hitachi global - 電動機のインバータ...
TRANSCRIPT
小特集・サイリスタインバータとその応用
電動機のインバータ
∪.D.C る21.313.333:d21.31d.71.07占.7:る81.532.5.037
る21.314.572.072.る:〔る21.314.る3.07:る21.382.333.34]
区動時における安定性Speed Controlof ThYristorlnverter/lnduction Motor Drive
電i充形インバータによる誘導電動機の速度制御方式は,保守性及び省エネルギー
の面から,しだいにその用途が拡大しつつある。これに伴い,制御性能や安定性の
向上が強く要請されるようになった。日立製作所では,この要請に応ずるため,こ
の系の過渡特性,安定性とその要因及び制御系について検討を行なった。
まず,電流形インバータの電流や周波数,すなわち誘導電動機の一次電流や周波
数に対する端子電圧の伝達関数が,二次形で近似できることを明らかにするととも
に,安定に運転できる限界周波数及び転流コンデンサ容量,並びに誘導電動機二次
時定数との相関関係を明らかにした。更に,安定性を向上させる手段として,イン
バータ周波数を補正する周波数補正制御を導入し,その有効性を確認した。
l】 緒 言
電動機駆動用の可変電圧可変周波数インバータは,電流形
と電圧形とに大別される。回生制動を必要とする鉄鋼のテー
ブルローラなどには電i充形が,揃遠道転だけを行なう紡糸機
などには電圧形が適している。しかし,ポンプ,ファンや大
容量ブロワの始動などには,システムの要求仕様と経済性の
点で両方式の得失を比較した上で選定する必要がある。
インバータで電動機を駆動する場合,発生トルクの脈動と
安定性が問題となる。発生トルクの脈動は,インバータの多
重化やパルス帽変調制御により問題のない値まで抑制するこ
とができる。安定性に関しては,日立製作所の電圧形では直
流平滑回路の定数や電圧制御性の応答を最適に選ぶことによ
り,不安定現象の発生を抑制している1)。
度Jh精舎
eON■∴ ′咽V、′
8GL
- C芋∴、▲1 .
毒;′、 ‡・I、._■M
声丁・ 世 † †
子′車
、AVR.、ACR・くGAGA
空手
_l_
辞≡_., ニミ∨/F
レ′藩主-く1
略字衰CON=
耶V蒜イ
流リ
1材二湧導琴動替、AVR買電圧制和国
A8日=篭涜制初回臥′′辞閃ご自動パルス移相衰
ルー 融=デー、下車ンヲ
′、
V炸二重庄周波数変換器.〈〔OG言論理回鶴 ミ‥
f,Comp=嘩波革袴荘制御圃蕗
図l 電流形インバータ構成図 転流コンデンサを星形結線にした電
;充形インバータである。け化ヒ一定制御及び安定性向上のため,周波数補正制御
を行なう。
本部光幸*
松田靖夫*
大 川 正*
松平信紀**
長戸悠一郎*…
〃0乃占〟〟よ~5祉yむたJ
〟αgざ址dαlもざ加0
0たα別氾 mdαざんi
〟αg5加dα才γα ∧ro占む柁OrJ
∧bgα王o y左才cムJγ∂
一方,電流形では転流動作に起因する不安定性をもってお
り,この定量的把握と安定性向上のための制御方式を確立す
ることが必要である。
本稿では,電i充形インバータで誘導電動機を駆動する場合
について特性解析を行なうとともに,安定に運転できる限界
周波数について考察した。更に安定性向上のための周波数補
正制御についても述べる。
B 電流形インバータ駆動誘導電動機のシミュレーション
電流形インバータによって,誘導電動機を駆動する場合の主
回路及び制御回路の構成を図1に示す2)。一般に,誘導電動機
の端子電圧Ⅴと周波数/の比Ⅴ/′が一定になるように制御され
る。この制御は,電圧制御回路と電圧一周波数変換器の働きによ
り達成される。点線で示した周波数補正制御回路f.Compは安
定性を向上させるためのものであり,ニれについては後述する。
図lで誘導電動機(IM)に流れる一次電流波形は,図2に示す
ように120度通電の方形波となる。この電流波形の基本波成分
だけを考慮し,d-q直交座標軸成分gd∫,よ。ざに変換すると,
z。β=竺ん,∫。∫=0
二∃/l≡、、 ヰ
・Y‡ゐ、l、
車′、暮′
、、軽I■
二t、′l
′ 3汀 ヤ乍伽暑方 2正
・(1)
