journal of life cycle assessment, japan

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Journal of Life Cycle Assessment, Japan 8 Vol.17 No.1 January 2021 1. はじめに 国連世界観光機関(UNWTO) 1) によると、毎日 380 万 人以上、年間約14億人が世界中を観光している。国際労 働機関(ILO) 2) によれば、2019 年における世界の雇用者 数の 10.3%が観光部門で働いており、世界経済を下支えし ている産業の一つである。国連は、グローバル化により急 速に観光が盛んになり経済発展を遂げる一方で、文化や遺 産の保護・継承、自然環境の保全、労働環境の改善などの 課題が明確化され、観光においても「持続可能性」を追求 することが課題となっていることから、観光の役割につい ての認識を広めるため、2017年を「国際開発のための持 続可能な観光の年」と定めた 3) 持続可能な観光は、「訪問者、産業、環境、そしてそれ らを受け入れるコミュニティのニーズを満たしながら、現 在、将来の経済的、社会的、環境的影響に完全に対処する 観光」と定義されている 4) 。これは、あらゆる種類の目的 地でのあらゆる種類の観光に適用され、観光には、余暇を 楽しむ観光(個人旅行)とMICE(ミーティング、インセ ンティブツアー、国際会議、展示会等)のようなビジネス を目的としたビジネスツーリズムも含まれる 5) 観光は、経済に大きな影響を与える産業の一つとして注 目されているが、現状では厳しい局面に立たされている。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による世界的パ ンデミックはいまだ収束の見通しが立っていない。2020 年12月にUNWTOが更新したCOVID-19関連のレポート によると、2020年における世界全体の海外旅行者数は 70% 以上減少し、世界のGDPの2%以上に相当する経済損失が 見込まれている 6) Freya Higgins-Desbiolles 7) は、COVID-19による深刻 な影響から観光産業をどのようにリカバリーするべきかに ついて、観光学者の間で大きな議論が巻き起こったと指摘 している。これまで通りのビジネスへのリカバリーを通じ て現状を支持するものと、持続可能性等の拡大の可能性を 構想するものに大きく意見が分かれている。大橋 8) によ れば、観光のあるべき姿が提起され、それに応じて実際の 観光活動も行われるようになることが必要であるとしてい る。旧来のマスツーリズムに代わるオルタナティブツーリ ズム(現在の言葉で、サステイナブルツーリズム)は、個々 の具体的なツーリズム形態を想定したものではなく、どの ような形態のツーリズムであれ、それに取り組む場合の精 神、理念あるいは指導原理を提示したものを指す。そして、 Chang et al. 9) が提唱するように、危機を将来の持続可能 性の機会と捉え、経済的、社会的、環境的貢献を最大化す るための観光活動を再開することが重要である。 日本においては、政府が「温室効果ガス(GHG)の排 出量を 2050年に実質ゼロにする」という目標を 2020年 10 [解説] 持続可能な観光に関する政策動向とLCA研究の方向性 北村 祐介 1,* ,柴原 尚希 2 ,稲葉 敦 3 1 東京都市大学,2 中部大学,3 一般社団法人日本LCA推進機構 連絡先:[email protected] 概要:国連世界観光機関(UNWTO)は、多くの人が移動する観光は地球温暖化などの気候変動に影響する重要な 問題であると警鐘を鳴らしている。観光とライフサイクルアセスメント(LCA)研究では、旅行パッケージ、移動、 宿泊、飲食、産業に起因する温室効果ガス(GHG)をカーボンフットプリント(CFP)で評価している。一方、 近年社会的に注目されている持続可能な開発目標(SDGs)の目標およびターゲットには、明確に観光を対象とし ている項目がある。また、日本でも日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)が発行された。現在、新型コ ロナウィルス感染症(COVID-19)による深刻な影響が続いており、日本の産業は観光業を含めて大きな転換を迫 られているが、同時に、COVID-19 からのリカバリーを起点として、持続可能な観光への大きな転換のチャンスを 迎えていると考えることができる。観光に関連する事業者、業界団体、研究組織、大学などが一体となって持続可 能性に向けた取り組みを実施することが必要とされている。 キーワード :持続可能な観光、持続可能な開発目標(SDGs)、ライフサイクルアセスメント(LCA)、カーボンフッ トプリント(CFP) 特集「日本 LCA 学会の研究会活動(2)」

