-韓国の「2009改定教育課程」と clil clil of …...curriculum and clil theory - 朴...
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要 旨 本稿では、韓国の高校の日本語授業で CLIL(Content and Language Integrated
Learning、内容言語総合型学習)という教授法を導入する意義と授業モデルを提
示する。現在韓国の高校では第二外国語として日本語を教えている学校が多いが、
入試に重点を置く風潮にあり、日本語は必要のない科目として認識されている。
そのため、一年間学習しても、学習者には日本語の知識はほとんど残らない。また、
韓国の教育方針である「2009 改定教育課程」の「日本語Ⅰ」では文化教育の重要
性を強調しているが、実際の現場では文化教育がそれほど行われていない。
しかし、教育方針となっている「2009 改定教育課程」を改めて分析すると、
CLILの理念に合致するところが多いことが明らかになった。そこで、本稿では受
験偏重の韓国の高校で文化教育に重点を置いた日本語教育の方法として、「2009 改
定教育課程」に CLILの理念が合致する理由とその利点について論じ、内容言語
統合型学習である CLILという教授法を授業モデルとともに提示する。この CLIL
は文化教育の改革に非常に有効な教授法であるが、それを実践するためには、教
師による工夫だけでは成り立たず、それを実践しようとする教師への教育機関の
支援も必要となる。
キーワード日本語 日本文化 CLIL 韓国の日本語教育 内容言語総合授業 2009 改定教育課程
1 はじめに グローバル化が進むにつれ、周辺国との協力と交流が活発になり、互いの理解と円滑なコミュニケーションのための道具として第二外国語や多文化教育が重要視される
日本語コミュニケーション能力向上のための言語文化統合授業としての CLIL
-韓国の「2009 改定教育課程」と CLILの理念の比較-
CLIL of Language-Culture Integrated Education for Improving Ability to Japanese Communication
- Comparison of The 2009 Revised Korean National Curriculum and CLIL Theory -
朴 文英
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『同志社大学 日本語・日本文化研究』 第 15 号 pp. 127 - 149(2017. 3)
ようになっている。現在、韓国の中・高校では、日本語・中国語・スペイン語などの様々な言語が第二外国語として教えられている。第二外国語の一つである日本語科目は、学校教育に導入された当時、大学入学試験の選択科目として取り入れられ、関心を引いた。しかし、成績として認める学校が一部しかない現在では、第二外国語として日本語の立場が危うくなってきている(Kim, 2015)。外国語への興味やその必要性からではなく、大学の受験時に役に立つか立たないかという基準で外国語を選ぶ多くの高校生にとって、日本語は必要のない科目だと認識されているのが現実だ。そして、中・高校で、1年または 2年間に週 2回しか授業を受けない学生たちにとって、日本語は大学受験が終わると、頭の中から自然に消え去る科目となっている。学習への時間と努力の投資が無駄になるような空しく残念な現実である。このような現実を踏まえ、第二外国語学習をより実用的に、かつ、多文化時代にふさわしい人材を育てるためのものにする方法が検討されてきている。例えば、Kim(2015)は、学校現場で働いている教師が学生たちに日本語への関心や興味を持たせるためには、試験のためではなく、内在的な欲求によって学習者が自分で学ぼうとする授業を構成する必要があると述べている。そして授業では、文化を理解する過程で言語を理解し学んでいく方法で日本語を教えなければならないと提示している。それを実現するためには、言語と文化の統合的な授業が必要であり、そのための資料開発や教授方法の研究を通して、より効果的で実用的な日本語が学べる授業を構築していく必要があると言える。 筆者は、言語と文化の統合的な授業について検討する中で、CLIL(Content and
Language Integrated Learning、内容言語総合型学習)という教授法を用いれば、文化やコンテンツを通して言語を習得できる授業が行えるということを知った。CLILは、ヨーロッパやアメリカを経て最近アジアで注目を浴びている、内容と語学の組み合わせを図る教授法である。山野(2013:95)は CLILの背景について次のように述べている。
CLILは1990年代にヨーロッパで始まり、発展してきた。その背景には、ヨーロッパ連合(EU)
統合により、ヨーロッパ市民の外国語教育によるコミュニケーション能力の育成と多文化へ
の理解が必須となったことがある。ヨーロッパ連合の平和と安定のために、多言語や多文化
への理解が求められ、1995 年に発令された母語以外の 2言語を学ぶことを目標とした EU
言語政策のもと、それらを具現化するための外国語教授法として CLILは生まれたのである。
本稿では、韓国の高校で日本語を学んでいる学生たちのコミュニケーション能力の向上と文化理解教育のための効果的な授業活動として、この CLILを用いた高校での日本語の授業方法を提示する。これによって、韓国の日本語学習者の学習動機を高め、日本語の知識だけではなく、円滑なコミュニケーション能力を身につけることができる教育への改善に貢献することを目的とする。
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2 先行研究 ヨーロッパの英語教育で始まった CLILは、その効果が認められ、アジアでも英語を教える方法としてさまざまなところで研究と実践が行われている。韓国においても、英語教育に CLILを導入しようと様々な研究と授業が行われている。そのため、まずCLILの概要をまとめ、英語教育における CLILの先行研究を挙げる。そして、韓国の日本語教育においての言語と文化の統合授業に関する研究と日本での日本語教育において行われた CLIL研究について述べる。これらの先行研究を通して、現在の韓国での日本語教育における問題点を洗い出し、それを改善するための CLILの活用について検討する。
2.1 CLIL の基本原理と原則
CLILは、言語と教科内容を同時に教えることを目的とした外国語教育の原理である。内容を目標言語で教えることによって学習者は一つの授業で内容も目標言語も学ぶことができ、一石二鳥の効果がある。特に、ヨーロッパでは外国語教育にかかわる研究者や教員にはよく知られている。ここ数年間で最も盛んに実践され、そして研究が広く行われているテーマの一つである。 まず CLILの基本にあるのは、「図 1」に示す「4 つの C」(Coyle, Hood & Marsh,
2010:48-85)と呼ばれるフレームワークである。
CLIL
Content
(内容)
Cognition
(思考)
Community
(協学)
Communication
(言語)
図 1 CLIL の「4つのC」出典:渡部他(2011:5),訳:渡部他(2011)
左上から時計回りに見ていくと、まず必要なのは内容(Content)である。これは科学や数学などの教科科目であったり、多文化社会や地球温暖化などのトピックであったり、授業で教えられている内容を示す。言語(Communication)はそれを学ぶ手段とみなされる。言語の英語表記を見てみると、Languageを使わずに Communication