図Z 誘導電動機一次電;充波形 電流形インバータで駆動される誘導
電動機の一次電流波形は.120度通電の方形波となる。二の図では,直流電流の
脈動及び転流の重なりは無視Lている。
*
日立製作所日立研究所**
日立製作所日立工場*…
日立製作所習志野工場
23
422 日立評論 VOL.60 No.6=9了8-6)
ん
(電涜指令)
dノ】止㌧
旦.ヱ2 2
X告((…;)∠リア+
/
ノブi?古
×
×
×
〟山よd,
(凸ノー一山;)よdr
(中一以りg。r
賞P
士i
上∫P~q。・+
!q∫
JJ∠句γ
γ∫古q∫
gdr
Vq∫
〃Piqr
/
甲r AグPgdr
iマr
X
×
上、~むノ∠q方
〟山JマγV′dJ
山r
×
X
×
となり,朗由成分は零となる。このことから電流形インバータ
で駆動される誘導電動機に対して,次の微分方程式を導くこ
とができる3)・4)。
〔;:比二詣二吾∴ニニ芸1。ト発生トルクrは,
ここに
r=号・号肌。∫~dγ‥…p:極数
P‥微分演算子(=孟)才マr,才dr:二二二大電流
〟:相互インダクタンス
エr ニニ欠イ ンダクタンス
γr:二二大抵抗
仙:インバータ角周i度数
仙;:回転角周波数(電気角表示)
機不戒系の運動方程式として,
ノー慧-=r【γ′…‥‥
2.000
×102
1.800
1.600
0
0
0
0
(U
nU
O
n)
0
ハU
O
O
4
2
0
8
《U
4
1.
1.
1L
O
O
O
(∽\で空)5東熊野収腺回=の
3.000
2フ00
2.400
2.100
0
0
0
∩)
(U
O
O
O
O
O
dO
5
2
9
(〇
一L
一L
一1.
〇
〇
(∈+Z)
ト
ヘユニ胡蝶=寸
4.000r 2.000r 4.000
.×102
3.800
3.200
の
竜2・800
×101 ×10
3.600
3.200
2.800
2,400
0
ハU
O
O
00
鮒
20
80
2
1・
1
0
(>)や増辟叶輝=.叩
1.800
1.600
1.400
0
0
0
0
0
〈U
O
O
O
O
4
0
6
2
8
2・
2
1
一L
八U
3惑溺野耳尽-て八†--【
Lr-■一■■巨0
(リ
0
0
0
0
0
0
〇.
〇
2
0
QU
6
4
L(予廿㌦町‰-加
0・200「0・30叶 0.400ト 0.200ト 0.400
0.000 0.000し 0.000L o.000.000
24
・(3)
・(4)
注:
国中の略字説明は,本文
(2卜4(式)参照
U=インバータ角周波数
むノr=回転角周波数r=発生トルク
g=端子電圧
図3 電流形インバータ駆動
誘導電動機のシミュレーショ
ンブロック繰回 汎用のシミ
ュレーションプログラムを用いて,
この図から過ユ度特性及び定常特性
を求めることができる。
l†Tェ
リ
仔√-
且'
二 こに J:慣性モーメント
叫‥回転角速度(=そ仙ニ)耶:負荷トルク
図3に,(2ト(4)式の関係をプロ、ソク線図化して示す。このブ
ロック緑図をもとに,汎用のシミュレーションプログラムを1
用いて過渡現象の解析を行なった0同図で丁子有言のブロ
ックは電流制御系を近似したものであり,Eは端子電圧の実
効値である。
図1に示したけ′一定の制御回路では,電流制御系や電圧
制御系の安定化を図る必要がある。電流制御系は電圧制御系
の内側に組み込まれており,一般にこの応答は電圧制御系の
応答に比べ,一桁程度速く選ばれる。この場合,電流制御系
の応答時間の範岡内では,誘導電動機の端子電圧や力率の変
動分は無視することができる。したがって,直流電動機の電
流制御系と同様に考えることができ,比較的簡単に安定化を
図ることが可能である。
電圧制御系の安定化を図るためには,電流制御系が内側に
組み込まれているので,電流に対する誘導電動機の端子電圧
の伝達関数を明らかにする必要がある。そこで,回転速度一一
定の条件のもとで,電流に対する電圧のステップ応答を求め
た。図4にシミュレーション結果を,図5に実測結果を示す。
170ms
山γ52
33.8V
100%2
りd=15A)
28,8V
インバータ周波数二60Hz
すべり:11,5%
すペり周波数:6.9Hz
誘導電動機二次時定数二170ms
定格出力:2.2kW
定格電圧:100V
17ざ
りd=9A)
g
