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Aanderaa 酸素オプトード データクオリティを高く維持するためのベストプラクティス このアプリケーション・ノートでは、酸素オプトードのフィールド調整方法をご紹介しま す。 オプトードの12点調整を正確に実行できれば、工場校正とほぼ同様の精度を確保できま す。これらのプロセスを踏むことで、エンドユーザーは高精度で、文書化されたデータクオ リティを維持可能です。 以下2つの方法を提案します。 気泡水の飽和校正調整: スェーデンAquanetプロジェクトの例では、メソコスム研究のた め、アクアオプトード(モデル4531)100台がフィールドステーション5か所で5か月間使用 されました。 Aanderaaオプトードは安定性があり、時間の経過に伴って改善します。Foil(DO膜)は機械 的にダメージを受けない限り交換しないでください。保管・使用開始から数か月間 は、Foil(DO膜)の成熟過程で測定値が数%下がります。センサー1000台中、最大成熟に より誘発されたドリフトは、工場外で早期成熟したWTW Foil(DO膜) (モデル4835, 4531, 5730 Steinsvik) では8%、工場内で早期成熟したPSt3 Foil(DO膜)(モデル4330, 4831, 5331hadal)では6%でした。フィールド観測中、また次回設置までの期間、ユーザー は1点空気飽和調整、標準サンプル(例えば水、Winkler滴定)を使用してのセンサー調整、 更に(又は)平行して、良く校正されたセンサーを使用する等で、後調整をする可能性があ ります。調整が正しく実行されれば、マルチポイント校正センサーで約1%の絶対精度(モ デル:4330, 4831, 5331, 5730)2点校正(モデル:4835, 4531)で3 %の 絶対精度という結果 が出るはずです。以下で工場校正についての詳細情報をご参照ください。ドリフトは時間の 経過と共に減少し、翌年からは1-2%を上回ることはないでしょう。その後は、Foil(DO 膜)が機械的に損傷していない限り、毎年0.5%以下となるはずです飽和調整: Aquanet実験1年目が経過した頃、測定サイトの一か所からオプトード16台を引 き揚げ、気泡入りの淡水槽に浸し、数日間記録を続けました(図1)。水族館では、活動状 況や換気扇等によって酸素レベルが変化する室内やラボではなく、開放された外気からポン プで空気を取り込むことが大切です。 オプトードが飽和水に浸っていることを 確認するには、水から取り出して1-2分水 面の上でホールドします。こうすると、 飽和度に変化が見られないはずです。 図1:観測後の校正チェックのため、 気泡入り淡水に浸したオプトード16台

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Page 1: Handbook of best practices - xylem-analytics.jp · リティを維持可能です。 ... Pre ssu re Wate r (kPa) 2014 2015 2016 Field Qualit y Contro l O 2: +9 %; No d rift, No h

Aanderaa 酸素オプトード

データクオリティを高く維持するためのベストプラクティス

このアプリケーション・ノートでは、酸素オプトードのフィールド調整方法をご紹介します。

オプトードの12点調整を正確に実行できれば、工場校正とほぼ同様の精度を確保できます。これらのプロセスを踏むことで、エンドユーザーは高精度で、文書化されたデータクオリティを維持可能です。

以下2つの方法を提案します。

気泡水の飽和校正調整: スェーデンAquanetプロジェクトの例では、メソコスム研究のため、アクアオプトード(モデル4531)100台がフィールドステーション5か所で5か月間使用されました。

Aanderaaオプトードは安定性があり、時間の経過に伴って改善します。Foil(DO膜)は機械的にダメージを受けない限り交換しないでください。保管・使用開始から数か月間は、Foil(DO膜)の成熟過程で測定値が数%下がります。センサー1000台中、最大成熟により誘発されたドリフトは、工場外で早期成熟したWTW Foil(DO膜) (モデル4835, 4531, 5730 Steinsvik) では8%、工場内で早期成熟したPSt3 Foil(DO膜)(モデル4330, 4831, 5331hadal)では6%でした。フィールド観測中、また次回設置までの期間、ユーザーは1点空気飽和調整、標準サンプル(例えば水、Winkler滴定)を使用してのセンサー調整、更に(又は)平行して、良く校正されたセンサーを使用する等で、後調整をする可能性があります。調整が正しく実行されれば、マルチポイント校正センサーで約1%の絶対精度(モデル:4330, 4831, 5331, 5730)2点校正(モデル:4835, 4531)で3 %の 絶対精度という結果が出るはずです。以下で工場校正についての詳細情報をご参照ください。ドリフトは時間の経過と共に減少し、翌年からは1-2%を上回ることはないでしょう。その後は、Foil(DO膜)が機械的に損傷していない限り、毎年0.5%以下となるはずです。