を使っている。このように、CLILでは他者とのコミュニケーションによって言語を習
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日本語コミュニケーション能力向上のための言語文化統合授業としての CLIL―韓国の「2009 改定教育課程」と CLILの理念の比較―(朴 文英)
得していくことを重要視する。だからといって、言語知識(語彙、文法、発音)の獲得や 4技能(読む、書く、聞く、話す)の訓練といった語学学習が重要ではないと言うのではない。言語知識は基礎力で、言語使用はそれを活用する方法である。つまり、言語知識と言語使用は相互補完関係にある。渡部他(2011)によると、図 2のように、CLILでの言語は、単語や構文のような意図的に学習ターゲットとするもの(language
of learning)、パラグラフの書き方やプレゼンテーションの表現などの学習を行う上で必要なもの(language for learning)、そして既習事項の繰り返しや学習の過程で偶発的に学ぶもの(language through learning)に分類され、計画的にシラバスや授業案に組み込まれる。
CLIL linguistic
progression
language learning
and language using
language of learning
(学習の言語)
language for learning
(学習のための言語)
language through
learning
(学習を通しての言語)
図 2 CLIL における「3つの言語」出典:Coyle, Hood & Marsh(2010:36)
また、授業では、先生の話を聞いてノートを取るだけでなく、さまざまな思考(Cognition)を必要とするタスクに取り組む。教師は学生の思考力を高めるよう内容を構成しなければならない。たとえば、多文化について教える場合、ただ多文化の概念を教えて終わるのではなく、多文化社会で生きている一員としてどのような姿勢を持つべきか、問題に対する解決策にはどのようなものがあるかなどを積極的に学生に考えてもらう。それによって、学生の思考力を高めることができる。そして、思考には難易度があり、CLILでは LOTS(Lower-order Thinking Skills, 低次の思考力)とHOTS(Higher-order Thinking Skills, 高次の思考力)の二つに分けられる(Coyle et
al, 2010: 30-31, 58)。この思考には段階があり、下から上に、記憶(暗記・再生)→理解(解釈・説明・要約・例示・分類・比較・類推)→応用(適用・活用・実践)→分析(分解・位置づけ・特徴づけ)→評価(判断・批判・批評)→創造(計画・創出)の順に高度になっていく。LOTSは下の三つ(記憶、理解、応用)のことであり、HOTSは上の三つ(創造、評価、分析)のことである(渡部他、2011)。この順番によって CLIL
の授業が進んでいくが、その思考力を高める活動としてはグループが中心となる協学(Community)が行われる。協学(Community)とは、学生たちをただクラスの一員として見るのではなく、彼らは包括的にみれば学校の一員であり、さらには、国の一員、
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世界市民の一員でもある。つまり、ここでの Communityとは、席の前後左右の生徒→教室→学校→近隣→市町村→都道府県→国→地域→地球全体のすべてを含む概念である。これによって学生はともに学び、より広い世界へ視野を広げることができる(渡部他、2012)。渡部他(2012)は池田(2011)が提唱した CLILの 10 の原則をまとめて表 1のように示している。
表 1 CLIL の 10 大原則
(1) 内容学習と語学学習の比重は1:1である。
(2) 4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく総合して使う。
(3) タスクを多く与える。
(4) さまざまなレベルの思考力(暗記、理解、適用、分析、評価、創造)を活用す
る。
(5) 協同学習(ペアやグループ活動)を重視する。
(6) 異文化理解や国際問題の要素を入れる。
(7) オーセンティック要素(新聞、雑誌、ウェブサイトなど)の使用を奨励する。
(8) 文字だけでなく、音声、数字、視覚(図版や映像)による情報を与える。
(9) 内容と言語の両側での足場(学習の手助け)を用意する。
(10)学習スキルの指導を行う。
出典:渡部他(2012:6)
2.2 英語教育におけるCLIL の研究
Jung(2015)は韓国での英語教育における CLILの活用に関する研究を行い、その結果を報告している。韓国では、英語教育が熱心に行われているにも関わらず、その効果が期待に及ばない大きな理由の一つとして、EFL(English as a Foreign
Language)環境が持つ制限性を指摘している。その上で、EFL環境でどのようにCLILを適用すべきかについて述べている。言語を習得するためには目標言語のインプットとアウトプットが重要であるが、EFL環境にある韓国では英語のインプットとアウトプットが教室に限られている。 Jung(2015)はこのような学習環境を補い、改善するための方法として CLILを紹介し、韓国の英語教育に適用させるには次の四つが必要だと提案している。一つ目は地域別、学校別、学生水準別に状況を考慮し、CLILによる授業を段階的に実施すべきという点である。母語による授業とは異なり、学習者の目標言語水準やコミュニケーション水準などが授業そのものの質を決定する可能性があるため、正確な判断を基にした現実的で体系的な実施方案が必要だということである。二つ目は、現実的で体系的な教師養成プログラムの必要性である。教師が英語で授業を行うためには、教師の英語能力が不可欠である。そのため、英語能力向上のためのプログラムを開発し、実施することを提示している。また、教科内容についての理解と授業の進め方などに関
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日本語コミュニケーション能力向上のための言語文化統合授業としての CLIL―韓国の「2009 改定教育課程」と CLILの理念の比較―(朴 文英)
する研修も必要だという。三つ目は、各学校の学生の水準を考慮した体系的で具体的な教育方法である。専門家との持続的なコミュニケーションプログラムを確立し、教師同士で意見を交換し、相互に協力してプログラムを提供することが重要だと主張している。四つ目は、授業と連携した英語活動プログラムを活性化して EFL環境が持つ制限を乗り越え、英語使用を促す必要があると述べる。演劇、ディスカッションなどを活性化し、周辺の学校と共に英語キャンプやクイズ大会などの活動を構成し、学生の参加を引き出す努力が必要だと提唱している。 次に、Jang(2015)は小学校でスマートラーニングを基盤とした CLIL授業を行い、言語学習でも内容学習でも高い成習度を得ることができたという。スマートラーニング 1 とは、スマートフォン、タブレットなどモバイル機器を利用した学習コンテンツとソリューションの総称である。また、学習者は教師が授業を始める前に設定した目標語彙を中心に自律的に語彙と文型などに加え、目標としていなかった語彙まで学習するなど学習の場が拡張したことがわかったと述べている。例えば、「Human body」というテーマで CLIL授業を行ったとき、学習者はスマート機器を利用して目標語彙「bone」をさらに拡張した「skeleton」というような語彙を探し出し、学習したという。このように、CLIL授業でスマート機器を活用することで、より効果的な成果を得ることができることが証明されている。
