新しい入試のict基盤(2012年9月8日、大学入試センター入学者選抜研究機構セミナーにて)...
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新しい入試の ICT 基盤
土屋俊
大学入試センター入学者選抜研究機構( 大学評価・学位授与機構 )
アウトライン• 全入化 ⇒ 情報の重要性
⇒ 「競争選抜」から「相互調整」へ⇒ 入学時 ( 学力等 ) 質保証から質把握へ
⇒ 「新しいテスト」などで対応できることではない ! という路線
⇒ ( オークション・サイトのような )交渉に基づく大学・学生最適マッチングプラットフォーム
• 現代の情報化の活用– 日本の「入試業界」の絶望的ガラパゴス状況
• 他分野と隔絶、そして、世界と隔絶– 同一情報の反復提供 ( センター入試は例外 )⇒ アドミッション・ポリシーに基づく情報の流れの流線化⇒ 高大連携情報共有サイトの必要性
• せめてもの ICT 基盤⇒「出願」のオンライン化
全入化⇒オークション• 全入化: 入学志願者の数が大学が受け入れられる学生の数よりも少な
くなること• その帰結、または現実 :
– 学力競争選抜によらない受入学生数の増加• もともと「全入化」状況では定義上「競争」は難しい• それとは別に推薦、 AO 入学者が増加していた ( 多様化の美名のもとの実質「無」選
抜 ?)
– 卒業生の品質保証への信頼の低下 ( 実証が難しいが )• 卒業資格 = 学位が雇用価値 = 能力を保証しない時代 ⇒ 「学修成果」
– ( 入学時学力に対する ) 無知のベールという虚構• どんな立派な教育でも、「逆転」は不可能
– ただし、全員が無選抜で入学できるわけではなく、かつ、「入試」 = 競争選抜という信仰の持続 ⇒改革を制約 ( 試験方法の改善にとどまる )
• 全入化時代の入学者選抜に関する定義変更の必要性– 学生消費者主義 (student consumerism) を一応前提– 「大学情報、入学者情報の提供と取得による学生集団の最適な構成をすると
いう過程」として再定義– とくに、志願者情報の提供の便宜を図ることが重要– 情報交換とネゴシエーションのためのオークションサイトの必要性
それは、夢物語だろう、、、• たしかに夢にうなされた話ではある– 能力別に進学を第三者が決定するようにもみえる– よく言えば、両者の希望を matchmaking する機能
ともいえる• その実現のためには、困難多数– 全大学、全高校の協力が必要– 海外高校出身者、 Non-traditional 学生については
別枠にせざるを得ない• それを、 ICT 技術で簡単に克服できるのか
それにしても、「ガラパゴス」• 日本における取り引きのほとんどが「オンライン化」して
いる– ネットバンキング、ネットショッピング、ネット予約、ネット…、
ネット…、ネット…、ネット…、ネット…、– インフラ部分のオンライン化が進んでいる。銀行間、財務諸表、
物流管理、当然、 (国際的 ) 生産現場– しかし、入試場面では基本的に「郵送」
• 世界における教育の「オンライン化」は急速に進捗– 遠隔教育大学 : Open University, Athabasca University, Universidad
Nacional de Educación a Distancia, UMass, – 営利大学 : The University of Phoenix, – MOOC: Coursera, edX, Udacity, ….– しかし、日本では、「放送」大学、通信制大学のまま
• 日本の高等教育業界のこの状況は、現代の知識流通のあり方を前提にしたとき変。
これでよいのか ?
•世界はデジタルであるオンライン・ショップ、インターネット・バンキング、オンライン宅配追跡、オンライン電報送信(?)、 (エンタテインメント系除いても )まだまだこれは、国内、国際を問わない•入学者選抜はデジタルではない–ほとんどが「郵送」による受付である–「オンライン」を称しても、支払いと証明書がアナログ、郵送を要求する–学力試験、面接はほとんどデジタルではない–(公正性、平等性はこの「遅れ」を正当化可能か ?
