ロシアの「輸出志向輸入代替」は...

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 48 はじめに 過去2~3年ほど、ロシアで経済政策の最重 要なキーワードの一つとなってきたのが、「輸 入代替」である。筆者はちょうど2年前に「輸 入代替に賭けるロシア」と題するレポートを発 表し 1) 、ロシアの輸入代替をめぐる状況と政策 展開について論じた。 本稿では、2年前のレポートで論じた基本点 を再確認するとともに、その後の輸入代替の進 捗状況を、図表を用いながら概観する。また、 最近のロシアでは「輸出志向輸入代替」という 標語が掲げられるようにもなっているので、そ の点にも触れてみたい。 ウクライナ危機を背景に 2年前のレポートでも指摘したとおり、 2014 年から2015年にかけてロシアで輸入代替が叫 ばれるようになったのには、ウクライナ危機を 背景として、いくつかの契機があった。 第1に、ウクライナのユーロマイダン革命後、 ロシアとウクライナの対立が尖鋭化し、これま でウクライナから輸入していた安全保障上機 微な製品(特にヘリコプター・エンジンに代表 される軍需製品)を、ロシア国産に切り替えて いくという方針が打ち出された。 第2に、ウクライナ危機をめぐるNATO諸国 との関係悪化で、ロシア国内の軍需産業へのテ コ入れの必要性が、従来以上に強く意識される ようになった。 第3に、西側諸国による経済制裁への報復措 置として、 2014年8月にロシアが同諸国からの 農産物・食料品の輸入禁止に踏み切ったため、 それによって生じる国内市場の空白を埋める 可能性と必要性が生じた。 第4に、欧米が2014年7月、9月に導入した 対ロシア経済制裁には、石油ガス開発関連機器 のロシアへの供給制限が含まれていた。そこで ロシアとしては、自国の浮沈を握る石油ガス産 業で、欧米の機器や技術に依存している状況か らの脱却を迫られた。 第5に、ロシア経済が危機に陥ったことによ り、景気対策、マクロ経済政策として、輸入代 替が要請された。国内の需要増が期待できず、 財政出動の余地も限られる中で、政策的に輸入 を抑制して純外需を拡大し、それによって景気 の悪化に歯止めをかけようという志向が生じ たわけである。 そして、第6に、 2014年暮れからロシア通貨 ルーブルが大幅に下落し、期せずしてこれが国 産化の推進にとっての大きな追い風となった。 かくして、ロシア政府の輸入代替政策は、特 定部門・商品を対象とした個別的なものから、 全産業部門を網羅した基本戦略へと転じてい ったと言える。 ロシアの「輸出志向輸入代替」は 奏功するか ロシアNIS経済研究所 調査部長 服部 倫卓 ■ Research Report ■ 特 集 ロシア経済は回復軌道に乗ったか

