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Keysight Technologies B1500Aを使用した太陽電池セルの IV/CV特性評価 Application Note

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Keysight TechnologiesB1500Aを使用した太陽電池セルの IV/CV特性評価

Application Note

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はじめに

化石燃料に代わる代替エネルギーの出現が強く望まれる中、世界的な環境問題への取り組みが進んでいます。それに伴い、長期にわたり枯渇することなく、環境にも優しい信頼性の高いエネルギー技術として、太陽電池セルによる太陽光発電システムへの関心が高まっています。低コストでより高い変換効率を持つ太陽電池セルを生産し、それによって太陽から注がれる無限のエネルギーを活用するために、様々な種類の太陽電池セルの開発に継続的な取り組みが行われています。

Keysight B1500A半導体デバイス・アナライザは、半導体デバイスの特性評価に用いられる標準的な測定器です。電流/電圧(IV)測定やキャパシタンス/電圧(CV)測定などの、多くの太陽電池セルの測定内容は半導体デバイスの測定内容と同じであるため、B1500Aは太陽電池セルの特性評価においてもとても有効な測定器と言えます。このアプリケーション・ノートでは、従来のシリコン太陽電池から最新技術を駆使した新種の太陽電池に及ぶ、様々な種類の太陽電池セル評価へのB1500Aの利用法を紹介します。

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太陽電池セルとは

様々な種類の太陽電池セルの開発が行われていますが、現在工業生産されている太陽電池セルの大部分は単結晶シリコン、多結晶シリコン、あるいはアモルファス・シリコンなどを用いたシリコン系太陽電池です。シリコンは自然界に豊富な安定した物質であり、電気的にも物理的にも化学的にもバランスのとれた特性を持ち、また大量生産にも理想的な物質です。こうした特性のおかげで、シリコンは電子工学分野において好ましい物質となったわけですが、同じ理由から太陽電池セルの分野においてもシリコン系のデバイスが支配的となっています。しかしながら、

太陽電池セルの静的特性と動的特性を表すモデルには、一般的に異なる等価回路が用いられます。図1はそれぞれに用いられる等価回路モデルを図示したものです。

太陽電池セルの静的振る舞いを表す直流等価回路は、一般的に並列に接続された電流源、pn接合ダイオード、シャント抵抗(Rsh)と、それらと直列に接続された抵抗(Rs)で構成されます。電流源は、光によって注入される電荷量を表します。Rs

は、基本的にはバルク抵抗などによる太陽電池セルの全オーミック損失を表します。Rsをより小さくすることが、太陽電池セルの変換効率を増加させることにつながります。Rshはバルクにおける再結合やデバイス表面における再結合に伴う電流の損失を表します。この場合は、より大きなRshを持つセルほど電流損失が少ないため、より高い変換効率を持つ太陽電池セルということになります。

交流等価回路には一般的に三素子モデルが用いられ、並列キャパシタンス(Cp)、並列抵抗(rp)及び直列抵抗(rs)で構成されます。この交流等価回路は太陽電池セルの動的振る舞いを表すために用いられます。Cpは空乏層容量(Ct)と拡散容量(Cd)の並列接続で構成され、CtもCdも印加電圧に依存します。加えて、Cdは交流信号周波数にも依存します。rpはRshと動的抵抗(Rd)の並列接続で、Rdもまた印加電圧依存性を示します。

依然としてある程度の改善の余地があるとはいえ、シリコン系太陽電池セルの性能はほぼ理論限界値に近づいています。その上、太陽電池セルへの潜在的な需要に対して、太陽電池セルの変換効率を最適化する上で必要とされる、高品質、高純度のシリコン結晶はコストも高く、その供給が不足することも懸念されています。こうした現状から、変換効率を向上しながらも低コスト化を実現するために、Cu(In、Ga)Se2(CIGS)などの化合物半導体太陽電池や色素増感型太陽電池(DSC)といった新たな材料を用いた太陽電池セルの開発が進められています。