2.3 韓国の日本語教育における言語と文化の総合授業に関する研究
最近、韓国の日本語教育では言語と文化を区別して教えるのではなく、二つを統合した授業を行う必要があるという主張がだんだん広まっている。 Kim(2012)は、「言語」と「文化」を融合させた総合的な日本語教育の観点から日本語能力向上のための教育方法について、韓国人日本語学習者を対象とした語彙教育を中心に考察した。語彙の持っている多義的な要素と文化的な要素を考慮しないために、語彙が適切に使われないという誤用が生じることを踏まえ、語彙教育にも文化的な要素を積極的に反映する必要があることを提示している。しかし、この研究は言語と文化を統合したというより、言語教育で文化の重要性を強調したものに近いという点に限界がある。 次に、Kim(2015)は、従来の授業と研究では、言語教育と文化教育を個別に考えてきたことを指摘し、言語と文化を同時に教えることの重要性を強く述べている。そして、その資料として韓国の大学修学能力試験 2 の読解と文化に関する問題を提示した。かつては文化に関する問題と言語に関する問題が別に扱われていたが、2013 年に入ってからは言語能力とともに文化に関する内容を取り扱っている問題が多くなったという。つまり、学習者が授業中に韓国語で学んだ日本文化に関する内容が日本語の問題として出題されることが多くなったということである。Kim(2015)はこれらの問題を授業の中で活用することによって、学習者が韓国語で学んだ内容を日本語ではどの
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ような語彙を使って、どのような文法・文型を活用して表現するかを確認することができると述べている。 さらに、Kim(2014)は、韓国の日本語教育は言語授業で取り扱われる「文化」の形と文化教育に関する理論がまだ確立されておらず、言語と文化の統合方式についての論議も不足していると指摘している。このような問題を克服するため、言語と文化の関係性と言語授業に導入される「文化」の概念を確立し、初級過程にも導入できる「言語と文化の統合方式」を考察した。言語と文化の統合形態を「言語と文化の言語内的統合」と「言語と文化の言語外的統合」に分け、初級日本語授業には「言語と文化の内的統合」を導入することを提案した。「言語内的統合」というのは学習者の思考および認知構造の変形と深く関連する言語の意味領域を通して文化を習得する学習方式を意味し、「言語外的統合」というのは日本人または日本語を媒介としている相手に日本語で自分の思考を表現する方式を意味する。Kim(2014)はスキーマ理論 3 を参考にし、「言語内的統合」の授業のための具体的な授業モデルを紹介した。スキーマ理論とは、学習と記憶がスキーマに基づくと考える Bartlettの認知理論であり、スキーマとは情報を統合させ、組織化する認知的概念をいう。授業中に教師と学習者が一緒に韓国語と日本語の共通点と相違点について考え、その単語がどのような場面でどのように使われているか確認しながら日本語の特徴を理解していく形である。「言語内的統合」の授業を通じて、学習者は単語の中に込められている日本人の思考が理解できる上、日本語を文法的に正しく使うことができるようにはなるが、その単語を使って自分の考えを表現するまでには及ばない。そのため、初級学習者のコミュニケーション能力を養うための「言語外的統合」に関する研究が必要であると言える。
2.4 日本の日本語教育におけるCLIL の研究
青木(2013)は大阪大学文学部が 2010 年度に開講した、Adventures in Japanese
Artという内容言語統合型学習(CLIL)による夏期集中プログラムを実践報告している。それによると、講義前の先行オーガナイザー(Advance Organizer)4 が講義の理解を促進し、学生たちは講義の要点を理解することができたという。先行オーガナイザーとは、オースベルによって提案された教授法で学ばせたい知識を整理したり対象づけたりする目的で、当該知識に先立ち(先行して)提供する枠組み(オーガナイザー:組み立てを助けるもの)を指す。最も有名な例として、仏教のことを学ぶアメリカ人学生に対して、事前により身近なキリスト教についての知識を想起させ、「仏教の○○はキリスト教では△△にあたる」という具合に、比較して説明をすることが挙げられる。また、日本語教師が CLILを導入しようとする際の困難な点と可能性についても論じている。日本語教師が CLIL授業を成功させるためには日本語教育の知識だけでは絶対にできない。コース・デザインの段階から、授業実践に至るまで、内容の専門家との緊密な連携に基づいたチーム・ティーチングが不可欠であると主張している。
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日本語コミュニケーション能力向上のための言語文化統合授業としての CLIL―韓国の「2009 改定教育課程」と CLILの理念の比較―(朴 文英)
一方で、清木(2016)は、このような青木(2013)の主張の試みとして非専門家でありながら、日本語教師だけでも授業を行えるという可能性を見出すべく、日本語教師単独で CLILによる「日本事情」授業を行った。2013 年から 2015 年にかけて行われたこの授業は、2013 年については日本語教師一人で行う授業であったが、2014 年からはチーム・ティーチングの形に変わった。それによると、日本語教師一人で授業を進める際は内容と言語を同等に扱うのが難しいという。教師が理論に精通しているからといって、CLILによる授業がうまく進められるというわけではなく、授業を導くための訓練とスキル、経験が必要だと思われる。また、清木(2016)は、CLILによる授業を通して、教師の側にも学生の側にも変化があったと述べながら、その授業が日本語に限定され、なおかつ閉鎖された教室で課題に取り組むのではなく、教材を通して現実世界を感じながら学生に問いかけていく感覚だったと報告している。 さらに、稲葉(2014)は中級レベルの留学生を対象にCLIL理論を援用し、コミュニケーション能力を総合的に育成する方策の一つとして「プレゼンテーション活動」を取り入れた授業の方法と実践例を取り上げている。実践からは、プレゼンテーション活動がアウトプットの機会を多く提供すること、学習者同士がインターアクションを通じて発表内容や言語理解を深めようとすること、真のコミュニケーションが学習を促進すること、学習者にとって意味のある言語の学習が学習動機を高めることなどが明らかになったと報告している。このような報告からプレゼンテーション活動は CLILによる授業の具体的なスキルを含んでいるということがわかる。
2.5 先行研究の総合的な考察
2.3 の先行研究を通して、最近の韓国の高校では、別々に行われてきた日本語の言語教育と日本文化教育を統合しようとする動きが起こっているということがわかった。そして、言語と文化を統合させた授業に様々な工夫がなされているが、それは語彙や表現の中に込められた日本文化を理解するに留まっていることも明らかになった。つまり、学習者がその授業を通して文化を理解した上で場に合う日本語が使えるようになることを目標としているが、コミュニケーションの向上までには及ばないということである。コミュニケーション能力と文化理解を同時に育てる研究はまだ行われていない状態だ。この状態で CLILを導入するということは、非常に革新的なことだと思われる。英語教育では CLILの効果を期待し、CLILを基盤としたさまざまな授業が行われているが、学習者の動機付けにも言語と内容の熟習度にもプラスの効果があると報告されており、日本語教育においても CLILを実践すれば同じ効果が期待される。しかし、CLILを導入するのは簡単なことではない。CLILによる授業を成功させるためには、教師の工夫はさることながら、専門家の授業への協力も必要になるなど、教師の能力と体系的な授業の構成が不可欠となる。そこで、次に、韓国の高校での日本語教育における問題点を指摘し、その上で CLILを導入するための具体的な実践方法
