ip analyst seminar 2013-04-11
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知的財産アナリスト勉強会 IP Analyst Seminar 2013/4/11TRANSCRIPT
知財アナリストセミナー 「価値評価」
2013年4月11日 IP Valuation 特許事務所 弁理士 松本 浩一郎
1.はじめに
2013
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/11
Ko
ich
iro
Ma
tsu
mo
to
価値評価の必要性(1)
(企業経営の観点)
企業価値の源泉が、デザイン、ソフトウェア、技術、ブランド等の無形資産にシフト
有形資産のみでは価値を生み出すことが困難
無形資産の把握・管理が経営に不可欠
1975 2005
16.8
79.7
83.2
20.3
企業価値の構成割合
無形資産 有形資産
(Parr, Russell L. and Smith, Gordon V. Intellectual Property)
2013/04/11 Koichiro Matsumoto 3
価値評価の必要性(2)
(取引価格の観点)
特許ポートフォリオの「高額」取引が増加
2012年4月、AOLがMicrosoftに925件の特許を10.6億ドルで売
却。更にそのうち650件は5.5億ドルでFacebookに転売
特許1件当たりでは、平均値37万ドル、中央値22万ドル
その他の特許獲得を目的とする大型取引
2011年8月、GoogleがMotorola Mobilityを125億ドルで買収
(特許件数24,500件)
2011年6月、破綻したNortelの資産処分オークションでは45億ド
ルでApple等6社が6,000件の特許を獲得
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(”Patent Value Quotient 2012”, IPOffrings)
2012年の主な特許取引
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価値評価の必要性(3)
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価値評価の必要性(4)
(税務の観点)
欧州諸国を中心にパテントボックス税制が導入が進展
パテントボックス税制とは、特許等に係る所得について軽減税率
を適用することにより、研究開発型企業の誘致を図るもの
イギリスでも2013年4月から導入開始となり、我が国においても
経団連が昨年度から税制改正で導入を要望
グループ内における収益・費用の対応
持株会社化、海外への製造・販売機能の移転で、特許等の保有者
(主に親会社)と特許等の実施者(主に子会社)が分離
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価値評価の必要性(5)
(新しいタイプの特許取引)
特許保有SPV
特許260件
特許2,185件 さらに2014年から5年間、毎年100件ずつ追加
累積収益 Ericsson Unwired
Planet
1億ドルまで 20% 80%
1億ドル超 5億ドルまで
50% 50%
5億ドル超 70% 30%
SPVの収益配分 支配権
• ロイヤルティ獲得が主要業務(必要に応じて訴訟も)
• 16億ドルの繰越欠損金の有効活用
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2.評価相談事例
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1)海外子会社への機能移転
最初は、生産子会社をアジアに設立し生産機能を移転し、製品を輸入
その後、国内販売がなくなりアジアおよびその他の世界販売のみへ
効率化のため国内の開発機能を生産拠点と統合したい
特許等のほか、製品製造に必要な図面等の知的財産一式を現地生産子会社へ移転
移転対象の知的財産の価値をどう考えるか
2013/04/11 Koichiro Matsumoto 10
2)海外子会社から知財集約
海外子会社が現地製品に用いる製品容器やパッケージデザインについて現地で意匠権を取得
日本本社が知財権の一元管理のため子会社から当該意匠権を取得したい
譲渡対価およびロイヤルティについて、どのように決めたらよいか
2013/04/11 Koichiro Matsumoto 11
3)買収先からの知財集約
株式買収により子会社化した会社が保有する特許権等について、本社へ集約するために買い取りたい
特許権等の売買(知財部所管)に先立って、買収に伴うPPA手続き(買収対価の配分)が経理部(および外部コンサルタント)によって行われ、買取対象となる特許権等の連結上の公正価値(=帳簿価格)が算定される
この場合、子会社からの買取価格と帳簿価格との関係をどのように考えたらよいか
もし、異なる場合、税務上のリスクはないか
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4)本社空洞化への対応
当初は部品を海外で製造し、最終製品は国内生産であったが、徐々に最終製品まで海外生産に移行
販売先も海外となり、物流・商流ともに本社を経由しない状態に
研究開発費、広告宣伝費のほか、グループ管理コストも含めた本社費用の回収が困難に
技術ロイヤルティ、ブランド・ロイヤルティ、経営指導料などによる回収策の検討
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5)持株会社の収益確保
持株会社では、自社ブランドの維持、管理および価値向上のためのコストを負担しているが、製品販売およびサービス提供をしていないため、直接的なコスト回収ができない
子会社配当金収入による回収では課税所得が欠損となる
このため、子会社からブランド使用料を徴収することによってこのコストを回収したい
どのような回収方法が考えられるか
役務提供の対価(コストベース)
無形資産の使用料(インカムベース)
2013/04/11 Koichiro Matsumoto 14
6)形式的な特許権の保有
