前回: ・金属の結晶構造 ・格子欠陥 ・転位とは ・...

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基礎材料組織学 第 5 前回: ・金属の結晶構造 ・格子欠陥 ・転位とは 今回: ・転位の運動と特徴 ・パイエルス応力

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基礎材料組織学 第 5 回

前回: ・金属の結晶構造

・格子欠陥

・転位とは

今回: ・転位の運動と特徴

・パイエルス応力

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「基礎材料組織学」第 5 回

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5.1 転位の運動:

●転位の運動のまとめ

・刃状転位:

・らせん転位:

・いずれの転位でも・・・

図 5.1 刃状転位の運動

図 5.2 らせん転位の運動

[入門 転位論,裳華房]

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「基礎材料組織学」第 5 回

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5.2 転位の特徴

①転位周辺において力の作用が働く

・例:刃状転位

②転位は伸縮する

・決して直線形状のみではない

③転位は増殖する

・転位の伸び:転位密度の増加

・代表的な転位増殖機構:フランクリード源

④転位同士で相互作用が働く

・正の刃状転位が同一すべり面上にある場合

・正の刃状転位が異なるすべり面上にある場合

斥力

図 5.5 刃状転位周辺の応力場

[金属材料工学 改訂・SI 版,森北出版]

図 5.6 転位の透過電顕画像

図 5.7 転位同士の相互作用

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「基礎材料組織学」第 5 回

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5.3 パイエルス応力

●パイエルス応力:

・転位芯の部分のエネルギー

変化に着目

図 5.8 パイエルス応力の概念

[入門 転位論,裳華房]

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「基礎材料組織学」第 5 回

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・例題:G = 80.0 GPa,= 0.300,d/b =1 としたときのパイエルス応力pを求めよ.また

理想変形強度(第 3回で説明)max = G /(2) も併せて求め,pと比較せよ.

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「基礎材料組織学」第 5 回

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5.4 第 5 回講義に関する意見・感想・質問のまとめ

●意見・感想

・パイエルス応力をどうやって求めるかがよく分かった,転位同士の相互作用の説明がわかりやすかった,

転位の特徴がよく分かった,バーガーズベクトルの意味や余分な半原子面の記号の意味を今回の授業

を通して理解することができた,転位の説明やパイエルス応力について理解することができた,転移同士

の相互作用で斥力と引力の話はすごく納得した,とても分かりやすかった,転位に必要な応力を概念だ

けでなく計算で求めることできるという点でも理解できた,転位には様々な特徴(伸縮や増殖、相互作用な

ど)があることがわかった,刃状転位とらせん転位の運動が理解できた,転位に関しては動画のおかげで

しっかりと理解できた,転位同士の相互作用などイメージしながら理解できた,波状転位とらせん転位の

区別をはっきりさせることができた,転位の周囲の原子配列によりエネルギー(パイエスルポテンシャル)

