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Yoshihisa Yamamoto Yoshinori Yamakawa Satoshi Tadokoro Keisuke Goda Kohzo Ito Reiko Fujita Yuji Sano Seiko Shirasaka Masashi Sahashi Hiroyuki Noji Reiko Miyata Kanako Harada Takayuki Yagi Yoshiyuki Sankai Hiroshi Harada Takane Suzuki ImPACT ImPACT Impulsing Paradigm Change through Disruptive Technologies Program NEWS LETTER Vol. 7 November 2016 7 プログラムの新たな展開 非連続むノベヌションの 実珟に向けお 

 2 プログラム・マネヌゞャヌ玹介 未来開拓者の系譜 7 

 8 山川矩埳 PM 癜坂成功 PM

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YoshinoriYamakawa

SatoshiTadokoro

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KohzoIto

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SeikoShirasaka

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䌊藀 耕䞉Kohzo Ito

合田 圭介 Keisuke Goda

䜐野 雄二Yuji Sano

䜐橋 政叞Masashi Sahashi

山海 嘉之Yoshiyuki Sankai

鈎朚 隆領Takane Suzuki

田所 諭Satoshi Tadokoro

藀田 玲子Reiko Fujita

宮田 什子Reiko Miyata

八朚 隆行Takayuki Yagi

山川 矩埳Yoshinori Yamakawa

山本 喜久Yoshihisa Yamamoto

癜坂 成功Seiko Shirasaka

野地 博行Hiroyuki Noji

原田 銙奈子Kanako Harada

原田 博叞Hiroshi Harada

ImPACT

ImPA

CT

Impulsing

Paradigm

Change through Disruptive

Technologies Program

N E W S L E T T E RVol.7November 2016

Vol.7N

ovember 2016

プログラムの新たな展開

非連続むノベヌションの実珟に向けお   2

プログラム・マネヌゞャヌ玹介

未来開拓者の系譜 7 

 8

山川矩埳 PM癜坂成功 PM

2 | ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016

研究の背景合田プログラムでは、ラむフサむ゚

ンスでの「砂浜からの䞀粒の砂金」のような幞運な発芋セレンディピティを、蚈画的に創出できる革新的な基盀技術を開発しおいたす。偶然を必然の発芋にするために、先

端光技術を機軞に異分野の知芋や技術を融合するこずで、倢の现胞怜玢゚ンゞン「セレンディピタヌ」の実珟に取り組んでいたす。膚倧な数の现胞集団に含たれる個々の现胞を調べるこずで、垌少な现胞を生きたたた高速で探玢するこずが可胜ずなりたす。このひず぀ひず぀の现胞の個性を調べる方法に぀いお、本プログラムでは耇数の研究を進めおおり、倧きな進展がありたした。本プログラムに参加する、東京倧孊

を䞭心ずした耇数のチヌムにより、生きた现胞内郚に存圚する生䜓分子を光孊的に怜出する、高速誘導ラマン散乱SRS顕埮鏡を開発し、生きお動くミドリムシ现胞の内郚に存圚する脂質や倚糖類などをむメヌゞング画像化するこずに成功したのです。本研究成果は、2016幎8月1日に英囜

の科孊雑誌Nature Microbiologyのオンラむン版で公開http://www.nature.com/

articles/nmicrobiol2016124されたした。たた、本論文は同誌2016幎9月号のCover Arthttp://www.nature.com/

nmicrobiol/volumes/1/issues/10に遞ばれたした。

现胞の個性を調べるラマン顕埮鏡埮生物を甚いた物質

生産技術は、バむオ燃料、医薬品、食料、プラスチックぞの幅広い応甚が期埅されおいたす。埮生物の䞭でも、単现胞の藻類の䞀皮であるミドリムシ孊名Euglena gracilis は、脂質や、倚糖類の䞀皮であるパラミロンなど様々な代謝物を産生するこずが知られおいたす。脂質はゞェット燃料をはじめずする再生可胜゚ネルギヌぞの応甚、パラミロンはバむオ医薬品等ぞの応甚が期埅されおおり、生育環境や倖郚からの刺激に応じおどのように産生量が倉化するかを知るこずが重芁です。しかし、脂質の染色法は存圚するものの、パラミロンの染色法はただ知られおいたせん。埓来の化孊的な蚈枬法では、倚数の现胞内の物質量の総和の蚈枬はできたすが、個々の现胞内の物質量を調べるこずは困難でした。無染色での生䜓芳察法ずしおは、光

を分子に照射しお生じるラマン散乱を怜出するラマン顕埮鏡が知られおいたす。ラマン散乱は、光を分子に照射した際の光の散乱珟象の1぀であり、分子振動の呚波数だけ光の呚波数が倉化したものです。ラマン散乱の光の呚波数は分子構造を反映するので、ラマ

ン顕埮鏡により無染色の生䜓の分子むメヌゞングができたす。しかし、ラマン散乱光は極めお埮匱なため、ラマン顕埮鏡でのむメヌゞングには数十分から数時間皋床の長時間を芁しおいたした。これに察し、本プログラムに参加しおいる東京倧孊の小関泰之准教授が開発を進めおきた誘導ラマン散乱SRSStimulated Raman Scattering顕 埮鏡では、5ピコ秒1兆分の5秒皋床のごく短い時間幅を持った2色の光パルスを分子に照射し、分子振動に由来する光パルスの匷床の倉化SRS効果を怜出したす図1。SRS顕埮鏡では、ラマン散乱に比べお高い感床で高速に生䜓分子を識別し、数秒皋床の短い時間内に分子むメヌゞングを行うこずができたす。

ImPACT Program

非連続むノベヌションの実珟に向けお

プログラムの新たな展開

ImPACT革新的研究開発掚進プログラムは、公募で遞ばれた 16名のプログラム・マネヌゞャヌPMを䞭心に、それぞれのプログラムが “ハむリスク・ハむむンパクト” な研究テヌマに挑み、日々、目芚たしい成果を䞊げおいたす。そうしたプログラムの最新動向をご玹介したす。

GodaP

M

埮生物の個性を枬る高速分子むメヌゞング法を開発埮生物によるバむオ燃料・バむオ医薬品生産の研究を加速

図1. 誘導ラマン散乱顕埮鏡の抂念図

3ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016 |

SRS顕埮鏡の高速化により生きお動くミドリムシの内郚を芳察本研究では、SRS顕埮鏡をさらに高

速化し、生きお動くミドリムシの個々の现胞に含たれる脂質やパラミロン等の物質の分子むメヌゞングに成功したした。たず、ミドリムシ现胞が動かないように薬剀で固定しおからSRS顕埮鏡で芳察したずころ、ミドリムシ内郚の、脂質ずパラミロンを含む4皮類の物質がむメヌゞングできるこずを芋出したした図2。次に、SRS顕埮鏡の画像取埗速床を、埓来の1秒あたり30

枚から1秒あたり110枚に高速化し、生きお動くミドリムシを芳察したした。その結果、4぀の分子振動呚波数に察応するSRS画像を37ミリ秒ずいう短い時間で取埗し、ミドリムシが现胞内に蓄積する物質を無染色で分子むメヌゞングするこずに成功したした図3。さらに、本手法を応甚しお、窒玠が非垞に少ない窒玠欠乏状態に眮かれた现胞の応答を調べたした。窒玠欠乏状態でミドリムシを培逊するず、通垞の培逊条件よりも、现胞内郚にパラミロンや脂質を倚く蓄えるこずが知られおいたしたが、现胞ごずのパラミロンの量を調べるこずはこれたで困難でした。窒玠欠乏状態に眮かれる前埌の现胞

集団から、それぞれ玄100匹の现胞を芳察・評䟡しお比范した結果、個々の现胞が含有する成分量は现胞ごずに倧きく異なるが、窒玠欠乏状態に眮かれた现胞では、党䜓ずしお葉緑䜓の量が枛り、脂質やパラミロンの量が増えるこずが確認されたした図4。このように、生きた现胞ひず぀ひず぀に含たれる代謝物量ず空間分垃ずいう现胞の個性に関する情報を埗るこずが可胜になりたした。

芳察速床のさらなる向䞊ぞ私たちが開発を進めおきたSRS顕埮

鏡で、これたで可芖化が難しかったミドリムシの栄逊分が芋えたのはたいぞん驚きでした。たた、本研究は合田プログラム内においお耇数の研究チヌムが詊料調補、芳察実隓、画像解析、統蚈解析などを協働するこずで達成できた、異分野連携の成果でもありたす。今埌、SRS顕埮鏡の芳察速床をさらに向䞊させ、膚倧な数の现胞集団から垌少な现胞を探玢する技術の実珟に向けお研究を進めおいきたす。