分類 材料/形式 課題

シリコン単結晶 デバイス構造の開発

結晶品質の向上多結晶アモルファス 多接合化

化合物 半導体

Ⅲ-V族 化合物半導体 GaAsInP

バンド・ギャップの制御 多接合化

Ⅱ-VI族 化合物半導体

CdTe/CdS Cu2S/CdS

カルコパイライト系 CIGS

有機半導体ペンタセン フタロシアニンメロシアニン

多接合化を含むデバイス構造の開発 材料の開発

光化学系 色素増感型 材料の開発

表1. 太陽電池の分類とその課題

太陽電池セル

直流等価回路

Rs

Rsh 負荷

+

太陽電池セル

交流等価回路

rs

rpCp 負荷

+

図1. 太陽電池セルの静的及び動的振る舞いを表す等価回路

3

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太陽電池セルのパラメータ抽出

表1は様々な種類の太陽電池セルとそれぞれが直面している課題についてまとめたものです。いずれの太陽電池セルにおいても、エネルギー変換効率を向上することが最終的な課題です。変換効率の向上は、太陽電池セルを製造するために大量に使用される高価な材料を減らすことにつながり、また周辺部材にかかるコストを減らすことにもつながります。その結果、太陽電池セルのワットあたりのコストを下げることができます。後述されるIV特性の測定は、太陽電池セルの変換効率を示すパラメータを評価するために必要不可欠な測定項目です。

IV測定に加えて、キャパシタンス測定や時間領域測定も太陽電池セルの特性を詳しく評価するために必要とされています。バルク内に存在する欠陥準位は、界面やバルクにおけるキャリア再結合に直接影響を及ぼすので、太陽電池セルの性能に与える悪影響を最小限に抑えるために、こうした欠陥準位を評価することは不可欠となります。容量測定は、主にこうしたバルク内の欠陥準位を評価するために行われます。この欠陥準位の振る舞いを理解することは、多接合構造を持つ太陽電池セルの研究や太陽電池セルのバンド・ギャップを制御する上でもまた重要です。一方で、太陽電池セルの性能を最適化するために、変換効率に大きな影響を与える要素の一つである、キャリアの拡散長を評価することも大切です。時間領域測定はこうしたキャリアの拡散長などを測定するために用いられます。

この時の電流、電圧はそれぞれ最大電力動作電流(Imax)、最大電力動作電圧(Vmax)と定義されます。曲線因子(FF)と変換効率(η)は、太陽電池セルの性能を表す指標として用いられます。曲線因子はPmax

をVocとIscの積で割った比で定義されます。変換効率は入力光の放射照度(E)と太陽電池セルの表面積(Ac)の積に対するPmaxの割合で定義されます。

IV測定略記号 パラメータ名 単位Isc 短絡電流 A

Jsc 短絡電流密度 A/cm2

Voc 開放電圧 V

Pmax 最大出力 W

Imax 最大電力動作電流 A

Vmax 最大電力動作電圧 V

FF 曲線因子 η 変換効率 %Rsh シャント抵抗 ΩRs 直列抵抗 Ω

キャパシタンス測定略記号 パラメータ名 単位Cp 並列容量 F

Nc キャリア密度 cm-3

Ndl Drive Level Density cm-3

時間領域測定略記号 パラメータ名 単位τ 少数キャリア寿命 s

S 表面再結合速度 cm/s

Ld 少数キャリア拡散長 m

表2. 太陽電池セルの基本的なパラメータ

表2は太陽電池セルの特性を表す代表的なパラメータをまとめたものです。

IV測定から得られる パラメータ

太陽電池セルに関する多くのパラメータは、簡単なIV測定から得ることができます。図2は、一般的な太陽電池セルの光照射下における順方向バイアスによるIV特性を示したものです。短絡電流(Isc)は、太陽電池セルの両端子を短絡した状態の時にセルに流れる電流です。開放電圧(Voc)は太陽電池セルに流れる電流を0 Aとした時のセルの両端子に発生する電圧で、セルから得ることのできる最大電圧となります。最大出力(Pmax)は、太陽電池セルが最大出力を発生する状態を表し、

