築が集まって都

市の魅力を創るのに関わってくる。そのためには建築

が都市とどのように関わっているか理解することが重

要であり、国内外の優れた建築のデザインの具体的事

例を参考しながら、建築と都市の関わり方を環境デザ

インの観点から解説する。

B:魅力ある都市景観創り

わが国の都市景観の没個性、かつ魅力の欠如に対す

る社会的関心も高まってきた。そこで、ゼミBでは優

れた都市景観とはどのようなものか、優れた都市景観

を有する諸外国の事例を日本の都市と比較しながら紹

介・解説する。さらに、我が国の都市景観をどのよう

な手法で魅力あるものにしていくか、都市計画・都市

デザインの観点から平易に解説する。

■花井 重孝 教授

A:骨組構造の力学とフォルム

1.建築構造力学で学んだ骨組構造の応力解法につい

て復習する。2.構造システムの基本である、「力の自

然な流れを形として表すフォルム構造(引張力と圧縮力

の単独システム)」と「ベクトル構造(引張力と圧縮力の

複合システム)」について学習する。

B:確率・統計解析の基礎

建築学で必要とされる線形代数ならびに調査データ

分析の基礎となる確率・統計解析の成立ちとその計算

方法を学習する。

■日高 單也 教授

A:デザイニングプロセスの考察

問題提起から調査分析・モデリング・測定・製図・

検証とデザイン活動の一連の過程を配分的にとらえ、

デザイン行為の意味と位置を概説する。同時に、一つ

のテーマに基づいて、一連の過程を体得的に経験させ

る。

B:デザインの手法(デザイニングプログラムの利

用・応用)

1.モデュール群によるデザイニングプログラムの解

説とその利用による空間作品の制作。

2.具体的な空間のもつプロポーションを調べ、それ

を処理し数値化する。生まれた数値を利用して空間設

計を行う。

※ランドスケープデザイン及びランドスケープデザイ

ン演習を履修することが望ましい。

■宮崎 隆昌 教授

A:地域空間から何を読み取るか?