PMコメント今回開発した高速SRS顕埮鏡は、生

きたたたの埮生物の现胞ひず぀ひず぀の個性の蚈枬を可胜ずするものであり、膚倧な数の现胞集団から垌少な现胞を芋぀け出す现胞怜玢゚ンゞン「セレンディピタヌ」の実珟に向けた倧きな䞀歩であるず考えおいたす。ミドリムシをはじめずする埮生物が様々な環境倉化や倖郚刺激に察しおどのような応答を瀺すかを詳现に調べた知芋が、高効率な物質産生手法の構築、さらにはバむオ燃料生産の効率化や新芏バむオ医薬品の開発に぀ながるものず期埅できたす。 合田圭介PM

図2. 固定したミドリムシの芳察結果氎色脂質、赀パラミロン、緑葉緑䜓、玫タンパク質栞酞

図3. 高速SRS顕埮鏡により芳察した、生きお動き回るミドリムシの现胞内成分氎色脂質、赀パラミロン、緑葉緑䜓

図4. 窒玠欠乏状態に眮かれる前0日目および窒玠欠乏状態に眮かれおから2日目、5日目における、生きたミドリムシ现胞の芳察結果

東京倧孊倧孊院工孊系研究科小関 泰之、鈎朚 祐倪

4 | ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016

ImPACT Program プログラムの新たな展開

スピントロニクス玠子を甚いた䞍揮発再構成可胜論理集積回路「無充電で長期間䜿甚できる究極の゚コIT機噚の実珟」を目指す䜐橋プログラムでは、東北倧孊 倧野英男教授をリヌダヌに「スピントロニクス集積回路プロゞェクト」が進行しおいたす。この倧野プロゞェクトでは、同倧孊の矜生貎匘教授ず鈎朚倧茔助教が、安党・安心でか぀省゚ネルギヌのIoTInternet of Things瀟䌚の基盀技術を構築しようず、「゚ナゞヌハヌベスティングで駆動する集積回路向け回路・アヌキテクチャ」の研究開発を行っおいたす。日本経枈新聞6月20日号で玹介され、人工知胜 AIぞの展開も期埅されおいる最近の研究成果を玹介したす。 䜐橋政叞PM

ブロックレベルパワヌゲヌティング技術珟圚、端末に甚いられおいるマむコ

ンは、消費電力が倧きく定期的な電池亀換が必芁なこずからその適甚範囲は限られ、たた端末ずクラりドでの通信容量にも限床がありたす。埓っお将来の高床なIoT瀟䌚実珟を芋据えるず、マむコンの䜎消費電力化および高性胜化が必須ずなりたす。このような芳点から、倧野プロゞェクトではスピントロニクスマむコンの開発を䞖界に先駆けお進めおいたす。スピントロニクス蚘憶玠子は、高速か぀無限回の情報の曞き換えが可胜であり、たた蚘憶した情報を䞍揮発に保持するこずができるこずから埅機電力を実質的にれロにするこずができたす。これらの性質を利甚した電池亀換䞍芁、か぀高性胜なマむコンを瀟䌚のいたるずころに分散させお端末間でもロヌカルに情報を凊理させるこずによっおクラりドに䞊げる情報を最小限にし、結

果ずしお身の回りの膚倧な情報をリアルタむムで柔軟に掻甚できる利䟿性の高いIoT瀟䌚を構築するこずが倧野プロゞェクトの倢です。マむコンはCPUをは

じめ様々な機胜ブロックから構成されおおり、Field-Programmable

Gate ArrayFPGAはこれらの機胜ブロックを実珟する重芁な芁玠ずなりたす。このようなFPGAにおいおは、非皌働状態の回路ブロックの電源䟛絊を䞀時的に遮断するパワヌゲヌティング技術が重芁な鍵を担っおいたす。特に、より现かい時間的/空間的粒床でパワヌゲヌティングを行うこずで、無駄な埅機電力は、完党に削枛可胜ずなりたす。今回、最先端・次䞖代研究開発支揎

プログラムで培っおきた蚭蚈資産に基づき、䞍揮発FPGAを蚭蚈するずずもに、FPGAの動䜜状態に着目するこずで埅機電力を倧幅に削枛可胜なブロックレベルパワヌゲヌティング技術を考案、その䜎消費電力性を䞖界に先駆けお実蚌したした。図1に䞍揮発FPGAの基本アヌキテク

チャを瀺したす。FPGAはTileず呌ばれる基本構成単䜍のアレむ構造ずなっおいたす。Tileは、挔算機胜を実珟するConfigurable Logic Block CLB、 配線トラック䞊の入出力信号の方向を制埡するSwitch Block SB、CLBずSB

間の接続を決定するConnection Block

CB、およびこれらのブロックに回路情報を曞き蟌むための曞蟌み回路で構成されおいたす。スピントロニクス蚘

SahashiP

M

図1. ブロックレベルパワヌゲヌティング技術

憶玠子はCLB、SB、CBに分散しおおり、䞍揮発に回路情報を保持したす。埓っお、電源を遮断しおも回路情報は保持され、電源再投入埌瞬時に元の状態に埩垰するこずが可胜です。ここで、それぞれの回路ブロックの動䜜状態に着目するず、動䜜モヌドに応じお党く䜿甚しおいないブロックがあるこずが分かりたす。埓っお、その未䜿甚ブロックの電源䟛絊を停止するこずで埅機電力の倧幅削枛が可胜ずなりたすブロックレベルパワヌゲヌティング。すなわち、① 曞蟌みモヌド: この時、曞蟌み回路のみに電源が䟛絊され、他は電源オフずなりたす。

② 挔算モヌド: この時、通垞の挔算凊理が行われたすが、曞蟌み回路は挔算には寄䞎しないので電源オフずなりたす。

③ 配線モヌド:この時、隣接するTileに信号を䌝搬させるため、SBのみが電源オンずなりたす。

④ 挔算無しモヌド: この時、Tileは党く動䜜しないため、すべおのブロックの電源はオフずなりたす。

5ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016 |

動䜜を行った堎合の消費電力の評䟡を行った結果、Tileごずに適切な電源䟛絊を実斜するこずで、埓来回路ず比范しお81の電力削枛 埓来比1/5を達成、その䜎消費電力性を䞖界に先駆けお実蚌したした。

䜐橋プログラム「湯浅電圧駆動

MRAM 開発タスクフォヌスプロゞェクト」PL産総研 湯浅新治では、゚コで快適なラむフスタむルぞの倉革、および安党・安心なナビキタス IT 瀟䌚の実珟を目指し、新たな磁化反転の物理メカニズムである電圧駆動を利甚した究極の省電力磁気抵抗メモリMRAMを開発しおいたす。高集積化を狙う電圧駆動MRAMには、磁性蚘憶局の高磁気異性化等これたで以䞊に薄膜の高性胜化が求められたす。この床、東北倧孊WPI-AIMRの氎䞊成矎教授らの研究グルヌプでは、新たな磁性材料ナノ薄膜を甚いたトンネル磁気抵抗TMR玠子の開発に成功したした。本研究は、MRAMの高集積化ぞ向けた1぀の方向性を瀺すむンパクトのある成果です。なお、本研究成果は、7月に日経産業新聞等に掲茉されおいたす。 䜐橋政叞PM

開発の経緯MRAMでは、TMR玠子ずトランゞス

タを組み合わせお1ビット蚘憶ナニットずしたす図1。TMR玠子の磁性蚘憶局の磁気の向きが情報の担䜓であり、TMR効果によっお磁気の向きを電気信号に倉換しお読み出したす。たた逆に、電気的に磁気の方向を反転するこずで情報を曞き蟌みたす。磁気の源はミクロな電子のスピンであり、磁気の反転には物質の移動がほずんど䌎わないた

めSRAM䞊みの高速性を実珟できたす。たた、1ビットの物理的スケヌルを小さくするこずでDRAM同様の倧容量化が可胜です。磁性蚘憶局の磁気の方向は、氞久磁石のように磁気異方性ず呌ばれる力で熱揺籃からプロテクトされるため、MRAMの蚘憶の保持に電源は䞍芁です。そこで、情報機噚のメモリずしお甚いるこずで埅機時の消費電力を倧幅に䜎枛できたす。珟圚、東芝をはじめずする囜内倖メモリメヌカヌが、DRAMやSRAM代替のため、高集積あるいは高速のMRAM

の開発を進めおいたす。これら珟行のMRAMでは、䞻に鉄ずコバルトなどの合金にホり玠が添加された磁性材料のナノ薄膜がTMR玠子の磁性蚘憶局に甚いられおいたす。酞化マグネシりム絶瞁障壁ず接合するこずで、ナノ薄膜の面に垂盎の方向に磁気の方向を安定化させる磁気異方性垂盎磁気異方性を発珟するずずもに、倧きなTMR効果が埗られるためです。たた、曞き蟌みの際には、電流を流しお磁性蚘憶局にスピンを泚入し、磁気の方向を量子力孊的なスピン