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Journal of Life Cycle Assessment, Japan

8 Vol.17 No.1 January 2021

1. はじめに

 国連世界観光機関(UNWTO)1)によると、毎日380万人以上、年間約14億人が世界中を観光している。国際労働機関(ILO)2)によれば、2019年における世界の雇用者数の10.3%が観光部門で働いており、世界経済を下支えしている産業の一つである。国連は、グローバル化により急速に観光が盛んになり経済発展を遂げる一方で、文化や遺産の保護・継承、自然環境の保全、労働環境の改善などの課題が明確化され、観光においても「持続可能性」を追求することが課題となっていることから、観光の役割についての認識を広めるため、2017年を「国際開発のための持続可能な観光の年」と定めた3)。 持続可能な観光は、「訪問者、産業、環境、そしてそれらを受け入れるコミュニティのニーズを満たしながら、現在、将来の経済的、社会的、環境的影響に完全に対処する観光」と定義されている4)。これは、あらゆる種類の目的地でのあらゆる種類の観光に適用され、観光には、余暇を楽しむ観光(個人旅行)とMICE(ミーティング、インセンティブツアー、国際会議、展示会等)のようなビジネスを目的としたビジネスツーリズムも含まれる5)。 観光は、経済に大きな影響を与える産業の一つとして注目されているが、現状では厳しい局面に立たされている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による世界的パ

ンデミックはいまだ収束の見通しが立っていない。2020年12月にUNWTOが更新したCOVID-19関連のレポートによると、2020年における世界全体の海外旅行者数は70%以上減少し、世界のGDPの2%以上に相当する経済損失が見込まれている6)。 FreyaHiggins-Desbiolles7)は、COVID-19による深刻な影響から観光産業をどのようにリカバリーするべきかについて、観光学者の間で大きな議論が巻き起こったと指摘している。これまで通りのビジネスへのリカバリーを通じて現状を支持するものと、持続可能性等の拡大の可能性を構想するものに大きく意見が分かれている。大橋8)によれば、観光のあるべき姿が提起され、それに応じて実際の観光活動も行われるようになることが必要であるとしている。旧来のマスツーリズムに代わるオルタナティブツーリズム(現在の言葉で、サステイナブルツーリズム)は、個々の具体的なツーリズム形態を想定したものではなく、どのような形態のツーリズムであれ、それに取り組む場合の精神、理念あるいは指導原理を提示したものを指す。そして、Changetal.9)が提唱するように、危機を将来の持続可能性の機会と捉え、経済的、社会的、環境的貢献を最大化するための観光活動を再開することが重要である。 日本においては、政府が「温室効果ガス(GHG)の排出量を2050年に実質ゼロにする」という目標を2020年10

[解説]

持続可能な観光に関する政策動向とLCA研究の方向性北村祐介1,*,柴原尚希2,稲葉敦3

1 東京都市大学,2 中部大学,3 一般社団法人日本LCA推進機構*連絡先:[email protected]

概要:国連世界観光機関(UNWTO)は、多くの人が移動する観光は地球温暖化などの気候変動に影響する重要な問題であると警鐘を鳴らしている。観光とライフサイクルアセスメント(LCA)研究では、旅行パッケージ、移動、宿泊、飲食、産業に起因する温室効果ガス(GHG)をカーボンフットプリント(CFP)で評価している。一方、近年社会的に注目されている持続可能な開発目標(SDGs)の目標およびターゲットには、明確に観光を対象としている項目がある。また、日本でも日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)が発行された。現在、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による深刻な影響が続いており、日本の産業は観光業を含めて大きな転換を迫られているが、同時に、COVID-19 からのリカバリーを起点として、持続可能な観光への大きな転換のチャンスを迎えていると考えることができる。観光に関連する事業者、業界団体、研究組織、大学などが一体となって持続可能性に向けた取り組みを実施することが必要とされている。キーワード:持続可能な観光、持続可能な開発目標(SDGs)、ライフサイクルアセスメント(LCA)、カーボンフットプリント(CFP)