都市や集落には、それぞれの固有の形と意味がある。

姿・形は、そこでの生活の実体化である生活の歴史や、

風土が創りあげた骨格に機能的要素が集積し、デザイ

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ンされた空間が生成されてきた。これらのコンテクス

ト(文脈)を読み取り、シーズを発見することは重要な

イメージ形成につながる。

フィールドサーベイを中心とした「観察する」・「記

録する」・「再現する」プロセスの中で計画と設計の意

味を吟味し、発見から創造へ結びつく方法を習得する

実践的ゼミナールを行う。

環境をモニタリングする手法としてGISデータを用い

て地域空間の構成やアクティビティを解析・評価する。

B:グランドデザインの基礎を学ぶ

デザインのモチーフを「場」からとらまえること、そ

れぞれ「場」は生育の力と働きがあると考える。その生

成のシステムを発見し・現実化するイメージが建築す

る事であり、空間創造・環境創成であろう。

エコロジカルプランニング(生態学的デザイン)はそ

の方法論であり、具体化のプロセスであると考えてい

る。その意味で“Landscape Architecture”は建築の基

礎的な・理論的で・本質的なアプローチであろう。エ

コロジカルデザインの基本に関するゼミナールを開講

する。街や集落空間を観察する事によって、「場所」

「空間」を読み解く手法(デザインサーヴェイ)を身に

つけて欲しい。

■岩田 伸一郎 准教授

A:設計力を磨く

自分の卒業した小学校の設計課題を通して、問題の

発見から解決案の提案に至る思考力と表現力を養う。

他大学と連携しながら課題を進める予定です。

B:建築理論を学ぶ

建築や都市のデザイン理論に関する代表的な書籍や

論文を教材に、ディスカッションを通じて建築の諸問

題を論理的かつ科学的に分析する力を養う。

■川島  晃 准教授

A:骨組構造の力学とフォルム

1.建築構造力学で学んだ骨組構造の応力解法につい

て復習する。2.構造システムの基本である、「力の自

然な流れを形として表すフォルム構造(引張力と圧縮力

の単独システム)」と「ベクトル構造(引張力と圧縮力の

複合システム)」について学習する。

B:構造デザインにおける解析プログラムの活用

フォルム構造とベクトル構造を対象として、マトリッ

クス代数に基づく構造解析の力学的内容とプログラム

および解析結果の分析方法について解説する。また、

構造デザインへの活用として、データ生成と解析およ

び図形ソフト(VBA→AutoCAD→VIZ)による可視化ま

での手法を学習する。

■塩川 博義 准教授

A:建築におけるサウンド・エデュケーション

2年次後期の建築環境工学Bで学んだ音響工学を復

習する。そして、音響技術が必要なコンサートホール

や劇場などをコンピュータ・シミュレーションでモデ

リングし、建築音響設計に必要な基礎的知識を学ぶ。

B:建築および公共空間におけるサウンドスケープ

3年次前期の建築実験1・音環境実験で学んだ騒音

測定だけでなく、建築および公共空間におけるサウン

ドスケープの考え方を学び、心理学的に音をとらえる

など、いろいろな角度から音そのものを見つめなおし、

日本における音環境のあり方を考える。また、いまま

で学んだ音響設計の知識を用いて500人ほどの小ホー

ルを設計する。

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[居住空間デザインコースにおけるゼミナールの

学び方]

ゼミナールは教師の決めたテーマを中心に少人数で

学ぶ機会です。座学の授業のように教師が一方的に知

識を与えるのではなく、学生もテーマに沿って調査し

たり、発表したりします。居住コースの学生には設計

演習のようなスタイルで行う学科目の授業と説明する

とイメージしやすいかもしれません。

居住コースの学生は曽根研究室・亀井研究室のゼミ

だけでなく、他コース全ての研究室のゼミも、1研究

室あたり3名まで受講できます。「築」の別欄に書かれ

ている各先生のゼミのテーマをよく読んで、興味のあ

るゼミを選んで下さい。

授業を受けていないので専門分野が良く分からない

という場合は、曽根または亀井に聞いてくれれば、分

かる範囲で教えます。もちろん、直接その研究室に行

って、その研究室の先輩などに尋ねるのもよいでしょ

うし、その先生の担当授業のシラバスや研究室の論文

も参考になります。

貴方たちはこれまで2年間、専門の授業は、基礎知

識の習得と総合科目として住宅設計を中心に進められ

てきました。またそれらは居住コースの同じメンバー

と一緒に授業を受けてきました。3年次はそれらを基

にして、将来の進路を探る時期でもあります。女性の

職業分野は住宅設計だけではありません。材料などの

実験や構造計算、構造計画、設備設計などに適性のあ

る人もいるでしょう。また、同じ設計・計画でも、都

市計画や地域計画、公共建築など、スケールの違う設

計・計画やコンピュータを駆使した技術に興味のある

人もいるでしょう。こうした時期に、他コースの学生

と一緒に、これまでと違った分野のことを学ぶ機会を

持つことは大変有意義なチャンスです。

当建築工学科の他大学と大きく異なるメリットは工

学系の幅広い分野に渡る数多くの先生方がおいでにな

ることです。自分の可能性を探る意味でも、他コース

の先生方のゼミにもチャレンジすることを勧めます。

[居住空間デザインコース前期・後期ゼミナール

テーマ紹介]