グループ内特許の一元管理および有効活用のため、子会社が取得した特許権等はすべて持株会社に集約
持株会社は、全ての権利を子会社にライセンス供与
研究開発費、特許維持費は子会社負担
持株会社は、形式的に権利を保有しているだけ
この場合に、無償での権利移転および無償でのライセンスとしたいが、何らかの(特に税務上の)リスクはあるか。
2013/04/11 Koichiro Matsumoto 15
3.DCF法の考え方
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価値の定義
公正価値会計基準(案)(平成22年7月9日、企業会計
基準委員会)では、以下のように定義
「公正価値」とは、測定日において市場参加者間で秩序あ
る取引が行われた場合に、資産の売却によって受け取るで
あろう価格又は負債の移転のために支払うであろう価格
(出口価格)
市場参加者は、「互いに独立」、「すべての入手できる情
報に基づき、取引について合理的な理解」、「取引を行う
能力あり」かつ「自発的に取引を行う意思あり」
2013/04/11 Koichiro Matsumoto 17
価値の定義から導かれること
(仮想的に)売買が成立することが前提
取引が成立する見込みがないもの、買い手が想定できない
ようなものについては、価値評価が困難
例えば、自社製品にのみ利用可能な技術かつ自社で実施し
ていないもの、製品化までの道筋が見えないもの、防衛目
的の特許で自社・他社ともに実施していないもの、など
は、買い手を想定することが困難
他方、買い手がとにかく件数が必要という場合には、内容
にかかわらず売買が成立するため、特許であるというだけ
で価値がある場合も
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DCF法とは
インカム・アプローチに属する価値評価方法のひとつ
「評価対象資産(および負債)から生ずる評価基準日以降の将来キャッシュ・フロー」を、「当該キャッシュフローのリスクに応じた割引率」で現在価値に割り引いて、評価対象資産の価値を評価する方法
理論的には、価値評価方法として最も合理的。ただし、将来予測に全面的に依存しており、客観性に欠ける
このため、マルチプル法等によるクロスチェックが推奨される
2013/04/11 Koichiro Matsumoto 19
事業価値の二面性
事業用資産の価値と投資家から見た価値は等しい
事業価値
有利子負債の価値
株式の価値
運転 資本
固定 資産
投資家から見た価値
事業用資産の価値
特許
商標
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投融資とリターン
運転資本
固定資産
有利子負債
(Debt)
株式
(Equity)
事業用資産 調達資金
キャッシュ フロー
投資家
融資
投資
リターン
特許 商標
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キャッシュフローと割引率
DCF法で用いるフリーキャッシュフロー(FCF)と割引率(WACC)は事業用資産を介して対応関係にある
事業用資産から発生する投資家に分配可能なキャッシュフローがフリーキャッシュフロー
事業用資産の調達に必要な資金のコストが割引率
事業用資産全体の調達コスト(=割引率)であり、個々の資産(運転資本、土地・建物、特許、等)の割引率ではない
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加重平均資本コスト(WACC)
WACCとは、Weighted Average Cost of Capital の略であり、加重平均資本コストという
Dは負債の時価
Eは株主資本の時価
kdは負債コスト
keは株主資本コスト
なお、(D+E)は前述のとおり事業価値に等しい
2013/04/11 Koichiro Matsumoto
WACC =D
D+Ekd +
E
D+Eke
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WACC算定に関する留意点
事業価値(D+E)を求めるためにWACCを算定する必要がありますが、WACCの計算式に(D+E)が含まれている
そのままやると循環計算となる
割引計算の結果として得られる事業価値と、WACC算定に用いる(D+E)は理論的には一致するはず
2013/04/11 Koichiro Matsumoto 24
特許を評価する場合
特許に係るキャッシュフロー
1)対象特許から直接発生するキャッシュフロー
2)事業全体のキャッシュフローから特許以外の事業用資産に帰属するキャッシュフローを除いて算出
特許キャッシュ・フローに対応する割引率
事業用資産として特許のみを保有している上場会社(NPE等)のWACCなどを参考に検討
特許以外の資産を含む事業全体のWACCは、特許キャッシュフローとは対応関係にない
2013/04/11 Koichiro Matsumoto 25
特許権保有会社の場合
特許権
有利子負債(Debt)
株式
(Equity)
事業用資産 調達資金
キャッシュ フロー(ロ
イヤルティ、損害賠償金等)
投資家
融資
投資
リターン
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2013/04/11
ロイヤルティ免除法
第三者に 移転したものと仮定
第三者に対して支払うであろう類似無形資産のライセンス実施料率によって算出されるロイヤルティコストが免除されたものとして評価する
ライセンス料の 支払
無形資産の所有者 例:特許権
Koichiro Matsumoto 27
ロイヤルティ免除法:料率データ
ロイヤルティ免除法に用いるロイヤルティ料率は、以下の資料を参考に検討
対象会社における過去のライセンス契約実績データ
(入手可能な場合)同業他社におけるライセンス実績データ
ロイヤルティ料率データハンドブック(経済産業調査会)
royaltystat database (www.royaltystat.com)
RoyaltySource database (www.royaltysource.com)
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ロイヤルティ免除法(計算例)