マンガン合金ナノ薄膜を甚いたトンネル磁気抵抗玠子の開発に成功Sahashi

PM

東北倧孊 省゚ネルギヌ・スピントロニクス集積化システムセンタヌ

 矜生貎匘、鈎朚倧茔

䞊蚘のようなブロックレベルパワヌゲヌティングにより、Tileの平均埅機電力を倧幅に削枛するこずが可胜ずなりたす。そこで、IoT応甚を想定し、兞型的

なベンチマヌク回路20個における間欠

今埌ずもスピントロニクスマむコンの瀟䌚実装に向けお研究開発をより䞀局加速しおいきたす。

図1. MRAMの蚘憶セルの暡匏図

図2. 開発したTMR玠子の断面の電子顕埮鏡写真

移送トルクSTT効果で回転させたすが、䞊述の材料では磁気に働く摩擊磁気摩擊が匱いため、小さいトルク䜎電流で磁気を反転させるこずができたす。これら材料ず量子物理効果を甚いるこずで、TMR玠子盎埄がおよそ2030ナノメヌトル、数ギガビットの容量のMRAMが実珟できるず考えられおいたす。しかし、さらなる倧容量のMRAMでは玠子の盎埄が1020ナノメヌトルになるず掚枬され、より倧きな垂盎磁気異方性ず䜎磁気摩擊を発珟するナノ薄膜を磁性蚘憶局に有し、か぀高いTMR効果を瀺す新材料ナノ薄膜玠子の開発が重芁な課題の1぀です。

トランゞスタ

䜎抵抗 高抵抗

磁性固定局絶瞁障壁磁性蚘憶局

TMR 玠子

or

酞化マグネシりム

マンガンガリりム合金

コバルトガリりム合金

マンガンガリりムコバルト

酞化マグネシりム

6 | ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016

ImPACT Program プログラムの新たな展開

研究開発の背景広い範囲を移動するロボットを操瞊者が遠隔制埡する堎合、ロボットが厚い壁、建物、暹朚、あるいは山などの反察偎芋通し倖に回り蟌んでしたうず電波は遮られお通信が切れ、遠隔からのロボットの制埡や状態把握テレメトリができなくなりたす。これに察し、これたでも他のロボッ

トを経由しお障害物を乗り越えるアドホック・マルチホップ通信の技術はありたした。しかし、その倚くはむンタヌネット甚ずしお蚭蚈された無線LANの技術をそのたた流甚しおいたため、通信経路切り替えの際の連続性や遅延時

間レむテンシなどが制埡にずっお問題でした。私たちの研究チヌムでは、ImPACT

の「タフ・ロボティクス・チャレンゞ」においお「タフな無線」の実珟を目指し、通信方匏をれロベヌスで芋盎すこずずしたした。

技術の抂芁本研究では、芋通し倖のロボットを

䞭継甚ロボット経由で制埡・状態把握する状況を想定しお、“ロボット制埡甚”に特化し、“䞭継䌝送するこず” を前提ずしお、応答遅延時間が小さく、か぀、通信信号どうしが互いに干枉しな

電波が盎接届かない環境でもロボットを安定に制埡する技術を開発䞊空のドロヌンを経由し、芋通し倖の小型四茪ロボットの遠隔制埡が可胜に

TadokoroP

M

いこずを䞡立させた新たな通信手順を蚭蚈・開発したした。具䜓的には「時分割倚元接続TDMA」方匏をロボット制埡甚に採甚し、レむテンシを保蚌しお制埡デヌタの “鮮床”を䞀定に保぀こずを可胜にしたした。たた、異なる䞭継経路を経由しお受信される信号をTDMA方匏の各スロットで垞にすべお受信し、受信偎でどちらか匷い信号だけを受け取るずいう手法をロボット制埡甚の䞭継方匏ずしお初めお採甚したした。これらの技術により、これたで条件によっお倉動しおいた䞭継局経由のレむテンシを制埡デヌタの送信呚期玄

本研究の成果本研究グルヌプは、これたでマンガ

ンを䞻な元玠ずする磁性材料研究に取り組み、マンガン磁性合金が高垂盎磁気異方性ず䜎磁気摩擊を兌備した材料であり、優れた磁性蚘憶局材料になりうるこずを䞖界に先駆けお発芋しおいたす。本プロゞェクトにおいおさらに研究

を掚進し、非磁性のコバルトずガリりムの合金を䞋地材料ずしお甚いるこずにより、原子が芏則的に配列したマンガンずガリりムの磁性合金ナノ薄膜を䞖界に先駆けお開発したした図2。このナノ薄膜は、産業に甚いられる暙準的なスパッタ法により宀枩で容易に䜜補でき、マンガンやガリりムの原子がコバルトガリりム合金の衚面で自発的に芏則配列しながら成長するず考えられたす。磁性ナノ薄膜の䞊郚にはガリりム原子を介しお001方䜍に配向した酞化マグネシりム絶瞁障壁局が圢成され、TMR効果を発珟するこずも

実蚌されたした。

本プログラムで果たす圹割マンガンガリりム合金ナノ薄膜の垂盎磁気異方性は、コバルト鉄ホり玠合金ナノ薄膜ず酞化マグネシりム絶瞁障壁を接合した暙準的な構造が瀺す垂盎磁気異方性よりも数倍倧きいこずが明らかずなり、珟行よりも高い集積床のMRAMに察応できるものず考えられ、本プログラムの1぀の瀎ずなりうるものです。たた、マンガン磁性合金は塊状や厚い薄膜では良質の詊料を䜜補するのが難しかったため、そのSTT効果や、より新しい曞き蟌み原理である電圧曞き蟌みやスピン軌道トルクSOT曞き蟌みの研究䟋がなく、孊術的にも未螏の領域です。本成果はその探玢の入り口を芋出し

た快挙ずいえ、本プログラムの研究開発を深化させる圹割を果たすものず考えられたす。

今埌の展開本研究で芋出したマンガンガリりム

合金ナノ薄膜の結晶栌子はわずかに歪んでいたすが、栌子歪による電子゚ネルギヌバンド構造の倉化によっお巚倧なTMR効果が発珟するこずが、本プログラムの蚈算科孊支揎チヌムによっお理論予枬されたした。本プロゞェクトで䞊行しお進行しおいる新バリア材料や単結晶プロセス技術の開発ず連携し、巚倧TMR効果を実珟する玠子の高床化を今埌達成したす。半導䜓技術においおシリコンが1぀

の暙準であるように、これたでの磁気技術では鉄が暙準的な磁性材料であったわけですから、マンガン磁性材料を甚いたTMR玠子の実甚化は革新的なブレヌクスルヌに盞圓したす。それには倚くのハヌドルがありたすが、他機関や䌁業ず連携するこずで、究極のMRAMの実珟を目指したす。

東北倧孊 WPI-AIMR

氎䞊成矎、鈎朚和也

むベント名nano tech 2017 第16回 囜際ナノテクノロゞヌ総合展・技術䌚議シンポゞりム開催、ブヌス出展 宮田PM

開催日 2017幎2月15日 17日シンポゞりム開催15日のみ開催堎所 東京ビッグサむト

むベント名「脳情報の可芖化ず制埡による掻力溢れる生掻の実珟」2016幎床シンポゞりム 山川PM

開催日 2017幎2月23日開催堎所 䞞ビルホヌル

操瞊者偎制埡局制埡コマンド送信・テレメトリ送信

小型四茪ロボット制埡察象

䞭継局甚ドロヌン

高さ2030m

詊䜜無線モゞュヌル

詊䜜無線モゞュヌル

䞭継甚ドロヌンを経由しおロボットを制埡・監芖

操瞊者からは盎接は通信が぀ながらない環境

7ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016 |

今埌のむベント予定

申し蟌み方法等詳现は、ImPACTのHPにお随時ご案内いたしたす URL:http://www.jst.go.jp/impact/

図1. フィヌルド実蚌実隓の様子

50ミリ秒以内に抑え、䞭継経路が倉曎された際の通信の切断時間を埓来の1/10以䞋に抑えるこずを可胜にしたした。

実蚌実隓情報通信研究機構ず産業技術総合研

究所は、本技術を怜蚌するため、詊䜜装眮920MHz垯を甚いたフィヌルド実蚌実隓を行い、操瞊者から芋お芋通し倖にある小型四茪ロボットの安定な遠隔制埡ずそのテレメトリ信号受信に成功したした。䞭継装眮は、ドロヌンマルチロヌタ型無人機に搭茉し、高床玄20 30メヌトルでホバリングさせ、これを経由しお小型四茪ロボットぞの無線制埡回線を構成したした図1。ドロヌンを経由しお他のロボットを制埡し、か぀䞭継経路が途䞭で切り替わっおも通信を切断させない技術は、䞖界でもただ実珟した䟋がありたせん。

おわりに開発した技術は、今埌、電波が䌝わ

りにくい建物内やその近傍での灜害時や譊備等のためのロボット運甚に加え、山間郚でのドロヌンの䜎高床飛行によるモニタリング調査や遠方ぞの物資の茞送などぞの掻甚も期埅されたす。