17.2V
145ms
(6.9Hz)
0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7,00
時 間 ~(s)
8.00. g.00
図4 電流に対する電圧のス
テッ刀応答(シミュレーション
結果) 電圧及び発生トルクは,
減衰振動波形を示Lている。振動
周波数はすペり周波数に,減衰時
定数は誘導電動機の二次時定数に
一致していることが分かる。
電動機のインバータ駆動時における安定性 423
回転速度Ⅳ1.593mmj灯1(×103rpm)
175ms
145ms
33.5V
30V
端子電圧£
仰哨柵直流電流ん 9A
電流指令
(8.9Hz)
、。。%hd63.2%
15A
インバータ周波数:60Hz
すべり 二 ■=.5%
すべり周波数:6.9Hz
誘導電動機二次時定数:170ms定格出力:2.2kW
定格電圧:100V
供試電動機は出力2.2kW,電圧100V,周波数50Hzの誘導電
動機を用いた。実測結果とシミュレーション結果とは非常に
ょく一致している。電圧の応答は振動周波数6.9Hz,減衰時
定数170ms前後の減衰振動波形を示している。振動周波数の
6.9Hzはすべり周波数,減衰時定数の170msは誘導電動機の
二次時定数乃に一致している。二れらの結果を考慮すると,
電流に対する電圧の伝達関数G(5)は次式に示す二次系で近似
することができる。
G(5)二 ∬(仙汁去)(S十去)2+似ぎ
・(5)
ニこに 山ざ:すべり角周波数
足:ゲイ ン
(5)式に示した伝達関数を基本にボード線図を描くことによ
り,電圧制御系の安定化を図るための補償方法とその補償定
数を決定することができる。
田 電流形インバータの安定運転限界周波数
電流形インバータは,本質的に転流動作に起因する不安定
性をもっている。不安定現象は,高周波領域でしかも軽負荷
周波数指令
回転速度
コンバータ直蜘電圧!J
直流電涜
図5 電三充に対する電圧のス
テップ応答(実測結果) 囲
4に示Lたシミュレーション結果
の妥当性を確認するための実測結
果を示すもので,両者は非常によ
く-教Lていることが分かる。
時に顕著に現われる。図6は不安定現象の様子を示したオシ
ログラムであり,インバータ周波数が34Hz以上の領域で不安
定現象が生じている。すなわち,コンバータ直流出力電圧,誘
導電動機の電圧及び電流が大きく変動していることが分かる。
不安定現象に対して影響を及ぼす要因としては,転流コン
デンサ容量をはじめ,誘導電動機の二次時定数,インバータ
周波数,電圧制御系の応答,加減速率,電流の大きさ,打′
値などが考えられる。これらの要因のうち,特に転流コンデ
ンサ容量と誘導電動機の二次時定数が,不安定現象に対して
非骨に大きな影響を及ばす。そこで,電流形インバータの不
安定現象が転流動作に起因していることに着目し,安定動作
の限界条件についてインバータ周波数,転流コンデンサ容量,
誘導電動機の二次時定数の相関関係を求めた。
転流動作は,導通遅れ期間と転流重なり期間の二つのモー
ドに分けられる。このうち,負荷状態に依存して大きく変化
し,安定性に対して密接な関係をもっているのが導通遅れ期
間である。この期間を角度で示した導通遅れ角卯は,軽負荷
の場合次式で近似できる。
甲d≒4`〟2凡才C…
ここに 山:インバータ角周波数
インバータ周波数=34Hz
・(6)
〟:相互インダクタンス(励磁インダクタンスノ
50=z
ユニ加仙Ⅳ1(×-03rpm)230V
75A
0
800V
端子電圧
一次電流60A
Dl■-
図6 不安定動作時の現象
インバータ周三皮数が34Hz以上の領
域で,各部の電圧・電涜波形,特
にコンバータ直流出力電圧波形が
大きく変動Lていることが分かる。
25
424 日立評論 VOL.60 No.6(1978-6)
0.6ト
u O.4
顎N)
3
0.2
50
む。r r2
100
図7 安定限界周波数における導通遅れ角と誘導電動機二次時定
数との相関関係 安定に運転することのできる限界の周波数で,導通遅れ
角卯(≒4`山雪r〃C)と誘導電動機の二次時定数乃との関係が直線関係にあることが
分かる。
(の\葛+て量感紫野耽鍵盤肘柵
0
∩)
【h)
0
7
5
ヽ
、ヽ
安定領域
不安定領域
