ロシア北極圏のエネルギー資源 開発...13石油・天然ガスレビュー jogmec k y m...

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11 石油・天然ガスレビュー アナリシス ロシア北極圏のエネルギー資源 開発 JOGMEC 調査部 本村 眞澄 2 0 1 4 年は、ロシア北極海で大規模な油田の発見のあった年として、石油関係者の間で長く記憶され ることになるだろう。Rosneft と ExxonMobil がカラ(Kara)海で掘削した 1 坑の井戸が 1 0 億バレルの石 油の賦存を確認したのである。北極の氷の海に新たな石油地帯が出現した。 ロシアにおける大陸棚開発と言えば、北極海、オホーツク海、黒海での油ガス田開発を指す。このう ち、黒海の北に隣接するアゾフ(Azov)海のガス田開発やオホーツク海のサハリン大陸棚での油ガス田 は歴史があり、既に一定の成果を上げてきた。そして、次なる焦点は北極海に移りつつあった。 2014年のウクライナ問題に起因する対露制裁で、北極海、大水深、シェール技術が禁輸の対象となっ た。ロシアの北極海開発は技術的に大きな障壁を抱えることになり、更に同年夏から始まった油価の下 落は、ロシアのみならずアラスカ沖など米国での取り組みにも影を投げかけた。大規模な油田開発投資 は現状では取り組める状況にないが、広域の評価作業のような地道な仕事は、浮き沈みの激しいビジネ スの世界からは一線を画して、粛々と続けられなくてはならないだろう。再び、油価が上昇してから、 慌てて評価活動を再開するような近視眼的な取り組みは避けるべきで、その時に備えて評価作業をしっ かりと積み上げておくことが肝要である。そして、ロシアの当局もそのような態勢で臨もうとしている。 一方、アラスカ沖チャクチ(Chukchi)海で探鉱井を掘削していたShellは、大きな成果を上げられず、 2015年9月に撤退を表明した *1 。同様に、Statoilも 11 月にチャクチ海から撤退を決めた *2 。早晩、探 鉱事業を展開していたConocoPhillipsも撤退に踏み切ると見られている。しかし、このような動きと、 ロシア側の北極海への取り組みとを混同してはならないと思われる。チャクチ海からの撤退は、同地域 が基本的にガスの傾向が強く、北米大陸のガス市場の状況から見て、当面は事業化の見込みが立たない ことによる。一方、ロシアのカラ海では大規模な石油の賦存が確認されており、油価の回復とともに事 業化が可能となるものである。 以下、最近までのロシアを中心とする北極圏開発の成果と、今後の展望に関して述べる。 じめに 1. ロシア北極海での成果 (1)カラ海での試掘 2014年は、北極海の開発で大きな成果を上げた年で あった。同年 8 月 9 日にカラ海で、Rosneft と ExxonMobil によって掘削が開始された Universitetskaya-1 号井は、9 月 1 2 日に米政府の発表した制裁により、掘削の停止を余 儀なくされ、19日には作業が停止した。しかし、2週間 ほど経過して、石油発見の噂が流れ出し、同月末には Rosneftから、北極圏最大となる油田が発見され、ポベ ダ(Pobeda)油田と名付けられたとの発表があった。こ れは、北極圏の全ての資源ポテンシャルの高さを示すも のではないが、少なくともカラ海が第一級の石油地帯で ある可能性を示すものであった。 Rosneftが自らのウェブサイトで発表した内容は以下 のとおりである。 Rosneftは、世界最北端に位置する石油探査井である Universitetskaya-1号井での掘削を成功裡に完了した。 掘削の結果、カラ海の東Prinovozemelsky-1鉱区におい

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Page 1: ロシア北極圏のエネルギー資源 開発...13石油・天然ガスレビュー JOGMEC K Y M C ロシア北極圏のエネルギー資源開発 石油が1億トン(約7.3億バレル)超である。これは、東

11 石油・天然ガスレビュー

JOGMEC

K Y M C

アナリシス

ロシア北極圏のエネルギー資源開発

JOGMEC調査部 本村 眞澄

 2014年は、ロシア北極海で大規模な油田の発見のあった年として、石油関係者の間で長く記憶されることになるだろう。RosneftとExxonMobilがカラ(Kara)海で掘削した1坑の井戸が10億バレルの石油の賦存を確認したのである。北極の氷の海に新たな石油地帯が出現した。 ロシアにおける大陸棚開発と言えば、北極海、オホーツク海、黒海での油ガス田開発を指す。このうち、黒海の北に隣接するアゾフ(Azov)海のガス田開発やオホーツク海のサハリン大陸棚での油ガス田は歴史があり、既に一定の成果を上げてきた。そして、次なる焦点は北極海に移りつつあった。 2014年のウクライナ問題に起因する対露制裁で、北極海、大水深、シェール技術が禁輸の対象となった。ロシアの北極海開発は技術的に大きな障壁を抱えることになり、更に同年夏から始まった油価の下落は、ロシアのみならずアラスカ沖など米国での取り組みにも影を投げかけた。大規模な油田開発投資は現状では取り組める状況にないが、広域の評価作業のような地道な仕事は、浮き沈みの激しいビジネスの世界からは一線を画して、粛々と続けられなくてはならないだろう。再び、油価が上昇してから、慌てて評価活動を再開するような近視眼的な取り組みは避けるべきで、その時に備えて評価作業をしっかりと積み上げておくことが肝要である。そして、ロシアの当局もそのような態勢で臨もうとしている。 一方、アラスカ沖チャクチ(Chukchi)海で探鉱井を掘削していたShellは、大きな成果を上げられず、2015年9月に撤退を表明した*1。同様に、Statoilも11月にチャクチ海から撤退を決めた*2。早晩、探鉱事業を展開していたConocoPhillipsも撤退に踏み切ると見られている。しかし、このような動きと、ロシア側の北極海への取り組みとを混同してはならないと思われる。チャクチ海からの撤退は、同地域が基本的にガスの傾向が強く、北米大陸のガス市場の状況から見て、当面は事業化の見込みが立たないことによる。一方、ロシアのカラ海では大規模な石油の賦存が確認されており、油価の回復とともに事業化が可能となるものである。 以下、最近までのロシアを中心とする北極圏開発の成果と、今後の展望に関して述べる。

はじめに

1. ロシア北極海での成果

(1)カラ海での試掘

 2014年は、北極海の開発で大きな成果を上げた年であった。同年8月9日にカラ海で、RosneftとExxonMobilによって掘削が開始されたUniversitetskaya-1号井は、9月12日に米政府の発表した制裁により、掘削の停止を余儀なくされ、19日には作業が停止した。しかし、2週間ほど経過して、石油発見の噂が流れ出し、同月末にはRosneftから、北極圏最大となる油田が発見され、ポベダ(Pobeda)油田と名付けられたとの発表があった。こ

れは、北極圏の全ての資源ポテンシャルの高さを示すものではないが、少なくともカラ海が第一級の石油地帯である可能性を示すものであった。 Rosneftが自らのウェブサイトで発表した内容は以下のとおりである。

 Rosneftは、世界最北端に位置する石油探査井であるUniversitetskaya-1号井での掘削を成功裡に完了した。掘削の結果、カラ海の東Prinovozemelsky-1鉱区におい

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Page 2: ロシア北極圏のエネルギー資源 開発...13石油・天然ガスレビュー JOGMEC K Y M C ロシア北極圏のエネルギー資源開発 石油が1億トン(約7.3億バレル)超である。これは、東

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JOGMEC

K Y M C

アナリシス

て石油を発見した。掘削は、全ての技術的・環境保全的な基準と要件を遵

じゅんしゅ

守しつつ、1カ月半という記録的な速さで行われた。掘削地点での水深は81m、垂直坑井の深度は2,113m。坑井は開放水域の緯度74度、ロシア本土から250km離れた沖合の地点で掘削された。今回の掘削により、岩石のサンプル採取、試

錐すい

(深度600mで直径8.5インチ〈22cm〉の坑)の掘削、および水平掘削のサンプルの採取が行われた。専門家らは膨大な量の新しい地質学的データを取得できた。当該データを分析した後、鉱床の資源基盤に関する最終的な評価が可能となるであろう。現在、地質データの解析を行っており、油田の開発モデルを作成しているところである。