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を提示する。
3 「2009 改定教育課程」とCLIL との関連性3.1 現在の韓国の日本語教育の問題
「2009 改定教育課程 5(以下、2009)」と CLILとの関連性を検討する前にまず韓国の日本語教育における問題点について、第二言語習得過程に着目しながら検討する。それによって、現在の韓国の日本語教育が抱える問題点と、それを解決する方法としてCLILの有効性を明らかにする。まず、渡部他(2011)によると、第二言語習得は図 3のような過程で行われると考えられている。
インプット インテイク 中間言語体系 アウトプット
図 3 第二言語習得の過程出典 :渡部他(2011:32)
第二言語を習得するとき、学習者はさまざまな情報をインプットし、それを内在化していく。そして、学習者に形成された独自の中間言語体系を使って自ら発話していく。教師は目標言語をインプットさせるとき、学習者の中間言語体系に内在化されるよう与えなければならない。単なる機械的なドリルではなく、学習者が自分の意志を表現できるよう体系化させることが求められている。そのためには、教師は学習者に類似のインプットを多く与え、自らの意図が伝えられるように上位レベルのスキルを鍛えていかなければならない。つまり、自分にとって意味のあるアウトプットを発する練習をしなければならないということである。渡部他(2011)はこの練習をするためには「自分の考えを伝えるための、自分が言いたいことを目標言語で話せるグループワークとかディスカッションといった活動が必要である」と述べている。また、この第二言語習得の過程は、CLILを通した言語習得過程と合致しているという。 しかし、現在の韓国の日本語授業はただある文章を覚えて話すだけであり、コミュニケーション能力を高めるためには足りない部分がある。そのため、学生たちは少しでも場面が変わったり新しい状況に置かれたりすると、覚えた文が適用できない。また、第二言語を習得するためには自分にとって意味のある豊かなインプットとアウトプットが必要であるが、現在の日本語の授業では実際のニーズによって使われる日本語は挨拶(こんにちは、お疲れ様でした、ありがとうございます)くらいである。しかし、その授業の方針である「2009」に立ち返ってみると、「2009」は現在の日本語授業とは異なり、CLILの方針と非常に似ている。次の章ではその類似点について述べながら、韓国の高校の日本語授業でなぜ CLILを用いるべきかについて説明したいと思う。
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3.2 「2009」で CLIL を用いるべき理由
以下に「2009」の内容を精査し、その方針とCLILの教授法との関連性を明らかにする。 まず、「2009」の目標を見てみると、「2009」の「日本語Ⅰ」は韓・日交流に能動的に対処できる人材を養成するために開設された基礎科目である。外国語教育の実用的目標と文化的目標、教育的目標の達成を目指すべく、日常生活に関するやさしい日本語を理解し、表現できる基礎的なコミュニケーション能力と、文化の相互理解と国際交流に積極的に参加する態度を養うため、次のような一般目標が設定されている。これ以降の「2009」の引用は筆者による翻訳である。
1. 日常生活で使われるコミュニケーションの基礎的な能力を習得する。
2. コミュニケーションの基本表現と場面による言語・行動文化を理解し、互いの行為を重視
する日本語学習と文化間相互理解力を養う。
3. 情報活用の重要性を認識し、必要な情報を日本語で検索できる基礎的な能力を養う。
4. 日本語学習を通して日本文化を理解することと同時に、韓国文化を日本に紹介する役割も
果たす基礎的な能力を養う。
5. 周りにある日本語に関する学習資源を自分で活用して学習できる習慣を養い、自律性と問
題解決能力を伸ばす。
(「2009 改定教育課程」(219)、拙訳)
このように「2009」はコミュニケーション能力を高めることと授業を通して相手の文化を理解し、それに基づいてグローバル人材を養うことを目標としている。その目標を達成するためには、文化とコミュニケーション能力を養うことのできる授業が不可欠であるが、CLILは内容と言語を同時に教えることを基本とするため、CLILを通して「2009」が目標とする授業ができるようになる。 次に、CLILの最も大きな特徴は、教科内容を目標言語で教えることである。ここでの注意点は、目標言語と教科内容の学習を等しく重要視することである。これによって、学生は自然に目標言語を学ぶことができる。韓国の高校の日本語の授業でこのようなCLILを適用させようとすれば、教師は日本語で授業を行わなければならない。一方で、「2009」の「教授・学習方法」では、教師が日本語で授業を行うことを提示している。以下に「2009」を引用しながら「2009」と CLILの理念が合致することを明らかにする。
-授業はできるだけ日本語で行うことにする。 (「3. 教授・学習方法 가 . 一般指針」より)
-文化内容を説明するとき、必要な場合は韓国語を使ってもよいが、文化内容の核心語はで
きるだけ日本語で認知させることにする。 (「3. 教授・学習方法 라 . 文化」より)
「2009」には、文化授業を行うときも基本は日本語で教えるとも書かれており、必要
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な場合は韓国語を使ってもよいが、日本語で教えることを基本としているということがわかる。授業を全て日本語で行うと、学生たちがついてこられないのではないかという懸念があるが、CLILは様々なバリエーションがあり、状況に合わせて授業のスタイルを選択することができる。 青木(2013:93)はMehisto, Marsh and Frigols(2008)を用いて次のように述べている。
初めて CLILの授業を経験する生徒たちには、授業で第一言語を使ってもよいが、一定期間
のうちに徐々に CLILでの言語を使うようにしていくこと、言いたいことを表す CLIL言語
の表現を知らない場合には、母語が使用できること、そして、教師はそれを CLIL言語で言
い換え、学習者が繰り返さなければならないといった約束事を話し合っておく必要があると
している。そして、教師に対して、学習者にコミュニケーション・ストラテジーの使用を促
すためにはどうするべきかも書かれている。
一方、「2009」は言語の 4つの技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく総合して使うことを目標としている。「2009」の内容を確認してみると次のように書いてある。
-言語の 4技能を有機的に組み合わせて場面によって相互行為ができるようにする。
(「1. 目標 가 . 言語機能」より)
-言語の 4技能を有機的につなげて場面によって相互行為ができるよう適切に使う。
(「2. 達成基準 가 . 言語的内容(1)言語技能」より)