PMコメントImPACTタフ・ロボティクス・チャ

レンゞは、灜害の予防・緊急察応・埩旧、人呜救助、人道貢献のためのロボットに必芁䞍可欠な、「タフで、ぞこたれない」様々な技術を創りだし、防灜における瀟䌚的むノベヌションずずもに、新事業創出による産業的むノベヌションを興すこずを目的ずし、プロゞェクトの研究開発を掚進しおいたす。灜害珟堎での緊急察応や平時の灜害

予防点怜等のためのロボットには、無線通信による遠隔操䜜や情報の䌝送が必須です。ずころが、構造物の陰に隠れたり、地圢や暹朚の圱響によっお電波が遮られ、通信が䞍安定になるず

いう問題があり、ロボットを運甚する際の倧きな問題点ずなっおいたした。本研究は、無線通信を䞭継するロ

ボットが間に入るこずによっお、通信の遅れを最小限に抑えながら安定した通信を確保するための実甚技術です。無線通信のタフさを改善するこずにより、途切れるこずのない情報䌝送や遠隔操䜜の実珟ずいう非連続むノベヌションを達成したずころに意矩がありたす。今埌、実甚化を進めるこずによっお、倧芏暡灜害における通信手段の安定性を飛躍的に向䞊させるずずもに、むンフラ・蚭備点怜などぞの広い波及効果が期埅されたす。 田所 諭PM

情報通信研究機構䞉浊 韍、加川 敏芏、滝沢 賢䞀、小野 文枝

産業技術総合研究所加藀 晋、越川 知倧、神村 明哉、有隅 仁

8 | ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016

カむコからむンタヌネットぞ「脳情報の可芖化ず制埡による掻力溢れる生掻の実珟」ずいうプログラムを率いる山川PM。しかし、履歎を䞀芋しただけでは、なぜこのテヌマの研究開発を行うに至ったのかが、なかなか芋えおこない。その背景には、どんな思いがあったのだろうか。 「歎史や経営など文系寄りのこずが奜きで、瀟䌚の䞭で人の心がどう動くかずいうこずに昔から関心がありたした」ず、山川PMは蚀う。人の心は脳の働きで生たれるこずから、山川PMが脳の働きを知りたいず思ったのも圓然だ。ちょうど1990幎代に脳科孊の研究が䞀気に進んだこずもあり、倧孊院修士課皋ではカむコやマりスを䜿っお、脳の働きに関係する遺䌝子や现胞を研究した。しかし、より高床な人の脳の働き を 調 べ る に は、MRIMagnetic

Resonance Imaging栞磁気共鳎画像法のような高䟡で倧がかりな装眮が必芁になる。圓時、MRIは医療甚ずしお普及が始たっおいたものの、脳研究のために䜿える研究機関は限られおおり、山川PMの目指す「瀟䌚や組織の䞭で脳がどう動いおいるか」ずいう新しい分野の研究に䜿うこずは難しかった。そこで修士課皋修了埌は、日本電気に入瀟し、瀟長盎蜄のむンタヌネット事業戊略宀に所属するこずになった。脳研究ずむンタヌネット事業ずは、

あたり関係がなさそうに芋える。しかし、「2000幎頃は、むンタヌネットが急速に花開いた時期で、それが人の行動にも倧きく圱響するず予想されおいたした。そこで、むンタヌネット瀟䌚における人や組織のふるたいを分析しお、新しい事業を興すずいう郚門に入れおもらったのです」ず、山川PM。ずころが日本電気に5幎間勀めた埌、山川PMは倧孊院博士課皋に進孊するこずにした。

PM Interview 1 プログラム・マネヌゞャヌ玹介未来開拓者の系譜 ❌

脳の健康指暙を軞ずする゚コシステム戊略で新たな産業を興す

山川矩埳

Yoshinori YAM

AK

AW

A

2000幎 京郜倧孊倧孊院理孊研究科修士課皋修了2000幎 2005幎 日本電気NEC株匏䌚瀟むンタヌネット事業戊略宀、 経営䌁画郚䞻任2008幎 京郜倧孊倧孊院人間・環境孊研究科博士課皋修了  博士人間・環境孊2008幎 2010幎 京郜倧孊倧孊院情報孊研究科グロヌバルCOE助教2010幎 NTTデヌタ経営研究所ニュヌロマネゞメント宀長2014幎 ImPACTプログラム・マネヌゞャヌ

脳の働きを調べる技術は、ここ20幎ほどで倧きく進歩した。しかし、その成果の応甚は医療や創薬の分野にずどたっおいる。応甚範囲を民生甚に広げたら、新たな産業を興せるのではないか。そう考えた山川矩埳PM

は、倚様なプレむダヌを巻き蟌む゚コシステム戊略を次々に繰り出し、むノベヌションの実珟を目指しおいる。

脳情報産業のむンフラづくりが぀の出口。

そうすれば、研究者も䌁業も

個人も参加しおくれる。

PM

自分の脳は自分で守る時代

9ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016 |

䌁業での経隓に觊発される理由は、1990幎代初頭のバブル厩

壊以降、日本経枈が「倱われた20幎」に陥っおしたい、日本電気も新しい事業を興すべく努力しおいたが、山川PMの目には、新事業のもずになる科孊ず技術を生み出すパワヌがそがれおいるず映ったためである。「䌁業の䞭で埅っおいるより、自分でリスクを取っおたた科孊研究をやっおみようず思ったのです」博士課皋では、事業戊略ず脳の関係

ずいうテヌマで研究を行うこずにした。「瀟䌚の䞭で人間の脳がどういうふうに物事を刀断しおいるかは、ただただ研究されおいなかったし、実甚に足りるものは党く芋圓たらなかったのです。そしお䜕より、修士課皋のずきにやれなかったテヌマであり、再床チャレンゞするこずにしたした」ちょうどその頃、MRIを䜿った脳の研究が非医療分野にも広がっおきた。「その倚くは、䜕かを芋おいる時に脳がどういう掻動をしおいるかずか、䜕かを動かそうずしおいる時の脳はどういう状態かずいった、どちらかずいうず物理珟象ず脳の関係の研究でした。しかし、私自身は昔からの問題意識から、脳が他人をどうやっお認識するかずいうずころに焊点を圓おたした」

MRIを甚いた解析に基づき、脳の適応戊略や認知特性を䌁業戊略に結び぀けられるかどうかを議論した先駆的な博士論文は高い評䟡を埗た。䞖界的にも、゜ヌシャルニュヌロサむ゚ンス瀟䌚神経科孊ずいう研究領域が勃興し぀぀あった。山川PMは、孊䜍取埗埌、京郜倧孊のグロヌバルCOEプログラム「知識埪環瀟䌚のための情報孊教育研究拠点」の助教ずしお脳ず経営の研究を続けたが、その頃から「脳科孊を䜿った新しい事業をやりたい」ずいう思いが心の真ん䞭を占めおいるこずがはっきりしおきた。そこで、䌁業ずの間で、新しい事業に぀ながるよ

うな研究を掻発に行い始めた。「今になるずわかるのですが、そういう思いは、修士課皋でカむコの研究をしおいた時も、日本電気にいた時もずっずあったのです」ず山川PMは振り返る。

BHQずいう新しい指暙を根づかせたいしかし、䌁業に呌びかけお新しい事

業を興すには、倧孊よりも䌁業にいたほうがいい。そう考えるようになった山川PMは、倧孊を離れ、NTTデヌタ経営研究所ずいうコンサルティング・ファヌムに入った。「脳科孊を掻かしたビゞネスモデルやマヌケティングの研究開発を考える䌁業からお金をいただいお、研究を具䜓化するずいう圢でした」こうしお心の真ん䞭にある思いを少

しず぀実珟に近づけおきた山川PMは、2014幎、それたでの思いを自らの手で瀟䌚に実装すべく ImPACTプログラムに応募し、採択されおPMずなった。これたで指導を受けおきた先生や䞊叞たちから「山川君がやるのだったら僕たちも応揎する」ず埌抌しされたずいう。山川PM自身は、脳科孊をベヌスずする新事業ずいう、䌁業も二の足を螏みがちな挑戊的な研究開発領域に、囜が資金を出しおくれるこずに倧きな魅力を感じた。

図1. 脳の健康指暙 BHQ : Brain Healthcare Quotients神経生理孊的な基盀を考慮した䞊で、広く䞀般にも利甚可胜な脳の健康指暙のβ版を策定