 また、RosneftのIgor Sechin社長は、掘削の終了を祝う式典で以下のように述べた。 「新しいカラ海の産油地域で、最初の石油・ガスコン

デンセート鉱床を発見したことを公表する。分析により、シベリアの軽質原油に匹敵する驚くべき軽質油のサンプルが取得できた。資源基盤評価では、ガスが3,380億㎥、

ExxonMobilが2014年8月9日に掘削を開始したEPNZ(East Prinovozemelsky)-1鉱区の位置図1

出所:JOGMEC 作成

Lomonosov RidgeLomonosov Ridge

Shelf M

argin

Shelf M

argin

NordStreamNordStreamNorthernLights

NorthernLights

YamalE

urop

e

YamalE

urop

e

LNG(Working)LNG(Planning)RosneftGazprom

KARA SEA

LAPTEV SEA

BARENTS SEA

MurmanskMurmansk

7319/12 鉱区7319/12 鉱区

Vyborg

Severo KildinskSevero Kildinsk

ShtokmanShtokman

PrirazlomnoyePrirazlomnoye

Varandey-moreVarandey-more

Medyn-moreMedyn-more

SnøhvitSnøhvitRusanovRusanov

LeningradLeningrad

BovanenkovBovanenkov

MalyginskoyeMalyginskoye

Tota-YakninskoyeTota-YakninskoyeAntipayutinskoyeAntipayutinskoye

SemakovskoyeSemakovskoye

KruzensternKruzenstern

KharasaveyKharasavey

Severo TambeySevero TambeyZapadono TambeyZapadono TambeyYuzhnoTambeyYuzhnoTambey

YamburgYamburgNovoportNovoport

UrengoyUrengoyMedvezhyeMedvezhye

ZapolyarnoyeZapolyarnoye

Greenland

Svalbard

Severnaya Zemlya

Nova

ya Ze

mlya

Novosibirskiye Ostrova

Franz Josef Land

200Km

Russ

ian B

ound

ary C

laim

Russ

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laim

Norw

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Boun

dary

Clai

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Norw

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Boun

dary

Clai

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Murmansk(Belokamenka)

Murmansk(Belokamenka)

EPNZ-2EPNZ-2

EPNZ-3EPNZ-3

EPNZ-1EPNZ-1Tsentralno-Barentyevsky(Eni)

Tsentralno-Barentyevsky(Eni)

Perseevsky(Statoil)

Perseevsky(Statoil)

写1 カラ海でのUniversitetskaya-1号井の掘削状況

出所:Rosneft ウェブサイト

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13 石油・天然ガスレビュー

JOGMEC

K Y M C

ロシア北極圏のエネルギー資源開発

石油が1億トン(約7.3億バレル)超である。これは、東Prinovozemelsky-1ライセンス鉱区(カラ海)だけの評価である。全く新しい海洋鉱床での最初の探鉱掘削の結果としては、驚異的なものと言える。この成果は、わが社の友人でありパートナーでもあるExxonMobil、Nord Atlant ic Dri l l ing、Schlumberger、Hal l iburton、Weatherford、Baker Hughes、Trendsetter、FMC Technologiesの専門家とともに勝ち取ったものである。われわれはこの油田を〈Pobeda(勝利)〉と名付ける」*3。

 非常に高揚した気分が伝わってくるスピーチであるが、これまでの極地での石油ガス開発の歴史や、実証されたカラ海の資源ポテンシャルを考え合わせると、十分にうなずけるものがある。

(2)カラ海の探鉱の歴史と石油鉱床への期待

 石油分野の人間がカラ海にこれだけの思いを寄せるのにはわけがあった。この海域では、ソ連時代の末期、Gazpromが 探 鉱 に 当 っ て い た。 こ こ で、 ル サ ノ フ

(Rusanov)とレニングラード(Leningrad)の二つの巨大ガス田を発見している。このガス埋蔵量は公表されていないが、バレンツ海のShtokman(Shtokman)ガス田にほぼ匹敵すると言われる。 このすぐ南にはヤマル半島があり、1971年にはこの地域最大のボワネンコフ(Bovanenkov)ガス田(埋蔵量171.5Tcf〈兆立法フィート〉)、1974年にはハラサベイ

(Kharasavey)ガス田が、Gazpromの前身であるガス工業省によって発見されており、ガスの賦存する地帯と見なされていた。ただし、半島を北北西-南南東に走る背斜軸に沿って、多くのガス田が成立していたが、そのうち最も南西にあり、オビ(Ob)湾に面しているノボポルト(Novoport)ガス田(後述)に関しては、1980年代に入り、深掘りを行うことにより、ガス層の下位に油層が分布していることが確認された。 すなわち、これまでガス地帯と解されていたヤマル半島とカラ海において、より深い層準で油層が存在することが予見されるようになった。 地質学的な議論としては、W.C. Pusey(1973)が世界の主要油田地帯における油田成立の条件を集積して提唱した「石油ウィンドウ」の概念が知られている(図3)。これは、65℃~ 160℃の間を指し、深度と地温勾配を縦横の軸に配して表示したもので、これに挟まれるウィンドウ域で石油が生成するというものである。この概念は、根源岩に関する地化学的な分析もなく、生成石油の移動の観点が欠けているなど、今日の石油地化学から見るとかなり単純化されたもので、近年はあまり言及されることはないが、世界の油田地帯を比較できる利点があることから、ここで引用しておく。 西シベリア主部に分布する油田は、下部白亜系のネオコム統(Neocomian)の砂岩層に形成され、図3の「石油ウィンドウ」に収まる。しかし、西シベリアの北部においては、数多くの巨大ガス田が分布し、ロシアの天然ガス

ポべダ(Pobeda)油田の位置図2

   EPNZ-2

EPNZ-3

EPNZ-1

Pobeda

Universitetskaya-1

Rusanov

Leningrad

BovanenkovKruzenstern

Kharasavey

Yamal Peninsula

Novaya Zemlya

Kara Sea

出所:諸報道を基に JOGMEC 作成

「石油ウィンドウ」の概念図。西シベリアのガスが生物起源ガスであることを示す* 4図3

出所:W.C. Pusey(1973)に加筆

0

1,500

3,000

4,500

6,000

7,500

9,0001 2 4 6 8 10

地温勾配(℃/100m)

深度(m)

生物起源ガス

石油

熱分解性ガス

1:西シベリアの油ガス田2:ラマル油田(南米)3:エコフィスク油田(北海)4:ガワール油田(中東)5:ウィルミントン油田(北米)6:ミナス油田(スマトラ)7:南阿賀油田(日本)8:八橋油田(日本)

160℃

65℃

1

1

2

22

34

5 6

7

8

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JOGMEC

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アナリシス

埋蔵量の80%が集まっているとされる。これらのガス層はより上位の上部白亜系のセノマン統(Cenomanian)の砂岩層に形成されたものであるが、図3に戻って見ると、これらは生物起源(biogenic)ガスに分類されるものであり、「石油ウィンドウ」内にある西シベリア油田の上位に成立していると解されている。これは、Bazhenov層などの石油根源岩からではなく、白亜紀後期に、堆積物に発生したメタンガスが濃集したものである。すなわち、西シベリアの主要部に石油地帯があり、北部にはガス地帯があるという生成地域の棲

み分けが存在するのではなく、北部のガス地帯の下位には、下部白亜系ネオコム統の石油層の分布が期待されるということである。 ノボポルト(Novoport)ガス田の深部の下部白亜系ネオコム統に石油層が発見されたことはむしろ当然であり、これに限らず西シベリアの北部に成立しているガス田の下位にはいずれも石油賦存の可能性があると考えられた。問題はその深度で、セノマン統が1,000m前後の深度で掘削が大変容易であるのに対して、西シベリア北部でネオコム統が3,000m前後となり、2,000m級の掘削リグが主流であったソ連邦の時代には、容易に取り組み難い面があった。 更に問題を難しくしているのは、西シベリア北部はガス生産を生業としているGazpromが事業展開をしている地域であり、輸送インフラとしてガスパイプラインの整備が進められてきた。原油やコンデンセート等の液分を生産すれば経済的に有利なことは分かっていても、そのための石油パイプライン網を広範に敷設することは膨大な事業であり、長距離の輸送は後回しにせざるを得なかった。液分は操業現場でのローカル消費に充てられた。石油関係者にしてみれば、膨大な石油の可能性を前にしながら諦めかけていた地域で、今回ついにカラ海で念願の大規模油田の発見を実現したのである。 なお、ポベダ油田の確認埋蔵 量 に 関 し て、 そ の 後 のDeGolyer and MacNaughtonによる試算によれば、石油が1億1,300万トン(約8億4,000万バレル)、天燃ガス3,750億㎥(13.2Tcf)と拡大している*5。

ガス田としても十分な規模を有しているが、これは前述のとおり上部白亜系セノマン統のガス層と思われる。

(3) RosneftとExxonMobilの共同事業

 2011年8月、RosneftとExxonMobilは戦略的提携で合意し、西シベリアのBazhenov層でのシェールオイル開発と、海域ではカラ海の東Prinovozemelsky鉱区-1、-2、-3での探鉱で合意した。ここでは、Rosneftがライセンスを取得し、そこからExxonMobilが33.3%の権益を取得する。更に2013年にチャクチ海Severo-Vrangelevsky、Yuzhno-

出所:JOGMEC 作成

Timan PechoraBasin

West Siberia BasinVolga-Ural Basin

Timan PechoraBasin

West Siberia BasinVolga-Ural Basin

Shtokhmanov

Yurubchen(Rosneft)

Luginets(Rosneft)

Kharampur

Urengoy

YamburgVankor(Rosneft)

BovanenkovPrirazlomnoye

KharyagaSouth Khylchuyu(Lukoil)

Usinskoye

Romashkino

Samotlor(TNK-BP)

Komsomol(Rosneft)Tyan(Surgut)

SalymPriob-South

(Gazprom Neft)

Krasnoleninsk(TNK-BP)

Priob(Rosneft)

Shtokhmanov

Yurubchen(Rosneft)