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Vmax

Isc∆Vsc

Imax

Voc

∆Isc

∆Voc

∆VscRsh = – –––––– ∆Isc ∆VocRs = – –––––– ∆Ioc

∆Ioc

Pmax

電流

電圧

RshやRsを抽出する方法にはいくつかありますが、最も簡単な方法の一つは図2に示されるようにIV特性の傾きを利用する方法です。この方法で得られるRsの値は、実際の直列抵抗値にほぼ比例するもののやや大きい値となる傾向にあります。

より正確なRsの値を抽出するために、異なる放射照度の入力光を用いて得られた複数の順方向バイアスによるIV測定結果を利用する方法があります(図3を参照)。はじめに、任意の放射照度の入力光を用いて順方向バイアスによるIV測定を行い、図に示すようにVmaxよりも少し大きい電圧V1を選択します。次に、ΔI=Isc1(0)-Isc1(V1)となるΔIの値を算出します。このような手順を図3に示されるように異なる放射照度の入力光下で得られたIV測定結果についてさらに2回繰り返します。最終的に次に示すようにR1、R2及びR3の平均値からRsを抽出することができます。

ここで

,光を遮断した状態での逆方向バイアスによるIV測定からはRshに関する情報を得ることができます。Rshを抽出するもう一つの方法は、逆方向バイアスによるIV特性の線形領域における傾きを利用します(図4を参照)。この時、Rshは次の式で定義されます。

Vmax V1 V2 V3

Isc1

Isc2

Isc3

∆I∆I

∆I

Pmax

電流

電圧

図3. 太陽電池セルのIV特性から直列抵抗(Rs)を抽出する方法

図4. 逆方向バイアスによる一般的な太陽電池セルのIV特性

∆I

∆V

Rshの抽出に用いられる 線形領域

電圧

電流

ブレークダウン 領域

図2. 一般的な太陽電池セルの順方向バイアスによるIV特性

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キャパシタンス測定から得られるパラメータ

キャパシタンス測定もまた太陽電池セルの特性を評価するために用いられます。CV測定は最も一般的なキャパシタンス測定で、次の式を用いてキャリア密度(Nc)を抽出するために利用されます。

ここで、qは電荷量、Ksは半導体の比誘電率、ε0は真空の誘電率、Aは太陽電池セルの表面積、Vbiはビルトイン・ポテンシャルを意味します。1/C2–Vプロットは、Mott-Schottkyプロットと呼ばれ、空乏層幅(W)に対するNc

分布は次に示すようにMott-Schottkyプロットの傾きから得ることができます(図5を参照)。

ここで

キャパシタンスの交流電圧依存特性(CVac)測定は、デバイスの欠陥密度(Nd)に関する情報をもたらします。この方法はDrive-level Capacitance Profiling(DLCP)として知られており、印加された交流信号のピーク・トゥ・ピーク電圧dV(=Vpeak-to-peak)の関数

を基に、容量の非線形応答を調べることにより、深い欠陥密度を評価するために

使用されます。DLCPによって得られる密度はDrive Level Density(Ndl)とも呼ばれ、次の式で定義されます(図6を参照)。(注:前述の式におけるC1、C2などはF/V、F/V2などの単位を持ちます。)

ここで

図5. Mott-Schottkyプロットと電荷密度分布

図6. DLCP測定とNdlの分布

1.4E+15

1.2E+15

1.0E+15

8.0E+14-5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0

Voltage (V)

6.E+13

4.E+13

2.E+13

0.E+13

W (µm)

1/Cp

2 [F-2]

Nc [c

m-3]

1.5 2.0 2.5 3.0

Mott-Schottkyプロット 電荷密度分布

163162161160159158157

Cp [n

F]