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 48

特集◆ロシア経済は回復軌道に乗ったか

はじめに

過去2~3年ほど、ロシアで経済政策の 重

要なキーワードの一つとなってきたのが、「輸

入代替」である。筆者はちょうど2年前に「輸

入代替に賭けるロシア」と題するレポートを発

表し1)、ロシアの輸入代替をめぐる状況と政策

展開について論じた。

本稿では、2年前のレポートで論じた基本点

を再確認するとともに、その後の輸入代替の進

捗状況を、図表を用いながら概観する。また、

近のロシアでは「輸出志向輸入代替」という

標語が掲げられるようにもなっているので、そ

の点にも触れてみたい。

ウクライナ危機を背景に

2年前のレポートでも指摘したとおり、2014

年から2015年にかけてロシアで輸入代替が叫

ばれるようになったのには、ウクライナ危機を

背景として、いくつかの契機があった。

第1に、ウクライナのユーロマイダン革命後、

ロシアとウクライナの対立が尖鋭化し、これま

でウクライナから輸入していた安全保障上機

微な製品(特にヘリコプター・エンジンに代表

される軍需製品)を、ロシア国産に切り替えて

いくという方針が打ち出された。

第2に、ウクライナ危機をめぐるNATO諸国

との関係悪化で、ロシア国内の軍需産業へのテ

コ入れの必要性が、従来以上に強く意識される

ようになった。

第3に、西側諸国による経済制裁への報復措

置として、2014年8月にロシアが同諸国からの

農産物・食料品の輸入禁止に踏み切ったため、

それによって生じる国内市場の空白を埋める

可能性と必要性が生じた。

第4に、欧米が2014年7月、9月に導入した

対ロシア経済制裁には、石油ガス開発関連機器

のロシアへの供給制限が含まれていた。そこで

ロシアとしては、自国の浮沈を握る石油ガス産

業で、欧米の機器や技術に依存している状況か

らの脱却を迫られた。

第5に、ロシア経済が危機に陥ったことによ

り、景気対策、マクロ経済政策として、輸入代

替が要請された。国内の需要増が期待できず、

財政出動の余地も限られる中で、政策的に輸入

を抑制して純外需を拡大し、それによって景気

の悪化に歯止めをかけようという志向が生じ

たわけである。

そして、第6に、2014年暮れからロシア通貨

ルーブルが大幅に下落し、期せずしてこれが国

産化の推進にとっての大きな追い風となった。

かくして、ロシア政府の輸入代替政策は、特

定部門・商品を対象とした個別的なものから、

全産業部門を網羅した基本戦略へと転じてい

ったと言える。

ロシアの「輸出志向輸入代替」は

奏功するか

ロシアNIS経済研究所 調査部長

服部 倫卓

■ Research Report ■

特 集 ロシア経済は回復軌道に乗ったか

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 49

■ Research Report ロシアの「輸出志向輸入代替」は奏功するか

図表1 各産業部門の輸入代替プランに関するロシア連邦産業・商業省省令の一覧

産業部門 対象

品目数 ダウンロードURL

石油ガス機械 43 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/645.pdf

化学工業 35 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/646.pdf

軽工業 31 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/647.pdf

自動車産業 67 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/648.pdf

食品加工機械 15 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/649.pdf

工作機械 61 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/650.pdf

非鉄金属 14 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/651.pdf

鉄鋼業 15 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/652.pdf

電力機械 45 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/653.pdf

重機械 47 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/654.pdf

医療機器・用品 111 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/655.pdf

医薬品 601 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/656.pdf

木材・紙パルプ 34 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/657.pdf

建設・道路機器 15 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/658.pdf

農業・林業機械 51 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/659.pdf

鉄道車両・機器 19 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/660.pdf

造船 107 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/661.pdf

電子・無線* 534 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/662.PDF

民間航空機 408 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/663.pdf

通常兵器 (民生プロジェクト)

2 http://minpromtorg.gov.ru/common/upload/files/docs/762-boepripas.pdf

(注)省令は基本的に2015年3月31日付だが、最後の通常兵器(民生プロジェクト)のみ2015年4月9日付。

政府の政策展開

ロシア連邦政府内で輸入代替促進の旗振り

役となったのが、製造業のほぼ全域を管轄する

産業・商業省である。同省は以前から、保護主

義、政府主導の産業政策を志向する傾向があり、

輸入代替ブームの追い風に乗った形であった。

デニス・マントゥロフ産業・商業相らが自ら

解説しているところによれば、ロシアが現在推

進している輸入代替促進策の出発点となった

のが、2014年9月30日付のロシア連邦政府指令

第1936-r号であり、この文書によって「鉱工業

部門輸入代替促進計画(工程表)」が示された。

ただし、政府指令は「政治的な諸要因」により

部外秘となった(実際、筆者が確認したところ、

当該の政府指令は法令集にも、ロシア政府機関

紙の『ロシア新聞』にも、ロシア政府および産

業・商業省のウェブサイトにも掲載されていな

い)。ともあれ、工程表により、①銀行融資の

金利補助、②研究開発費の一部に対する補助、

③発展支援機構を通じた資金供給、④融資に対

する国家保証の提供、⑤特別投資契約、という

輸入代替の促進に向けた5つの政策ツールが

打ち出された2)。

ウクライナ危機を背景に、ロシア経済がにわ

かに危機の様相を深めたことを受け、ロシア政

府は2015年1月27日付の政府指令で、「経済発

展および社会安定化を確保するための緊急措

置プラン」と題する経済危機対策を策定した。

注目すべきことに、対策の主たる方向性として

真っ先に挙げられていたのが、「ハイテク商品

を含む広範な非資源商品の輸入代替および輸

出を支援する」という課題であった。その上で

緊急措置プランは、産業・商業省をはじめとす

る関係省庁に対して、2015年3月までに産業部

門別の輸入代替プログラム(プラン)を策定す

るように命じた3)

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 50

特集◆ロシア経済は回復軌道に乗ったか

図表2 ロシアにおける産業部門ごとの輸入浸透率(原状と目標、%)