Luginets(Rosneft)Uvat(TNK-BP)Uvat(TNK-BP)

Kharampur

Zapolyarnoye(Gazprom)Zapolyarnoye(Gazprom)UrengoyMedvezhyeMedvezhye

YamburgVankor(Rosneft)

BovanenkovPrirazlomnoye

KharyagaSouth Khylchuyu(Lukoil)

Usinskoye

Romashkino

Samotlor(TNK-BP)FedorovFedorov

Komsomol(Rosneft)Tyan(Surgut)

SalymPriob-South

(Gazprom Neft)

Krasnoleninsk(TNK-BP)

Priob(Rosneft)

Yurubchen-TohomoYurubchen-Tohomo

MedvezhyeMedvezhye

ShtokmanShtokman

PrirazlomnoyePrirazlomnoyeBovanenkovBovanenkov

YamburgYamburgUrengoyUrengoy

ZapolyarnoyeZapolyarnoye

PriobPriob

ChayandaChayanda

Sakhalin-1Sakhalin-1Sakhalin-2Sakhalin-2

VankorVankor

Kovykta

1 2

12

3

1 23

Severo-KarskySevero-Karsky

EastPrinovozemelskyEastPrinovozemelsky

RusanovRusanovLeningradLeningrad

Anisinsko-NovosibirskyAnisinsko-Novosibirsky

Severo-VrangelevskySevero-Vrangelevsky

Ust-LenskyUst-Lensky

MagadanMagadan

KashevarovskyKashevarovskyLisyanskyLisyansky

Yuzhno-ChukotskyYuzhno-Chukotsky

Ust-OlenekskyUst-Oleneksky

Roseneft鉱区Gazprom鉱区堆積盆地

Rosneft と Gazprom が取得したノバヤ = ゼムリヤ以東の北極海鉱区図5

出所:Rosneft のウェブサイトによる

西シベリアにおける主要部の巨大油田と北部の巨大ガス田の分布図4

アナリシス_本村.indd 14 2016/01/12 17:22:39

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15 石油・天然ガスレビュー

JOGMEC

K Y M C

ロシア北極圏のエネルギー資源開発

Chukotsky、ラプテフ(Laptev)海Ust Oleneksky、Ust Lensky、東シベリア海Anisinsko Novosibirsky、カラ海 Severo-Karskyの6鉱区を追加した(図5)。また、2014年9月初めには、両社は共同で2次元地震探鉱をAnisinsko NovosibirskyとUst Oleneksky両鉱区で実施した*6。 カラ海は冬季は結氷し、冬季に氷のないバレンツ

(Barents)海よりも開発条件は厳しいが、ロシア東部のラプテフ海、東シベリア海より結氷度は低い。ExxonMobilは、カラ海の、よりノバヤ=ゼムリャに近い堆積盆地周辺地域での石油の発見を目指すと表明していた。米国メジャーは当初から浅い深度での石油狙いの探鉱を展開するもくろみであった。 2014年8月9日、ExxonMobilとRosneftはカラ海の東Prinovozemelsky鉱区-1において、北緯74度という北極海最北の坑井Universitetskaya-1号井を開坑した。これに先立つ7月31日にEU(欧州連合)、8月6日に米政府がウクライナ問題に起因する経済制裁を発動したばかりであった。米国およびEUがロシアに対して課した制裁の内容を表1に示す。 この掘削リグ“West Alpha”はノルウェーのSea Drill社のもので、その契約締結日が7月30日であり、EUによる経済制裁には8月1日以前に締結された契約には適用しないと記してあることから、抵触しないことは明らかであった。ただし、米国の制裁に関しては曖昧な表現が多く、これに抵触するか否かは予断を許さなかった。RosneftのSechin社長、ExxonMobil RussiaのWaller社

長が9日のカラ海の現場での開坑式に参列しても、米政府からは特段の否定的なコメントはなく、黙認されたものと受け止められた。 しかし、9月12日の米国による制裁内容に「北極海での探鉱・生産を支援する機器類、サービス、技術の米国からの提供、輸出、再輸出」が含まれたことから、特に北極海での海洋掘削における「サービスの提供」に抵触すると解されるようになった。 米国とEUが各社に対しロシア北極圏の深海またはシェール油田開発の支援禁止を発表した数日後の9月19日に、掘削作業は停止された。米国政府はウクライナの情勢悪化をめぐる対ロシア制裁の一環として、米企業に対して9月26日までに撤収を含む全ての掘削と試掘作業を停止するよう指示した*7。 9 月 29 日、ExxonMobilの 広 報 担 当 者 で あ る Alan Jeffersは、「Rosneftとの10件の共同事業のうち9件を、期限である9月26日までに中断した」と述べた。両社の戦略的協力関係は、黒海大陸棚、北極圏、西シベリアにお け る 探 鉱・ 開 発 に 及 ん で い た。Rosneft側 は、

「ExxonMobilが本事業からの撤退を余儀なくされているが、Rosneftはこれらの事業の新しいパートナーを探すことはない」と述べた。RosneftのSechin社長は2014年9月、「制裁措置のせいでRosneftとの共同事業からの撤退を余儀なくされているパートナー企業に対しは、当該事業に復帰できるようにする選択肢を与える予定である」と述べた*8。Rosneftは事業の枠組みを維持する姿勢

出所:JOGMEC 作成

表1 EU、米国および日本による対露経済制裁の内容

制裁対象 EU 米国 日本

第 1 次(クリミア併合への対応)

3月6日:3段階の対露制裁。まず、露とのビザ交渉凍結3月17日:露、クリミア当局者ら21名の資産凍結・渡航禁止3月21日:12名の資産凍結・渡航禁止

3月6日:露政府高官・軍関係者等の資産凍結・渡航禁止3月17日:7名の資産凍結・渡航禁止追加、Yanukovichなど3月20日:20名の資産凍結・渡航禁止追加、Tymchenkoも

3月18日:ビザ緩和凍結、投資・宇宙・安全保障での協定交渉の凍結

第 2 次 5 月 12 日:13 名、2 社の資産凍結・渡航禁止

4月28日:RosneftのSechin社長を含む7名、17社の資産凍結・渡航禁止

4月29日:23名のビザ停止

第 3 次(マレーシア航空機撃墜で強化)

7 月 12 日:追加資産凍結・渡航禁止7 月 16 日:EIB、EBRD の融資禁止7 月 31 日:大水深・北極・シェールオイル用機材の輸出は事前認可。ガスは非対象、8 月 1 日前の契約は不問。90 日超の調達禁止(Sberbank、VTB)

7月16日:経済制裁。90日超の資金調達禁止(Gazprombank、VEB、Rosneft、Novatek)8月6日:大水深・北極海・シェール用機材の米国からの輸出禁止。3銀行と統一造船の米市場調達禁止

8月5日:クリミア、東部の不安定化に関与する企業の資産凍結・輸入制限

第 4 次(ウクライナ東部停戦)

9月12日:大水深・北極・シェールオイル事業への掘削・テスト・検層等のサービスの禁止。Rosneft、Transneft、Gazpromneft に対する30日超の資金調達の禁止24名の資産凍結・渡航禁止

9月12日:5社(Gazprom、Lukoil、GazpromNeft、Surgutneftegaz、Rosneft)に対する大水深・北極海・シェール事業を支援する機器、サービス、技術の提供禁止。5銀行の30日超の調達禁止。Transneft、GazpromNeftの90日超の社債禁止。9月26日までの猶予

9月24日:露の大手5行の日本での資金調達を禁止。武器輸出・武器技術提供の制限

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JOGMEC

K Y M C

アナリシス

を明確にしたと言える。 E x x o n M o b i l は 企 業 報 告 の な か で、 北 極 海 東Prinovozemelsky-1、-2、-3、黒海のTuapse鉱区、西シベリアシェールオイルに関するRosneftとの事業の停止による損害を2014年末時点で$10億と推定した*9。米政府による制裁で最も痛手を被ったのは、ロシアではなく、米国の民間企業であった*10。 しかし同時に、2014年は約10年続いた高油価の時代が終わりを告げた年でもあった。制裁がなくとも、カラ海での探鉱が一時停止されることは予見されていたと言える。ただし、GazpromNeftは、東シベリア海とチュコトカ(Chukotka)海にまたがるSevero-Vrangelevsky鉱区で2015年夏に重磁力探査を、また2016年には2D地震探査を実施する予定であると述べている。ロシア側による地道な調査活動は、依然として継続されている。 なお、2015 年に入り、ロシア・エネルギー省のAnatoly Yanovsky次官は、石油最大手Rosneftは現在、複数の中国企業との間で北極大陸棚開発への参加を交渉中であると語った*11。これが、カラ海を含むものか否かは不明である。

(4)西シベリア北部における原油発見の意義

 西シベリア北部は産ガス地帯として知られ、この地域にロシアの天然ガスの8割が賦存している。従来、この地域での探鉱はガス指向のものがほとんどであった。しかし、これからの探鉱の主流として、ガス層の下位にあ

る石油層が当然意識されてくる。 図2には、ポベダ油田のみが記入されているが、この3鉱区内に同規模の未試掘構造が約30あると言われる。これらの全てが石油鉱床を形成している保証はないが、単純計算で最大300億バレル程度の石油が賦存している可能性がある。すなわち、地球上で大規模な石油地帯が