特集「日本LCA学会の研究会活動(2)」

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9Vol.17 No.1 January 2021

月に掲げたばかりである。欧州連合(EU)からは遅れる発表となったが、世界と足並みを揃える大きな公約を達成するため、日本の産業は大きな転換を迫られることになる。これは、観光業も例外ではない。このような国際的な動向に加え、COVID-19からのリカバリーを起点として、持続可能な観光へ転換する大きなチャンスを迎えていると考えることができる。 本稿では、観光を対象としたライフサイクルアセスメント(LCA)事例を整理するとともに、持続可能な観光に関する政策動向として「持続可能な開発目標(SDGs)」および「日本版持続可能な観光ガイドライン」を紹介する。さらに、コロナ禍で注目が高まる新たな形態の観光を含め、観光を対象とするLCAを今後どのように実施していけばよいか方向性を探る。

2. 観光を対象とした LCA

 LCAによる算定の主なアプローチは、Input-outputLCA(産業部門間の金銭的相互作用に焦点を当てる)とProcess-basedLCA(評価の範囲を構成するさまざまなプロセスに焦点を当てる)の2つが主に用いられる。Input-outputLCAとして、ホテル業界や観光産業を対象とした評価事例がある。Process-basedLCAとして、個別パッケー

ジツアー、移動、宿泊、飲食などの評価事例がある。Fili-monau10)は、観光を対象としたLCAの事例をまとめている(表1)。

2.1 Input-output LCAの事例

 清水ら11)は、産業連関表を利用して、日本と韓国の観光に関連する27産業部門のCO2排出量を調査し、日本の観光産業は全産業平均と比べて生産額あたりのCO2排出量が多いことを示している。Lenzenetal .12)は、multi-regioninput-outputtable(MRIO)を使用して、グローバルツーリズムのカーボンフットプリント(CFP)を計算している。観光に関連する世界のGHG排出量は、これまで十分に定量化されていなかったが、この調査では、160カ国の観光関連データに基づいて、観光のCFPは2009 ~2013年の間に3.9 ~ 4.5Gt-CO2eqに増加すると推定された。これはこれまでの推定の約4倍であり、世界のGHG排出量の約8%を占めていることを明らかにしている。また、旅行や買い物に加えて、飲食にも寄与があることについて指摘をしている。Kitamuraetal.13)は、日本の産業連関表を利用して、日本の観光産業を訪日旅行、国内旅行(宿泊・日帰り旅行)、海外旅行ごとにCFPを算出している。総排出量は約1億3600万t-CO2eqで日本のGHG排出量の約

文献 評価対象 影響領域 国・地域●Input-outputLCA

Scheepensetal.(2015) 観光セクター

気候変動

オランダBerners-Leeetal.(2011) 観光ビジネス イギリス

PattersonandMcDonald(2004)

観光産業

ニュージーランドCadarsoetal.(2015) スペインZhongetal.(2015) 中国

Kitamuraetal.(2020) 日本Qinetal.(2015) 観光目的地 中国

ManfredLenzenetal.(2018) 世界観光 160 カ国Rosenblumetal.(2000) ホテル産業 複数領域 アメリカ

●Process-basedLCACastellaniandSala(2012)

休暇旅行(宿泊を含む)複数領域 イタリア

Filimonauetal.(2011a)

気候変動

イギリスFilimonauetal.(2014) イギリス・フランスElHanandeh(2013) 宗教旅行(宿泊を含む) サウジアラビアPereiraetal.(2015) 休暇旅行(宿泊を除く) ブラジル

Filimonauetal.(2013) パッケージ旅行 イギリス・ポルトガルKuoetal.(2005) ケータリング

複数領域

台湾Michailidouetal.(2015)

宿泊

ギリシャKönigetal.(2007) ポルトガルSáraetal.(2004)

イタリアDeCamillisetal.(2008)Ceruttietal.(2014)

