前希釈オンラインhdfにおける 皮膚掻痒症の改善効果 ·...
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前希釈オンラインHDFにおける 皮膚掻痒症の改善効果
医療法人社団城南会 西條クリニック鷹番
朝日大樹、長友まどか、中島成仁、土屋光清、
下地 博、藤田菊恵、西條公勝、西條元彦
第22回日本HDF研究会学術集会・総会 於、甲府富士屋ホテル
平成28年10月1日(土)
ワークショップ② 「皮膚掻痒症改善のための透析療法」
演題発表に関連し、開示すべき COI 関係にある 企業などとして、
①顧問: なし ②株保有・利益: なし ③特許使用料: なし ④講演料: なし ⑤原稿料: なし ⑥検査費用の一部: ニプロ株式会社 ⑦奨学寄付金: なし ⑧寄附講座所属: なし
⑨贈答品などの報酬: なし
日本HDF研究会
COI開示
筆頭発表者名:朝日大樹
○ 血液透析患者の56~86%にかゆみがみられる
○ かゆみを訴える患者の75%は透析導入後から
かゆみが出現または悪化している
○ 透析患者が腎移植を受けると、3/4の患者で
かゆみがすみやかに消失する
かゆみは、透析が大きく関与していることが考えられる
透析患者のかゆみについて
段野貴一郎:“痒みのみかた”, 透析室に置きたい かゆみ治療パーフェクトガイド. 株式会社金芳堂, 京都, 2-16, 2008. から引用
ヒスタミン
サブスタンスP
インターロイキン2
乾燥(角質水分量の低下、発汗低下)
痒覚神経の伸長と痒み閾値の低下
中枢におけるかゆみ 脳内の痒み制御メカニズムの異常 オピオイドペプチド
皮膚におけるかゆみ
透析に由来する内因性起痒物質の産生・
蓄積
中分子量物質の蓄積
ヒスタミン遊離物質の産生
無機イオンの蓄積
副甲状腺ホルモンの産生
(二次性副甲状腺機能亢進)
外因刺激に対する痒み感受性の亢進
かゆみメディエーターの過剰産生
かゆみの原因
段野貴一郎:“痒みの起こり”, 透析室に置きたい かゆみ治療パーフェクトガイド. 株式会社金芳堂, 京都, 17-38, 2008. から引用
搔痒のメカニズム かゆみの程度
まったくない いくらか かなり 相当 ひどい
DOPPSⅡおよび当院では、約70%の患者がかゆみを訴えていた
透析皮膚掻痒症の実態-新潟県内41施設2474名の調査報告-
(大森ら、2001年)では、透析患者で、72.8%の患者にかゆみの経験があり、
そのうち約75%の患者が毎日掻痒感を訴えていた。
透析皮膚搔痒症の一般的な治療
透析皮膚搔痒症の透析面からの治療介入
1.外用治療
2.内服治療
3.光線療法
1.至適透析の追及 2.エリスロポエチンによる貧血改善 3.カルシウム・リン代謝の適正化 4.透析に用いる薬剤やテープなどに対するアレルギーの関与
飯野則昭, 成田一衛:“透析患者のかゆみの疫学”, 透析療法ネクストⅫ. 医学図書出版株式会社, 東京, 20-33, 2011. から引用
透析皮膚搔痒症の透析面からの治療介入
1.至適透析の追及 2.エリスロポエチンによる貧血改善 3.カルシウム・リン代謝の適正化 4.透析に用いる薬剤やテープなどに対するアレルギーの関与
透析皮膚搔痒症の一般的な治療
1.外用治療
2.内服治療
3.光線療法
至適透析の追及
佐藤隆 :On-lineHDF の臨床効果. 腎と透析 70 別冊HDF療法’11:62-63, 2011 から引用一部改変
表 清浄化透析液使用HDとオンラインHDF: 臨床効果の比較
2013年1月よりコンソールを全台on-lineHDF治療
が可能である多用途透析装置に変更し、愁訴、特にかゆみの推移を観察した。
自己記入形式(家族またはスタッフによる聞き取りも可)
0~4の5段階評価のフェイススケールのアンケート
かゆみを訴える患者割合の推移を観察した。
政金生人 (2011年)「患者視点の新しい透析治療―わかりやすい計画から実際の処方」 より引用 新興医学出版社
かゆみの評価 (愛Pod調査シート)
関節痛、寝つき、熟睡、食欲、イライラ の5項目も検討
HDから30L前希釈オンラインHDFへ変更
各治療における条件比較
HD 30L前希釈
オンラインHDF
QB [mL/min] 234 ±35 238±32
QDtotal [mL/min] 500 500
膜種
FB-U
NV-X
APS-EA
積層型透析器
MFX-S(ニプロ)
膜面積 [m2] 1.83±0.34 1.87 ±0.31
β2-MG除去率 - 75.5 ±5.2
α1-MG除去率 - 23.5 ±5.9
透析液 カーボスターP カーボスターP
HDから30L前希釈オンラインHDFへ変更(71名)
Wilcoxon符号付き順位検定(N.S.)