(出所)Данилов-Данильян, А. (2015). 原出所はロシア連邦産業・商業省。

図表3 ロシアにおける産業部門ごとの輸入浸透率(2014年と2016年の実績、%)

(注)原典では棒グラフとデータラベルとの間に明らかに矛盾が散見されたので、そうした場合には棒グラフの

方を優先し、グラフを判読してデータラベルを修正した。

(出所)Российская газета, 15 декабря 2016. 原出所はロシア連邦産業・商業省。

航空

機(飛

行機)

工作

機械

食品

加工

機械

無線・

電子

機器

医療

機器・

用品

医薬

軽工

重機

石油

ガス

機械

農業

機械造船

建設・

道路

機器

自動

車産

化学

工業

木材

産業

航空

機(ヘ

リコプ

ター)

鉄道

車両・

機器

電力

機械冶金

2013年実績 92 88 87 82 81 73 73 60 60 56 55 49 44 32 26 24 24 20 10

2020年目標 71 58 68 44 60 50 60 52 43 24 30 42 38 25 21 25 11 18 4

0

50

100

工作

機械軽工業 医薬品

無線・

電子

機器

重機械農業

機械

石油

ガス

機械

電気機

器・ケー

ブル

化学

工業

電力

機械

木材

産業

鉄道

車両・

機器

2014年実績 92 77 69 65 60 60 55 53 41 33 22 15

2016年1~9月実績 88 68 55 56 48 48 46 42 30 24 13 3

0

50

100

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 51

■ Research Report ロシアの「輸出志向輸入代替」は奏功するか

そして、産業・商業省は実際に2015年3月末

までに、20本に上る産業部門別の輸入代替プラ

ンを採択し、同省のウェブサイトに掲載した。

図表1はそれを整理したものである。一連のプ

ランを紐解いてみると、これ自体は政策措置と

いうよりも、品目ごとの輸入代替の数値目標を

ひたすら列挙した一覧表になっている。ある品

目の輸入浸透度が、現時点では何%で、それを

2020年までに何%に引き下げるかという具体

的な数字が示されている。

なお、産業・商業省以外の省庁が管轄してい

る産業部門の輸入代替目標については、前掲拙

稿に概要を記したので、そちらを参照していた

だきたい4)。

輸入代替の進捗状況

産業・商業省では、自らが管轄する主な産業

部門につき、輸入浸透率(国内消費に占める輸

入品の割合)を図表2のように描いていた。輸

入代替政策に大胆に舵を切る前の2013年の原

状値と、2020年時点の目標を対比したものであ

る。原状では、産業機械、医薬品・医療機器な

どで、輸入に依存している部分が非常に大きい。

国産比率が高い部門は、付加価値の低い素材系

の産業と、軍需や、鉄道・電力機械のように規

格の壁で守られているものに限られていた。

次に、図表3は、その後実際に部門ごとの輸

入浸透率がどう変化していったかを、2014年と

2016年1~9月とで比較したものである。図表

2も図表3も産業・商業省のデータが原典とさ

れているので、同じ系統の統計だと思われるが、

扱われている部門の数と対象年が微妙に異な

るので、対比がやや困難である。ただ、全体と

して、基本的にすべての製造業部門で輸入浸透

率の引き下げが目標とされており、実際にもそ

れが進展しつつあることがうかがわれる。

図表4 ロシアで小売販売されている消費財と食料品に占める輸入品の比率(%)