Filimonauetal.(2011b)気候変動

イギリスRosselló-Batleetal.(2010) スペイン

Lietal.(2010) 中国Filimonau10)をもとに、著者らが和訳および一部加筆

表1 観光を対象としたLCA研究の一覧

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10 Vol.17 No.1 January 2021

10%を占めていることを示している。内訳は、移動に伴う排出が全体の56.3%を占め、次いでお土産・買い物が23.2%、宿泊が9.8%、飲食が7.5%、アクティビティが3%であった。 また、Nhamoetal.5)は、観光におけるサプライチェーンの構造を知る上でCFP調査の結果が重要な役割を果たしていると指摘している。Sunetal.14)は、現在までに、学術研究を通じて国内の観光CFPを算出している国は10カ国未満であり、観光CFPの厳密な数値を公式に確立しているのは、スウェーデンとニュージーランドのみであるという課題を挙げている。その上で、四つの重要な情報コンポーネントで構成されるTourismCarbonInformationSystem(TCIS)を概念化している。一つ目に産業連関表を用いた観光のCFP算定、二つ目にGDPあたりのCFP排出量、三つ目に脱炭素化のスピード、最後に他の産業と比較しCFP排出量をモニタリングすること、を挙げている。

2.2 Process-based LCAの事例

 日本LCA学会ニューツーリズム研究会15)では、2009年から観光に関連するCFPの算定方法について調査している。当初は、CO2排出量が計算できる部分とできない部分を明確にしつつ、旅行(ツアー)全体のCO2排出量の算定方法を提案してきた。研究会では、ツアーのCO2排出量の要因を大きく「移動」「食事」「宿泊」「観光」から構成されるものと整理した。伊藤ら16)は輸送を対象に観光の計算方法を検討し、玉利ら17)は宿泊施設、風間ら18)は飲食を対象に評価を実施している。 稲葉19)は、それぞれの要因ごとに調査されたCO2排出量の計算方法を整理し、ツアー全体のCO2排出量の算定方

法としてとりまとめた。これによれば、ツアーのCO2排出量は、1)企画されたツアーでの行動を書き出し、2)それぞれの行動についてのCO2排出量を算定することで算定される。1)はLCAの「フォアグラウンドデータ」の収集に相当し、2)は「バックグラウンドデータ」の収集に相当する。評価の際に利用されるバックグラウンドデータについて、例えば「食事」では、農業生産物の生産のための温室効果ガスの排出量は整理されているが、それを調理する時の温室効果ガスの排出量は示されていないという課題があることが分かっている(要因別の課題の詳細については参考文献19)を参照)。 これらの評価に合わせて、カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム(CFPプログラム)においても、旅行の商品種別算定基準(PCR)が検討された。2014年1月に「旅行」のCFP-PCR20)が認定されており、そのライフサイクルフローは「行く」「食べる」「遊ぶ(算定は任意)」「泊まる」「帰る」で構成され、算定単位は1人1回の旅行である(図1)。各構成要素の名称は異なるが、研究会が提案した評価範囲とほぼ同じである。このようなミクロ的な視点からのボトムアップのライフサイクル評価の方針は、エコマーク(タイプ I 環境ラベル)の認証基準の確立にも活用されている21,22)。 柴原ら23)は、2009年の設立から約10年間で25回開催された研究会における話題提供の内容をまとめている。また、「ツーリズムの持続可能性や環境影響評価にLCAがどのように貢献できるか」について手法論を検討するために、これまでの議論を整理している。そこでは、方法論・評価論について、ツアーのCO2排出量算定にあたり、以下の課題が残されていると示されている。

図1 「旅行」のCFP-PCRのライフサイクルフロー 20)