■曽根 陽子 教授A:建築人間工学演習

人間の行動や動作、利用圏などに関する基礎的な論

文を読む。2~3人のグループでそれぞれそれらの論

文に習って、学内や自分の周辺環境の中から人間工学

的な仮説を立て、その仮説を証明する調査計画を立て

る。今年度は特に公共建物や公共スペースのゴミや汚

れの問題に焦点をしぼる予定である。実態調査し、仮

設の検証をする。一連の演習により実証研究の方法を

学ぶ。

B:現代住居論

住居は過去の住宅の形を継承しつつ、時代の社会的

条件と人々の生活要求と意識の変化に応じて変容す

る。これまでの住宅史は第二次大戦までを扱ってきた

が、現在我々が住んでいる住居は生活近代化、住宅の

産業化、家族形態の変化など戦後の動向と深く結びつ

いている。私が著者の一人である「住まいを読む 現

代日本住居論」(鈴木成文 現代思潮社)と「住まいを

語る 体験記述による日本住宅現代史」(鈴木成文 現

代思潮社)を教材として、現代住居を考えてみる。

■亀井 靖子 専任講師A:様々な調査方法

docomomo japanで選定されたモダニズム建築につ

いて調べることで様々な調査方法を学ぶ。特に文献に

ついては、安易にインターネットに頼るのではなく、

信頼できる情報をきちんとつかむことに重点を置く。

B:郊外建売住宅 -日本編と海外編-

映画・ドラマ・本・写真などを基に、庶民の戸建住

宅として定着した建売住宅について、時代背景、生活、

人々の思想など自由なテーマで語り合う。題材は日本

とアメリカを中心に選ぶ。建築雑誌に掲載されるよう

な住宅ではない、ごく普通の住宅について自分なりに

考えを持って欲しい。

平成21年度居住空間デザインコースゼミナール

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平成20年度日本大学生産工学部建築工学科春季海外研修旅行〈企画・監修:日本大学生産工学部建築工学科〉

3年  小瀬木 美紗

テ ー マ:「ヨーロッパの都市・建築から文化・技術を探る旅」ヨーロッパを代表するカルロ・スカルパ、ル・コルビュジェなどの作品を主として視察しながら、

ヨーロッパならではの町並み・文化を堪能する。研修期間:平成20年3月13日(木)~3月22日(土)引  率:湯浅 昇参加人数:24名(内引率:1名)日 程 表:

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この研修を終えて、様々なことが学べました。

ヨーロッパ建築や町並みは古いものが数多く現

存するため、とても重みがありました。私が特

に感動したのはイタリアの教会ドゥオモです。

中が本当に幻想的です。ちょうどミサを行われ

ていたこともあり、雰囲気も存分に味わえまし

た。普段雑誌でもよく見かけるコルビュジェの

家具も建物内に実際に展示してあるため座るこ

とも可能です。

また、建築以外でも、サッカーの試合に研修が

重なったこともあり、インテルVSミラノの試合

の観戦や、食べ物(お酒も)の食べ歩きも出来、

本場の雰囲気を楽しめました。日本人の建築家

齋藤さんが通訳・案内してくださったこともあ

り、海外で不便なことは一切なく安心した研修

でした。

主催:株式会社トラベルプラン

ブリオン・ヴェガ(スカルパ)

サヴォア邸(コルビュジェ)

ロンシャン協会(コルビュジェ) 撮影:Noboru YUASA

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宮脇壇と宮脇賞

私達は宮脇先生に実際に会ってはいないが、そのユニー

クであった性格は今も語り継がれている。「教えたがり屋」

の宮脇先生は人にものを教えることに対して情熱があり、

自分の知っていることは何でも人に伝えたいという気持ち

が強い人だったという。このような宮脇先生の性格は授業

の合間によく聞いている。どの先生も宮脇先生の話になる

と、うれしそうに話し出す。今も宮脇先生がいらした頃の

気風は先生たちによって受け継がれていると思う。

居住空間デザインコースは1991年に開設し、住宅設計を

重点的に教える女子学生だけのコースである。その主任教

授に選ばれたのが宮脇先生であった。宮脇先生はこのコー

スを個人の塾として捉えていて、宮脇檀住宅設計塾に塾生

を集めて、一学年30人の寺小屋的な教育をすることが当

初からの大方針だった。

「住宅設計塾」は講師の人選もまた宮脇流で、住宅設計か

らインテリア、照明デザインの分野までユニークな人選で

ある。そしてコースの創設者の宮脇先生を記念して、宮脇

先生が亡くなられた10年前から「宮脇賞」を設けた。

宮脇賞の応募作品

今年の宮脇賞は第10回目という節目の回であった。この

賞は当該年度の設計課題の最優秀賞に与えられ、応募でき

るのは居住デザインコースに在籍している学生全員であ

る。大学院生も毎年提出でき、昨年他学科だった私も参加

できる自由な賞である。

一月の第二土曜日の午後が選考日として定着しつつあ

り、各自が一年間の提出作品の中で一番と思う作品課題内

容を選び提出する。(図面:A1サイズ1枚、模型:サイズ、

個数制限なし)