このように「2009」は言語の 4技能がバランスよく養われることを目標とする。これは CLILが言語の 4技能を重視することと同じである。2.1 の「CLILの 10 大原則」で述べたように、CLILは 4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく総合して使うことを原則とするが、訓練の方法は使わない。CLILの「4つの C」の一つである「Communication(言語)」では、言語知識(語彙、文法、発音)の獲得や 4技能の訓練といった語学学習(language learning/skill getting)よりも、対人コミュニケーションと学習ツールとしての言語使用(language using/skill using)に高い比重が置かれる。ただ、両者は言語学習における車の前輪であり、この両者を有機的に組み合わせることで言語習得は促進される(渡部他、2011:6)。CLILにおいてその橋渡しをするのが「3つの言語」(Coyle et al. 2010:60)という考えであるが、「2009」はその特徴をそれぞれ持っている。「学習の言語(language of learning)」とは、取り上げるテーマやトピックの理解に直結する言語材料や技能のことで、具体的には、その単元の重要語句や必須文法項目などを目指す(渡部他、2011)。「2009」では授業で学ぶべき「コミュニケーション基本表現」や「基本語彙表」を決め、それを各単元で使うことを明示している。各
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教科書はそれに基づいて作られており、重要語句と必須文法項目を教えている。「学習のための言語(language for learning)」は、目標言語で何かを学ぶ際に必要な表現や学習スキルのことで、CLILでは最も重要とされる。たとえば、ノートの取り方、資料の読みこなし、議論の方法(説明、意見、質問、応答など)、情報収集法、レポートの書き方、ペアワークやグループの進め方などである(渡部他、2011)。これと同じく「2009」は教授・学習方法においても言語の4技能を有機的につなげて使うことを述べているが、その方法として日常生活で身近に接することのできる資料を使うことと、ロールプレイ、グループワークで学生たちが授業を通して実際に日本語を使うことを以下のように提示している。
- 様々な学習資源を利用し、状況を設定することによって、学習者がコミュニケーションの
基本表現を適切に使うことができるよう指導する。
-学習者がコミュニケーション基本表現を活用し、独創的に表現できるよう指導する。
(「3. 教授・学習方法 다 . 言語材料」より)
また、「2009」は教授方法として次のような方法を示している。
-学習内容の理解と適用が容易にできるよう授業を段階的に構成する
(「3.教授・学習方法 가 . 一般指針」より)
- 相手との関係、コミュニケーション状況、言語行動文化に合わせて実際に適用できる言語
能力を養うことができるよう段階的に指導する。
(「3.教授・学習方法 나 . 言語技能」より)
上の内容は「3つの言語」の最後である「学習を通しての言語(language through
learning)」に該当すると言えるだろう。「学習を通しての言語」は「学習の言語」と「学習のための言語」の二つを結びつける仕組みであり、すでに学んだ言語材料や学習スキルを組み合わせて、何度も繰り返して学ぶことで言語習得を加速させる。その進め方が非常に段階的である。典型的な方法としては、文字(教科書、プリントなど)や音声(講義、映像など)から内容情報を得る、関連するトピックでディスカッションを行う、それを発展させたテーマでエッセイを書く、書いた内容を基にパワーポイントで材料を作成してプレゼンテーションを行うといったやり方である。 そして、「2009」は CLILの「4つの C」の一つである Community(協学)の特徴を持っている。また、学生たちを包括的に見るので、協同学習や異文化理解・国際理解を取り込む。このため、「CLILの 10 大原則」でも「異文化理解や国際問題の要素を入れる」と述べている。この本文は高校の日本語授業で日本文化を日本語で教えることを目指しているため、基本的にCLILの大きな特徴の一つである「異文化」を扱っている。「2009」
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でも高校の「日本語Ⅰ」の開設目標を次のように述べている。
「日本語Ⅰ」はグローバル時代の要求に伴って、韓・日交流に能動的に対処できる人材を
養成するために開設された基礎科目である。それゆえ、コミュニケーション能力を養い、文
化の相互理解と国際交流に積極的に参加する態度を養うことを目標とする。
「2009」では、学習者を単にクラスの一員として見るのではなく、グローバル時代に生きる世界の一員として見ており、文化授業を通して文化の多様性を認識することを目標としている。また、以下のように、世界市民の一員である学習者たちが時代にふさわしい人材になれるよう異文化理解の授業を行うべき必要性と相互理解を強調している。
-韓・日両国の文化の共通点と相違点を理解し、文化の多様性を認識する。
(「1. 目標 라 . 文化」より)
-コミュニケーションの基本表現を使いこなすため、相互理解の重要性を知り、自分で学習
する態度を養う。
-日本文化に対する理解の必要性を知り、文化関連学習資料に興味を持って自ら学習する態
度を養う。
-韓・日文化交流の必要性を知り、積極的に交流しようとする態度を養う。
(「1. 目標 다 . 態度」より)
そして、「2009」は協同学習と体験学習など学生の積極的な参加を求めることが示されている。
-コミュニケーションの基本表現に対する学習の重要性を知り、体験を通して自分で学習す
る態度を養う。 (「1 目標 다 . 態度」より)
-学習者が学習活動に積極的に参加できる協同学習と体験学習が行われるよう授業を構成す
る。 (「3 教授・学習方法 가 . 一般指針」より)
-言語行動文化に合ったロールプレイ・場面練習・ゲームなどを活用する。学習者の学習へ
の参与機会を増やせるよう構成する。
-グループ活動を中心にし、学習者の会話量を増やすようにする。
(「3 教授・学習方法 나 . 言語技能」より)
-日常生活文化は個人やグループ別に調べた資料や発表した内容を中心に評価する。
(「4 評価 나 . 評価方法」より)
このように、「2009」ではペアやグループ活動を重視し、グループ別にプレゼンテー
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日本語コミュニケーション能力向上のための言語文化統合授業としての CLIL―韓国の「2009 改定教育課程」と CLILの理念の比較―(朴 文英)
ションやロールプレイ・場面練習などをすることを提示している。これは、CLILの10 大原則の一つである「協同学習(ペアやグループ活動を重視する」という項目と類似し、CLILの基本授業の流れと似ている。CLILでは、学んだ知識や技能を生涯にわたって持続させ、活用することを目指す。この目標を達成するため、渡部他(2011)は CLIL授業の流れを次のように示している。
Presentation
提示
Processing
処理
Production
産出
Scaffolding
足場
図 4 CLIL 授業の流れ出典:渡部他(2011:22)