(出所)ロシア連邦国家統計局。http://www.gks.ru/dbscripts/cbsd/dbinet.cgi

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

消費財 45 46 47 44 41 44 43 44 44 42 38 38

食料品 36 35 36 33 33 34 33 34 36 34 28 23

0

50

100

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 52

特集◆ロシア経済は回復軌道に乗ったか

図表5 ロシアの製造業部門ごとの生産指数

2014 2015 2016

製造業全体 103.2 98.7 100.5 102.4

食品 104.9 103.1 103.1 111.5

 食肉加工・缶詰 110.3 109.3 104.7 126.2

 水産物加工・缶詰 99.2 101.5 101.9 102.6

 果物・野菜加工・缶詰 102.1 102.7 97.6 102.3

 植物性・動物性油脂 108.7 104.4 107.5 122.0

 乳製品 103.1 102.7 99.6 105.5

 製粉 102.0 100.9 99.4 102.3

 パン・菓子 102.7 101.1 98.2 102.0

 家畜飼料 108.7 108.2 105.3 123.8

飲料 94.4 99.2 101.3 94.9

タバコ 91.1 96.8 97.9 86.3

繊維・織物 97.0 100.6 104.6 102.1

衣類 100.5 81.2 107.1 87.4

木材産業 96.4 95.9 102.8 95.0

製紙産業 103.4 101.6 105.1 110.4

印刷業 95.1 90.9 92.4 79.9

コークス・石油製品 106.1 100.9 98.3 105.2

化学工業 102.3 105.8 106.3 115.1

 基礎化学品、肥料 102.5 105.3 103.4 111.6

 殺虫剤等の農業化学品 103.6 107.5 162.9 181.4

 染料・塗料 108.5 93.0 114.1 115.1

 生活化学品・化粧品 107.9 108.3 106.9 124.9

 化学繊維 96.3 106.3 110.9 113.5

医薬品 94.6 108.5 107.0 109.8

プラスチック・ゴム製品 109.7 98.0 106.3 114.3

 ゴム製品 94.8 102.7 106.6 103.8

 プラスチック製品 115.4 97.0 106.3 119.0

その他の非金属鉱物製品 101.1 93.9 94.0 89.2

 ガラス・同製品 101.4 98.7 101.1 101.2

 セメント等 104.0 90.3 89.0 83.6

冶金工業 107.2 104.0 99.0 110.4

 銑鉄・粗鋼・合金鉄 101.5 96.8 99.0 97.3

 鋼管等 113.3 104.3 86.9 102.7

 その他の鉄鋼一次加工品 100.9 88.3 96.2 85.7

 貴金属・非鉄金属 108.1 108.5 100.6 118.0

完成金属製品(機械設備を除く) 104.5 103.5 101.3 109.6

コンピュータ・電子・光学機器 108.9 106.1 100.6 116.2

電気機械 97.9 90.5 100.9 89.4

 発電機・変圧器・配電機 101.0 90.2 100.1 91.2

 蓄電池 107.0 104.6 112.4 125.8

 ケーブル 92.2 94.7 101.3 88.4

 電灯・照明器具 95.9 76.4 122.3 89.6

 生活家電 88.7 100.4 109.2 97.2

機械設備 92.1 95.3 99.3 87.2

 一般機械 79.8 113.2 93.7 84.6

 農業用機械設備 92.2 96.5 124.7 110.9

 工作機械 122.9 118.7 100.2 146.2

自動車 88.7 76.9 100.5 68.6

その他の輸送機器 116.2 105.4 104.2 127.6

 鉄道機関車・車両 89.7 68.8 121.2 74.8

 航空・宇宙機器 109.0 119.6 100.8 131.4

家具 99.8 92.8 97.3 90.1

2016

/2013

(出所)ロシア連邦国家統計局。

前年=100

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 53

■ Research Report ロシアの「輸出志向輸入代替」は奏功するか

ロシア統計局は、ロシアの小売市場で販売さ

れている消費財と食料品に占める輸入品の比

率という指標を発表しているので、その推移を

図表4に示した。ここでも、輸入品比率の低下、

言い換えれば国産品比率の拡大というトレン

ドが見て取れる。

ロシアの政策担当者は、こうした輸入浸透率

の低下をもって、輸入代替が順調に進展してい

ると強調する傾向が強い。マントゥロフ産業・

商業相らも、鉄道車両・機器、農業機械、建設・

道路機器、重機械、医薬品といった分野で、ロ

シアは2015年の輸入浸透率低下の目標値を超

過達成したとして、成果を誇示している5)。