ロシアの堆積盆地の分布と北極海への延伸図7

出所:JOGMEC 作成

Timan-Pechora

Volga-Ural

North Caspian

East Siberia

Lena-VilyuyLena-Tunguska

Khatanga-Yenisey

West Siberia

Barents Sea

Sakhalin Okhotsk

Kara SeaKara Sea

Laptev Sea

East Siberian Sea

Chukchi Sea

Sakhalin-2

Kovykta

Yurubchen-Tohomo

Medvezhye

Shtokman

Prirazlomnoye Bovanenkov

YamburgUrengoy

Zapolyarnoye

Priob

●●

● ●

●●

Chayanda

Sakhalin-1

Vankor●

北極海の大陸棚分布* 12図6

出所:ウィキペディア

アナリシス_本村.indd 16 2016/01/12 17:22:40

Page 7: ロシア北極圏のエネルギー資源 開発...13石油・天然ガスレビュー JOGMEC K Y M C ロシア北極圏のエネルギー資源開発 石油が1億トン(約7.3億バレル)超である。これは、東

17 石油・天然ガスレビュー

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ロシア北極圏のエネルギー資源開発

一つ加わったことになる。 ロシアは北極海大陸棚の約6割にあたる270万k㎡を擁し、北極海沿岸5カ国のなかでは最大の面積を占める

(図6)。またバレンツ海は陸域のティマン=ペチョラ盆地、カラ海は西シベリア盆地という確立した産油ガス地帯のそれぞれ北方延長に当たり、石油・天然ガスの資源ポテンシャルは非常に高い(図7)。更に、メキシコ湾流の流入するバレンツ海は冬季も結氷せず、作業条件としては最も優れている。カラ海は冬季結氷するものの、氷は薄く、厳冬期以外は作業が可能である(図8)。大陸棚の広がり、資源ポテンシャル、氷の条件の3点で、バレンツ海とカラ海は最も恵まれた環境にある。 北極圏における石油ガス資源ポテンシャルの評価としては、2008 年 7 月の米国地質調査所(US Geological Survey〈USGS〉) に よ る Circum-Arctic Resource Appraisal (CARA)*13という資源調査報告が広く知られている。これは北緯66.56°以北を対象としたもので、ヤマル(Yamal)半島、タイミル(Taymyr)半島等の陸域も入っており、厳密には北極海だけではないが、各国が探鉱活動を極地にまで拡大している地質学的な根拠を見る

90°W 90°E

180°

HBHB

AAAA

NCWFNCWF

NWCNWC

SBSB

VLKVLK

LSSLSS

LMLM

AMAM

EBEB

LALA

YKYK

NKBNKB

EBBEBB

NZAA

BPBP

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WGECWGEC

ESSESS

NWLSNWLS

ZBZB

CB

FS

JMM

MZB

TPB

WSB

LS

LV

TUN

YF

ARCTICCIRCLE

未発見石油未発見石油>100億バレル10~100億バレル<10億バレル量的評価のなされていない地域炭化水素ポテンシャルの低い地域

出所: 2009 年 3 月、National Snow and Ice Data Center、 Boulder Co. のウェブサイトより

米国地質調査所(USGS)による北極圏石油資源ポテンシャル調査図9

出所:USGS(2008)

冬季の北極海での氷の最大分布(白い部分)図8

アナリシス_本村.indd 17 2016/01/12 17:22:41

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ことができる。 これによれば、未発見資源量としては、石油が900億バレルで世界の13%、天然ガスが1,670Tcfで世界の30%にあたる。石油はアラスカ・ノーススロープからチャクチ海にかけて(図9)が、天然ガスはこれに加えバレンツ海のロシア側、カラ海が突出して高い評価となっている(図10)。

 カラ海におけるポベダ油田の発見は、この評価に修正を迫るものである。図9の地質区分のなかでの色分けは、生成した未発見資源量を色合いで段階的に表したものである。ここでカラ海の評価は、10億~ 100億バレルだが、今回の石油発見で、もう1ランク上の、アラスカ・ノーススロープ並みの100億バレル以上という評価になるだろう。

2. ロシア・バレンツ海でのロシアの石油ガス開発

(1)プリラズロムノエ油田(ペチョラ〈Pechora〉海)

①北極圏最初の海洋油田の生産開始 プリラズロムノエ(Prirazlomnoye)油田は、現在北極海で唯一の操業油田である。位置は、バレンツ海の南東部で、陸のティマン=ペチョラ(Timan-Pechora)に近い海域でペチョラ海と言われている地点にある(写2、図1)。油田はソ連時代末期の1989年に発見された。その後

Gazprom子会社であるSevmorneftegazが操業していたが、 現 在 は Gazpromの 石 油 部 門 の 子 会 社 で あ るGazprom Neftが操業している。確認石油埋蔵量は6億1,000 万バレルと大規模なものではない。離岸距離60kmで、油田の場所の水深は19 ~ 20m、平均気温は氷点下4℃である。既述のように、バレンツ海は通常結氷しないと言われているが、同海南部ではメキシコ湾流

90°W 90°E

180°

HBHB

AAAA

NCWFNCWF

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SB

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LM

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未発見ガス未発見ガス>100Tcf6~100Tcf<6Tcf量的評価のなされていない地域炭化水素ポテンシャルの低い地域

米国地質調査所(USGS)による北極圏天然ガス資源ポテンシャル調査図10

出所:USGS(2008)

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Page 9: ロシア北極圏のエネルギー資源 開発...13石油・天然ガスレビュー JOGMEC K Y M C ロシア北極圏のエネルギー資源開発 石油が1億トン(約7.3億バレル)超である。これは、東

19 石油・天然ガスレビュー

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ロシア北極圏のエネルギー資源開発

の流入が弱く、ペチョラ海は冬季は結氷する。プラットフォームは、Severodvinsk造船所で建造され、2011年2月に油田に曳航され、設置作業に入った*14。1年後の2012年末に油田は生産開始となった。 2014年4月18日には、Prirazlomnoye油田プラットフォームから最初の石油出荷が行われたことを記念する式典がリグ上で開催され、Putin大統領がテレビで参加した。Prirazlomnoye油田で生産される石油は、「ARCO」原油

(Arctic Oil)と命名されている。既に欧州最大手のエネルギー会社が直接契約で購入した。同鉱床からの石油生産量の増加に伴い、一部は長期契約によって販売される予定である。生産量600万トン/年を計画している*15。 その後、タンカーは2014年9月に2隻目、11月に3隻目が出荷された。4隻目の出荷では、2014年末までにタンカーが欧州北西部に到着した。同社は制裁にもかかわらず、北極圏での海洋事業を推進している。2015年にはPrirazlomnoye油田において追加で7坑の開発井を 掘 削 す る。 ま た、 同 鉱 床 の 近 隣 に 位 置 す るDolginskoye海洋油田で2014年に掘削した1坑井でテストを行ったが、その結果、二つの層からガスのフローがあり、それより深い層からは液分のフローがあった*16。 GazpromNeftとしては、2017年末までにPrirazlomnoye油田において、新たに9坑井の操業を開始、2018年ま

でに11坑井で生産する予定である。既に2坑の生産井が同鉱床で掘削されている。二つ目の坑井(総延長4,500m。原油生産量:1,800トン/日)は2015年夏に操業を開始した。これにより、2015年の同鉱床の原油生産量は前年比2倍以上となる約60万トンに上る見込みである。2017年末までに同鉱床での累計原油生産量は500万トンに達し、70隻のタンカーで出荷する計画である。2015年9月現在、累計生産量は80万トンで、12隻のタンカーで出荷した*17。

②北極海油田における環境問題 Prirazlomnoye油田は、北極海における最初の生産油田となったことから、環境団体からも厳しい目で見られていた。既に、プラットフォームを設置した2011年の末に、グリーンピース(Greenpeace)の一団がプラットフォームに上ろうとしたが、甲板の外縁が「鼠

ネズミ

返し」状となっていたために果たせなかった(写2)。翌2012年末の生産開始試験をしている時に、グリーンピースが再び接近し、この時は甲板上に上った。 グリーンピースの主張は、常海域と異なり現在石油企業の持っている技術では、氷の広がる海での環境対策が不十分というものである。現状では、日本の研究機関でも氷の表面の流出油を高圧力の放水で押し流す実験等は