飽和調整: Aquanet実験1年目が経過した頃、測定サイトの一か所からオプトード16台を引き揚げ、気泡入りの淡水槽に浸し、数日間記録を続けました(図1)。水族館では、活動状況や換気扇等によって酸素レベルが変化する室内やラボではなく、開放された外気からポンプで空気を取り込むことが大切です。

オプトードが飽和水に浸っていることを確認するには、水から取り出して1-2分水面の上でホールドします。こうすると、飽和度に変化が見られないはずです。

図1:観測後の校正チェックのため、気泡入り淡水に浸したオプトード16台

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図2:気泡入り淡水に浸したオプトード16台から測定された飽和度(下の表)。空気圧(青線)の変化と関連空気飽和度の計算値は、8日間中の海抜(赤線)に合わせて補正されています。空気圧が上昇する際は、下降する際と比較して0.1-0.5%の変化が見られることが分かります。これは、水槽中の水塊の順応遅延が理由です。センサー周りの水がより細かく、良く撹拌され気泡を多く含むと、空気圧と温度変化に伴い、より速く水が平衡状態となります。

オプトード16台は4.1-6.5%低い測定値を読み込んだ為、最高値を表示したセンサーには1.041倍、最低値を表示したセンサーには1.065倍を掛けて各台個別に補正されます。

空気中の飽和校正調整:上記でご提案した方法は高クオリティの1点調整が可能ですが、かなり時間が掛かります。測定期間中であれば、より簡単なフィールド校正方法として、アルゴフロートとグライダー(Bittig & Körtzinger, 2014; Johnson et al., 2015; Nicholson & Feen, 2017; Bittig et al., 2018)を使用した空中校正が使用可能ですが、オプトードFoil(DO膜)が濡れておらず、金属箔の温度が温度センサーと違う場合、低クオリティとなる場合があります。

フィールド観測の前後、外気でオプトードを数時間ロギングさせ、平均空気圧を記録します。

湿度が高く、温度が低めで安定している夜中に測定することが望ましいと言えます。

海面の標準的空気圧 (101.3 kPa = 1 Atm = 14.69 psi) では、センサーは濡れた状態で100%、完全に乾いた状態で102%、空気圧100 kPaでは、1.3 %低く表示されるはずです。

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下記の表は、深度1250mの地中海(E2-M3A観測所)にて継続観測しているSeaGuard(流向流速、係留、粒子、酸素、温度、塩分、深度測定機器)からのデータです。機器は各観測の前後に空中でロギングしました(図3)。酸素オプトードが9%低い測定値を表示しましたが、4年間の設置期間一度もドリフトしなかったことが判明しました。更に、深海から引き上げた深海規格圧力センサーに記録されたデータから、設置間に空気圧を追跡した結果、ドリフトがなかったことを示しました。

図3: 機器を空中でロギングし、シンプルなフィールド・クオリティ制御。SeaGuardに取り付けた圧力センサーと酸素オプトードのクオリティ制御を示しています。

ゼロ読み取り調整: 低酸素環境でセンサー精度を維持する為にはゼロ校正チェックをしますが、通常ドリフトは最小限です。

それからセンサーを、読取り値が0%近くで安定するまで、酸素ゼロ環境に浸します。プラスチックセンサーと容器は低い値になるまで時間がかかります。プラスチックは周囲を汚染する可能性のある酸素を、吸収もしくは溶解するためです。使用可能なメソッドとして他に、センサーをビニール袋に入れてN2ガスを注入する、化学的に酸素を除去(例えば亜硫酸ナトリウム、Na2SO3を使用)したゼロ酸素水に浸す、生物学的(酵母と砂糖を人肌温度の水に入れ酸素を消費する)方法があります。煮沸水またはN2ガス入りの気泡水で低酸素水を作ることは出来ますが、酸素濃度が絶対ゼロかどうか確認するのは難しいでしょう。

もし0%酸素チェックが出来たら、この補正を追加または差し引きます。もしセンサーがN2ガス/無酸素水で +0.2 μMと読み込んだ場合、-0.2 μMをデータから差し引きます。

O2 saturation (%) 91.5 % in air 89 % in air

Pressure Water (kPa)

2014 2015 2016

Field Quality Control O2: +9 %; No drift, No hysteresis

Pressure Air (kPa)