最初に学習内容を提示して理解してもらい、さまざまなタスクでその学びを深化させ、最後に口頭や文章での活用につなげる、といった手順である。「Presentation(提示)」の段階で与えられた内容をただ知識的に理解することに留めず、活用できるインテイクに進化させるには、認知的負荷を伴い、言語を使って他者と主体的に学び合う活動が必要となる。たとえば、協同タスク、ロールプレイ、ディスカッション、プレゼンテーションなどが挙げられる。つまり、CLILはインプットのみならず、学生たちが学んだものを活用するアウトプットも重視するが、そのアウトプットの方法としてグループ活動を重視するということである。 また、「2009」では文化(内容)を教える際に、教師の選択を優先するのではなく、学習者の興味を優先し、学生たちの学習意欲を高める内容を選ぶと述べている。
-学習者の興味、必要、知的水準などを考慮し、学習意欲を高める内容にする。
(「2. 達成基準 나 . 文化的内容」)
これはCLILが内容を選択するとき、学習者のニーズに応じて選ぶことと同じである。言語を習得するには学生のアウトプットの前に、教師の豊かなインプットが求められる。CLILは内容学習をその基盤の一つとしているため、対象となる言語のインプットを大量に学習者に提供することができる。そのインプットは学習者のニーズに応じたもので、学習者にとって関連性の深いものにする。 最後に、「2009」は学習者の主体性を育成することを何回も強調しているが、CLIL
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『同志社大学 日本語・日本文化研究』 第 15 号
授業を通してこの目標を達成することができる。
-コミュニケーションの基本表現の重要性を知り、体験を通して自分で学習する態度を養う。
-コミュニケーションの基本表現を使いこなすため、相互理解の重要性を知り、自ら学習す
る態度を養う。
-日本文化に対する理解の必要性を知り、文化関連学習資料に興味を持ち、自ら学習する態
度を養う。
-韓・日文化交流の必要性を知り、積極的に交流しようとする態度を養う。
-日本語関連学習資源の活用の必要性を知り、自分で活用する態度を養う。
(1. 目標 다 . 態度)
-学習者主導型の自律学習が活性化できるよう構成する。
(3. 教授・学習方法 가 .一般指針)
このように「2009」では何度も「学習者が自ら学習する態度を養う」ことが強調されている。つまり、学習者が主体性を持って学習に臨むことを目標としているのだ。ここで問題になるのは、どのようにすれば学習者が授業を通して主体性を持てるようになるのかということである。いろいろな方法があるだろうが、CLILを取り入れた授業を行うことによって、自ずとこの目標を達成することができると言える。CLILは個人作業、ペア作業、グループ作業、クラス全体作業、発表作業、講義といった様々な授業形態を通してクラス・ダイナミックスを有効に活用し、豊かなインプット、アウトプット、インターアクションのある授業を創出していくことができる。そのような授業の中で、学習者の主体性、思考力、判断力を育成することが可能になるからである(渡部他、2011)。 Zang(2015)は Brinton, Snow&Wesch(1989)を引用して、「内容と言語を統合させた授業が生徒に必要な言語の類型を提供することができ、学習動機を引き起こし、理解できるインプットをたくさん提供することができる」と、言語と内容を統合すべき論理的な根拠について述べている。従って、CLILを用いて日本文化(内容)を日本語で学びながら、自分が考えることを自分の能力を最大限使って日本語で表現し、学び続けようとすることによって、学習者は日本語を自然に習得することができ、日本語に完全に打ち込むことができると考えられる。2章で CLILは内容と言語を同時に教える特徴を持っていると述べたように、CLILはいろいろな言語・内容統合授業の一つに属する。Lee(2011)は言語・内容統合授業は言語を学習の道具として使うことによってその言語を実際に使うことができ、実際のコミュニケーションの機会を提供することができると主張している。今後の課題は、この CLILの考えをいかにして韓国の日本語教育の現場で実現していけるのかということである。次の章では、韓国の高校の日本語授業での CLIL授業モデルを提示し、その可能性について考察を試みる。ただし、
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日本語コミュニケーション能力向上のための言語文化統合授業としての CLIL―韓国の「2009 改定教育課程」と CLILの理念の比較―(朴 文英)
本モデルは仮説の段階であり、実践を行っていない点に限界がある。
4 授業モデル4.1 研究の範囲と方法
本稿で提示する授業モデルは、日本文化を教える際に用いられることを想定して提案するものである。文型や単語などを教える語学の授業は CLILの授業の前にすでに行われたと仮定する。本稿の授業の設定は以下の通りである。
表 2 授業の設定授業の対象 第二外国語として日本語を選んだ韓国の高校生学習者の水準 日本語学習初級レベルクラス規模 30 人内容 日本文化授業時間 50 分使用言語 主に日本語、必要な時は韓国語
4.2 基本シラバス
下記の表3は、渡部他(2011)を参考に基本シラバスを構成したものである。CLILの「4つの C」を念頭に、その中で学習者の言語の 4技能を育てられるように考えた。
表 3 シラバス例(専門型)内容 言語 思考 協学
1 日本の高校 新出単語・重要文法クリティカルリーディング
理解評価
個人(リーディング)ペア(議論)
2 住居生活 新出単語、重要文法プレゼンテーション
分析創造
一斉(プレゼン)個人(ライティング)
出典:渡部他(2011:18)を参考に作成
ここで、中心となるのは内容である。シラバスの構成には「概論型」と「専門型」があるが、「概論型」は授業ごとに様々なトピックを与えることで、「専門型」は一つのテーマを決めてそのテーマの内容を一つ一つ学んでいく形である。本稿で提示する授業モデルでは「日本文化」というテーマを決め、その中の内容である日本の住居生活や日本の高校生活といったものを学んでいく。つまり、「専門型」に該当する。渡部他(2011)によると、CLILは多方面のアプローチや教育技法を有機的に結合することで相乗効果を出すのが原則であるため、事前に綿密な計算がなされていないと、十分にその成果を引き出すことができないという。教師は CLILの 4つの Cを中心にどうすれば学生の言語の 4技能を発達させられるかも考え、事前にシラバスを作らなければならない。
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『同志社大学 日本語・日本文化研究』 第 15 号
4.3 授業モデル
以下のモデル 6 は筆者が日本の祭りというテーマで 2回の授業案を組み立てたものである。
表 4 授業モデル 1
内容 日本の祭り 1 授業時間 50 分(1時間目) 持ち物 なし
授業の目的(内容)日本の祭りにはどのような祭りがあり、どのような特徴があるのか説明できる。
授業の目的(言語)・Language of Learning(学習の言語 ): -祭りに関する重要単語や表現を勉強する。・Language for Learning(学習のための言語 ): -比較:~には○○があります(います)が、~には○○がありません。 -発表:~たいです。 -その他:気になることがある場合、「~は何ですか」という表現を使って質問する。・ Language through Learning(学習を通しての言語 )(「ために・あります」という表現を前回学んだと前提する): -先生の説明から、前回学んだ「~ために」文型を聞いて理解する。 -辞書を使って自分が表現したい内容を検索し、新しい語彙を習得する。
段階 過程
第1段階(導入)・ 授業を始める前にこれから何について学び、どのような活動をするかを案内する。わからないことがあったら、「~は何ですか」を使って質問するように提示する。