写2 流氷に囲まれたプリラズロムノエ油田* 21

出所:GazpromNeft ウェブサイト

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行われており、さまざま施策が考案され、実用化を目指している段階である。ロシア国内での原油流出対策の現状はあまり報道されていないが、Gazpromの Alexei Miller社長は、「Prirazlomnoye海上プラットフォームでの生産過程もしくはタンカーへの積載過程における石油流出の可能性は100%排除されている」と述べている*18。これに関する技術的な根拠は特段挙げていないが、環境問題への対応は計られているのであろう(100%排除されているというのは言い過ぎとしても)。この場合、技術が完璧と言えないのであれば、石油生産を停止すべきというグリーンピースの議論がどの程度支持されるのかが、論争を呼ぶものと思われる。 Gazprom Neftは、世界最大規模の石油・ガス会社が参加する「Arctic Oil Spill Response Technology Joint Industry Programme」(JIP)に加入するロシア初の企業となった。JIPは2012年12月、氷海の下に拡散した石油についての経過観察、実際の状況に近い環境での分散剤による実験、および視界不良や氷に覆われた地域での石油流出の検知や場所の特定などについての研究を行うため、複数地域でスタートしたものである。ここにも、極地における環境問題に対する世界的な取り組みの一端が見て取れる*19。 ちなみに、2014年5月31日、ノルウェー気候環境省は、バレンツ海のApollo構造試掘に反対するグリーンピースの申し立てを却下したとStatoilが伝えた。5月27日からグリーンピースは、Transocean Spitsbergen掘削装置に乗り込むなどの妨害活動をしたが排除された*20。類似の事案はロシアにとどまらない。

(2)Shtokmanガス田の開発

 バレンツ海の中央に位置する同ガス田は、埋蔵量3兆7,000億㎥(131Tcf)と北極海のガス田では最大の規模を有する。1990年、ソ連時代の末期に筆者がGazpromを訪問したところ、説明に現れた担当者は、「あなた方は一昨年、バレンツ海で発見されたShtokmanガス田の

ことは知っているか。技術者が一生に一度、出会えるかどうかという程の巨大ガス田だ」と言って胸を張った。当方としては、ソ連が北極海に積極的に進出している様子に驚いた記憶がある。Shtokmanガス田の概要については、本誌2007年11月号の拙稿を参照されたい*22 。 技術上の問題としては、ガス輸送の上陸地点でLNG生 産 基 地 と な る Murmansk近 隣 の Teriberkaま で565kmという長大な離岸距離を、パイプ内でガスとコンデンセートの2相流で流すという点が、依然として克服できていなかった。更に、主要なLNGの輸出先と目されていた米国でのシェールガス生産が急増してきた 2011年、Shtokmanガス田の開発計画は頓挫する。当時、同ガス田のLNGの生産から輸送までの全コストが$500/1,000㎥($14/MMBtu)という水準にあるなかで、欧州市場でのLNGのスポット価格が$300/1,000㎥($8.5/MMBtu)と下がってきた。この時点で、同計画の存立が危うくなったが、更にヤマルLNG計画が始動し、国内でもLNG事業の競争相手が現れ、市場での共食い状態となった。当初の計画では、最終投資決定(FID)は2011年末、生産開始は2016年であったが、FIDができないまま時間が経過した。 事業パートナーであるノルウェーのStatoilは2012年7月末に保有権益24%を、51%を保有するGazpromに引き渡した。残りの25 %はフランスのTotalが保有したままであった。GazpromはShtokmanガス田のガス産出税に関して優遇税制の適用を求めるなど、延命を図ったが、遂に2013年には、Gazpromは計画の棚上げを決定した。 このことは、北極海において埋蔵量的には大規模なガス田であっても、離岸距離の大きい沖合ガス田の場合には、商業的な開発が非常に難しいことを示している。将来的に、コスト削減と長大な離岸距離の問題に関して、新たな展望が開けるとしたら、唯一考え得る技術は、Shellの提案しているような洋上LNG方式の採用であろう。

3. ヤマル半島での石油・ガス開発

(1)ノボポルト油田(オビ湾)

 1970年代に、ヤマル半島の中央部のBovanenkov構造 ま で、 ヤ マ ロ =ネ ネ ツ 自 治 管 区 の 首 府 で あ るSalekhard市の、オビ河を挟んだ対岸にあるObskaya市

を起点とする鉄道が敷設された。これは、ガス田開発のための資機材・人員の輸送を主たる目的とするGazpromが所有する鉄道である。この鉄道を活用しながら、ヤマル半島の中央部を北北西-南南東方向に延びるガス田列

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21 石油・天然ガスレビュー

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が発見された(図1)。このうち、最も南南東のオビ湾近くに位置するNovoportガス田に関しては、前述のように、1980年代に深掘りが行われ、ガス層の下位に油層が発見されている。他のガス田においても、深部での油層の存在は当然予想されたわけであるが、まずNovoportガス田において深掘りがなされた理由は、オビ湾に面しており、生産原油の搬出が他のヤマル半島内陸部の油ガス田よりも容易と考えられたためと思われる。 ただし、実際のBovanenkovガス田の開発、そしてガスの商業生産は30年を経た2012年のことであり、それに先行してまず古い鉄道を再整備することから事業が再

スタートした。ヤマル半島での開発事業では、途中にソビエト連邦の崩壊という政治的な事件が入ったために、一気には進められなかった。 2014年、Gazprom Neftの子会社で同事業のオペレーターであるGazprom Neft Novy PortがNovoport油ガス田での生産掘削事業を本格的に始動した。2014年末までに合計で9坑井を掘削した。2016年までに坑井群プラット フ ォ ー ム を 5 基 建 設 し、60 坑 井 で 掘 削 を 行 う。Gazprom Neftは2014年、同鉱床でのパイロット生産の一環としての掘削事業を完了した。合計で8坑の生産井を掘削し、17坑の探鉱井で試験を行った。Novoport

ヤマル半島におけるインフラの状況図11

出所:Gazprom ウェブサイトより

Bovanenko Station

Tambei

Pauta Station

Obskaya Station

OperatingPlanningGas Pipeline

Gas Fields

Kara Sea

Tazov Bay

Obi Bay

Kharasabei

Zapadno-Tambei

Cebero-Tambei

Yuzhno-Tambei

Novoport

Bovanenkov

YamalRegion

Pri-UralRegion

Tazov Region

334 KM

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油ガス田のC1+C2石油埋蔵量は2億3,000万トン(約16.8億バレル)超、C1+C2ガス埋蔵量は2,700億㎥超。ピーク生産量は850万トンで、2021年以降に達成する予定である*23 。硫黄含有分は0.1%と低い。 2014 年冬は約 3 万 5,000 トンの原油が同鉱床から200kmのPayuta駅まで冬季用道路によって輸送された

(図11)。その後、原油は、Novoport油ガス田からKamenny岬へと103kmのパイプラインで送油された後、出荷されるようになった。パイプラインの送油能力は60万トン/年(1万2,000b/d)である*24。 同油ガス田からの洋上出荷を開始したのは2014年8月で、このシーズンに4隻のタンカーが10万トンを超える「Novy Port」という新油種の原油を輸送した。同鉱床では2014年年初来、15万トンの石油が生産された。石油の出荷ターミナルの建設が終われば、洋上出荷は通年で行われる予定である*25。

(2)ヤマルLNG

①プロジェクトの概要 2009年9月24日、Putin首相(当時)は世界のLNG関係企業をヤマロ=ネネツ自治管区のSalekhard市に招集した。参加した企業はShellをはじめExxonMobil、E.On、Eni、三井物産、三菱商事、ConocoPhillips、GdF Suez、Kogas、PetronasおよびSuncor Energyである。ここでは、新規事業としてYamal LNG計画が公表され、Putin首相は、ロシア政府はヤマル半島での巨大ガス開発を奨励するために税制優遇措置を検討する用意がある旨述べた*26。本件は2008年時点ではGazpromが遂行する予定であったが、その後、独立系第1位のNovatekが所管することになった。 この2009年9月というタイミングは、Shtokmanガス田のLNG計画が大きく停滞した時期と重なる。2009年に入り、金融危機からの欧州でのガス需要の落ち込みが深刻になり、翌2010年2月5日、Shtokman ガス田のオペレーターとなっているGazprom、Total、Statoilの 3 社 が、 最終投資決定の時期を2010年から2011年へ、パイプライン に よ る ガ ス 生 産 開 始 を2013 年 か ら 2016 年 へ、LNGによる供給開始を2014年から2017年へとそれぞれ

延期すると発表した*27。2011年に入り、「Yamal LNG事業は、Shtokman事業よりも早く進められるだろう」とシュマトコ・エネルギー相(当時)は述べた*28。 LNGのソースとなるYuzhno Tambeyガス田は、1974年に発見された。埋蔵量はC1+C2=1兆2,560億㎥(44Tcf)で、定義としては30Tcfを超えており超巨大ガス田となるが、西シベリアとしては中堅クラスと言える*29。LNGは550万トン/年規模のトレーンが3系列あり、合計で1,650万トン/年となる。各トレーンは2017、2018、2019年にそれぞれ完成する予定である*30。2015年6月時点でのLNGの契約先を表2に示す。 LNG基地が海上輸送に直結できる必要があることから、このようなヤマル半島海岸のガス田が選択されたわけであるが、これはオビ湾に面し、比較的水深が深いことが決め手となった。ヤマル半島西岸にも海岸域にハラサベイ(Kharasavey)、クルゼンシュテルン(Kruzenstern)といった巨大ガス田があるが、西岸は遠浅の海底地形となっており、LNG船を就航させることは困難と考えられた。

出所:JOGMEC 作成

表2 Yamal LNG の契約先* 31

販売先 量(万トン/年) 期間(年)