この問題を情報の流れとして整理
• 大学の入学者選抜はどのような情報に基づいて行なわれるのか– 入学者選抜のための情報は一回かぎり使い捨て–利用される情報の種類の選択とそれぞれの利用方
法を決めないといけない ⇒ アドミッション・ポリシーの役割
• 現在の情報の流れのインフラに改善の余地はないか–複数大学志願の場合の重複提供の回避 ( 志願者側か
らみれば無駄な労力がない。選抜側からみれば同じ情報で判断 )
アドミッション・ポリシーの機能• 大学等が入学志願者や社会に対し、求める学生像や入学者の
選抜方法などの方針をまとめたもの。大学評価・学位授与機構の認証評価では、大学等に対し、アドミッション・ポリシーの策定・周知を求めるとともに、実際の受入学生の状況を通じてポリシーの実効性について評価を行う。 (大学評価・学位授与機構用語集)
• 実は、「ポリシー」になっているところはほとんどない– 「求める学生像」はあっても「入学者の選抜方法などの方針」を書
いてない• しかし、
– 多様な方法– 多様な方法による受け入れ学生数の割合– それぞれの判定方法
• これらには、情報が必要。そしてアドミッション・ポリシーが
アドミッション・ポリシーが決めること ( 選抜方法の基本方針として )
• 選抜方法の種類と、それぞれの方法によって受け入れる学生の数の割合– 学力– 特技
• それぞれの選抜方法において利用する情報の種類と、選抜方法における「評価関数」– 学力 ⇒ 教科 ? それ以外 ? センター試験 ? 個別出題 ?
第三者テスト (ETS系等 )? ペーパーテスト ? 面接– 意欲 ⇒ ???
いずれにせよ、
大学 高校
試験実施機関支援機関
進路指導
出題・採点
アドミッション・オフィス
判定会議
属性把握
内申書
志願
DNC
志願者の情報は受入決定のたびに ( 同一のものが ) 提供される ⇒ 実際には、、、、
受験
志願者に関する情報を、本人、高校、試験機関が大学に提供
大学 高校
試験実施機関支援機関
出題・採点
内申書
志願
DNC
受験
大学 高校
試験実施機関支援機関
内申書
DNC
入学者情報クリアリングハウス
志願
「入学者情報クリアリングハウス」
• 「入学者」 ? – 全入化だから
• 「情報」 ? – 志願者が志願に際して提供したい情報のすべて– 「内申書」情報、「第三者」試験結果情報、本人申告情報、非伝統的入学者の経歴情報
– 大学と志願者の意向にしたがって提供・利用• 「クリアリングハウス」
– an agency or organization that collects and distributes something, esp. information(OED)
• 公的機関 ? 民間機関 ?– 悉皆性が望ましいというの観点から決定すべき。いずれにせよ、高等学校の役割は大きいが、すでにセンター試験でも一括出願している
• そんなに「個人情報」を集めて大丈夫 ?– セキュリティは大事。しかしむしろ、ニーズブラインドを実現できる– 高大接続のためには、「無知のベール」の虚構を捨てるべき
でも、そんなことできるの ?
もちろん、できるか不明。しかし、
• この時代に郵送、窓口振込をインフラとする制度は先が短い ( はず )
• 「高大接続」は、基本的に両者間の情報の流れの円滑化がなによりも必要
• 学生消費者主義を擁護すべきか不明だが、現在の段階では制度構築の前提とするしかないような気がする ⇒ 顧客重視の観点からの制度設計
⇒ せめて、もうすこし時代にあった実施方法を !
「センター試験」の ICT 化• 前提
– DNC 試験は、入学者選抜のための試験ではない。大学が入学者選抜の資料として使ってはじめて、「入学者選抜のための試験」の一部となる ( 「共通一次試験」は、国立大学の選抜システムの一部であった )
– 受験番号はその年限り• 過年度成績請求は、「受験票再発行等申請書」によって行う
– ATM振り込みでは検定料を払えない ( もちろんネットはだめ )– 全体 ( 受験者から見て ) は、以下の 3 つのモジュールからなる
• 出願⇒受験票・写真票送付• 試験実施• 成績提供
• このなかで、 ICT 化できることは何か– 成績提供は、ある程度実現– 試験実施は、多分、無理– 「出願⇒受験票・写真票送付」はあまりにも伝統的インフラ依存。試験機会複数化には対応
できない ⇒ せめてここだけでもなんとかならないか。以下の 3 つの過程をオンライン化することは、セキュリティの不安なく容易なはず ( オンライン登録⇒受験票・写真票作成⇒ダウンロード )• 検定料支払い• 志願票郵送 ( パンチカード処理 )• 受験票・写真票印刷送付
提案• 小提案:受験票・写真票郵送システムのオンライン化
– 試験機会を増やすとすれば現在のフローでは無理– しかし、これは案外簡単。現行の「センター試験」のフローを分析すれば明らか
• 中提案:入学者選抜情報共有プラットフォームの構築– (各種)成績データ、内申書等を選抜側、被選抜側が共有
• 大提案:全国一律入学者選抜プラットフォームの構築– つまり、オークションサイトのような仕組み– 学年始めまで進学先の調整ができる体制