が周期的に変化することもわかった,パイエルス応力の式を理解することができた,転位線とバーガース

ベクトルの関係が分かった,転位の運動や特徴をつかむには図をイメージして取り組むと理解がしやす

いことがわかった,とても理解しやすい授業だった,刃状とらせんの違いはとても重要であると理解した,

資料の図が見やすく転位の過程がとてもよくわかった,転位についてどのように半原子面が動くかやパイ

エルス応力についてグラフや動画で説明がなされていて理解しやすいものになっていた,転移通過後に

すべり面の上下で原子一個分のずれが生じるということは同じであることが理解できました,転位周辺に

おける力の作用についてもイメージできた:23

・刃状転位やらせん転位の特徴をしっかり復習したい,しっかり復習しておきたい,徐々に計算が難しくなっ

てきたので今一度よく復習する,計算問題は少し複雑だと思ったがちゃんとと解けるようにしたい,パイエ

ルスポテンシャルについてしっかりと復習する,講義についていけるようにしっかりと復習をする,最後の

例題を自力で解いたら少し間違っていたので再度レジュメに目を通しもう一度といてみる,応力の定義を

間違えないようにしっかりと復習する必要がある,転位することで起こるポテンシャルエネルギーについて

しっかり復習する,授業の最初にやった課題の単位が間違っていたのに気づいたのでもう一度復習する,

参考問題等を用いて復習する:13

・転位は伸縮し決して直線形状のみではないことや増殖したり転位同士も相互作用が働くなど多くの特徴を

知れてとても興味深い内容だった,転位の画像をみて実際は複雑な形をしているのを見るとどれだけ真

の値に近づけるのか容易ではないなと思った,基礎材料組織学では転位を想定することが重要になって

くると思うので理解を深めていきたい,転位が斥力・引力を生じさせることや転位密度の増加もすることな

ど興味深い,今回の講義を通して以前よりも材料系の分野に興味が湧いた,必要なせん断応力をとても

簡単に求めることができて驚いた,転位の運動にも周期があるというのが面白い:7

・転位の運動や特徴やパイエルス応力について学ぶことができた,転位の周囲の原子配列の相違と転位の

ポテンシャルエネルギーの相違は同じになることがわかった,転位についての具体的特徴を学習した,転

位が「どのような影響(あるいは相互作用)」を及ぼすかを考えていった,転位の詳細な様子や原理につい

ての知識を得ることができた,転位が不安定な状態を乗り越えるためのエネルギーを供給する外力が

「パイエルス応力」であるということを初めて知った,転位の特徴について学べた:7

・自分もバーガース/ベクトルではなくバーガー/スベクトルだと思っていたので気が付けてよかった:2←

・今日の小テストで提出の 1分前に自分の間違えに気づいて直した結果間に合わなく提出できなかった,い

つもより小テストが難しく少し苦戦してしまった,今日の小テストは時間がかなりギリギリで計算がおろそ

かになってしまった,小テストの単位を変える時に間違ってしまった,小テストの問題ができなかった,今

回の小テストは少し難しく感じ解くのに時間がかかった:6←こういった,与えられた条件から関係式を用

いて部材の必要寸法を算出する問題は,いわゆる「設計」の基礎となるものです.応力やひずみの式,フ

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「基礎材料組織学」第 5 回

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ックの法則等を通り一遍に覚えるのではなく,組み合わせて使えるように式の意味をしっかり理解するこ

とが大切です.

・転位の運動について今回はさらに詳しく説明していただいたのですが少し難しかった,理想変形強度や今

回のパイエルス応力といった式がどのように導出されたのかが気になった,前回の授業から転移の話が

続いているがまだよくわからない部分が多い,今回の講義は難しく感じた:5

・事前にダウンロードしておく資料と授業で使う資料をできれば同じにしていただきたい,今回の講義は私た

ちの持っているテキストと先生のテキストが後半の部分がだいぶ違ったのは少し気になった,画面共有さ

れているスライドと自分で印刷したプリントで若干違ってた:5←済みません,こちらの完全なミスです.私

の手元で使っていた授業ファイルも pdf形式でアップロードしておきます.

・計算問題が出てくるときには有効数字について注意したい,例題の計算の有効数字が答えとあっていた

ので良かった,有効数字でのミスで減点されないように練習を重ねたい:3

・特になし:2

・毎回の小テストは参考問題を解いてから挑んでいるが、参考問題の自分の回答が正しいのかわからない

ので、参考問題の解答が欲しい←うーんと,それって「事前に小テストの答えをください」って言ってるのと

同じですよね?正気ですか?他の方法(友達同士で確認し合う,等)ありますよね?

・テストや授業進行度はちょうど良い

●質問

・綺麗な状態だったのに、余分なものが入ってこれるのか不思議に思う。入ってこれないような力は働いて

いないのだろうか。←転位形成のメカニズムですが,基本的には溶融状態の金属が温度低下に伴い凝

固し結晶を形成する際に,ごく一部で結晶配列に乱れが生じたものとして理解されています.