1.8E+15

1.6E+15

1.4E+15

1.2E+150 200 400 600 800

Vpp (mV) W (µm)1.5 2.0 2.5 3.0

0

-1

-2

-3

-4

-5Time

Drive-level capacitance profile

Nc [c

m-3]

直流バイアス電圧ピーク・トゥ・ピーク電圧

キャパシタンスの 交流電圧依存特性

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キャパシタンスの周波数依存特性(Cf)測定も同様に、太陽電池セルの動的振る舞いを理解するために利用されます。Cf測定の結果は、しばしばインピーダンス面に複素数を用いて描かれ、このプロットはナイキスト・プロット、コール‐コール・プロット、複素インピーダンス・プロットなどと呼ばれます(図7を参照)。

時間領域測定から得られる パラメータ

少数キャリア寿命(τ)、表面再結合速度(S)、少数キャリア拡散長(Ld)といった、太陽電池セルの再結合パラメータを評価するために、様々な時間領域測定方法が開発されています。

最もよく使われる方法の一つに、電気的もしくは光学的に励起してその減衰を評 価 す るOpen Circuit Voltage Decay(OCVD)があります(図8を参照)。電気的に励起する場合には、Iscに等しい定電流を太陽電池セルに印加し、印加電流を突然遮断した後のセルの両端に発生している電圧の減衰を測定します。一方、光学的に太陽電池セルの励起を行う場合には、電流の代わりにパルス光を用います。また、短絡電流状態においても、光学的な励起を遮断した後に太陽電池セルに流れる電流を測定する方法があり、この方法はShort Circuit Current Decay(SCCD)と呼ばれます。

図7. キャパシタンスの周波数依存特性とナイキスト・プロット

Frequency (Hz)

180

175

170

165

160

20

15

10

5

0

Z' [Ohm]

Cp [n

F]

Z'' [

Ohm

]

0 10 20 30 401.E+03 1.E+04 1.E+05

Dark

Illuminated

キャパシタンスの 周波数依存特性

ナイキスト・プロット コール‐コール・プロット 複素インピーダンス・プロット

図8. Open Circuit Voltage Decay測定

Illum

inat

ed Dark

τ

Voc τ

Voc

光学的な励起 電気的な励起

印加電流

時間

電圧

時間

電圧

時間

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図9. SMUの等価回路

図10. SMUを用いたIV測定

A –

–V

Common

SMU force

Voltage (V)

60

40

20

0

-20

-40

-60

Curre

nt (m

A)

-0.50 -0.25 0.00 0.25 0.50

Illuminated

Dark

B1500A太陽電池セル・テストの主な特徴

B1500Aメインフレームは10個のモジュール・スロットを持ち、ソース/モニタ・ユニット(SMU)、マルチ周波数容量測定ユニット(MFCMU)、波形発生器/高速測定ユニット(WGFMU)及び高電圧パルス・ジェネレータ・ユニット(HV-SPGU)などの様々な種類のモジュールを搭載することができます。その上、B1500Aメインフレームはグランド・ユニット(GNDU)を標準搭載しています。このGNDUは常に0 Vを出力する定電圧源で最大±4.2 Aまでの電流を流すことができます。これらのモジュールとグランド・ユニットを使用することで、基本的なIV測定や容量測定から高速IV時間領域測定まで、広範囲にわたるパラメータ評価を行うことが可能です。

IV測定機能

これまでに述べてきたように、Isc、Jsc、Voc、Pmax、Imax、Vmax、FF、η、Rsh、Rs

などの太陽電池セルの基本的なパラメータは簡単なIV測定から抽出することができます。B1500AのSMUはこれから記述するように四象限にわたる太陽電池セルのIV測定を行うことができます。