しかし、様々な統計データを突き合わせてみ

ると、国内生産そのものは決して増えておらず、

ロシアの景気後退、購買力の低下、ルーブルの

下落などで単に輸入量が低下しただけで、結果

的に国産品の比率が高まっているだけという

ケースが少なくない。輸入品を置き換える形で

国産生産が増加してこその輸入代替のはずだ

が、必ずしもそうはなっていない。

図表5に見るとおり、輸入代替政策が本格化

したはずの2015~2016年に、各製造業部門がお

しなべて生産を伸ばしているわけではない。食

品産業などでは成果も確認できるものの、機械

関連の部門では一進一退という様相となって

いる。

経済学者のウラジーミル・マウは、ルーブル

安にもかかわらず、それが必ずしも輸入代替の

進展に直結しない原因について、以下のように

論じている6)。

長年続いた「オランダ病」の時代に、製造業

が衰退し、そうした部門は条件が好転したか

らといって直ちに回復することはない。した

がって、まず生産が回復するのは、大掛かり

な投資なしでも既存の基盤を活かして生産

を拡大できる輸出セクターとなる。

遊休生産能力が存在しない場合には、輸入代

替には投資を要し、翻ってそれには健全な投

資環境が求められる。通貨切り下げは、ある

程度は事業環境のリスクを補ってくれるも

のの、投資をするとなれば長期的な判断とな

り、ルーブル安は決め手ではなくなる。

ルーブル安は外資がロシアに投資を行う魅

力を高めるが、ロシアの現状は経済制裁によ

って損なわれている。

ロシアも国際的なバリューチェーンに組み

込まれているので、ルーブル安によってコン

ポーネント輸入のコストが上昇する。したが

って、通貨安の効果は、個別部門ごとに具体

的に検討する必要がある。

マントゥロフ大臣らも、上述のとおり、すで

に輸入代替の即効的な成果も生じているとし

ながら、より本格的な効果が表れるのは今後で

あるとしている。すなわち、2015年に800以上

の輸入代替プロジェクトが始動したが、それが

量産段階に達するのは2017~2018年頃になる

ので、その時期になってようやく、輸入浸透率

は顕著な低下を示すことになるだろうとの見

通しを示している7)。

畜産品・食品市場の動向

ロシアの輸入代替の中でも、畜産品・食品市

場は特有の重要性を帯びている。第1に、ロシ

アは欧米の制裁に対抗して2014年8月から多

くの欧米産食品品目に対する輸入禁止措置を

とっており、このように輸入品を強制的に排除

している事例は他の産業部門には見られない

ことである。第2に、一般的に言って、畜産や

食品産業は、本格的な製造業と比べて必要とさ

れる投資規模が小さく、投資回収期間も短い傾

向があることから、ルーブル安や輸入代替政策

への感応性が高いと想定される。こうしたこと

にかんがみ、以下ではロシアの農産物・食品輸

入、小売市場に関するデータを、なるべく詳細

に紹介する8)。

Page 7: ロシアの「輸出志向輸入代替」は 奏功するかdb2.rotobo.or.jp/members/all_pdf/m201705No.04pex1.pdf50 ロシアNIS調査月報2017年5月号 特集 ロシア経済は回復軌道に乗ったか

ロシアNIS調査月報2017年5月号 54

特集◆ロシア経済は回復軌道に乗ったか

図表6 ロシアで小売販売されている主要食品に占める輸入品の比率

図表7 ロシアの農産物・食品輸入相手地域(100万ドル)

(出所)ロシア連邦関税局の貿易統計をもとに筆者作成。

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 20152016

1-9月

食肉 43.8 38.2 33.7 30.0 30.3 26.2 19.6 13.4 11.0

  牛肉 61.7 61.8 64.5 59.5 59.9 59.0 57.3 48.0 41.9

  豚肉 56.5 41.6 46.8 42.8 41.3 31.0 16.6 12.5 9.6

  鳥肉 33.3 26.1 18.2 12.5 14.0 12.8 10.0 5.6 4.9

肉の缶詰 18.8 16.5 17.1 22.0 25.1 20.0 13.7 9.0 …

ソーセージ 1.1 1.3 1.3 1.7 3.4 3.2 2.2 1.0 1.4

バター 27.0 27.1 32.3 32.2 34.2 35.9 34.3 25.5 24.6

チーズ 41.3 41.2 47.4 46.1 47.8 48.0 37.3 23.3 24.1

小麦粉 0.2 0.1 0.9 1.0 0.7 1.5 0.9 0.8 2.0

穀物の挽き割り 4.2 2.1 2.2 2.0 1.4 1.8 0.5 0.3 0.3

植物油 31.2 18.5 23.9 22.0 16.3 19.0 14.4 17.5 17.8

粉乳・クリーム 30.0 37.3 60.1 40.7 48.4 60.5 49.4 56.4 60.6

菓子 10.3 6.8 11.1 11.6 12.5 12.0 9.3 5.9 …

砂糖 2.7 4.8 5.4 3.7 5.3 8.2 7.4 6.2 …

(出所)ロシア連邦国家統計局。

(出所)http://www.gks.ru/wps/wcm/connect/rosstat_main/rosstat/ru/statistics/importexchange/#

