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1010/09/25 MslisTRANSCRIPT
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三田図書館・情報学会 2010年度研究大会 (2010/9/25)
情報検索技術の発展が日本の大学図書館に及ぼした影響
鶴見大学図書館長谷川豊祐
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背景:情報検索関連のトピックMEDLARS DIALOG TOOL-IR 公衆回線 JOIS ICAS 医中誌 通信ソフト NACSIS-IR PubMed NDL-OPAC ・ ・ ・
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背景:利用形態の年代区分1970 年代後半 オンライン 1978 JOIS( 公衆回線 ) 1979 丸善 DIALOG
1980 紀伊國屋書店 DIALOG (*)
1986 NACSIS-IR ,医中誌 (JST から )1980 年代後半 CD-ROM
1988 Ovid 社 MEDLINE CD-ROM 1991 SilverPlatter 社 MEDLINE CD-ROM 1992 医中誌 CD-ROM 1993 Ovid 社 MEDLINE 学内 LAN 利用1990 年代後半 インターネット 1996 JOIS インターネット接続 1997 PubMed 2000 医中誌 Web サービス 2002 NDL-OPAC による雑誌記事索引
3)<連載 > オンライン情報検索, * ) 三浦勲 . 学術専門情報流通と書店の役割 . 実践女子短期大学紀要 . 2006, no.27, p.7. ほか
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背景:年表より特徴を整理
1970 年代後半 オンラインでの利用 従量課金 ( 従量制 ) で図書館員が代行検索 冊子より検索機能が向上
1990 年代後半 インターネットでの利用 データ更新の即時性,操作性が向上
1980年代後半 CD-ROMでの利用 固定料金 ( 定額制 ) で利用者自身が検索 学内 LANによる非来館・複数利用が実現
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背景:情報検索関連の年間論文数
0
50
100
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200
250
300
1970197219741976197819801982198419861988199019921994199619982000200220042006
件
7) 図書館情報学研究文献要覧
1970-2006( 分類:情報検索,データベース,索引法 ) : 4,339 件1970 後半以降増加傾
向増加継続中
1999-2002テキスト検索音声検索動画検索検索方法検索理論サーチエンジ
ン
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背景:情報検索関連論文の内容
・論文の内容 - 製品・サービス紹介 - 導入・運用事例 - 情報検索の解説
・製品やサービスの横断的な論考は少ない・大学図書館の業務面における長いスパンの動向
に関する論考も少ない
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目的
・情報検索技術とデータベースの発展を整理
・情報検索技術の発展が大学図書館に及ぼした 影響を分析
- 先行研究:研究面と業者からの供給面 1)-4)
- 今回調査:大学図書館の業務,サービス面
1) 上田, 2) 三浦, 3) < 連載 > オンライン情報検索, 4) 情報科学技術協会編
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方法
・文献調査
・契約実績の多い 2 社の社員への聞き取り調査 - 製作: NPO医学中央雑誌刊行会;医中誌Web 2010年 8 月 21 日 ( 営業 26 年間 )
- 提供:ユサコ ( 株 );MEDLINEなど 2010年 9 月 1 日 (システム・営業 25年間 )
- 医学系は情報検索に積極的な分野 - 実績が多く,全体動向を外部の視点で把握 発展の流れ,トピック,図書館側の対応を 広範囲に把握できる
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結果:影響が大きいと考えられる 3点で整理
・影響 -1 :利用者による検索への転換
・影響 -2 :インターネット移行の影響 - 経費と作業量の軽減
- サービスの高機能化
・影響 -3 :購入経費の共通経費化
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影響 -1:利用者による検索への転換 従量課金 = 電話回線料 ( 時間 ) + DB使用料 ( 時間 ) + 出力料 ( 件数 )
・従量課金制から固定料金制 ( 年間契約 ) へ - 接続時間と出力件数における制約からの解放
代行検索から利用者自身による検索へ転換 - 検索結果の評価,修正もその場で自分で
・システムによるユーザーへの検索支援 8) ; PubMed
- シソーラスや内部辞書によるマッピング 9) ;医中
誌
「哺乳類」の指定で「人,犬,猫」も含めた検索
・検索における図書館員の仲介機能が希薄化8) 市古, 9) 西林 , p.11.