悪い
良い
まったくない
いくらか
かなり
相当
ひどい
HDから30L前希釈オンラインHDFへ変更(71名)
かゆみの推移 Kruskal-Wallis H 検定 ( N.S. )
30L前希釈オンラインHDF変更
0
20
40
60
80
100
かゆみの変化とβ2-MG&α1-MG除去率
( HDと前希釈オンラインHDF3ヵ月後の比較)
減少
不変 増加 A群(10名)
C群(8名)
B群(24名)
Kruskal-Wallis H 検定 ( N.S. )
30Lから50L前希釈オンラインHDFへ変更
30L 50L
QB [mL/min] 252±25 253±25
QDtotal [mL/min] 500 500
膜種 MFX-S MFX-S
膜面積 [m2] 1.97±0.25 1.98±0.25
β2-MG 除去率 (%) 76.2±4.1 78.0±3.8
α1-MG 除去率 (%) 22.5±4.0 27.5±6.0
透析液 カーボスターP カーボスターP
30Lから50L前希釈オンラインHDFへ変更(36名)
置換液量の変更条件
① 75歳未満 ② ALB 3.5g/dL 以上
③ α1-MG除去率 30% 未満 の3つの条件を満たす患者
**P<0.01 mean±SD Wilcoxon符号付き順位検定
**
**
悪い
良い
まったくない
いくらか
かなり
相当
ひどい
かゆみの推移 Kruskal-Wallis H 検定 ( N.S. )
30Lから50L前希釈オンラインHDFへ変更(36名)
全体割合(%)
前希釈オンラインHDF
N=49
HDから前希釈オンラインHDF変更12ヵ月後の比較(70名)
N=21
α1-MG除去率 30%未満 α1-MG除去率 30% 以上 (%) (%)
愛Pod 2点(中等度)以上のかゆみを訴える割合(%)
*
* P<0.05 Kruskal-Wallis H 検定
減少 不変
増加
かゆみの変化とβ2-MG&α1-MG除去率
( HDと前希釈オンラインHDF12ヵ月後の比較)
A群(6名)
C群(10名)
B群(7名)
Kruskal-Wallis H 検定(N.S.)
50L前希釈オンラインHDFで、QB・膜面積
の増加と膜種変更による20ヵ月間の評価
50L前希釈オンラインHDFで、QB・膜面積の増加と膜種
変更による20カ月間の評価(26名)
**P<0.01 *P<0.05 mean±SD
Wilcoxon符号付き順位検定
MFX-U 変更条件
・65歳未満
・血清β2-MG25mg/L以上
・血清アルブミン3.5g/dL以上
各治療における条件比較
悪い
良い
まったくない
いくらか
かなり
相当
ひどい
Kruskal-Wallis H 検定 ( N.S. ) 全体割合(%)
前希釈オンラインHDF
50L前希釈オンラインHDFで、QB・膜面積の増加と膜種
変更による20カ月間の評価(26名)
かゆみの推移
かゆみの変化とβ2-MG&α1-MG除去率
( 50Lと50L前希釈オンラインHDF20ヵ月後の比較)
減少
不変
増加 A群(8名) B群(9名)
Kruskal-Wallis H 検定 ( N.S. )
(%)
全体割合(%)
Kruskal-Wallis H検定 *P<0.05
* *
50L前希釈オンラインHDF変更20ヵ月後、
かゆみなし群(愛Pod 0点)、かゆみあり群(愛Pod 1~4点)の他愁訴の関係
50L前希釈オンラインHDF施行期間中に除去率を測定
同一条件であった21名の結果 (ニプロ社製ヘモダイアフィルタ MFX-S)
**P<0.01 mean±SD ANOVA(一元配置分散分析法)・多重比較検定
(%)
ヘモダイアフィルタの製品ロットのバラツキが考えられたので、
製造メーカーに品質管理の向上を依頼
50L前希釈オンライン
50L前希釈オンラインHDF施行期間中に除去率を測定
同一条件であった13名の結果
Wilcoxon符号付き順位検定
(%)
・ 50L前希釈オンラインHDF ・ MFX-21S ・ QB=270.8±17.5 mL/min
アルブミンふるい係数の管理幅を狭めたことで製品間のバラツキ
が解消 ( 2014年8月からの製造でLot番号14H21A以降)
ヒスタミン
サブスタンスP
インターロイキン2
乾燥(角質水分量の低下、発汗低下)
痒覚神経の伸長と痒み閾値の低下
中枢におけるかゆみ 脳内の痒み制御メカニズムの異常 オピオイドペプチド
皮膚におけるかゆみ
透析に由来する内因性起痒物質の産生・
蓄積
中分子量物質の蓄積
ヒスタミン遊離物質の産生
無機イオンの蓄積
副甲状腺ホルモンの産生
(二次性副甲状腺機能亢進)
外因刺激に対する痒み感受性の亢進