1006 mbar in air 999 mbar in air 1012 mbar in air No air data

Field Quality Control Pressure: No drift, No hysteresis

2017

No air data 91 % in air

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端末エミュレータ・ソフトウェアプログラムが使用された場合には(説明は下記参照)計算を容易にするため、Excelシートからテキスト文字列をセンサーに転送します。

センサー測定値の修正: 測定値の修正方法は2つあります。: A. 外部: 補正後に修正係数を適用する、もしくは取り込んだデータをログ・表示するソフトウェアでリアルタイムに修正B. 内部: センサーをPCに連続 (RS232)接続し、係数を変更。係数は、専用のAanderaaソフトウェア(RT collector)か、端末エミュレータ・ソフトウェアプログラム(例:Tera Term,HyperTerminal)からコマンドを送信して変更します。

推奨: 長期設置の前後で、酸素オプトードの空気飽和クオリティチェックをすることが推奨されます。

時間の経過に伴うセンサー成熟度の記録をつけてください。長期観測の前後で、酸素オプトードの空気飽和クオリティチェックをすることが推奨されます。センサーが乾燥した状態で保管された場合、Foil(DO膜)が乾燥し、測定値が1-2 %低くなります。

その場合はセンサーを水に浸し、次回のフィールド測定まで最低24時間はそのままにします。保管温度は重要ではありません。

防汚: 生態防汚は浅場の沿岸域の長期モニタリングで大きな妨げとなります。Aanderaa セヱサーの防汚保護には様々なソリューションが成功裏に適用されてきました。

1. Zebratech ワイパーはAanderaa の濁度、酸素、pCO2センサー及びオプトード(図4)を保護してきました。SeaGuard/SeaGuardII/SmartGuardでは、アナログチャンネルのうち一つを、ワイパーまたは紫外線LED作動時に使用できます。『センサーのウォーミングアップ時間』は、ワイパーとLEDの電源を入れるのに適しています。遅延時間を設定することで、測定完了時にワイパーとセンサーライトが作動しないようにします。

2.銅製テープ(例:3M 1181)または銅 ニッケル(長寿命)が簡単な防汚ソリューションとなります(図4)。テープを貼る際には、テープと他の金属パーツが接触しないようにしてください。接触すると、防汚機能を失います。

3. 紫外線LEDと銅製テープ(図4)をセットで使用することで、沿岸観測所での長期(年単位)設置が効率的になります。紫外線LEDの短所は、電力消費量が高めという点です。詳細は弊社にお問い合わせください。

4.IFREMER(フランス海洋開発研究所)が指揮した複数のアプリケーションで、Aanderaa 及び他メーカーのセンサーに電子塩素化が成功裏に適用されました。

5.テスト継続中:Aanderaaでは継続して、新しい防汚方法を探したり、組み合わせをテストしています。ファイバー不織布、馬巣織、さめ皮などの無毒な方法に焦点が当てられています。

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図 4 左端: pCO2 オプトードを防汚から保護。ワイパーは SeaGuard アナログ・ポート 4つのうち 1 つを使って作動させます。左から 2番目:生物付着率が高いエリアで、多項目測定機器に部分的に銅製テープを貼って測定2か月後。銅製テープは1年ほど使用可能で、何も付着しません。右から2番目:濁度と酸素オプトード、それぞれ1か月、2か月間正確に測定を完了しました。右端:SeaGuardの電導度と酸素オプトードは、活発期に紫外線LEDでしっかり生態防汚保護されました。

参照:

Bittig H. & A. Körtzinger (2015) Tackling Oxygen Optode Drift: Near-Surface andIn-Air Oxygen Optode Measurements on a Float Provide an Accurate in SituReference. Journal of Atmospheric and Oceanic Technology, 32, 1536-1543.

Bittig H.C., A. Körtzinger, C. Neill, E. van Ooijen, J.N. Plant, J. Hahn, K.S.Johnson, B. Yang & S.R. Emerson (2017) Oxygen Optode Sensors: Principle,Characterization, Calibration and Application in the Ocean. Frontiers in MarineScience, in press.

Johnson K.S, J.N. Plant, S. Riser & D. Gilbert (2015) Air Oxygen Calibration ofOxygen Optodes on a Profiling Float Array. Journal of Atmospheric and OceanicTechnology, 32, 2160-2172.

Nicholson D.P. & M.L. Feen (2017) Air calibration of an oxygen optode on anunderwater glider. 15.5, 495–502.

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