授業は、1年は「水辺の山荘」、「複合施設」を設計し基本

的な設計力をつけ、2年では「住宅」、「個人記念館」、「家具

デザイン」など空間の本質や周囲との関係が課題となる。3

年では「民家の改修」などからスケルトンとインフィルの関

係を学び最終的には集合住宅を設計する。4年は自身の関

心を基にテーマを選んだ卒業制作を提出する。これらの授

業で出された課題の中から自ら選び、審査の前日に提出す

る。中にはグループの作品と個人の作品を両方提出したり、

何作品も挑戦する者もいる。もちろん、自分がこれだと思

う1作品に絞り、その1作品を1年の集大成とする者も多い。

学生達は冬休みの期間を利用して、授業の反省点を生か

して、図面を練りなおしたり模型を作り直すなどし、わか

りやすく表現して提出する。この期間は自分の作品ともう

第10回宮脇賞M1 小林 麻梨菜  杉田 万里子 

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一度向かい合うことの出来る大チャンスである。冬休みの

静まり返った教室棟とは正反対に製図室には学年関係なく

真剣な姿で作成に没頭する姿が見られる。

審査方法

また宮脇賞の審査方法は、まず居住コースの先生方によ

る予備審査(1次審査)を行い、ゲスト審査員の先生方も入

れて、本審査(2次審査)を行う。毎年、一人のゲスト審査

員の先生を招きこれまでに阿部勤、鈴木恂、鈴木成文、東

孝光、東理恵、高橋 一、塚本由晴、納谷学、納谷新、曽

根幸一、古谷誠章、ヨコミゾマコト等の先生方が来てくだ

さった。審査員の個人賞もあり、その賞も学生にとっては

とても楽しみなことなのである。今回は第10回目という

こともあり山本理顕先生が参加してくださった。

準備

宮脇賞の準備は院生とドクターが率先して準備を行う。

たくさんの先生方が来られるので、不備がないように3日

前から準備を行なう。備品の準備から飲み物の準備、パー

ティの仕度、パワーポイントは水平垂直に、といった具合

に各自のタイムスケジュールを作り効率よく動く。事前に

決めておいてもその都度問題は生じるもので、問題に対し

て自分で決断して動かなければならない。何よりやること

が多いのでチームプレイが大事だと感じた。

1年の楽しみな宮脇賞であるが、私たちは今年初めて準

備に参加して審査会の大変さが身にしみた。

宮脇賞当日

今年も一次審査、二次審査ともに2009年1月10日(土)