※全てのエネルギーおよび水の供給と仕様に係るプロセスはフロー図から省略

目的地までの移動

目的地間の移動

食材の調達

調理

調理等における廃棄物の処理

遊興施設における製品・消耗品の製造

製品・消耗品の輸送

遊興施設の運営

遊興施設における

廃棄物の処理

提供物品の製造

提供物品の輸送

宿泊施設の消耗品の製造

消耗品の輸送

宿泊施設の運営

宿泊施設における

廃棄物の処理

宿泊施設における

送迎

最後の目的地からの移動

行く 食べる 遊ぶ(算定は任意) 泊まる 帰る

※全てのエネルギーおよび水の供給と使用に係るプロセスはフロー図から省略

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11Vol.17 No.1 January 2021

 ・ バスの走行距離や食事の想定など、事前算定における不確実性が大きい。

 ・ 1人あたりのCO2排出量に換算する際、バスは乗車人数に、ホテルは宿泊者数に大きく依存する。

 ・ 日常生活でも食事はとる。ツアーで使用しなくても新幹線はダイヤ通りに運行されている。絶対値での評価とするか、日常生活との差分と捉えるか。

 また、旅行者あるいはツアーの販売者視点(算定単位:1人1回の旅行)で評価すると、以下の限界がある。 ・ CO2排出総量を小さくすることは、それぞれの構成

要素起源の負荷を下げることを意味するため、必然的に旅行の付加価値が下がる。

 ・ 公共交通の乗車率やホテルの稼働率を上げれば(つまりツアーへの参加人数を増やせば)、算定単位あたりのCO2排出量は小さくなるが、これはオーバーツーリズム問題と相反する。

3. 持続可能な観光と SDGs

 UNWTO24)は、世界の観光関係者に向けて、SDGsへの貢献を目指す「TourismforSDGs」を発表した。SDGsの目標およびターゲットには明確に観光業を対象としているものが三つあり、Nhamoetal.5)によって表2のようにまとめられている。それぞれのターゲットに対して、「総GDPに占める観光の直接GDPの割合と成長率」といったインディケーターが提案されている。ただし、具体的な算定方法、データ源、評価範囲等が示されているわけではない。 また、UNWTO25,26)は、観光がSDGsに果たすべき具

体的な役割を、17すべての目標に示している。表3に整理するとおり、目標7,9,12,13の四つの目標は、特に気候変動問題との関わりが強いと考えられる。これらの原文では、

「reducegreenhousegases(目標7)」「lowcarbongrowth(目標9,13)」「reducingcarbonfootprint(目標13)」が、GHG排出削減を意図した言葉として用いられている。目標12で明記されている「sustainableconsumptionandproduction(SCP)」においては、そのインディケーターにGHGの削減が含まれており、ライフサイクルの観点から、CFPまたはScope3によるGHG排出量の算定の必要性が示されている27)。 このように、すでにSDGsにおいて「観光産業における具体的な役割」が示されていることが分かる。実際にアクションを取る場合、どのようなことから始めればよいであろうか。SDGsの行動指針であるSDGCompass28)では、「優先課題の決定(ステップ2)」でLCAが紹介されており、バリューチェーンの中で影響の大きい領域をマッピングし、マテリアリティを特定することが推奨されている。また、UNESCO29)は、SDGsの学びにおいて、目標12で「観光」をトピックとすること、およびライフサイクル分析を用いた異なる製品分析をアプローチの例として示している。後述する日本版持続可能な観光ガイドラインでも「観光とSDGs」に取り組む際の例示がある。

4. 日本版持続可能な観光ガイドライン

 UNWTO30)は、途上国等を含む全加盟国での指標適用を想定したSustainableTourismIndicators(STI)を設定した。2008年には、世界50以上の団体が連合して、持続

目標 ターゲット インディケーター

目標 8 すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する

8.9 2030 年までに、雇用創出、地元の文化・産品の販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する

総 GDP に占める観光の直接 GDP の割合と成長率

観光業全体に占める持続可能な観光における雇用の割合

目標 12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する

12.b 持続可能な開発が雇用創出、地元の文化・産品の販促につながる持続可能な観光業にもたらす影響のモニタリングツールを開発・導入する

合意された監視および評価ツールを使用した持続可能な観光戦略または政策および実施された行動計画の数

目標 14 海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する

14.7 2030 年までに、漁業、水産養殖、および観光の持続可能な管理などを通じた、小島嶼開発途上国および後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的利益を増加させる