(%)

2012 2013 2014 2015 2016

輸入総計 40,655 43,255 39,957 26,584 24,902

CIS諸国からの輸入 5,196 6,337 5,853 4,380 4,693

その他世界からの輸入 16,545 17,813 19,376 15,608 13,803

その他制裁対象国からの輸入 4,579 3,910 2,960 907 773

EUからの輸入 14,335 15,195 11,768 5,690 5,633

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 55

■ Research Report ロシアの「輸出志向輸入代替」は奏功するか

図表8 ロシアによる主な畜産品の輸入と国内生産(1,000t)

2012 2013 2014 2015

輸入総計 657.8 658.4 633.2 435.3 363.9

CIS諸国からの輸入 47.2 96.3 114.1 146.4 139.4

その他世界からの輸入 478.0 503.1 490.4 289.0 224.5

その他制裁対象国からの輸入 80.1 27.2 2.2 0.0 0.0

EUからの輸入 52.6 31.9 26.5 0.0 0.0

ロシアの国内生産 213.7 240.2 224.6 254.7 263.3

0

500

1,000

(1)牛肉(HSコード:0201-0202)

2012 2013 2014 2015 2016

輸入総計 735.5 619.8 372.3 304.5 258.7

CIS諸国からの輸入 29.5 20.9 14.4 27.5 4.4

その他世界からの輸入 145.7 148.1 230.0 277.0 254.3

その他制裁対象国からの輸入 269.4 85.3 108.6 0.0 0.0

EUからの輸入 290.8 365.5 19.2 0.0 0.0

ロシアの国内生産 1,000.4 1,299.1 1,525.9 1,763 1,993

0

1,000

2,000

3,000

(2)豚肉(HSコード:0203)

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 56

特集◆ロシア経済は回復軌道に乗ったか

2012 2013 2014 2015 2016

輸入総計 529.9 527.0 454.5 253.4 223.7

CIS諸国からの輸入 89.9 122.9 105.5 124.7 115.8

その他世界からの輸入 93.9 65.3 162.5 128.7 108.0

その他制裁対象国からの輸入 266.3 266.5 137.7 0.0 0.0

EUからの輸入 79.8 72.3 48.7 0.0 0.0

ロシアの国内生産 3,405 3,610 3,979 4,340 4,457

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

(3)鳥肉(HSコード:0207)

2012 2013 2014 2015 2016

輸入総計 117.5 144.4 150.4 94.3 102.1

CIS諸国からの輸入 43.7 46.6 65.6 74.6 78.2

その他世界からの輸入 40.9 52.5 47.4 19.7 23.8

その他制裁対象国からの輸入 4.4 9.9 14.6 0.0 0.0

EUからの輸入 28.6 35.3 22.8 0.0 0.0

ロシアの国内生産 214.1 224.9 250.5 256 247

0

100

200

300

(4)バター(HSコード:0405)