実測値
、†計算値
20 40
転流コンデンサ容量C(〟F)
60
図8 転流コンデンサ容量と安定限界周波数 図7で示Lた相関関
係から,転読コンデンサ容量に対する安定限界周波数を求めた結果を示すもの
で,実測結果とよく一致Lていることが分かる。
C:転i充コンデンサ容量
この卯と不安定現象の減衰効果を支配する二次時定数乃との
間には,安定性に対してなんらかの相関関係があると考える
ことができる。そこで,数多くの誘導電動機を対象に,転流
コンデンサ容量をパラメータとして,図5に示したものと同
様な実験結果から不安定現象が現われ始める周波数,すなわ
ち安定限界周波数を求めた。その結果をまとめると,安定限
界周波数における卯と乃との間には図7に示すような相関関
係があることが明らかになった。同図から対象とする誘導電
動機に対して,転流コンデンサ容量と安定限界周波数との関
1.396mmjn
(×10キpm.)
周波数指令
回転速度
7.53s
コンバータ直流出力電圧
直流電流
端子電圧
26
50Hz
1.5mminJl(×103rpm)
-125A■■■■■■■■-_..■■
/実効値468V
22.7A■■■-■■■■■■■-■l■
′実効植400V
係を求めることができる。
図7に示した相関関係は,実験結果から導き出されたもの
である。したがって,この相関関係は広く一般性があるかど
うかを調べる必要がある。このため,同図に示した相関関係
を得る過程で使用した供試誘導電動機とは別の誘導電動機
(出力:2t2kW,電圧:150V,周波数:100Hz,二次時定数:
110ms)を用いて確認を行なった。図8にその結果を示す。同
図中,実線は実測結果を,点線は図7の相関関係を用し、て計
算した結果を示すものである。下側の領域が安定領域で実測
値が若干大きくなっているが,その差は数パーヤント以内で
ある。したがって,図7に示した相関関係には一般性がある
ということがいえる。
田 転;充コンデンサ容量の選定基準
対象とする誘導電動機とこれを駆動するための電流形イン
バータの容量,電圧,電流,周波数などの仕様が定まれば,
まず,転流能力を確保するための必要最低限の転流コンデン
サ容量Ccを決定することができる。次に,図7に示した相関
関係から,要求される運転周波数領域で,安定に運転するた
めの転流コンデンサ容量の最大許容値Csを求めることができ
る。更に,インバータを構成するサイリスタやダイオードな
どの耐圧上,転流コンデンサ容量としてある特定の値以下に
することはできない。この値をCvとする。Cv以下に選んだ場
合,耐圧を上げる必要があr)経済性上問題となる。
一般の電流形インバータでは,Cc<CvくCsという不等式
が成立する。したがって,転流コンデンサ容量Cとしては,
Cv≦C≦C5を満足する値でなくてはならない。
日 加i成速選手云特性
これまで述べてきた結果を踏まえ,出力15kW,電圧400V,
周波数50Hzの誘導電動機駆動用の電流形インバータを対象に,
転流コンデンサ容量の適正値及び電圧制御系や電流制御系の
安定化を図るための補償方法の検討を行なった。図9に加減
速運転を行なったときのオンログラムを示す。この場合,図
6のオシログラムで示した不安定現象は生ぜず,非常にスムー
ズな加減速運転特性が得られた。
図3のブロック線図を用い,図9での供試機を対象に加速
時のシミュレーションを行なった。図10にその結果を示す。
始動初期を除き,電圧,電流及び速度の波形は図9の実測結
230V
0
凸
125A
0
600V
一次電流Il用 †‖OA
0'
図9 加減速運転特性
ほkWの誘導電動機(負荷G亡)2=35
kg・m2)を加減速運転したときのオ
シログラムを示すもので.不安定
現象が生ずることなく,良好な加
減遠運転特性が得られていること
が分かる(
電動機のインバータ駆動時における安定性 425
7.000
×10Z
6.300
5.600
2.000
×102
1.800
1.600
0
0
0
0
4
2
(の\冨L)L■■-一.一■.Lト0
0
0
0
g
2
4
4
(∈・Z)
31.0000053ト
0
0
0
0
8
丘U
O
O持0
∩)
0
0
8
+
2
2
ヘユニ朝鮮=幻
5.000
×102
4.500
4.000