SMUは電流源、電圧源、電流計、電圧計及びいくつかのスイッチで構成される片線接地のユニットです(図9を参照)。SMUはデバイスのIV特性を四象限全てにわたり測定することが可能で、太陽電池セルの光照射下のIV特性と光を遮断した状態でのIV特性を外部スイッチの切り替えなどを行うことなく測定することができます(図10を参照)。また、SMUは電圧や

MPSMU HPSMU HRSMU印加/測定最大値 (絶対値)

電流 100 mA 1 A 100 mA電圧 100 V 200 V 100 V

最小測定分解能 電流 10 fA 10 fA 1 fA電圧 0.5 μV 2 μV 0.5 μV

最大電力 2 W 14 W 2 W

表3. SMUの測定能力の比較

電流を印加/測定することができるだけでなく、デバイスの損傷を防ぐために出力電圧や出力電流を制限することのできるコンプライアンス機能も備えています。例えば、SMUが電圧源モードにある時、電流コンプライアンスを設定することで測定対象デバイス(DUT)に大きな電流が流れることを防ぐことができます。

B1500Aでは、ミディアム・パワー SMU(MPSMU)、ハイ・パワー SMU(HPSMU)、高分解能SMU(HRSMU)の三種類のSMUを使用することができます。これから測定しようとするデバイスの種類にあわせて最適なSMUを選択することが可能です。表3はそれぞれのSMUの能力の違いについてまとめたものです。また、図11は各々のSMUが出力/測定することができる電流/電圧の範囲を示しています。

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図12. 色素増感型太陽電池セル(DSC)のステップ電圧応答

図13. B1500Aの片道掃引と往復掃引の比較

時間

電流

電圧

往復掃引

ディレイ・タイム

測定完了トリガ出力

時間

スタート値

ストップ値

片道掃引

ディレイ・タイムホールド・タイム

測定完了

測定

トリガ出力

時間

スタート値

ストップ値

0

0

1 Aを超える短絡電流を持つ太陽電池セルを測定する場合や、200 Vを超える電圧を評価する必要がある場合には、Keysight B1505Aパワーデバイス・アナライザ/カーブトレーサを用いて評価を行うことができます。B1505Aは20 Aまでの電流を測定することができる大電流モジュール(HCSMU)や3000 Vまでの電圧を測定することができる高電圧モジュール(HVSMU)を搭載することができます。加えてB1505Aには、B1500Aに搭載可能なモジュールと同一のHPSMUとMFCMUも搭載可能です。B1505Aに関するより詳しい情報については、B1505Aのカタログ(5989-4158JAJP)をご参照下さい。

SMUで掃引測定を行う場合には、ディレイ・タイムを指定することが可能です。このパラメータを指定することにより、掃引測定の各電圧ステップにおいて、電圧設定後に実際に測定するまでの待ち時間を設定することができます。この機能は、DSCのような最新技術を駆使した太陽電池セルを評価するために必要不可欠なものです。これらのセルは明らかなステップ電圧応答を示すために、セルの特性を正しく評価するためにはこのディレイ・タイムを正確に制御することが重要です(図12を参照)。B1500Aの掃引測定におけるディレイ・タイムは100 μsの分解能で指定することができます。

SMUはまた往復掃引機能を備えています。図13は片道掃引と往復掃引の動作を比較したものです。多くのデバイスは片道掃引を用いてその特性が評価されますが、太陽電池セルの種類によってはそのIV特性が掃引方向依存性を示す場合があります。こうした場合には往復掃引機能を用いることで、特別にプログラムを用意することなく簡単にデバイスの特性評価を行うことができます。

図11. SMUの出力可能な電流/電圧範囲

100

50

20

-20

-50

-100

-100 -40 -20 20 40 100

電流(mA)MPSMUHRSMU

電圧 (V)

500

1000

125

50

-50

-125

-500

-1000

-200 -100 -40 -20 20 40 100 200

電流(mA)

HPSMU

電圧 (V)

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図14. WGFMUの等価回路

任意直線 波形出力 (ALWG)