小島嶼開発途上国および後発開発途上国のすべての国で GDP における持続可能な漁業の割合

Nhamoetal. 5)をもとに、著者らが和訳

表2 観光を対象としているSDGsの目標

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可能な観光の国際基準の策定を目的とする、グローバル・サステナブルツーリズム協議会(GSTC)31)が発足した。GSTCは、観光産業向けに「GlobalSustainableTourismCriteriaforIndustry(GSTC-I)」、観光地向けに「GlobalSustainableTourismCriteriaforDestination(GSTC-D)」を開発している。GSTC-Dは、地域コミュニティのニーズや観光地マネジメントの観点を踏まえており、各国地域の持続可能な観光ガイドラインや指標の策定に利用されている。また、日本では岩手県釜石市がGSTCの国際基準を取り入れている32)。 観光庁33)は、GSTC-Dのような国際基準は汎用性が高い優れた基準であるとしながらも、国や地域によっては設定された個別の項目が社会状況や環境、法制度などの特性に合わないという課題を認識している。例えば、各地で多発する自然災害に対する危機管理や感染症対策、文化的建造物の維持管理、混雑やマナー違反といったオーバーツーリズムに関する課題への対応など、既存の国際基準に加えるまたは内容を充実させるべき項目が存在することが認識されている。そのため、国際的な基準に準拠しつつも、日本の風土や現状に適した内容にカスタマイズした「日本版」

の観光指標を開発するに至った。観光庁は、各地方自治体や観光地域づくり法人(DMO)が持続可能な観光地マネジメントを行うことができるよう、国際基準に準拠した

「日本版持続可能な観光ガイドライン(JapanSustainableTourismStandardforDestinations:JSTS-D)」34)を開発し、2020年6月29日付で公開した。大きく「A.持続可能なマネジメント(16項目)」「B.社会経済のサステナビリティ

(8項目)」「C.文化的サステナビリティ(8項目)」「D.環境のサステナビリティ(15項目)」の4分類から構成され、各項目に関連するSDGsの目標がのべ90個示されている。そのため、持続可能な観光に取り組むだけでなく、観光においてSDGsに取り組む際のガイドとしても参照できる構成になっている。なお、DMOを中心とした観光関連の地域のステークホルダーが一体となって取り組む際には、その内容を記すデスティネーションシートを提出することで、観光庁承認のロゴの活用が可能となる。 JSTS-Dの中で気候変動と関連が強い項目を、表4に整理する。A14では、気候変動による負の影響の想定やその軽減計画など、適応に関する項目が含まれている。また、D12およびD13では、観光客の移動に関する排出量の把握

目標 具体的な役割(一部を抜粋)

目標 7 すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

(和文)持続可能なエネルギー源に対する健全で長期的な投資を促進することにより、温室効果ガスの排出削減、気候変動の緩和に資するとともに、都市や地方、そして遠隔地における革新的で新しいエネルギー対策に貢献することができる。

(原文)Bypromotinginvestmentsincleanenergysources,tourismcanhelptoreducegreenhousegases,mitigateclimatechangeandcontributetoaccessofenergyforall.

目標 9 レジリエント(強靭)なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る

(和文)政府に対して、インフラの強化と産業の革新を促し、観光客や海外投資を誘致する手段として、それらをより持続可能で、資源効率がよくクリーンなものにすることができる。

(原文)Thesectorcan influencepublicpolicyfor infrastructureupgradeandretrofit,makingthemmoresustainable, innovativeandresource-efficientandmovingtowardslowcarbongrowth,thusattractingtouristsandothersourcesofforeigninvestment.

目標 12 持続可能な消費生産形態を確保する

(和文)「持続可能な消費と生産(SCP)」の実践を採択している観光分野は、持続可能性に向けた世界的な転換を加速するための重要な役割を果たすことができる。

(原文)Thetourismsectorneedstoadoptsustainableconsumptionandproduction(SCP)modes,acceleratingtheshifttowardssustainability.

目標 13 気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる

(和文)気候変動に対する世界的な対応の中で主導的な役割を担うことは自らの利益にもかなう。特に運輸および宿泊部門においてエネルギー消費を削減し、再生可能なエネルギー源に転換することにより、現在の喫緊の課題の一つへの対処に貢献できる。

(原文)Tourismstakeholdersshouldplayaleadingroleintheglobalresponsetoclimatechange.Byreducing itscarbonfootprint, inthetransportandaccommodationsector,tourismcanbenefitfromlowcarbongrowthandhelptackleoneofthemostpressingchallengesofourtime.