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 57

■ Research Report ロシアの「輸出志向輸入代替」は奏功するか

(出所)ロシア連邦国家統計局およびロシア連邦関税局のデータをもとに筆者作成。

改めて経緯を整理すると、EUおよび米国を

はじめとする西側諸国による対ロシア制裁に

対抗すべく、ロシアのプーチン大統領は2014年

8月6日付の大統領令第560号で、ロシアの国

益を守るため欧米に対し対抗策を講じること

をロシア政府に指示、具体的には欧米産の一部

の農産物・食品の輸入を1年間にわたって制限

する措置をとるよう政府に命じた。それを受け

る形でロシア政府は、2014年8月7日付政府決

定第778号で、ロシアへの輸入が1年間にわた

って禁止される品目の一覧表と、その対象国を

発表した。その後、2015年6月25日付ロシア政

府決定第625号により、制裁の適用が1年間、

すなわち2016年8月5日まで延長されること

になった。また、対象品目の細目に若干の微修

正が加えられた。さらに、2015年8月13日付ロ

シア政府決定第842号により、食品禁輸の対象

国が追加された。EUの対ロシア制裁に同調し

ていたアルバニア、モンテネグロ、アイスラン

ド、リヒテンシュタイン、そしてウクライナが、

新たに対象に加えられたものである。そして、

2016年6月30日付ロシア政府決定第608号によ

り、欧米に対する食品禁輸は、さらに2017年12

月31日まで延長されることになった。

ロシアの農産物・食品(HSコードの第1~4

部、第1~24類)輸入の輸入相手地域を図示す

ると、図表7のようになる。やはりEUおよび

その他の制裁対象国からの輸入減は顕著であ

る(むろん、禁止されていない食品もあるので、

一定量の輸入は残っている)。CISでは、ベラル

ーシが欧米産品禁輸で生じたロシア市場の空

白を埋めようと懸命の努力を重ねているもの

の、政治関係の悪化でウクライナからの食品輸

入は激減している。

結局、欧米からの輸入減が他の国からの輸入

で補われるというよりも、ロシア国内の生産増

2012 2013 2014 2015 2016

輸入総計 399.2 438.5 316.1 200.6 216.6

CIS諸国からの輸入 137.2 161.0 144.2 172.1 192.6

その他世界からの輸入 13.8 14.5 32.7 24.5 24.023

その他制裁対象国からの輸入 1.2 1.5 2.2 0.0 0.0

EUからの輸入 247.0 261.5 137.1 4.0 0.0

ロシアの国内生産 450.8 434.8 499.2 589.0 600.0

0

500

1,000

(5)チーズ(HSコード:0406)