出力

PGモード

高速IVモード

WGFMU

50 Ω

VA

V

キャパシタンス測定機能

キャパシタンス測定を用いて太陽電池セルの動的振る舞いを評価することができます。これまでに述べてきたように、Mott-Schottkyプロット、ナイキスト・プロット及びDLCPなどはキャパシタンス測定を基にしており、空乏層幅に対するNc

やNdlといったパラメータの分布を評価することができます。

基本的な直流バイアス電圧掃引機能に加えて、B1500AのMFCMUは周波数掃引機能や交流バイアス電圧掃引機能を備えています。これらの機能は太陽電池セルのキャパシタンス特性を評価するために必要とされる機能です。表4はMFCMUでサポートされる測定範囲をまとめたものです。MFCMUを用いることのメリットは、独立した外部容量計を別途用意する必要がないということだけではなく、B1500AのMFCMUをSMUとともに用いることで太陽電池セルに±100 Vまでの直流バイアス電圧を印加しながらキャパシタンス測定を行うことも可能である点です。

時間領域測定機能

時間領域測定は、τ、S、Ldといった再結合パラメータを評価するために用いられます。こういった形の時間領域測定を行う場合には一般に高速サンプリング機能が必要とされます。このような測定を行うために、ある種のIVコンバータを介してオシロスコープを用いて測定される場合が多く見受けられますが、この場合には複数の測定器を組み合わせたラック&スタック・ソリューションを組み上げることになります。

SMUは時間領域のサンプリング機能を備えているので、電圧/時間(V-t)や電流/時間(I-t)のサンプリング測定を行うことができます。したがって、このサンプリング機能を用いて、先ほど述べたような太陽電池セルの遷移特性を評価することも

可能です。最小サンプリング間隔とタイム・スタンプの分解能はいずれも100 μs で、これは比較的遅い遷移応答を示す太陽電池セルの評価には充分な速さです。

もしデバイスの応答が100 μsよりも速いサンプリング・レートのIV測定を要求する場合には、B1500AのWGFMUモジュールがその評価を行うための選択肢の一つとなります。WGFMUは任意直線波形出力(ALWG)機能と同期して機能する高速IV測定機能を備えています(図14を参照)。

最大値 最小値 分解能周波数 5 MHz 1 kHz 1 mHz(最小)出力信号レベル(rms) 250 mV 10 mV 1 mVDCバイアス電圧 25 V

(MFCMUのみ) 100 V

(SMUと用いた場合)

-25 V (MFCMUのみ) -100 V

(SMUと用いた場合)

1 mV

DCバイアス電流 10 mA (50 Ωレンジ)

表4. MFCMUの測定範囲

ALWG機能を用いることで、様々な形の波形を10 nsの分解能で出力させることができます。WGFMUはPGモードと高速IVモードの二つのモードを持ち、表5はそれぞれのモードにおけるWGFMUの機能と範囲をまとめたものです。

モード 機能 電圧出力 レンジ

電圧測定 レンジ

電流測定 レンジ

高速IV 電圧出力/電流測定 電圧出力/電圧測定

-3 V to 3 V-5 V to 5 V-10 V to 0 V

0 V to 10 V

-5 V to 5 V-10 V to 10 V

1 μA10 μA

100 μA1 μA

10 μAPG 電圧出力/電圧測定 -3 V to 3 V

-5 V to 5 V-5 V to 5 V

表5. WGFMUの機能と測定レンジ

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ソフトウェア環境

EasyEXPERTはB1500Aに標準装備される優れたソフトウェア環境です。EasyEXPERTは230を超えるアプリケーション・テストを標準で備え、これらのテストは使いやすいようにカテゴリ別に整理されています。こうしたアプリケーション・テストを用いることで、測定器の設定方法を覚えることなどに無駄な時間を費やすことなく、生産的な太陽電池セルのパラメータ測定をすぐに始めることができます。その上、EasyEXPERTは、二種類以上の測定データを同一のY軸上にプロットする機能、重要な測定データを強調するために複数のマーカやポインタをグラフ上に表示する機能、測定結果からパラメータを自動的に計算する機能、といった様々なデータ解析機能を備えています。全てのアプリケーション・テストに対してユーザは修正を加えることが可能で、測定パラメータを追加したり、測定後に算出するパラメータを追加したり、そのデバイス独自の要求に合わせてユーザは簡単にテストを変更することができます。