Novatek 100

Engie 100 23

Shell 90 20

Total 400

CNPC 300

Gazprom M&T 290

Gas Natural Fenosa 250

Spot 120

20

10

0

-10

-20

LNG生産量 気温(℃)

平均気温

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

LNG生産量

通常のLNG生産量の季節変化を示す概念図(高温時にLNG生産量が低下する)図12

出所:各種資料を基に JOGMEC 作成

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23 石油・天然ガスレビュー

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ロシア北極圏のエネルギー資源開発

 Yamal LNG事業における総コストは、$269億と報道されている。LNGの輸送船の建設だけでも総事業費の約3割を占める*32。 経済上のメリットと言われているのが、ガス資源の生産コストが低いこと、アジア市場向けの北極海航路を活用し、LNGタンカーの輸送日数を縮小できること、そして寒冷地におけるLNG生産の利点もあって、全体のスペックを下げることのできるメリット、そして夏季の生産レベルを下げずに生産を継続できる点が挙げられる

(図12)。LNGは氷点下162℃で生産されるため、温暖な外気ではより大きな冷却のエネルギーを要する。寒冷地であることは、低い外気温を前提とすることから設備を簡略化でき、LNG製造のための電力コストもその分低く抑えられる。このため、LNG生産にとってメリットとなる。ただし、寒冷地における設備全体の建設費自体も引き上げられることは考慮に入れる必要がある。

②プロジェクトへの外資の参入 2011年3月2日、Medvedev大統領(当時)はTotal社長Cristophe de Margerieとの会談で、ロシアにとってTotalグループやフランスは重要な戦略パートナーであると述べ、ロシアとしてTotalのYamal LNG事業参加への明確な支持を表明した*33。 MOU(Memorandum of Understanding)-1 で は、Yamal半島のYuzhno Tambeyガス田(44Tcf)の開発に参加し、MOU-2ではTotalがYamal LNG事業の20%を取得する*34。 Totalは、この時点ではYamal LNG事業とShtokman事業を含むロシア国内で計画されるその他のLNG事業とは、相互に補完するもので、競合するものではないとしていた。特に、Shtokman事業での経験を、Yamal事業に適用することができるとし、開始時期も重なることはないと考えていた*35。 2013年12月26日には、ロシア政府はYamal LNG事業実施に係る露中政府間協定を承認した。同協定によりCNPCはYamal LNG事業の20%の権益を取得することが可能となった。長期契約の締結によりCNPCは事業の進展に伴い最低でも300万トン/年のLNGを購入するこ と に な る。Yamal LNG事 業 は、Novatek 60 %、CNPC 20%、Total 20%という権益比率となった。 また、ロシアはヤマロ=ネネツ自治管区で生産されるガスに対し天然資源産出税(NRET)を免税とする。液化天然ガスの輸出については、生産開始から12年間を上限として、生産量が2,500億㎥に達するまでは免税とする。同地域の鉱区で生産されるコンデンセートについて

は、生産量が2,000万トンに達するまで免税とする。LNGおよびコンデンセートの生産に係る資機材についてはVAT(Value Added Tax=付加価値税)を免税とする。当該協定の有効期間は2045年までである*36。 2015年9月3日、北京でプーチン大統領、習近平主席立ち合いの下、Novatekと中国のシルクロード基金(Silk Road Fund= SRF) は、Yamal LNG事 業 で SRFがNovatekから9.9%の権益を取得することで枠組み協定に調印した。当該取引が規制当局によって承認されれば、Novatekの同事業における権益は現在の60%から50.1%へと減ることになる*37。現在、本契約の締結に向けて、作業が進められている(その後、Medvedev首相が訪中した12月17日、権益譲渡の合意書が交わされた)。

③LNG施設建設事業の請負契約 LNG生 産 設 備 の 建 設 に 関 す る FEED(Front End Engineering Design=基本設計)には、CB&I(米国)、Saipem(イタリア)、千代田化工建設が参加し、CB&Iが主導した。これには、NIPIgazpererabotka研究所(ロシア)も参加した。Yamal-LNG事業のプラント建設業者選定の入札には、Technip/日揮、CB&I/Saipem/千代田化工、およびStroyGasConsulting(ロシア)とPetrofac(英国)のJVの三つのコンソーシアムが参加した。EPC

(Engineering、Procurement、Construction、設計・調達・建設)契約は、2013年4月にTechnip(フランス)と日揮が結ばれた。その後、千代田化工建設が参加して、その比率は50%、25%、25%となった*38。

④資金問題 Yamal LNGの総事業費が$269億と言われていることは先に触れた。このうちの7割を融資で賄う予定であったが、2014年7月16日の米政府による経済制裁により、Novatek社による90日超の資金調達が禁止された(表1)。これに伴い、事実上融資を受けることができなくなった。 同年12月27日、Dmitry Medvedev首相は国民福祉基金(National Welfare Fund)からYamal-LNG社(同事業のオペレーター)にRub(ロシアンルーブル)1,500億(約$22億)を支払う指令に署名した。支払いは、同額のYamal-LNG社のドル建てで発行される社債を買い取ることにより行われる。同社債の償還(返済)期間は15年、利子の支払いは中央銀行の為替レートに基づき、ルーブル建てで行われる。同債券の最低利回りはLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)+3%(全体で5%を超えないものとする)もしくは米国のインフレ率+1%とされる。Rub1,500億の振り込みは、Rub750億を2回に分けて行われる*39。

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 また、中国からの$200億程度の融資の可能性がしばしば報道されているが、2015年11月末現在、実現していない*40。一方、Novatekへの融資に対する債務保証として、5月には対外経済銀行(Vnesheconombank=VEB)が$30億*41、6月にはGazpromが$31億を付けた*42。

⑤北極海航路の活用 北極海航路(Northern Sea Route=NSR)を活用してのアジア向けの商業輸送は、2010年夏から始まった。この年、ロシアの独立系ガス企業のNovatek が、ロシアのSovcomflot のタンカーにより7万トンのコンデンセートを 、ムルマンスク(Murmansk)から北極海航路を活用し中国の浙江省寧波まで試験輸送した。航海は22日間で、日数としては45%の節約であったが、砕氷船2隻のエスコートが義務付けられ、全体の輸送コストは15%の節約にとどまった。 これは、Novatekが開発を目指しているヤマル半島LNGのアジア市場向けの航路開拓が目的で、LNGの商業輸送を念頭に置いたものであった。このLNGは、冬季は欧州市場を対象とするものであるが、夏季は欧州市場での需要が落ちることから、夏場の電力需要が大きいアジア市場に振り向けようというものである。2011年には同様に10隻のコンデンセートを積載したタンカーが中国へ向かい、来るべきLNG輸送に備えた。 一方で、アジアから欧州への復路にも北極航路が活用されている。Novatekのタンカーはガスコンデンセートを運んだ帰路、韓国でジェット燃料を積載してフィンランドに運ばれた。また、サハリン-1での役務を終えた技術サービス船も復路として北極航路を選んでいる。今後、北極航路において双方向の物流が活発化する可能性が取りざたされた。ただし、資源価格の下落した2014年は、北極海航路の利用は半分以下にまで減った。

 2012年11月7日、コンデンセートではなく13万5,000㎥のLNGを積んだアイスクラスのLNG船「オビ河号」が、ノルウェー北部のハンメルフェスト(Hammerfest)を出港し、北極海を東方に針路を取り、ベーリング海峡を通過して、12月5日北九州市の戸畑にある九州電力のLNG受入基地に入港した。冬を間近にした北極海での航行可能期間の最後に当たっており、航海には従来よりも1週間程度長い29日を要した。LNGはノルウェーのStatoil等が操業するスノービット(Snøhvit)ガス田のガスからのもので、これをロシアの国営Gazpromの貿易部門の子会社Gazprom Marketing and Tradingが買い付け、最初の輸出先として日本に運んだものである。日本にとっても北極海がにわかに身近に感じられた瞬間である(図13)。 北極海を航行するには事前にロシア政府に申請を出す必要がある。到着した積み荷のLNGはスポットものであるが、この航海自体は周到に準備された行動と言える。アジア圏では他地域よりもガスが高値で取引されており、ロシアにとって日本のガス市場は欧州以上に魅力的である。日本へのLNG輸出を増やすことは政策的優先度の高い事業であり、将来的に北極海航路を活用した日