第2段階(背景知識の確認)・ いろいろな国の祭りの写真を見せて(韓国と日本の祭りの写真も含めて)、学習者にどの国の祭りで、祭りの名前をあてるクイズを出す。学習者は自分が知っていることを答える。
第3段階(知識の拡張)
・ ペアワーク:学習者に日本の祭りと韓国の祭りの写真を見せ、ペアで共通点と相違点を発見するタスクを出す。 それから、韓国にあるもの/ないもの、日本にあるもの/ないものを探し、5分後「あります/います」表現を使って発表することを案内する。(「あります/います」は前回学習したと前提する)
第4段階(機能語の復習、知識確認)
・ ペアワークが終わった後、学習者は「あります/います」を使って発見した内容を日本語で発表する。 学習者の発表が終わった後、教師は学習者の発表内容を大きな声で整理する。
第5段階(知識の拡張、祭りに関する専門的な語彙)
・ 学習者は教師の説明とパワーポイントや映像を通して日本の祭りについての情報を得る。
第6段階(最後の確認) 授業の内容をまとめる。
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日本語コミュニケーション能力向上のための言語文化統合授業としての CLIL―韓国の「2009 改定教育課程」と CLILの理念の比較―(朴 文英)
表 5 授業モデル 2
内容 日本の祭り 2 授業時間 50 分(2時間目) 持ち物 辞書
段階 過程
第7段階(導入、復習) ・ 授業を始める前に、これから何について学び、どのような活動をするのかを案内する。前回学んだ内容を復習する。
第8段階(読む練習)・ 学習者は祭りに関するテキストを読んだ後、○×クイズを解き、日本の祭りと他の国の祭りの相違点を理解する。クイズを解いた後、パートナーと答えを比べる。
第9段階(思考能力の開発、書く練習)
・ 第3段階での日本と韓国の祭りを比較した内容に基づき、韓国の祭りの改善すべきところや新しい祭りなど、韓国の祭りについてグループ内で話し合い、韓国の祭りを構想してみる。・ 話し合った内容を「~たいです」の表現を使って作文する。初級の段階でその理由を説明するのは難しいため、理由は韓国語で発表しても大丈夫と言っておく。 作文例:韓国の○○まつりを作りたいです。 ※ グループ活動するときは事前に1人1役を与えて、資料を準備してくるように指導する。第9段階では調べてきた資料を共有して作業を進めるようにする。
例) 各々が両国の祭りの中で一つを担当してその祭りを調べてくる。それに基づき、グループなりの韓国の祭りを創造してタスクシートを完成させる。
第 10 段階(話す練習、協学)・ グループの代表者がグループ内で話し合った内容を発表し、それぞれの考えを共有する。 発表が終わるたびに、教師は発表内容を大きな声でまとめる。
第 11 段階(最後確認) ・ 授業の内容をまとめる。
この授業モデルと現在の韓国の授業の現状を比較し、日本文化の授業を CLILを用いて行うのに必要な改善点および注意点について、4つの Cに分けて以下に述べる。
内容(Content)
CLILによる授業では、学習者の興味を優先した内容の選択を行わなければならない。授業の主体は学習者であるため、学習者が授業の内容に興味を持たず、積極的に参加してくれなければ、学習者の能力を授業目標まで導くのは非常に難しくなるだろう。学習者のニーズに応じた内容を取り入れればグループワークや発表などの活動を活性化することができる。Park(2015)は韓国の大田にある高校に在学している高校 2年生 150 人を対象に、日本語を勉強する理由について調査を行ったが、3分の 1程度が日本の年中行事について勉強したいと答えた。そのため、今回の授業モデルでは学習者の興味を反映して「日本の祭り」を内容として勉強し、そのテーマのもと、第 3段階と第 9段階でペアワークやグループワークを行う。「日本の祭り」以外にも CLILによる授業を成功させるには、教師は授業開始前にアンケート調査を行って学習者のニーズが何なのか把握し、授業内容をうまく選ぶ必要がある。 次に、「2009」の目標から授業の内容を提案する。「2009」の日本語Ⅰの最終的な目標はコミュニケーション能力を高めることと、授業を通して相手の文化を理解し、そ
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『同志社大学 日本語・日本文化研究』 第 15 号
れに基づいてグローバル人材を養うことである。ここで、コミュニケーションという言葉に注目してみよう。人間のコミュニケーションは決して言語だけでは成り立っていない。実際言語より非言語のほうがコミュニケーションでの占める比重は大きい。Albert Mehrabianという学者によると、非言語が意味伝達の 93%を占めているという。このように非言語コミュニケーション 7 は人間のコミュニケーションの一部分として、交換するメッセージの多くの部分を占めており、様々な役割を果たしている。非言語コミュニケーションは同じ表現でも文化圏によって異なる意味を持ったり、異なる表現でも異なる文化圏で同じ意味を持ったりする。文化によって非言語コミュニケーションは様々な種類があり、その文化圏の人とコミュニケーションを行うとき、非常に重要な役割を果たすため、コミュニケーション能力を目標に掲げている「日本語Ⅰ」の文化授業にも韓国と日本の非言語文化の違いを教える必要がある。そのため、表 4の第 5段階では、非言語コミュニケーションなどの行動様式を考えるため、韓国と日本の祭りの動画(Youtubeなど)を取り入れた。 Lee(2013)は教科書に韓国と日本の時間概念の違い、相手との距離と接触、喜怒哀楽の表現と表情、沈黙と視線などの非言語行動についての内容を追加することを提案している。また、共通点に集中するのではなく、異文化の相互理解に基づいたコミュニケーションのために、日本の特徴をよく表した内容の割合を高める必要があると主張している。非言語表現は文化的な要素と関連があり、日本の祭りや祭りが行われる神社といった伝統文化の作法にも現れることが考えられる。表 4の第 5段階で日本の祭りの動画を取り入れているが、例えば参拝の動画を見てもらうことによって、学習者は日本人のお参りをするときの並び方や人との距離の取り方、また、他の人たちとの接し方が分かるようになる。これは文化の授業時に学習者が日本の特色ある文化を学びたいというニーズと相応するもので、これまであまり扱われていなかった非言語行動の文化を入れると、日本ならではの文化を理解することができる。また、相手の行動の中に込められている文化を理解することで、相互理解が進む上にコミュニケーションが円滑に行われるようになる。 また、非言語について教えることは CLILの思考力を高めるよい方法になる。CLIL
ではグループワークで話し合う機会が多く、その中で段階的に学習者の思考能力を高めることができると考えられている。そのため、教師は一つの内容を選び、その概念から学習者の思考力を高める段階まで導くよう授業を構成しなければならないが、話し合いやすい内容やディベートしやすい内容を選ぶことで、話し合いやディベートの授業構成が容易になる。ここでの話し合いやすい内容、ディベートしやすい内容というのは、学生が考えざるを得ないテーマのことである。思考の段階は「記憶→理解→応用→分析→評価→創造」の順であるが、簡単な事情説明で終わるテーマではなく、相違点を発見して相手の立場で考えられるテーマを選ぶと、この順番通りに進みやすい。非言語行動は一番身近な素材から相違点を発見することができ、他の文化のこと
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日本語コミュニケーション能力向上のための言語文化統合授業としての CLIL―韓国の「2009 改定教育課程」と CLILの理念の比較―(朴 文英)