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 58

特集◆ロシア経済は回復軌道に乗ったか

によって補われるか、あるいは今日の不況下で

ロシア国民の消費量自体が縮小するというパ

ターンの方が主流になっていると見られる。実

際、図表8に見るように、一連の畜産品におい

て、輸入減と軌を一にする形で生産増が進んで

いる。ただし、ロシアの優位性が低く、投資回

収期間の長い牛肉では動きが鈍い。また、2015

年までは国内生産の拡大が総じて順調に進ん

でいたが、2016年になると(4)バターのように

生産が低下に転じる品目も出てきた。

ともあれ、図表4、6に見るように、ロシア

で小売販売されている食品に占める輸入品の

比率は、低下傾向を辿っている。

輸入代替に関する10の神話

ロシア『ジェーニギ』誌が2016年2月29日号

において、「ロシアの輸入代替に関する10の神

話」という記事を掲載している9)。執筆してい

るのは、「実業ロシア」の共同議長であるアン

トン・ダニロフ=ダニリヤンと、産業・商業省

のグレブ・ニキチン第一次官である。この両名

はロシアの輸入代替政策に関する論客として

たびたび名前が登場し、この「10の神話」とい

う議論も様々な場で披露しているようである。

両名が挙げている10の神話と、それぞれについ

ての反論は、以下のとおりである。

ロシアはありとあらゆる品目を輸入代替し

ようとしている。 → 現在ロシアが輸入し

ている商品のうち、近い将来に国産化して経

済的に成り立ちうるのは、せいぜい3分の1

程度。

ロシアから外国資本を締め出そうとしてい

る。 → むしろ、外国資本を誘致してロシ

ア国産化を進める。

輸入代替は不可避的に保護主義を伴う。 →

どちらかと言えば自然発生的で、自由貿易の

結果として進展する。保護主義はせいぜい政

府発注で発揮されるだけ。

輸入代替と特別投資契約は競争を阻害する。

→ むしろ新たな生産により競争が増す。

輸入代替は、税金の無駄遣いだ。 → 輸入

代替プロジェクトの投資総額に占める公的

な産業発展基金の比率は大きくなく、大部分

が民間の自己資金。

輸入代替は、ロシアの消費者に質の悪い製品

を押し付けることになる。 → 国産品の質

が悪いというのはソ連時代のステレオタイ

プで、競争の激しい今日では性能の高い設備

で生産されている。

輸入代替支援は、過去の技術への支援なので

はないか。 → むしろ将来の技術への支援

だ。

銀行から融資を断られたプロジェクトを支

援しているのではないか。 → 現在のロシ

アの条件では、プロジェクトが有望でも銀行

融資を受けるのが難しい現実があり、国の支

援が必要。

たとえ輸入代替が実現したプロジェクトで

も、輸出に転じるのは無理。 → 実際には

「輸出志向輸入代替」が活発化している。

ルーブルが再び強くなったら、輸入代替の試

みは水泡に帰す。 → 制裁と石油安は長く

続きそうであり、輸入代替の余地は大きい。

輸出志向輸入代替という新潮流

輸入代替政策は、国内市場を人為的に保護す

ることにより、産業の国際競争力を低下させ、

結局は当該国経済の衰退をもたらす恐れが強

いというのが、一般的な評価であろう。ロシア

の政権当局も、ウクライナ危機を背景に輸入代

替路線に舵を切った当初から、同政策の内包す

るそうした陥穽を強く意識していた。

たとえば、2014年12月の教書演説でプーチン

大統領は、「我が国のサプライヤーの製品は、

品質だけでなく、価格面でも、厳しい条件を満

たさなければならない。国内独占を許してはい

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ロシアNIS調査月報2017年5月号 59

■ Research Report ロシアの「輸出志向輸入代替」は奏功するか

けない。合理的な輸入代替こそが必要だと強調

したい。輸入代替プログラムは、国内だけでな

く、国際的にも競争力を持つ生産企業の広範な

層をロシアに作り出さなければならない」と述

べていた10)。

こうした問題意識にもとづき、ロシアの政策

エリートによってしばしば唱えられるように

なったのが、「輸出志向輸入代替」(export

oriented import substitution / экспорто-

ориентированное импортозамещение)という標

語である。輸出志向工業化と輸入代替工業化は、

対極の方向性として二者択一的に論じられが

ちだが、実際には東アジア諸国の経済開発に関

する議論の中で「輸出志向輸入代替」という折

衷的な概念を用いる専門家が1970年代から現

れた。ロシアにおいては、筆者の確認した限り、

前出のダニロフ=ダニリヤンがその言葉を使

ったのが 初と思われる。すなわち、2015年5

月26日にプーチン大統領も出席して開催され

た実業ロシア主催のビジネスフォーラムにお

いてダニロフ=ダニリヤンは、ロシアで販売さ

れている商品が外国市場でも良く売れている

ような場合には、品質が良い証拠であり、そう

した現象を指す新語として「輸出志向輸入代替」

という言葉を提唱したいと発言した11)。

それに続き、ウラジーミル・マウのような学

者も輸出志向輸入代替という概念を用いるよ

うになった12)。メドヴェージェフ首相も2016年

秋に発表した論文の中でその概念・用語を使っ

ている。すなわち、今日のロシアの輸入代替政

策は20世紀的なモデルとは本質的に異なり、第

1に輸入品を締め出すというよりは国内市場

のみならずグローバル市場でも競争力のある

生産者を生み出すことに主眼があること、第2

に為替操作や行政裁量よりも制度やマクロ経

済条件の創出によって競争力のある企業を創

出することを旨としていると、メドヴェージェ

フ首相は論じている13)。

【参考文献】 服部倫卓(2015a)「ロシア政府の危機対策プラン60

項目」『ロシアNIS経済速報』2月5日号, pp. 1-

7.

――――(2015b)「輸入代替に賭けるロシア」『ロシ

アNIS調査月報』5月号, pp. 88-91.

――――(2016)「ロシアの食品禁輸と輸入代替の動

向」『ロシアNIS経済速報』10月5日号, pp. 1-10.

Mau, Vladimir (2016) ‘Anti-crisis measures or structural

reforms: Russian economic policy in 2015,’ Russian

Journal of Economics, No.2, 1–22.

Данилов-Данильян, А. (2015) ‘Организация

импортозамещения в смежных сферах

энергетики.’[http://www.fsk-

ees.ru/about/import_substitution/round_table/docs/m

aterial/Danilov.pdf]

Данилов-Данильян, А. и Никитин, Г. (2016) ‘10 мифов

об импортозамещении,’ Коммерсантъ Деньги,

No.8, 29 февраля.

Мантуров, А., Никитин, Г. и Осьмаков, В. (2016)

‘Планирование импортозамещения в российской

промышленности: практика российского

государственного управления,’ Вопросы

экономики, No.9, 40–49.

Медведев, Д. (2016) ‘Социально-экономическое

развитие России: обретение новой динамики,’

Вопросы экономики, No.10, 5–30.

【注】

1)服部(2015b)。

2)Мантуров, Никитин и Осьмаков (2016).

3)http://government.ru/media/files/7QoLbdOVNPc.pdf;

服部(2015a)。

4)服部(2015b)、89-90.

5)Мантуров, Никитин и Осьмаков (2016), 47.

6)Mau (2016), 14.

7)Мантуров, Никитин и Осьмаков (2016), 47.

8)以下は服部(2016)の情報をアップデートしたも

のである。

9)Данилов-Данильян и Никитин (2016).

10)http://kremlin.ru/events/president/news/47173

11)https://www.business-gazeta.ru/article/133250

12)Mau (2016), 20.

13)Медведев (2016), 11-13.