UNWTO25, 26)をもとに、著者らが一部抜粋・編集

表3 観光がSDGsに果たすべき具体的な役割の例

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やモニタリングを通じて削減する取り組みなどが例示されている。

5. 今後の展望

 国際社会は、パリ協定の削減目標の達成を目指し、低炭素社会から脱炭素社会に向かっている。日本の新たな目標である「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ためには、産業全体が大きな転換を迫られると考えられる。そのため、観光業においても、経済・環境・社会へ配慮したSDGsへの取り組みが必須となっていくことが、持続可能な観光に関する政策動向からもうかがえる。 SDGsでは、2030年までに目指すべきターゲットに「観光」が明記されている。また、観光がSDGsに果たす具体的な役割としてGHG削減が挙げられており、インディケーターとしてCFPまたはScope3によるGHG排出量の算定の必要性が確認された。 JSTS-Dでは、気候変動と関連の強い三つの項目を取り上げた。A14では気候変動による負の影響を認識し、これらを軽減する計画や方針にとどまらず、観光に関するステークホルダーへの教育や意識向上の取り組までをも求める内容となっている。D12とD13では、観光事業者および観光客の移動に関する排出量の把握やモニタリングを通じて削減を促す取り組みが求められている。 以上のように、脱炭素化のためには、観光が気候変動に与える負の影響の把握とモニタリングを行うことで、観光を構成する関係者の全体像(=サプライチェーン全体)とそれぞれの負荷量を明らかにし、ステークホルダーごとにCFP削減のための具体的な対策を実施していくことが重要であると考えられる。観光を対象としたCFPの算定手法は確立されてきているものの、根源的な課題がまだ残されている。

 最近では、コロナ禍において「移動を伴い現地を訪問する」というこれまでの観光に代わり、マイクロツーリズム35)やバーチャルツーリズム36)といった新たな観光が登場した。マイクロツーリズムは、移動制限に伴い遠方への訪問が自粛される中で地元や近隣の都道府県からの観光需要を喚起しようと考えられた、観光地として再認識してもらう新たな試みである。移動距離を抑えた上でこれまでと同様に実際に訪問して観光を楽しむことが可能である。一方で、バーチャルツーリズムは、訪問せずにインターネット上で訪問地の情報や雰囲気、飲食を楽しむ企画である。この企画の利用者は、パソコンやタブレット、スマートフォン等の画面越しに参加する。現地スタッフがスマートフォン等を利用して撮影した動画やリアルタイムの配信映像を見ながら楽しむことができるだけでなく、現地の名産品等が事前に送付され、参加者はそれを堪能し、説明を受けながら、参加者同士で交流することも可能である。 このようなバーチャルツーリズムという新しい観光の形態である体験型観光コンテンツは、次世代通信規格である

「5G」が普及することで利便性が増し、企画者と利用者の両方が増えることが予想される。観光庁37)によれば、利用者の約9割は現地への訪問意欲が高まると回答している。現在のwithコロナ社会においては、感染のリスクを考慮した観光の形態として受け入れられつつあるが、コロナ後の社会においては現地への下見(準備段階)としての位置づけが強くなり、訪問地選択のためのより多くの観光情報を取得・提供する手段になるものと考えられる。 したがって、今後はさらなる観光需要が喚起される可能性も想定して、観光における持続可能性に目を向けていかなければならない。「新たな形態の観光」のLCA手法を検討するとともに、これまでの形態の観光においても、気候変動対応のためのCFP削減を目指すための情報をLCAは

大項目 小項目 取り組みの例

A持続可能なマネジメント

A14気候変動への適応

ü 観光に影響を及ぼす気候変動による負の影響の想定(災害は除く)ü 気候変動による負の影響を軽減する計画や方針ü 住民、観光事業者、旅行者向けの気候変動による影響に関する教育や意識向上の取り組み