に行われ、学生は自分の力作で挑み、競い合った。一次審

査は37号館303、304教室で、公開審査は隣の302教室で

行われた。一次審査では非公開で約80作品の中から20作

品を絞り、一次審査で通過した20名の名簿が当日13時に

貼り出される。一次審査の通過者は二次審査で1人5分の

公開プレゼンテーションを行う。うち発表時間が3分、質

疑応答が2分である。

発表者はその作品のコンセプト、ダイアグラムを発表す

るが、その二次審査は先生方、ゲスト審査員や大勢の学生

の前で行うので新1年生は緊張している顔が窺える。学年

があがっても、目の前の現役の有名建築家の先生方の鋭い

視線が視界に入ってきてしまったら皆、頭が真っ白になる

のである。しかしこの審査は学年関係なく競う場なので、

先輩のプレゼンや技術を学ぶ場でもあり、それぞれの斬新

な発想を取り入れる場でもある。また先生方から直に貴重

な意見も聞くことができ、この一日でたくさんのことを吸

収できる貴重な日なのである。

審査員の質疑応答では鋭い質問や褒め言葉があげられ、

山本先生はどの作品に対しても鋭い視点で理論的にかつ熱

心にコメントしてくださった。1年の都市ギャラリーに対

しては「原形のうつくしさに感動した(谷内田)」「グループ

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二次審査の様子

一次審査の様子

提出の様子

4年生が作成したポスター

靜 光

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課題で見られる、一歩一歩たかまっていく作品の向上に一

票。(曽根)」2年のKurt Naef 記念館は「模型もきれいだし、

巧みでびっくりしている。(中山)」「周辺との関係が出てき

たらよかった。(八木)」3年の[libero]「街をつなげる自由

な空間は社会と集合住宅をどのようにつなげていくかがよ

くできている(木下道)」「計画がよくできる人だと思う。完

成度を上げればいい。(山本)」4年舟屋学舎~町に散りば

められた教室~は「地域に根差している(篠崎)」「稲の舟屋

のイメージを知っているだけに、残ってほしい気持ちが出

てしまった(稲葉)」などの意見が挙がった。

2次審査

一通り発表が終わると、先生方一人につき7票の投票を

行う。通常の設計競技の審査ではここでの票が最も集まっ

たものが1位となることが多いが、宮脇賞ではここからの

討論が面白い。1位から評価していくのではなく最下位か

ら見ていくのである。中村好文先生の絶妙なトークにのせ

て、最下位に入れた先生の1票にはどんな発見や良さがあ

ったのか、また票を入れなかった先生からは何が一歩足り

なかったのか、様々な視点から聞き出してゆく。どの作品

も丁寧に意見を交換し合い、良さや欠点を改めて見つめな

おすのである。熱い応援意見や鋭い指摘、先生方自身の仕

事から得た知識と経験によるアドバイスなど次々と意見が

飛び交う。「地域性を考えたらもっと良くなったね。」「もう

少し離れて見てみたらこの空間の一番いいところがみえた

かもね。自分では気づかないことがたくさんある。そうい

うことは僕たちの仕事の中でも沢山あることで、とても大

事なことなんだよ。」先生たちの掛け合いは作者だけでな

く、他の学生にとっても、どこが良く、どこが悪かったか

を自分の作品と比較し、今後の課題にも生かすべき発見を

することが出来る。

討議の後は各先生1人につき1票の投票を行なう。1票ず

つ読み上げてカウントしてゆくが1票入るごとに学生から

はわっと歓声が起こる。

公開審査の結果、本年度宮脇賞(最優秀賞)は1年後期の

設計課題の異なる小空間から構成する複合施設の「都市ギ

ャラリー」に決定した。1回目の投票では3位であったので

最後の投票で1票差の大逆転である。決定した瞬間、1年

生は歓喜のあまり大泣きし、今までの努力が報われたよう

であった。1年生が最優秀賞である宮脇賞を勝ち取ったの

は2度目で先生方の日々の指導に学生がついていかない

と、なかなか1年生ではとれないものである。山本氏も1

年生の設計力に驚いているほどだった。また各先生、一押

しの作品にはそれぞれ中村好文賞、木下庸子賞・・・とい

った審査員賞と今回のゲストである山本理顕賞が贈られ

る。山本理顕賞には3年の「[libero]街をつなげる自由な空

間」(集住デザイン)が選ばれた。

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一番星見つけたのポーズ

パーティー(恒例の中村先生による作詞の歌の合唱)

表彰式

公開審査の様子

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名物パーティー

公開審査後は表彰式とこれまた名物のパーティーが居住の製図室で開かれる。表彰式では1人1人賞状とそれぞれ先生が用意してくださった個性豊かな賞品を学生にプレゼントする。賞状は毎年、先生方が色鉛筆でカラフルに仕上げ、最後に全員のサインを添えた心のこもった賞状である。こんなことからも宮脇先生の心意気が受け継がれている。そんな愛情たっぷりに表彰された生徒はうれしくて涙ぐむ子、恥ずかしそうにはにかむ子、友達の表彰をうれしそうに祝福する子、次こそはと意気込む子、そんな生き生きした表情が伺える。パーティーは毎回4年生が企画し、手作りの料理や凝ったテーブルセッティングが施される。4年生は毎年6月に1年生の歓迎パーティーも企画・演出を行っているので手慣れたもので手際よく準備していた。このパーティーは料理や飲み物を用意し、会場をつくり、照明を変える。簡単そ