を考えてこそ理解できる分野である。自分の国では当たり前に思っていることを他の国ではそうでないことはインパクトのあることで、このようなテーマは学習者に興味を持たせ、相手の文化を探究しようとする刺激を与えるだろう。
言語(Communication)
普通高校の「日本語Ⅰ」の授業は、日本語に関する授業の後に文化に関する授業が行われるという 2部構成になっている。そのため、CLILによる文化授業はその課のコミュニケーション表現を授業の中に取り入れることができ、学習者にすでに学んだ表現を実際に使う機会を与えることができる。上の授業モデルでは言語目標を三つの領域にわけて提示したが、何よりも重要なのは、すでに学んだ表現をどの部分で活用するかという工夫である。また、言語は「学習の言語」「学習のための言語」「学習を通しての言語」に分けられ、「学習の言語」では「日本の祭り」を勉強する際に必要な単語とか文型を提示することによって達成できる。「学習のための言語」は教室活動をするために必要な言語で、上のモデルではペアワークを通して「あります/います」を習得し、発表を通して「~たいです」表現を習得することが目標になっている。最後に、「学習を通しての言語」は偶発的に習得するもので、教師の日本語の説明から習得することができ、学習者が自ら辞書を使って単語を探す過程で成し遂げられる。
思考(Cognitive)
授業の内容を表面的な理解に留めず、習得して活用できるインテイクに進化させるには、認知的負荷を伴い、言葉を使って他者と主体的に学びあう活動が必要となる(渡部他、2011)。そのためにすべきことは、「思考」と「協学」を組み合わせた効果的なタスクを与えることである。思考の段階は「記憶→理解→応用→分析→評価→創造」の順に高度になっていく。CLIL授業を進めるためには、低次から高次に進めるよう授業を計画する必要がある。そのため、上記の授業モデルでは第 1段階で学習者のスキーマを活性化させた上で、第 3段階での比較と分析を通して内容に関する理解と記憶を促す。それから、第 8段階で○×クイズを解く過程で勉強した知識の応用とクイズの結果を通した理解の評価を行い、第 9段階では自分が作りたい祭りを創造する活動をする。
協学(Community)
グループ活動する時は役割をしっかりと組み立て、意識してもらうことが重要である。そのため、上記の表 5の第 9 段階で学習者は事前にそれぞれ自分が何の担当か、何を調べるべきかという役割を確認してから個人での調査や共有作業を進めるようにしている。これによって、活発な話し合いができると期待される。また、第 10 段階ではグループ発表を通してお互いに他のグループの考えを共有する。この活動を通して学習者は他の人の考えを理解するだけでなく、他の友達の日本語表現を聞きながら語
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『同志社大学 日本語・日本文化研究』 第 15 号
彙を拡張させ、日本語能力を養うことができる。それだけでなく、第 2段階でいろいろな国の文化を勉強しながら視野が広げられ、学習者は自分が世界の一員だという認識を持つようになる。
5 おわりに 韓国では「2009 改定教育課程」という教育方針があるが、実際はその通り行われていない。その乖離を解決できるのは CLILであると考える。つまり、授業の中で CLIL
を用いることによって、「2009」の目標を達成することができるということである。そこで、以上のように、本稿では「2009 改定教育課程」を用いて韓国の高校の日本語授業に CLIL理論を導入する意義と授業モデルを提示した。しかし、この授業を上手に行うためには三つの要素が必要である。一つ目は教師の工夫、二つ目は教育機関の支援(教師のための研修、文化体験、講師など)、三つ目は受験偏重の学校教育の改善である。教師の工夫もさることながら、教師が授業スキルを習得できる研修や資料を整えなければならない。さらに、教師は学習者に負担をかけないように楽しく授業を進めることについて研究していかなければならない。高校で一年間学んだ日本語がその後頭の中から離れるのであれば、教師や学生が授業に投資した時間や労力が無駄になる。高校で日本語を学んだ学習者がそのあとの国際的な場に置かれるとき、 身につけた日本語が活躍の手助けになっていれば、学習者にとっても教師にとっても大きなやりがいとなるであろう。また、学習者はそれを通して国際的な人間関係を形成し、その人々とコミュニケーションしながら更に広い世界を発見することができるだろう。教育機関に携わっている人々はこのような念願を込めて学習者の発展と将来の日本語教育のために絶え間なく研究を行い、実践に改善を加えていかなければならない。
謝辞 本稿は、筆者が日研生として同志社大学に在学中に書いたものです。本稿を進めるにあたり、テーマの決定、研究の考え方、方法、まとめ方、日本語の修正などすべてにおいて、ご指導を頂いた日研生論文指導教員の中井好男先生に深く感謝いたします。また、日本文化の授業への参観を許可してくださり、いろいろな工夫を見せてくださったパイエ由美子先生にも感謝いたします。同志社大学の日研生は春学期が始まる前、論文を書くかどうか自分で選ぶことができます。論文を書かなくてもいいのにわたしがこの論文を書こうと思ったのは一年が終わった後、なにか形に残るものがあったらいいなという甘い考えからでした。一年が終わった現在、論文を書いて本当によかったと思います。自分が期待していた以上にたくさんのことを学びました。これができたのは中井先生のおかげです。いつもできると励ましてくださり、指導してくださった中井先生に改めて心から感謝の意を表します。その他、助けていただいた多くの皆様にも心から感謝いたします。
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日本語コミュニケーション能力向上のための言語文化統合授業としての CLIL―韓国の「2009 改定教育課程」と CLILの理念の比較―(朴 文英)
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egoryId=50375
2 大韓民国で実施されている大学共通の大学入試である。
3 韓国のポータルサイトの一つであるNAVERの百科事典を参考に作成した。「スキーマ」
http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=3407423&cid=40942&categoryId=31531
4 熊本大学大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻のホームページの資料を参考
に作成した。URLは次のようである。http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/
pf/3Block/08/08-1_text.html
5 ここでいう「2009 改定教育課程」は韓国の教育科学技術部により告示された高校での「日
本語Ⅰ」教育課程であり、2011 年に一部改定されている。
6 本稿の授業モデルは Lesca(2012)の CLIL授業モデルを参考にした。
7 韓国のポータルサイトの一つである NAVERの用語辞書を参考に作成した。「非言語コ
ミュニケーション」http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=1526335&cid=42251&ca
tegoryId=42261
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