その他の便利な機能

SMU CMU統合ユニット(SCUU)はIV測定とキャパシタンス測定の両方を行う必要がある場合にはとても便利です(図15を参照)。SMUとMFCMUでは違うタイプのコネクタを使うので、IV測定とキャパシタンス測定を切り替えるために、一般的にはそのケーブル接続を手動で変更しなければならないため、その作業は非常に不便で手間がかかります。しかしながら、このSCUUを用いることでそのような手動によるケーブル接続の変更を行う必要がなくなります。詳しくは、SCUUの効果について記述しているB1500Aのアプリケーション・ノートB1500-3(5989-3608JAJP)をご参照下さい。

B1500Aのメインフレームは10個のモジュール・スロットを持つため、一つのB1500Aに最大で10個のSMUを搭載することができます。太陽電池セルの測定スループットを向上させるために、これらの複数のSMUを同時に動作させてパラレル測定を行うことも可能です。加えて、

図16. パラレル測定と外部機器の制御を含む測定ソリューションの例

恒温槽

光源

GPIBなど

パラレル測定

B1500ASMUs

GNDU

図15. SCUU接続の詳細

SMU1

SCUU

SMU2

MFCMULc

LpHp

Hc

B1500AはGPIB接続などを通して光源や恒温槽などの外部機器と通信を行うこともできるので、B1500Aを測定コントローラとして様々な外部機器を組み合わせた自動測定システムを構築することも可能です(図16を参照)。

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サンプル・アプリケーション・テスト

アプリケーション・テスト名 測定の種類 パラメータと出力Solar Cell IV IV測定Solar Cell Fwd IV測定 Isc、Jsc、Voc、Pmax、Imax、Vmax、FF、η、

Rsh、Rs

Solar Cell Rev IV測定 Rsh

Solar Cell Cp-V C-Vdc測定 Mott-Schottkyプロット、Nc

Solar Cell Nc-W C-Vdc測定 Nc

Solar Cell Cp-Freq Log C-f測定Solar Cell Nyquist Plot C-f測定 ナイキスト・プロットSolar Cell Cp-AC Level C-Vac測定 Ndl

Solar Cell DLCP C-Vac測定 Ndl

表6. サンプル・アプリケーション・テスト

太陽電池セル評価用にEasyEXPERTアプリケーション・テストのサンプルが用意されており、キーサイトのウェブ・サイトからダウンロードすることができます。B1500AのEasyEXPERT上で動作する、これらのサンプル・アプリケーション・テストを用いることで、独自のテスト・プログラムを開発するために多くの時間を費やすことなく、すぐに太陽電池セルの評価を始めることができます。表6は用意されているサンプル・アプリケーション・テストとその測定内容、抽出されるパラメータをまとめたものです。図17から図25はこれらのサンプル・アプリケーション・テストを用いて得られた実際の測定結果を示したものです。

「Solar Cell IV」は簡単なIV測定を行い、太陽電池セルの全体的な特性を表示します。このサンプル・アプリケーション・テストでは掃引電圧のスタート値、ストップ値、ステップ値などを指定する必要があります。

「Solar Cell IV Fwd」は順方向バイアスによるIV測定を行い、太陽電池セルの基本的な静的パラメータであるIsc、Jsc、Voc、Pmax、Imax、Vmax、FF、η、Rsh、Rsなどを抽出します。またこれらのパラメータに加えて、このアプリケーション・テストはIV特性や電力/電圧特性を表示します。