うであるが100人以上のパーティーをトータル・マネージメントするにはなかなかの力量がいる。建築に関する仕事は1人で出来る仕事ではないように、仕事全体の流れを理解し、そのなかで自分のやるべき仕事を見つけ素早く行動する行動力、責任感、協調性など設計能力だけでなく社会性が重要である。宮脇氏もパーティーが大好きで、なにより人をもてなし喜ばせることが大の得意であった。このパーティーもそうした能力の大切さを考えさせてくれる機会でもあるのである。審査会の緊張がほぐれ終始和やかな雰囲気の中、先生方に自分の作品について評価していただいたり、先生方の仕事や作品について聞いたり、果ては人生相談に乗っていただいたり・・・・建築のプロと様々なことを語り合える機会である。この宮脇賞を通して、居住の学生は設計のスキルだけでなく建築観を養っていくのである。

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審査後に山本氏に指導を受ける学生審査後に先生方に指導を受ける学生たち

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築K I Z U K U 第88号

発 行 者 川村 政史 習志野市泉町1-2-1 日 本 大 学 生 産 工 学 部 建 築 工 学 科 教 室編  集 日本大学生産工学部建築工学科 藤谷・川島 印刷 美津濃印刷株式会社

TEL 03-3835-0870FAX 03-3835-0925

1.巻頭言 ‥‥‥ 1

2.修士論文 金井賞 ‥‥‥ 2

3.修士論文 斎藤賞 ‥‥‥ 4

4.平成20年度修士論文題目 ‥‥‥ 6

5.平成20年度卒業設計審査会・卒業論文審査会 ‥‥‥ 8

6.卒業論文 桜建賞 ‥‥‥ 10

7.卒業設計 桜建賞 ‥‥‥ 13

8.平成20年度 各賞受賞者 ‥‥‥ 15

9.平成21年度建築工学コースゼミナール ‥‥‥ 16

10.平成21年度建築・環境デザインコースゼミナール ‥‥‥ 20

11.平成21年度居住空間デザインコースゼミナール ‥‥‥ 23

12.海外研修旅行の報告 ‥‥‥ 24

13.宮脇賞 選考会 ‥‥‥ 26

14.教室ニュース ‥‥‥ 30

目   次

【海外派遣】

■師橋憲貴専任講師は、平成20年度日本大学海外派

遣研究員(長期)、研究題目「アメリカにおける建設

廃棄物の再資源化に関する調査研究」のため、米国

ニューヨーク州のコロンビア大学(Department of

Civil Engineering and Engineering Mechanics)へ平

成21年3月29日から約1年間出張される。

【海外調査】

■湯浅昇准教授は、平成20年8月26日~9月12日・

平成21年3月12日~19日、シチリア・イタリア国

宝RC飛行船格納庫(第1次世界大戦中で供用)、同国

宝Vicofrte教会堂、パドバァ、ヴェローナにて、日

伊共同調査(科研基盤研究A)に参加した。

【海外講演】

■松井勇教授、湯浅昇准教授、佐々木隆助手、高橋

英孝院生、御子柴信也院生は、平成20年8月7日~9

日に韓国・大田で開催された「韓国・日本建築材料

施工Joint Symposium参加」で講演発表を行った。な

お、湯浅昇准教授は日本側副組織委員長を務めた。

【退職者】

福島曉男教授は平成20年6月21日をもって退職さ

れました。長い間、ご苦労様でした。

下記の先生方は平成21年3月31日をもって退職され

ます。長い間、ご苦労様でした。

伊藤 眞人 (非常勤講師)

梶浦  暁 (非常勤講師)

土岐  新 (非常勤講師)

逸見 義男 (非常勤講師)

村上 處直 (非常勤講師)

横山 ゆりか(非常勤講師)

渡辺  治 (非常勤講師)

【人 事】

・川村政史教授は4月1日付けで学科主任に任命さ

れた。

・櫻田智之教授は4月1日付けで専攻主任に任命さ

れた。

・北野幸樹助手は4月1日付けで専任講師に昇格さ

れた。

・亀井靖子助手は4月1日付けで専任講師に昇格さ

れた。

【新規任用:非常勤講師】

福島曉男非常勤講師は平成20年6月22日付けで新規

任用された。

(担当科目:建築構造力学特議1)

教 室 ニ ュ ー ス