・最後にやったパイエルス応力を理想変形強度で割った値は何を表すのか←理想変形強度に対するパイエ

ルス応力の比率(倍率)です.1/439 倍,それほど低いということです.

・パイエルス応力を求める式は公式として覚えた方が良いのか。それともこの式を導けるようにしなければ

ならないのか。←覚える必要はありません(小テストには出しません).

・最初の小テストの問題が分からなかったので解説をしてもらいたい←毎週,小テストの解答はこの web フ

ァイルに掲載していますが・・・見ていないのでしょうか?

・パイエルス応力は理論値とのことだったが誤差を引き起こす原因とは何なのか。←パイエルス応力は温度

の影響を考慮していないので,熱活性化過程の影響により転位運動に必要な応力は変化します.

・なぜ余分な半原子面がある側では圧縮、ない側では引張りの応力が生じるのか←刃状転位では,下図の

ように余計な半原子面が存在し,乱れのない原子配列より過剰に緻密な原子配列となっているため,相

互に圧縮する作用を受けます.一方,下半分の原子は上側の原子配列が若干広げられている影響によ

り,それにつられて自身も広げられる方向,つまり引張の作用を

受けます.

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「基礎材料組織学」第 5 回

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5.5 第 4 回小テスト解答

Q.1 ヤング率 E = 70.0 GPa,元の長さ l 0 = 100.0 mmの丸棒が垂直荷重 700.0 Nで引張られるとき,

生じる伸びを = 1.00×10-2 mm以下に抑えるためには,直径 d [mm]をどれくらいにすれば

良いか求めよ.[10点,部分点あり]

A.1 s =W

A0

=W

d2( ) 4 ,

e =

l0 , s = Ee,

よって

4W

d2= E

l0

Þ =4W

d2×l0

E

ここで,W = 700.0 N,l0 = 100.0 mm,E = 70.0 GPa = 70.0×103 MPa = 70.0×103 N/mm2,

また伸び 1.00×10-2 mm ・・・上式に代入

∴1.00´10-2 >4´ 700.0

d2

×100.0

70.0´103

d2 >

4´ 700.0

´1.00´10-2×

100.0

70.0´103

d >11.283... =11.3 (有効数字 3 桁)・・・dを 11.3. mm 以上にする

注!下記のような誤りが多数

・単位の間違い・・・「70.0×109 N/m

2」と「100.0mm」をそのまま同時に式に入れたら

単位が合わなくなるのは当たり前!式に代入する値の単位は代入前に合わせる.

→答えが「1.13×10-2

mm」になった場合,「値として小さすぎないか?」と考えるべき

・相変わらず断面積を「πd2」で求めている,もしくは半径のつもりかもしれないが

それなら答えとして「半径 r >・・・」と記さないと矛盾する.

・有効数字の誤り

・単位を表記しない

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「基礎材料組織学」第 5 回

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参考問題

Q. 転位と金属材料の強化機構について述べた以下の文章において,空欄[ A ]〜[ J ]

に当てはまる語句を答えよ.[F と Gは順不同,各 1点]

a) 転位は結晶中の[ A ]欠陥の一種である.せん断応力による原子の移動(=[ B ]

変形)において,[ C ]面上の原子が全て同時に移動するのではなく,転位の運動を

介した原子の逐次的移動が生じる.

b) 転位を介した原子の逐次的移動により,通常の金属材料では[ D ]強度の数百〜

数千分の一の応力で[ B ]変形が進行する.

c) [ E ]とは転位による原子配列の乱れの中心であり,原子が既に移動した部分とまだ

移動していない部分の境界を示す.またバーガースベクトルとは,転位の運動によって

生じる原子の移動の[ F ]と[ G ]を表すベクトルである.

d) 転位の特徴として,①周辺と[ H ]の作用が働く,②運動に伴い伸縮や[ I ]をする,

③転位同士の[ J ]が働く,といった点が挙げられる.

解答欄

A B(2 箇所)

C D

E F

G H

I J