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影響 -2:インターネット移行の影響 (1)
・オンラインの公衆回線からインターネットに簡素化 - 料金,電話回線,公衆回線の機器
・ CD-ROM関連機器の発展的解消 聞き取り )
- 解消は,インターネット接続の DBのみ - 複数枚となる CD-ROMの煩雑さが解消 - データ更新作業の解消 ( ディスク交換, HDへの読み込み )
・情報検索サービスに関わる経費と作業量の軽減 聞き取り )
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例:MEDLINEの急速な変化 聞き取り )
・ 1987: CD-ROMスタンドアローン・ 1991:複数台 PCから CD-ROMを共有した検索・ 1993:ハードディスクへのダウンロード Unixサーバーで学内 LAN接続 全収録年の一括検索 図書館外の PCからの検索も実現・ 1997: PubMed公開・ 2003:MEDLINEからの移行が完了 契約数の聞き取り )
・急速なインターネット化に図書館は対応した
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CD-ROMからインターネット
・ OS のヴァージョンアップ未対応,インターネット無料公開
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影響 -2:インターネット移行の影響 (2)
・図書館への来館が不要・ PubMed *) ,雑誌記事索引 15) の無料化・フルテキストとのリンク機能など
情報検索サービスの高機能化
・コスト削減で自前のサービスが実現 聞き取り )
・製作者による利用動向の把握
製作者自らのシステム提供
* ) 小田中徹也 . Free MEDLINEへの招待 . 病院図書室 . 1997, 17(4), p.122-134., 15 )国立国会図書館逐次刊行物部
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影響 -3:購入経費の共通経費化
・電子資料における蔵書構築と予算執行への影響 11)
- 学部横断的に利用される電子資料,高額資料 - 図書予算の学部別配分から図書館一括管理
・図書予算運用の効率化,合理化,予算枠拡大 - 共通経費化の現状 12) 国立大学 81.4% 定着 公立大学 31.6%,私立大学 30.4% 進行中
11) 松本, 12) 学術情報基盤実態調査報告 . 2009年度
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業務に即した考察
影響・利用者による検索へ転換
・インターネット移行の影響
- サービスの高機能化
- 経費と作業量の軽減
・購入経費の共通経費化
考察・サービス面
- サービス方針の変化
- サービス向上
- 仲介機能の希薄化
・管理面
- 業務の複雑さの増加
・大学図書館の役割
- 改善への図書館の関与を期
待
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考察 -a:サービス面
・図書館,業者:一貫したエンドユーザー指向
・利用者自身による検索・情報検索と文献入手の業務的分離を一本化 - 図書館は技術の取込によるサービスの展開 - 業者システムは支援機能の強化
・サービス向上と,サービス方針の変化 人員の再配分:考業務担当者の全館員に占める割合 73 年 3.7%, 02 年 5.7% ( 増加ピーク ) , 08 年 4.9% (減少継続 )
12) 学術情報基盤実態調査報告 . 1974 年度 -2009 年度
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1966
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1970
1972
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1976
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1986
1988
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1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
管理職
庶務会計
×情報処理
受入
閲覧
◆ 参考
○複写
- その他
事務全般
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人員の再配分は今回は解明できず,今後の詳細な分析が必要
12) 学術情報基盤実態調査報告 . 1967 年度 -2009年度
人員の再配分は今回は解明できず,今後の詳細な分析が必要
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考察 -b:管理面 (1)
CD-ROM:ネットワーク << スタンドアローン 併存
12) 学術情報基盤実態調査報告 . 1997 年度 -2009 年度
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
300,000
1996
19971998
1999
20002001
2002
20032004
2005
20062007
2008
( 262,068 )スタンドアローン 全大学 点
ネットワーク( 4,197 )同 点
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考察 -b:管理面 (2)
・インターネットでのサービス:少品種で多量の利用 * PubMed,医中誌, NDL-OPAC(雑誌記事索引 ) - 検索システムの完成度が高い - 利用者自身による検索へ完全移行
単純に,契約更新するだけの業務へ
・ CD-ROMスタンドアローン:多品種で少量の利用 - 個々の製品への技術的対応が増加する - 利用者からのフィードバックも評価も少ない
累積する CD-ROMにより業務の複雑さも増加
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考察 -c:大学図書館の役割 (1)
・検索, IT,資料,経営に関するスキルが必要
- 大学図書館における課題として 12)
「専門性を有する人材の養成,確保」 48.0% (634 館 /1,437 館 ) 「資料収蔵スペース狭隘化の解消」 45.0% (587 館 / 1,437 館 ) を上回ってトップ
・検索機会の消滅 検索スキルの向上が望めない
・図書館情報学関係の雑誌に接する機会も少ない 次ページの表
12) 学術情報基盤実態調査報告 . 2009年度
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関連論文の掲載誌と所蔵状況
雑誌名1 期('70-'81)
2 期('82-'90)
3 期('91-'98)
4 期('99-'06)
総計
継続所蔵館数
所蔵率(%)734校
情報の科学と技術( 含む : ドクメンテーション研究 )
82 131 263 157 653 467 64%
情報管理 104 138 111 98 451 336 46%オンライン検索 145 50 49 244 79 11%医学図書館 26 38 40 64 168 269 37%薬学図書館 22 33 44 65 164 159 22%専門図書館 13 27 32 26 98 177 24%
7) 図書館情報学研究文献要
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考察 -c:大学図書館の役割 (2)
・ DBの内容や検索システムへの,大学図書館から の言及は少ない 13)-15)
-『雑誌記事索引』の冊子体では,記事は分類によって配列され, 記事には分類が付与されていた。オンライン検索に移行して収録 対象雑誌が拡大したが,記事への分類付与は引き継がれなかった
DBの内容や検索システムに関与しない 聞き取り ); そうとばかりも言えない
・検索について利用者から問題が指摘されない 聞き取り )
・改善に向けた図書館の関与が期待される 聞き取り ) ;
- 「声なき声をきく」「存在を知らない機能:全件詳細表示」
13) 塩田, 14) 登坂, 15) 国立国会図書館逐次刊行物部
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今後の課題:技術動向から大学図書館全体を把握
・大学図書館全般に年表の年代区分を適用
・技術動向が学術情報流通に大きく影響 - 情報検索の技術 - 特に,インターネットが決定的
・他に,大学図書館の変化を説明する項目
- サービス方針の変化,人員の再配分
- 予算管理,情報機器の管理・運用
- 大学図書館の役割の再認識