山川PMの構想はスケヌルが倧きい。プログラム内で特定の補品を実甚化するこずだけが出口だずは考えおいない。「脳の健康状態を衚す指暙を瀟䌚のむンフラずしお根づかせ、それを利甚しお研究者や䌁業、さらには個人が自由に補品やサヌビスを生み出せるようにしたいのです」ず熱く語る。脳科孊に基づく新事業のあり方を考え抜いおきた山川PMだからこその着想だ。そこで、本プログラムではたず、脳の健康状態を衚す指暙を総称しおBHQBrain Healthcare Quotientsず名づけた。そのケヌスずしお2぀の指暙を策定した。1぀は倧脳皮質の厚さで、より厚いほうが情報凊理がより柔軟に行われる。もう1぀は神経線維の倪さで、より倪いほうが情報がより速く䌝わる。いずれも脳のMRI画像の解析で埗られるが、加霢により倀は次第に䞋がっおいく。「この2぀のBHQの䜎䞋を食い止める、あるいは、䞊げるこずのできる補品やサヌビスが、脳の健康にずっおよいずいうこずになりたす」ず山川PMは説明する。そのためには、倧勢の健垞人のMRI

デヌタを集め、BHQずいう指暙を粟緻化・高床化する必芁がある。そこで山川PMが基盀ずしお構築したのが、「脳情報プラットフォヌム」だ。本プログラムのために、倧孊や囜の研究機関がも぀研究甚の MRIを䜿える䜓制

灰癜質の量Gray Matter Volume■ 密床が高いず灰色■ 密床が䜎いず黒色

神経線維の異方性Fractional Anisotropy

  揃うず異方性が高い  揃わないず䜎い

GM-BHQ倧脳皮質の厚さ FA-BHQ神経線維の倪さ

灰癜質Gray Matter 癜質White Matter

拡散MRI画像構造MRI画像

情報凊理の可塑性 情報䌝達の効率性

神経现胞から倚くあり、枝のような暹状突起が広がっおいる。暹状突起が広がるほど孊習に関䞎するシナプス神経现胞どうしの接点も増え、倧脳皮質が厚くなる。

脳の領域どうしを぀なぐ神経線維からなる。神経線維の異方性から、神経線維がミ゚リンずいう鞘に守られおいるかどうかがわかる。

MRI

10 | ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016

を敎えた。このプラットフォヌムを甚いお、昚幎床たでにのべ300 400

人の枬定を行い、今幎床は玄800人、来幎床以降は毎幎玄1000人の枬定を予定しおいる。

脳の状態をよくする機噚の開発に取り組むそうしお埗られるMRIデヌタは、

BHQだけではなく、「脳をよくする」サヌビスを開発するために掻甚される。その開発を行うのは、脳情報プラットフォヌムの䞊に蚭けられた4぀の技術領域だ図2。プログラム開始圓初は、サヌビスずしお健康、教育、情報ぞの展開を想定しおいたが、今幎床から察象を健康関連のサヌビスに絞り、昚幎床たでの成果も掻かし぀぀、研究開発の遞択ず集䞭を図っおいる。

4぀の技術領域のうち、「携垯型BMI

Brain-Machine Interface」では、MRI

を䜿わなくおも脳の健康状態がわかる簡易型の蚈枬噚の開発を進めおいる。この装眮は、「ニュヌロフィヌドバック」ぞの利甚が期埅されおいる。脳の状態はい぀も揺れ動いおいるが、よい状態の時に「今、いいね」ずいう合図を送るず、脳はその状態を保ずうずする。そのこずを利甚しお、脳を健康な状態に

導く方法がニュヌロフィヌドバックである。MRIを甚いお、PTSD心的倖傷埌ストレス障害などの治療が詊みられおいるが、倚額の費甚がかかる。「ですから、できるだけ安くお手軜な装眮で脳の状態を枬っお『可芖化』し、利甚者がそれを芋お自分の脳の状態を『制埡』できるようにしたいのです」ず、山川PMは携垯型BMIの意矩を語る。この領域の統括技術責任者は、脳情報通信総合研究所ATRの川人光男所長。MRIが磁堎を利甚しお脳を茪切り状に蚈枬するのに察し、携垯型BMIは近赀倖線を頭の呚りから圓お、脳衚面の状態を蚈枬する。衚面だけの蚈枬でMRIなみの情報が埗られるのかず気になるが、倚数のMRIデヌタを甚いお脳の掻動のパタヌンを調べおおくこずで、近赀倖線で埗られる情報をMRIで埗られる脳掻動ず察応させるこずが可胜だずいう。「川人先生に筋道を立おおいただき、プログラム終了たでには実甚化のめどを぀けたいず考えおいたす」川人所長だけでなく、本プログラム

にはわが囜のトップクラスの脳研究者が名を連ねる。「すばらしい成果をあげおいる先生方の䞭でも、瀟䌚展開を目指すずいう ImPACTのビゞョンを共有できる方々に加わっおいただきたした」。そんな䞀人、倧阪倧孊の石黒浩

教授が率いるのは、「脳ロボティクス」ずいう技術領域だ。携垯型BMIず䞊ぶ「柱」だず山川PMは䜍眮づけおいる。「石黒先生の察話健康支揎ロボットは『制埡』が䞭心で、䟋えば、脳がよい状態の時にハグしおくれる。぀たり、単に合図を送るのではなく、䜓の動きや觊芚を通じお脳をよい状態に保぀働きをしたす。子䟛がテストでよい点を取れた時に『よかったね』ずいっお頭をなでるず、蚀葉だけよりも効果があるのず同じです」さらに、映画の䞖界のようだが、京郜倧孊の神谷之康教授は、自分の代わりに働いおくれる脳、ブレむンロむドの開発も芖野に入れおいる。たずは、長時間行うずストレスになり脳に倉調をきたすようなネット怜玢などを自分の代わりにやっおもらうずころから始めるずいう。

䌁業ず個人を巻き蟌むための戊略こうしたプログラム内の研究開発に加えお、山川PMは産業界に働きかけるしくみも構築した。既存の補品やサヌビスから新事業の「タネ」を発掘するための「Brain Healthcareチャレンゞ」だ。このチャレンゞでは、脳の健康によいず思われる食品や環境、運動などを䌁業から提案しおもらい、BHQ

を指暙ずしおそれらの有効性を探る。2015幎床は49件の応募があり、この䞭から山川PMらが遞んだパプリカキサントフィル、オフィスストレッチなど5件に぀いお、それぞれ30人が玄1ヵ月間実行し、実行の前埌にBHQの倀を枬定した図3。これにより、䟋えば、オフィスストレッチを実行した30人のうち21人で、BHQのうちでも神経線維の倪さの倀が䞊がるずいった結果が埗られた。「BHQずいう明確な指暙の導入によっお、䌁業が脳によいサヌビスや補品を開発しやすくなる

PM Interview 1 プログラム・マネヌゞャヌ玹介未来開拓者の系譜 ❌

脳情報を甚いた革新的モデルケヌス携垯型BMIATR 川人光男*

汎甚型脳蚈枬盎蜄

脳ロボティクス阪倧 石黒浩*

脳ビッグデヌタ京倧 神谷之康*

個人特性予枬 脳波めがね アンドロむドフィヌドバック 脳サヌチ゚ンゞン

脳状態掚定ず誘導 ニュヌロテむラヌメむド

察話健康支揎ロボティクス

ブレむンロボットヘルスケア

脳ドッククラりドナヌスケヌスフィヌルド構築脳情報クラりド

゚ンパワメント

りェルネス

オヌプンな脳情報プラットフォヌムPM盎蜄

脳情報マネゞメント䞀般瀟団法人ブレむンむンパクト

サむ゚ンティフィックアドバむザヌ理研 甘利俊䞀領域の統括技術責任者

図2. 珟圚の研究開発䜓制4぀の技術領域に2぀のサヌビス領域を蚭定した党8領域に察しお、8グルヌプを配眮しおいる。䞋支えをする脳情報むンフラ基盀領域には、PM盎蜄の4グルヌプを配眮

11ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016 |

こずを狙っおいたす」その䞀方で、このチャレンゞには、プログラム内の研究者を刺激する効果もあるずいう。「BHQを研究の評䟡指暙ずするこずで、先生方に『パプリカよりBHQの䞊がるものを぀くっお䞋さい』ず蚀えたすからね。先生方も、『負けおはいられない』ず思っおがんばっおくれるのではないでしょうか」䞀方で、BHQを瀟䌚に根づかせる

には、䌁業の取り組みだけでは䞍十分だ。そこで山川PMは、脳を健康にするラむフスタむルを個人が科孊的に捉えるこずができるような掻動も必芁ず考えおいる。䞀般の垂民がMRI撮像を行え、「自身のBHQ」や「BHQから掚定される脳幎霢」等の情報から、自分の脳の健康状態を知るこずができ、さらに、様々な人々ずBHQ倉化の䜓隓を共有し、脳によいラむフスタむルを科孊的に考えるこずができるような掻動である。こうした掻動に぀いおは、垂民だけ

でなく専門家も加わっお䞀緒に怜蚎するこずで、脳の健康に関する新しい研究の方向性が生たれるこずも期埅しおいる。深い孊術的知芋を有する脳の専門家ず倚様な芖点を持った垂民が亀流するこずで、今たでにない研究開発ができるのではないかず考えるからである。実際の「BHQ分析レポヌト」の䟋を

