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固/液界面に対する界面活性剤の 吸着評価法 トライボロジー分野への展開 東京理科大学 理工学部 工業化学科 講師 酒井健一 [email protected]1

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固/液界面に対する界面活性剤の 吸着評価法

トライボロジー分野への展開

東京理科大学 理工学部 工業化学科

講師 酒井健一

[email protected]

1

理工学部工業化学科 酒井・酒井研究室

界面化学

界面

活性剤 乳化

生体

材料

イオン

液体 固液

界面

無機

材料

光触媒

ナノ

粒子

ジェミニ型界面活性剤

アミノ酸系界面活性剤

刺激応答性界面活性剤

静的・動的な吸着挙動の解明

機能的な界面の創製

固体/イオン液体界面の評価

トライボロジー分野への展開

2

固/液界面に対する界面活性剤の吸着評価法

• 概要:

✓ 界面活性剤の性質(固/液界面に対する吸着特性)

✓ 吸着現象を評価する分析手法

✓ トライボロジー分野への展開(展望)

• 想定される用途・関連する分野:

界面活性剤(洗浄剤・乳化剤・分散剤・増粘剤等)の開発

界面活性剤を用いた製剤処方

摩擦低減剤の開発および摩擦・潤滑現象の

界面化学的な理解に基づく製品開発

3

界面活性剤の基本的な機能

親水基 疎水基

気/液界面

液/液界面

固/液界面

表面張力の低下

界面張力の低下

ぬれ性の変化

気泡の安定化

エマルションの安定化

サスペンションの安定化

• 分子集合体を自発的に形成する

• 界面に吸着することで、界面エネルギーを低下させる

(系を熱力学的に安定化させる)

ミセル・ベシクル・ヘキサゴナル液晶・ラメラ液晶・逆ミセル など

4

吸着とは?

分子やイオンの濃度が内部よりも二相の界面で高くなる現象

化学吸着 (化学反応と似た強い相互作用)

物理吸着 (物理的な比較的弱い相互作用)

吸着熱

高温になると

促進

阻害

可逆性 不可逆的 可逆的

吸着層の数

単層(単分子)吸着

多層(多分子)吸着

例 シランカップリング処理

チオールによる表面処理

脂肪酸による金属表面処理

(摩擦低減剤・油性向上剤)

固体表面へのガス吸着

界面活性剤の吸着

高分子による表面被覆

5

吸着挙動の実験的解析法(固体微粒子分散系)

分散媒+微粒子

+界面活性剤

微粒子に吸着した界面活性剤を分析

• TG

• IR

• XPS

媒体中に残った界面活性剤を定量分析 (界面活性剤の平衡濃度を決定)

• UV-Vis

• HPLC

• TOC

• 色素との複合化による溶媒抽出分析

• 分散安定性?

• ゼータ電位?

6

吸着挙動の実験的解析法(固体平板系)

(1)水晶振動子マイクロバランス法(QCM-D) 振動数の変化量から吸着重量を算出(吸着量+溶媒和量)

Energy dissipation の測定(吸着層の粘弾性情報)

(2)光学反射法(OR) 反射偏光度(単一波長)を測定し、吸着膜厚と吸着量に変換

(3)分光エリプソメトリー

反射偏光(複数波長)の振幅比率と位相差から、

屈折率、膜厚、吸着量を算出

(4)原子間力顕微鏡法(AFM) 吸着層の「その場」モルフォロジー観察

基板と垂直方向の力(フォースカーブ)測定・付着力測定

摩擦力測定(ナノトライボロジー)

7

バックグラウンド(塩)水溶液の

屈折率を仮定

(測定値:約 1.33 )

屈折率 1.43 ~ 1.44 を仮定

平均膜厚: フィッティングにより算出

既知の屈折率(約 1.47)

シリカの膜厚(測定値:約 2 nm)

既知の屈折率(約 3.88)

バルク溶液

界面活性剤吸着層

シリカ(SiO2)

シリコンウェハ(Si)

吸着層の

平均膜厚

吸着量

解析モデル(水系での界面活性剤吸着系)

8

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

-1 0 1 2 3 4 5 6 7

Av

era

ge

thic

kn

ess

(n

m)

NaBr水溶液 Stopped flow

NaBr + HTAB 水溶液

1.2×cmc

0.8×cmc

0.4×cmc

0.2×cmc

no surfactant

灰色領域・・・溶液交換領域 16ml/min (0.43min)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

-1 0 1 2 3 4 5 6 7Ad

sorb

ed a

mo

un

t (m

g/m

2)

Time (min)