かゆみメディエーターの過剰産生
かゆみの原因
湿度の異なる時期で皮膚水分量を測定し、かゆみとの関係性を検討した。
段野貴一郎:“痒みの起こり”, 透析室に置きたい かゆみ治療パーフェクトガイド. 株式会社金芳堂, 京都, 17-38, 2008. から引用
皮膚水分計MobileMoisture (Courage+Khazaka
社製)を用いて、68名の患者を対象に6月と12月
で測定を行った。
ベッドに安静臥床で15分後に、非シャント側の
肘関節部の末梢側 5cm下で測定。
発汗は数値に影響するためウェットペーパーで
軽く清拭し、乾燥後測定とした。
測定方法
皮膚水分量の測定
皮膚水分量とかゆみ&スキンケアの関係
**
*
*
wilcoxon符号付き順位検定 *P<0.05 **P<0.01
**
皮膚水分量
皮膚水分量
スキンケアあり スキンケアなし
Kruskal-Wallis H 検定( N.S. )
0 まったくない 1 いくらか 2 かなり 3 相当 4 ひどい
スキンケア有無で6月と12月のかゆみ変化
まとめ
○ HDから30Lさらに50L前希釈オンラインHDFに変更後、
かゆみなしの患者が増加し、愛Pod 2点以上(中等度)の
かゆみがある患者は減少した。
まとめ
○ HDから30Lさらに50L前希釈オンラインHDFに変更後、
かゆみなしの患者が増加し、愛Pod 2点以上(中等度)の
かゆみがある患者は減少した。
○ 50L前希釈オンラインHDFで、QB、膜面積、膜種の変更後、
愛Pod 3点以上のかゆみが強い患者はみられなくなった。
かゆみなしの患者では、寝つき、イライラが無くなった。
まとめ
○ HDから30Lさらに50L前希釈オンラインHDFに変更後、
かゆみなしの患者が増加し、愛Pod 2点以上(中等度)の
かゆみがある患者は減少した。
○ 50L前希釈オンラインHDFで、QB、膜面積、膜種の変更後、
愛Pod 3点以上のかゆみが強い患者はみられなくなった。
かゆみなしの患者では、寝つき、イライラが無くなった。
○ オンラインHDF施行期間中にヘモダイアフィルタの性能の
低下(α1-MG除去率)したが、アルブミンふるい係数の管理
幅を狭めたことで品質が向上し、除去率が安定した。
まとめ
○ HDから30Lさらに50L前希釈オンラインHDFに変更後、
かゆみなしの患者が増加し、愛Pod 2点以上(中等度)の
かゆみがある患者は減少した。
○ 50L前希釈オンラインHDFで、QB、膜面積、膜種の変更後、
愛Pod 3点以上のかゆみが強い患者はみられなくなった。
かゆみなしの患者では、寝つき、イライラが無くなった。
○ オンラインHDF施行期間中にヘモダイアフィルタの性能の
低下(α1-MG除去率)したが、アルブミンふるい係数の管理
幅を狭めたことで品質が向上し、除去率が安定した。
○ 皮膚水分量とかゆみは関連しなかったが、スキンケアを
行うことで皮膚水分量の増加とかゆみが改善した。
考察①
かゆみ改善には、除去率 β2-MG 80%以上、α1-MG 30%以上が望まれる。血流量と置換液量の増加、ポアサイズの大孔径化したヘモダイアフィルタの選択が必要である。
考察①
かゆみ改善には、除去率 β2-MG 80%以上、α1-MG 30%以上が望まれる。血流量と置換液量の増加、ポアサイズの大孔径化したヘモダイアフィルタの選択が必要である。
低分子量蛋白領域の除去率増加(α1-MG)は、ストークス半径
が近いアルブミン漏出量の増大が懸念される。
考察①
かゆみ改善には、除去率 β2-MG 80%以上、α1-MG 30%以上が望まれる。血流量と置換液量の増加、ポアサイズの大孔径化したヘモダイアフィルタの選択が必要である。
品質が安定したヘモダイアフィルタを使用することで、
目標とする除去率にコントロールすることが可能で、
過大なアルブミン漏出を避けることができる。また、
長期の安定した前希釈オンラインHDFが可能である。
低分子量蛋白領域の除去率増加(α1-MG)は、ストークス半径
が近いアルブミン漏出量の増大が懸念される。
考察②
高効率な前希釈オンラインHDFが施行出来ない患者
(栄養状態の低下、高齢者)
他方面からのアプローチが必要
例)内服、 外用、 その他・・・・・
スキンケアの有無でかゆみは変化
スキンケア○ → かゆみが減少
可能な限りの効率を維持しつつ、スキンケアへの介入が有効
結語
前希釈オンラインHDFにおいてβ2-MGとα1-MG
除去率の増加は、かゆみ改善に寄与した。
しかし、栄養状態の低下がみられる患者や高齢
者においては、高効率の前希釈オンラインHDF
の施行は困難であるため、多方面からのアプ
ローチが必要である。