D環境のサステナビリティ

D12温室効果ガスの排出と気候変動の緩和

ü 事業者が温室効果ガスの排出量をモニタリングし、排出量を削減する取り組みü CO2等温室効果ガスの削減に対する取り組みを行っている観光事業者の数及び同内容の調

査・公表ü カーボンオフセット

D13環境負荷の小さい交通

ü 域内における環境負荷の小さい交通機関の利用促進プログラムü 観光フットプリント(観光客の移動距離(CO2排出)と活動内容に伴う資源消費量など観

光に伴い消費排出されるエネルギー等のこと)のモニタリング

観光庁34)をもとに、著者らが作成

表4 JSTS-Dのうち気候変動と関連の強い項目

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Journal of Life Cycle Assessment, Japan

14 Vol.17 No.1 January 2021

提供する必要がある。観光のLCAは、外部の専門家によって行われるケースが多いのが現状であるため、評価結果に基づく対応策が観光業の現場にフィードバックできているとは言い難い。今後は、観光に関連する事業者、業界団体、研究組織、大学などが一体となって持続可能性に向けた取り組みを実施することがますます重要になると考えられる。

(2020年11月13日受付)

参照文献

1)TheWorldTourismOrganizationofUnitedNations(UNWTO)(2019): I n t e r n a t i o n a lT ou r i smHighlights(2019Edition),3

2)InternationalLabourOrganization(ILO)(2020):TheimpactofCOVID-19onthetourismsector,1-9

3)TheWorldTourismOrganizationofUnitedNations(UNWTO)(2017),2017ISTHEINTERNATIONALYEAROFSUSTAI NABLETOU R ISMFORDEVELOPMENT,UNWTOホームページ,入手先<https://www.unwto.org/archive/global/press-r e l e a se/2017-01-03/2017- i n t e rna t i ona l - yea r -sustainable-tourism-development>,(参照2020-11-13)

4)TheWorldTourismOrganizationofUnitedNations(UNWTO)(n.d.),持続可能な観光の定義,国連世界観光機関駐日事務所ホームページ,入手先<https://unwto-ap.org/why/tourism-definition/>,(参照2020-11-13)

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Journal of Life Cycle Assessment, Japan

15Vol.17 No.1 January 2021

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149pp.35)株式会社星野リゾート(2020),星野リゾートが提案す

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36)株式会社JTB(n.d.),リアル×VR新感覚体験型旅行「バーチャル修学旅行360」,JTB法人サービスサイトホームページ,入手先<https://www.jtbbwt.com/education/service/solution/jh/domestic/school-trip/virtual-trip/>,(参照2020-11-13)

37)観光庁(2019):「体験型観光コンテンツ市場の概観」―世界のコト消費と海外旅行者の意識・実態の調査結果,146pp.

Policy Trends and Direction of LCA Study on Sustainable TourismYusukeKITAMURA1,*,NaokiSHIBAHARA2andAtsushiINABA3

1TokyoCityUniversity;2ChubuUniversity;3JapanLifeCycleAssessmentFacilitationCentre(LCAF)*Correspondingauthor:[email protected]

[Commentary and Discussion]

Synopsis:TheWorldTourismOrganizationofUnitedNations(UNWTO),hasgivenwarningthattourism,inwhichmanypeoplearemovingortraveling,haspotentiallyhadasignificantimpactonclimatechangethroughglobalwarming.Therearecalculatedgreenhousegases(GHG)emissionsfromtravelpackages,transportation,accommodation,foodandbeverage,andtheindustryusingcarbonfootprint(CFP)inlifecycleassessment(LCA)studieson tourism. Ontheonehand, theSustainableDevelopmentGoals(SDGs)andtargets,whichhaveattractedpublicattention,includeitemsthattargettourism.TheJapaneseversionoftheSustainableTourismGuidelines(JSTS-D)hasalsobeenpublishedinJapan. Currently, theserious impactofthenewcoronavirus

(COVID-19)continues, and the industry isunderpressure tomakeasignificant transformation, includingtourism,butatthesametimestartingwithrecoveryfromCOVID-19.Itcanbeconsideredthatthereisagreatopportunitytoshift forsustainability. Tourism-relatedbusinesses, industrygroups,researchorganizations,universities,etc.,mustbeworkingtogethertoimplementsustainabilityinitiatives.Keywords: sustainabletourism;sustainabledevelopmentgoals(SDGs); lifecycleassessment(LCA);carbonfootprint(CFP)