3.500
2.000
×102
1.800
1.800
1.400
0
0
ハU
O
2
0
Lほトト0
0
0
0
0
5
3
2
+>).叫
0
0
0
0
8
8
0
0
輯紳輔-‖叫
.■L「.■.1■lL-tO
O
nV
O
O
5
2
・-
出紆巾賛=m
7.78s
8.000
7.200
6.400
5●600!4.800■
止4.000
くF』正
義3・200無t璽2.400】‡
1.600
0-800
F]
ふ
467V
50Hz
1.41m m】∩一▲
(×103rpm)
直流電溝換算値120A
占q∫ (ニ禦∫d)
400V
1.496mmjn▼i
(×103rpm)
直流電流換算値20.8A
1.00 1.20×100.20 0.40 0.60 0.80
時 間 ど(s)
果によく一致している。ニのことから,設計計画段階で電流
形インバータで駆動される誘導電動機の加減速特性を,シミ
ュレwションにより定量的に把握できることが確認された。
何 周波数補正制御
大容量の誘導電動機を駆動したり,周波数の高い領域まで
運転範囲を拡大する場合,あるいは過負荷耐量の非常に大き
いものでは,転流コンデンサの容量として,転埼能力,素子
の耐圧,それに安定性から定まる前述の不等式を満足する値
が存在しなくなる。すなわち,転流能力から定まる必要最低
限の値が安定性から制限きれる値以上になi),主回路定数上,
不安定現象の発生を避けることができなくなる。一方,電源
周波数とインバータ周波数がある-一定の関係を満足する範囲
になると,その周波数差によるビート現象が生じ,誘導電動
機の電圧や電流が変動する。
インバータの仕様上避けることのできない不安定現象,及
びど-ト現象に対しては,制御的に抑制する必要がある。
図6のオンログラムで示した不安定現象発生時には,イン
バータ周波数とは無関係に誘導電動機の端子電圧が大きく変
動している。すなわち,け∫比が大きく変動していることに
なる。これは,図1に示した電圧制御系では平均的にはけ′
~q,(んニ9A)
1.600
1.400
1.200
言1.000邁董交じ
只U
4
0′
0
0
意憮璽耽腺回=心
区I10 加速特性シミュレーシ
ョン 図9に示Lたオレログラ
ムの条件で,加速時のシミュレーシ
ョンを行なった結果を示すもので,
加速状態及び電圧波形,電流波形
は始動初期を除き実測結果によく
一致していることが分かる。
比を一定に保つことができるが,その応答上,瞬時的にけ/
比を一定に保つことができないためである。ビート現象によ
る変動も発生瞭因は異なるが,現われる現象は上記と同様,
瞬時的にはけ′比が-一一定に保たれていないと考えることがで
きる。そこで,吋J比を平均的にも瞬時的にも一定に保つ手
段として,インバータの周波数を制御する方法を検討した。
図1に点線で示した周波数補正制御回路は,電圧偏差でイン
バータの周波数を補正制御し,け∫比を常に一定に保つこと
により安定性を向上させるものである。
図lに示した周波数補正制御回路は,構成上周波数による
電圧制御回路である。したがって,この制御系を検討するた
めには,電圧制御系と同様に周波数に対する電圧の伝達関数
を明らかにする必要がある。このため,図3グ)シミュレーシ
ョンブロック線図を用いて,回転数一一定のときのステップ応
答を求めた。図1=こその結果を示す。供試電動機は図4の場
合と同様2.2kWの誘導電動機を用いた。電流に対する電圧の
ステップ応答波形と同様に,減衰振動波形を示している。減
衰時定数は二次暗定数r2に,振動周波数はすべり周波数に等
しくなっている。このことから,周波数に対する電圧の伝達
関数は,電流に対するものと全く同様に(5)式の二次系で近似
できることになる。ただし,ゲイン方の値は異なる。周波数
g
170ms
127ms
(7.9Hz)
100%83.2%
驚…三0.500
0
0
0
0
0
0
4
つ)
2
0
0
0匝0
0
0
0
0
0
8
(n)
4
0
0
0
叫坦財小額=m■■..■ト
0
∩)
0
0
0
0
2
4
丘U
3
2
▲L
へミふ朝鮮=寸
■■L■..■.■ト0
0
ハリ
O
O
O
分U
(n〉
4
;:…:;[;二;;[;二…;[;ここ:…
芸2・0001旺
・臥1.600