Error bar = ±0.3nm

Error bar = ±0.2mg/m2 1.2×cmc

0.8×cmc

0.4×cmc

0.2×cmc

no surfactant

エリプソメトリーによる測定例

9

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

-1 0 1 2 3 4 5 6 7

Sau

erb

rey

mass

(m

g/m

2)

Time (min)

Error bar = ±0.3mg/m2

NaBr 水溶液 HTAB 水溶液

1.2×cmc

0.8×cmc

0.4×cmc

0.2×cmc no surfactant

(Dissipation値:全濃度において0.2×10-6以下)

灰色領域は溶液置換領域(流速:1ml/min、9秒間)

平衡到達時間 QCM-D (約2~9分) エリプソメトリー (約1~2分)

Flow speed 0.1ml/min

QCM-Dとの比較

10

界面活性剤吸着層のAFM観察

半円柱状・半ひも状

会合体

AFM カンチレバー

XY方向スキャン

Z方向(最小力)

“その場”ソフトコンタクトAFM法

円柱状・ひも状

会合体 グローブ状・球状

会合体

250 nm 250 nm

11

吸着層構造の「その場」測定例 (250 nm)

12-2-12

(a = 1)

Lamellar bilayer

C12EO8

(a = 0)

Globular assemblies

a = 0.1 a = 0.25 a = 0.5

a = 0(一鎖一親水基型) a = 1(二鎖二親水基型)

12

吸着層の構造を決める因子

界面活性剤の構造(タイプ) 陰イオン性 / 陽イオン性 / 非イオン性

モノメリック / ジェミニ / トリメリック / a, w ボラ型 など

アルキル鎖長

親水基の大きさと性質(解離度)

界面活性剤の濃度

共存物質(混合界面活性剤・添加塩)

対イオンの種類と濃度

基板の種類 親水性/疎水性

結晶性/非結晶性(アモルファス)

13

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 100

90

80

70

60

50

40

30

20

10 10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Water

MGDA

(mM)

SDS

(mM)

XSDS

粘弾性 溶液

ベシクル分散液

(XSDS = 0.5)

MGDA/SDS 50 mM

透明溶液

透明溶液

グリセリン修飾界面活性剤

カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤/カチオン界面活性剤混合組成物、及び毛髪用化粧料

出願番号2009-291237 公開番号2011-131137

学校法人東京理科大学 (阿部正彦・酒井秀樹・酒井健一・土屋好司・石塚智貴・金泰成) 14

ジェミニ(双子)型界面活性剤

ジェミニ型界面活性剤の特長

界面活性剤の使用量低減に貢献

1. 臨界ミセル濃度(cmc)が低い

2. cmcにおける表面張力が低い

3. 希薄な濃度領域からでも、増粘しやすい

4. 曲率の平滑な分子集合体(液晶)を形成しやすい

一鎖一親水基型 二鎖二親水基(ジェミニ)型

15

オレイン酸系ジェミニ型界面活性剤

比較的安価で入手しやすい原料

分子構造のデザインが容易

界面活性能を任意に調整可能

HOOC

親水基を導入

疎水鎖を導入

(親水疎水のバランスを制御)

NH

O

H2n+1Cn

オレイン酸

16

摩擦:大 摩擦:小

ねじれ変位

大 小

AFMによる摩擦力測定の原理

ねじれ大

17

摩擦力の測定結果(水溶液中・親水性シリカ)

Apparent load (nN)

Fri

cti

on

fo

rce (

nN

)

吸着層のモルフォロジーと摩擦力の関係(ナノトライボロジー) ☆ 化学構造

☆ 実験条件(濃度・塩強度等) 高機能な摩擦低減剤の開発

摩擦・潤滑現象の界面化学的な

理解に基づく製品開発

0

2

4

6

8

10

0 20 40 60

一鎖一親水基型(従来型)

18

共同研究の可能性(例)

☆ 新規両親媒性物質(界面活性剤)の合成と機能性評価

☆ 固/液界面に対する界面活性剤の吸着特性の評価

☆ 界面活性剤・高分子混合系の溶液物性・吸着特性

☆ 界面活性剤の分子集合体を利用した複合材料の調製

☆ エマルション(乳化物)・サスペンション(懸濁液)の調製と評価

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 : カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤/

カチオン界面活性剤混合組成物、及び毛髪用化粧料

• 特許番号 : 特開2011-131137

• 出願人 : 学校法人東京理科大学

• 発明者 : 阿部正彦・酒井秀樹・酒井健一

土屋好司・石塚智貴・金泰成

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お問い合わせ先

東京理科大学

研究戦略・産学連携センター

牛窪 孝/吉野 満昭

e-mail [email protected]

TEL 03-5876-1534

FAX 03-5876-1676

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