Year 1 Year 2 Year 3 Year 4 Year 5
ロイヤルティ対象売上 10,000 8,500 6,500 3,250 1,000
ロイヤルティ料率 5% 5% 5% 5% 5%
ロイヤルティ免除額 500 425 325 163 50
法人税率 40%
法人税等 (200) (170) (130) (65) (20)
税引後ロイヤルティ免除額 300 255 195 98 30
割引率 10%
割引期間 0.50 1.50 2.50 3.50 4.50
現在価値へのディスカウント・ファクター 0.95 0.87 0.79 0.72 0.65
ロイヤルティ免除額現在価値 286 221 154 70 20
現在価値合計 750
償却に係る税効果額 263 0.35
評価額 1,013
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超過収益法
キャピタル・アセット・チャージは、評価対象の無形資産がキャッシュ・フローを創出するために、他の資産の経済的便益を享受することの対価として支払う賃借料と考えられる
キャピタル・アセット・チャージ
運転資本
評価対象以外の無形資産
有形固定資産
+ 超過収益法は事業全体のキャッシュ・
フローから無形資産に帰属する部分だ
けを抽出して、資本還元する方法
+ 無形資産に帰属するキャッシュ・フ
ローは、事業全体のキャッシュ・フ
ローから運転資本、有形固定資産、評
価対象以外の無形資産に要求される
キャピタルアセットチャージを差し引
いた残余キャッシュ・フローとして計
算
労働力の集合体
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超過収益法(計算例)
Year 1 Year 2 Year 3 Year 4 Year 5
特許権に関連する事業による収益 10,000 8,500 6,500 3,250 1,000
特許権に関連する事業にかかる費用 (7,000) (5,950) (4,550) (2,275) (700)
利益 3,000 2,550 1,950 975 300
加算:償却費 500 425 325 163 50
キャピタル・アセット・チャージ(CAC) 売上高比
減算:CAC運転資本 1.0% (100) (85) (65) (33) (10)
減算:CAC建物・機械装置等 3.0% (300) (255) (195) (98) (30)
減算:CAC土地 1.0% (100) (85) (65) (33) (10)
減算:CAC労働力の集合体 4.0% (400) (340) (260) (130) (40)
税引前利益 2,600 2,210 1,690 845 260
法人税率 40%
法人税等 (1,040) (884) (676) (338) (104)
税引後利益 1,560 1,326 1,014 507 156
割引率 15%
割引期間 0.50 1.50 2.50 3.50 4.50
現在価値へのディスカウント・ファクター 0.93 0.81 0.71 0.61 0.53
超過収益現在価値 1,455 1,075 715 311 83
現在価値合計 3,639
償却に係る税効果額 1,456 0.40
評価額 5,095
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WACCとWARA
運転資本
顧客関係
有利子負債
(Debt)
株式
(Equity)
事業用資産 調達資金
WARA (Weighted
Average Return on
Assets)
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WACC (Weighted
Average Cost of Capital)
建物
土地
商標権
のれん
特許権
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4.評価業務のリスク
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公認会計士の処分事例
オリンパス事件で、投資先の企業価値評価業務を行った
公認会計士が信用失墜行為の禁止に違反したことにより、
3か月の業務停止処分(2013年3月22日)
「職業専門家たる公認会計士として、正当な注意を払って
適切な判断で誠実に価値算定を行ったとは認められず、当
該行為は、公認会計士法(昭和23年法律第103号)第26条に
規定する信用失墜行為の禁止に違反すると認められる。」
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信用失墜行為の禁止
公認会計士
公認会計士法26条「公認会計士は、公認会計士の信用を傷つけ、又は公認会計士全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」
弁理士
弁理士法29条「弁理士は、弁理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。」
中小企業診断士
登録及び試験に関する規則5条、6条 「中小企業診断士の信用を傷つけるような行為をした者であって、その行為をしたと認められる日から三年を経過しないもの」は登録取消し及び登録拒否
2013/04/11 Koichiro Matsumoto 35
価値評価業務のリスク
価値評価業務は、結論が数字で示されるため、一般的なコンサルティング業務と比較して、評価人が評価結果について何らかの保証を与えたとの誤解を招きやすい
報告書には、結論が、専門家である評価人による信頼性の保証や意見の表明ではないことを明記
第三者への開示の制限、利用目的や利用制限についても記載し、評価人の責任の範囲を明確化
ただし、上記内容を記載していれば専門家として免責されるわけではない
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ディスクレーマー(例)
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