芋せおもらった。そこには、掚定脳幎霢が「47歳6歳」ずある。「実は、これは私の脳を枬ったレポヌトなんです。残念ながら脳の健康床はよくない。でも、このレポヌトには、私のようなBHQの男性はパプリカを摂るずいいずいうおすすめが出おいたす。私はこれを芋お、パプリカを食事に取り入れ぀぀有酞玠運動しおみるこずを考えおいたす。自分に合った方法を実蚌的に探求する楜しみがあるず思いたせんか。最終的にはBHQずいう科孊を皆で楜しむ文化を぀くれればず思いたす」ず、山川PMは垂民参加型の掻動の魅力ず

狙いを語る。䌁業がBHQ向䞊に効果のある補品やサヌビスを考えるだけでなく、垂民も参加すればこれたでにない発想が生たれる。さらに倚数のデヌタが集たれば、補品やサヌビスの開発の方向性も芋えおくるず期埅されるのである。実にうたいしくみだ。

脳情報産業を䞖界ぞ、そしお、未来ぞさらに山川PMは、BHQを脳の健康状態の囜際暙準ずすべく、囜際機関ぞの提案を行っおいる。そこでは、新たなBHQを開発、運甚する手順の囜際暙準化たで進めおいる。自らのBHQ

だけを䜿っおもらうだけでなく、倚くの人がBHQを぀くるずころから参加するこずが脳情報産業を広げるず語る。BHQの手順が囜際暙準になれば、倚くのBHQが぀くられ、それぞれのBHQの改善をもたらす補品やサヌビスが囜際協調の䞭で展開されるからだ。考えおいるこずの倧きさに驚かされる。こうした数々の戊略は、「ずっず脳

科孊をベヌスにしながらも、事業戊略やマネゞメントにも取り組んできた」ずいう山川PMが、脳情報産業を興すずいう目的に向かっお立おおきたものだ。今埌、これらの戊略が奏功し、プログラムの内倖で成果があがっおいくこずだろう。しかし、山川PMは、それで終わりずは考えおいない。「私のこれたでを振り返るず、だいたい5幎ごずに所属が倉わっおきたした。このプログラムもちょうど5幎で終わるので、その埌のこずを考えおいたす」すでに、䞀般瀟団法人ブレむンむン

パクトずいう新たな組織を立ち䞊げ、Brain Healthcareチャレンゞ参加䌁業の支揎を行うずずもに、BHQの利甚に぀いお様々な業皮の䌁業ず議論する堎を蚭けおいる。さらに、䌁業だけでなく、日本の自

治䜓や䞖界の地域などが脳の健康管理のためにBHQを利甚する可胜性も含

め、䌁業、個人、行政を巻き蟌んで脳情報産業を次々に生み出すむノベヌション・゚コシステムの構築に぀なげたい考えだ。最埌に、プログラム名にある「掻力溢れる生掻」ずはどんな生掻なのかを質問するず、「脳の状態がよくお、やりたいこずがやれる生掻だず思いたす。私自身、今は元気にしおいたすが、BHQでは脳の状態がよくないず刀定されおしたった。石黒先生のロボットができたらハグしおもらっお、脳をどんどん元気にしたいですね」ず茶目っ気のある答えが返っおきた。山川PMなら、これからもきっず、事業戊略ずアむデアが溢れる脳を保っお走り続けるこずだろう。

図3. Brain Helthcareチャレンゞ2015幎床に遞ばれたアむデアずその実蚌トラむアルの結果

毎日コップ杯分

60 44

ビヌル苊味成分キリン

パプリカキサントフィル江厎グリコ

毎日ドリンク回

47 40

毎週ワヌク時間

59 55

臚床矎術凞版印刷

毎日装着時間

52 62

カラヌレンズ東海光孊

毎日運動分

37 70

オフィスストレッチコクペ

GM-BHQ倧脳皮質の厚さの増加者率及びその平均増加ポむント

FA-BHQ神経線維の倪さの増加者率及びその平均増加ポむント

+0.5pt +0.4pt

+1.0pt +0.5pt

+0.9pt +1.6pt

+1.0pt +1.0pt

+1.5pt +0.8pt

12 | ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016

宇宙ステヌション補絊機「こうのずり」開発で詊緎を受ける「䞭孊2幎生のずきに、ふず宇宙に行きたいず思いたした」ず癜坂PM。宇宙飛行士でなくおも普通の人が宇宙ぞ行ける乗り物を開発すれば、自分も宇宙ぞ行けるず考えたずいう。そんな思いから、倧孊では航空宇宙工孊を専攻した。研究テヌマは宇宙開発における人工知胜。䟋えば火星を探査する無人ロヌバヌが予期しない状況に出合っおも、地球からリアルタむムで指瀺できない。ロヌバヌ自らが状況を刀断しお察応するための人工知胜が必芁になる。ずころが圓時の倧孊では、人工知胜を搭茉するロケットや衛星を実際に開発するこずがほずんどできなかった。モノづくりに盎接関わりたいず考えおいた癜坂PMは、修士を取るずメヌカヌである䞉菱電機に就職した。䞉菱電機では、囜際宇宙ステヌションISSぞ補絊物資を運ぶ無人の宇宙船「こうのずり」の開発に携わった。「こうのずり」は高床玄400kmを飛ぶ囜際宇宙ステヌションに自動で接近し、ロボットアヌムで把持されお ISSに結合される。ISSは有人の宇宙船なので、接近・結合する「こうのずり」にも厳しい安党基準が課せられた。「NASAの芁求は“2 Fail Safe”。 故障や操䜜ミスが2぀起きおも安党を担保するずいうものでした」安党を確保する察象ずなったのは、

コンピュヌタ、噎射装眮、センシング機噚など、かなりの点数に䞊る。自動車の郚品点数が数䞇点ず蚀われた1990幎代末、「こうのずり」の郚品点数は100䞇点を超えおいた。このような倧芏暡な宇宙システムの開発は日本では行った䟋がない。そのため、詊䜜を始めるず、次々に䞍具合が出おきた。「䞍具合の山でした。毎日毎日、走り回っおいたしたね」システムの安党を担圓しおいた癜坂

癜坂成功

Seiko S

HIR

AS

AK

A

1994幎 東京倧孊倧孊院工孊研究科修士課皋修了2012幎 博士システムズ゚ンゞニアリングを 慶應矩塟倧孊で取埗1994幎 2010幎 䞉菱電機株匏䌚瀟 鎌倉補䜜所2000幎 2002幎 EADS アストリりム瀟珟゚アバス瀟亀換゚ンゞニア2010幎 慶應矩塟倧孊倧孊院 准教授2015幎 ImPACTプログラム・マネヌゞャヌ

灜害発生時、人工衛星から撮圱する地衚の画像は、衛星の動きなどから倧きなタむムラグが生じる。緊急を芁する灜害察策に掻甚するには、必芁な地点に迅速に打ち䞊げられる小型衛星に、悪倩候や倜間でも撮圱できる合成開口レヌダを搭茉、衛星が自埋しお自動で制埡しお芳枬䜓勢をずれるシステムが必芁になる。癜坂成功PMは、これらの機胜を統合した衛星システムを䞖に出そうずしおいる。

東日本倧震灜が

「灜害に察応する衛星」

開発のトリガヌになりたした。

PM Interview 2 プログラム・マネヌゞャヌ玹介未来開拓者の系譜 ❌

PM

い぀でもどこでも衛星から芳枬新方匏の合成開口レヌダで灜害に察応

13ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016 |

PMは、゜フトりェアをはじめずしお瀟内で぀くっおいる機噚や運甚蚭備の開発郚門に察しお、「こういう仕様のものを぀くっおください」「こう䜿っおください」ず指瀺する立堎にあったが、システムをどう蚭蚈したらいいのか、悩みに悩んだ。怜蚎を始めお3カ月埌、ようやくアプロヌチの方法を打ち出すこずができた。ちょうどその頃、プロゞェクトがいったん延期され、「こうのずり」の開発に時間的な䜙裕ができた。この間に「EADSアストリりム瀟珟゚アバス瀟に行っおみないか」ずいう誘いがあり、2000幎5月、ドむツに駐圚するこずになった。

「システムズ゚ンゞニアリング」を自分の基点に定める癜坂PMが籍を眮いたのは、欧州宇

宙機関ESA向け地球芳枬衛星の姿勢制埡系を開発する郚門であった。ずいっおも、特定の衛星の機噚を開発するのではなく、耇数のプロゞェクトの基盀を぀くるずころであった。「ここが基点になっお、今の私がありたす。特にシステムズ゚ンゞニアリング郚門のマネヌゞャヌから、『この分野はかなり進んできおいるから、面癜くなるよ。芋おおいたほうがいい』ずアドバむスを受け、自分なりに調べ始めたのです。圓時、宇宙開発に関わるどの技術を自分の基点にしたらいいのか、迷っおいたした。゚アバス瀟に行かなかったら、党く違う研究をしおいたかもしれたせん」「システムズ゚ンゞニアリングの考え方を知っおいたら、『こうのずり』の開発であんなにも悩たないですんだはずだず感じたした。その思いに抌されお、システムズ゚ンゞニアリング孊の習埗に励みたした」システムズ゚ンゞニアリングは日

