人工歯(レジン歯と硬質レジン歯)の使い分け方を教え url...

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/ Title Author(s) �, Journal �, 117(5): 401-402 URL http://hdl.handle.net/10130/4385 Right Description

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  • Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,

    Available from http://ir.tdc.ac.jp/

    Title人工歯(レジン歯と硬質レジン歯)の使い分け方を教え

    てください。

    Author(s) 櫻井, 薫

    Journal 歯科学報, 117(5): 401-402

    URL http://hdl.handle.net/10130/4385

    Right

    Description

  • 401 歯科学報 Vol.117,No.5(2017)

    臨床のヒント

    Q&A 59

    有床義歯補綴系

    Q&Aコーナーは,東京歯科大学の3病院の臨床研修歯科医から寄せられた質問に対しての回答です。回答は本学3施設の専門家にお願い致します。内容によっては基礎や臨床,あるいは歯科や医科と複数の回答者に依頼する場合もあります。毎号掲載いたしますので,会員の皆様もご質問がございましたら,ぜひ東京歯科大学学会までeメールかファックスで依頼していただきたいと存じます。必ずご期待に添えることと思います。今号は人工歯の使い分けに関する質問です。

    Question

    人工歯(レジン歯と硬質レジン歯)の使い分け方を教えてください。

    Answer

    はじめに

    有床義歯に使用される人工歯としては,陶歯,レジン歯および金属歯がある。レジン歯の中にアクリル系レジン歯と硬質レジン歯がある。個人的には天然歯と同程度の物理的機械的特性を有していて,硬度,耐摩耗性,審美性に優れている陶歯を好む。しかし,一般的には咬合した時に接触音がする場合があり,調整しにくいので好まれない。従って陶歯については除外し,質問であるアクリル系レジン歯と硬質レジン歯の使い分について言及する。

    硬度は

    人工歯は,天然歯と近似していることが望ましい。天然歯に比べて硬すぎると対合歯を磨耗させ,軟らかすぎると摩耗が進み,嚙み合わせや咀嚼効率が劣り,また均衡接触が甘くなると義歯の安定性が悪くなる。エナメル質のビッカース硬度は,270~400Hvであり,各社の人工歯の硬度(表)は,エナメル質よりだいぶ柔らかく,象牙質の硬度(57から76Hv)に近い。これは人工歯の硬度を高くすると脆くなり,人工歯が欠けやすくなるので,硬度を落としている。一方アクリル系レジン歯は22Hvと非常に軟らかいことがわかる。これでは前述したように摩耗が進み,咬合を適切に保てなくなる。硬度の観点

    からは硬質レジン歯の方が良い。

    耐摩耗性は

    硬質レジン歯は,アクリル系レジン歯の欠点である硬さと耐摩耗性を改善するために,アクリルレジンにフィラーを混ぜた複合体である。従ってフィ

    表 各社人工歯のビッカース硬度一覧

    メーカー 品 名 ビッカース硬度(Hv)

    山八歯材 ソリュート PX 45

    エンデュラ 31

    松風 バイオリンガ 23

    ベラシア 23

    サーパス 24

    ジーシー デュラデント 29

    リブデント 23

    ニッシンデュラクロス フィジオ 45

    デュラクロス 45

    Ivoclar フォナレス NHC 31

    VITA VITA MFT 22

    測定条件使用機器:Hardness Testing Machine(HM-102,明石製作

    所(現在のミツトヨに統合))

    測定荷重:1kg

    測定温度:23 ℃

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  • 402 歯科学報 Vol.117,No.5(2017)

    図1 エナメル層(コンポジットレジン),デンティン層(コンポジットレジン)およびベース層(アクリルレジン)の3層からなる硬質レジン歯

    ラーを入れた分だけ耐摩耗性は向上している。人工歯によって異なるが,約6倍向上している。耐摩耗性の観点からも硬質レジン歯の使用を勧める。

    審美性は

    硬質レジン歯はアクリル系レジン歯のように単層ではなく,多層構造にして深みのある色調や天然歯と同様に蛍光性を持たせて審美的になっている(図1)。しかし,硬質レジン歯は,アクリル系レジンの中にフィラーが含有されているので,それらのぬれ性が悪いと異物が侵入しやすく,アクリル系レジン歯よりも着色しやすい製品もある。ただし,きちんと義歯用ブラシや義歯洗浄剤を併用して,義歯を清掃していれば着色はしない(図2)。余談ではあるが,フィラーを含有している分だけ,硬質レジン歯の方が吸水性は若干少ない。

    それではなぜアクリル系レジン歯が必要なのか

    硬質レジン歯は,機械的性質と審美性の向上のために図1のように,3層構造になっており,基底部は義歯床と化学的に結合するようにアクリル系レジン単味になっている。従って顎堤が高い場合や残根上義歯(オーバーデンチャー)の場合には人工歯が入る間隙が狭い。その時には人工歯基底部を削去して排列するが,この量が多いとアクリルレジンでできているベース層がなくなり,コンポジットレジンでできているデンティン層が現れ,この層と義歯床とは化学的に着かずに人工歯脱落の原因となる。このような場合にはアクリル系レジン歯を間隙の狭い部

    図2 硬質レジン歯でもブラシが当って清掃ができているところは着色しない。

    図3 下顎前歯部に4ヶ所根面板があり,硬質レジン歯を排列する間隙がないので,この部にのみアクリル系レジン歯を用いた。

    位だけ用いる(図3)。またグループ・ファンクションやバランスド・オクルージョンの場合に対合歯の摩耗の可能性がある場合にも,それを避けるためにアクリル系レジン歯を用いる。

    おわりに

    結論としては通常の場合であれば硬質レジンを選択し,人工歯基底部を削去するほど人工歯の上下的スペースがない場合,あるいは側方運動時に対合歯を咬耗させてしまう(不可逆な)場合には,咬耗や摩耗しても交換が可能なアクリル系レジン歯を用いると良い。

    Answer:櫻井 薫東京歯科大学老年歯科補綴学講座

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