図17. アプリケーション・テスト(Solar Cell IV)の例

図18. アプリケーション・テスト(Solar Cell IV Fwd)の例

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「Solar Cell IV Rev」は逆方向バイアスによるIV測定を行い、線形領域におけるIV曲線の傾きからRshを抽出します。

「Solar Cell Cp-V」は太陽電池セルのキャパシタンス測定を行い、キャパシタンスの直流バイアス電圧依存特性を表示します。CV特性に加えて、Mott-Schottkyプロットを表示し、また測定結果からNc

を抽出します。

「Solar Cell Nc-W」は太陽電池セルのキャパシタンス/直流バイアス電圧特性を測定し、Mott-Schottkyプロットから抽出したNcの空乏層幅依存特性を表示します。 図19. アプリケーション・テスト(Solar Cell IV Rev)の例

図20. アプリケーション・テスト(Solar Cell Cp-V)の例

図21. アプリケーション・テスト(Solar Cell Nc-W)の例

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図22. アプリケーション・テスト(Solar Cell Cp-Freq Log)の例

図23. アプリケーション・テスト(Solar Cell Nyquist Plot)の例

図24. アプリケーション・テスト(Solar Cell Cp-AC Level)の例

「Solar Cell Cp-Freq Log」は太陽電池セルのキャパシタンス/交流信号周波数特性を測定し、キャパシタンスの周波数依存特性を評価します。印加する交流信号の測定周波数のスタート値、ストップ値などの条件を指定します。

「Solar Cell Nyquist Plot」もまた太陽電池セルのキャパシタンス/交流信号周波数特性を測定しますが、インピーダンス面にその複素インピーダンスの周波数依存特性を表示します。印加する交流信号の測定周波数のスタート値、ストップ値などの条件を指定します。

「Solar Cell Cp-AC Level」は交流信号の振幅の関数としてキャパシタンスを測定し、キャパシタンスの交流バイアス電圧依存特性を表示し、その結果からNdlを抽出します。交流信号のピーク・トゥ・ピーク電圧のスタート値、ストップ値、ステップ値、直流バイアス電圧値、交流信号の周波数などを指定します。この測定はDLCPとも呼ばれています。

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図25. アプリケーション・テスト(Solar Cell DLCP)の例

「Solar Cell DLCP」は直流バイアスと交流バイアスの両方を変化させながらキャパシタンス測定を行い、その結果からNdl

を抽出します。測定後に、Ndlの空乏層幅依存特性を表示します。直流電圧のスタート値、ストップ値、ステップ値や交流信号のピーク・トゥ・ピーク電圧のスタート値、ストップ値、ステップ値、また交流信号の周波数などを指定します。

まとめ

このアプリケーション・ノートでは、B1500Aを使用して太陽電池セルの特性評価を行う方法について紹介しました。基本的なIV特性評価やキャパシタンス特性(CV、CVacやCf)評価から高速IV時間領域測定まで、広範囲にわたる太陽電池セルのパラメータ評価を可能にする、様々な種類のモジュール(SMU、MFCMU、WGFMU、HV-SPGU)を、B1500Aに搭載することができます。

EasyEXPERTが提供するわかりやすく使い勝手の良い測定環境を利用することで、測定器の設定方法を覚えることなどに無駄な時間を費やすことなく、生産的な太陽電池セルのパラメータ測定をすぐに始めることが可能です。

EasyEXPERTに標準で提供される230を超えるアプリケーション・テストに加えて、太陽電池セル評価のために用意されたサンプル・アプリケーション・テストをKeysightのウェブ・サイトからダウンロードすることができます。これらのサンプル・アプリケーション・テストを利用することで、テスト・プログラムの開発に多くの時間を費やすことなく、簡単に基本的な太陽電池セルのパラメータを抽出することができます。

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This document was formerly known as Application Note B1500A-14

16 | Keysight | B1500Aを使用した太陽電池セルのIV/CV特性評価 - Application Note

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