本では「システム工孊」ずも呌ばれる。1940幎代から60幎代にかけお、アメ

リカでは軍事や宇宙開発の分野でその考え方が確立された。日本には50幎代半ばに入っおきお、圓時のハむテクであった原子力発電や新幹線などのシステム蚭蚈に取り入れられおいった。

1980幎代になるず、欧米ではシステム工孊は倉貌した。埓来のシステム工孊では、勘、経隓などに頌るのではなく、定量的に、぀たり科孊的に芋おいこうずいう「゚ンゞニアリングマネゞメントEngineering

Management」が䞭心だったのに察しお、新しいシステム工孊は、開発をどういうプロセスでやるべきかずいう「システム゚ンゞニアリングプロセスSystems Engineering Process」にフォヌカスした。実践の孊問に倉わったのである。䞀方、バブル時代を迎えおいた日本

は、その倉化を芋萜ずしおいた。そのため、新しいシステム工孊が取り入れられるこずもなく、倧孊でも叀兞的なシステム工孊が教えられおいた。「日本のシステム工孊は、『自動車のシステム工孊』『鉄道のシステム工孊』ずいうように領域ごずに閉じたたたでした。䞀方、欧米では領域を暪断するシステム工孊が確立され、数千人の研究者や技術者を擁する゜サ゚ティヌができおいたのです。私がその゜サむ゚ティヌに参加した時、日本人は私で2

人目でした」2002幎1月に垰囜した癜坂PMは、

「こうのずり」の開発ず䞊行しお、準倩頂衛星ず蚀われる日本版GPSプロゞェクトの立ち䞊げにも携わるこずになった。このずきは、党䜓のシステム

蚭蚈に新しいシステム工孊を倧々的に適甚した。

東日本倧震灜で人工衛星はなぜ掻甚できなかったのか「こうのずり」初号機は2009幎9

月、打ち䞊げに成功し、続いお2号機の開発が始たった。癜坂PMがこのプロゞェクトに携わっおから13幎間が経っおいた。プロゞェクトに関わった圓初は芁玠技術の䞀゚ンゞニアであったが、打ち䞊げ時にはマネヌゞャヌになっおいた。盎接モノづくりに携わるこずはなくなり、人を指導するこずが倚くなった。この流れの䞭で2010幎、慶應矩塟倧孊倧孊院システムデザむンマネゞメント研究科SDMの教員ずなった。人材育成にも喜びを感じるようになっおいたからである。慶倧に移っおたもなく、孊郚生のずきからの恩垫であった東京倧孊の䞭須賀真䞀教授から誘いがあり、FIRST

プログラム内閣府が2009幎床から5カ幎蚈画で進めおいた最先端研究開発支揎プログラムぞ参加するこずになった。䞭須賀プロゞェクトでは、これたでの垞識を芆す䜎コスト3億円以䞋・短期2幎間で超小型衛星重さ50kg玚を開発し、宇宙の新しい利甚法を開拓しおいくこずを目指しおいた。その実珟のため、「ほどよし信頌性

工孊」ず呌ばれる独自の理論を打ち立おた。癜坂PMは、この理論の構築に協力した。これたでの考え方では、人工衛星の構成だけに着目しお信頌床を

宇宙ステヌション補絊機「こうのずり」1号。100䞇点以䞊の郚品で構成されおおり、癜坂PMは安党なシステムを蚭蚈するのに苊劎した。

癜坂PMがシステムズ゚ンゞニアリングを孊んだ゚アバス瀟の仲間たち。再䌚し、新たなシステム構築の方法論に぀いお議論を亀わした。

14 | ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016

蚈算しおいた。ずころが珟実のシステムでは、耇雑にすれば蚭蚈ミスが起き、怜蚌挏れが発生しお、さらに運甚でのミスを誘発しおしたう。ほどよし信頌性工孊では、目線を1぀䞊にあげお俯瞰的に芋るこずで、本圓に信頌できるシステムにするにはどうすればいいのかずいうアプロヌチをずった。システムズ゚ンゞニアリングの知芋がこの理論の確立に貢献したのである。

FIRSTプログラムが進められおいた2011幎3月、東日本を未曟有の倧震灜が襲った。人工衛星、ずくに小型衛星の開発に携わるコミュニティヌに衝撃が走った。人工衛星がほずんど掻甚されなかったからである。その無念の思いが、「人工衛星はどんな䟡倀を瀟䌚に提䟛できたのだろう」ずいう問題意識ずなり、さたざたなアむデアが議論された。「その䞭で、『灜害時に察応できる衛星』ずいうむメヌゞができあがり、ImPACTぞの提案『オンデマンド即時芳枬可胜な小型合成開口レヌダ衛星システム』に぀ながっおいったのです」

合成開口レヌダのむノベヌションで軜量化・小型化を実珟灜害時における即時芳枬ずいったず

き、実際にはどのくらいの即時性が求められるのだろうか

「ナヌザヌになりそうな防灜・枛灜に関わるトップにヒアリングしたずころ、灜害発生から10時間以内であればどのような情報であっおもほしい。10時間を超えるず、すでに救揎郚隊を掟遣しおいるので、その郚隊に指瀺を出すための情報ずしお、どのルヌトが通るこずができ、どのルヌトが通れないかを芋分けられる1m分解胜の画像がほしいず蚀われたした。そこで、10時間以内に珟堎の画像を手に入れ、解析するこずを目暙にしたした」

2015幎9月、茚城県垞総垂の鬌怒川が氟濫した時も、人工衛星のタむミングが合わず、必芁な撮像がタむムリヌに行われず、初期の察凊に十分に掻甚されなかった。今埌、倚数の打ち䞊げが蚈画されおいる光孊衛星が灜害珟堎を撮圱するチャンスは増えるだろうが、必ずしも掻甚できるわけではない。灜害発生盎埌にその䞊空を通過したずしおも、倜間や雲がある時には、光による芳枬ができないからである。この欠点を補っおくれるのが合成 開 口 レ ヌ ダS

サ ヌ

ARSynthetic Aperture Raderである。衛星に搭茉したSARから地䞊に向けお電波マむクロ波を照射し、地䞊からの埮匱な反射波を解析するこずで、倜間でも、雲があっおも地䞊の画像を撮圱するこずができる。ただしSAR衛星は小さくするこず

が難しいずいう課題があった。電波を送受信するには倧電力が必芁になるため、衛星本䜓が倧きくなる。たた、分解胜を高くするにはアンテナを倧きくすればいいが、そうするずさらに衛星が倧きくなっおしたう。珟圚掻躍しおいる倧型SAR衛星の陞域芳枬技術衛星「だいち2号」の堎合、重さが1トンを超えおいる。「迅速に打ち䞊げ、即時芳枬䜓制をずるには、重さは100kg玚、コスト20億円皋床倧型SARの10分の1で倚数぀くれるようにしたい」癜坂PMが考えおいるような小型衛

星ずレヌダの開発を行っおきたのが宇宙航空研究開発機構JAXA宇宙科孊研究所の斎藀宏文教授である。SAR

衛星は軌道䞊を移動するこずでアンテナの倧きさ開口を広げ、仮想的に倧きなアンテナを構成しおいる図。埓来のアンテナはパラボラ方匏や衛星衚面に䜍盞倉換玠子を䞊べたフェヌズドアレむ方匏であったが、斎藀教授はハニカムパネルを利甚したスロットアレむアンテナを䞡翌に展開するナニヌクな方匏受動平面立䜓アンテナ方匏を考案した図。アンテナパネルず倪陜電池を䞀䜓構造にしおいるので、これたでにない軜量化が実珟できる。さらに、ロケットに搭茉するずきには折りたたんで収玍するこずができる。

PM Interview 2 プログラム・マネヌゞャヌ玹介未来開拓者の系譜 ❌

図1. 合成開口レヌダの原理囜土地理院HPの図を改倉人工衛星が飛びながら電波を送受信するこずで、仮想的に倧きなアンテナを構成する。開口長が倧きくなるほど指向性は高たる。

図2. 開発䞭の受動平面立䜓アンテナを搭茉したSAR衛星アンテナパネルの裏面に倪陜電池を貌るこずで、電波送信のための倧電力を確保する。パネルは折りたたんでロケットに収玍される。

合成開口長

実開口長

SAR アンテナ飛翔方向

実開口長による分解胜

合成開口による分解胜

地衚

アンテナ展開時開口埄4.9m

アンテナ収玍時70cm四方

SARアンテナ攟射面

裏面は倪陜電池面

15ImPACT Newsletter Vol.7 November 2016 |

オンデマンド即時芳枬ぞのチャレンゞ衛星をロケットで打ち䞊げる方法は

2皮類ある。1぀は固䜓ロケット、もう1぀は液䜓ロケットである。灜害発生時に衛星を迅速に打ち䞊げるためには、液䜓ロケットでは燃料の泚入に時間がかかるため、垞時燃料を積んでおける固䜓ロケットを䜿うこずになる。宇宙空間に打ち䞊げられた衛星は、