~′
ミ1
0
†=「
nU
n)
0
0
】Z
8
0.400
インバータ周波数:60Hz一別Hz
すペり:11.5%→12.95%
すべり周波数:6.gHz-7.gHz
誘導電動機二次時定数:170ms定格出力:2.2k〉∀
定格電圧;100V
1.00 2,00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00
時 間 と(s)
図Il周波数に対する電圧の
ステップ応答(シミュレーシ
ョン結果) インバータの周波
10.00×10▼l 数をIHzステップ状に変化させた
ときの応答波形で,図4と同様減
衰振動波形を示している。
27
426 日立評論 VOL.60 No.6(柑78-6)
端子電圧(実効侶400V,変動分±30V)
‾次電涜(実琴億230A,変動分士25A)
インバータ周波数60Hz
発生トルク
直流電流(平均値282A,変動分±35A)
コンバータ直流出力電圧(平均値330V,変動分土30V)
端子電圧(′実勢値400V)
叫次電流(実効値225A)
インバータ周波数60Hz
「丁
発生トルク
直流電流(平均値276A)
コンパ…タ直演出力電圧(平均値328V)
に対する電圧の伝達関数が明らかになったので,図1の周波
数補正制御回路の補償方法,及びその補償定数を決めること
ができる。
周波数補正制御の効果を調べるため,出力270kW,電圧
400V,周波数60Hzの誘導電動機を対象に確認実験を行なった。
図12に周波数補正制御を行なわない場合のオシログラムを,
図13に行なった場合のオンログラムをそれぞれ示す。図12で
は,誘導電動機の端子電圧や一次電流が大きく変動している。
一方,図t3では,これらの変動が非常に小さくなっており,
周波数補正制御の効果が十分に現われていることが分かる。
以上の結果から,周波数補正制御を導入することにより,
従来の電圧制御では不安定現象の生じていた領域でも安定運
転が可能となり,安定性の向上を図ることができた。
l臼 結 言
電流形インバータで誘導電動機を駆動する場合に,その過
渡現象の解析,安定性とその要因の定量的把握及び制御系の
検討を行なった。これらの結論を要約すると次に述べるとお
r)である。
(1)電流及び周波数に対する電圧の伝達関数は,二次系で近
似できること。
28
廿
図12 定速運転時の動作波形
(周波数補正制御なL)
270kW誘導電動機を島区動したとき
のオシログラムを示すもので,電
圧,電流波形はかなり変動してい
る。制御系は電圧制御だけである。
図13 定速運転時の動作波形
(周波数補正制御あり)
図1Zに比べ電圧,電流波形の変動
は非常に小さくなっており,周波
数補正制御が安定性向上に対Lて
有効な手段であることが分かる。
(2)家宝限界周波数,転流コンデンサ容量及び誘導電動機二
次日寺定数の間に存在する相関関係は,直線関係にあること。
(3)周波数補正制御を行なうことによ-),常にけ∫値を一定
に保つことができ,安定性が大幅に向上すること。
(4)ブロック線図を用いたシミュレーションにより,加減速
特性を定量的に把掘できること。
電流形インバータに対し要求される性能は,今後ますます
多様化し,かつ高度なものになっていく傾向にある。日立製
作所では,これらの要求に応ずるため実験と解析の両面から
鋭意検討を積み重ね,よりいっそう性能の向上に努力してい
く考えである。
参考文献
1)斉藤ほか:可変周波インバータによるモートル制御,日立評
論,55,632川副8-6)
2)本部ほか:転流コンデンサY接続電流形インバータ,電気学
会全国大会論文予稿,652(昭53-4)
3)P・C・Krause:Method of Muhiple Referen。。Frames
Applied to the Analysis of SymmetricalInduction
Machinery,IEEE,Trans.on pAS,PAS-87,218(1968-1)
4)E・P・CornellandT・A・Lipo‥Modelingand Design of
Controlled CurrentInduetion Motor Drive Systems,
IEEE,Trans.onIA,lA一柑,321(1977-7)