Murmansk

Pevek

Ningpo

Beijing

EastSiberiaWest

Siberia

ShanghaiChongqing

Kovykta

IrkutskErzurum ETB

IGI

occu

baN

Baku

Multan

Proskokvo

Dauletabad

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Kazan

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ShtokmanSnøhvit

SakhalinYamburg

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CAC

SAUDIARABIASAUDIARABIA

PAKISTANPAKISTAN

AZERBAIJANAZERBAIJANKAZAKHSTANKAZAKHSTAN

UZBEKISTANUZBEKISTANTURKMENISTANTURKMENISTAN

INDIAINDIA

CHINACHINA

RUSSIARUSSIA

MONGOLIAMONGOLIA

JAPANJAPAN

Trans Caspian

enilepi

P tsa

E-tse

W dn2

dn2 tsaE-tseW

enilepiP

KOREAKOREA

Bovanenkov

Altai Altai

2012 年晩秋、北極海経由で日本に輸出された LNG 船の航路(青線)赤線は陸路を行く天然ガスパイプライン図13

出所:報道情報を基に JOGMEC 作成

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ロシア北極圏のエネルギー資源開発

本向けLNG輸出が拡大していく可能性がある。 Yamal LNGにおける輸送ルートに関しては、夏季の北極海(Northern Sea Route)経由と冬季のスエズ運河経由が想定されている。これらの経済性の議論に関しては、原田(2013)に詳しい*43。 北極圏の冬季には、Yamal-LNGプラントから北極圏用タンカーでベルギーのZeebrugge LNGターミナルまでLNGを供給し、同ターミナルで通常のタンカーにLNGを積み替えた後、スエズ運河を経由してアジア太平洋地域へと向かう。また、夏季は、北極海航路を経由してアジア太平洋地域にLNGを輸送するという計画である(図14)*44。  冬 季 ル ー ト に 関 し て は、2014 年 4 月 Yamal LNG Consortiumと ベ ル ギ ー の Fluxys社 が、 同 国 のZeebrugge港のLNGターミナル経由で砕氷LNGタンカーから通常のLNGタンカーへ積み替え輸送することで事前協定に合意している*45。その後、2015年3月、両者は、Fluxys社が保有するZeebruggeターミナルでのLNG積み替えサービスに関わる契約(期間20年。積載量:800万トン/年)を締結した。この契約は、Novatekがオペレー

ターとなっているYamal-LNG事業が、Novatekへの制裁にもかかわらず、計画どおりに進められていることを示すものと言える。

(3)ヤマル LNG-2

 2013年12月、ロシア政府はYamal LNG-2に関する政府令を出した。これは、オビ湾を挟んだ対岸に当たるGydan半 島 に あ る Salmanovskoyeガ ス 田 とGeofizicheskoyeガス田からのガスを Yamal半島側で1,500万~ 1,650万トンのLNGとし、LNGの積み出し港である Sabetta港を拡張して輸出するもの。工事は、Yamal LNG-1が1,650万トンとなる2018年後半に開始、第1トレーンは2022年に、第3トレーンは2025年に本格稼働するというものである。Gydan半島のガス田のガスに対して12年間あるいは2,500億㎥の生産まで、コンデンセートも12年間または2,000万トンまでの産出税免除が与えられる*46。 2015年の4月になり、NovatekのMikhelson社長は、今後6 ~ 12カ月以内に、Salmanovskoyeガス田(Gydan半島)の開発、およびYamal LNGプラントに匹敵する生産能力(1,650万トン/年)を持ち、当該ガス田を資源基盤とするLNGプラントの建設について、決定を下す方針である、と述べた。新しいLNGプラントを着底式プラットフォームの上に建設する。2016年に開発計画ができ上がるように、Salmanovskoyeガス田では、既に2坑井の探鉱井が掘削されており、追加で2坑井の掘削が計画されている。LNG出荷のための積み出し用埠頭は2015 年 中 に 稼 働 を 開 始 す る 見 込 み で あ る。Salmanovskoyeガス田の2014年末時点でのガスの確認埋蔵量は、SEC(米国証券取引委員会)基準で2,352億㎥

(8.3Tcf)、ロシア基準で1兆1,165億㎥(39Tcf)。また、コンデンセートはSEC基準で861万トン、ロシア基準で4,448万トン。石油の埋蔵量(ロシア基準)は、約1,000万トンである。ライセンスの有効期限は、2031年8月となっている*47。 事業計画の詳細についてはまだ不明であるが、Yamal半島でのLNGに関して、意欲的な姿勢がうかがわれる。

4. ロシアの北極海開発に取り組む姿勢

(1)ロシアの考える北極海での経済性について

 2015年9月15日、ロシア・エネルギー省はサンクトペテルブルクで開催された「ロシア海洋会議」で、同国の北極圏大陸棚開発について、以下のような見通しを

ヤマル LNG の夏季(北極海経由)と冬季(スエズ経由)の輸送ルート図14

出所:Novatek 社資料

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示した*48。・ ロシアは、2017年より前に北極圏大陸棚で新規に石

油掘削を開始する予定はない。また、事業の採算性が取れる損益分益点はWTI(West Texas Intermediate)価格が$63/bblであると考えている。

・ 現在、北極海大陸棚で生産しているのはペチョラ海のPrirazlomnoye油田のみで、石油生産量は1万8,000b/dであるが、エネルギー省としては、2020年までに北極海大陸棚での石油生産量を現在の3倍に増やし、2035年までに66万b/dに増やす方針である。

・ バレンツ海およびペチョラ海の掘削は2017~2021年、生産開始は2024 ~ 2029年の見込みである。

・ カラ海では、新たな掘削は2020 ~ 2021年、生産は2025 ~ 2028年にそれぞれ開始する。

・ ラプテフ海と東シベリア海は他の北極海に比べると探鉱は進んでおらず、2029年以前に掘削を開始する予定はない。

・ ロシア全体の原油・ガスコンデンセート生産が今後20年間、現在の水準である1,050万b/dにとどまるとした場合、2035年までに北極圏海洋鉱床での生産量が、ロシア全体の原油・ガスコンデンセート生産量に占める割合は6.2%にとどまる。

・ 北極圏海洋鉱床での損益分岐点は、$52/bbl ~ $81/bblと幅がある。

 つまり、現状では北極海のエネルギー開発はかなりスローペースとならざるを得ない状況であるが、バレンツ海、ペチョラ海、カラ海に関しては開発投資は手控えつつも、粛々と評価作業を遂行していく方針である。

(2)バレンツ海西部ロシア・ノルウェー境界の画定

 バレンツ海におけるロシアとノルウェーの境界画定は、40年にわたる係争の後、2010年4月にお互いの主張の中間線とすることで合意しており、法的な障壁は取り除かれている。ノルウェー側の主張は、通常の中間線に依拠するものであるが、ロシア側の主張は、極地に近いことから陸上境界地点から経線方向に北極点方向に延ばした線を境界とするという「セクター主義」に基づくものである。両国の合意の背景には、北極海における資源開発の現実性が高まったこと、Shtokmanガス田開発等で両国の協力関係が進み、お互いの信頼感が醸成されたことが挙げられる。 この海域ではRosneftがライセンスを取得したが、2012年 4 月に、Rosneftとイタリア の Eniが、 海 域 南 側 のTsentralno-Barentsyevsky(Central Barents)鉱区で、5月にはノルウェーのStatoilと海域北側のPerseevsky鉱区の共同探鉱で合意した(図1)。外資側の権益は33.3%である。ただし、北極海での事業は制裁対象となっており、当面西側企業からの投資、技術供与は期待できない。

ロシア大陸棚における石油ガス開発関連の税優遇措置図15

出所:諸報道を基に JOGMEC 作成

Timan-Pechora

Volga-Ural

North Caspian

East Siberia

Lena-VilyuyLena-Tunguska

Khatanga-Yenisey

West Siberia

Barents Sea

Sakhalin Okhotsk

Kara SeaKara Sea

Laptev SeaLaptev Sea

East Siberian Sea

East Siberian Sea

Chukchi Sea

Chayanda

Sakhalin-1Sakhalin-1

Vankor

Sakhalin-2

Kovykta

Yurubchen-Tohomo

Medvezhye

ShtokmanShtokman

PrirazlomnoyePrirazlomnoye Bovanenkov

YamburgUrengoy

Zapolyarnoye

Priob

●●

● ●

●●

石油・ガス産出税の優遇期間と販売額に対する優遇比率15年間 5%:バレンツ海北部、カラ海、ラプテフ海、東シベリア海、チュコト海、ベーリング海10年間 10%:黒海100m以深、オホーツク海北部、バレンツ海南部7年間 15%:白海、ペチョラ海、オホーツク海南部、黒海浅海部5年間 30%:アゾフ海、バルト海

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ロシア北極圏のエネルギー資源開発

(3) ロシアにおける大陸棚鉱床での石油ガス関連の優遇

税制*49

 2013年7月にロシア大陸棚鉱床における石油・ガス開発に係る優遇税制法が成立し、税制面でのインセンティブは確立している。同法は、内海、領海、大陸棚およびカスピ海の鉱床における石油・ガス生産に係る新しい税制を構築するもので、2016年以降に商業生産が開始となる鉱床に適用される。要件を満たす鉱床の開発期間中において、産出税は従価税となり、地域的なカテゴリーごとに以下のとおり定められる(図15);① アゾフ海に100%属する鉱床、バルト(Baltic)海に

50%以上属する鉱床には、(2022年3月31日までの)商業生産開始から5年間(60カ月)、販売額に対して30%の産出税が課税される。

② 黒海(最大水深100mまで)、カスピ海のロシア領海、ペチョラ海、白海、(サハリン大陸棚を含む)オホーツク海の南部(北緯55度以南)に50%以上が属する鉱床には、(2032年3月31日までの)商業生産開始から7年間(84カ月)、販売額に対して15%の産出税が課税される。

③ 黒海(水深100m超)、オホーツク海北部(北緯55度以北)、バレンツ海南部(北緯72度以南)に50%以上が属する鉱床には、(2037年3月31日までの)商業生産開始から10年間(120カ月)、販売額に対して10%の産出税が課税される。