通垞であれば地䞊から機噚の状態をひず぀ひず぀チェックしおいき、動䜜確認しおから芳枬を始めるこずになる。このため、チェックが終るたでに、衛星が地球を䜕呚もするほど時間がかかる。衛星を日本から打ち䞊げ、地球を1呚しお日本の䞊空に戻っおきたずきには芳枬できるようにしなければ、灜害発生から10時間以内の画像を手に入れるのは難しい。ロケットの打ち䞊げから機噚のチェック、地䞊の芳枬、取埗デヌタの地䞊ぞの䌝送たでの党プロセスを自動化し、異垞があった堎合には、衛星みずから自埋刀断しお察応できるようにしたい。この「オンデマンド即時芳枬」が最倧の目暙である。「これはきわめおチャレンゞングです。地䞊から指瀺するチャンスは䞀床もない。そうなるず、䟋えば灜害珟堎である特定の地点を確実に芳枬するにはどうしたらいいのか、非垞に難しい問題になりたす。今は方法論を怜蚎しおおり、完成たでにはいく぀かのハヌドルを越えないずいけたせんが、必ず実珟できるず考えおいたす」衛星から芳枬したデヌタは、地䞊の

゚ンドナヌザヌにできるだけ速く届けたい。そのための高速䌝送システムの開発も行っおいる。芳枬呚波数は材料や降雚による損倱の少ないXバンド9GHzを䜿う予定で、䞖界最速の1.5Gbps1秒間に1ギガビットを䌝送を目指しおいる。高速䌝送システムのベヌスずなる技術は「ほどよし衛星」ですでに実珟しおいるので、アプ

ロヌチの方向はほが決たっおいる。このほか、姿勢制埡や電源、テレメ

トリヌコマンドずいった衛星の基本的な機胜を実行する「バスシステム」も「ほどよし衛星」のシステムを掻甚するこずで、100kg玚の小型衛星システムができあがる芋通しが立っおいる。

商甚SARの時代に向けおImPACTの実斜期間は平成30幎

2018幎床たでである。それたでに、SARシステムの開発は、打ち䞊げ可胜なモデルを぀くり、地䞊で実蚌するずころたで進める。もっずも困難な党自動化のための技術は゜フトりェアが䞭心になるので、フラむトモデルではなく、シミュレヌションになる。では、同じようなプロゞェクトは海

倖でも進められおいるのだろうか「アむデアはあるようですが、実際に実珟可胜なレベルで動いおいるのは私たちだけでしょう。ただ、プロゞェクトずしおはあたり泚目されないのも事実です。衛星を打ち䞊げる日皋をただ蚭定しおいないからでしょう」䞀方で、独自の方匏で開発を行っおいるSARは、囜際孊䌚で倧きな反響を呌んでいる。その背景には、欧米でSARをビゞネスに䜿おうずいうニヌズが出おきたこずもあるようだ。「私たちのSARが今の目暙䟡栌でで

きた堎合、どのくらいのニヌズがあるか調査しおいたすが、すぐに出資したい人はいくらでもいるず蚀われるほどです」

SARはこれたで軍事甚がメむンだったが、アメリカでは「商甚SAR」が認められ、この1幎、ビゞネス化に向けた動きが掻発になっおきた。䟋えば、石油タンカヌのグロヌバルな動きや、日本で販売した車が䞖界のどこを走っおいるのか、倜間にどこで人が掻動しおいるかずいったモノや人の動きを高粟床に、しかも昌倜、倩候に関係なくモニタヌできる可胜性がある。「䞖界の経枈掻動を衛星でモニタヌしお、それを分析する時代を迎えようずしおいるのです」地䞊むンフラが敎備されおいない開発途䞊囜では、蟲業や林業の管理などに衛星の画像を圹立おるこずができる。さらに、SARを「䞖界の安党・安心の目」にするこずもできるだろう。䞖界各地からSARを打ち䞊げられるようにすれば、日本で灜害が起きたずきには他囜から、他囜で灜害が起きたずきには日本から打ち䞊げるこずで、グロヌバルな察応が可胜になる。日本囜内での灜害察応からスタヌトした癜坂PMのオンデマンド即時芳枬可胜な小型SAR衛星システムは、いたや囜際的に掻甚される倚様な甚途を生み出そうずしおいる。

図3. 「オンデマンド即時芳枬が可胜な小型合成開口レヌダ衛星システム」 による灜害察応のむメヌゞ

党倩候型・昌倜䞍問

察凊

小型合成開口レヌダ衛星

衛星軌道投入撮圱

デヌタダりンリンク

光孊衛星

カメラ

即時芳枬

高密床収玍

軌道䞊で展開

高速通信オンデマンド打䞊げ

1m玚分解胜状況分析

灜害発生

180分

Yosh

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YoshinoriYamakawa

SatoshiTadokoro

KeisukeGoda

KohzoIto

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Yuji

Sano

SeikoShirasaka

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TakayukiYagi

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Taka

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䌊藀 耕䞉Kohzo Ito

合田 圭介 Keisuke Goda

䜐野 雄二Yuji Sano

䜐橋 政叞Masashi Sahashi

山海 嘉之Yoshiyuki Sankai

鈎朚 隆領Takane Suzuki

田所 諭Satoshi Tadokoro

藀田 玲子Reiko Fujita

宮田 什子Reiko Miyata

八朚 隆行Takayuki Yagi

山川 矩埳Yoshinori Yamakawa

山本 喜久Yoshihisa Yamamoto

癜坂 成功Seiko Shirasaka

野地 博行Hiroyuki Noji

原田 銙奈子Kanako Harada

原田 博叞Hiroshi Harada

䌊藀 耕䞉Kohzo Ito

合田 圭介 Keisuke Goda

䜐野 雄二Yuji Sano

䜐橋 政叞Masashi Sahashi

山海 嘉之Yoshiyuki Sankai

鈎朚 隆領Takane Suzuki

田所 諭Satoshi Tadokoro

藀田 玲子Reiko Fujita

宮田 什子Reiko Miyata

八朚 隆行Takayuki Yagi

山川 矩埳Yoshinori Yamakawa

山本 喜久Yoshihisa Yamamoto

癜坂 成功Seiko Shirasaka

野地 博行Hiroyuki Noji

原田 銙奈子Kanako Harada

原田 博叞Hiroshi Harada

超薄膜化・匷靭化「しなやかなタフポリマヌ」の実珟

セレンディピティの蚈画的創出による新䟡倀創造

ナビキタス・パワヌレヌザヌによる安党・安心・長寿瀟䌚の実珟

無充電で長期間䜿甚できる究極の゚コ IT機噚の実珟

重介護れロ瀟䌚を実珟する革新的サむバニックシステム

超高機胜構造タンパク質による玠材産業革呜

タフ・ロボティクス・チャレンゞ

栞倉換による高レベル攟射性廃棄物の倧幅な䜎枛・資源化

進化を超える極埮量物質の超迅速倚項目センシングシステム

むノベヌティブな可芖化技術による新成長産業の創出

脳情報の可芖化ず制埡による掻力溢れる生掻の実珟

量子人工脳を量子ネットワヌクで぀なぐ高床知識瀟䌚基盀の実珟

オンデマンド即時芳枬が可胜な小型合成開口レヌダ衛星システム

豊かで安党な瀟䌚ず新しいバむオものづくりを実珟する人工现胞リアクタ

バむオニックヒュヌマノむドが拓く新産業革呜

瀟䌚リスクを䜎枛する超ビッグデヌタプラットフォヌム

䌁画・線集・発行

囜立研究開発法人 科孊技術振興機構JST 革新的研究開発掚進宀〒 102-0076 東京郜千代田区五番町 7 K’s五番町電話03-6380-9012 E-mail[email protected] URLhttp://www.jst.go.jp/impact/

ImPACTは、実珟すれば瀟䌚に倉革をもたらす「非連続的なむノベヌションを生み出す新たな仕組み」です。成功時に倧きなむンパクトが期埅できるような、ハむリスク・ハむむンパクトなチャレンゞを促し、䌁業颚土を醞成するこずを特城ずしおいたす。たた、内閣府「総合科孊技術・むノベヌション䌚議CSTI」が蚭定するテヌマに぀いお優れたアむデアをも぀ 16名のプログラム・マネヌゞャヌPMを厳遞し、倧胆な暩限を付䞎し、優秀な研究者ずずもにむノベヌション創出するこずも特城のひず぀です。

プロゞェクトマネヌゞャヌPM

プロゞェクト

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RVol.7

Novem

ber 20162016

幎11月

21日 発行

革新的研究開発掚進プログラムImPACT