④ カラ海、バレンツ海北部(北緯72度以北)、北極海(ラプテフ海、東シベリア海、チュコト海、ベーリング海)に50%以上が属する鉱床には、(2042年3月31日までの)商業生産開始から15年間(180カ月)、販売額に対して5%の産出税が課税される。

 全ての対象鉱床について、上記と同期間、輸出税が免税となる。 なお、当該鉱区ライセンスの保持者は、当該事業に係る操業会社の直接または間接的支配株を保有していなければならない。要件を満たす鉱床を開発する企業は、将来の支出に向けた積立金を準備することで、法人税の減免措置を受けることが可能である。累計控除額が法人税の基準額として用いられる。課税期間中における控除額は、当該鉱床開発によってもたらされる収入の1%を超えない。当該法では、欠損金の繰り越し控除に特定の期間を設けず、法人税の基準額の算定に加速償却を認めている。 収入と支出や、課税基準は、各鉱床ごとに算定される。法人税は現行の20%のままとされ、全て連邦政府に納付される。条件を満たす鉱床について、VATや固定資

産税は免税となる。  な お、 同 法 で は、 バ レ ン ツ 海 に あ る GazpromのPrirazlomnoye鉱床について、新規大陸棚鉱床に対する措置を適用する代わりに、Yamal地域等と同様に、2019 ~ 2022年の間、産出税を免税とすると財務省次官Sergei Shatalovが述べている。 更に同法では、(S-3事業の)Kirinskoye鉱床について、2015年1月1日現在における各炭化水素(随伴ガスを除く)ごとの埋蔵量既産出率が少なくとも5%である場合は、2021年1月1日まで輸出税を免税とすることになっている。

(4)ロシア大陸棚で事業を展開できる企業

 ロシア連邦法No.187-FZ「ロシア連邦の大陸棚について」の第7条「大陸棚鉱区の利用者への供与」は、2008年4月29日付連邦法No.58-FZにより、以下のとおり改訂された。 「大陸棚鉱区は、1992 年 2 月 21 日付ロシア連邦法No.2395-1〈地下資源法について〉第9条第3パラグラフで定められた要件に合致する人物に供与することができる」 ロシア連邦法No.2395-1「地下資源法について」第9条「地下資源利用者」の第3パラグラフは以下のとおりである。 「ロシア連邦の大陸棚の連邦管轄地下資源鉱区、更にロシア連邦領域に位置しその大陸棚にある連邦管轄地下資源鉱区における地下資源の利用者となることのできるのは、ロシア連邦法に従い設立され、5年以上の期間ロシア連邦大陸棚の地下資源鉱区での開発経験を有し、資本金におけるロシア連邦の持ち分(出資)が50%超を占め、および(あるいは)その法人の資本金を構成する議決権のある株式(持ち分)の相当する全表決権の50%超をロシア連邦政府が直接的あるいは間接的に管理する権利を有する法人である」(2008年4月29日付連邦法No.58-FZにより改訂)。 すなわち、具体的にはGazprom、Rosneftがこの対象となる*50。

(5)Gazpromの北極海戦略

 Gazpromのガス・コンデンセート・石油生産部門のVadim Petrenko大陸棚鉱床開発担当は、2014 年に

「Gazpromは北極海大陸棚の地質探鉱により、中期的(2024年まで)に埋蔵量を130%増加する見込みである」と述べ、北極海での取り組み著しいRosneftに対抗する強い意欲を見せた。その後、資源価格の下落があったので、このトーンを維持することは困難と思われる。しかし長期的な方針として具体的な鉱区、鉱床を挙げており、

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いずれ取り組んでくるものと思われる。 Gazpromの北極海でのC1埋蔵量は現在石油換算で合計5.353Tトン。同社の予測では、C1埋蔵量は2024年までに合計12.179Tトンまで増える。同氏は、ライセンス要件に基づき、気象条件が厳しい地域の12鉱床で今後10年間に生産をしなくてはならないので、2024年までにはPrirazlomnoye鉱床を含む12の大陸棚鉱床で生産をしている予定と述べた。  対 象 と な る 12 鉱 床 は 以 下 の と お り。Kruzenshternskoye、Shtokman、Dolg inskoye、Kharasaveiskoye、Obskoye、Kamennomysskoye-Mor、Severo-Kamennomysskoye、Chugoryakhinskoye、

Tota-Yakhinskoye、Semakovskoye、Antipayutinskoye、そして12番目の鉱床として2013年に生産を開始したPrirazlomnoye鉱床である。 同社はロシア大陸棚で36の海洋鉱区ライセンスを保有。 そ の う ち の 3 件 の ラ イ セ ン ス(Sharapovsky、Severo-Zapadny、およびKheisovsky鉱区)は同社への付与にあたり最終段階にある。海洋鉱床を生産段階に持っていくためには新技術の開発とインフラの整備が必要とされる。Murmansk港およびYamburg港も、北極海海洋鉱床の開発に利用される。既存の港の積み出し能力を設計し直し、大陸棚開発からの炭化水素の受け入れおよび積み替えの追加能力の増強を行う予定である*51。

<注・解説>*1: Bloomberg, 2015/9/28*2: PON, 2015/11/18*3: Rosneft website, 2014/9/27*4: 渡辺芳弘「石油・天然ガス鉱床の成立と探鉱」 石油鉱業連盟主催 石油・天然ガス開発基礎講座(2006年3月)での

講演*5: Interfax, 2015/2/16*6: Interfax, 2015/2/26*7: Bloomberg, 2014/9/19*8: PRIME, 2014/9/30*9: Interfax, 2015/2/26*10: Interfax, 2015/9/17*11: DJ, 2015/11/16*12: http://www.bing.com/images/search?q=% e5% 8c% 97% e6% a5% b5% e6% b5% b7% e6% b5% b7%

e5%ba%95&view=detailv2&&id=474C1997792935CB1A6B693F3D174F80579EE9E1&selectedIndex=0&ccid=373G333V&simid=608024746938863245&thid=OIP.Mdfbdc6df7dd54557320c7d88fb3111a3o0&ajaxhist=0

*13: USGS(2008), Circum-Arctic Resource Appraisal: Estimates of Undiscovered Oil and Gas North of the Arctic Circle. http://pubs.usgs.gov/fs/2008/3049/fs2008-3049.pdf

*14: NYT, 2011/2/15*15: Interfax, 2014/4/18*16: IOD, 2014/11/18*17: Interfax, 2015/9/17*18: Interfax, 2014/4/18*19: GazpromNeft website, 2014/3/19*20: IOD, 2014/6/02*21: http://www.gazprom-neft.com/company/business/exploration-and-production/new-projects/prirazlomnoe/*22: 拙稿「ロシア北極海の資源ポテンシャルとShtokmanガス田の開発」本誌2007.11 Vol.41 No.6、p.1 ~ 12 *23: Interfax, 2014/6/25*24: IOD, 2014/8/22

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執筆者紹介

本村 眞澄(もとむら ますみ)[学歴] 1977年3月、東京大学大学院理学系研究科地質学専門課程修士修了。博士(工学)。[職歴] 同年4月、石油開発公団(当時)入団。1998年6月、同公団計画第一部ロシア中央アジア室長。2001年

10月、オクスフォード・エネルギー研究所客員研究員。2004年2月、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEG)調査部 主席研究員(ロシア担当)。

[主な研究テーマ]ロシア・カスピ海諸国の石油・天然ガス開発と輸送問題、地球資源論。[主な著書] 『ガイドブック 世界の大油田』(共著)技報堂出版、1984年/『石油大国ロシアの復活』アジア経済

研究所、2005年/『石油・ガスとロシア経済』(共著)北海道大学出版会、2008年/『日本はロシアのエネルギーをどう使うか』東洋書店、2013年

[趣味] ブルーグラス、カントリー・アンド・ウェスタン

*25: Interfax, 2014/10/15*26: IOD, 2009/9/25*27: Interfax, 2010/2/05*28: Interfax, 2011/3/11*29: Interfax, 2009/8/20*30: IOD, 2015/2/12*31: IOD, 2015/6/05*32: IOD, 2010/9/08*33: Interfax, 2011/3/02*34: PON, 2011/3/03*35: PON, 2011/3/03*36: Interfax, 2013/12/31*37: IOD, 2015/9/04*38: Interfax, 2014/4/03*39: Interfax, 2014/12/31*40: IOD, 2015/2/12、WSJ、2015/3/23、PRIME, 2015/4/22、Interfax, 2015/4/29*41: Kommersant, 2015/5/22*42: IOD, 2015/6/25*43: 原田大輔「本格化するヤマルLNGプロジェクト-最新の状況とプロジェクト成立に向けた要因分析-」本誌2013.7

Vol.47 No.4 p.51 ~ 73.*44: IOD, 2015/3/09*45: PON, 2014/4/07*46: Argus FSU Energy, 2014/1/16*47: Interfax, 2015/4/24*48: IOD, 2015/9/16*49: Interfax, 2013/7/04*50: IOD, 2013/7/25*51: Interfax, 2014/4/22

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